JP5321528B2 - 鋼の連続鋳造用装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳型内に溶鋼を供給して鋳片を製造する鋼の連続鋳造装置に関する。
鋼の連続鋳造において、鋳片の表面性状を改善するために、従来から、鋳型の上部に設置された電磁コイルを使用した電磁攪拌装置を用いて、当該鋳型内の溶鋼を電磁攪拌することが行われている。
この電磁攪拌では、例えば鋳型の一対の長辺壁に沿って電磁攪拌装置が配置される。そして、浸漬ノズルから鋳型内に溶鋼が吐出されると、電磁攪拌装置に電流を供給して、鋳型内の上部の溶鋼に対して推力が付与される。この推力によって溶鋼が水平面内で攪拌されて、当該溶鋼の旋回流が形成される。この旋回流によって、鋳型内上部のメニスカス近傍の介在物、気泡等が、鋳型内の側面に形成された凝固シェルに捕捉されるのを抑制している。
しかしながら、鋳型内に浸漬ノズルが浸漬されているため、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域が他の部位よりも狭くなっている。このため、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域では、それ以外の領域に比べると、溶鋼が流れ難くなる。
また、鋳型内の浸漬ノズルの周囲には介在物等が付着して堆積し易い。このように堆積した付着物は、その厚みが数10mmに達する場合もある。このため、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域が他の部位よりも狭くなる。そうすると、前記した旋回流の流路が狭くなり、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域においては、溶鋼が流れ難くなる。
そこで、前記した電磁攪拌装置を用いると共に、平行型の鋳型に代えて、図7に示したような、長辺壁101、102における浸漬ノズル103と対向する面104、105が、各々電磁攪拌装置106、107側に凸に湾曲した、いわゆる異型鋳型を用いることが提案されている(特許文献1)。なお長辺壁101、102と電磁攪拌装置106、107との間に配置されているのは、長辺壁101、102を冷却する冷却水の流路(図示せず)が設けられているステンレス鋼製のバックプレート108、109である。
かかる異型鋳型によれば、長辺壁101、102における浸漬ノズル103と対向する面104、105が、各々電磁攪拌装置106、107側に凸に湾曲しているので、浸漬ノズル103と、長辺壁101、102との間の最短水平距離が、従来の平行鋳型よりも長くなり、その分旋回流110、111の流路を広く確保することができ、溶鋼が流れやすくなっている。
特開2008−183597号公報
しかしながら、前記した従来技術では、長辺壁101、102における浸漬ノズル103と対向する面104、105を湾曲させるため、銅製の長辺壁101、102の中央部を削っているため、当該湾曲した面104、105の部分で、厚みが薄くなっている。一般に電磁攪拌装置106、107による電磁場は、交流磁場であるから、導体内で磁場が減衰する。従って、当該湾曲した面104、105の部分では、直線状の他の部分よりも磁場の減衰が小さいため、電磁力が強くなり、湾曲した面104、105と浸漬ノズル103との間の領域の撹拌流の流速が、他の領域よりも早くなる。その結果、撹拌流110、111の流速が不均一となり、長辺壁101、102における撹拌流110、111下流側の領域112、113で流れの乱れや停滞域が発生し、介在物、気泡等が凝固シェルに捕捉されやすくなるという問題があった。そのため期待したほどの鋼の品質の向上が得られなかった。
さらにまた発明者らが調べたところ、前記したように単に湾曲した面104、105を形成し、撹拌流110、111を流れやすくしただけでは、介在物が、長辺壁101、102の凝固シェルに捕捉されるのを抑制できないことが分かった。すなわち、湾曲した面104、105と浸漬ノズル103との間の水平距離を長くすれば、気泡の捕捉は抑制できるものの、湾曲した面104、105の部分では、やはり電磁力が強くなり、湾曲した面104、105と浸漬ノズル103との間の領域の撹拌流の流速が、他の領域よりも早くなるため、撹拌流110、111下流側の領域112、113で流れの乱れや停滞域が発生し、介在物が凝固シェルに捕捉されやすくなるという問題が解決しないことが判明した。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電磁攪拌装置を有する鋼の連続鋳造装置において、異形鋳型であっても、鋳型内の上部の溶鋼の流速を均一なものとし、さらに湾曲した面と浸漬ノズルとの間の水平距離を適切なものとして、鋳造される鋳片の品質を向上させることを目的としている。
前記の目的を達成するため、本発明は、一対の長辺壁と一対の短辺壁を備えた溶鋼鋳造用の鋳型と、前記鋳型内に溶鋼を吐出する浸漬ノズルと、前記一対の長辺壁に沿って配置され、前記鋳型内の上部の溶鋼を攪拌する電磁攪拌装置とを備えた、鋼の連続鋳造装置であって、前記各長辺壁は、少なくとも前記浸漬ノズルに対向する位置に、前記電磁攪拌装置側に凸に湾曲した湾曲部を有し、かつ各長辺壁は当該湾曲部を含めて一様な厚みを持って構成され、前記湾曲部の頂部と前記浸漬ノズルとの間の最短水平距離は、高さ方向で前記電磁攪拌装置の下端部から、前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm以上かつ80mm以下であることを特徴としている。
本発明によれば、各長辺壁は、少なくとも前記浸漬ノズルに対向する位置に、前記電磁攪拌装置側に凸に湾曲した湾曲部を有し、かつ各長辺壁は当該湾曲部を含めて一様な厚みを持って構成されているので、電磁攪拌装置による電磁力も、湾曲部とそれ以外の部分とも一様なものとなり、撹拌流の流速を均一なものとすることができる。したがって、前記したような流れの乱れや停滞域の発生を抑えることが可能であり、気泡等が凝固シェルに捕捉されやすくなることを抑制できる。
さらにまた湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の最短水平距離は、高さ方向で前記電磁攪拌装置の下端部から、前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm以上かつ80mm以下に設定したので、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の領域においても、溶鋼の円滑でかつ均一な流れを確保することができる。
すなわち発明者らが新たに得た知見では、湾曲部の頂部と浸漬ノズル間の最短水平距離が30mm未満であると、湾曲領域において溶鋼が流れ難くなり、溶鋼中の気泡等が凝固シェルに捕捉され易くなる。一方、前記最短水平距離が80mm超であると、湾曲領域において溶鋼の均一な流れを確保し難くなって、溶鋼の流速が遅い領域では、溶鋼中の介在物が凝固シェルに捕捉され易くなる。
本発明では、このような知見に基づいて、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の最短水平距離を、30mm以上かつ80mm以下に設定したので、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の領域において、溶鋼の撹拌流の円滑でかつ均一な流れを確保して、溶鋼中の気泡が凝固シェルに捕捉されることを抑制できる。
またそのように湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の最短水平距離を30mm〜80mmに設定する高さ方向の範囲は、電磁攪拌装置の下端部から、電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲までとしている。これは電磁攪拌装置の電磁力によって直接撹拌される部分は、電磁攪拌装置の下端部から上端部に対応する部分であるが、実際の操業時においては、電磁攪拌装置の上端部よりも高い位置にメニスカス面が位置することがあるためである。また一般的に、電磁攪拌装置の上端部よりも高い位置にメニスカス面が位置する場合は、概ね磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までである。したがって、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の最短水平距離を、30mm以上かつ80mm以下に設定する高さ方向の範囲は、電磁攪拌装置の下端部から、電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲としている。
なお長辺壁が持つ一様な厚みとは、ボルト穴や冷却水溝等を除き、厚みの変動による電磁場の浸透度合いの変化が、許容範囲の誤差となる10%未満厚みのことをいう。また一様な厚みを持つ高さ方向の範囲は、電磁撹拌装置の作用効果からして、電磁攪拌装置の下端部から、電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲であればよい。
本発明においては、いわゆる電磁ブレーキ装置を併用してもよい。すなわち、前記電磁攪拌装置の下方に配置され、前記鋳型の長辺壁に沿った鋳型幅方向に一様な磁束密度分布を有する直流磁界を、前記鋳型の短辺壁に沿った鋳型厚み方向に付与する電磁ブレーキ装置をさらに備えていてもよい。
これにより、浸漬ノズルから吐出される溶鋼中の気泡、介在物の浮上を促進させ、溶鋼内に気泡、介在物が浮遊して、鋳造される鋳片内に残留して品質の低下を招く事を抑えることができ、さらに鋳片の品質を向上させることができる。
本発明によれば、鋳造される鋳片に含まれる気泡等を減少させて、その品質を向上させることができる。
本実施の形態にかかる連続鋳造装置の鋳型近傍の構成の概略を示すための平面を模式的に示した説明図である。 本実施の形態にかかる連続鋳造装置の鋳型近傍の構成の概略を示すための正面断面を模式的に示した説明図である。 本実施の形態にかかる連続鋳造装置の鋳型近傍の構成の概略を示すための側面断面を模式的に示した説明図である。 長辺壁の斜視図である。 本実施の形態にかかる連続鋳造装置の鋳型周りのサイズを示すための側面断面を模式的に示した説明図である。 湾曲部の他の形状を示すための連続鋳造装置の鋳型近傍の構成の概略を示す正面断面を模式的に示した説明図である。 従来の連続鋳造装置の鋳型近傍の構成の概略を示すための平面を模式的に示した説明図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる鋼の連続鋳造装置1の鋳型近傍の構成を、平面視で模式的に示した説明図であり、図2は、同じく正面の断面を模式的に示した説明図であり、
図3は、同じく側面の断面を模式的に示した説明図である。
連続鋳造装置1は、図1に示すように例えば、平面視で略長方形の鋳型2を有している。鋳型2は、一対の長辺壁3a、3bと一対の短辺壁4a、4bを有している。長辺壁3a、3b、短辺壁4a、4bはいずれも銅板によって構成され、その外側には、長辺壁3a、3b、短辺壁4a、4bを補強する非磁性体のオーステナイト系ステンレス製のバックプレート5a、5b、6a、6bが配置されている。そしてバックプレート5a、5bの外側には、それぞれ電磁コイルを有する電磁撹拌装置7a、7bが配置されている。そして電磁撹拌装置7a、7bには、電磁ブレーキ装置8a、8bが配置されている。
本実施の形態において、短辺壁4a、4bの長さ(鋳造厚み)は、例えば50mm〜300mm程度である。この長さは、要求される鋳片幅によって決定され、薄幅鋳片であれば50mm〜80mm程度であり、中厚幅鋳片であれば80mm〜150mm程度であり、通常幅の鋳片であれば150mm〜300mm程度である。なお長辺壁3a、3bに沿った水平方向(図1〜図3中のX方向)を鋳型幅方向といい、短辺壁4a、4bに沿った水平方向(図1、図3中のY方向)を鋳型厚み方向という。
長辺壁3a、3bの各内側面の中央部には、電磁撹拌装置7a、7b側に凸に湾曲した湾曲部11a、11bが形成されている。各湾曲部11a、11bは、後述する鋳型2内に設けられた浸漬ノズル21に対向して形成されている。そして、湾曲部11a、11bは、長辺壁3a、3bの厚みが、他の直線状の長辺壁と変わることがなく、一様な厚みを有するように成型されている。具体的には、たとえばプレス成型等によって、長辺壁3a、3bの内側面に、湾曲部11a、11bが創出される。
長辺壁3a、3bが湾曲部11a、11bを含めて一様な厚みを持っているため、長辺壁3a、3bの各外側面は、湾曲部11a、11bに対応して、電磁撹拌装置7a、7b側に凸に湾曲している。そしてバックプレート5a、5bは、長辺壁3a、3bの各外側面における湾曲部と適合するように、その中央内側面は、電磁撹拌装置7a、7b側に凸に湾曲した形状を有している。ただし、バックプレート5a、5bにおける外側面、すなわち電磁撹拌装置7a、7b側の面は、平坦に成型されている。
なお通常、この種のバックプレートには、銅製の長辺壁を冷却するための冷却水流路が形成されているが、当該流路をバックプレート5a、5bに形成するには、たとえばバックプレート5a、5bにおける長辺壁3a、3bと接する側の表面に、溝状の流路を形成することで、容易に冷却水流路を形成することが可能である。
この湾曲部11a、11bは、たとえば図2及び図3に示すように、長辺壁3a、3bの上端から、浸漬ノズル21に対向して形成される。湾曲部11a、11bの下端は浸漬ノズル21の下端と同じ高さでもよく、また浸漬ノズル21の下端より下方になるように形成されていてもよい。この湾曲部11a、11bと浸漬ノズル21との間には、図1に示すように、各々湾曲領域9a、9bが形成される。
湾曲部11a、11bは、下端に行くにつれて次第に湾曲部分が消失していく、すなわち湾曲部を形成する窪んだ部分が消失していく形状をなし、本実施の形態では、図4にも示したように、たとえば長辺壁3aの内側面において、湾曲部11aとそれ以外の平坦部分の境界は、湾曲部11aの下端部分では長辺壁3aの長さ方向と平行な直線状(図中のX方向に沿った直線状)であり、湾曲部11aの両側部分では、長辺壁3aの高さ方向と平行な直線状(図中のZ方向に沿った直線状)である。
前記したように、湾曲部11a、11bの湾曲頂部(最も窪んだ箇所)と浸漬ノズル21との間の最短水平距離Lは、前記したように、湾曲部11a、11bが下端に行くにつれて次第に窪んだ部分が消失していくテーパ形状であるため、高さ方向によってその長さが異なっているが、本実施の形態では、電磁攪拌装置7a、7bの下端部から、この電磁攪拌装置7a、7bの上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm〜80mmとなるように設定されている。
すなわち、これを図4に即して説明すると、湾曲部11a、11bの湾曲頂部と浸漬ノズル21との間の最短水平距離Lは、電磁攪拌装置7a、7bの下端部から、電磁攪拌装置7a、7bの上端部よりも50mm高い位置までの範囲Hにおいて、30mm〜80mmとなるように設定されている。したがって、図5中のhの長さは、50mmである。
湾曲部11a、11bの湾曲頂部と浸漬ノズル21との間の最短水平距離Lを、30mm〜80mm確保するため、湾曲部11a、11bを形成するための窪みの深さDは、長辺壁3a、3bの厚さにもよるが、バックプレート5a、5bの強度を考慮し、また電磁攪拌装置7a、7bが、溶鋼から位置的に遠ざかると電磁力そのものが弱くなってしまうため、全体の厚みを抑える点を考慮して、窪みの深さDを適宜、設定できる。窪みの深さDの上限としては、50mm以下、好ましくは40mm以下が例示できる。一方、窪みの深さDの下限としては、5mm以上、好ましくは10mm以上が例示できる。
前記した浸漬ノズル21は、図3に示したように、鋳造時においては、その下部が鋳型2内の溶鋼Mに浸漬する。浸漬ノズル21の側面の下端近傍には、鋳型2内へ斜め下向きに溶鋼を吐出する吐出孔22が2箇所形成されている。吐出孔22は、鋳型2の短辺壁4a、4b側に形成されている。各吐出孔22から吐出される吐出流23には、ノズル洗浄のために吹き込まれたArガスの気泡や、その他アルミナやスラグ系等の介在物などが含まれている。これら気泡や介在物は、メニスカス24近傍まで浮上する。なお、メニスカス24上には、溶融酸化物を有する溶融パウダー25が供給されている。
鋳型2の内側面には、図3に示すように、溶鋼Mが冷却されて凝固した凝固シェル26が形成される。
既述した電磁撹拌装置7a、7bは、電磁コイルを有し、供給される交流電力によって電磁力を発生し、鋳型2内の上部の溶鋼Mに対して推力を付与して、鋳型2内を旋回して、溶鋼を撹拌する撹拌流を発生させる。この攪拌流によって、鋳型2内上部のメニスカス24近傍の介在物、気泡等が、鋳型2内の側面に形成された凝固シェル26に捕捉されるのを抑制している。
また電磁攪拌装置7a、7bの下方に配置された、電磁石などによって構成される電磁ブレーキ装置8a、8bは、吐出孔22から吐出した直後の溶鋼の吐出流23に対して、鋳型2の長辺壁3a、3bに沿った鋳型幅方向(図1、図2中のX方向)に亘ってほぼ一様な磁束密度分布を有する直流磁界を、鋳型2の短辺壁4a、4bに沿った鋳型厚み方向(図1、図3中のY方向)に付与することができる。この直流磁界と吐出孔22から吐出した溶鋼の吐出流23によって、鋳型幅方向(図1、図2中のX方向)に誘導電流が発生し、この誘導電流と前記直流磁界によって、吐出流23の近傍に、吐出流23と逆向きの対向流が形成される。これによって、吐出流23中の気泡や介在部が、溶鋼M内に深く侵入することを抑制でき、またこれら気泡や介在部の浮上を促進させ、凝固シェル26に捕捉されることを抑えることができる。
本実施の形態にかかる連続鋳造装置1は以上のように構成されており、次にこの連続鋳造装置1を用いた溶鋼の連続鋳造方法について説明する。
先ず、浸漬ノズル21内にArガスを吹き込みながら、浸漬ノズル21の吐出孔22から鋳型2内に溶鋼を吐出する。溶鋼は斜め下方に吐出され、吐出孔22から鋳型2の短辺壁4a、4bに向かって吐出流23が形成される。吐出流23にはArガスの気泡やその他の介在物が含まれており、これらは鋳型2内の溶鋼M中に浮遊し、やがてその比重差による浮力によって上昇する。
そして浸漬ノズル21から溶鋼を吐出すると同時に、電磁ブレーキ装置8a、8bを作動させても良い。この電磁ブレーキ装置8a、8bを用いる場合は、吐出流23と逆向きの対向流が形成され、前記したように、これら気泡やその他の介在物は、溶鋼M内に深く侵入することを抑制でき、また周囲への拡散が抑えられ、浸漬ノズル21近傍から、前記対向流に乗って、メニスカス24近傍まで浮上する。
そして電磁ブレーキ装置8a、8bの作動と同時に、電磁攪拌装置7a、7bも作動させることで、前記したような、電磁力による電磁攪拌により、鋳型2内のメニスカス24近傍の溶鋼に攪拌流が形成される。そして、前記した対向流に乗ってメニスカス24近傍まで浮上した、Arガスの気泡等は、この攪拌流によって旋回し、鋳型2の凝固シェル26に捕捉されることなく、例えば溶融酸化物を有する溶融パウダー25に取り込まれて除去される。
このとき、鋳型2の長辺壁3a、3bの上部中央に、湾曲部11a、11bが形成され、これら湾曲部11a、11bと浸漬ノズル21との間に、湾曲領域9a、9bが形成されているが、長辺壁3a、3bは、当該湾曲部11a、11bも含めて、一様な厚みを有しているので、前記した電磁攪拌装置7a、7bによる電磁力の磁束密度も、湾曲領域9a、9bにおいても、他の直線部分と同程度であり、したがって、均一な流速の攪拌流を形成することができ、長辺壁3a、3bにおける撹拌流の下流側の領域で流れの乱れや停滞域が発生することを抑えることができる。したがって、当該停滞域の発生に起因する、気泡等の凝固シェルへの捕捉を抑制することが可能になっている。
なおそのように長辺壁3a、3bは、湾曲部11a、11bも含めて一様な厚みを有しているといえども、バックプレート5a、5bは、湾曲部11a、11bに対応する部分の厚みが薄くなっており、その分磁束密度の不均一さが発生するが、一般に電磁攪拌の電磁場は交流磁場であるため、導体内で減衰し、特に電気伝導度が高いほど減衰が激しい。そしてこの種のバックプレート5a、5bは、非磁性体のオーステナイト系ステンレス製であるため、その電気伝導度は銅製の長辺壁3a、3bよりもはるかに小さい。したがって、その影響は殆どなく、湾曲領域9a、9bにおいて、均一な磁束密度が得られる。
実際に発明者らが調べたところ、高さ方向で電磁攪拌装置7aの中心位置で、窪み深さDが30mmの湾曲部11aの湾曲頂部から、浸漬ノズル21側に10mm寄った地点で、ガウスメータで測定したところ、長辺壁3aの湾曲部11a以外の直線状の部分の磁束密度と比較しても、10%以下の変動しかない事が確認できた。参考に、窪み深さDが30mmの湾曲部を、従来技術にあるように、その分長辺壁を削って形成し、当該湾曲部分の厚さが薄くなった場合には、長辺壁の直線状の部分の磁束密度よりも40%程度、その密度が高くなっていることも確認できた。したがって、本発明の効果がかかる点からも確認できる。
そして本実施の形態では、湾曲部11a、11bの湾曲頂部と浸漬ノズル21との間の最短水平距離Lが、電磁攪拌装置7a、7bの下端部から、電磁攪拌装置7a、7bの上端部よりも50mm高い位置までの範囲Hにおいて、30mm〜80mmとなるように設定されているので、湾曲領域9a、9bを流れる攪拌流の流速を均一にすることができ、溶鋼の円滑でかつ均一な流れを確保することができ、鋳型2内で十分に攪拌することが可能になっている。したがって、気泡等が凝固シェルで捕捉をされることを、かかる点からも抑制している。
さらにまた本実施の形態では、電磁ブレーキ装置9a、9bも併用する場合、気泡等の介在物の浮上が促進されるともに、周囲への拡散が抑えられており、より一層、気泡等が凝固シェルで捕捉をされることを抑制できる。
なお前記実施の形態では、湾曲部11a、11bの形状が、図2、図4に示したような、下端に行くにつれて湾曲部11aとそれ以外の平坦部分の境界が、湾曲部11aの下端部分では長辺壁3aの長さ方向と平行な直線状(図中のX方向に沿った直線状)であり、湾曲部11aの両側部分では、長辺壁3aの高さ方向と平行な直線状(図中のZ方向に沿った直線状)となる形状であったが、これに代えて、図6に示したような、下端に行くにつれて湾曲部とそれ以外の平坦部分の境界が、下端の一点で収束して消失するような、いわゆる逆釣鐘形状の湾曲部11cとしてもよい。
以下、本発明の鋼の連続鋳造装置を用いた場合に、溶鋼に含まれるArガス気泡、および介在物を除去する効果について説明する。本実施例を行うに際し、鋼の連続鋳造装置として、先に図1〜図3に示した連続鋳造装置1を用いた。
幅1200mm、高さが900mm、厚みが250mmの鋳型2のメニスカス位置に、高さが200mm、推力100mmFeの電磁攪拌装置を、その上端がメニスカス位置になるようにセットし、メニスカスから500mm深さで最大磁束密度を有する電磁ブレーキ装置を使用した。また、メニスカスから400mm深さとなる溶鋼浸漬部の最大外径190mm、内径100mmの浸漬ノズルを用いて鋳造を行った。
連続鋳造機は曲げ半径7.5m、2.5mの垂直部を有し、低炭アルミキルド鋼を鋳造速度2m/分で鋳造した。浸漬ノズル21の吐出孔22は、鋳型2内空間の短辺壁4a、4b側に向う直径70mm、吐出角度θが下向き30度の2孔ノズルを用いた。
バックプレート5a、5bは厚み80mm、長辺壁3a、3bの厚みは30mmで一定とし、通常の長辺銅板が平行な鋳型と、長辺銅板中央部分をプレス成型し、メニスカス位置における窪み深さDを、5、10、20、30、40、50、55mmとして、でバックプレートを削り込んだものとした。湾曲部11a、11bは、鋳造幅方向に鋳型幅中心から両側に400mmずつの長さで形成し、図2に示したような、下端に行くにつれて湾曲部11aとそれ以外の平坦部分の境界が、湾曲部11aの下端部分では長辺壁3aの長さ方向と平行な直線状であり、湾曲部11aの両側部分では、長辺壁3aの高さ方向と平行な直線状となる形状の鋳型を用いた。また、窪み深さDが0mmというのは、窪みがない長辺壁の鋳型を意味している。
鋳片の気泡、介在物欠陥は、鋳片表層50mmの深さまでの鋳片を観察してカウントした100μm以上の直径の気泡及び介在物個数の指数で評価した。表1中のArガス気泡個数指標は、湾曲部と浸漬ノズル間の距離Lが25mm、窪み深さDが0mm、すなわち湾曲部を形成しない場合のArガス気泡の個数を1として、各条件におけるArガス気泡の個数の比率を示している。また、介在物個数指標についても、同様に、湾曲部と浸漬ノズル間の距離Lが25mm、窪み深さDが0mm、すなわち湾曲部を形成しない場合の介在物の個数を1として、各条件における介在物の個数の比率を示している。なお表中の湾曲部と浸漬ノズル間の距離Lの高さ位置は、電磁攪拌装置の下端位置であり、窪み深さDの高さ位置は、上記の通り、メニスカス位置である。
なお本発明の効果を確認するため、まず電磁ブレーキ装置は作動させずに、電磁攪拌装置のみを作動させた結果を表1に示した。
Figure 0005321528
これによれば、距離Lが25mmである場合には、窪み深さDを5mmにして湾曲部を形成しても、Arガス気泡個数指標と介在物個数指標は共に1のままであり、Arガス気泡と介在物の個数を減少させることができないが、距離Lが30mmでは、たとえ窪み深さDが5mmと浅いものであっても、Arガス気泡個数指標が低減している。また距離Lが80mmでは、Arガス気泡個数指標は依然として0.2と低いレベルにあり、一方介在物個数指標についても依然として低いレベルにあるが、距離Lが85mmになると、介在物個数指標が飛躍的に増大することが分かった。
次に、実施例1と同一条件で、電磁ブレーキ装置を作動させて、電磁攪拌装置と併用した結果を表2に示した。
Figure 0005321528
それによれば、電磁ブレーキを作動させない場合と同様な傾向がみられ、距離Lが25mmである場合には、窪み深さDを5mmにして湾曲部を形成しても、Arガス気泡個数指標と介在物個数指標は共に1のままであり、Arガス気泡と介在物の個数を減少させることができないが、距離Lが30mmでは、窪み深さDが5mmであっても、Arガス気泡個数指標は半減している。そして距離Lが80mmでは、Arガス気泡個数指標は0.1であり、表1の場合よりもさらに低減している。したがって、電磁ブレーキ装置を併用した場合には、Arガス気泡の除去に効果があることが確認できた。ただし、距離Lが85mmになると、Arガス気泡の除去効果は依然として高いものの、介在物個数指標が飛躍的に増大することが分かった。
本発明は、鋳型内に溶鋼を供給して鋳片を製造する際に有用である。
1 連続鋳造装置
2 鋳型
3a、3b 長辺壁
4a、4b 短辺壁
5a、5b、6a、6b バックプレート
7a、7b 電磁攪拌装置
8a、8b 電磁ブレーキ装置
9a、9b 湾曲領域
11a、11b、11c 湾曲部
21 浸漬ノズル
22 吐出孔
23 吐出流
24 メニスカス
25 溶融パウダー
26 凝固シェル
M 溶鋼

Claims (2)

  1. 一対の長辺壁と一対の短辺壁を備えた溶鋼鋳造用の鋳型と、前記鋳型内に溶鋼を吐出する浸漬ノズルと、前記一対の長辺壁に沿って配置され、前記鋳型内の上部の溶鋼を攪拌する電磁攪拌装置とを備えた、鋼の連続鋳造装置であって、
    前記各長辺壁は、少なくとも前記浸漬ノズルに対向する位置に、前記電磁攪拌装置側に凸に湾曲した湾曲部を有し、かつ各長辺壁は当該湾曲部を含めて一様な厚みを持って構成され、
    前記湾曲部の頂部と前記浸漬ノズルとの間の最短水平距離は、高さ方向で前記電磁攪拌装置の下端部から、前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm以上かつ80mm以下であることを特徴とする、鋼の連続鋳造装置。
  2. 前記電磁攪拌装置の下方に配置され、前記鋳型の長辺壁に沿った鋳型幅方向に一様な磁束密度分布を有する直流磁界を、前記鋳型の短辺壁に沿った鋳型厚み方向に付与する電磁ブレーキ装置を有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼の連続鋳造装置。
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