JPH0662784B2 - 分子配向及びシラン架橋ポリエチレン成形体及びその製法 - Google Patents

分子配向及びシラン架橋ポリエチレン成形体及びその製法

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JPH0662784B2
JPH0662784B2 JP23925886A JP23925886A JPH0662784B2 JP H0662784 B2 JPH0662784 B2 JP H0662784B2 JP 23925886 A JP23925886 A JP 23925886A JP 23925886 A JP23925886 A JP 23925886A JP H0662784 B2 JPH0662784 B2 JP H0662784B2
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和雄 八木
均 万徳
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、分子配向及びシラン架橋ポリエチレン成形体
及びその製法に関するもので、より詳細には、ポリエチ
レンの延伸成形体に特有の高弾性率及び高引張強度を有
すると共に、耐熱性及び接着性の顕著に改善された成形
体及びその製法に関する。
(従来技術) ポリエチレンを繊維、テープ等に成形し、これを延伸す
ることにより、高弾性率、高引張強度を有する分子配向
成形体とすることは既に公知である。
一方、ポリオレフィンに耐熱性等を賦与することを目的
として、シラン架橋を行うことも既に知られており、例
えば特公昭48−1711号公報には、ポリエチレンに
ラジカル発生剤の存在下にシラン化合物をグラフトさせ
た後、シラノール縮合触媒の存在下水分に曝して架橋を
行うことが記載されている。また、特開昭54−111
54号公報には、シラングラフトポリオレフィン成形物
をシラノール縮合触媒と溶剤の混合液に浸漬して架橋処
理を迅速化させることが記載され、更に、特開昭52−
154872号公報には、シラングラフトポリオレフィ
ンの配向物を架橋後、抽出処理に賦することが記載され
ている。
(発明が解決しようとする問題点) しかしながら、ポリエチレンの延伸成形体、例えば繊
維、テープ等はポリエチレン本来の欠点、耐熱性及び接
着性に劣るという欠点をそのまま有している。
また、従来のポリエチレンのシラン架橋技術では、高弾
性率、高引張強度の延伸成形物は得られず、また耐熱性
の改良効果も不十分である。
一般に、ポリエチレンの分子配向により、或いはポリエ
チレンの架橋によりポリオレフィンの耐熱性が向上する
こと自体は公知であるが、この従来技術における耐熱性
の向上には自ら限界があり、所詮はポリエチレンの融点
が110乃至140℃の比較的低い範囲にあるという制
約を根本的には免れないものであって、本発明者等の知
る限り、ポリエチレンの成形体を160℃の温度に10
分間曝した後においては、殆んどのものが融解し、その
強度が失われるのである。
従って、本発明の目的は、耐熱性、接着性及び耐クリー
プ性の顕著に改善されたポリエチレン分子配向成形体を
提供するにある。
本発明の他の目的は、160℃の温度に10分間曝され
た場合にも融解することなく延伸成形体の形態が維持さ
れると共に、上記熱履歴後においても高い強度保持率が
維持されるような耐熱性を有する分子配向及びシラン架
橋ポリエチレン成形体を提供するにある。
本発明の更に他の目的は、樹脂複合材の強化繊維として
の用途に適した耐熱性、接着性及び耐クリープ性の組合
せを持ったシラン架橋ポリエチレン成形体及びその製法
を提供するにある。
(問題点を解決するための手段) 本発明者等は、極限粘度〔η〕が5dl/g未満のポリエ
チレンにラジカル開始剤の存在下、シラン化合物をグラ
フトした後押出成形し、次いで該押出物を延伸後もしく
は延伸中にシラノール縮合触媒を含浸させた後水分に曝
して架橋するときには、従来のポリエチレンの延伸成形
体や架橋成形体には全く認められない融解温度の向上現
象が認められる新規な分子配向成形体が得られること、
及びこの分子配向成形体においては、160℃の温度に
10分間曝露された場合にも融解することなく延伸成形
体の形態が維持されると共に、この熱履歴後においても
高い強度保持率が維持されることを見出した。また、こ
の延伸成形体では、ポリエチレン延伸成形体に特有の高
弾性率及び高引張り強度が維持されると共に、接着性及
び耐クリープ性も顕著に改善されることを見出した。
即ち、本発明によれば、分子配向及びシラン架橋された
ポリエチレンの成形体であって、該成形体は拘束状態で
示差走査熱量計で測定したとき、二回目昇温時の主融解
ピークとして求められる超高分子量ポリエチレン本来の
結晶融解温度(Tm)よりも少なくとも10℃高い温度に
少なくとも2個の結晶融解ピーク(Tp)を有すると共
に、全融解熱量当りのこの結晶融解ピーク(Tp)に基ず
く融解熱量が30%以上及び温度範囲Tm+35℃〜Tm+
120℃における高温側融解ピーク(Tp1)に基づく融
解熱量の総和が全融解熱量当り5%以上であることを特
徴とする成形体が提供される。
本発明によればまた、極限粘度〔η〕が5dl/g未満
のポリエチレン、シラン化合物、ラジカル開始剤及び希
釈剤を含む組成物を熱成形し、シラン化合物がグラフト
されたポリエチレンの成形物を延伸し、延伸中又は延伸
後に該成形物の延伸成形体中にシラノール縮合触媒を含
浸させ、次いで該延伸成形体を水分と接触させて架橋す
ることを特徴とする分子配向及びシラン架橋ポリエチレ
ン成形体の製法が提供される。
(作 用) 本発明は、ポリエチレンにシラン類をグラフトさせたも
のを成形し、この成形物を延伸した後シラン架橋を行う
と、この延伸架橋成形体を構成する少なくとも一部の重
合体鎖の融点が拘束条件下に向上するという驚くべき知
見に基ずくものである。
重合体の融点は、重合体中の結晶の融解に伴なうもので
あり、一般に示差走査熱量計での結晶融解に伴なう吸熱
ピーク温度として測定される。この吸熱ピーク温度は、
重合体の種類が定まれば一定であり、その後処理、例え
ば延伸処理や架橋処理等によってそれが変動することは
殆んどなく、変動しても、最も変動する場合として良く
知られている延伸熱処理でも高々15℃程度高温側へ移
動するに留まる。
添付図面第1乃至4図は、原料ポリエチレン(第1
図)、該ポリエチレンの延伸フイラメント(第2図)、
該ポリエチレンにシラン架橋を行った未延伸フイラメン
ト(第3図)及び本発明に従いシラングラフトポリエチ
レンを延伸した後架橋処理を行ったフイラメント(第4
図)の各々について拘束条件下に測定した示差走査熱量
計による吸熱曲線を示す。尚、処理条件の詳細について
は後述する例を参照されたい。
これらの結果から、ポリエチレンの単なる延伸物やシラ
ン架橋物では、未処理のポリエチレンと殆んど同じ約1
35℃に結晶融解に伴なう吸熱ピークを示し、またシラ
ン架橋物ではピーク面積(融解熱量)が未処理のものの
ピーク面積に比して減少しているのに対して、本発明に
よる延伸架橋成形体では、未処理のポリエチレンの融解
ピーク温度の位置には小さいピークが残留するが、大き
いピークはむしろかなり高温側に移行していることがわ
かる。
第5図は、第4図の試料をセカンド・ラン(第4図の測
定を行った後、2回目の昇温測定)に賦したときの吸熱
曲線を示す。第5図の結果から再昇温の場合には結晶融
解の主ピークは未処理のポリエチレンの融解ピーク温度
と殆んど同じ温度に表われ、第5図の測定時には試料中
の分子配向は殆んど消失していることから、第4図の試
料における吸熱ピークの高温側への移行は、成形体中で
の分子配向と密接に関連していることを示している。
本発明において、ポリエチレンの延伸とシラン架橋とに
よって、成形体を構成する少なくとも一部の重合体鎖の
結晶融解温度がこのように高温側に移行するという事実
は、結晶融解温度を高めるような手段が従来知られてい
なかったことからも、真に予想外で且つ新規な発見であ
った。
本発明の配向架橋成形体において、結晶融解温度が高温
側に移行する理由は、未だ十分には解明されるに至って
いないが、本発明者等はこの理由を次のように推定して
いる。即ち、シラングラフトポリエチレンを延伸操作に
賦すると、シラングラフト部分が選択的に非晶部とな
り、この非晶部を介して配向結晶部が生成する。次い
で、この延伸成形体をシラノール縮合触媒の存在下に架
橋させると、非晶部に選択的に架橋構造が形成され、配
向結晶部の両端がシラン架橋で固定された構造となる。
通常の延伸成形体では、配向結晶部両端の非晶部分から
結晶融解が進行するのに対して、本発明の延伸架橋成形
体では、配向結晶部両端の非晶部が選択的に架橋され、
重合体鎖が動きにくくなっているため、配向結晶部の融
解温度が向上するものと認められる。
この構造は、示差走査熱量計による観察でさらに以下の
様に特徴づけることができる。第6図には第4図に示さ
れた昇温状態での測定から第5図で示された昇温状態で
の測定すなわちセカンドランに移るための降温過程を利
用して測定した結晶化時の発熱曲線を示す。これより主
発熱ピークの高温側にショルダー又はブロードなサブピ
ークが観察される。又、2回目昇温時のセカンドランに
おいても(第5図)Tmピークの高温側にショルダーが観
察される。通常ポリエチレンでは溶解状態からの冷却過
程では、一本のシャープな発熱ピークが観察され、この
ピークの高温側にショルダー又はピークは観察されるこ
とはない。また通常の架橋ポリエチレンにおいてもピー
クはブロードになることはあっても同様に高温側にショ
ルダー又はピークが観察されることはない。セカンドラ
ンにおいてもTmの高温側に吸熱のショルダー、ピークが
観察されることは通常のポリエチレン、架橋ポリエチレ
ンにおいて共にない。つまりこの熱挙動が新規な配向架
橋構造の痕跡であり、すぐれた耐熱特性、耐クリープ特
性などに関係していると考えられる。
かくして、本発明においては、成形体が160℃のよう
な高温においても、単に形態が安定に保持されるばかり
ではなく、この熱履歴後にも高い強度保持率が達成され
るのである。
(発明の好適実施態様の説明) 本発明を、その理解が容易なように、原料、処理手段及
び目的物の順に以下に詳細に説明する。
原 料 本発明において用いるポリエチレンは、デカリン溶媒1
35℃における極限粘度〔η〕が5dl/g未満の範囲に
あるもので、エチレン或いはエチレンと少量の他のα−
オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチ
ル−1−ペンテン、1−ヘキセン等とを重合して得られ
る。
一方、グラフト処理に使用するシラン化合物としては、
グラフト処理と架橋処理とが可能なシラン化合物であれ
ば任意のものでよく、このようなシラン化合物は、ラジ
カル重合可能な有機基と加水分解可能な有機基との両方
を有するものであり、下記一般式 RnSiY4-n ……(1) 式中、Rはラジカル重合可能なエチレン系不飽和を含む
有機基であり、Yは加水分解可能な有機基であり、nは
1又は2の数である で表わされる。
ラジカル重合性有機基としては、ビニル基、アリル基、
ブテニル基、シクロヘキセニル基等のエチレン系不飽和
炭化水素基や、アクリルオキシアルキル基、メタクリル
オキシアルキル基等のエチレン系不飽和カルボン酸エス
テル単位を含有するアルキル基等を挙げることができる
が、ビニル基が好適である。加水分解可能な有機基とし
ては、アルコキシ基やアシルオキシ基等が挙げられる。
シラン化合物の適当な例は、これに限定されないが、ビ
ニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等である。
グラフト及び成形 本発明によれば、上記ポリエチレン、シラン化合物、ラ
ジカル開始剤及び稀釈剤を含む組成物を溶融押出等によ
り熱成型することによりシラングラフトと成形とを行
う。即ち、ラジカル開始剤と溶融混練時の熱との作用に
より、ポリエチレンにポリマーラジカルが発生し、この
ポリマーラジカルとシラン化合物との反応によりシラン
化合物のポリエチレンへのグラフトが生じる。
ラジカル開始剤としては、この種のグラフト処理に使用
されているラジカル開始剤は全て使用でき、例えば有機
ペルオキシド、有機ペルエステル、例えばベンゾイルペ
ルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミ
ルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,
5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3、
1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)
ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペル
アセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブ
チルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−
2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert
−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフエニル
アセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−
ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピ
パレート、クミルペルピパレートおよびtert−ブチルペ
ルジエチルアセテート、その他アゾ化合物、例えばアゾ
ビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート
がある。ポリエチレンの溶融混練条件下でグラフトを有
効に行うためには、ラジカル開始剤の半減期温度が10
0乃至200℃の範囲にあることが望ましい。
本発明では、シラングラフトポリエチレンの溶融成形を
可能にするために、上記成分と共に稀釈剤を配合する。
このような希釈剤としては、ポリエチレンに対する溶剤
や、ポリエチレンに対して相溶性を有する各種ワックス
状物が使用される。
溶剤は、好ましくは前記ポリエチレンの融点以上、更に
好ましくは融点+20℃以上の沸点を有する溶剤であ
る。
かかる溶剤としては、具体的には、n−ノナン、n−デ
カン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−テトラデカ
ン、n−オクタデカンあるいは流動パラフィン、灯油等
の脂肪族炭化水素系溶媒、キシレン、ナフタリン、テト
ラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシル
ベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ドデ
シルベンゼン、ビシクロヘキシル、デカリン、メチルナ
フタリン、エチルナフタリン等の芳香族炭化水素系溶媒
あるいはその水素化誘導体、1,1,2,2-テトラクロロエタ
ン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,2,3-
トリクロロプロパン、ジクロロベンゼン、1,2,4-トリク
ロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素
溶媒、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセ
スオイル、芳香族系プロセスオイル等の鉱油が挙げられ
る。
ワックス類としては、脂肪族炭化水素化合物或いはその
誘導体が使用される。
脂肪族炭化水素化合物としては、飽和脂肪族炭化水素化
合物を主体とするもので、通常分子量が2000以下、
好ましくは1000以下、更に好ましくは800以下の
パラフィン系ワックスと呼ばれるものである。これら脂
肪族炭化水素化合物としては、具体的にはドコサン、ト
リコサン、テトラコサン、トリアコンタン等の炭素数2
2以上のn−アルカンあるいはこれらを主成分とした低
級n−アルカンとの混合物、石油から分離精製された所
謂パラフィンワックス、エチレンあるいはエチレンと他
のα−オレフィンとを共重合して得られる低分子量重合
体である中・低圧ポリエチレンワックス、高圧法ポリエ
チレンワックス、エチレン共重合ワックスあるいは中・
低圧法ポリエチレン、高圧法ポリエチレン等のポリエチ
レンを熱減成等により分子量を低下させたワックス及び
それらのワックスの酸化物あるいはマレイン酸変性等の
酸化ワックス、マレイン酸変性ワックス等が挙げられ
る。
脂肪族炭化水素化合物誘導体としては、例えば脂肪族炭
化水素基(アルキル基、アルケニル基)の未端もしくは
内部に1個又はそれ以上、好ましくは1ないし2個、特
に好ましくは1個のカルボキシル基、水素基、カルバモ
イル基、エステル基、メルトカプト基、カルボニル基等
の官能基を有する化合物である炭素数8以上、好ましく
は炭素数12〜50又は分子量130〜2000、好ま
しくは200〜800の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂
肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪族メルカプタン、脂
肪族アルデヒド、脂肪族ケトン等を挙げることができ
る。
具体的には、脂肪酸としてカプリン酸、ラウリン酸、ミ
リスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン
酸、脂肪族アルコールとしてラウリルアルコール、ミリ
スチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアル
コール、脂肪酸アミドとしてカプリンアミド、ラウリン
アミド、パルミチンアミド、ステアリルアミド、脂肪酸
エステルとしてステアリル酢酸エステル等を例示するこ
とができる。
本発明において、前記ポリエチレン100重量部当りシ
ラン化合物は0.1乃至10重量部、特に0.2乃至
5.0重量部、ラジカル開始剤は触媒量、一般に0.01乃
至3.0重量部、特に0.05乃至0.5重量部及び稀釈剤
は1900乃至5重量部、特に900乃至10重量部の
量で使用するのがよい。シラン化合物の量が上記範囲よ
りも低い場合には、最終延伸架橋成形体の架橋密度が低
くなりすぎて、所期の結晶融解温度の向上が得られなく
なる傾向がある。一方、シラン化合物の量が上記範囲を
越える場合には、最終延伸架橋成形体の結晶化度が低下
し、機械的性質、即ち弾性率や引張強度が低下する傾向
がある。また、シラン化合物は効果であることから経済
的にも不利となる。また、稀釈剤の量が上記範囲よりも
低い場合には、溶融粘度が高くなり過ぎ、溶融混練や溶
融成形が困難となると共に、成形物の肌荒れが著しく、
延伸切れ等を生じ易い。一方、稀釈剤の量が上記範囲よ
りも多いと、やはり溶融混練が困難となり、また成形品
の延伸性が劣るようになる。
ポリエチレンへの上記各薬品の配合は、任意の手段で行
い得る。例えば、シラン化合物、ラジカル開始剤及び稀
釈剤を同時に配合し、溶融混練を行ってもよく、またシ
ラン化合物及びラジカル開始剤を先ず配合し、次いで稀
釈剤を配合する方法や、逆にポリエチレンに稀釈剤を先
ず配合し、次いでシラン化合物及びラジカル開始剤を配
合する方法等が用いられる。
溶融混練は一般に150乃至300℃、特に170乃至
270℃の温度で行なうのが望ましく、上記範囲よりも
低い温度では、溶融粘度が高すぎて、溶融成形が困難と
なり、また上記範囲よりも高い場合には、熱減成により
ポリエチレンの分子量が低下して高弾性率及び高強度の
成形体を得ることが困難となる。尚、配合はヘンシエル
ミキサー、V型ブレンダー等による乾式ブレンドで行っ
てもよいし、或いは単軸或いは多軸押出機を用いる溶融
混合で行ってもよい。
溶融成形は、一般に溶融押出成形により行われる。例え
ば、紡糸口金を通して溶融押出することにより、延伸用
フィラメントが得られ、またフラットダイ或いはリング
ダイを通して押出することにより、延伸用フィルム或い
はシート或いはテープが得られ、更にサーキュラーダイ
を通して押出することにより、延伸ブロー成形用パイプ
(パリソン)が得られる。本発明は特に、延伸フィラメ
ントの製造に有用であり、この場合、紡糸口金より押出
された溶融物にドラフト、即ち溶融状態での引き伸しを
加えることもできる。溶融樹脂のダイ・オリフィス内で
の押出速度Vと冷却固化した未延伸物の巻き取り速度
Vとの比をドラフト比として次式で定義することができ
る。
ドラフト比=V/V ……(2) かかるドラフト比は混合物の温度、温度及びポリエチレ
ンの分子量等によるが通常は3以上、好ましくは6以上
とすることができる。
勿論、溶融成形は押出成形のみに限定されず、各種延伸
成形容器等の製造の場合には、射出成形で延伸ブロー成
形用のプリフォームを製造することも可能である。成形
物の冷却固化は風冷、水冷等の強制冷却手段で行うこと
ができる。
延 伸 かくして得られるシラングラフトポリエチレンの未延伸
成形体を延伸処理する。延伸処理の程度は、勿論、成形
体のポリエチレンに少なくとも一軸方向の分子配向が有
効に付与されるようなものである。
シラングラフトポリエチレン成形体の延伸は、一般に4
0乃至160℃、特に80乃至145℃の温度で行うの
が望ましい。未延伸成形体を上記温度に加熱保持するた
めの熱媒体としては、空気、水蒸気、液体媒体の何れを
も用いることができる。しかしながら、熱媒体として、
前述した稀釈剤を溶出除去することができる溶媒でしか
もその沸点が成形体組成物の融点よりも高いもの、具体
的にはデカリン、デカン、灯油等を使用して、延伸操作
を行なうと、前述した稀釈剤の除去が可能となると共
に、延伸時の延伸むらの解消並びに高延伸倍率の達成が
可能となるので好ましい。
勿論、ポリエチレンから過剰の稀釈剤を除去する手段
は、前記方法に限らず、未延伸物をヘキサン、ヘプタ
ン、熱エタノール、クロロホルム、ベンゼン等の溶剤で
処理後延伸する方法、延伸物をヘキサン、ヘプタン、熱
エタノール、クロロホルム、ベンゼン等の溶剤で処理す
る方法によっても、成形物中の過剰稀釈剤の除去を有効
に行ない、高弾性率、高強度の延伸物を得ることができ
る。
延伸操作は、一段或いは二段以上の多段で行うことがで
きる。延伸倍率は、所望とする分子配向効果にも依存す
るが、一般に5乃至80倍、特に10乃至50倍の延伸
倍率となるように延伸操作を行えば満足すべき結果が得
られる。
フィラメント、テープ或いは一軸延伸等の一軸延伸操作
の場合には、周速の異なるローラ間で引張延伸を行えば
よく、また二軸延伸フィルムの場合には、周速の異なる
ローラ間で縦方法に引張延伸を行なうと共に、テンター
等により軸方向にも引張延伸を行う。また、インフレー
ション法による二軸延伸も可能である。更に、容器等の
立体成形物の場合には、軸方向への引張り延伸と周方向
への膨張延伸との組合せにより二軸延伸成形体を得るこ
とができる。
架橋処理 本発明によれば、上記延伸中或いは延伸後に成形物中に
シラノール縮合触媒を含浸させ、次いで延伸成形体を水
分と接触させて架橋を行わせる。
シラノール縮合触媒としては、それ自体公知のもの、例
えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテー
ト、ジブチル錫ジオクトエート等のジアルキル錫ジカル
ボキシレート;チタン酸テトラブチルエステル等の有機
チタネート;ナフテン酸鉛等を用いることができる。こ
れらのシラノール縮合触媒は、液体媒体中に溶解させた
状態で、未延伸成形体或いは延伸成形体と接触させるこ
とにより、これらの成形体中に有効に含浸させることが
できる。例えば、延伸処理を液体媒体中で行う場合に
は、この延伸用液体媒体中にシラノール縮合媒体を溶解
しておくことにより、延伸操作と同時に、シラノール縮
合触媒の成形体への含浸処理を行うことができる。本発
明方法において、成形体中に含まれるワックス類等の稀
釈剤は、シラノール縮合触媒の成形体中への一様な含浸
を助長するように作用するものと信じられる。
成形体中に含浸されるシラノール縮合触媒の量は、所謂
触媒量でよく、直接その量を規定することは困難である
が、一般には、未延伸或いは延伸剤の成形体と接触する
液体媒体中に、10乃至100重量%、特に25乃至7
5重量%の量でシラノール縮合触媒を添加し、この液体
媒体と成形体とを接触させることにより、満足すべき効
果が得られる。
延伸成形体の架橋処理は、シラノール縮合触媒を含浸さ
せたシラングラフトポリエチレンの延伸成形体を水分と
接触させることにより行われる。この架橋処理条件に関
して、格別の制限はないが、一般に低い処理温度では長
い処理時間が必要となることから、工業的には、50乃
至130℃の温度で、3乃至24時間、延伸成形体と水
分との接触を行わせるのが有利である。この目的のため
に、水分は熱水或いは熱水蒸気の形で延伸成形体に作用
させるのがよい。この架橋処理時に、延伸成形体を拘束
条件下におき、配向緩和を防止するようにすることもで
き、或いは逆に非拘束条件下において、或る程度の配向
緩和が生じるようにしてもよい。
尚、延伸成形体を架橋処理した後、更に延伸処理(通常
3倍以下)を行うと、引張強度等の機械的強度が更に改
善される。
分子配向−シラン架橋成形体 本発明による分子配向及びシラン架橋ポリエチレン成形
体は、拘束条件下において、ポリエチレン本来の結晶融
解温度(Tm)に比してはるかに高い温度にも結晶融解ピ
ーク(Tp)を示すという驚くべき特徴を有している。
超高分子量ポリエチレン本来の結晶融解温度(Tm)は、
この成形体を一度完全に融解した後冷却して、成形体に
おける分子配向を緩和させた後、再度昇温させる方法、
所謂示差走査型熱量計におけるセカンド・ランで求める
ことができる。
また、拘束条件下とは、成形体に積極的な緊張は与えら
れていないが、自由変形が防止されるように端部が固定
されている条件を言う。
前に説明した第4図から明らかな通り、本発明による成
形体は、ポリエチレン本来の結晶融解温度(Tm)よりも
少なくとも10℃高い温度に、少なくとも2個の結晶融
解ピーク(Tp)を有し、しかも全融解熱量当りこの結晶
融解ピーク(Tp)に基づく融解熱量が30%以上、特に
40%以上であるという特徴を有する。
一般に、本発明の成形体における結晶融解ピーク(Tp)
は、温度範囲Tm+35℃〜Tm+120℃における高温側
融解ピーク(Tp1)と、温度範囲Tm+10℃〜Tm+35℃
における低温側ピーク(Tp2)との2つに表われることが
多く、Tmの融解ピークそのものは著しく小さい。
尚、高温側融解部(Tp1)は成形体のシラングラフト量
に関係し、シラングラフト量が少ない場合には、融解曲
線に明確な極大点(ピーク)が現われず、ブロードな極
大点(ピーク)あるいは低温側融解部(Tp2)の高温側
にTm+35℃〜Tm+120℃に亙ってショルダーもしくは
すそ(テール)として現われることが多い。
又、Tmの融解ピークが極端に小さい時は、Tp1の融解ピ
ークショルダーに隠れ確認できない場合もある。仮にTm
に融解ピークがなくてもポリエチレン成形体の機能には
なんら差し障りはない。Tm+35℃+Tm+120℃にお
ける高温側融解ピーク(Tp1)と温度範囲Tm+10℃〜T
m+35℃における低温側融解ピーク(Tp2)はそれぞれ
試料の調整条件や、融点の測定条件によりさらに2つ以
上の融解ピークに分れる場合もある。
これらの高い結晶融解ピーク(Tp1,Tp2)は、ポリエチ
レン成形体の耐熱性を顕著に向上させるように作用する
ものであるが、高温の熱履歴後での強度保持率向上に寄
与するのは、高温側融解ピーク(Tp1)であると思われ
る。
従って、温度範囲Tm+35℃〜Tm+120℃の高温側融
解ピーク(Tp1)に基ずく融解熱量の総和は、全融解熱
量当り5%以上、特に8%以上であることが望ましい。
又、高温側融解ピーク(Tp1)に基づく融解熱量の総和
が上述の値を満している限りにおいては、高温側融解ピ
ーク(Tp1)が主たるピークとして突出して現われない
場合、つまり小ピークの集合体もしくはブロードなピー
クになったとしても、耐熱性は若干失なわれる場合もあ
るが、耐クリープ特性については優れている。
本発明において、上述した結晶融解ピークの高温側への
移行は、単なる延伸ポリエチレン成形体や単なる延伸架
橋ポリエチレン成形体では起こらず、このような稀釈剤
を含んだポリエチレン組成物へのシランのグラフトと延
伸による分子配向及びシランの架橋とをこの順序に組合
せて行うことにより可能となるものである。
本発明における融点及び結晶融解熱量は以下の方法によ
り測定した。
融点は示差走査熱量計で以下の様に行なった。示差走査
熱量計はDSCII型(パーキンエルマー社製)を用い
た。試料は約3mgを4mm×4mm、厚さ100μのアルミ
板に巻きつけることにより配向方向に拘束した。次いで
アルミ板に巻きつけた試料をアルミパンの中に封入し、
測定用試料とした。又、リフアレンスホルダーに入れる
通常空のアルミパンには試料に用いたと同じアルミ板を
封入し熱バランスを取った。まづ試料を30℃で約1分
間保持し、その後10℃/min の昇温速度で250℃ま
で昇温し、第1回目昇温時の融点測定を完了した。引き
続き250℃の状態で10分間保持し、次いで20℃/
min の降温速度で降温し、さらに30℃で10分間試料
を保持した。次いで二回目の昇温を10℃/min の昇温
速度で250℃まで昇温し、この際2回目昇温時(セカ
ンドラン)の融点測定を完了した。このとき融解ピーク
の最大値をもって融点とした。ショルダーとして現われ
る場合はショルダーのすぐ低温側の変曲点とすぐ高温側
の変曲点で接線を引き交点を融点とした。
また吸熱曲線の60℃と240℃との点を詰び該直線
(ベースライン)と二回目昇温時の主融解ピークとして
求められるポリエチレン本来の結晶融解温度(Tm)より
10℃高い点に垂線を引き、これらによって囲まれた低
温側の部分をポリエチレン本来の結晶融解(Tm)の基づ
くものとし、又高温側の部分を本発明成形体の機能を発
現する結晶融解(Tp)に基づくものとし、それぞれの結
晶融解熱量は、これらの面積より算出した。又、Tp1
よびTp2の融解に基ずく融解熱量も上述の方法に従い、T
m+10℃からの垂直とTm+35℃からの垂線に囲まれ
た部分をTp2の融解に基づく融解熱量のものとし高温側
部分をTp1の融解に基づく融解熱量のものとして同様に
算出した。
成形体における分子配向の程度は、X線回折法、複屈折
法、螢光偏光法等で知ることができる。本発明の延伸シ
ラン架橋フィラメントの場合、例えば呉祐吉、久保輝一
郎:工業化学雑誌第39巻、992頁(1939)に詳
しく述べられている半価巾による配向度、即ち式 式中、H゜は赤道線上最強のパラトロープ面のテバイ環
に沿っての強度分布曲線の半価幅(゜)である。
で定義される配向度(F)が0.90以上、特に0.95以上と
なるように分子配向されていることが、耐熱性や機械的
性質の点で望ましい。
また、シランのグラフト量は、延伸架橋成形体を135
℃の温度でp−キシレン中で4時間抽出処理を行って、
未反応のシランや含有される稀釈剤を抽出除去し、重量
法或いは原子吸光法でSiの定量を行うことにより求め
ることができる。本発明において、シラングラフト量
は、ポリエチレン当りのSi重量%として表わして、0.
01乃至5重量%、特に0.035乃至3.5重量%の範囲に
あることが、耐熱性の点で望ましい。即ち、グラフト量
が上記範囲よりも少ない場合には架橋密度が本発明の場
合に比して小さく、一方上記範囲よりも多い場合には結
晶性が低下して、何れも耐熱性が不十分となる。
本発明における分子配向−シラン架橋成形体では、成形
体を構成する少なくとも一部の重合体鎖の結晶融解温度
が前述したように著しく高温側に移行していることか
ら、極めて耐熱性に優れており、160℃で10分間の
熱履歴を与えた後での強度保持率が25%以上、特に5
0%以上であるという耐熱性を示す。
また本発明の成形体は耐熱クリープ特性、例えば荷重;
30%破断荷重、温度;70℃の条件下で未架橋物が1
分間放置後50%以上の伸びを示すに対して該成形体は
30%以下、更には20%以下と極めて優れている。
また、この成形体は、グラフトされ且つ架橋されたシラ
ン類を含むことから、接着性、特に種々の樹脂類との接
着性にも優れており、この事実は後述する例を参照する
ことにより容易に了解されよう。
更に、この成形体はポリエチレンから成り、しかも有効
に分子配向が付与されていることから、機械的特性にも
優れており、例えば延伸フィラメントの形状で5GPa
以上の弾性率と0.5GPa以上の引張強度とを示す。
本発明の分子配向及びシラン架橋ポリエチレン成形体
は、耐熱性、機械的特性、接着性等の組合せに優れてい
る。かくして、フィラメントの形態の成形体を、エポキ
シ樹脂、不飽和ポリエステル等の各種樹脂や合成ゴム等
に対する補強繊維として使用すると、従来のポリエチレ
ン延伸フィラメントに比して、耐熱性や接着性の点で著
しい改善がなされることが明白であろう。又、フィラメ
ントは高強度でしかも密度が小さいことから従来のガラ
ス繊維、炭素繊維、ポロン繊維、芳香族ポリアミド繊
維、芳香族ポリイミド繊維等を用いた成形物に比べ、特
に軽量化を計れるので有効である。ガラス繊維等を用い
た複合材料と同様に、UD(Unit Directional)積層板、SM
C(Sheet Molding Compound)、BMC(Bulk Molding Compou
nd)等の成形加工を行うことができ、自動車部品、ボー
トやヨットの構造体、電子回路用基板等の軽量、高強度
分野での各種複合材料用途が期待される。
(実施例) 実施例 1 グラフト化および紡糸 ポリエチレンの粉末 (密度:0.955 g/cm3, 極限粘度〔η〕=2.30dl/g) 100重量部 ビニルトリメトキシシラン (信越化学製) 10重量部 2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘ
キサン (日本油脂製:商品名 パーヘキサ25B) 0.1重量部 を、均一に配合した後、ポリエチレン100重量部に対
して、 パラフィンワックス粉末 (日本精機製:商品名、ルバックス 1266、融点69℃) 33重量部 を添加混合し、混合物を調製した。
次いで該混合物をスクリュー式押出機(スクリュー径=
20mmφ、L/D=25)を用いて、設定温度200℃
で溶融混練を行ない、引き続き、該溶融物をオリフィス
径1mmのダイより紡糸し、シラングラフト完了した。紡
糸繊維は180cmのエアーギャップで室温の空気にて冷
却固化し、末延伸ポリエチレンシラングラフト繊維とし
た。この未延伸糸は1800デニールであり、紡糸時の
ドラフト比率は36.4であった。また、この際の巻き取り
速度は90 m/minであった。
シラングラフト量の定量 上記方法にて調製された未延伸グラフト繊維約8gを1
35℃に加熱保持したp−キシレン200ccに溶解した。
次いで常温にて過剰のヘキサン中にポリエチレンを析出
させ、パラフィンワックスと未反応シラン化合物を除去
した。この後、重量法にてSi重量%で求めたグラフト
量は、1.23重量%であった。
延 伸 前記の方法でポリエチレン混合物から紡糸されたグラフ
ト化未延伸繊維を次の条件で延伸し配向延伸繊維を得
た。三台のゴデットロールを用いてn−デカンを熱媒と
した延伸槽にて二段延伸を行った。このとき第一延伸槽
内温度は110℃、第2延伸槽内温度は120℃であ
り、槽の有効長はそれぞれ50cmであった。延伸に際し
ては第1ゴデットロールの回転速度を0.5m/minとして第
3ゴデットロールの回転数を変更することにより、所望
の延伸比の繊維を得た。又、第2ゴデットロールの回転
速度は、安定延伸可能な範囲で適宜選択した。但し、延
伸比は第1ゴデットロールと第3ゴデットロールとの回
転比より計算して求めた。
得られた繊維を減圧下、室温にて乾燥し延伸ポリエチレ
ンシラングラフト繊維とした。
架橋触媒の含浸 前記方法で調製されたシラン化合物グラフトポリエチレ
ンの配向繊維をさらに架橋する場合には延伸時第2延伸
槽に熱媒してn−デカンおよびn−デカンと等量のジブ
チル錫ジラウレートの混合物を用い、パラフィンワック
スを抽出すると同時に、ジブチル錫ジラウレートを繊維
中に含浸した。得られた繊維は、減圧化室温にてデカン
臭のなくなるまで乾燥した。
架 橋 この後繊維は沸水中で12時間放置して架橋を完了させ
た。
ゲル分率の測定 上記方法にて得られたシラン架橋延伸超高分子量ポリエ
チレン繊維約0.4gをパラキシレン200mlの入ってい
るコンデンサーを装置した三角フラスコに投入し、4時
間沸騰状態にて撹拌した。次いで不溶物をステンレス製
300meshの金綱でロ過した。80℃の減圧下で乾燥
後、秤量し不溶物の重量を求めた。ゲル分率は以下の式
で求めた。
上記の調製試料のゲル分率は79.4%であった。
引張弾性率、引張強度および破断点伸度はインストロン
万能試験1123型(インストロン社製)を用いて室温
(23℃)にて測定した。クランプ間の試料長は100
mmで引張速度100mm/min とした。但し、引張弾性率
は初期弾性率である。計算に必要な繊維断面積はポリエ
チレンの密度を0.96g/cm3として繊維の重量と長さを測
定して求めた。
この様にして得られたシラン架橋延伸ポリエチレン繊維
の物性を表1に示す。
2回目昇温等の主融解ピークとして求められる本来の結
晶融解温度Tmは128.0℃であり、Tpに基づく融解熱量の
全結晶融解熱量に対する割合、及びTp1に基づく融解熱
量の全結晶熱量に対する割合は、それぞれ47%,9.7
%であった。
第1図には、実施例1で用いたポリエチレンを、200
℃で厚さ100μのプレスシートに成形したものの第1
回目昇温時の融解特性曲線を示した。第2図には後述す
る比較例1で調製した未グラフト延伸ポリエチレン繊維
の第1回目昇温時の融解特性曲線を示した。また、第3
図には実施例1でシラングラフトされた未延伸糸のパラ
フィンワックスを常温ヘキサンで抽出しプレス成形にて
プレスシートとし、次いでジブチル錫ジラウレートを含
浸させさらに実施例1の方法で架橋した試料の第1回目
昇温時の融解特性曲線を示した。そして第4図には実施
例1にて調製したシラン架橋延伸超高分子量ポリエチレ
ン繊維の第1回目昇温時の融解特性曲線を、さらに第5
図には、該繊維の第2回目昇温時(セカンドラン)の融
解特性曲線を示した。
また、第6図には第1回目昇温時から第2回目昇温に移
る降温時の結晶化特性曲線を示した。
熱履歴後の強度保持率 熱履歴試験は、ギヤーオープン(パーフェクトオープ
ン:田葉井製作所製)内に放置することによって行なっ
た。試料は、約3mの長さでステンレス枠の両端に複数
個の滑車を装置したものに折り返しかけて試料両端を固
定した。この際試料両端は試料がたるまない程度に固定
し、積極的に試料には張力をかけなかった。結果を表2
に示す。
比較例 実施例1で用いたポリエチレン粉末100重量部と、パ
ラフィンワックスの粉末33重量部とを実施例1に記載
の方法で紡糸した。
この時、ドラフト比は25倍で未延伸糸繊度は550デ
ニールであった。
次いで同様に延伸し、延伸繊維を得た。得られた繊維の
物性を表3に示す。
また本繊維(試料−2)の1回目昇温時のDSC融解特
性曲線を第2図に示した。
2回目昇温時の主融解ピークとして求められる本来の全
結晶融解温度Tmは、131.8℃で、Tpに基づく融解熱量の
全結晶融解熱量に対する割合2.1%、及びTp1に基づ
く融解熱量の結晶融解熱量に対する割合は0.0%であ
った。
熱履歴後の強度保持率の測定は、実施例1の<熱履歴後
の強度保持率>の項に記載した方法で行なったがオーブ
ン温度160℃で放置時間10分を待たずして完全に融
解した。
比較例 2 比較例2で用いたポリエチレンの粉末:100重量部と
実施例1に記載されたビニルトリメトキシシランとジク
ミルパーオキサイド(三井石油化学工業製、商品名 三
井DCP)をそれぞれ1.0重量部および0.03重量部を
均一に混合し、この後20mmの押出機により設定温度1
85℃で造粒を行ないグラフト化ペレットを得た。次い
で同様に比較例2で用いたポリエチレン粉末:100重
量部にジブチル錫ジラウレート1.0重量部を均一に混
合し、上述の方法により設定温度190℃で造粒を行な
い、架橋触媒マスターバッチを得た。このあと、グラフ
ト化ペレット95重量部と架橋触媒マスターバッチ5重
量とを均一に混合し、25mmのスクリューを備えた紡糸
機にて設定温度270℃にて紡糸を試みた。しかしなが
らポリエチレンは紡糸機の中で固化し、紡糸することは
できなかった。
比較例 3 比較例2で調製したシラングラフト化ペレットを用い、
メルトテンションテスター(東洋精機社製)にて紡糸し
グラフト化末延伸糸を得た。このときノズル径は2mmで
設定温度は250℃であった。このあと次の条件で延伸
し配向延伸繊維を得た。一対のゴデットロールを用いて
トリエチレングリコールを熱媒とした延伸槽にて延伸を
行なった。このとき延伸槽内温度は102℃で槽の有効
長は50cmであった。送り出しゴデットロールの回転速
度は0.5m/minであり延伸倍率は実施例1に記載の方
法にて求めた。得られた延伸繊維は温水にて洗滌し室温
にて乾燥した。次に該延伸糸は70cmHgの減圧下で30
重量%のジブチル錫ジラウレートのnデカン溶液の中に
浸漬し水架橋触媒を含浸させた。得られた水架橋触媒含
浸グラフト化延伸繊維はこのあと沸水中で一昼夜放置し
て水架橋を完了した。この様にして得られたシラン架橋
延伸ポリエチレン繊維の物性を表4に示す。
又、示差走査熱量計にて二回目昇温時の主融解ピークと
して求められるポリエチレン本来の結晶融解温度Tmは、
131.5℃であり、Tpに基づく融解熱量の全結晶融解熱量
に対する割合およびTp1に基づく融解熱量の全結晶融解
熱量に対する割合いはそれぞれ6.4%と0%であっ
た。ポリエチレン本来の結晶融解温度Tmは、架橋延伸配
向の結果にもかかわらず高融点化することができずTp2
の領域に主たるピークを持つことができなかった。また
Tp1の領域には融解にともなうピーク、ショルダーなど
の痕跡を認めることはできなかった。また、二回目昇温
に移るための再結晶化時の発熱特性曲線、二回目昇温時
の吸熱特性曲線(セカンドラン)において本発明成形体
特有のサブピークは認められなかた。
一回目昇温時の吸熱特性曲線、二回目昇温に移る過程で
の発熱特性曲線、そして二回目昇温時の吸熱特性曲線を
それぞれ第7図〜第9図に示す。第7図〜第9図から明
らかなように、本発明の延伸成形体に認められる主ピー
クに対する高温側の特徴あるピークもしくはショルダー
等は本比較例の延伸成形体では全く認められなかった。
実施例1の方法で求めたゲル分率は3.5%であった。
また該繊維は140℃で溶融し高温での引張特性の保持
現象を示さなかった。
【図面の簡単な説明】
第1図は原料ポリエチレンの融解特性曲線を示す線図、 第2図は第1図のポリエチレンの延伸フィラメントの融
解特性曲線を示す線図、 第3図は第1図のポリエチレンにシラングラフトを行っ
た延伸フィラメントの融解特性曲線を示す線図、 第4図は第1図のポリエチレンのシラングラフト及び延
伸を行った後、架橋したフィラメントの融解特性曲線を
示す線図、 第5図は第3図の試料を2回目の昇温測定に付したとき
の融解特性曲線を示す線図、 第6図は第3図の試料を1回目の降温測定に付したとき
の結晶化特性曲線を示す線図、 第7図は、比較例3の分子配向及びシラン架橋ポリエチ
レンフィラメントの融解特性曲線を示す線図、 第8図は第7図の試料の結晶化特性曲線を示す線図、 第9図は第7図の試料を2回目の昇温測定に付したとき
の融解特性曲線を示す線図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】極限粘度〔η〕が5dl/g未満のポリエチ
    レンに分子配向及びシラン架橋を付与した成形体であっ
    て、 該成形体は拘束状態で示差走査熱量計で測定したとき、 二回目昇温時の主融解ピークとして求められるポリエチ
    レン本来の結晶融解温度(Tm)よりも少なくとも10℃
    高い温度に少なくとも2個の結晶融解ピーク(Tp)を有
    すると共に、全融解熱量当りのこの結晶融解ピーク(T
    p)に基ずく融解熱量が30%以上及び温度範囲Tm+3
    5℃〜Tm+120℃における高温側融解ピーク(Tp1) に
    基づく融解熱量の総和が全融解熱量当り5%以上である
    ことを特徴とする成形体。
  2. 【請求項2】極限粘度〔η〕が5dl/g未満のポリエチ
    レン、シラン化合物、ラジカル開始剤及び稀釈剤を含む
    組成物を熱成形し、シラン化合物がグラフトされたポリ
    エチレンの成形物を延伸し、延伸中又は延伸後に該成形
    物中にシラノール縮合触媒を含浸させ、次いで該延伸成
    形体を水分と接触させて架橋することを特徴とする分子
    配向及びシラン架橋ポリエチレン成形体の製法。
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