JPH0665140A - 2−フルオロシクロプロパンカルボン酸の製法 - Google Patents

2−フルオロシクロプロパンカルボン酸の製法

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JPH0665140A
JPH0665140A JP4222335A JP22233592A JPH0665140A JP H0665140 A JPH0665140 A JP H0665140A JP 4222335 A JP4222335 A JP 4222335A JP 22233592 A JP22233592 A JP 22233592A JP H0665140 A JPH0665140 A JP H0665140A
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健 早野
Yoichi Kimura
陽一 木村
Hideki Kubota
秀樹 窪田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 キノロンの中間体として有用な2-フルオロシ
クロプロパンカルボン酸を簡便に合成する。 【構成】 水素源の存在下に、アルカリ金属またはアル
カリ土類金属に属する金属で式 【化1】 (式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表
わす。)で表わされる化合物を処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた活性と安全性を
備えるニューキノロン誘導体の製造中間体として有用な
化合物の製法に関する。
【0002】
【従来技術】合成抗菌薬として優れた特性を有するニュ
ーキノロン系の合成抗菌薬の中で、1,2-シス-2- フルオ
ロシクロプロピル基を1位の置換基として有するキノロ
ン誘導体は強い抗菌活性と高い安全性を兼ね備えてお
り、優れた合成抗菌薬として期待されている(特開平2
−231475号公報参照)。
【0003】1位に1,2-シス-2- フルオロシクロプロピ
ル基を置換基として有するキノロン誘導体の合成原料と
しては2-フルオロシクロプロパンカルボン酸、とりわけ
1,2-シス-2- フルオロシクロプロパンカルボン酸が重要
である。従来、2-フルオロシクロプロパンカルボン酸を
得るための該カルボン酸エステルはブタジエンを原料と
する4工程の反応で合成され、そしてこのエステルから
加水分解によってカルボン酸に変換していた。
【0004】
【化2】
【0005】しかし、この合成法においては2-ブロモ-2
- フルオロシクロプロパンカルボン酸エステルの脱ブロ
ム化の工程があり、この脱ブロム化のためにトリアルキ
ルスズヒドリド化合物、例えばトリブチルスズヒドリ
ド、を使用していた。しかし、このトリアルキルスズヒ
ドリド化合物は毒性や価格の点で工業的に使用すること
は困難である。
【0006】また、ブタジエンから2工程で2-クロロ-2
- フルオロシクロプロパンカルボン酸を合成し、1,2-ジ
アミノエタン存在下にエタノール中でラネーニッケルを
用いて接触還元し、2-フルオロシクロプロパンカルボン
酸を得る方法も知られている(Journal of Fluorine Che
mistry, 49, 127-139(1990))。しかしこの方法では、2
-フルオロシクロプロパンカルボン酸の収率が10%と低
く、しかもフッ素原子とカルボキシル基がシクロプロパ
ン環に対してトランス配置である化合物が得られただけ
であった。従って、この方法では1,2-シス-2- フルオロ
シクロプロパンカルボン酸を得ることは困難である。
【0007】
【化3】
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、2-フル
オロ-2- ハロゲノシクロプロパンカルボン酸から脱ハロ
ゲン化して2-フルオロシクロプロパンカルボン酸に変換
する際に、2位のフッ素原子の配置が転換することの少
ない、また収率がよく、そして簡便な合成法について鋭
意検討した。そして、2-フルオロ-2- ハロゲノシクロプ
ロパンカルボン酸を、水素源の存在下にアルカリ金属ま
たはアルカリ土類金属で処理することによって2-フルオ
ロシクロプロパンカルボン酸が所期の目的の通りに得ら
れることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
【発明の構成】本発明は、水素源の存在下、アルカリ金
属またはアルカリ土類金属に属する金属で式
【0010】
【化4】 (式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表
わす。)で表わされる化合物を処理することを特徴とす
る2-フルオロシクロプロパンカルボン酸の製造方法に関
する。
【0011】本発明で使用する2-フルオロ-2- ハロゲノ
シクロプロパンカルボン酸において、2位のハロゲン原
子としては塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が好ま
しいが、特に塩素原子が好ましい。
【0012】本発明の方法は具体的には、2-フルオロ-2
- ハロゲノシクロプロパンカルボン酸と水素源を含む溶
媒の混合物に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を
加えればよい。
【0013】本発明の方法において使用できるアルカリ
金属またはアルカリ土類金属としては、具体的にはリチ
ウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカル
シウムを挙げることができる。
【0014】金属の使用量であるが、2-フルオロ-2- ハ
ロゲノシクロプロパンカルボン酸に対して1から10当量
を使用すればよい。
【0015】本発明の方法に使用できる溶媒としては液
体アンモニア、アルコール類、またはエーテル類を挙げ
ることができる。アルコール類としてはメタノール、エ
タノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノー
ル、イソブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノ
ール等を挙げることができる他、ペンタノール類、ヘキ
サノール類を挙げることができる。また、エーテル類と
しては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオ
キサン、1,2-ジメトキシエタンを例示することができ
る。溶媒としては液体アンモニアあるいはテトラヒドロ
フランを使用するのが一般的である。
【0016】本発明の反応には水素源が必要である。即
ち、2-フルオロ-2- ハロゲノシクロプロパンカルボン酸
から2-フルオロシクロプロパンカルボン酸が生成するた
めには、2位のハロゲン原子が脱離した後に水素原子が
導入されなければならない(なお、これは反応の推移を
形式的に表現したものであって、実際にこの様に段階的
に反応が進行するか否かは本発明の方法の本質とは無関
係である。)。この水素原子を供給する化合物を称して
水素源という。水素源としてはプロトン供与性の化合物
を使用すればよい。例えば、水素源として水あるいはア
ルコール類を挙げることができる。反応溶媒としてアル
コール類を使用する場合は、アルコール類自体が水素源
であるので改めて水素源を加えなくともよい。一方、溶
媒としてエーテル類等の非プロトン供与性化合物を使用
する場合には水素源を加える必要がある。溶媒として液
体アンモニアを使用する場合で、金属としてリチウムを
使用するときには水素源はリチウムを加える際に存在し
ていなくともよいが、金属がリチウム以外のときは反応
の初期段階から水素源を加えておくのがよい。なお、水
素源は金属を加える際に共存させておくのが通常の方法
である。
【0017】実際の反応に使用する溶媒の混合物として
は、液体アンモニアまたは液体アンモニアと水もしくは
アルコール類の混合物、アルコール類、またはエーテル
類とアルコール類もしくは水との混合物を挙げることが
できる。具体的にはテトラヒドロフランと第3級ブタノ
ールもしくはテトラヒドロフランとメタノールの混合
物、あるいは液体アンモニアと水の混合物等である。
【0018】本発明の方法を実施する温度は、約零下 1
00℃から約 150℃の範囲であればよいが、好ましくは約
零下50℃から約 100℃の範囲である。なお、溶媒として
液体アンンモニアを使用するときには冷却下から室温の
温度範囲で反応を行なうのが普通である。
【0019】反応時間はおよそ5分からおよそ48時間の
範囲で実施すれば十分である。
【0020】本発明の方法によれば、フッ素原子の結合
した炭素原子上における置換基の立体配置の反転を押さ
えながら脱ハロゲン化を行うことが可能である。とりわ
け、金属としてカルシウム、溶媒として液体アンモニ
ア、水素源として水を使用して反応させることが、フッ
素原子の結合した炭素原子立体配置の反転を押さえつつ
脱ハロゲン化する条件として好ましい。さらにこの際
に、液体アンモニアの沸点以下に冷却して反応を実施す
ることが、フッ素原子の結合した炭素原子立体配置の反
転を押さえつつ脱ハロゲン化する条件として特に好まし
い。
【0021】
【実施例】次に実施例によって発明をさらに詳細に説明
するが、本発明はこれに限定されるものではない。ま
た、シス体と称している化合物は、フッ素原子とカルボ
キシル基とがシクロプロパン環の同じ側に存在している
化合物を示す。
【0022】本実施例においてはシス体とトランス体の
混合物である2-フルオロ-2- ハロゲノシクロプロパンカ
ルボン酸を用いて脱ハロゲン化反応を実施している。し
かし、脱ハロゲン化反応に先立ってシス体とトランス体
の混合物を分離し、他方を含まないシス体あるいはトラ
ンス体の2-フルオロ-2- ハロゲノシクロプロパンカルボ
ン酸であっても本発明の脱ハロゲン化反応によって2-フ
ルオロシクロプロパンカルボン酸が得られることは言う
までもない。即ち、本発明の方法は2-フルオロ-2- ハロ
ゲノシクロプロパンカルボン酸が立体異性体的に純粋で
あるか否かには無関係に実施することができる。
【0023】[実施例1]
【0024】
【化5】
【0025】2-クロロ-2- フルオロシクロプロパンカル
ボン酸 3.86 g(シス体:トランス体= 1.45:1)、水 1.5
ml、無水液体アンモニア 193 ml を混合し、金属カルシ
ウム2.24 gを少量ずつ発泡に注意しながら、およそ15分
を要して加えた。この際、反応温度は液体アンモニアの
沸点で行なった(およそ零下33℃)。カルシウムを加え
た15分後に反応混合物に塩化アンモニウム 7.5 gを加
え、アンモニアを除去した。更におよそ35℃に加温し
た。残留物に水を加えて固形物を溶解し、次いで濃塩酸
約 20 mlを加え酸性とした。この溶液に塩化ナトリウム
を加えた後、酢酸エチル 150 ml で3回抽出した。抽出
液を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を減圧下に留
去した。さらに、残留物にベンゼン 30 mlを加えた後ベ
ンゼンを留去して水を共沸によって除去する操作を2回
反復した。無色油状の2-フルオロシクロプロパンカルボ
ン酸 2.81 g を得た。1H-NMRスペクトルにおける生成物
の比は、シス体:トランス体= 1.4:1 であった。生成し
たカルボン酸の1H-NMRスペクトル、あるいはカルボン酸
をエステルに変換後のガスクロマトグラフィにおける保
持時間は既に報告されている値と一致した。
【0026】[実施例2]実施例1と同様の反応を、シ
ス体とトランス体の比が 1:1.45 である原料を使用して
行なった。その結果、生成物においてはシス体とトラン
ス体の比は 1:1.51 であった。
【0027】[実施例3]実施例1と同様の反応を、反
応温度を液体アンモニアの沸点から零下48℃の冷却下に
変更して反応を行なった。原料においてはシス体とトラ
ンス体の比は 1:1.45 であったが、生成物ではシス体:
トランス体= 1:1.45であった。
【0028】[実施例4]実施例1と同様の反応を、水
素源を水からメタノールに変更して反応を行なった。そ
の結果、原料においてはシス体とトランス体の比は 1:
1.45 であったが、生成物においてはシス体:トランス
体= 1:1.65であった。
【0029】[実施例5]実施例1と同様の反応を、シ
ス体とトランス体の比が 1:1.45 である原料を用い、金
属としてリチウム(3.6 当量)を使用してリチウムを加
える際に水素源を存在させずに、零下48℃で反応を行っ
た。生成物においてはシス体:トランス体= 1:1.87で
あった。
【0030】[実施例6]2-クロロ-2- フルオロシクロ
プロパンカルボン酸 138 mg(シス体:トランス体= 1:
1.3)、テトラヒドロフラン 3 ml、第3級ブタノール 1
ml を混合し、室温でリチウム 28 mgを加え、更に室温
で21時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶
液 2 ml を加え、更に1規定塩酸を加えて酸性とした。
この混合物を酢酸エチル 10 mlで抽出し、抽出液を無水
硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧留去した。エタノー
ルと硫酸にてエステル化したところ生成物の比は、シス
体:トランス体= 1:3であった。
【0031】なお、上記の実施例2から6においては生
成物をエステル化した後ガスクロマトグラフィーによっ
て異性体の比を求めた。
【0032】
【発明の効果】水素源の存在下に2-フルオロ-2- ハロゲ
ノシクロプロパンカルボン酸をアルカリ金属またはアル
カリ土類金属、特にカルシウムまたはリチウムで処理す
る方法によって、2位のフッ素原子の異性化を押さえつ
つ脱ハロゲン化が進行し、2-フルオロシクロプロパンカ
ルボン酸を簡便に、かつ収率よく合成することが可能と
なった。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素源の存在下に、アルカリ金属または
    アルカリ土類金属に属する金属で式 【化1】 (式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表
    わす。)で表わされる化合物を処理することを特徴とす
    る2-フルオロシクロプロパンカルボン酸の製法
  2. 【請求項2】 金属が、リチウム、ナトリウム、カリウ
    ム、マグネシウムおよびカルシウムからなる群から選ば
    れる金属である請求項1記載の製法
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1995004712A1 (fr) * 1993-08-05 1995-02-16 Daiichi Pharmaceutical Co., Ltd. Procede de deshalogenation selective
US5770767A (en) * 1995-01-31 1998-06-23 Sumitomo Chemical Company Limited. Process for producing 2-fluorocyclopropancecarboxlic acid
WO2005095322A1 (ja) * 2004-03-31 2005-10-13 Daiichi Pharmaceutical Co., Ltd. 1,2-シス-2-フルオロシクロプロパン-1-カルボン酸エステル類の製造法

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JPWO2005095322A1 (ja) * 2004-03-31 2008-02-21 第一製薬株式会社 1,2−シス−2−フルオロシクロプロパン−1−カルボン酸エステル類の製造法
US7381833B2 (en) 2004-03-31 2008-06-03 Daiichi Pharmaceutical Co., Ltd. Process for producing 1,2-cis-2-fluorocyclopropane-1-carboxylic ester compound
JP4891068B2 (ja) * 2004-03-31 2012-03-07 第一三共株式会社 1,2−シス−2−フルオロシクロプロパン−1−カルボン酸エステル類の製造法

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