JPH0657056A - 超高分子量ポリプロピレン組成物 - Google Patents

超高分子量ポリプロピレン組成物

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JPH0657056A
JPH0657056A JP3446491A JP3446491A JPH0657056A JP H0657056 A JPH0657056 A JP H0657056A JP 3446491 A JP3446491 A JP 3446491A JP 3446491 A JP3446491 A JP 3446491A JP H0657056 A JPH0657056 A JP H0657056A
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polypropylene
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木 和 雄 八
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 超高分子量ポリプロピレン繊維が本来有する
熱的性質、耐クリープ性、高破断エネルギー性を損なう
ことなく、引張り特性、特に引張り強度に優れた超高分
子量ポリプロピレン延伸成形体を形成しうる組成物を提
供する。 【構成】 極限粘度[η]が少なくとも5dl/g以上
である超高分子量ポリプロピレン85〜99.5重量部
と、極限粘度[η]が少なくとも2dl/g以上である
ポリエチレン0.5〜15重量部とからなる混合物と、
該混合物100重量部に対し、9900〜567重量
部の流動性改良剤とを含むことを特徴とする超高分子量
ポリプロピレン組成物。前記ポリエチレンは、極限粘度
[η]が少なくとも5dl/g以上の超高分子量ポリエ
チレンであることを特徴とする上記記載の超高分子量ポ
リプロピレン組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、超高分子量ポリプロピレ
ン組成物に関し、さらに詳しくは、優れた諸特性を有す
る超高分子量ポリプロピレン延伸成形体を、紡糸・延伸
法によって調製する際に用いられる超高分子量ポリプロ
ピレン延伸成形体形成用組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】超高分子量ポリエチレンを繊維あ
るいはテープ等に成形し、これを延伸することにより、
高弾性率および高引張り強度を有する延伸成形体が得ら
れることは既に公知であり、数多くの特許が公開されて
いる。たとえば、特開昭56−15408号公報には、
超高分子量ポリエチレンの稀薄溶液を紡糸した後、得ら
れたフィラメントを延伸するという、いわゆるゲル紡糸
・超延伸法に関する方法が示されている。また、特開昭
58−5228号公報には、非揮発性溶液を用いて超高
分子量熱可塑性結晶性重合物の稀薄溶液を調製し、これ
を紡糸することによりキセロゲル繊維を形成した後に、
延伸するという方法が示されている。この方法は、前述
したゲル紡糸・超延伸法と基本的には同じ手法ではある
が、超高分子量熱可塑性重合物として超高分子量ポリエ
チレンを用いた場合には、弾性率が100GPa以上で
あり、しかも引張り強度が3GPa以上であるような高
弾性率、高強度の延伸成形体を得ることができる。
【0003】このように超高分子量ポリエチレンの場合
にあっては、稀薄溶液を媒介とすることにより、高弾性
率および高引張り強度を有する繊維の製造方法がほぼ確
立されており、その原理については日本レオロジー学会
誌(松生,Vol.13,No.1,P4〜15,1985) に詳細に解説さ
れている。この論文によれば、製造された繊維が高弾性
率および高引張り強度を発現するためには、その分子鎖
がある程度伸び切ったいわゆる「伸びきり鎖結晶」を有
していなければならず、この「伸びきり鎖結晶」は、超
高分子量分子鎖を従来の延伸倍率(6〜12倍)よりは
るかに大きい延伸倍率の超延伸法によって形成し得ると
している。そして、この超延伸性は、延伸前の未延伸糸
の結晶、すなわちラメラと隣接するラメラとの間に存在
する分子どうしの絡み合い(エンタングルメント)が存
在することによって達成されると考えられている。
【0004】そしてまた上記論文には、 超稀薄溶液においては、超高分子量ポリエチレンはエ
ンタングルメントを形成し得ないことから分子どうしの
相互作用がなく、これによって延伸性を示さないこと、 高濃度溶液においてはエンタングルメントの数が多す
ぎることから分子どうしが絡み合い、これによって延伸
性を示さないこと、 エンタングルメントは分子どうしの絡み合いであるた
め延伸性を支配しているものの、逆に「伸びきり鎖結
晶」となる際には欠陥となること等が報告されている。
したがって、高弾性率および高引張り強度を有する繊維
を得るには、このエンタングルメントの数を最少限にす
ることが必要であり、このためには超高分子量を有する
重合体を原料として用いて、この超高分子量重合体の稀
薄溶液から調製される未延伸繊維を延伸することが好ま
しい。またこのように超高分子量重合体を原料として用
いることは、得られる高強度繊維にとって分子末端が当
然欠陥となるという点に鑑みても好ましいといえる。こ
の原理は、本報告における実験結果や、他の多くの研究
者らの実験結果によって裏付けされている。
【0005】一方、ポリプロピレンにあっても高弾性率
および高引張り強度を有する繊維を得るために数々の研
究が行われており、前述したポリエチレンにて成功した
種々の調製手法がポリプロピレンにも適宜改良を加えら
れて適用されている。
【0006】ここで、ポリプロピレンとポリエチレンと
の理論強度を比較すると、ポリプロピレンは18GPa
(「繊維と工業」Vol.40,P.407〜418,1984)であり、一
方ポリエチレンは32GPaであり、理論的にはポリプ
ロピレンはポリエチレンの約半分の強度を有する。ま
た、現在におけるポリエチレンの高強度繊維の到達強度
が前述した松生らの報告によれば約6GPaに達してい
ることから、ポリプロピレンにおいてもこの半分程度、
すなわち約3GPa程度の強度は充分到達し得ると考え
られる。
【0007】ここで、従来知られている高強度ポリプロ
ピレン繊維の製造方法としては、まずポリエチレンにて
成功したゾーン延伸法をポリプロピレンに適用した例と
して、功木らの報告(Journal of Applied Polymer Sci
ence,Vol.28,P179〜189,1983) があり、これは予め従来
の溶融紡糸法などで調製した繊維を局所加熱炉を使用し
て1〜2mmの部分を加熱し、当該部分を延伸すること
により超延伸を行う方法である。この方法によれば、分
子量47.5万のポリプロピレンを使用した場合に、1
6.9GPaの弾性率と、0.74GPaの引張り強度を
有するポリプロピレン繊維が得られている。
【0008】また、前述したゲル紡糸・超延伸法をポリ
プロピレンに適用した例としては、Peguy とManleyの報
告(Polymer Communications,Vol.25,P39〜42, 1984) が
あり、この方法によれば、Smith とLemstra の超高分子
量ポリエチレンの場合の例(Journal of Polymer Bullet
in,Vol.1,733,1979)と同様に、0.75〜1.5%W/W
の溶液によってゲル紡糸・超延伸を行い、36GPaの
弾性率と1.03GPaの引張り強度を有するポリプロ
ピレン繊維が得られている。
【0009】さらに、前記特開昭58−5228号公報
には、前述したポリエチレンの実施例と同様にポリプロ
ピレンの実施例についても開示されており、極限粘度1
8dl/g(分子量330万)の超高分子量ポリプロピ
レンの6%重量濃度の溶液から弾性率が23.9GPa
であり、引張り強度が1.04GPaであるポリプロピ
レン繊維の製造に成功している。
【0010】ところが、このような従来の高強度ポリプ
ロピレン繊維の調製方法を検討してみると、いずれにあ
ってもポリプロピレン延伸ヤーンあるいはテープの弾性
率および引張り強度は、それぞれ7〜10GPa、0.
5〜1.04GPaであり、前述した3GPaという値
に照してみれば、その引張り強度はほとんど改良されて
いないのが実情である。
【0011】この引張り強度の改良に成功した例とし
て、金元らの報告(日本繊維学会,昭和62年度年次大会
研究発表会予稿集)があり、360万の分子量の超高分
子量ポリプロピレンを使用して、引張り強度2.3GP
aを有する超高分子量ポリプロピレン延伸成形体が得ら
れている。この方法は、大きく分けて以下の3つの工程
から構成されている。 [第1工程]:1重量%以下の超高分子量ポリプロピレ
ン溶液より溶媒を蒸発除去することにより、いわゆるソ
ルベントキャストフィルムを調製する。これは、前述し
たゲル繊維、キセロゲル繊維の調製工程と原理的には同
じと考えられる。 [第2工程]:前記キャストフィルムをポリエチレン製
のビュレットに挾んで擬メルトの状態で固相押出しす
る。このときキャストフィルムはコニカルダイを通過さ
せることにより固相延伸され、その固相延伸比(ED
R)は約6倍である。 [第3工程]:固相押し出しフィルムを通常の引張り延
伸に供することにより、固相延伸比×引張り延伸比=約
72倍で延伸して、上述した引張り強度約2.3GPa
の高強度ポリプロピレン繊維を得ている。
【0012】このようにゲル紡糸・超延伸法と原理的に
は同じ方法にて調製された金元らの超延伸成形体が著し
くその引張り強度を改良している理由としては、前記
[第2工程]にあると考えられる。すなわち、コニカル
ダイを通過させ、ビュレット中で固相延伸することは、
原理的には引張り伸張変形を受けるわけであるからゲル
紡糸・超延伸法で行われている引張り延伸と同じ変形で
あるが、大きく相違することは、試料がいかに弱く脆性
的なものであっても、その両側から靭状にビュレットが
挾み込み試料を損傷破断することなく延伸し得る点にあ
る。
【0013】換言すれば、ゲル紡糸・超延伸法によって
ポリプロピレン繊維を調製しようとすると、引張り延伸
操作の低倍率延伸時に高強度化に影響する致命的な欠損
を延伸繊維に与えていると考えられる。すなわち、ポリ
プロピレンから調製されたゲル繊維の構造は、ポリエチ
レンから得られるゲル繊維と根本的に異なり、ある程度
の配向構造となって繊維強度が増加して延伸操作に耐え
られるようになるまでは通常の引張り延伸には適してお
らず、延伸初期で引張り延伸応力が繊維強度を凌駕して
見掛上延伸できたとしても、少なくとも延伸された繊維
の高強度化には致命的な欠陥が発生しているのである。
【0014】したがって、上記のようにビュレット中に
超高分子量ポリプロピレン繊維を挾んで、コニカルダイ
にて固相延伸をすることは、繊維の高強度化にはなるほ
ど合理的な手法ではあるが、超高分子量ポリプロピレン
繊維をビュレット中に挾んでコニカルダイにて固相延伸
することは、超高分子量ポリプロピレンから連続化して
繊維を製造する場合、すなわち工業化の立場から見れ
ば、生産性およびコストの点で極めて不利であると言わ
ざるを得ない。
【0015】このような点に鑑みて本発明者らは、優れ
た熱的性質、耐クリープ性、高破断エネルギー性を有す
るポリプロピレン繊維を、紡糸・延伸法という生産性お
よびコストの面で優れた手法により得るべく鋭意研究し
たところ、超高分子量ポリプロピレンは、超高分子量ポ
リエチレンと比較して、紡糸原液を紡糸ノズルから吐出
した後に冷却させて結晶化させるのに非常に長時間を要
し、これが超高分子量ポリプロピレンの成形性を著しく
困難にしていることを見出した。
【0016】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に伴な
う問題点を解決しようとするものであって、超高分子量
ポリプロピレン繊維が本来有する熱的性質、耐クリープ
性、高破断エネルギー性を損なうことなく、引張り特
性、特に引張り強度に優れた超高分子量ポリプロピレン
延伸成形体を形成しうるような超高分子量ポリプロピレ
ン組成物を提供することを目的としている。
【0017】
【発明の概要】本発明に係る超高分子量ポリプロピレン
組成物は、極限粘度[η]が少なくとも5dl/g以上
である超高分子量ポリプロピレン(A)85〜99.5
重量部と、極限粘度[η]が少なくとも2dl/g以上
であるポリエチレン(B)0.5〜15重量部とからな
る混合物と、該混合物100重量部に対し、9900〜
567重量部の流動性改良剤(C)とを含むことを特徴
としている。
【0018】ここで前記のようなポリエチレン(B)
は、極限粘度[η]が少なくとも5dl/g以上の超高
分子量ポリエチレンであることが好ましい。
【0019】
【発明の具体的説明】以下本発明に係る超高分子量ポリ
プロピレン組成物について具体的に説明する。
【0020】超高分子量ポリプロピレン(A) 本発明において用いられる超高分子量ポリプロピレン
は、デカリン溶媒中135℃で測定した極限粘度[η]
が少なくとも5dl/g以上、好ましくは10dl/g
以上である。この極限粘度[η]が5dl/g未満であ
ると、分子鎖長が不足するために引張り強度に優れた延
伸成形体を得ることができなくなるため好ましくない。
一方、極限粘度[η]の上限は特に限定されないが、3
0dl/gを超えると溶解性に乏しくなり、高濃度下で
のドープの粘度が極めて高く、メルトフラクチャ等の原
因によって紡糸安定性に劣ることから好ましくない。
【0021】本発明における超高分子量ポリプロピレン
としては、配位アニオン重合により得られるプロピレン
単独重合体、あるいはプロピレンと少量(たとえば10
モル%以下)の他のα- オレフィン、たとえばエチレ
ン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-
ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等を共重合体としたプ
ロピレン系共重合体が用いられる。
【0022】ポリエチレン(B) 本発明において用いられるポリエチレンは、超高分子量
ポリプロピレンを延伸する際に、該超高分子量ポリプロ
ピレンの結晶化速度を促進する役割を果している。この
ようなポリエチレンは、デカリン溶媒中135℃で測定
した極限粘度[η]が少なくとも2dl/g以上、好ま
しくは5dl/g以上、より好ましくは10dl/g以
上であることが望ましい。この極限粘度[η]が2dl
/g未満であると、ポリエチレンと超高分子量ポリプロ
ピレンとの分子間の相互作用が不足するために結晶化速
度の促進効果を充分に発揮できないため好ましくない。
一方ポリエチレンの極限粘度[η]の上限は特に限定さ
れないが、30dl/gを超えると溶解性に乏しく、紡
糸原液中でゲル状物を形成してしまい紡糸安定性に劣る
ことから好ましくない。
【0023】本発明におけるポリエチレンとしては、配
位アニオン重合により得られるエチレン単独重合体、あ
るいはエチレンと少量(たとえば10モル%以下)の他
のα-オレフィン、たとえばプロピレン、1-ブテン、4-
メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オク
テン、1-デセン等を共重合体としたエチレン系共重合体
が用いられる。
【0024】本発明では、上記のように超高分子量ポリ
プロピレンとポリエチレンとからなる超高分子量ポリプ
ロピレン組成物では、ポリエチレンは該組成物の結晶化
速度を促進する役割を果しているが、流動性改良剤を含
む超高分子量ポリプロピレン組成物すなわち紡糸原液の
結晶化速度は以下のようにして示差走査熱量計を用いて
測定することができる。
【0025】まず紡糸原液を加温溶解状態で銀製の密閉
型溶液セルに入れ、このセルを高感度示差走査熱量計の
サンプルホルダーに装着する。高感度示差走査熱量計と
しては、たとえばセイコー電子工業(製)高感度示差走
査熱量計SS10型を用いることができる。密封セルを
示差走査熱量計に装着した後、130〜240℃程度の
紡糸温度に密封セルを急速昇温する。この温度に密封セ
ルを、紡糸原液の調製時の状態に回復するのに充分な時
間(たとえば15分間)保持する。
【0026】次いでこの密封セルを、液体窒素を冷媒と
して急速に冷却し、急速降温開始点から超高分子量ポリ
プロピレンの結晶化に伴う発熱ピーク出現までの時間
(T)を測定し、この時間によって結晶化速度を定量的
に評価する。
【0027】たとえば150℃の紡糸原液を60℃の温
度に急速に冷却した場合に、結晶化に伴う発熱ピーク出
現までの時間(T)は、60秒以下好ましくは30秒以
下特に好ましくは10秒以下である。
【0028】また本発明に係る超高分子量ポリプロピレ
ン組成物の結晶化速度は、紡糸原液を冷却雰囲気下もし
くは冷媒中に流下したときの紡糸原液の白化点(フロス
ポイント)の位置を目視で確認することによっても簡便
に定性的に測定することができる。
【0029】組 成 本発明に係る超高分子量ポリプロピレン延伸成形体形成
用組成物では、超高分子量ポリプロピレンは85〜9
9.5重量部、好ましくは90〜99重量部、さらに好
ましくは95〜99重量部の量で、またポリエチレンは
0.5〜15重量部、好ましくは1〜10重量部、さら
に好ましくは1〜5重量部の量で用いられる。
【0030】ポリエチレンの量が15重量%を超える
と、得られる超高分子量ポリプロピレン延伸成形体(分
子配向体)の高温における力学的特性が低下する傾向が
生じ、一方0.5重量部未満であると、超高分子量ポリ
プロピレンを延伸する際に該超高分子量ポリプロピレン
の結晶化速度が遅すぎて成形性に劣る傾向が生ずる。
【0031】なお本発明に係る超高分子量ポリプロピレ
ン延伸成形体形成用組成物から得られる超高分子量ポリ
プロピレン延伸成形体(分子配向体)の融点を測定する
と、ポリエチレン部が比較的低温部(130℃前後)に
単独でピークを有している。このことからも、ポリエチ
レン量があまり多いと、得られる超高分子量ポリプロピ
レン延伸成形体の高温における力学的特性が低下するこ
とが理解される。
【0032】流動性改良剤(C) 本発明で用いられる流動性改良剤(C)は、融点が超高
分子量ポリプロピレン(A)の融点より低い低分子量化
合物である。このような流動性改良剤としては、超高分
子量ポリプロピレンを溶解し得る溶剤、あるいは超高分
子量ポリプロピレンに対して分散性を有する各種ワック
ス類が使用される。
【0033】上記のような溶剤としては、好ましくは前
記超高分子量ポリプロピレンの融点以上、さらに好まし
くは超高分子量ポリプロピレンの融点+20℃以上の沸
点を有する溶剤が用いられる。
【0034】このような溶剤としては、具体的には、n-
ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-テト
ラデカン、n-オクタデカンあるいは流動パラフィン、灯
油等の脂肪族炭化水素系溶媒;キシレン、ナフタリン、
テトラリン、ブチルベンゼン、p-シメン、シクロヘキシ
ルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ド
デシルベンゼン、ビシクロヘキシル、デカリン、メチル
ナフタリン、エチルナフタリン等の芳香族炭化水素系溶
媒あるいはその水素化誘導体;1,1,2,2-テトラクロロエ
タン、ベンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,2,
3-トリクロロプロパン、ジクロロベンゼン、1,2,4-トリ
クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水
素系溶媒;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プ
ロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の鉱油などが
用いられる。
【0035】また上記のようなワックス類としては、脂
肪族炭化水素化合物、あるいはその誘導体が使用され
る。ワックス類としての脂肪族炭化水素化合物として
は、具体的には、飽和脂肪族炭化水素化合物を主体と
し、通常、分子量が2000以下、好ましくは1000
以下、さらに好ましくは800以下のパラフィン系ワッ
クスが用いられる。これら脂肪族炭化水素化合物として
は、具体的には、ドコサン、トリコサン、テトラコサ
ン、トリアコンタン等の炭素数22以上のn-アルカンあ
るいはこれらを主成分とした低級n-アルカンとの混合
物;石油から分離精製されたいわゆるパラフィンワック
ス、エチレンあるいはエチレンと他のα-オレフィンと
を共重合して得られる低分子量重合体である中・低級ポ
リエチレンワックス、高圧法ポリエチレンワックス、エ
チレン共重合ワックス、あるいは中・低圧法ポリエチレ
ン、高圧法ポリエチレン等のポリエチレンを熱減成等に
より分子量を低下させたワックス及びそれらのワックス
の酸化物あるいはマレイン酸変性等の酸化ワックス、マ
レイン酸変性ワックスなどが用いられる。
【0036】脂肪族炭化水素化合物誘導体としては、た
とえば脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基)
の末端もしくは内部に1個またはそれ以上、好ましくは
1〜2個、特に好ましくは1個のカルボキシル基、水酸
基、カルバモイル基、エステル基、メルカプト基、カル
ボニル基等の官能基を有する化合物である炭素数8以
上、好ましくは炭素数12〜50または分子量130〜
2000、好ましくは200〜800の脂肪酸、脂肪族
アルコール、脂肪族アミド、脂肪酸エステル、脂肪族メ
ルカプタン、脂肪族アルデヒド、脂肪族ケトン等を挙げ
ることができる。
【0037】具体的には、脂肪酸としてカプリン酸、ラ
ウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン
酸、オレイン酸等、脂肪族アルコールとしてラウリンア
ルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、
ステアリルアルコール等、脂肪酸アミドとしてカプリン
アミド、ラウリンアミド、パルミチンアミド、ステアリ
ルアミド等、脂肪酸エステルとしてステアリル酢酸エス
テル等を例示することができる。
【0038】これら流動性改良剤の中でも、常温固体の
ワックス類が、貯蔵性、輸送性の面で好ましい。本発明
に用いる流動性改良剤としては、本発明の目的を損なわ
ない範囲で、軟化点が50〜120℃の低軟化点炭化水
素重合体、具体的には、通常、粘着付与樹脂として粘着
テープ、塗料およびホットメルト接着剤用分野に用いら
れており、重合されるモノマー源の違いにより次のよう
な樹脂、例えば、石油、ナフサ等の分解によって得られ
るC4 留分、C5 留分、これらの混合物あるいはこれら
の任意の留分、例えばC5 留分中のイソプレンおよび1,
3-ペンタジエンなどを主原料とする脂肪族系炭化水素樹
脂、石油、ナフサ等の分解によって得られるC9 留分中
のスチレン誘導体およびインデン類を主原料とする芳香
族系炭化水素樹脂、C4 、C5 留分の任意の留分とC9
留分を共重合した脂肪族・芳香族共重合炭化水素樹脂、
芳香族系炭化水素樹脂を水素添加した脂環族系炭化水素
樹脂、脂肪族、脂環族及び芳香族を含む構造を持つ合成
テルペン系炭化水素樹脂、テレペン油中のα,β- ピネ
ンを原料とするテルペン系炭化水素樹脂、コールタール
系ナフサ中のインデンおよびスチレン類を原料とするク
マロンインデン系炭化水素樹脂、低分子量スチレン系樹
脂およびロジン系炭化水素樹脂などを添加した混合系の
流動性改良剤を用いることもできる。
【0039】製造方法 [溶解混合]本発明では、まず上記のような超高分子量
ポリプロピレンとポリエチレンとからなる組成物に流動
性改良剤を混合して紡糸原液とし、該組成物の紡糸を可
能とする。このような流動性改良剤としては、超高分子
量ポリプロピレンを溶解しうる溶剤好ましくは超高分子
量ポリプロピレンを溶解し、しかも前記超高分子量ポリ
プロピレンの融点以上、さらに好ましくは融点+20℃
以上の沸点を有する溶剤が用いられる。
【0040】このような溶剤としては、具体的には、n-
ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-テト
ラデカン、n-オクタデカンあるいは流動パラフィン、灯
油等の脂肪族炭化水素系溶媒;キシレン、ナフタリン、
テトラリン、ブチルベンゼン、p-シメン、シクロヘキシ
ルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ド
デシルベンゼン、ビシクロヘキシル、デカリン、メチル
ナフタリン、エチルナフタリン等の芳香族炭化水素系溶
媒あるいはその水素化誘導体;1,1,2,2-テトラクロロエ
タン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,2,
3-トリクロロプロパン、ジクロロベンゼン、1,2,4-トリ
クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水
素系溶媒;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プ
ロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の鉱油などが
用いられる。
【0041】また本発明では流動性改良剤として、超高
分子量ポリプロピレンに対して分散性を有する各種ワッ
クス類を用いることもできる。また上記のようなワック
ス類としては、脂肪族炭化水素化合物、あるいはその誘
導体が使用される。
【0042】ワックス類としての脂肪族炭化水素化合物
としては、具体的には、飽和脂肪族炭化水素化合物を主
体とし、通常、分子量が2000以下、好ましくは10
0以下、さらに好ましくは800以下のパラフィン系ワ
ックスが用いられる。これら脂肪族炭化水素化合物とし
ては、具体的には、ドコサン、トリコサン、テトラコサ
ン、トリアコンタン等の炭素数22以上のn-アルカンあ
るいはこれらを主成分とした低級n-アルカンとの混合
物、石油から分離精製されたいわゆるパラフィンワック
ス、エチレンあるいはエチレンと他のα- オレフィンと
を共重合して得られる低分子量重合体である中・低級ポ
リエチレンワックス、高圧法ポリエチレンワックス、エ
チレン共重合ワックス、あるいは中・低圧法ポリエチレ
ン、高圧法ポリエチレン等のポリエチレンを熱減成等に
より分子量を低下させたワックスおよびそれらのワック
スの酸化物あるいはマレイン酸変性等の酸化ワックス、
マレイン酸変性ワックスなどが用いられる。
【0043】脂肪族炭化水素化合物誘導体としては、た
とえば脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基)
の末端もしくは内部に1個またはそれ以上、好ましくは
1〜2個、特に好ましくは1個のカルボキシル基、水酸
基、カルバモイル基、エステル基、メルカプト基、カル
ボニル基等の官能基を有する化合物である炭素数8以
上、好ましくは炭素数12〜50または分子量130〜
2000、好ましくは200〜800の脂肪酸、脂肪族
アルコール、脂肪族アミド、脂肪酸エステル、脂肪族メ
ルカプタン、脂肪族アルデヒド、脂肪族ケトン等を挙げ
ることができる。
【0044】具体的には、脂肪族としてカプリン酸、ラ
ウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン
酸、オレイン酸、脂肪族アルコールとしてラウリンアル
コール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ス
テアリルアルコール等、脂肪酸アミドとしてカプリンア
ミド、ラウリンアミド、パルミチンアミド、ステアリル
アミド等、脂肪酸エステルとしてステアリル酢酸エステ
ル等を例示することができる。
【0045】これら流動性改良剤の中でも、常温固体の
ワックス類が、貯蔵性、輸送性の面で好ましい。本発明
に用いる流動性改良剤としては、本発明の目的を損なわ
ない範囲で、軟化点が50〜120℃の低軟化点炭化水
素重合体、具体的には、通常、粘着付与樹脂として粘着
テープ、塗料、およびホットメルト接着剤用分野に用い
られており、重合されるモノマー源の違いにより次のよ
うな樹脂、たとえば、石油、ナフサ等の分解によって得
られるC4 留分、C5 留分、これらの混合物あるいはこ
れらの任意の留分、たとえばC5 留分中のイソプレンお
よび1,3-ペンタジエンなどを主原料とする脂肪族系炭化
水素樹脂、石油、ナフサ等の分解によって得られるC9
留分中のスチレン誘導体およびインデン類を主原料とす
る芳香族系炭化水素樹脂、C4 、C5 留分の任意の留分
とC9 留分を共重合した脂肪族・芳香族共重合炭化水素
樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を水素添加した脂環族系炭
化水素樹脂、脂肪族、脂環族および芳香族を含む構造を
持つ合成テルペン系炭化水素樹脂、テレペン油中のα,
β- ピネンを原料とするテルペン系炭化水素樹脂、コー
ルタール系ナフサ中のインデンおよびスチレン類を原料
とするクマロンインデン系炭化水素樹脂、低分子量スチ
レン系樹脂、およびロジン系炭化水素樹脂などを添加し
た混合系の流動性改良剤を用いることもできる。
【0046】超高分子量ポリプロピレン組成物と流動性
改良剤との配合比率は、これら配合する種類によっても
相違するが、一般的に言って、重量比で、1:99〜1
5:85好ましくは3:97〜10:90であることが
望ましい。流動性改良剤の量が上記範囲よりも少ない場
合には、紡糸原液の粘度が高くなり過ぎ、溶解混合や紡
糸が困難となるばかりでなく、得られる繊維の肌荒れが
著しく、延伸切れを生じ易くなるため好ましくない。一
方、流動性改良剤の量が上記範囲より多いと、紡糸時の
曳糸性および繊維の延伸性が乏しくなるため好ましくな
い。
【0047】超高分子量ポリプロピレン延伸成形体形成
用組成物と流動性改良剤との溶解混合は、使用する流動
性改良剤の種類によっても異なるが、一般に110℃〜
300℃、好ましくは130℃〜240℃の温度で行う
ことが望ましく、この範囲より低い温度で溶解混合を行
なうと、該超高分子量ポリプロピレン組成物と流動性改
良剤とが完全に溶解あるいは分散せず、その結果紡糸に
より均一な未延伸成形体を得ることができないため好ま
しくない。一方、上記範囲より高い温度にて溶解混合を
行なうと、熱減成により、特に超高分子量ポリプロピレ
ンの分子量が低下し、高強度の延伸成形体を得ることが
困難となるため好ましくない。
【0048】このような溶解混合は、加熱可能な攪拌翼
を備えた混合器によって行なうことができ、また単軸あ
るいは多軸押出し機を用いて行なうことも可能である。 [紡 糸]紡糸原液の紡糸は、一般に押出し成形により
行われる。すなわち紡糸原液を、たとえば、紡糸口金を
通して押出すことにより延伸用フィラメントが得られ、
またフラットダイを通して押出すことにより延伸用フィ
ルムあるいはシートまたはテープが得られ、さらにサー
キュラーダイを通して押出すことにより、延伸中空糸成
形用パイプが得られる。本発明は特に延伸フィラメント
の製造に有用であり、この場合、紡糸口金より押出され
た溶液にドラフト(すなわち溶液状態での引き伸ばし)
を加えることもできる。このようにして押出された紡糸
原液は、風冷や、冷媒、例えば水、メタノール、エタノ
ール、アセトン等の強制冷却手段を用いて冷却して結晶
化速度をさらに高めることも可能である。 [延 伸]このようにして得られた超高分子量ポリプロ
ピレンの未延伸成形体は延伸処理される。この延伸処理
の程度は、成形体中の超高分子量ポリプロピレンに少な
くとも一軸方向の分子配向が有効に付与される程度に行
なえばよい。
【0049】超高分子量ポリプロピレンの成形体の延伸
は、一般に40℃〜230℃、特に80℃〜200℃の
温度にて行なうことが好ましく、この未延伸成形体を前
記温度に加熱保持するための熱媒体としては、空気、水
蒸気、液体媒体のいずれをも用いることができる。また
延伸に先立って、予め加えた流動性改良剤を未延伸成形
体から溶剤等により抽出除去することもできる。さらに
未延伸成形体を加熱保持するための熱媒体として、流動
性改良剤を抽出除去できる溶媒であって、しかも沸点が
延伸温度よりも高い溶剤、具体的には、デカン、デカリ
ン、灯油等を使用して延伸操作を行なうと、前述した流
動性改良剤の抽出除去が可能となるとともに、延伸時の
延伸ムラの解消、ならびに高延伸倍率の達成が可能とな
るので好ましい。なお、このような熱媒体は、流動性改
良剤の除去効果を有していなくとも、たとえば延伸成形
体を溶剤中で処理することにより、該成形体中の流動性
改良剤の除去を行ない得ることは言うまでもない。
【0050】延伸操作は、一段あるいは二段以上の多段
のいずれによっても行なうことができる。また、延伸倍
率は、所望とする分子配向およびこれに伴う融解温度向
上の効果にも依存するが、一般に5〜200倍、特に1
0〜100倍の延伸倍率となるように延伸操作を行なう
ことが好ましい。
【0051】前記延伸操作は、一般に二段以上の多段延
伸が有利であり、一段目の延伸は、60℃〜120℃の
比較的低い温度で行なうことが好ましい。また二段目以
降の延伸においては、120℃〜230℃の温度で、し
かも一段目の延伸温度よりも高い温度で成形体の延伸操
作を行なうことが好ましい。ここで、二段目以降の延伸
において、少なくともその延伸操作の一段を165℃以
上の温度にて行なうことが好ましい。さらに、当該延伸
操作の際に、未延伸成形体中に含まれるポリエチレンの
一部が該延伸成形体中から垢状に除去されることもある
が、該ポリエチレンは既に超高分子量ポリプロピレンの
結晶化促進のための機能を果たした後であるため、未延
伸成形体中に含まれるポリエチレンを除去することはか
えって好ましいことである。 [熱処理]このようにして得られた延伸成形体は、所望
により拘束条件のもとで、あるいは若干の収縮条件のも
とで熱処理を施すことができる。ここで言う収縮条件と
は、前記延伸の逆の操作であるが、延伸倍率で0.92
倍以上、好ましくは0.95倍以上である。熱処理は、
一般に140℃〜220℃、特に150℃〜200℃の
温度で、0.5〜10分間、特に1〜5分間行なうこと
が好ましい。この熱処理によって、延伸成形体の結晶融
解温度が高温側に移動し、また高温での耐クリープ性の
向上が図られる。これは、予め延伸成形体に形成されて
いた配向結晶部分の結晶化が、当該熱処理によってさら
に進行するためと考えられる。
【0052】延伸成形体 上記のような超高分子量ポリプロピレン組成物から得ら
れた延伸成形体は、その組成が、極限粘度[η]が少な
くとも5dl/gである超高分子量ポリプロピレンが8
5〜99.5重量%と、極限粘度[η]が少なくとも2
dl/gであるポリエチレンが0.5〜15重量%とか
ら構成されており、少なくとも0.8GPa以上の引張
り強度を有している。また、本発明により得られた超高
分子量ポリプロピレン延伸成形体の融点は、拘束条件下
で示差走査熱量計により測定すると、170℃以上、好
ましくは180℃以上、さらに好ましくは190℃以上
であり、従来のポリプロピレン延伸繊維には全く見られ
ない耐熱性を有する。
【0053】ここで、前記融点は示差走査熱量計を用い
て以下の手順で行なう。すなわち、示差走査熱量計は、
パーキンエルマー社製DSCII型を使用し、試料約3m
gを4mm×4mm、厚さ0.2mmのアルミニウム板
に巻回することにより試料の配向方法に拘束する。次い
で、このアルミニウム板に巻回した試料をアルミパンの
中に封入し、これを測定用試料とする。また、比較用試
料であるリファレンスホルダに入れる通常空のアルミパ
ンには、前記試料に使用したものと同じアルミニウム板
を封入し、両者の熱バランスを取る。そして、試料を3
0℃で約1分間保持した後、10℃/分の昇温速度で2
50℃まで昇温する。この測定による最大吸熱ピーク位
置を試料の融点とする。
【0054】このような融点測定を行なうと、本発明に
よる超高分子量ポリプロピレン延伸成形体は、ポリエチ
レンの単独融解ピークは認められないが、この融点測定
後、室温まで降温し、再び融点の測定を行なう、いわゆ
るセカンドランの場合には、ポリエチレンの単独融解ピ
ークが現われる。これは、本発明の特徴の一つであっ
て、ポリエチレン自体も紡糸・延伸操作によって高度に
配向しており、少なくとも繊維中でポリエチレンが欠陥
となっていないことを示している。
【0055】また、本発明による超高分子量ポリプロピ
レン延伸成形体の分子配向の程度は、X線回折法、複屈
折法、螢光偏光法等により測定することができる。たと
えば、半価幅による配向度(工業化学雑誌第39巻,P.99
2 ,1939) Fは、
【0056】
【数1】
【0057】により表される。この式中、H°は、X線
回折の反射のうち、赤道線上最強のパラトロープ面(一
般的にポリプロピレンの場合は(110)面反射であ
る)のデバイ環に沿っての強度分布曲線の半価幅(°)
である。この式によって表される配向度Fが、0.90
以上、特に0.95以上となるように分子配向されてい
ることが、得られる繊維の機械的性質からいって好まし
い。
【0058】
【発明の効果】本発明に係る超高分子量ポリプロピレン
延伸成形体形成用組成物から、耐熱性、耐クリープ性、
機械的性質などに優れた超高分子量ポリプロピレン延伸
成形体を得ることができ、該延伸成形体は、高強度マル
チフィラメント、ひも、ロープ、織布、不織布等の産業
用紡織材料の他に、梱包用テープ等の包装材料として有
用である。また、フィラメントの形態の延伸成形体を、
エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の各種樹脂や合成
ゴム等に対する補強繊維として用いると、従来の超高分
子量ポリエチレン延伸フィラメント、ポリプロピレン延
伸フィラメントと比較して耐熱性の点で著しい向上が達
成される。さらに、このフィラメントは高強度でしかも
密度が小さいことから、従来のガラス繊維、炭素繊維、
ボロン繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリイミド
繊維等を用いた成形物に比べ、特に軽量化を図れるので
有効である。ガラス繊維等を用いた複合材料と同様に、
UD(Unit Directional) 積層板、SMC(Sheet Mold
ing Compound) 、BMC(Bulk Molding Compound) 等の
成形加工を行うことができ、自動車部品、ボートやヨッ
トの構造体、電子回路用基板等の軽量、高強度分野での
各種複合材料への用途が期待される。
【0059】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説
明するが、本発明はその要旨を越えないかぎりこれらの
例に何等制約されるものではない。
【0060】
【実施例1〜5】 [紡糸原液の調製]所望する混合比率の超高分子量ポリ
プロピレンの粉末とポリエチレンの粉末とデカリンと
を、コンデンサーが装備されたセパラブルフラスコに投
入する。このときプロセス安定剤として、3,5-ジ-tert-
ブチル-4- ハイドロキシトルエンを超高分子量ポリプロ
ピレンとポリエチレンとの総和に対して0.1重量%添
加した。この後、攪拌下で、系の温度を室温に保ち、窒
素ガスにて約30分間バブリングし、系内に溶存してい
る酸素を除去した。さらに、攪拌下で、系の温度を11
0℃まで加熱し、粉末の湿潤化を行った。この系内の状
態を観察し続けたところ、110℃で約8分間経過した
時点で、粥状の粘調な懸濁液となり、湿潤化が完了し
た。次いで、系の温度を140℃に加熱して攪拌を続け
たところ、約10分で透明な溶液となり、超高分子量ポ
リプロピレン- ポリエチレン組成物の溶液が得られた。
この溶液を約1時間、140℃に静置し、紡糸用原液と
した。結晶化速度測定用試料はこの状態からサンプリン
グした。 [紡 糸]上記のようにして調製した超高分子量ポリプ
ロピレン組成物の溶液を次の条件で紡糸し、繊維を得
た。すなわち、2mmφの紡糸ノズルが装着されたプラ
ンジャー型押出し機により140℃の温度で、該溶液を
押出した。この押出された溶液を、約30cmのエアー
ギャップ下で、室温下にて引取り、次いでアセトン浴槽
内に導き、結晶化操作を行って、結晶化繊維とした。こ
のとき該溶液は、自由落下に近い状態で引取り、積極的
にドラフトを行わなかった。この白化し、結晶化した繊
維をボビンに巻き取り、減圧下、室温にて乾燥を行い、
次の延伸工程に供した。 [延 伸]上記のような方法で調製された繊維を次の条
件で延伸し、配向延伸糸を得た。すなわち、4台のゴデ
ットロールを用いて第一段目はn-デカンを、第二段目以
降はフルゾールP(サーマル化学産業製熱媒)を熱媒と
して用い、延伸槽にて三段延伸を行った。このとき第一
延伸槽内温度は110℃、第二延伸槽内温度は140
℃、第三延伸槽内温度は165℃で、槽の有効長さはそ
れぞれ50cmであった。延伸に際しては、第一ゴデッ
トロールの回転速度を0.5m/分とし、第四ゴデット
ロールの回転速度を変更することにより所望の延伸比を
得た。また、第二、第三ゴデットロールの回転速度は、
安定延伸可能な範囲で適宜選択した。ただし、延伸比
は、第一ゴデットロールと第四ゴデットロールとの回転
比により求めた。なお、弾性率および引張り強度は、島
津製作所製オートグラフDCS−50型にて室温(23
℃)にて測定した。このときのクランプ間の試料長は、
100mmで、引張り速度は100mm/分とした。た
だし、弾性率は、初期弾性率で、接線の傾きを用い計算
した。また、計算に必要な繊維断面積は、繊維の密度を
0.910g/ccとし、試料の重量とから計算により
求めた。
【0061】表1に、試料番号と試料組成、結晶化速度
を示し、表中の結晶化速度は、前述したように、示差走
査熱量計により140℃から60℃に急速降温した際の
降温開始から結晶化ピーク(発熱)出現までの時間(s
ec)として表した。いずれの場合も、後述する比較例
の結果(表3)に比べ、結晶化速度が速く、紡糸時の成
形安定性に優れていることがわかる。また、表2に、表
1に示した組成の各試料を前述した条件にて延伸した延
伸繊維の諸物性を示す。後述する比較例の結果(表4)
に比べ、耐熱性、力学特性に極めてバランスのとれた繊
維であることがわかる。
【0062】
【比較例1〜5】実施例1に記載された方法と同一の方
法で延伸繊維の調製を行った。表3に試料番号、試料組
成および結晶化速度を示す。結晶化速度が遅い場合(例
えば、10秒以上)の紡糸時の成形性は極めて乏しく、
また繊維の直径の均一性にも乏しく、結晶化速度が極端
に遅い場合には繊維化することができなかった。また、
表4には、表3に示した試料を前述した実施例1と同様
の方法により延伸した繊維の物性を示す。前記実施例1
と比べて、耐熱性、力学特性に劣ることがわかる。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極限粘度[η]が少なくとも5dl/g
    以上である超高分子量ポリプロピレン(A)85〜9
    9.5重量部と、極限粘度[η]が少なくとも2dl/
    g以上であるポリエチレン(B)0.5〜15重量部と
    からなる混合物と、 該混合物100重量部に対し、9900〜567重量部
    の流動性改良剤(C)とを含むことを特徴とする超高分
    子量ポリプロピレン組成物。
  2. 【請求項2】 前記ポリエチレンは、極限粘度[η]が
    少なくとも5dl/g以上の超高分子量ポリエチレンで
    あることを特徴とする請求項1に記載の超高分子量ポリ
    プロピレン組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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