JPH05253654A - タンディッシュ内溶鋼の介在物低減法と装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 超清浄鋼を製造するのに好適な、タンディッ
シュ内溶鋼の介在物低減法および介在物低減装置を提供
する。 【構成】 介在物分離領域2bを備えたタンディッシュ２
内溶鋼の介在物低減法であって、介在物を吸着する多孔
質セラミックスフィルタ７を介在物分離領域2bにおいて
回転させるとともに、介在物分離領域2b内の溶鋼を多孔
質セラミックスフィルタ７の回転方向と逆方向に回転さ
せる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば超清浄鋼を製造
するのに好適な、タンディッシュ内溶鋼の介在物低減法
および介在物低減装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般的に、鋼の連続鋳造用タンディッシ
ュは、取鍋から鋳型へ溶鋼を供給するための容器であ
り、１つのタンディッシュから複数の鋳型への溶鋼分配
機能を有するとともに、タンディッシュ内で溶鋼中の介
在物を浮上分離する溶鋼清浄化機能を有する。

【０００３】近年、生産性の向上を目的として高速鋳造
化が指向されているが、高速鋳造では鋳型内における介
在物の浮上・分離は殆ど期待できない。したがって、タ
ンディッシュ内において溶鋼中の介在物を浮上分離させ
ることが重要な技術的課題になってきている。

【０００４】タンディッシュ内で溶鋼中の介在物を浮上
分離する技術として、例えば、特開平２−55649 号公報
には、タンディッシュ内に各種形状のタンディッシュ堰
を設け、タンディッシュ内溶鋼に上昇流を生じさせて介
在物を浮上分離する技術が、特開昭63−72452 号公報に
は、直径が80mmより小さくかつ溶湯の通流方向に対して
ある角度だけ上向きに形成された複数個の溶湯通流孔を
設けたタンディッシュ堰を用いて介在物の浮上を促進す
る技術がそれぞれ提案されている。

【０００５】他の技術としては、前記タンディッシュ堰
にセラミックスフィルタを設けて介在物の吸着性を向上
させた技術や、タンディッシュ内の溶鋼の湯面に介在物
を吸収するフラックスを添加して介在物を吸収する技術
や、さらに溶鋼と介在物を吸着するフィルタとを接触さ
せて介在物を吸着する技術も提案されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】これらの技術によれ
ば、確かにタンディッシュ内の溶鋼中の介在物を分離す
ることができるものの、その程度は充分なものであると
は言えない。特に、例えば溶鋼中酸素レベル：５ppm 以
下の超清浄鋼といった高い清浄性が要求される鋼種の製
造においては、これらの技術の介在物低減効果は不足し
ており、その向上が望まれる。

【０００７】特に、タンディッシュ内にフィルタを設置
して介在物の分離を図る技術には、タンディッシュ内の
溶鋼の流速が低いために効率的に介在物を吸着できない
こと、および目詰まり防止のために介在物吸着後のフィ
ルタを交換する必要が生じるが、例えばタンディッシュ
堰のようにタンディッシュの一部に設置するため交換作
業が容易ではなく、コストおよび工数の上昇が著しいこ
とという問題があった。

【０００８】ここに、本発明の目的は、例えば超清浄鋼
を製造するのに好適な、タンディッシュ内溶鋼の介在物
低減法および介在物低減装置を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため種々検討を重ねた結果、タンディッシュ
の介在物分離領域において、介在物を吸着する特性を有
する多孔質セラミックスフィルタを有するインペラを回
転させることにより、溶鋼中の介在物を多孔質セラミッ
クスフィルタにより吸着して介在物の分離を図ることが
でき、また多孔質セラミックスフィルタの交換も、タン
ディッシュまたはその固定物に直接に設置するのではな
いため容易であることを知見した。

【００１０】本発明者らは、さらに、タンディッシュ内
溶鋼に電磁力により回転流動を与えて介在物分離領域内
の溶鋼をインペラの回転方向と逆方向に回転させること
により、介在物がセラミックフィルタを透過する割合が
増加することと介在物が介在物分離領域の中央部に集積
することとの相乗効果により、介在物の吸着性をより向
上させることが可能となることを知見した。本発明者ら
は、これらの知見に基づき検討を重ね、本発明を完成し
た。

【００１１】ここに、本発明の要旨とするところは、少
なくとも介在物分離領域を備えたタンディッシュ内溶鋼
の介在物低減法であって、介在物を吸着する多孔質セラ
ミックスフィルタを介在物分離領域において回転させる
ことを特徴とするタンディッシュ内溶鋼の介在物低減法
であり、さらに、介在物分離領域内の溶鋼を多孔質セラ
ミックスフィルタの回転方向と逆方向に回転させること
が介在物の吸着性を向上させるためには望ましい。

【００１２】また、別の面からは、本発明は、少なくと
も介在物分離領域を備えたタンディッシュ内溶鋼の介在
物低減装置であって、前記介在物分離領域内に回転自在
に設置された多孔質セラミックスフィルタを有するイン
ペラを備えたことを特徴とするタンディッシュ内溶鋼の
介在物低減装置であり、さらに、前記介在物分離領域内
の溶鋼を回転力を付与する攪拌器を備えることが介在物
の吸着性を向上させるためには望ましい。

【００１３】本発明では、電磁力により溶鋼に回転流動
を与えると溶鋼中の介在物は回転流動の中央部に集積し
てくるため、インペラは介在物分離領域の底部中央の上
部付近で回転させておくことが望ましい。介在物を吸着
した多孔質セラミックスフィルタを、一定時間使用後に
交換することにより、溶鋼中の介在物をタンディッシュ
の系外へ完全に除去できる。

【００１４】

【作用】以下、本発明を作用効果とともに詳述する。本
発明にかかるタンディッシュ内溶鋼の低減装置の適用対
象となるタンディッシュは、少なくとも介在物分離領域
を備えたタンディッシュであればよく、特定の構造のタ
ンディッシュには限定されない。例えば、例えば取鍋か
らの溶湯落下領域 (注湯部) 、介在物分離領域 (分離除
去部) 、鋳型への給湯領域 (給湯部)およびこれらを分
離する少なくとも二つの堰を有するタンディッシュを例
示することができる。

【００１５】本発明にかかるタンディッシュ内溶鋼の介
在物低減装置では、介在物分離領域内に回転自在に設置
された多孔質セラミックスフィルタを有するインペラを
備える。インペラの羽の設置数は、本発明では特に限定
を要さない。また、隣接する各羽の間の角度は、回転時
の振動の発生を防止するために全て等しい角度とするこ
とが望ましい。

【００１６】本発明では、インペラの各羽の全部または
一部に多孔質セラミックスフィルタが設置されるが、設
置方式は何ら限定を要さない。例えば、インペラの羽に
適宜手段により着脱自在に設置してもよく、または、固
定して (一体的に構成した場合も含む) 設置してもよ
い。ただし、多孔質セラミックスフィルタの交換時のメ
ンテナンス性を勘案すれば、着脱自在に設置することが
望ましいことはいうまでもない。

【００１７】多孔質セラミックスフィルタの材質も特に
限定を要するものではないが、例えばCaO 系のセラミッ
クスフィルタであることが望ましい。また、直径：５mm
以下程度の細孔が設けられており、この細孔中を溶鋼が
通過すると介在物が吸着される。この細孔の設置数も特
に限定を要するものでないが、介在物の吸着性を維持す
るためには１個/cm²以上とすることが望ましい。インペ
ラを回転する機構は公知の適宜手段によればよく、特定
の手段に限定する必要はない。

【００１８】多孔質セラミックスフィルタは介在物を吸
着することにより細孔が徐々に閉塞され、介在物吸着能
力が低下する。この場合、多孔質セラミックスフィルタ
を交換する必要があるが、その時期を知らせるため、例
えば、インペラの回転軸にゲージを取り付けて回転軸の
回転トルクを測定し、回転トルクがある値以上に大きく
なった場合に多孔質セラミックスフィルタを交換するこ
ととすればよい。交換は、新たに多孔質セラミックスフ
ィルタを有するインペラを準備しておき、インペラごと
交換してもよいし、または多孔質セラミックスフィルタ
のみを交換してもよい。いずれにしても、多孔質セラミ
ックスフィルタを交換することにより、完全かつ容易に
介在物をタンディッシュから除去することができる。

【００１９】以上の構成の本発明にかかるタンディッシ
ュ内溶鋼の介在物低減装置により、介在物を吸着する多
孔質セラミックスフィルタを介在物分離領域において回
転させることにより、多孔質セラミックスフィルタに設
けられた細孔内を溶鋼が通過して介在物が細孔により吸
着される。

【００２０】タンディッシュ内に単にセラミックスフィ
ルタを設置して介在物の吸着を図る場合に比較して、本
発明によれば、多孔質セラミックスフィルタ通過時の溶
鋼の流速を相対的に高めることができ、効率的に介在物
を吸着できる。また、本発明では、多孔質セラミックス
フィルタはインペラに設けられているため、その交換作
業も容易である。

【００２１】さらに、本発明にかかるタンディッシュ内
溶鋼の介在物低減装置において、例えば、介在物分離領
域内の溶鋼に回転力を付与する電磁力による攪拌器を設
置して、介在物分離領域内の溶鋼を多孔質セラミックス
フィルタの回転方向と逆方向に回転させることにより、
溶鋼中の介在物が多孔質セラミックスフィルタに設けら
れた細孔を通過する機会を増すことができ、介在物の吸
着効率をさらに高めることができる。

【００２２】また、攪拌器により溶鋼には回転流動が与
えられるため、比重が比較的小さな介在物はタンディッ
シュ内中央部に集積する傾向にある。したがって、イン
ペラをタンディッシュ内中央部に設置しておけば、介在
物の中央部への集積効果も相まって、相乗的に介在物の
吸着効率を高めることができる。さらに、本発明を実施
例を参照しながら詳述するが、これは本発明の例示であ
り、これにより本発明が限定されるものではない。

【００２３】

【実施例】図１は、本発明にかかる装置の一例の縦断面
図であり、図２は図１に示す装置の平面図である。図１
において、符号１は取鍋であり、その下方にはタンディ
ッシュ２が設置されている。本実施例では、取鍋１から
の溶湯落下領域2a、介在物分離領域2b、鋳型への給湯領
域2cおよびこれらを分離する二つの堰３、４を有するタ
ンディッシュ２を用いた。なお、図１において、符号５
は鋳型６に溶鋼を供給する浸漬ノズル５である。

【００２４】本実施例では、介在物分離領域2b内に多孔
質セラミックスフィルタ７を有するインペラ８が図中白
抜矢印方向に回転自在に設置されている。インペラ８の
回転軸９には、回転軸９の回転トルクを測定するゲージ
10およびトルク計測装置11が接続されている。

【００２５】さらに、タンディッシュ２の介在物分離領
域2bの外部には、図２に示すように、電磁コイルにより
構成されて、介在物分離領域2b内の溶鋼に回転力を付与
する攪拌器12a 、12b が対向して設置されており、図１
中に白抜矢印で示したインペラの回転方向とは反対方向
への回転流動を溶鋼に与えることができるように構成さ
れている。

【００２６】このように図１に示す取鍋１、タンディッ
シュ２、および鋳型６により構成された、湾曲半径10ｍ
の１点矯正連続鋳造機において、表１に示す組成の低炭
素アルミキルド鋼お200 mm厚×1500mm幅の寸法のスラブ
を鋳造速度：3.0m／分で連続鋳造した (10連鋳) 。

【００２７】

【表１】

【００２８】この連続鋳造に際して、本発明の効果を確
認するため、多孔質セラミックスフィルタ７を着脱自在
に設置したインペラ８、および攪拌器12a 、12b の設置
の有無により、下記５水準 (No.1、2 ：従来例、No.3〜
5 ：本発明例) で連続鋳造を行い、連続鋳造終了後に、
７連鋳目の連続鋳造鋳片の清浄性を比較調査した。

【００２９】No.1：タンディッシュ２＋堰３、４ No.2：タンディッシュ２＋堰３、４＋セラミックフィル
タ (堰に設置) No.3：タンディッシュ２＋堰３、４＋インペラ８ (交換
無) No.4：タンディッシュ２＋堰３、４＋インペラ８ (交換
無) ＋攪拌器12a 、12b No.5：タンディッシュ２＋堰３、４＋インペラ８ (交換
有) ＋攪拌器12a 、12b No.5においては、連続鋳造を行うことにより多孔質セラ
ミックスフィルタ７の介在物吸着能力が低下したため、
インペラ８の回転軸の回転トルクが約100gf −cmに上昇
した時のチャージで一端連続鋳造を止め、多孔質セラミ
ックスフィルタ７を交換した。

【００３０】なお、電磁コイルからなる攪拌器12a 、12
b により形成された磁場は、中心部で5000〜8000ガウス
の磁束密度を有し、溶鋼に一定方向の水平回転流動を与
えた。インペラ８に取付けた多孔質セラミックスフィル
タ７は、95％以上のCaO 成分を有するセラミックスを素
材として用い、100 mm×100mm ×20mmのものがインペラ
８の４枚の羽全てに取付けられ、それぞれ直径５mmの細
孔が200 個ずつ (２個／cm²)形成された。また、インペ
ラ８は、攪拌器12a 、12b による溶鋼回転方向とは逆方
向に50rpm で回転させた。

【００３１】結果を図３にグラフで示す。本発明によ
り、大型介在物は約1/2 〜1/10程度に減少したことがわ
かる。縦軸の介在物コードは顕微鏡観察によって100 μ
m 以上の介在物の数を求め、No.1の従来例のレベルを10
とした時の相対値として10段階評価したときの指数であ
る。

【００３２】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
多孔質セラミックスフィルタ通過時の溶鋼の流速を高め
ることができ、効率的に介在物を吸着できる。また、本
発明では、多孔質セラミックスフィルタはインペラに設
けられているため、その交換作業も容易である。さら
に、本発明において電磁力による攪拌器を設置して溶鋼
を多孔質セラミックスフィルタの回転方向と逆方向に回
転させることにより、介在物の吸着効率をさらに高める
ことができる。攪拌器により比較的小さな介在物はタン
ディッシュ内中央部に集積するため、相乗的に介在物の
吸着効率を高めることができる。

【００３３】このように、タンディッシュ内での介在物
吸着除去を完全に実施することが可能となり、特に多連
鋳時においても、高品質の連続鋳造鋳片を安定して製造
することが可能となった。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる装置の一例の縦断面図である。

【図２】図１に示す装置の平面図である。

【図３】実施例の結果を示すグラフである。

【符号の説明】

１：取鍋 ２：タンディッシュ 2a：溶湯落下領域 2b：介在物分離領域 2c：給湯領域 ３：タンディッシュ堰 ４：タンディッシュ堰 ５：浸漬ノズル ６：鋳型 ７：多孔質セラミックスフ
ィルタ ８：インペラ ９：回転軸 10：ゲージ 11：トルク計測装置 12a：攪拌器 12b：攪拌器

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも介在物分離領域を備えたタン
   ディッシュ内溶鋼の介在物低減法であって、介在物を吸
   着する多孔質セラミックスフィルタを前記介在物分離領
   域において回転させることを特徴とするタンディッシュ
   内溶鋼の介在物低減法。
2. 【請求項２】 さらに、前記介在物分離領域内の溶鋼を
   前記多孔質セラミックスフィルタの回転方向と逆方向に
   回転させることを特徴とする請求項１記載のタンディッ
   シュ内溶鋼の介在物低減法。
3. 【請求項３】 少なくとも介在物分離領域を備えたタン
   ディッシュ内溶鋼の介在物低減装置であって、前記介在
   物分離領域内に回転自在に設置された多孔質セラミック
   スフィルタを有するインペラを備えたことを特徴とする
   タンディッシュ内溶鋼の介在物低減装置。
4. 【請求項４】 さらに、前記介在物分離領域内の溶鋼に
   回転力を付与する攪拌器を備えたことを特徴とする請求
   項３記載のタンディッシュ内溶鋼の介在物低減装置。