JPH0645112U - 偏心転がり軸受 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 バランス精度が良くて、音や振動の発生が低
減でき、かつ製造が簡単でコスト低下が図れるものとす
る。 【構成】 軸受内輪１の内径面を軸受中心Ｏに対して偏
心した偏心孔７とする。軸受内輪１の偏心孔偏り方向に
対する逆側部分１ａの両側面に、肉盗み凹部８を設け
る。この肉盗み凹部８の形成により、偏心に伴う重量ア
ンバランスを最小にする。肉盗み凹部８を設ける代わり
に、偏心孔７が貫通したカウンタウェイト用突部を軸受
内輪１の両面に設け、この突部の周壁厚さを偏心孔の偏
り方向によって異ならせることにより重量バランスを得
るようにしても良い。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、偏心回転を必要とする部位、例えばクランク，プランジャポンプ ，ベーンポンプ等に使用される偏心転がり軸受に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、自動車用アッチロックブレーキの油圧発生源となるラジアルプランジャ ポンプでは、その駆動源として、図４に示すように出力軸５２に偏心軸部５２ａ を有する偏心軸付モータを使用している。この偏心軸部５２ａに通常の転がり軸 受５３を取付け、その外輪の外径面にプランジャ５４を当接させる。これにより 、出力軸５２の回転が、軸受内輪の偏心量ｅの偏心回転となり、プランジャ５４ の直線往復運動に変換される。 この他に、従来、偏心回転を得る機構として、軸受内輪の内径孔を偏心させた 偏心転がり軸受を用い、直軸状の回転軸に組み込むものも使用されている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、図４の偏心機構では、出力軸５２の偏心軸部５２ａの機械加工で加工 コストが高くなるうえ、軸受組み込み後の重量バランスが悪く、音や振動を発生 させる原因となる恐れがある。 前記の軸受内輪に偏心孔を設けるものでは、製造方法を適宜選択することで、 偏心軸を加工するものに比べて製造コストを低減させることができる。しかし、 重量アンバランスによる音および振動の発生の問題は未解決となっている。

【０００４】 この考案の目的は、バランス精度が良くて、音や振動の発生が低減でき、かつ 製造が簡単でコスト低下が図れる偏心転がり軸受を提供することである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

請求項１の考案の偏心転がり軸受は、軸受内輪の内径面を軌道面に対して偏心 した偏心孔とし、前記軸受内輪の偏心孔偏り方向に対する逆側部分の両側面に、 肉盗み凹部を設けたものである。 軸受内輪には、前記偏心孔が貫通した偏心孔外周突部を両側面に設けても良い 。

【０００６】 請求項３の考案の偏心転がり軸受は、軸受内輪の内径面を軌道面に対して偏心 した偏心孔とし、前記軸受内輪の両側面に、前記偏心孔が貫通したカウンタウェ イト用突部を設け、この突部の偏心孔偏り側部分の周壁厚さを、偏り方向に対す る逆側部分の周壁厚さよりも厚くしたものである。

【０００７】

【作用】

この構成によると、軸受内輪の内径孔が偏心孔であるため、通常の直軸に取付 けて回転させることにより、軸受内輪の偏心回転運動が得られる。 この場合に、請求項１の構成では、軸受内輪の偏心孔偏り方向に対する逆側部 分の両側面に肉盗み凹部を設けたため、円周方向の重量バランスが改善され、音 や振動の発生が低減される。 また、請求項３の構成では、軸受内輪の両側面に設けたカウンタウェイト用突 部の周壁厚さを異ならせ、偏心孔偏り側部分の厚さを、偏り方向に対する逆側部 分の厚さよりも厚くしたため、このカウンタウェイト用突部によって重量バラン スが改善され、音や振動の発生が低減される。 前記肉盗み凹部およびカウンタウェイト用突部は、何れも内輪の両面に設ける ので、軸方向の重量バランスも得られ、軸方向のアンバランスによる音や振動の 発生を伴うことがない。

【０００８】

【実施例】

この考案の一実施例を図１に基づいて説明する。この偏心転がり軸受は、シー ル付深溝玉軸受形式のものであり、内輪１と外輪２の間に保持器３で保持された 転動体４を介在させ、外輪２の内径面の両側部にシール５が取付けてある。 内輪１の内径面は偏心孔７からなり、偏心孔７の中心Ｑは、内輪１の軌道面６ の中心となる軸受中心Ｏに対して偏心量ｅだけ偏心させてある。内輪１の両側面 には偏心孔偏り方向に対する逆側部分１ａに肉盗み凹部８が設けてある。内輪１ は、軸方向に左右対称とし、かつ偏心方向に沿う直径線Ｌに対して線対称に形成 してある。

【０００９】 この構成によると、内輪１の偏心孔７の中心Ｑが軸受中心Ｏに対して偏心して いるため、通常の直軸に取付けて回転させることにより、内輪１の偏心回転運動 が得られる。 この場合に、内輪１に肉盗み凹部８が設けてあるため、偏心孔７の偏心による 軸受全体の重量アンバランスを最小にでき、音や振動の発生が低減される。肉盗 み凹部８は内輪１の両面に設けてあるため、軸方向の重量バランスも得られる。 また、この軸受は直軸に取付けられるため、偏心軸に取付ける場合に比べて、内 輪１に軸を圧入した後の軸受隙間のバラツキを小さく管理することができ、これ によっても音や振動の発生が低減する。

【００１０】 また、前記のように直軸に取付けるようにし、かつ軸受自体で偏心に対する重 量バランスを得るようにしてあるため、各種の直軸の電動モータにこの偏心転が り軸受を自由に組み合わせることができ、かつ軸への取付後の再バランス取りが 不要で、組立効率も向上する。 内輪１は偏心孔７および肉盗み凹部８を有する形状であるが、焼結等の適宜の 製造方法が選択でき、これにより回転軸に偏心軸部を加工する場合に比べて製造 コストを低減させることができる。また、内輪１で重量バランスを得るようにし たため、例えば内輪１に偏心スリーブを圧入させる偏心軸受ユニット等と異なり 、小型の軸受であっても強度上の問題を生じるようなことがなく、軸受寸法にか かわらずにこの偏心転がり軸受を適用できる。 さらに、この実施例では内輪１に肉盗み凹部８を設けて重量バランスを得るよ うにしたため、突出したカウンタウエイトを設けるものと異なり、軸受をコンパ クトに構成できる。

【００１１】 図２は他の実施例を示す。この実施例は、前記実施例と同様にシール付深溝玉 軸受形式としたものであるが、この例では内輪１の両側面に、偏心孔７が貫通し たカウンタウェイト用突部９を設け、この突部９の偏心孔偏り側部分の周壁厚さ ｄ１を、偏り方向に対する逆側部分の周壁厚さｄ２よりも厚くしてある。肉盗み 凹部８は前記実施例と同様に設けてある。

【００１２】 このように構成した場合、前記と同様に直軸の回転軸に取付けられて偏心回転 を行うが、カウンタウェイト用突部９の肉厚ｄ１，ｄ２が異なることと、肉盗み 凹部８が設けられていることとの両方で、偏心に対する重量バランスが得られる 。そのため、重量アンバランスによる音や振動の発生が防止される。また、この 実施例では、カウンタウェイト用突部９が設けられて偏心孔７の周囲の部分の軸 方向長さが長くなっているため、軸に対して堅固に固定できる。その他の構成， 効果は前記実施例と同様である。

【００１３】 なお、図２の実施例において、肉盗み凹部８を設けずに、カウンタウェイト用 突部９のみで偏心に対する重量バランスを得るようにしても良い。

【００１４】 図３はさらに他の実施例を示す。この例は、図１の実施例のように内輪１の両 面に肉盗み凹部８を設けたものにおいて、偏心孔７の周囲に内輪１の両面に突出 する筒状の偏心孔外周突部１０を一体に設けたものである。偏心孔外周突部１０ は、全周に肉厚が等しいものとしてある。 この構成の場合、偏心に対する重量バランスは図１の実施例と同様に肉盗み凹 部８の形成によって得られ、また偏心孔外周突部１０が両面に突出することによ り、偏心孔７に圧入される軸に対して堅固な固定が行える。

【００１５】 なお、前記各実施例は玉軸受に適用した場合につき説明したが、この考案は、 ころ軸受にも適用することができる。

【００１６】

【考案の効果】 請求項１の考案の偏心転がり軸受は、軸受内輪の内径面を偏心孔とし、前記軸 受内輪の偏心孔偏り方向に対する逆側部分の両側面に、肉盗み凹部を設けたため 、肉盗み凹部によって円周方向の重量バランスが改善され、音や振動の発生が防 止される。 軸受内輪の両側面に前記偏心孔が貫通した偏心孔外周突部を設けた場合は、軸 受内輪に対する軸の固定が堅固に行える。

【００１７】 請求項３の考案の偏心転がり軸受は、軸受内輪の両面にカウンタウェイト用突 部を設け、その周壁厚さを異ならせて重量バランスを改善するようにしたので、 この場合も重量アンバランスによる音や振動の発生が防止される。また、カウン タウェイト用突部が設けられて偏心孔の周囲の部分の軸方向長さが長くなってい るため、軸に対して堅固に固定できる。

【００１８】 また、各考案において、肉盗み凹部やカウンタウェイト用突部は内輪の両面に 設けるため、軸方向のアンバランスを新たに招くこともない。また、軸受の内輪 に偏心やバランス取りの形状を施すものであるため、焼結等の適宜の製造方法を 選択することで簡易に目的の形状に製造でき、偏心軸を加工する場合に比べて製 造コストの低減および量産性の向上を図ることもできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（Ａ）はこの考案の一実施例の断面図、（Ｂ）
はその正面図である。

【図２】（Ａ）はこの考案の他の実施例の断面図、
（Ｂ）はその正面図である。

【図３】（Ａ）はこの考案のさらに他の実施例の断面
図、（Ｂ）はその正面図である。

【図４】従来の偏心機構とプランジャポンプとの関係を
示す断面図である。

【符号の説明】

１…内輪、１ａ…逆側部分、２…外輪、３…転動体、６
…軌道面、７…偏心孔、８…肉盗み凹部、９…カウンタ
ウェイト用突部、１０…偏心孔外周突部

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸受内輪の内径面を軌道面に対して偏心
   した偏心孔とし、前記軸受内輪の偏心孔偏り方向に対す
   る逆側部分の両側面に、肉盗み凹部を設けた偏心転がり
   軸受。
2. 【請求項２】 軸受内輪の両側面に、前記偏心孔が貫通
   した偏心孔外周突部を設けた請求項１記載の偏心転がり
   軸受。
3. 【請求項３】 軸受内輪の内径面を軌道面に対して偏心
   した偏心孔とし、前記軸受内輪の両側面に、前記偏心孔
   が貫通したカウンタウェイト用突部を設け、この突部の
   偏心孔偏り側部分の周壁厚さを、偏り方向に対する逆側
   部分の周壁厚さよりも厚くした偏心転がり軸受。