JP3082955B2 - 飛翔体抵抗性物 - Google Patents

飛翔体抵抗性物

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JP3082955B2 JP03073215A JP7321591A JP3082955B2 JP 3082955 B2 JP3082955 B2 JP 3082955B2 JP 03073215 A JP03073215 A JP 03073215A JP 7321591 A JP7321591 A JP 7321591A JP 3082955 B2 JP3082955 B2 JP 3082955B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、飛翔体抵抗性物たとえば
装甲板、防弾チョッキ、ヘルメット、ヘリコプターおよ
び他の軍事装置の構造部材、車のパネル、折りがばん、
レインコートおよびかさに用いられる材料に関し、さら
に詳しくは、超高分子量エチレン・α-オレフィン共重
合体の分子配向成形体クロスとマトリックス樹脂とから
なる積層体よりなり、軽量かつ高強度であって耐衝撃性
に優れ、しかも耐候性および耐水性に優れた飛翔体抵抗
性物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】飛翔体抵抗性物は、軽量であると
ともに高強度であって、耐衝撃性に優れ、しかも耐候
性、耐水性に優れていることが要求されている。このよ
うな複合材料中のクロスに用いられる繊維には、アラミ
ド類、たとえばポリ(フェニレンジアミンテレフタルア
ミド)、グラファイト繊維、ガラス繊維などがある。こ
れらの繊維はクロス(織布、編布)の形で使用される。
繊維は複合材料中に埋め込まれている。マトリックスと
しては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ
エーテル樹脂、ポリイミド樹脂がある。飛翔体抵抗性体
として用いられる高強度繊維に要求される因子として
は、高い引張弾性率、高い融点、高い強度および大きい
破断に到るまで衝撃エネルギー吸収量(耐衝撃性)が挙
げられる。これらの複合材料よりなる飛翔体抵抗性物は
その付随的な性質である軽量性、耐水性、耐薬品性など
のいずれかで不満足な面が見られ、しかも飛翔体抵抗性
においても耐衝撃性でも改善すべき点が多々見られる。
【0003】超高分子量のきわめて高い強度のポリエチ
レン材料は、融点が比較的低いにもかかわらず、飛翔体
抵抗性材料として驚くべきほどよい性能をもつことが発
見されている。特開昭58−180635号公報には、
弾道抵抗性物品として超高分子量のきわめて高い強力ポ
リオレフィン材料の中でポリエチレン繊維を最も優れた
弾道抵抗性物品用繊維として以下のように開示してい
る。ポリエチレンの場合においては、分子量が少なくと
も500,000、好ましくは少なくとも1×106
より好ましくは2〜5×106 の間であるものである。
繊維に付与される強力は少なくとも15g/デニール、
好ましくは少なくとも20g/デニール、より好ましく
は少なくとも25g/デニール、最も好ましくは少なく
とも30g/デニールであるべきである。また、繊維の
引張弾性率は少なくとも300g/デニール、好ましく
は少なくとも500g/デニール、より好ましくは少な
くとも1,000g/デニール、最も好ましくは少なく
とも1,500g/デニールである。引張弾性率および
強力についてのこれらの最高の値は、溶液成長またはゲ
ル繊維の方法を用いることによってのみ、一般に得るこ
とができる。さらに該公報では、ポリエチレン糸による
弾道抵抗性物品はアラミド糸を凌ぐ性能と判定してい
る。
【0004】本発明者らは、上記のような知見に鑑み、
鋭意研究したところ、超高分子量エチレン・α-オレフ
ィン共重合体クロスとマトリックス樹脂とからなる積層
体から飛翔体抵抗性物を製造すれば、ポリエチレン糸に
よる場合に比較して抵抗性能の格段の高性能化を達成で
きるばかりでなく、耐熱性に優れ、従来の高強度糸を用
いた場合の問題点が一挙に解決されることを見出して、
本発明を完成するに至った。
【0005】なお、超高分子量ポリエチレンを繊維、テ
ープ等に成形し、これを延伸することにより、高弾性
率、高引張強度を有する分子配向成形体が得られること
は既に知られている。たとえば、特開昭56−1540
8号公報には、超高分子量ポリエチレンの希薄溶液を紡
糸し、得られるフィラメントを延伸することが記載され
ている。また、特開昭59−130313号公報には、
超高分子量ポリエチレンとワックスとを溶融混練し、こ
の混練物を押出し、冷却固化後延伸することが記載さ
れ、さらに特開昭59−187614号公報には、上記
溶融混練物を押出し、ドラフトをかけた後冷却固化し、
次いで延伸することが記載されている。
【0006】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に伴う
問題点を解決しようとするものであって、軽量であると
ともに高強度であって耐衝撃性に優れ、しかも耐候性お
よび耐水性に優れた飛翔体抵抗性物を提供することを目
的としている。
【0007】
【発明の概要】本発明に係る飛翔体抵抗性物は、極限粘
度[η]が少なくとも5dl/gであり、しかも炭素数
3以上のα-オレフィンの含有量が炭素数1000個あ
たり平均0.1〜20個である超高分子量エチレン・α-
オレフィン共重合体の分子配向体クロスと、マトリック
ス樹脂とからなる積層体よりなることを特徴としてい
る。
【0008】本発明に係る飛翔体抵抗性物は、上記のよ
うな超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の分
子配向体クロスと、マトリックス樹脂とからなる積層体
から形成されており、軽量かつ高強度であって耐衝撃性
に優れ、しかも優れた耐候性および耐水性を有してい
る。
【0009】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係る飛翔体抵抗性
物について具体的に説明するが、まず本発明に係る飛翔
体抵抗性物を形成する積層体に用いられる超高分子量エ
チレン・α-オレフィン共重合体の分子配向成形体につ
いて説明する。
【0010】本発明で用いられる分子配向成形体を構成
する超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体とし
ては、超高分子量エチレン・プロピレン共重合体、超高
分子量エチレン・1-ブテン共重合体、超高分子量エチレ
ン・4-メチル-1- ペンテン共重合体、超高分子量エチレ
ン・1-ヘキセン共重合体、超高分子量エチレン・1-オク
テン共重合体、超高分子量エチレン・1-デセン共重合体
などのエチレンと炭素原子数が3〜20、好ましくは4
〜10のα-オレフィンとの超高分子量エチレン・α-オ
レフィン共重合体を例示することができる。この超高分
子量エチレン・α-オレフィン共重合体では、炭素数3
以上のα-オレフィンは、該重合体の炭素数1000個
当り0.1〜20個、好ましくは0.5〜10個、さらに
好ましくは1〜7個の量で含有されている。
【0011】このような超高分子量エチレン・α-オレ
フィン共重合体から得られる分子配向成形体は、超高分
子量ポリエチレンから得られる分子配向成形体と比較し
て、特に耐衝撃性および耐クリープ性に優れている。し
かもこの超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体
は、軽量であって高強度であり、耐摩耗性、耐衝撃性、
耐クリープ性に優れ、耐候性、耐水性、耐塩水性に優れ
ている。
【0012】本発明で用いられる分子配向成形体を構成
する超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体は、
その極限粘度[η]が5dl/g以上、好ましくは7〜
30dl/gの範囲にあり、この共重合体から得られる
分子配向成形体の機械的特性あるいは耐熱性が優れてい
る。すなわち、分子端末は繊維強度に寄与せず、分子端
末の数は分子量(粘度)の逆数であることから、極限粘
度[η]の大きいものが高強度を与える。
【0013】本発明で用いられる分子配向成形体の密度
は、0.940〜0.990g/cm 3 、好ましくは0.
960〜0.985g/cm3 である。ここで密度は、
常法(ASTM D 1505) に従い、密度勾配管法にて測定し
た。このときの密度勾配管は四塩化炭素とトルエンを用
いることにより調製し、測定は常温(23℃)で行なっ
た。
【0014】本発明で用いられる分子配向成形体の誘電
率(1kHz、23℃)は、1.4〜3.0、好ましくは
1.8〜2.4であり、正電正接(1kHz、80℃)
は、0.050〜0.008%、好ましくは0.040〜
0.010%である。ここで、誘電率および正電正接
は、繊維およびテープ状の分子配向体を一方向に緻密に
引き揃え、フィルム状にした試料を用い、ASTM D 150に
よって測定した。
【0015】本発明で用いられる分子配向成形体の延伸
倍率は5〜80倍、好ましくは10〜50倍である。本
発明で用いられる分子配向成形体における分子配向の程
度は、X線回析法、複屈折法、螢光偏光法等で知ること
ができる。本発明の超高分子量重合体が延伸フィラメン
トの場合、たとえば呉祐吉、久保輝一郎:工業化学雑誌
第39巻、992頁(1939)に詳しく述べられている半
価巾による配向度、すなわち式 (式中、H°は赤道線上最強のパラトロープ面のデバイ
環に沿っての強度分布曲線の半価幅(°)である。)で
定義される配向度(F)が0.90以上、特に0.95以
上となるように分子配向されていることが、機械的性質
の点で望ましい。
【0016】さらに、本発明で用いられる分子配向成形
体は、前述のように、機械的特性にも優れており、たと
えば延伸フィラメントの形状で20GPa 以上、特に3
0GPa 以上の弾性率と、1.2GPa 以上、特に1.5
GPa 以上の引張強度とを有している。
【0017】本発明で用いられる分子配向成形体のイン
パルス電圧破壊値は、110〜250kV/mm好まし
くは150〜220kV/mmである。インパルス電圧
破壊値は、誘電率の場合と同様な試料を用い、銅板上で
黄銅(25mmφ)のJIS型電極により、負極性のイ
ンパルスを2kV/3回ステップで加えながら昇圧し、
測定した。
【0018】本発明で用いられる分子配向成形体が超高
分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の分子配向成
形体である場合には、この分子配向成形体は耐衝撃性、
破断エネルギーおよび耐クリープ性が著しく優れている
という特徴を有している。これらの超高分子量エチレン
・α-オレフィン共重合体の分子配向成形体の特徴は、
以下の物性によって表わされる。
【0019】本発明で用いられる超高分子量エチレン・
α-オレフィン共重合体の分子配向成形体の破断エネル
ギーは、8kg・m/g以上、好ましくは10kg・m
/g以上である。
【0020】また、本発明で用いられる超高分子量エチ
レン・α-オレフィン共重合体の分子配向成形体は、耐
クリープ性に優れている。とくに、常温クリープ性の促
進条件に相当する高温下での耐クリープ特性に際立って
優れており、荷重を30%破断荷重として、雰囲気温度
を70℃とし、90秒後の伸び(%)として求めたクリ
ープが7%以下、特に5%以下であり、さらに90秒か
ら180秒後のクリープ速度(ε,sec-1)が4×1
-4sec-1以下、特に5×10-5sec-1以下であ
る。
【0021】本発明で用いられる分子配向体のうちで、
超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の分子配
向体は、前述の常温物性を有しているが、さらにこれら
の常温物性に加えて、次の熱的性質を兼備していると、
前述の常温物性がさらに向上し、耐熱性にも優れている
ので好ましい。
【0022】本発明で用いられる超高分子量エチレン・
α-オレフィン共重合体の分子配向成形体は、該共重合
体本来の結晶融解温度(Tm)よりも少なくとも20℃
高い温度に少なくとも1個の結晶融解ピーク(Tp)を
有し、この結晶融解ピーク(Tp)に基づく融解熱量
が、該重合体の全融解熱量の15%以上、好ましくは2
0%以上、特に30%以上である。
【0023】超高分子量エチレン共重合体本来の結晶融
解温度(Tm)は、この成形体を一度完全に融解した後
冷却して、成形体における分子配向を緩和させた後、再
度昇温させる方法、いわゆる示差走査型熱量計における
セカンド・ランで求めることができる。
【0024】さらに説明すると、本発明で用いられる分
子配向成形体では、前述した共重合体本来の結晶融解温
度域には結晶融解ピークは全く存在しないか、存在する
としても極くわずかにテーリングとして存在するにすぎ
ない。結晶融解ピーク(Tp)は一般に、温度範囲Tm
+20℃〜Tm+50℃、特にTm+20℃〜Tm+1
00℃の領域に表わされるのが普通であり、このピーク
(Tp)は上記温度範囲内に複数個のピークとして表わ
れることが多い。すなわち、この結晶融解ピーク(T
p)は、温度範囲Tm+35℃〜Tm+100℃におけ
る高温側融解ピーク(Tp1)と、温度範囲Tm+20
℃〜Tm+35℃における低温側融解ピーク(Tp2
との2つに分離して表われることが多く、分子配向成形
体の製造条件によっては、Tp1やTp2がさらに複数個
のピークから成ることもある。
【0025】これらの高い結晶融解ピーク(Tp1,T
2)は、超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体
の分子配向成形体の耐熱性を著しく向上させ、かつ高温
の熱履歴後での強度保持率あるいは弾性率保持率に寄与
するものであると思われる。
【0026】また温度範囲Tm+35℃〜Tm+100
℃の高温側融解ピーク(Tp1)に基づく融解熱量の総
和は、全融解熱量当り、1.5%以上、特に3.0%以上
にあることが望ましい。
【0027】また高温側融解ピーク(Tp1)に基づく
融解熱量の総和が上述の値を満している限りにおいて
は、高温側融解ピーク(Tp1)が主たるピークとして
突出して現われない場合、つまり小ピークの集合体もし
くはブロードなピークになったとしても、耐熱性は若干
失われる場合もあるが、耐クリープ特性については優れ
ている。
【0028】本発明における融点および結晶融解熱量は
以下の方法により測定した。融点は示差走査熱量計で以
下のように測定した。示差走査熱量計としては、DSC II
型(パーキンエルマー社製)を用いた。試料は約3mg
を4mm×4mm、厚さ0.2mmのアルミ板に巻きつ
けることにより配向方向に拘束した。次いでアルミ板に
巻きつけた試料をアルミパンの中に封入し、測定用試料
とした。また、リファレンスホルダーに入れる、通常空
のアルミパンには、試料に用いたと同じアルミ板を封入
し、熱バランスを取った。まず試料を30℃で約1分間
保持し、その後10℃/分の昇温速度で250℃まで昇
温し、第1回目昇温時の融点測定を完了した。引き続き
250℃の状態で10分間保持し、次いで20℃/分の
降温速度で降温し、さらに30℃で10分間試料を保持
した。次いで二回目の昇温を10℃/分の昇温速度で2
50℃まで昇温し、この際2回目昇温時(セカンドラ
ン)の融点測定を完了した。このとき融解ピークの最大
値をもって融点とした。ショルダーとして現われる場合
は、ショルダーのすぐ低温側の変曲点とすぐ高温側の変
曲点で接線を引き交点を融点とした。
【0029】また吸熱曲線の60℃と240℃との点を
結び該直線(ベースライン)と二回目昇温時の主融解ピ
ークとして求められる超高分子量エチレン共重合体本来
の結晶融解温度(Tm)より20℃高い点に垂線を引
き、これらによって囲まれた低温側の部分を超高分子量
エチレン共重合体本来の結晶融解(Tm)に基づくもの
とし、また高温側の部分を本発明成形体の機能を発現す
る結晶融解(Tp)に基づくものとし、それぞれの結晶
融解熱量は、これらの面積より算出した。また、Tp1
およびTp2 の融解に基づく融解熱量も上述の方法に従
い、Tm+20℃からの垂線とTm+35℃からの垂線
に囲まれた部分をTp2 の融解に基づく融解熱量のもの
とし、高温側部分をTp1 の融解に基づく融解熱量のも
のとして同様に算出した。
【0030】本発明で用いられる超高分子量エチレン・
α-オレフィン共重合体の延伸フィラメントは、170
℃で5分間の熱履歴を与えた後での強度保持率が95%
以上で、弾性率保持率が90%以上、特に95%以上で
あり、従来のポリエチレンの延伸フィラメントには全く
認められない優れた耐熱性を有している。
【0031】超高分子量ポリオレフィンの分子配向成形
体の製造方法 前述の高弾性、高引張強度を有する超高分子量ポリオレ
フィン延伸物を得る方法としては、たとえば、特開昭5
6−15408号公報、特開昭58−5228号公報、
特開昭59−130313号公報、特開昭59−187
614号公報等に詳述されているような、超高分子量ポ
リオレフィンを稀薄溶液にするか、あるいは超高分子量
ポリオレフィンにパラフィン系ワックスなどの低分子量
化合物を添加して超高分子量ポリオレフィンの延伸性を
改良して高倍率に延伸する方法を例示することができ
る。
【0032】超高分子量エチレン・α-オレフィン共重
合体の分子配向成形体の製造方法 次に超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の分
子配向成形体の製造方法を、その理解が容易なように、
原料、製造方法および目的の順に以下に説明する。
【0033】原 料 本発明で用いられる超高分子量エチレン・α-オレフィ
ン共重合体は、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィ
ンとを、チーグラー系触媒を使用し、たとえば有機溶媒
中でスラリー重合させることにより得られる。
【0034】炭素数3以上のα-オレフィンとしては、
プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン
-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1などが用いら
れるが、このうち特にブテン-1、4-メチルペンテン-1、
ヘキセン-1、オクテン-1などが好ましい。このようなα
-オレフィンは、得られる共重合体の炭素数1000個
当り前述の量で存在するようにエチレンと共重合され
る。また、本発明で分子配向体を製造する際にベースと
して用いられる超高分子量エチレン・α-オレフィン共
重合体は、前述した極限粘度[η]に対応する分子量を
有するべきである。
【0035】本発明で用いられる超高分子量エチレン・
α-オレフィン共重合体中のα-オレフィン成分の定量
は、赤外分光光度計(日本分光工業製)によって行なわ
れる。具体的には、エチレン鎖の中に取り込まれたα-
オレフィンのメチル基の変角振動を表わす1378cm
-1の吸光度を、赤外分光光度計により測定し、この値
を、あらかじめ13C核磁気共鳴装置にて、モデル化合物
を用いて作成した検量線にて1000炭素原子当りのメ
チル分枝数に換算することにより、超高分子量エチレン
・α-オレフィン共重合体中のα-オレフィン量を定量す
る。
【0036】製造方法 本発明では、上記超高分子量エチレン・α-オレフィン
共重合体から分子配向体を製造するに際して、該共重合
体に希釈剤を配合する。このような希釈剤としては、超
高分子量エチレン共重合体に対する溶剤あるいは超高分
子量エチレン共重合体に対して分散性を有する各種ワッ
クス状物が用いられる。
【0037】このような溶剤としては、前記共重合体の
融点以上の沸点、さらに好ましくは前記共重合体の融点
よりも20℃以上高い沸点を有する溶剤が用いられる。
このような溶剤としては、具体的には、n-ノナン、n-デ
カン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-
オクタデカンあるいは流動パラフィン、灯油等の脂肪族
炭化水素系溶媒;キシレン、ナフタリン、テトラリン、
ブチルベンゼン、p-シメン、シクロヘキシルベンゼン、
ジエチルベンゼン、ベンチルベンゼン、ドデシルベンゼ
ン、ビシクロヘキシル、デカリン、メチルナフタリン、
エチルナフタリン等の芳香族炭化水素系溶媒あるいはそ
の水素化誘導体;1,1,2,2-テトラクロロエタン、ペンタ
クロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,2,3-トリクロロ
プロパン、ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼ
ン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、パラ
フィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、
芳香族系プロセスオイル等の鉱油が挙げられる。
【0038】また希釈剤としてのワックス類としては、
具体的には脂肪族炭化水素化合物あるいはその誘導体が
用いられる。このような脂肪族炭化水素化合物として
は、飽和脂肪族炭化水素化合物を主体とし、通常、分子
量が2000以下、好ましくは1000以下、さらに好
ましくは800以下のパラフィン系ワックスと呼ばれる
化合物が用いられる。
【0039】このような脂肪族炭化水素化合物として
は、具体的には、ドコサン、トリコサン、テトラコサ
ン、トリアコンタン等の炭素数22以上のn-アルカンあ
るいはこれらを主成分とした低級n-アルカンとの混合
物、石油から分離精製されたいわゆるパラフィンワック
ス、エチレンあるいはエチレンと他のα-オレフィンと
を共重合して得られる低分子量重合体である中・低圧法
ポリエチレンワックス、高圧法ポリエチレンワックス、
エチレン共重合ワックスあるいは中・低圧法ポリエチレ
ン、高圧法ポリエチレン等のポリエチレンを熱減成等に
より分子量を低下させたワックス、それらのワックスの
酸化物あるいはマレイン酸変性等の酸化ワックス、マレ
イン酸変性ワックス等が用いられる。
【0040】また脂肪族炭化水素化合物誘導体として
は、たとえば脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニ
ル基)の末端もしくは内部に1個またはそれ以上、好ま
しくは1〜2個、特に好ましくは1個のカルボキシル
基、水酸基、カルバモイル基、エステル基、メルトカプ
ト基、カルボニル基等の官能基を有する化合物である炭
素数8以上、好ましくは炭素数12〜50または分子量
130〜2000、好ましくは200〜800の脂肪
酸、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド、脂肪酸エステ
ル、脂肪族メルカプタン、脂肪族アルデヒド、脂肪族ケ
トン等が用いられる。
【0041】このような脂肪族炭化水素化合物誘導体と
しては、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリス
チン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸など
の脂肪酸;ラウリンアルコール、ミリスチルアルコー
ル、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂
肪族アルコール;カプリンアミド、ラウリンアミド、パ
ルミチンアミド、ステアリルアミドなどの脂肪酸アミ
ド、ステアリル酢酸エステルなどの脂肪酸エステル等が
用いられる。
【0042】超高分子量エチレン・α-オレフィン共重
合体と希釈剤とは、これらの種類によっても相違する
が、一般的に3:97〜80:20、特に15:85〜
60:40の重量比で用いられる。希釈剤の量が上記範
囲よりも少い場合には、溶融粘度が高くなり過ぎ、溶融
混練や溶融成形が困難となるとともに、得られる成形体
の肌荒れが著しく、延伸切れ等を生じ易い。一方、希釈
剤の量が上記範囲よりも多いと、やはり溶融混練が困難
となり、また得られる成形体の延伸性が劣るようにな
る。
【0043】溶融混練は、一般に150〜300℃、特
に170〜270℃の温度で行なわれる。上記範囲より
も低い温度では、溶融粘度が高すぎて、溶融成形が困難
となり、また上記範囲よりも高い場合には、熱減成によ
り超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の分子
量が低下し、優れた高弾性率および高強度を有する成形
体を得ることが困難となる。なお、配合はヘンシェルミ
キサー、V型ブレンダー等による乾式ブレンドで行なっ
てもよいし、あるいは単軸押出機または多軸押出機を用
いて行なってもよい。
【0044】超高分子量エチレン・α-オレフィン共重
合体と希釈剤とからなるドープ(紡糸原液)の溶融成形
は、一般に溶融押出成形により行なわれる。具体的に
は、ドープを紡糸口金を通して溶融押出することによ
り、延伸用フィラメントが得られる。この際、紡糸口金
より押出された溶融物にドラフト、すなわち溶融状態で
の引き伸しを加えることもできる。溶融樹脂のダイ・オ
リフィス内での押出速度V 0 と冷却固化した未延伸物の
巻き取り速度Vとの比をドラフト比として次式で定義す
ることができる。
【0045】ドラフト比=V/V0 このようなドラフト比は、混合物の温度および超高分子
量エチレン共重合体の分子量等により変化するが、通常
は3以上、好ましくは6以上とすることができる。
【0046】次に、このようにして得られた超高分子量
エチレン・α-オレフィン共重合体の未延伸成形体を、
延伸処理する。延伸は、超高分子量エチレン・α-オレ
フィン共重合体から得られた未延伸成形体に少なくとも
一軸方向の分子配向が有効に付与されるように行なわれ
る。
【0047】超高分子量エチレン・α-オレフィン共重
合体から得られる未延伸成形体の延伸は、一般に40〜
160℃、特に80〜145℃の温度で行なわれる。未
延伸成形体を上記温度に加熱保持するための熱媒体とし
ては、空気、水蒸気、液体媒体の何れをも用いることが
できる。しかしながら、熱媒体として、前述した希釈剤
を溶出除去することができる溶媒で、しかもその沸点が
成形体組成物の融点よりも高い液体媒体、具体的には、
デカリン、デカン、灯油等を使用して、延伸操作を行な
うと、前述した希釈剤の除去が可能となるとともに、延
伸時の延伸むらが生ぜずしかも高延伸倍率の達成が可能
となるので好ましい。
【0048】超高分子量エチレン・α-オレフィン共重
合体から希釈剤を除去する手段は、前記方法に限らず、
未延伸物をヘキサン、ヘプタン、熱エタノール、クロロ
ホルム、ベンゼン等の溶剤で処理後延伸する方法、延伸
物をヘキサン、ヘプタン、熱エタノール、クロロホル
ム、ベンゼン等の溶剤で処理する方法によっても、成形
物中の希釈剤を除去することによって、高弾性率、高強
度の延伸物を得ることができる。
【0049】延伸操作は、一段あるいは二段以上の多段
で行なうことができる。延伸倍率は、所望とする分子配
向およびこれに伴う融解温度向上の効果にも依存する
が、一般に5〜80倍、好ましくは10〜50倍であ
る。
【0050】一般には、二段以上の多段延伸により延伸
操作を行なうことが好ましく、一段目では80〜120
℃の比較的低い温度で押出成形体中の希釈剤を抽出しな
がら延伸操作を行ない、二段目以降では120〜160
℃の温度でしかも一段目延伸温度よりも高い温度で成形
体の延伸操作を行なうことが好ましい。
【0051】一軸延伸操作の場合には、周速の異なるロ
ーラ間で引張延伸を行なえばよい。このようにして得ら
れた分子配向成形体は、所望により拘束条件下に熱処理
することができる。この熱処理は、一般に140〜18
0℃、好ましくは150〜175℃の温度で、1〜20
分間、好ましくは3〜10分間行なうことができる。熱
処理により、配向結晶部の結晶化が一層進行し、結晶融
解温度の高温側への移行、強度および弾性率の向上、さ
らには高温での耐クリープ性の向上がもたらされる。
【0052】本発明で用いられるクロスは、上記のよう
な超高分子量ポリオレフィンの繊維状分子配向体または
超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の繊維状
分子配向体を用いて形成されるが、繊維状分子配向体か
らクロスを形成する際の織り方の種類は問わないが、具
体的には平織、朱子織、あや織などが用いられる。
【0053】なお、必要に応じて、超高分子量エチレン
・α-オレフィン共重合体の分子配向成形体により構成
されてなるクロス、または超高分子量エチレン・α-オ
レフィン共重合体の分子配向成形体に、いわゆるコロナ
放電処理、プラズマ放電処理、放射線(電子線、γ線)
照射処理、紫外線照射処理等の表面処理を行なうことが
できる。
【0054】本発明では、マトリックス樹脂として、熱
可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性
樹脂としては、具体的には、ポリエチレン、エチレン・
α-オレフィン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリブテン
などが用いられる。なおエチレン・α-オレフィン共重
合体として、たとえばエチレン・多環状オレフィン共重
合体が好ましく用いられ、前記エチレン・多環状オレフ
ィン共重合体としては、具体的には、40〜90モル%
の範囲内のエチレン繰返し単位と、60〜10モル%の
範囲内の下記の一般式[I]または一般的[II]で表わ
される繰返し単位とからなるランダム共重合体(エチレ
ン・多環状オレフィン共重合体)などが用いられる。
【0055】
【化1】
【0056】(一般式[I]、[II]において、R1
10は、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であ
って、各々同一または異なっていてもよく、R5 〜R8
が複数回繰り返される場合には、これらR5 〜R8 はそ
れぞれ同一または異なっていてもよい。pおよびqは、
いずれも0もしくは正の整数であり、rは3以上の整数
である。)このランダム共重合体は、デカリン溶媒中、
135℃で測定した極限粘度[η]が0.03〜10d
l/gであり、X線回折による結晶化度が10%以下で
あり、沃素価が5以下であり、かつガラス転移温度(T
g)が50〜250℃の範囲内にあることが好ましい。
このうち極限粘度[η]が0.1〜5dl/gであり、
結晶化度が5%以下であり、沃素価が1以下であり、か
つガラス転移温度が60〜200℃の範囲内にあるラン
ダム共重合体が特に好ましい。
【0057】また熱硬化性樹脂としては、具体的には、
エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹
脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、キシレ
ン・ホルムアルデヒド樹脂などが用いられる。このうち
エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂が好まし
い。
【0058】上記のような超高分子量エチレン・α-オ
レフィン共重合体の分子配向体クロスとマトリックス樹
脂とからなる積層体では、前記クロスは20〜85容積
%、好ましくは40〜75容積%の量で用いられ、また
マトリックス樹脂は80〜15容積%、好ましくは60
〜25容積%の量で用いられる。
【0059】本発明で用いられる積層体は、1枚の超高
分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の分子配向成
形体クロス層とマトリックス樹脂層とから構成される積
層体であってもよく、また2枚以上の上記クロス層がマ
トリックス樹脂層とともに互いに複合されて構成される
多層積層体であってもよい。
【0060】1枚の分子配向成形体クロス層とマトリッ
クス樹脂層とから構成される積層体は、マトリックス樹
脂たとえばポリオレフィンをトルエンなどの有機溶媒に
溶解して、この溶液で、前記分子配向体からなるクロス
の表面を処理してクロスにマトリックス樹脂を付着させ
た後、予備乾燥してプレス成形することなどにより製造
される。
【0061】また2枚以上の分子配向成形体クロス層が
マトリックス樹脂層とともに互いに複合されて構成され
る多層積層体は、マトリックス樹脂たとえばポリオレフ
ィンをトルエンなどの有機溶媒に溶解して、この溶液
で、前記分子配向成形体からなるクロスの表面を処理し
てクロスにマトリックス樹脂を付着させた後、予備乾燥
し、次いで予備乾燥して得られたクロスを、2枚以上重
ね合わせてプレス成形することなどにより製造される。
【0062】本発明で用いられる積層体における分子配
向成形体からなるクロスにマトリックス樹脂を付着させ
るには、上記のようにマトリックス樹脂の溶液を準備
し、この溶液にクロスを含浸させてもよく、またこの溶
液をロールコータなどによってクロス上に塗布してもよ
い。さらに、マトリックス樹脂の粉末を準備し、この粉
末をクロス上に付着させてもよい。
【0063】上記プレス成形条件は、用いられる分子配
向成形体からなるクロスの種類、厚み、および目付、マ
トリックス樹脂の種類および塗布樹脂量など応じて決定
される。
【0064】以上のようにして得られる積層体の曲げ弾
性率は、JIS K 7055による3点曲げ試験で得られる値で
少なくとも3GPa以上であり、好ましくは5GPa以
上である。また本積層体の最大の特徴である衝撃強度
は、ASTM D 3763 により評価して最大荷重時の吸収エネ
ルギー量が少なくとも30J以上、好ましくは40J以
上、また破壊に到るまでの吸収エネルギー量(トータル
エネルギー)は35J以上、好ましくは45J以上であ
る。
【0065】本発明に係る飛翔体抵抗性物は、上記のよ
うにして得られた積層体から、通常の方法により製造さ
れる。上記のような本発明に係る飛翔体抵抗性物は、軽
量かつ高強度であって耐衝撃性に優れ、しかも耐候性お
よび耐水性に優れている。
【0066】
【発明の効果】本発明に係る飛翔体抵抗性物は、上記の
ような超高分子量ポリオレフィンの分子配向体クロスま
たは超高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の分
子配向体クロスと、マトリックス樹脂とからなる積層体
から形成されており、軽量かつ高強度であって耐衝撃性
に優れ、しかも優れた耐候性および耐水性を有してい
る。
【0067】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
【実施例1】[超高分子量エチレン・ブテン-1共重合体
の重合]チーグラー系触媒を用い、n-デカン1リットル
を重合溶媒として、超高分子量エチレン・ブテン-1共重
合体のスラリー重合を行なった。エチレンとブテン-1と
の組成がモル比で97.2:2.35の比率の混合モノマ
ーガスを圧力が5kg/cm2 の一定圧力を保つように
反応器に連続供給した。重合は反応温度70℃で2時間
で終了した。
【0069】得られた超高分子量エチレン・ブテン-1共
重合体の粉末の収量は160gで極限粘度[η](デカ
リン:135℃)は8.2dl/g、赤外分光光度計に
よるブテン-1含量は1000炭素原子あたり1.5個で
あった。[超高分子量エチレン・ブテン-1共重合体延伸
配向物の調製]上述の重合により得られた超高分子量エ
チレン・ブテン-1共重合体粉末20重量部とパラフィン
ワックス(融点;69℃、分子量;490)80重量部
との混合物を次の条件で溶融紡糸した。
【0070】該混合物100重量部にプロセス安定剤と
して3,5-ジ-tert-ブチル-4-ハイドロキシトルエンを0.
1重量部配合した。次いで該混合物をスクリュー式押出
機(スクリュー径;25mm、L/D;25、サーモプ
ラスチックス社製)を用いて、設定温度190℃で溶融
混練を行なった。引き続き、該混合溶融物を押出機に付
属するオリフィス径2mmの紡糸ダイより溶融紡糸し
た。押出溶融物は180cmのエアーギャップで36倍
のドラフト比で引き取られ、空気中にて冷却、固化し、
未延伸繊維を得た。さらに該未延伸繊維を次の条件で延
伸した。
【0071】三台のゴデットロールを用いて二段延伸を
行なった。このとき第一延伸槽の熱媒はn-デカンであ
り、温度は110℃、第二延伸槽の熱媒はトリエチレン
グリコールであり、温度は145℃であった。槽の有効
長はそれぞれ50cmであった。延伸に際しては、第1
ゴデットロールの回転速度を0.5m/分として第3ゴ
デットロールの回転速度を変更することにより、所望の
延伸比の配向繊維を得た。第2ゴデットロールの回転速
度は、安定延伸可能な範囲で適宜選択した。初期に混合
されたパラフィンワックスは、ほぼ全量が延伸時n-デカ
ン中に抽出された。このあと配向繊維は、水洗し、減圧
下室温にて一昼夜乾燥し、諸物性の測定に供した。なお
延伸比は、第1ゴデットロールと第3ゴデットロールの
回転速度比から計算で求めた。[引張特性の測定]弾性
率および引張強度は島津製作所製DCS-50M型引張試験機
を用い、室温(23℃)にて測定した。
【0072】この時クランプ間の試料長は100mmで
あり、引張速度100mm/分(100%/分歪速度)
であった。弾性率は初期弾性率で接線の傾きを用いて計
算した。計算に必要な繊維断面積は密度を0.960g
/ccとして重量から計算で求めた。[熱履歴後の引張
弾性率、強度保持率]熱履歴試験はギヤーオーブン(パ
ーフェクトオーブン:田葉井製作所製)内に放置するこ
とによって行なった。
【0073】試料は約3mの長さでステンレス枠の両端
に複数個の滑車を装置したものに折り返しかけて試料両
端を固定した。この際試料両端は試料がたるまない程度
に固定し、積極的に試料に張力はかけなかった。熱履歴
後の引張特性は、前述の引張特性の測定の記載に基づい
て測定した。[耐クリープ性の測定]耐クリープ性の測
定は熱応力歪測定装置 TMA/SS10(セイコー電子工業社
製)を用いて、試料長1cm、雰囲気温度70℃、荷重
は室温での破断荷重の30%に相当する重量の促進条件
下で行なった。クリープ量を定量的に評価するため以下
の二つの値を求めた。すなわち荷重後、90秒後のクリ
ープ伸び(%)CR90、そして90秒後から180秒後
の間の平均クリープ速度(sec-1)である。
【0074】表1に得られた延伸配向繊維の引張特性を
示す。
【0075】
【表1】
【0076】超高分子量エチレン・ブテン-1共重合体延
伸フィラメント(試料−1)の配向度は0.975、ま
たこの本来の結晶融解ピークは126.7℃、全結晶融
解ピーク面積に対するTpの割合は33.8%であっ
た。また耐クリープ性はCR90=3.1%、ε=3.03
×10-5sec-1であった。さらに170℃、5分間の
熱履歴後の弾性率保持率は102.2%、強度保持率は
102.5%で熱履歴により性能の低下を示さなかっ
た。
【0077】また、延伸フィラメントの破断に要する仕
事量は10.3kg・m/gであり、密度は0.973g
/cm3 であり、比誘電率は2.2、誘電正接は0.02
4であり、インパルス電圧破壊値は180kV/mmで
あった。
【0078】上記のようにして調製した繊維は100本
に束ねられ、1インチ当り、1回の甘縒りをすることに
より、マルチフィラメントとした。該マルチフィラメン
トの引張特性を表2に示す。なお、マルチフィラメント
の引張特性はインストロン社製万能試験機1123型を用い
て、クランプはタイヤコードグリップ4D(同じくイン
ストロン社製)で試料長10インチ、引張速度10イン
チ/分で測定した。
【0079】
【表2】
【0080】
【実施例2】[超高分子量エチレン・オクテン-1共重合
体の重合]チーグラー系触媒を用いて、n-デカン1リッ
トルを重合溶媒としてエチレンのスラリー重合を行なっ
た。このとき、共単量体としてオクテン-1を125ml
と分子量調整のための水素40Nmlを重合開始前に添
加し、重合を開始した。エチレンガスを反応器の圧力が
5kg/cm2 の一定圧力を保つように連続供給し、重
合は70℃、2時間で終了した。得られた超高分子量エ
チレン・オクテン-1共重合体粉末の収量は178gであ
り、その極限粘度[η](デカリン、135℃)は1
0.66dl/gであり、赤外分光光度計によるオクテ
ン-1共単量体含量は1000炭素原子当り0.5個であ
った。[超高分子量エチレン・オクテン-1共重合体延伸
配向物の調製とその物性]実施例1に記載した方法によ
り延伸配向繊維の調製を行なった。
【0081】表3に得られた超高分子量エチレン・オク
テン-1共重合体延伸配向繊維の引張特性を示す。
【0082】
【表3】
【0083】超高分子量エチレン・オクテン-1共重合体
延伸フィラメント(試料−2)の配向度は0.978、
またこの本来の結晶融解ピークは131.1℃で全結晶
融解ピーク面積に対するTpおよびTp1 の割合はそれ
ぞれ97.7%および5.0%であった。試料−2フィラ
メントの耐クリープ性はCR90=2.0%、ε=9.50
×10-6sec-1であった。また、170℃、5分間の
熱履歴の後の弾性率保持率は108.2%であり、強度
保持率は102.1%であった。さらに試料−2フィラ
メントの破断に要する仕事量は10.1kg・m/gで
あり、密度は0.971g/cm3 であり、比誘電率は
2.2、誘電正接は0.031であり、インパルス電圧破
壊値は185kV/mmであった。
【0084】上述のようにして調製した繊維は100本
に束ねられ、1インチ当り、1回の甘縒りをすることに
より、マルチフィラメントとした。該マルチフィラメン
トの引張特性を表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
【実施例3】[各種クロスの仕様]実施例1および2で
調製したマルチフィラメントを用いて、クロス(繊維織
物)を得た。得られたクロスの仕様を後で耐衝撃性を比
較する。リファレンスクロスの仕様と共に表5に示し
た。
【0087】
【表5】
【0088】ここで用いたクロス織物組織は全て、平織
りである。リファレンスクロスとしてNo. 3は鐘紡
(株)製ポリエチレン織物:品番PT 837、No. 4は鐘
紡(株)製ケブラー49織物:品番K 281 、No. 5は東
レ(株)製トレカT-300 織物:品番6343、No. 6は日
東紡(株)製Tガラス織物:品番WFT230N-100 を用い
た。
【0089】織り密度は縦×横1インチ当りの糸の打ち
込み数であり、坪量は1平方メートル当りの織り上りク
ロス1枚の重量(g)である。No. 3のポリエチレン
織物は超高分子量エチレン重合体を用いた高弾性率、高
強度繊維よりなる織物であるとされている(鐘紡(株)
カタログ)。[積層体の調製方法]マトリックス樹脂は
昭和高分子(株)製ビニルエステル樹脂リポキシRT-88
3、硬化触媒は日本油脂製パーロイルLを用いた。これ
らの配合比率はリポキシRT-883:パーロイルL=10
0:1である。調製積層体の目標板厚を約1mmとし、
クロス体積分率が約60%となるようにクロスの枚数を
それぞれ設定した。従ってこの結果、クロスの枚数は各
試料でNo. 1〜3は各4枚、No. 4は5枚、No.
5は6枚、No. 6は8枚となった。成形は80℃で5
分間、約10kg/cm2 の圧力をかけて行なった。さ
らにポストキュアーを100℃で2時間行ない、クロス
とマトリックス樹脂からなる積層体を得ることができ
た。[衝撃強度]ASTM D 3763 により評価を行なった。
試験片寸法は150×150mmとし、以下の条件で衝
撃試験を行なった。
【0090】プローブ径:1/2インチ バックアップリング径:1インチ 試験速度:1m/sec 結果を表6に示す。
【0091】
【表6】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 A42B 3/00 - 7/00 F41H 1/00 - 1/08 F41H 5/00 - 5/26 WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極限粘度[η]が少なくとも5dl/gで
    あり、しかも炭素数が3以上のα−オレフィンの含有量
    が炭素数1000個あたり平均0.1〜20個である超
    高分子量エチレン・α−オレフィン共重合体の分子配向
    成形体クロスと、マトリックス樹脂とからなる積層体
    あって、前記分子配向成形体クロスの1平方メートル当
    たりの織り上がりクロス1枚の重量150gに換算した
    ときに、前記積層体の最大荷重時の吸収エネルギー量が
    30J(ASTM D 3763により評価)以上である積層体
    りなる飛翔体抵抗性物。
  2. 【請求項2】 α-オレフィンが、ブテン-1、4-メチル
    ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1またはデセン-1で
    ある請求項1に記載の飛翔体抵抗性物。
  3. 【請求項3】 前記積層体が、前記超高分子量エチレン
    ・α−オレフィン共重合体の分子配向成形体クロスを2
    0〜85容積%、前記マトリックス樹脂を80〜15容
    積%の量で含むことを特徴とする請求項1または2に記
    載の飛翔体抵抗性物。
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