JP2601868B2 - 釣 糸 - Google Patents

釣 糸

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JP2601868B2
JP2601868B2 JP63082507A JP8250788A JP2601868B2 JP 2601868 B2 JP2601868 B2 JP 2601868B2 JP 63082507 A JP63082507 A JP 63082507A JP 8250788 A JP8250788 A JP 8250788A JP 2601868 B2 JP2601868 B2 JP 2601868B2
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Description

【発明の詳細な説明】 発明の技術分野 本発明は、釣糸に関し、さらに詳しくは、超高分子量
エチレン・α−オレフィン共重合体の分子配向成形体か
らなり、優れた耐クループ性および耐衝撃性を有し、し
かも耐水性にも優れた釣糸に関する。
発明の技術的背景ならびにその問題点 釣糸としては、従来、ナイロン系のモノフィラメント
からなる糸が用いられてきた。このナイロン製釣糸は、
4号糸で4kg、8号糸で8kg程度までの荷重に耐えること
ができるが、さらに大きな荷重にまで耐えうる釣糸の出
現が望まれていた。
大きな荷重にまで耐えうる釣糸として、ケブラーとし
て知られる芳香族ポリアミド繊維あるいは超高分子量ポ
リエチレン繊維からなる釣糸が用いられ始めている。
例えば特開昭62−3728号公報、特開昭62−6622号公報
等がある。
ところが芳香族ポリアミド繊維あるいは超高分子量ポ
リエチレン繊維からなる釣糸は、伸度が5〜7%であ
り、衝撃吸収力が小さく、特に投げ釣りの際に釣糸がし
ばしば切断することがあり、しかも耐クリープ性にも劣
るという大きな問題点があった。
なお、超高分子量ポリエチレンを繊維、テープ等に成
形し、これを延伸することにより、高弾性率、高引張強
度を有する分子配向成形体が得られることは既に知られ
ている。たとえば、特開昭56−15408号公報には、超高
分子量ポリエチレンの希薄溶液を紡糸し、得られるフィ
ラメントを延伸することが記載されている。また、特開
昭59−130313号公報には、超高分子量ポリエチレンとワ
ックスとを溶融混練し、この混練物を押出し、冷却固化
後延伸することが記載され、さらに特開昭59−187614号
公報には、上記溶融混練物を押出し、ドラフトをかけた
後冷却固化し、次いで延伸することが記載されている。
発明の目的 本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決
しようとするものであって、優れた耐クリープ性および
耐衝撃性を有し、しかも耐水性にも優れた釣糸を提供す
ることを目的としている。
発明の概要 本発明に係る釣糸は、極限粘度[η]が少なくとも5d
l/gであり、しかも炭素数3以上のα−オレフィンの含
有量が炭素数1000個あたり平均0.1〜20個である超高分
子量エチレン・α−オレフィン共重合体の分子配向成形
体であって、示差走査熱量計で測定したときに超高分子
量エチレン・α−オレフィン共重合体本来の結晶融解温
度(Tm)よりも少なくとも20℃高い温度に少なくとも1
個の結晶融解ピーク(Tp)を有し、かつこの結晶融解ピ
ーク(Tp)に基づく結晶融解熱量が全結晶融解熱量に対
して15%以上である分子配向成形体からなることを特徴
としている。
本発明に係る釣糸は、上記のような超高分子量エチレ
ン・α−オレフィン共重合体の分子配向成形体からなっ
ており、優れた耐クリープ性および耐衝撃性を有し、そ
の上耐水性にも優れている。
発明の具体的説明 以下本発明に係る釣糸について具体的に説明する。
まず本発明に係る釣糸を構成する超高分子量エチレン
・α−オレフィン共重合体の分子配向成形体について説
明する。
本発明で用いられる超高分子量エチレン・α−オレフ
ィン共重合体の分子配向成形体は、エチレンと炭素数3
以上のα−オレフィンとの超高分子量共重合体の分子配
向成形体である。
本発明で用いる分子配向成形体のベースとなる超高分
子量エチレン・α−オレフィン共重合体では、炭素数3
以上のα−オレフィンは、該重合体の炭素数1000個当り
0.1〜20個好ましくは0.5〜10個さらに好ましくは1〜7
個の量で含有されている。
このような超高分子量エチレン・α−オレフィン共重
合体から得られる分子配向成形体は、超高分子量ポリエ
チレンから得られる分子配向成形体と比較して特に耐衝
撃性および耐クリープ性に優れている。このα−オレフ
ィンが上記量で含有されることも極めて重要であり、こ
の含有量が上記範囲よりも少ない場合には、分子配向に
よる結晶融解温度の上昇効果がほとんど認められず、ま
た上記範囲よりも大きいと、エチレン・α−オレフィン
共重合体そのものの融点が低下する傾向が大きくなると
ともに、分子配向におる結晶融解温度の上昇効果、弾性
率も小さくなる傾向がある。
また、このエチレン・α−オレフィン共重合体は、そ
の極限粘度[η]がdl/g以上好ましくは7〜30dl/gの範
囲にあり、この共重合体から得られる分子配向成形体の
機械的特性あるいは耐熱性が優れている。すなわち、分
子端末は繊維強度に寄与しなく、分子端末の数は分子量
(粘度)の逆数であることから、極限粘度[η]の大き
いものが高強度を与える。
本発明の超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合
体の分子配向成形体における分子配向の程度は、X線回
析法、複屈折法、螢光偏光法等で知ることができる。本
発明の超高分子量エチレン共重合体が延伸フィラメント
の場合、たとえば呉祐吉、久保輝一郎:工業化学雑誌第
39巻、992頁(1939)に詳しく延べられている半価巾に
よる配向度、すなわち式 (式中、H゜は赤道線上最強のパラトロープ面のデバイ
環に沿っての強度分布曲線の半価幅(゜)である。) で定義される配向度(F)が0.90以上、特に0.95以上と
なるように分子配向されていることが、機械的性質の点
で望ましい。
本発明の超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合
体の分子配向成形体延伸倍率は5〜80倍、好ましくは10
〜50倍である。
また、この延伸フィラメントは常温クリープ性の促進
条件に相当する高温下での耐クリープ特性に際立って優
れており、荷重を30%破断荷重として、雰囲気温度を70
℃とし、90秒後の伸び(%)として求めたクリープが7
%以下、特に5%以下であり、さらに90秒から180秒後
のクリープ速度(ε、sec-1)が4×10-4sec-1以下、特
に5×10-5sec-1以下である。
さらに、本発明の超高分子量エチレン・α−オレフィ
ン共重合体の分子配向成形体は、機械的特性にも優れて
おり、たとえば延伸フィラメントの形状で20GPa以上、
特に30GPa以上の弾性率と、1.2GPa以上、特に1.5GPa以
上の引張強度とを有している。
本発明に用いる分子配向成形体の破断エネルギーは8k
g・m/g以上、好ましくは10kg・m/g以上である。
本発明の超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合
体の分子配向成形体の密度は0.940ないし0.990g/cm3
好ましくは0.960ないし0.985g/cm3である。
ここで密度は常法(ASTM D1505)に従い、密度勾配
管法にて測定した。このときの密度勾配管は四塩化炭素
とトルエンを用いることにより調製し、測定は常温(23
℃)で行なった。
本発明の超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合
体の分子配向成形体の誘電率(1KHz、23℃)は1.4〜3.
0、好ましくは1.8〜2.4であり、誘電正接(1KHz、80
℃)は0.050〜0.008%、好ましくは0.040ないし0.010%
である。ここで、誘電率および誘電正接は、繊維および
テープ状の分子配向体を一方向に緻密に引き揃え、フィ
ルム状にした試料を用いASTM D150によって測定した。
本発明の超高分子エチレン・α−オレフィン共重合体
の分子配向成形体のインパルス電圧破壊値は110〜250KV
/mm、好ましくは150〜220KV/mmである。インパルス電圧
破壊値は誘電率の場合と同様な試料を用い、銅板上で黄
銅(25mmφ)のJIS型電極により、負電極インパルスを2
KV/3回ステップで加えながら昇圧し、測定した。
本発明の超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合
体の分子配向体は前述の常温物性を有しているが、さら
にこれらの常温物性に加えて次の熱的性質を兼備してい
ると、前述の常温物性がさらに向上し、耐熱性にも優れ
ているので好ましい。
本発明で用いられる超高分子量エチレン・α−オレフ
ィン共重合体の分子配向成形体は、示差走査熱量計で測
定したときに該共重合体本来の結晶融解温度(Tm)より
も少なくとも20℃高い温度に少なくとも1個の結晶融解
ピーク(Tp)を有し、かつこの結晶融解ピーク(Tp)に
基づく結晶融解熱量が全結晶融解熱量に対して15%以上
好ましくは20%以上、特に30%以上である。
超高分子量エチレン共重合体本来の結晶融解温度(T
m)は、この成形体を一度完全に融解した後冷却して、
成形体における分子配向を緩和させた後、再度昇温させ
る方法、いわゆる示差走査型熱量計におけるセカンド・
ランで求めることができる。
さらに説明すると、本発明の分子配向成形体では、前
述した共重合体本来の結晶融解温度域には結晶融解ピー
クは全く存在しないか、存在するとしても極くわずかに
テーリングとして存在するにすぎない。結晶融解ピーク
(Tp)は一般に、温度範囲Tm+20℃〜Tm+50℃、特にTm
+20℃〜Tm+100℃の領域に表わされるのが普通であ
り、このピーク(Tp)は上記温度範囲内に複数個のピー
クとして表われることが多い。すなわち、この結晶融解
ピーク(Tp)は、温度範囲Tm+35℃〜Tm+100℃におけ
る高温側融解ピーク(Tp1)と、温度範囲Tm+20℃〜Tm
+35℃における低温側融解ピーク(Tp2)との2つに分
離して表われることが多く、分子配向成形体の製造条件
によっては、Tp1やTp2がさらに複数個のピークから成る
こともある。
これらの高い結晶融解ピーク(Tp1,Tp2)は、超高分
子量エチレン・α−オレフィン共重合体の分子配向成形
体の耐熱性を著しく向上させ、かつ高温の熱履歴後での
強度保持率あるいは弾性率保持率に寄与するものである
と思われる。
また温度範囲Tm+35℃〜Tm+100℃の高温側融解ピー
ク(Tp1)に基づく融解熱量の総和は、全融解熱量当
り、1.5%以上、特に3.0%以上にあることが望ましい。
また高温側融解ピーク(Tp1)に基づく融解熱量の総
和が上述の値を満たしている限りにおいては、高温側融
解ピーク(Tp1)が主たるピークとして突出して現われ
ない場合、つまり小ピークの集合体もしくはブロードな
ピークになったとしても、耐熱性は若干失われる場合も
あるが、耐クリープ特性については優れている。
本発明における融点および結晶融解熱量は以下の方法
により測定した。
融点は示差走査熱量計で以下のように行なった。示差
走査熱量計はDSC II型(パーキンエルマー社製)を用い
た。試料は約3mgを4mm×4mm、厚さ0.2mmのアルミ板に巻
きつけることにより配向方向に拘束した。次いでアルミ
板に巻きつけた試料をアルミパンの中に封入し、測定用
試料とした。また、リファレンスホルダーに入れる通
常、空のアルミパンは、試料に用いたと同じアルミ板を
封入し、熱バランスを取った。まず試料を30℃で約1分
間保持し、その後10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温
し、第1回目昇温時の融点測定を完了した。引き続き25
0℃の状態で10分間保持し、次いで20℃/分の降温速度
で降温し、さらに30℃で10分間試料を保持した。次いで
二回目の昇温を10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温
し、この際2回目昇温時(セカンドラン)の融点測定を
完了した。このとき融解ピークの最大値をもって融点と
した。ショルダーとして現われる場合は、ショルダーの
すぐ低温側の変曲点とすぐ高温側の変曲点で接線を引き
交点を融点とした。
また吸熱曲線の60℃と240℃との点を結び該直線(ベ
ースライン)と二回目昇温時の主融解ピークとして求め
られる超高分子量エチレン共重合体本来の結晶融解温度
(Tm)より20℃高い点に垂線を引き、これらによって囲
まれた低温側の部分を超高分子量エチレン共重合体本来
の結晶融解(Tm)に基づくものとし、また高温側の部分
を本発明成形体の機能を発現する結晶融解(Tp)に基づ
くものとし、それぞれの結晶融解熱量は、これらの面積
より算出した。また、Tp1およびTp2の融解に基づく融解
熱量も上述の方法に従い、Tm+20℃からの垂線とTm+35
℃からの垂線に囲まれた部分をTp2の融解に基づく融解
熱量のものとし、高温側部分をTp1の融解に基づく融解
熱量のものとして同様に算出した。
本発明の超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合
体の延伸フィラメントは、170℃で5分間の熱履歴を与
えた後での強度保持率が95%以上で、弾性率保持率が90
%以上、特に95%以上であり、従来のポリエチレンの延
伸フィラメントには全く認められない優れた耐熱性を有
している。
次に本発明を、その理解が容易なように、原料、製造
方法および目的の順に以下に説明する。
原料 本発明に用いる超高分子量エチレン・α−オレフィン
共重合体は、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィン
とを、チーグラー系触媒を使用し、たとえば有機溶媒中
でスラリー重合させることにより得られる。
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレ
ン、ブテン−1、ペンテン−1,4−メチルペンテン−
1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などが
用いられるが、このうち特にブテン−1、4−メチルペ
ンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などが好まし
い。このようなα−オレフィンは、得られる共重合体の
炭素数1000個当り前述の量で存在するようにエチレンと
共重合される。また、本発明で分子配向体を製造する際
にベースとして用いられる超高分子量エチレン・α−オ
レフィン共重合体は、前述した極限粘度[η]に対応す
る分子量を有するべきである。
本発明で用いられる超高分子量エチレン・α−オレフ
ィン共重合体中のα−オレフィン成分の定量は、赤外分
光光度計(日本分光工業製)によって行なわれる。具体
的には、エチレン鎖の中に取り込まれたα−オレフィン
のメチル基の変角振動を表わす1378cm-1の吸光度を、赤
外分光光度計により測定し、この値を、あらかじめ13C
核磁気共鳴装置にて、モデル化合物を用いて作成した検
量線にて1000炭素原子当りのメチル分枝数に換算するこ
とにより、超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合
体中のα−オレフィン量を定量する。
製造方法 本発明では、上記超高分子量エチレン・α−オレフィ
ン共重合体から分子配向体を製造するに際して、該共重
合体に希釈剤を配合する。このような希釈剤としては、
超高分子量エチレン共重合体に対する溶剤あるいは超高
分子量エチレン共重合体に対して相溶性を有する各種ワ
ックス状物が用いられる。
このような溶剤としては、前記共重合体の融点以上の
沸点、さらに好ましくは前記共重合体の融点よりも20℃
以上高い沸点を有する溶剤が用いられる。
このような溶剤としては、具体的には、n−ノナン、
n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−テト
ラデカン、n−オクタデカンあるいは流動パラフィン、
灯油等の脂肪族炭化水素系溶媒、キシレン、ナフタリ
ン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロ
ヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ベンチルベンゼ
ン、ドデシルベンゼン、ビシクロヘキシル、デカリン、
メチルナフタリン、エチルナフタリン等の芳香族炭化水
素系溶媒あるいはその水素化誘導体、1,1,2,2−テトラ
クロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタ
ン、1,2,3−トリクロロプロパン、ジクロロベンゼン、
1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロ
ゲン化炭化水素溶媒、パラフィン系プロセスオイル、ナ
フテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の
鉱油が挙げられる。
また希釈剤としてのワックス類としては、具体的には
脂肪族炭化水素化合物あるいはその誘導体が用いられ
る。
このような脂肪族炭化水素化合物としては、飽和脂肪
族炭化水素化合物を主体とし、通常、分子量が2000以下
好ましくは1000以下さらに好ましくは800以下のパラフ
ィン系ワックスと呼ばれる化合物が用いられる。
このような脂肪族炭化水素化合物としては、具体的に
は、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、トリアコン
タン等の炭素数22以上のn−アルカンあるいはこれらを
主成分とした低級n−アルカンとの混合物、石油から分
離精製されたいわゆるパラフィンワックス、エチレンあ
るいはエチレンと他のα−オレフィンとを共重合して得
られる低分子量重合体である中・低圧法ポリエチレンワ
ックス、高圧法ポリエチレンワックス、エチレン共重合
ワックスあるいは中・低圧法ポリエチレン、高圧法ポリ
エチレン等のポリエチレンを熱減成等により分子量を低
下させたワックス、それらのワックスの酸化物あるいは
マレイン酸変性等の酸化ワックス、マレイン酸変性ワッ
クス等が用いられる。
また脂肪族炭化水素化合物誘導体としては、たとえば
脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基)の末端
もしくは内部に1個またはそれ以上、好ましくは1〜2
個、特に好ましくは1個のカルボキシル基、水酸基、カ
ルバモイル基、エステル基、メルトカプト基、カルボニ
ル基等の官能基を有する化合物である炭素数8以上、好
ましくは炭素数12〜50または分子量130〜2000好ましく
は200〜800の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸アミ
ド、脂肪酸エステル、脂肪族メルカプタン、脂肪族アル
デヒド、脂肪族ケトン等が用いられる。
このような脂肪族炭化水素化合物誘導体としては、具
体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パ
ルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸、
ラウリンアルコール、ミリスチルアルコール、セチルア
ルコール、シテアリルアルコールなどの脂肪族アルコー
ル、カプリンアミド、ラウリンアミド、パルミチンアミ
ド、ステアリルアミドなどの脂肪酸アミド、ステアリル
酢酸エステルなどの脂肪酸エステル等が用いられる。
超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合体と希釈
剤とは、これらの種類によっても相違するが、一般的に
3:97〜80:20、特に15:85〜60:40の重量比で用いられ
る。希釈剤の量が上記範囲よりも低い場合には、溶融粘
度が高くなり過ぎ、溶融混練や溶融成形が困難となると
ともに、得られる成形体の肌荒れが著しく、延伸切れ等
を生じ易い。一方、希釈剤の量が上記範囲よりも多い
と、やはり溶融混練が困難となり、また得られる成形体
の延伸性が劣るようになる。
溶融混練は、一般に150〜300℃、特に170〜270℃の温
度で行なわれる。上記範囲よりも低い温度では、溶融粘
度が高すぎて、溶融成形が困難となり、また上記範囲よ
りも高い場合には、熱減成により超高分子量エチレン・
α−オレフィン共重合体の分子量が低下し、優れた高弾
性率および高強度を有する成形体を得ることが困難とな
る。なお、配合はヘンシェルミキサー、V型ブレンダー
等による乾式ブレンドで行なってもよいし、あるいは単
軸押出機または多軸押出機を用いて行なってもよい。
超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合体と希釈
剤とからなるドープ(紡糸原液)の溶融成形は、一般に
溶融押出成形により行なわれる。具体的には、ドープを
紡糸口金を通して溶融押出することにより、延伸用フィ
ラメントが得られる。この際、紡糸口金より押出された
溶融物にドラフト、すなわち溶融状態での引き伸しを加
えることもできる。溶融樹脂のダイ・オリフィス内での
押出速度V0と冷却固化した未延伸物の巻き取り速度Vと
の比をドラフト比として次式で定義することができる。
ドラフト比=V/V0 …(2) このようなドラフト比は、混合物の温度および超高分
子量エチレン共重合体の分子量等により変化するが、通
常は3以上好ましくは6以上とすることができる。
次に、このようにして得られた超高分子量エチレン・
α−オレフィン共重合体の未延伸成形体を、延伸処理す
る。延伸は、超高分子量エチレン・α−オレフィン共重
合体から得られた未延伸成形体に少なくとも一軸方向の
分子配向が有効に付与されるように行なわれる。
超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合体から得
られる未延伸成形体の延伸は、一般に40〜160℃、特に8
0〜145℃の温度で行なわれる。未延伸成形体を上記温度
に加熱保持するための熱媒体としては、空気、水蒸気、
液体媒体の何れをも用いることができる。しかしなが
ら、熱媒体として、前述した希釈剤を溶出除去すること
ができる溶楳で、しかもその沸点が成形体組成物の融点
よりも高い液体媒体、具体的には、デカリン、デカン、
灯油等を使用して、延伸操作を行なうと、前述した希釈
剤の除去が可能となるとともに、延伸時の延伸むらが生
ぜずしかも高延伸倍率の達成が可能となるので好まし
い。
超高分子量エチレン・α−オレフィン共重合体から希
釈剤を除去する手段は、前記方法に限らず、未延伸物を
ヘキサン、ヘプタン、熱エタノール、クロロホルム、ベ
ンゼン等の溶剤で処理後延伸する方法、延伸物をヘキサ
ン、ヘプタン、熱エタノール、クロロホルム、ベンゼン
等の溶剤で処理する方法によっても、成形物中の希釈剤
を除去することによって、高弾性率、高強度の延伸物を
得ることができる。
延伸操作は、一段あるいは二段以上の多段で行なうこ
とができる。延伸倍率は、所望とする分子配向およびこ
れに伴う融解温度向上の効果にも依存するが、一般に5
〜80倍好ましくは10〜50倍である。
一般には、二段以上の多段延伸により延伸操作を行な
うことが好ましく、一段目では80〜120℃の比較的低い
温度で押出成形体中の希釈剤を抽出しながら延伸操作を
行ない、二段目以降では120〜160℃の温度でしかも一段
目延伸温度よりも高い温度で成形体の延伸操作を行なう
ことが好ましい。
一軸延伸操作の場合には、周速の異なるローラ間で引
張延伸を行なえばよい。
このようにして得られた分子配向成形体は、所望によ
り拘束条件下に熱処理することができる。この熱処理
は、一般に140〜180℃好ましくは150〜175℃の温度で、
1〜20分間好ましくは3〜10分間行なうことができる。
熱処理により、配向結晶部の結晶化が一層進行し、結晶
融解温度の高温側への移行、強度および弾性率の向上、
さらには高温での耐クリープ性の向上がもたらされる。
本発明では、このような超高分子量エチレン・α−オ
レフィン共重合体のフィラメント状分子配向成形体から
釣糸を形成し、釣糸として用いる。
フィラメント状の分子配向体から釣糸を製造するに
は、従来公知の方法が採用される。
撚糸して釣糸とした時の破断エネルギーは3kg・m/g以
上好ましくは4kg・m/g以上である。また撚糸し、外皮に
ナイロンを用いて作製した釣糸の強度利用率の低下(撚
り減り)が少ないことも本発明に用いる分子配向成形体
の特徴である。
発明の効果 上記のようにし本発明では、超高分子量エチレン・α
−オレフィン共重合体の分子配向成形体からなる糸を釣
糸としているので、優れた耐クリープ性および耐衝撃性
を有し、しかも耐水性にも優れている。
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれ
ら実施例に限定されるものではない。
実施例1 <超高分子量エチレン・ブテン−1共重合体の重合> チーグラー系触媒を用い、n−デカン1を重合溶媒
として超高分子量エチレン・ブテン−1共重合体のスラ
リー重合を行なった。エチレンとブテン−1との組成が
モル比で97.2:2.35の比率の混合モノマーガスを圧力が5
kg/cm2の一定圧力を保つ様に反応器に連続供給した。重
合は反応温度70℃で2時間で終了した。得られた超高分
子量エチレン・ブテン−1共重合体粉末の収量は160gで
極限粘度(デカリン:135℃)は8.2dl/g、赤外分光光度
計によるブテン−1含量は1000炭素原子あたり1.5個で
あった。
<超高分子量エチレン・ブテン−1共重合体延伸配向物
の調製> 上述の重合により得られた超高分子量エチレン・ブテ
ン−1共重合体粉末20重量部とパラフィンワックス(融
点=69℃、分子量=490)80重量部との混合物を次の条
件で溶融紡糸した。
該混合物100重量部にプロセス安定剤として3,5−ジ−
tert−ブチル−4−ハイドロキシトルエンを0.1重量部
配合した。次いで該混合物をスクリュー式押出機(スク
リュー径:25mm,L/D=25,サーモプラスチックス社製)を
用いて、設定温度190℃で溶融混練を行なった。引き続
き、該混合溶融物を押出機に付属するオリフィス径2mm
の紡糸ダイより溶融紡糸した。押出溶融物は180cmのエ
アーギャップで36倍のドラフト比で引き取られ、空気中
にて冷却、固化し、未延伸繊維を得た。さらに該未延伸
繊維を次の条件で延伸した。
三台のゴデットロールを用いて二段延伸を行なった。
このとき第1延伸槽の熱媒はn−デカンであり、温度は
110℃、第2延伸槽の熱媒はトリエチレングリコールで
あり、温度は145℃であった。槽の有効長はそれぞれ50c
mであった。延伸に際しては第1ゴデットロールの回転
速度を0.5m/分として第3ゴデットロールの回転速度を
変更することにより、所望の延伸比の配向繊維を得た。
第2ゴデットロールの回転速度は安定延伸可能な範囲で
適宜選択した。初期に混合された、パラフィンワックス
はほぼ全量が延伸時n−デカン中に抽出された。このあ
と配向繊維は水洗し、減圧下室温にて一昼夜乾燥し、諸
物性の測定に供した。なお延伸比は、第1ゴデットロー
ルと第3ゴデットロールの回転速度比から計算で求め
た。
<引張特性の測定> 弾性率および引張強度は島津製作所製DCS−50M型引張
試験機を用い、室温(23℃)にて測定した。
このときクランプ間の試料長は100mmであり、引張速
度100mm/分(100%/分歪速度)であった。弾性率は初
期弾性率で接線の傾きを用いて計算した。計算に必要な
繊維断面積は密度を0.960g/ccとして重量から計算で求
めた。
<熱履歴後の引張弾性率、強度保持率> 熱履歴試験はギャーオーブン(パーフェクトオーブ
ン:田葉井製作所製)内に放置することによって行っ
た。
試料は約3mの長さでステンレス枠の両端に複数個の滑
車を装置したものに折り返しかけて試料両端を固定し
た。この際試料両端は試料がたるまない程度に固定し、
積極的に試料に張力はかけなかった。熱履歴後の引張特
性は前述の引張特性の測定の記載に基づいて測定した。
<耐クリープ特性の測定> 耐クリープ性の測定は熱応力歪測定装置TMA/SS10(セ
イコー電子工業社製)を用いて、試料長1cm、雰囲気温
度70℃、荷重は室温での破断荷重の30%に相当する重量
の促進条件下で行なった。クリープ量を定量的に評価す
るため以下の二つの値を求めた。すなわち、試料に荷重
を加えて90秒経過時のクリープ伸び(%)CR90の値と、
この90秒経過時から180秒経過時の間の平均クリープ速
度(sec-1)εの値である。
得られた延伸配向繊維を複数本束ねたマルチフィラメ
ントの引張特性を表1に示す。
超高分子量エチレン・ブテン−1共重合体延伸フィラ
メント(試料−1)の本来の結晶融解ピークは126.7
℃、全結晶融解ピーク面積に対するTpの割合は33.8%で
あった。また耐クリープ性はCR90=3.1%、ε=3.03×1
0-5sec-1であった。さらに170℃、5分間の熱履歴後の
弾性率保持率は102.2%、強度保持率は102.5%で熱履歴
による性能の低下は見られなかった。
また、延伸フィラメントの破断に要する仕事量は10.3
kg・m/gであり、密度は0.973g/cm3であり、誘電率は、
2.2であり、誘電正接は0.024%であり、インパルス電圧
破壊値は180KV/mmであった。
上述した超高分子量エチレン・ブテン−1共重合体か
らなる延伸フィラメント(試料−1)を用いて以下の様
にして釣糸を作製した。250デニール延伸フィラメント
4本を芯とし、外皮に70デニールナイロン糸8本を集束
し、1インチあたり75回撚りかけを撚糸機で行ない釣糸
とした。
この釣糸の強度測定をオートグラフ(島津製DCS−50
M)を用い、チャック間100mm、引張りスピード100mm/
分、室温(23℃)で行なった。結果を表2に示す。
実施例2 <超高分子量エチレン・オクテン−1共重合体の重合> チーグラー系触媒を用いて、n−デカン1を重合溶
媒としてエチレンのスラリー重合を行なった。このとき
共単量体としてオクテン−1を125mlと分子量調整のた
めの水素40Nmlを重合開始前に一括添加し、重合を開始
した。エチレンガスを反応器の圧力が5kg/cm2の一定圧
力を保つように連続供給し重合は70℃、2時間で終了し
た。得られた超高分子量エチレン・オクテン−1共重合
体粉末の収量は178gでその極限粘度[η](デカリン、
135℃)は10.66dl/g、赤外分光光度計によるオクテン−
1共単量体含量は1000炭素原子当り0.5個であった。
<超高分子量エチレン・オクテン−1共重合体延伸配向
物の調製とその物性> 実施例1に記載した方法により延伸配向繊維の調製を
行なった。得られた延伸配向繊維を複数本束ねたマルチ
フィラメントの引張特性を表3に示す。
超高分子量エチレン・オクテン−1共重合体延伸フィ
ラメント(試料−2)の本来の結晶融解ピークは132.1
℃で全結晶融解ピーク面積に対するTpおよびTp1の割合
はそれぞれ97.7%および5.0%であった。試料−2の耐
クリープ性は、CR90=2.0%、ε=9.50×10-6sec-1であ
った。また170℃、5分間の熱履歴の後の弾性率保持率
は108.2%、強度保持率は102.1%であった。さらに試料
−2の破断に要する仕事量は10.1kg・m/gであり、密度
は0.971g/cm3であり、誘電率は2.2であり、誘電正接は
0.031%であり、インパルス電圧破壊値は185KV/mmであ
った。
試料−2を用いて、実施例1に記載した方法により釣
糸を作製した。釣糸の強度測定の結果を表4に示す。
比較例1 超高分子量ポリエレレン(ホモポリマー)粉末(極限
粘度[η]=7.42dl/g、デカリン、135℃):20重量部と
パラフィンワックス(融点=69℃、分子量=490):80重
量部との混合物を実施例1の方法で溶融紡糸、延伸し、
延伸配向繊維を得た。得られた延伸配向繊維を複数本束
ねたマルチフィラメントの引張特性を表5に示す。
超高分子量ポリエチレン延伸フィラメント(試料−
3)本来の結晶融解ピークは135.1℃、全結晶融解ピー
ク面積に対するるピークTpの割合は8.8%であった。ま
た同様に全結晶融解ピーク面積に対する高温側ピークTp
1の割合は1%以下であった。耐クリープ性は、CR90=1
1.9%、ε=1.07×10-3sec-1であった。また170℃、5
分間の熱履歴後の弾性率保持率は80.4%、強度保持率は
78.2%であった。さらに試料−3の破断に要する仕事量
は6.8kg・m/gであり、密度は0.985g/cm3であり、誘電率
は2.3であり、誘電正接は0.030%であり、インパルス電
圧破壊値は182KV/mmであった。表5の試料−3として示
した超高分子量ポリエチレン延伸フィラメントを用いて
実施例1に記載された方法により釣糸を作製した。釣糸
の強度測定結果を表6に示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D07B 1/02 D07B 1/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】極限粘度[η]が少なくとも5dl/gであ
    り、しかも炭素数が3以上のα−オレフィンの含有量が
    炭素数1000個あたり平均0.1〜20個である超高分子量エ
    チレン・α−オレフィン共重合体の分子配向成形体であ
    って、示差走査熱量計で測定したときに超高分子量エチ
    レン・α−オレフィン共重合体本来の結晶融解温度(T
    m)よりも少なくとも20℃高い温度に少なくとも1個の
    結晶融解ピーク(Tp)を有し、かつこの結晶融解ピーク
    (Tp)に基づく結晶融解熱量が全結晶融解熱量に対して
    15%以上である分子配向成形体からなる釣糸。
  2. 【請求項2】α−オレフィンが、ブテン−1、4−メチ
    ルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1またはデ
    セン−1である請求項第1項に記載の釣糸。
  3. 【請求項3】α−オレフィンの含有量が炭素数1000個あ
    たり平均0.5〜10個である請求項第1項に記載の釣糸。
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