JPH06597A - 溶融金属の非金属介在物除去装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】溶鋼に対してほぼ垂直な移動磁場を、旋回槽の
全周にわたって印加することができ、消費電気量の少な
い電磁コイルで少ない電気量であっても良好な効率で溶
融金属から非金属介在物の除去を行うことができる溶融
金属の非金属介在物除去装置を提供する。 【構成】溶融金属を水平回転流として前記溶融金属中の
非金属介在物を分離する円筒状の旋回槽と、旋回槽を外
周を囲むように配置される旋回槽中の溶融金属を水平回
転させる移動磁場を印加する電磁コイルと、旋回槽と電
磁コイルを挟むように配置される浮上槽と、旋回槽と浮
上槽とを互いの下端部分で連通する連通路とを有するこ
とにより前記目的を達成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶融金属を水平回転流
とすることにより、溶融金属より非金属介在物を分離・
除去する溶融金属中の非金属介在物除去装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】高級薄鋼板の製造技術のなかで、溶融金
属段階での非金属介在物除去は製品の不良率を大きく左
右する技術である。近年の溶融金属清浄化技術の動向と
しては、溶融金属を水平回転せしめ介在物を浮上させる
という方法がある。

【０００３】この方法は、溶融金属（以下、溶鋼とす
る）を旋回槽に充填し、溶鋼（および非金属介在物）に
水平回転による遠心力を与え、その比重差により非金属
介在物を旋回中心に集め、衝突、吸着、凝集合体を促進
することにより分離するという技術である。このような
非金属介在物の除去を実施する装置として、例えば連続
鋳造のタンディッシュ等においては、溶鋼を旋回するタ
ンディッシュに下方が開放する堰を設けて溶鋼の回転部
と非回転部とを設け、溶鋼を回転する移動磁場を印加す
るための円弧型の電磁コイルを前記回転部に対面して配
備したタンディッシュが知られている（特開平１−３１
２０２４号公報等）。

【０００４】図４にこのようなタンディッシュの概略斜
視図を、図５の（ａ）に同概略平面図および（ｂ）に概
略断面図を示す。図示例のタンディッシュ５０は、耐火
物製の堰５２に分離されることによって円筒状の旋回槽
５４、および浮上槽５６との２槽構成とされる。また、
堰５２は下端部分が開放されており、従って、旋回槽５
４と浮上槽５６とはここで連通されている。また、旋回
槽５４に対面して、ここに充填された溶鋼を水平回転す
るための移動磁場を印加する、半円弧状の電磁コイル５
８が配置される。

【０００５】タンディッシュ５０において、上部に配置
される取鍋からの溶鋼は供給ノズル６０より旋回槽５４
に供給される。旋回槽５４に供給された溶鋼は、電磁コ
イルから印加される移動磁場によって水平回転流とされ
る。これによって軽量である溶鋼中の非金属介在物は回
転中心に凝集合し、浮上する。他方、旋回槽５４内で回
転した溶鋼の回転外周側は清浄な溶鋼となり、堰５２の
下端部分より浮上槽５６に流入して、ノズル６２より連
続鋳造用のモールド等に供給される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
構成を有するタンディッシュ５０等、従来の旋回槽と浮
上槽を有し、旋回槽において溶鋼を水平回転して非金属
介在物の除去を行う装置においては、旋回槽と浮上槽と
が堰で仕切られているだけであるので、移動磁場発生用
の電磁コイルは旋回槽の浮上槽と対面しない側の部分に
しか配備することができない。

【０００７】従って、溶鋼に対して磁場を垂直に印加す
ることができずに移動磁場が偏って溶鋼に印加されてし
まい、しかも、旋回槽の全周にわたって溶鋼に移動磁場
を印加することができない。そのため、移動磁場による
溶融金属の回転効率が悪くなってしまい、非金属介在物
分離を行うために必要な溶鋼回転力を得るためには、大
型の電磁コイルや電源設備が必要となるために設備に費
用が掛かり、また、必要な溶鋼回転力を得るためには多
量の電力が必要となってしまい、良好な効率で非金属介
在物の除去を行うことができない。

【０００８】本発明の目的は前記従来技術の問題点を解
決することにあり、溶鋼に対して垂直に、かつ旋回槽の
全周にわたって移動磁場を印加することができ、電気容
量の少ない小型の電磁コイル等であっても良好な効率で
溶融金属（溶鋼）から非金属介在物の除去を行うことが
できる溶融金属の非金属介在物除去装置を提供すること
にある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、溶融金属に水平回転流を与えることによ
り前記溶融金属中の非金属介在物を分離する円筒状の旋
回槽と、前記旋回槽の外周に配置される前記旋回槽中の
溶融金属を水平回転させる移動磁場を印加する電磁コイ
ルと、前記旋回槽に対して前記電磁コイルを挟むように
配置される浮上槽と、前記旋回槽と浮上槽とを互いの下
端部分で連通する連通路とを有することを特徴とする溶
融金属の非金属介在物除去装置を提供する。

【００１０】また、前記電磁コイルは前記旋回槽の外周
全体を囲むように配置される円筒状であるのが好まし
い。

【００１１】

【発明の作用】本発明の溶融金属の非金属介在物除去装
置は、溶融金属を水平回転流として前記溶融金属中の非
金属介在物を分離する円筒状の旋回槽と、この旋回槽と
連結され清浄な溶鋼を連続鋳造のモールド等に供給する
浮上槽との２槽を有する溶融金属の非金属介在物除去装
置であって、旋回槽と浮上槽との間に、旋回槽中で溶融
金属を旋回させるための移動磁場を発生する電磁コイル
を配置できる間隙を有する。

【００１２】従来、このような２槽型の溶融金属の非金
属介在物除去装置は、単に旋回槽と浮上槽とが耐火物製
の堰で仕切られているのみであるので、旋回槽には浮上
槽と対面しない部分にしか溶融金属旋回のための電磁コ
イルを配備することができない。そのため、溶融金属を
十分に旋回して良好な非金属介在物の分離を行うために
は、大型の電磁コイルや大掛かりな電源設備等の高価な
設備が必要であり、また大きな電力が必要となり、効率
が悪くなってしまう等の問題点があるのは前述のとおり
である。

【００１３】これに対し、本発明の溶融金属の非金属介
在物除去装置は、旋回槽と浮上槽とを独立した構成とし
て、両者の間に電磁コイルを配備できるだけの間隙を形
成して配置し、旋回槽と浮上槽とを下端部近傍で連結し
た構成を有する。従って、旋回槽の外周を囲むようにし
て、全周に渡って電磁コイルを配備することができ、旋
回槽中の溶融金属に垂直に移動磁場を印加することがで
き、しかも旋回槽に全体的にムラなく移動磁場を印加し
て溶融金属を旋回することができる。そのため、電気容
量の少ない電磁コイルでも、また小さな電気量でも十分
に溶融金属を旋回して非金属介在物を除去することがで
きるので、安価な設備で、かつ低いランニングコストで
操業することができる。

【００１４】

【実施態様】以下、本発明の溶融金属の非介在物除去装
置について、添付の図面に示される好適実施例をもとに
詳細に説明する。

【００１５】図１に、本発明の溶融金属の非金属介在物
除去装置（以下、除去装置とする）を連続鋳造用のタン
ディッシュに応用した際の概略斜視図を、図２に同概略
平面図（ａ）および概略断面図（ｂ）を示す。

【００１６】タンディッシュ１０は、取鍋の供給ノズル
１２より溶融金属（以下、溶鋼とする）Ａを供給され、
充填された溶鋼Ａを旋回して混入する非金属介在物の除
去を行うための円柱状の溶鋼の旋回槽１４と、非金属介
在物が除去された溶鋼Ａを連続鋳造用のモールド（鋳
型）等に供給する浮上槽１８との、独立した２槽を有す
るものである。このような旋回槽１４と浮上槽１８と
は、下端部近傍で連通路１６によって連結されている。
浮上槽１８の底面には供給孔２２が形成され、この供給
孔２２にはモールド１６に溶鋼Ａを供給するノズル２４
が配備される。

【００１７】また、タンディッシュ１０においては、移
動磁場を発生して旋回槽１４中の溶鋼Ａを旋回させるた
めの電磁コイル２０は円柱状の形状を有するものであ
り、旋回槽１４を挿入するようにして好ましくは取りは
ずし自在に配置される。この電磁コイル２０は多数の小
型電磁コイルが配列されて構成されるものであり、所定
の順序で小型電磁コイルに電流を供給することにより移
動磁場を形成する。つまり、図示例のタンディッシュ１
０においては、旋回槽１４と浮上槽１８とを、電磁コイ
ル２０の厚さ以上離して配置して両者を連通路１６によ
って接続して、円筒状の電磁コイル２０を利用可能とし
たものである。

【００１８】本発明は上記構成、つまり、旋回槽１４と
浮上槽１８とを完全に独立した構成とし、両者を少なく
とも電磁コイルの厚さだけ離して連通路１６によって連
結した構成とすることにより、従来の耐火物製の堰で旋
回槽１４と浮上槽１８とを分離していた装置では不可能
である、旋回槽１４と浮上槽１８との間にも電磁コイル
を配置することを可能ならしめたものである。そのた
め、旋回槽中の溶鋼にほぼ垂直に移動磁場を印加するこ
とができ、しかも旋回槽の外周全体的にムラなく溶鋼旋
回のための移動磁場を印加することができるので、安価
な消費電力の少ない電磁コイル等によって少ない電力で
非金属介在物の分離を行うことができ、設備費やランニ
ングコストを低減することができる。

【００１９】旋回槽１４と浮上槽１８との間隔は、用い
る電磁コイル２０のコイル幅や能力等に応じて適宜決定
すればよく、特に限定はないが、通常、電磁コイル２０
のコイル幅より１００mm程度大きくすればよい。

【００２０】本発明の除去装置は、上記構成のように円
筒状の電磁コイル２０を用いるものに限定はされず、例
えば、図３に示されるよう約９０°の間隔で４つの電磁
コイルを配置して円周方向で囲むように構成したもので
あってもよい。あるいは２つの半円弧状の電磁コイルを
用いたものであってもよい。

【００２１】このような、本発明を用いた図１および図
２に示されるタンディッシュ１０において、上部に配置
される取鍋からの溶鋼は供給ノズル１２より旋回槽１４
に供給される。旋回槽１４に供給された溶鋼は、電磁コ
イル２０から印加される移動磁場によって旋回され、こ
れによって軽量である溶鋼中の非金属介在物は回転中心
に凝集合し、浮上する。ここで、本発明を用いた図示例
のタンディッシュ１０においては、小型の電磁コイル２
０で、少ない消費電力でも十分な溶鋼の旋回力を得るこ
とができる。他方、旋回槽１４内で回転した溶鋼の回転
外周側は清浄な溶鋼となり、連通路１６より浮上槽１８
に流入して、ノズル２４より連続鋳造用のモールド等に
供給される。

【００２２】以上、本発明の溶融金属の非金属介在物除
去装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施態
様に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲にお
いて、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろ
んである。

【００２３】

【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
をより詳細に説明する。

【００２４】図１および図２に示されるタンディッシュ
１０を作製して、旋回槽１４において溶鋼の旋回を行っ
て溶鋼より非金属介在物の除去を行った。なお、電磁コ
イル２０のコイル幅は５００mmで、旋回槽１４と浮上槽
１８との間隔は６００mmとした。ここで、図４および図
５に示される従来のタンディッシュ５０に比べ、小型
（小さな電気容量）の電磁コイルを用い、かつ電力設備
もこれに応じて小さくすることにより、設備費を約２０
％低減することができた。

【００２５】その結果、図４および図５に示される、従
来の半円弧型の電磁コイル５８を用いたタンディッシュ
５０のにおいて、電磁コイル５８に４２０kWの電力を投
入し、５０ｒｐｍで溶鋼の旋回を行った場合と同等の性
能を、電磁コイル２０に３２０kWの電力を投入し、５０
ｒｐｍで溶鋼の旋回を行うことによって得ることができ
た。以上の結果より、本発明の効果は明らかである。

【００２６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の溶融金属
の非金属介在物除去装置は、旋回槽と浮上槽とを独立し
た構成として、両者の間に電磁コイルを配備して、旋回
槽を囲むようにして、全周に渡って均一な状態で電磁コ
イルを配備することができるので、旋回槽中の溶融金属
に全体的にムラなく、しかも垂直方向に移動磁場を印加
して溶融金属を旋回することができる。そのため、消費
電力の少ない電磁コイルでも、また小さな電気量でも十
分に溶融金属を旋回して非金属介在物を除去することが
できるので、安価な設備で、かつ低いランニングコスト
で操業することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の溶融金属の非金属介在物除去装置を
旋回槽と浮上槽とが一体的に構成されるタンディッシュ
に応用した際の概略斜視図である。

【図２】 図１に示されるタンディッシュの概略平面図
（ａ）および概略平断面図（ｂ）である。

【図３】 本発明の溶融金属の非金属介在物除去装置を
旋回槽と浮上槽とが一体的に構成されるタンディッシュ
に応用した際の別の例の概略平面図である。

【図４】 従来の旋回槽と浮上槽とが一体的に構成され
るタンディッシュの概略斜視図である。

【図５】 図５に示されるタンディッシュの概略平面図
（ａ）および概略平断面図（ｂ）である。

【符号の説明】

１０，５０ タンディッシュ １２，６０ 供給ノズル １４，５４ 旋回槽 １６ 連通路 １８，５６ 浮上槽 ２０，５８ 電磁コイル ２４，６２ ノズル ５２ 堰

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】溶融金属に水平回転流を与えることにより
   前記溶融金属中の非金属介在物を分離する円筒状の旋回
   槽と、前記旋回槽の外周に配置される前記旋回槽中の溶
   融金属を水平回転させる移動磁場を印加する電磁コイル
   と、前記旋回槽に対して前記電磁コイルを挟むように配
   置される浮上槽と、前記旋回槽と浮上槽とを互いの下端
   部分で連通する連通路とを有することを特徴とする溶融
   金属の非金属介在物除去装置。