JPH0643883A - 車両用能動型騒音制御装置 - Google Patents

車両用能動型騒音制御装置

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JPH0643883A
JPH0643883A JP4195519A JP19551992A JPH0643883A JP H0643883 A JPH0643883 A JP H0643883A JP 4195519 A JP4195519 A JP 4195519A JP 19551992 A JP19551992 A JP 19551992A JP H0643883 A JPH0643883 A JP H0643883A
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JP
Japan
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noise
signal
reference signal
filter
transfer function
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Application number
JP4195519A
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English (en)
Inventor
Tsutomu Hamabe
勉 浜辺
Mitsuhiro Doi
三浩 土井
Izuho Hirano
出穂 平野
Yoshiharu Nakaji
義晴 中路
Kenichiro Muraoka
健一郎 村岡
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】車両用能動型騒音制御装置で実行される畳み込
み演算における計算量の低減を図るとともに、騒音低減
制御の低下を防止できるようにする。 【構成】エンジンのクランク角に同期したクランク角信
号Xに基づき、基準信号生成11において、そのエンジ
ンで発生するこもり音と同じ周期のインパルス列でなる
基準信号xを生成し出力する。そして、駆動信号生成部
13において、適応ディジタルフィルタWm と基準信号
xとを畳み込んで駆動信号y1 〜y4 を生成し、基準処
理信号生成部14において、伝達関数フィルタC^lm
基準信号xとを畳み込んで基準処理信号rlmを生成す
る。さらに、基準信号xの周期の変化に周期性が存在す
るか否かを周期性判断部18で判断し、周期性が存在す
ると認められた場合には、発散抑制部19によって適応
処理部17の処理内容を適宜変更する構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、騒音源から車室内に
伝達される騒音に制御音源から発せられる制御音を干渉
させることにより騒音の低減を図る車両用能動型騒音制
御装置に関し、特に、周期的な騒音を発する騒音源から
伝達される騒音の低減を図る能動型騒音制御装置におい
て、演算処理の簡略化を図るとともに、騒音の発生状態
が比較的頻繁に変化する車室内であっても良好な騒音低
減効果が得られるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】従来の能動型騒音制御装置として、英国
特許第2149614号や特表平1−501344号に
記載のものがある。これら従来の装置は、航空機の客室
やこれに類する閉空間に適用される騒音低減装置であっ
て、閉空間の外部に位置するエンジン等の単一の騒音源
は、基本周波数f0 及びその高調波f1 〜fn を含む騒
音を発生するという条件の下において作動するものであ
る。
【0003】具体的には、閉空間内の複数の位置に設置
され音圧を検出するマイクロフォンと、その閉空間に制
御音を発生する複数のラウドスピーカとを備え、騒音源
の周波数f0 〜fn 成分に基づき、それら周波数f0
n 成分と逆位相の信号でラウドスピーカを駆動させ、
もって閉空間に伝達される騒音と逆位相の制御音をラウ
ドスピーカから発生させて騒音を打ち消している。
【0004】そして、ラウドスピーカから発せられる制
御音の生成方法として、PROCEEDINGS OF THE IEEE,VOL.
63 PAGE 1692,1975,“ADAPTIVE NOISE CANSELLATION :
PRINCIPLES AND APPLICATIONS ”で述べられている‘WI
DROW LMS’アルゴリズムを多チャンネルに展開したアル
ゴリズムを適用している。その内容は、上記特許の発明
者による論文、“A MULTIPLE ERROR LMS ALGORITHM AND
ITS APPLICATION TOTHE ACTIVE CONTROL OF SOUND AND
VIBRATION ”,IEEE TRANS.ACOUST.,SPEECH,SIGNAL PRO
CESSING,VOL.ASSP −35,PP.1423−1434,1987 にも述べ
られている。
【0005】即ち、LMSアルゴリズムは、適応ディジ
タルフィルタのフィルタ係数を更新するのに好適なアル
ゴリズムの一つであって、例えばいわゆるFilter
ed−X LMSアルゴリズムにあっては、ラウドスピ
ーカからマイクロフォンまでの伝達関数をモデル化した
伝達関数フィルタを全てのラウドスピーカとマイクロフ
ォンとの組み合わせについて設定し、騒音源の騒音発生
状態を表す基準信号をそのフィルタで処理した値と各マ
イクロフォンが検出した残留騒音とに基づいた所定の評
価関数の値が低減するように、各ラウドスピーカ毎に設
けられたフィルタ係数可変のディジタルフィルタのフィ
ルタ係数を更新している。
【0006】しかし、このような従来の能動型騒音制御
装置にあっては、騒音の発生状態を表す基準信号を例え
ば正弦波のような連続信号として取り込んでいるため、
基準信号と伝達関数フィルタとの畳み込み演算並びに基
準信号と適応ディジタルフィルタとの畳み込み演算の際
に、その連続信号を所定間隔でサンプリングしてなる数
列の各値と、伝達関数フィルタ及び適応ディジタルフィ
ルタの各フィルタ係数とを積算し、その積算の結果をさ
らに加算しなければならないので、計算量が多大になっ
てしまうという不具合がある。
【0007】かかる不具合に対処する従来の技術とし
て、“日本音響学会講演論文集 平成4年3月”の51
5〜516頁に記載された能動型騒音制御装置があり、
この装置では、騒音の発生状態を表す基準信号として、
騒音の基本周波数に同期したインパルス列を適用するこ
とにより、畳み込み演算の簡略化若しくは省略を図って
いた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記論
文に記載された能動型騒音制御装置を実際に車両に適用
する場合には、下記のような問題点がある。即ち、例え
ば騒音源としてのエンジンから車室内に伝達されるこも
り音を低減するには、エンジンクランクの1/2回転に
同期したインパルス列を基準信号として生成する必要が
あるが、クランク角信号(クランクの1/2回転に同期
した信号)に正確に同期した基準信号を生成することが
できるのは、そのクランク角信号の実時間に対する周期
が、クランク角信号を読み込むA/D変換器等からなる
インタフェース回路のサンプリング周期の整数倍の場合
だけであり、走行状況に応じてエンジン回転数が頻繁に
変化することから、多くの状況においてクランク角信号
の周期はインタフェース回路のサンプリング周期の整数
倍にはならず、従って、生成された基準信号は、実際に
こもり音の原因となるクランク角信号には正確には同期
しないのである。
【0009】このような信号間のずれは伝達関数フィル
タ等の精度が低下したことと等価であるから、その基準
信号に基づいて騒音低減制御を実行しても、所望の騒音
低減効果は得られない、即ち騒音低減効果が低下してし
まうおそれがあり、場合によっては制御が発散してしま
うおそれもある。本発明は、このような従来の技術が有
する未解決の課題に着目してなされたものであって、演
算処理の簡略化を図るとともに、騒音の発生状態が比較
的頻繁に変化する車室内であっても良好な騒音低減効果
が得られる車両用能動型騒音制御装置を提供することを
目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、周期的な騒音を発する騒音
源から騒音が伝達される車両の車室内に制御音を発生可
能な制御音源と、前記騒音源から発せられる騒音と同じ
周期のインパルス列でなる基準信号を生成する基準信号
生成手段と、前記車室内の所定位置における残留騒音を
検出する残留騒音検出手段と、前記制御音源及び前記残
留騒音検出手段間の伝達関数をモデル化した伝達関数フ
ィルタと、この伝達関数フィルタの値と前記基準信号と
を畳み込んで基準処理信号を生成する基準処理信号生成
手段と、前記基準処理信号及び前記残留騒音に基づいて
前記車室内の騒音が低減するように適応ディジタルフィ
ルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記適
応ディジタルフィルタの値と前記基準信号とを畳み込ん
で前記制御音源を駆動する信号を生成する駆動信号生成
手段と、騒音低減効果の低下を予測する効果低下予測手
段と、この効果低下予測手段の予測結果に基づいて騒音
低減効果の低下を抑制する効果低下抑制手段と、を備え
た。
【0011】また、上記目的を達成するために、請求項
2記載の発明は、周期的な騒音を発する騒音源から騒音
が伝達される車両の車室内に制御音を発生可能な制御音
源と、前記騒音源から発せられる騒音と同じ周期のイン
パルス列でなる基準信号を生成する基準信号生成手段
と、前記車室内の所定位置における残留騒音を検出する
残留騒音検出手段と、前記制御音源及び前記残留騒音検
出手段間の伝達関数をモデル化した伝達関数フィルタ
と、この伝達関数フィルタと前記基準信号とを畳み込ん
で基準処理信号を生成する基準処理信号生成手段と、前
記基準処理信号及び前記残留騒音に基づいて前記車室内
の騒音が低減するように適応ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数を更新する適応処理手段と、前記適応ディジタ
ルフィルタと前記基準信号とを畳み込んで前記制御音源
を駆動する信号を生成する駆動信号生成手段と、前記騒
音源から発生する騒音と前記基準信号との間のずれを検
出する信号非同期検出手段と、この信号非同期検出手段
の検出結果に基づいて騒音低減効果の低下を抑制する効
果低下抑制手段と、を備えた。
【0012】そして、請求項3記載の発明は、上記請求
項2記載の発明において、信号非同期検出手段は、基準
信号の周期の周期的な変化に基づいて騒音源から発生す
る騒音と前記基準信号との間のずれを検出する。さら
に、請求項4記載の発明は、上記請求項2又は請求項3
記載の発明において、基準信号生成手段のサンプリング
周期に対しオーバーサンプリングでモデル化された伝達
関数フィルタを有し、効果低下抑制手段は、信号非同期
検出手段の検出結果に基づいて前記伝達関数フィルタの
フィルタ係数を切り換える。
【0013】
【作用】請求項1記載の発明にあっては、駆動信号生成
手段が、適応ディジタルフィルタと基準信号とを畳み込
んで制御音源を駆動する信号を生成するから、制御音源
からは、騒音源から発生する騒音に相関のある制御音が
発生するが、制御開始直後は、適応ディジタルフィルタ
のフィルタ係数が最適値に収束しているとは限らないの
で、必ずしも騒音が低減するとはいえない。
【0014】しかし、基準処理信号生成手段が伝達関数
フィルタと基準信号とを畳み込んで生成した基準処理信
号と、残留騒音検出手段が出力した残留騒音信号とに基
づいて、適応処理手段が、車室内の騒音が低減するよう
に適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するの
で、制御音源から発せられる制御音によって騒音が打ち
消され、車室内の騒音が低減する。
【0015】そして、基準信号生成手段が生成した基準
信号は、騒音源から発せられる騒音と同じ周期のインパ
ルス列であり、その基準信号を形成する個々のインパル
スに対応する伝達関数フィルタ又は適応ディジタルフィ
ルタの応答はインパルス応答であるから、それら各フィ
ルタのフィルタ係数に一致する。従って、基準処理信号
生成手段及び駆動信号生成手段においては、積算をしな
くても畳み込みが行える。
【0016】さらに、効果低下予測手段が、車室内にお
ける騒音低減効果の低下を予測すると、効果低下抑制手
段がその騒音低減効果の低下を抑制するため、例えば伝
達関数フィルタ等の精度が低下しても、騒音低減効果の
低下が抑制される。一方、請求項2記載の発明にあって
も、上記請求項1記載の発明と同様に、制御音源から発
せられる制御音によって騒音が打ち消され、車室内の騒
音が低減するとともに、畳み込み演算の簡略化が図られ
る。
【0017】そして、この請求項2記載の発明では、信
号非同期検出手段が、騒音源から発生する騒音と、基準
信号生成手段が生成した基準信号との間のずれを検出
し、その検出結果に基づいて、効果低下抑制手段が、車
室内における騒音低減効果の低下を抑制するため、騒音
の周期が基準信号生成手段を構成するインタフェース回
路等のサンプリング周期の整数倍とならない状況におい
ても、騒音低減効果の低下が抑制される。
【0018】また、騒音と基準信号との間にずれがある
場合には、基準信号の周期は、騒音の周期が一定であっ
ても変化し、且つ、その変化は騒音と基準信号との間に
ずれに応じた周期を示すため、請求項3記載の発明のよ
うに、基準信号の周期の周期的な変化に基づいて、騒音
と基準信号との間にずれが検出される。さらに、騒音と
基準信号との間にずれは、伝達関数フィルタの精度が低
下することと等価であるから、その騒音と基準信号との
間にずれに応じて伝達関数フィルタを適宜変更すれば、
騒音低減効果の低下が抑制されることになる。
【0019】そこで、請求項4記載の発明のように、伝
達関数フィルタを、基準信号生成手段のサンプリング周
期に対してオーバーサンプリングでモデル化しておき、
効果低下抑制手段が、信号非同期検出手段が検出した騒
音の周期と基準信号の周期との間にずれに基づいて、伝
達関数フィルタのフィルタ係数を適宜切り換えれば、騒
音の周期と基準信号の周期との間にずれに追従するよう
に伝達関数フィルタが変化することになり、騒音低減効
果の低下が抑制される。
【0020】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図1は、本発明の第1実施例の全体構成を示す
図であり、この実施例は、騒音源としてのエンジン4か
ら車室6内に伝達されるこもり音の低減を図る車両用能
動型騒音制御装置1に本発明を適用したものである。
【0021】先ず、構成を説明すると、車体3は、前輪
2a,2b,後輪2c,2d及び各車輪2a〜2dと車
体3との間に介在するサスペンションによって支持され
ている。なお、図1に示す車両は、前輪2a及び2bが
車体3前部に配置されたエンジン4によって回転駆動さ
れるいわゆる前置きエンジン前輪駆動車である。エンジ
ン4には、クランク角センサ5が取り付けられていて、
このクランク角センサ5は、エンジン4のクランク角の
回転に同期したクランク角信号Xをコントローラ10に
供給する。
【0022】また、車体3の車室6内には、制御音源と
してのラウドスピーカ7a,7b,7c及び7dが、前
部座席S1 ,S2 及び後部座席S3 ,S4 のそれぞれに
対向するドア部に配置されている。さらに、各座席S1
〜S4 のヘッドレスト位置には、残留騒音検出手段とし
てのマイクロフォン8a〜8hが、それぞれ二つずつ配
設されていて、これらマイクロフォン8a〜8hが音圧
として測定した残留騒音信号e1 〜e8 が、コントロー
ラ10に供給される。
【0023】そして、コントローラ10は、マイクロコ
ンピュータや必要なインタフェース回路等を含んで構成
されていて、クランク角センサ5から供給されるクラン
ク角信号Xと、マイクロフォン8a〜8hから供給され
る残留騒音信号e1 〜e8 とに基づいて、後述する演算
処理を実行し、車室6内に伝達されるこもり音を打ち消
すような制御音がラウドスピーカ7a〜7dから発せら
れるように、それらラウドスピーカ7a〜7dに駆動信
号y1 〜y4 を出力する。
【0024】図2は、コントローラ10の機能構成を示
すブロック図であって、このコントローラ10は、クラ
ンク角信号Xに基づき、こもり音の原因となるエンジン
4で発生する振動と同じ周期の(例えば、レシプロ4気
筒の場合は、180度回転する度に一つの)インパルス
列でなる基準信号xを生成し出力する基準信号生成部1
1と、クランク角信号Xに基づき、こもり音の原因とな
るエンジン4で発生する振動の周期Nを判断し出力する
周期判断部12とを有している。
【0025】さらに、コントローラ10は、ラウドスピ
ーカ7a〜7dに対応した個数(M個:本実施例では、
M=4)の適応ディジタルフィルタWm (m=1〜M)
と基準信号xとを畳み込んで駆動信号y1 〜y4 を生成
し出力する駆動信号生成部13と、各ラウドスピーカ7
a〜7d及びマイクロフォン8a〜8h間の伝達関数を
有限インパルス応答関数の形でモデル化した伝達関数フ
ィルタC^lm(l=1〜L:Lはマイクロフォン8a〜
8hの個数であり、本実施例ではL=8)の値と基準信
号xとを畳み込んで基準処理信号rlmを生成し出力する
基準処理信号生成部14と、周期Nに基づいて基準処理
信号生成部14内の伝達関数フィルタC^lmを設定する
伝達関数フィルタ記憶部15と、基準処理信号rlmを一
旦記憶するrレジスタ16と、基準処理信号rlm及び残
留騒音信号e1 〜e8 に基づいて車室6内のこもり音が
低減するように駆動信号生成部13内の適応ディジタル
フィルタWm の各フィルタ係数Wmiを更新する適応処理
部17と、基準信号生成部11によって生成された基準
信号xの周期が周期的に変化するか否かを判断する周期
性判断部18と、この周期性判断部18の判断結果に基
づいて適応処理部17の処理内容を適宜補正して発散を
抑制する発散抑制部19と、を有している。
【0026】ここで、本実施例では、クランク角センサ
5及び基準信号生成部11によって基準信号生成手段が
構成され、基準処理信号生成部14及びステップ110
〜114の処理によって基準処理信号生成手段が構成さ
れ、駆動信号生成部13及びステップ102〜106の
処理によって駆動信号生成手段が構成され、適応処理部
17及びステップ115の処理によって適応処理手段が
構成され、周期性判断部18及びステップ201〜20
3の処理によって効果低下予測手段並びに信号非同期検
出手段が構成され、発散予測部19及びステップ204
の処理によって効果低下抑制手段が構成される。
【0027】なお、本実施例では、適応処理部17は、
適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するのに
好適なアルゴリズムの一つであるLMSアルゴリズムに
基づいて、適応ディジタルフィルタWm の各フィルタ係
数Wmiを更新する。図3及び図4は、コントローラ10
内で実行される処理の概要を示したフローチャートであ
って、図3は、基準信号x(一つのインパルス)が生成
される度に実効される割り込み処理を示し、図4は、コ
ントローラ10が駆動信号ym を出力するタイミングで
実行される割り込み処理を示している。
【0028】即ち、基準信号xが生成されると、図3の
割り込み処理が開始され、先ず、そのステップ001で
他の割り込み処理を禁止状態とし、次いでステップ00
2に移行する。ステップ002では、騒音の周期Nの過
去の値を記憶する周期情報N(P)〜N(1)(図5
(a),図6(a)参照)を、下記の(1)式に従って
シフトする。
【0029】 N(P) =N(P−1) N(P─1)=N(P−2) ・ ・ ・ ・ N(p)=N(p─1) ……(1) ・ ・ ・ ・ N(2) =N(1) N(1) =N(0) さらに、ステップ003に移行し、伝達関数フィルタC
lmの過去の値を記憶しているフィルタ情報C^
lm(P)〜C^lm(1)(図6(b),(c)参照)
を、下記の(2)式に従ってシフトする。
【0030】 C^lm(P) =C^lm(P−1) C^lm(P─1)=C^lm(P−2) ・ ・ ・ ・ C^lm(p)=C^lm(p─1) ……(2) ・ ・ ・ ・ C^lm(2) =C^lm(1) C^lm(1) =C^lm(0) なお、周期情報N(p)及びフィルタ情報C^lm(p)
に付されている( )内の数字は、現在の処理に対して
いくつ前の処理において設定した周期N又は伝達関数フ
ィルタC^lmであるかを表している。
【0031】次いで、ステップ004に移行し、最新の
騒音の周期Nを、周期情報N(0)として記憶する。な
お、この騒音の周期Nは、具体的には、後述する図4の
ステップ116で設定されるカウンタkの最新の値を用
いている。そして、ステップ005に移行してカウンタ
iをクリアし、ステップ006に移行して、下記の
(3)式の判定を行う。
【0032】 N(0)<T(i) ……(3) ステップ006の判定が「YES」の場合には、ステッ
プ007に移行し、カウンタiをインクリメントとし
て、再びステップ006に移行して上記(3)式の判定
を行う。ここで、ステップ006の判定で使用するT
(i)は、周期Nが取り得る範囲を所定段階に分割した
各段階の値である。従って、上記(3)式の判定をステ
ップ006,007のループにてi=1から順次行うこ
とにより、ステップ006の判定が「NO」となった時
点で、最新の周期情報N(0)に記憶されている周期
が、どの程度の長さであるかが判明することになる。
【0033】そこで、ステップ006の判定が「NO」
となったら、ステップ008に移行し、下記の(4)式
に従ってフィルタ情報C^lm(0)を設定する。 C^lm(0)=C^mem.lm(i) ……(4) 即ち、上記(4)式のC^mem.lm(i)は、周期Nの長
さに対応して予め設定し記憶している伝達関数フィルタ
であって、周期Nに対して長すぎることのないフィルタ
長を有するフィルタである。
【0034】つまり、本実施例では、周期Nに対して長
すぎることのないように、伝達関数フィルタC^lmが設
定されることになる。そして、ステップ009に移行し
て図4に示す処理で使用するカウンタkをクリアし、ス
テップ010に移行して割り込み禁止状態を解除した
ら、今回のこの図3に示す処理を終了する。
【0035】一方、駆動信号ym を出力するタイミング
となると、図4に示す割り込み処理が実行され、先ず、
そのステップ101で他の割り込み処理を禁止状態と
し、次いでステップ102に移行する。ステップ102
では、駆動信号ym の値を、下記の(5)式に従って初
期設定する。
【0036】 ym =Wmk ……(5) ここで、Wmkは適応ディジタルフィルタWm のk番目の
フィルタ係数である。従って、このステップ102で設
定される駆動信号ym の初期設定値は、直前のインパル
ス入力に対する適応ディジタルフィルタWm の現時点k
における応答である。
【0037】そして、そのカウンタkは、図3の割り込
み処理のステップ009でクリアされるため、基準信号
x(n)が生成された時点で0にセットされ、その時点
から図4の割り込み処理を何回実行したかを表すことに
なる(図5(a),図6(a)参照)。次いで、ステッ
プ103に移行し、カウンタuを1にセットし、ステッ
プ104に移行して、下記の(6)式の判定を行う。
【0038】 このステップ104の判定で使用する値Iは、適応ディ
ジタルフィルタWm のフィルタ長(最大タップ数)であ
る。
【0039】従って、このステップ104の判定が「Y
ES」の場合は、u個前のインパルス入力に対する適応
ディジタルフィルタWm の応答が、現時点まで続いてい
ると判断でき、逆に、このステップ104の判定が「N
O」の場合は、既に消滅していると判断できる。そこ
で、ステップ104の判定が「YES」の場合は、ステ
ップ105に移行し、下記の(7)式に従って駆動信号
m の累算を行う。
【0040】 ym =ym +Wmq ……(7) ただし、 である。
【0041】ここで、Wmqはu個前のインパルス入力に
対する適応ディジタルフィルタWmの応答である。そし
て、ステップ105の累算を行ったら、ステップ106
に移行してカウンタuをインクリメントし、再びステッ
プ104に戻って、ステップ104の判定が「NO」と
なるまで上記処理を繰り返し実行する。
【0042】ステップ104の判定が「NO」となった
場合は、その時のu個前のインパルス入力に対する適応
ディジタルフィルタWm の応答は現時点まで届かないと
判断できるから、駆動信号生成部13における畳み込み
演算は完了したものとし、ステップ107に移行して、
駆動信号ym を出力する。次いで、ステップ108に移
行して残留騒音信号e1 〜e8 を読み込み、ステップ1
09に移行して、過去の処理で求められた基準処理信号
lmを記憶しているレジスタrlm(I)〜rlm(1)を
下記の(8)式に従ってシフトする。
【0043】 rlm(I) =rlm(I−1) rlm(I─1)=rlm(I−2) ・ ・ ・ ・ rlm(i) =rlm(i─1) ……(8) ・ ・ ・ ・ rlm(2) =rlm(1) rlm(1) =rlm(0) そして、ステップ110に移行し、レジスタrlm(0)
を、下記の(9)式に従って初期設定する。
【0044】 rlm(0)=C^lmk (0) ……(9) ここで、C^lmk (0)は、図3の割り込み処理のステ
ップ008で設定された最新の伝達関数フィルタC^lm
(0)のk番目のフィルタ係数であり、直前のインパル
ス入力に対する伝達関数フィルタフィルタC^lm(0)
の現時点kにおける応答である。
【0045】そして、ステップ111に移行してカウン
タuを1にセットし、次いでステップ112に移行し
て、下記の(10)式の判定を行う。 len(C^lm(u))は、u個前のインパルス入力に
対する伝達関数フィルタC^lm(u)のフィルタ長(タ
ップ数)であり、従って、このステップ112の判定が
「YES」の場合は、u個前のインパルス入力に対する
伝達関数フィルタC^lm(u)の応答が現時点まで続い
ていると判断でき、逆に、このステップ112の判定が
「NO」の場合は、既に消滅していると判断できる。
【0046】そこで、ステップ112の判定が「YE
S」の場合は、ステップ113に移行し、下記の(11)
式に従ってレジスタrlm(0)を累算する。 rlm(0)=rlm(0)+C^lmq (u) ……(11) ただし、 である。
【0047】ここで、C^lmq (u)はu個前のインパ
ルス入力に対する伝達関数フィルタC^lm(u)の応答
である。そして、ステップ113の累算を行ったら、ス
テップ114に移行してカウンタuをインクリメント
し、再びステップ112に戻って、ステップ112の判
定が「NO」となるまで上記処理を繰り返し実行する。
【0048】ステップ112の判定が「NO」となった
場合は、その時点からu個前のインパルス入力に対する
適応ディジタルフィルタWm の応答は現時点まで継続し
ないと判断できるから、駆動信号生成部14における畳
み込み演算は完了したものとし、ステップ115に移行
する。そして、ステップ115では、LMSアルゴリズ
ムに基づいた下記の(12)式に従って、各適応ディジタ
ルフィルタWm のフィルタ係数Wmiを更新する。
【0049】 なお、αは収束係数と呼ばれる係数であって、フィルタ
が最適に収束する速度やその安定性に関与する。
【0050】ステップ115におけるフィルタ係数Wmi
の更新が完了したら、ステップ116に移行してカウン
タkをインクリメントし、ステップ117に移行して割
り込み禁止状態を解除した後、今回のこの図4に示す割
り込み処理を終了する。次に、本実施例の作用効果を説
明する。エンジン4の振動は、フレーム等を伝わって車
室6内にこもり音となって放射される。一方、クランク
角センサ5からコントローラ10にクランク角信号Xが
供給されると、基準信号生成部11がそのクランク角信
号Xに基づいて、エンジン4の駆動に起因して車室6内
に発生するこもり音の周期と同じ周期のインパルス列で
なる基準信号xを生成し出力する。
【0051】そして、その基準信号xと適応ディジタル
フィルタWm の値とを畳み込むことにより、駆動信号生
成部13で駆動信号y1 〜y4 が生成され、これがラウ
ドスピーカ7a〜7dに供給される。すると、ラウドス
ピーカ7a〜7dから車室6内に制御音が発生するが、
制御開始直後は適応ディジタルフィルタWm の各フィル
タ係数Wmiが最適な値に収束しているとは限らないの
で、必ずしも車室6内に伝達されたこもり音が低減され
るとはいえない。
【0052】しかし、基準信号xを伝達関数フィルタC
lmで処理した基準処理信号rlmが適応処理部17に供
給されるとともに、マイクロフォン8a〜8hが出力し
た車室6内の残留騒音e1 〜e8 が適応処理部17に供
給されると、LMSアルゴリズムに基づいた上記(12)
式に従って適応ディジタルフィルタWm の各フィルタ係
数Wmiが更新されていくため、それらフィルタ係数Wmi
は最適値に向かって収束していく。
【0053】この結果、車室6内に伝達されるこもり音
がラウドスピーカ7a〜7dから発せられる制御音によ
って打ち消され、車室6内の騒音の低減が図られる。そ
して、基準信号生成部11から出力される基準信号x
は、図5(a)に示すように騒音の周期Nと同じ周期の
インパルス列であるため、個々の基準信号xに対する適
応ディジタルフィルタWm の応答は、図5(b)に示す
ようにその適応ディジタルフィルタWm のフィルタ係数
miに等しい。
【0054】従って、図4のステップ102〜106の
処理によって、現時点nまで継続している各適応ディジ
タルフィルタWm の応答であるサンプリング時刻kにお
けるフィルタ係数Wmkを加算するだけで、適応ディジタ
ルフィルタWm と基準信号xとの畳み込み演算を行える
ことになる。ただし、基準信号xをインパルス列とした
ため、適応ディジタルフィルタWmのフィルタ長が短い
(タップ数が少ない)と、騒音の周期Nが長くなった際
に周期の後半で駆動信号ym が生成されないということ
が考えられるので、その適応ディジタルフィルタWm
フィルタ長は適度に長く設定する必要がある。
【0055】また、基準信号xと伝達関数フィルタC^
lmの値との畳み込み演算にあっても、基準信号xが図6
(a)に示すように騒音の周期Nと同じ周期のインパル
ス列であるから、個々の基準信号に対する伝達関数フィ
ルタC^lmの応答は、図6(b)又は(c)に示すよう
に、それら伝達関数フィルタC^lm(p)のフィルタ係
数C^lmj (p)に等しい。
【0056】従って、図4のステップ110〜114の
処理によって、現時点nまで継続している各伝達関数フ
ィルタC^lm(p)の応答であるサンプリング時刻kに
おける各フィルタ係数C^lmk (p)を累算するだけ
で、基準信号xと伝達関数フィルタC^lmの値との畳み
込み演算を行えることになる。このように、本実施例の
構成であれば、基準信号xと適応ディジタルフィルタW
m ,伝達関数フィルタC^lmの各値との畳み込み演算を
加算のみで行えるため、畳み込み演算に積算及び加算が
必要であった従来の装置と比較して極めて少ない演算量
で済み、騒音低減処理全体の処理速度の向上を図ること
ができる。
【0057】例えば、騒音の発生状態を表す信号をその
まま基準信号として取り込む従来の装置にあっては、そ
の基準信号のサンプリングクロックを1kHz(サンプ
リング周期1msec)、伝達関数フィルタC^lmのフィル
タ長(タップ数J)を20タップ、チャンネル数(L×
M)を8(L=4,M=2)、適応ディジタルフィルタ
m のフィルタ長(タップ数I)を6とした場合、伝達
関数フィルタC^lmと基準信号との畳み込み演算には、 J×L×M=20×4×2 =160 回の演算が必要である。また、適応ディジタルフィルタ
m の値と基準信号との畳み込み演算には、 I×M=6×2 =12 回の演算が必要である。従って、畳み込み演算に必要な
総演算回数は、 160+12=172 となる。
【0058】一方、本実施例の構成であれば、例えば、
エンジン4が直列4気筒であって、エンジン回転数が1
500rpmであれば、騒音の周期は20msecであるか
ら、1msec毎に20回の和積演算からなる畳み込み演算
を行う従来の装置に比べて伝達関数フィルタC^lmの値
と基準信号xとの畳み込み演算は1/20になり、 J×L×M/20=8 となる。
【0059】また、エンジン回転数が1500rpmで
あっても1周期内の全域で制御音が発生するように、適
応ディジタルフィルタWm のタップ数は、騒音の周期2
0msecをサンプリング間隔(図4の割り込み処理を実行
する間隔)1msecで割った20とする必要があるが、適
応ディジタルフィルタWm のタップ数を20とすれば、
適応ディジタルフィルタWm と基準信号xとの畳み込み
演算では加算も不要となり、適応ディジタルフィルタW
m のフィルタ係数Wmiを読み出すだけで済み、従って、
その演算量はラウドスピーカ数Mに等しい2となる。
【0060】つまり、本実施例の構成でエンジン回転数
が1500rpmの場合に畳み込み演算に必要な総計算
量は、 8+2=10 となり、従来の演算量に比較して約1/17になる。ま
た、エンジン回転数が4500rpmであれば、騒音の
周期は約6.7msecとなることから、1msec毎に20回の
和積演算からなる畳み込み演算を行う従来の装置に比べ
て伝達関数フィルタC^lmの値と基準信号xとの畳み込
み演算は1/6.7になり、 J×L×M/6.7≒24 となる。
【0061】そして、適応ディジタルフィルタWm の値
と基準信号xとの畳み込み演算では、騒音の周期が約6.
7msecとなったことから、適応ディジタルフィルタWm
のタップ数が20であれば過去2回のインパルス応答の
加算が必要となり、その読出に1回の演算が必要である
と考えれば、ラウドスピーカ数Mが2であることから、 (2+1)×2=6 の演算が必要となる。
【0062】つまり、本実施例の構成でエンジン回転数
が4500rpmの場合に畳み込み演算に必要な総計算
量は、 24+6=30 となり、従来の演算量に比較して1/5以下になる。ま
た、エンジン回転数が7500rpmであれば、騒音の
周期は4msecとなることから、1msec毎に20回の和積
演算からなる畳み込み演算を行う従来の装置に比べて伝
達関数フィルタC^lmと基準信号xとの畳み込み演算は
1/4になり、 J×L×M/4=40 となる。
【0063】そして、適応ディジタルフィルタWm の値
と基準信号xとの畳み込み演算では、騒音の周期が4ms
ecとなったことから、適応ディジタルフィルタWm のタ
ップ数が20であれば過去4回のインパルス応答の加算
が必要となり、その読出に1回の演算が必要であると考
えれば、ラウドスピーカ数Mが2であることから、 (4+1)×2=10 の演算が必要となる。
【0064】つまり、本実施例の構成でエンジン回転数
が7500rpmの場合に畳み込み演算に必要な総計算
量は、 40+10=50 となり、従来の演算量に比較して1/3以下になる。こ
のように、本実施例の構成であれば、通常の走行域全体
において、従来の装置に比較して少ない演算量で騒音低
減処理を実行することができる。
【0065】ここで、コントローラ10の基準信号生成
部11が、図7(a)に示すようなクランク角信号X
を、図7(b)に示すようなサンプリング周期TS で読
み込んだ場合、クランク角信号Xの真の周期TE が、そ
のサンプリング周期TS の整数倍でないと、クランク角
信号Xの周期が一定であっても、生成される基準信号x
の周期は図7(c)に示すように変動し、クランク角信
号Xと基準信号xとの間にずれが生じてしまい、騒音低
減効果の低下や場合によって制御の発散を招くおそれが
ある。
【0066】そこで、本実施例では、図8に示す処理
(図2の周期性判断部18及び発散抑制部19に対応す
る処理)を実行することにより、クランク角信号Xと基
準信号xとの間にずれが生じても、騒音低減効果の低下
や制御の発散を防止できるようにしている。即ち、図8
の処理は、基準信号xが生成されたタイミングで実行さ
れる割り込み処理であって、先ずそのステップ201に
おいて、前回の基準信号xが入力された時点から現時点
までの時間から現在の基準信号xの周期Tx を演算す
る。
【0067】次いで、ステップ202に移行し、過去の
処理(少なくとも、2回前の処理から1回前の処理ま
で)で求めた過去の基準信号xの周期と、ステップ20
1で求めた現在の基準信号xの周期Tx に基づいて、基
準信号xの周期Tx の変化の周期性を求める。なお、周
期Tx には、図3の処理で設定される周期情報N(P)
〜N(1)を用いることもできる。
【0068】これは、図7(a)〜(c)からも判るよ
うに、クランク角信号Xの周期TEが、サンプリング周
期TS の整数倍でないときに基準信号xの周期Tx に生
じる変化は、一定の周期性を有するからである。そこ
で、ステップ203に移行し、周期Tx に周期的な変化
が生じているか否かを判定し、ここで周期Tx の変化に
周期性が存在しないと判定された場合には、クランク角
信号Xと基準信号xとの間にはずれが生じていない、即
ち、基準信号xはクランク角信号Xに正確に同期してい
ると判断できるから、ステップ204の処理は実行せず
に処理を終了する。
【0069】しかし、ステップ203で周期Tx に周期
的な変化が生じていると判定された場合には、ステップ
204に移行し、制御の発散が防止されるような処理を
実行する。なお、ステップ204における具体的な処理
としては、例えば、図4のステップ115におけるフィ
ルタ係数Wmiの更新に用いる収束係数α(上記(12)式
参照)を小さくすることが考えられる。
【0070】つまり、本実施例の構成であれば、クラン
ク角信号Xと基準信号xとの間にずれが生じている場合
には、ステップ204の処理が実行される結果、適応デ
ィジタルフィルタWm のフィルタ係数Wmiの更新のゲイ
ンが小さくなるから、制御の発散等を防止することがで
きる。図9乃至図12は、本発明の第2実施例を示す図
であり、図9は、上記第1実施例の図2に対応してい
る。
【0071】即ち、本実施例では、周期判断部12が判
断した周期Nに基づいて伝達関数フィルタ記憶部15に
記憶されている伝達関数フィルタC^lmを選択するとと
もに、発散抑制部19が、その選択された伝達関数フィ
ルタC^lmのフィルタ係数を、クランク角信号Xと基準
信号xとの間のずれの有無に基づいて切り換えることに
より、制御の発散を防止するように構成されている。
【0072】ここで、本実施例の伝達関数フィルタC^
lmは、図10に示すように、基準信号生成部11のサン
プリング周期TS の1/2の周期でサンプリングするい
わゆるオーバーサンプリングでモデル化されている。従
って、伝達関数フィルタ記憶部15に記憶されている各
伝達関数フィルタC^lmは、制御に必要なタップ数Jの
2倍のタップ数を有することになる。
【0073】そして、コントローラ10は、上記第1実
施例における図8に示す処理に代えて、図11に示す処
理を実行する。即ち、ステップ201〜203の処理は
図8の処理と同様であるが、ステップ203で周期Tx
に周期性が存在しないと判定され、クランク角信号Xと
基準信号xとの間にずれが生じていないと判断された場
合には、ステップ205に移行し、伝達関数フィルタC
lmの各フィルタ係数C^lmj のうち、偶数番のフィル
タ係数C^lm(2j)を使用するものとする。
【0074】そして、ステップ203で周期Tx に周期
性が存在すると判定され、クランク角信号Xと基準信号
xとの間にずれが生じていると判断された場合には、ス
テップ206に移行し、伝達関数フィルタC^lmの各フ
ィルタ係数C^lmj のうち、奇数番のフィルタ係数C^
lm(2j+1)を使用するものとする。このような処理を実行
すると、図12(a)及び(b)に示すように、クラン
ク角信号Xと基準信号xとの間にずれが生じていない場
合には、図12(c)に示すように、その基準信号xに
対応した伝達関数フィルタC^lm(偶数番のフィルタ係
数C^lm(2j)で構成される伝達関数フィルタ)によって
基準処理信号rlmが生成される一方、図12(d)及び
(e)に示すように、クランク角信号Xと基準信号xと
の間にずれが生じている場合であっても、図12(f)
に示すように、その基準信号xに対応した伝達関数フィ
ルタC^lm(奇数番のフィルタ係数C^lm(2j)で構成さ
れる伝達関数フィルタ)によって基準処理信号rlmが生
成されるようになる。
【0075】つまり、本実施例の構成であれば、クラン
ク角信号Xと基準信号xとの間にずれが生じても、その
ずれを補うように伝達関数フィルタC^lmのフィルタ係
数が切り換えられることになるから、伝達関数フィルタ
C^lmの精度の低下が防止され、もって、騒音低減効果
の低下を抑制することができる。ここで、本実施例で
は、発散抑制部19及びステップ205,206の処理
によって効果低下抑制手段が構成される。
【0076】図13及び図14は、本発明の第3実施例
を示す図であり、図13は、上記第1実施例の図2に対
応している。即ち、本実施例では、エンジン回転数セン
サ20から供給されるエンジン回転数検出信号Eに基づ
いて制御の発散を予測する発散予測部21を設け、この
発散予測部21の予測結果に基づいて、発散抑制部19
が適宜処理を行う構成としている。
【0077】ここで、発散予測部21は、エンジン回転
数センサ20から供給されるエンジン回転数信号Eに基
づいて、エンジンで発生するこもり音の周期TE を演算
するとともに、その周期TE を、基準信号生成部11の
サンプリング周期TS で除算し、その除算の結果から、
クランク角信号Xと基準信号xとの間にずれを演算し、
さらに、そのずれの大きさから、制御が発散するか否か
を判断するように構成されている。
【0078】そして、コントローラ10は、上記第1実
施例における図8に示す処理に代えて、図14に示す処
理を実行する。即ち、ステップ301においてエンジン
回転数信号Eを読み込み、次いでステップ302に移行
し、エンジン回転数信号Eに基づき、クランクの1/2
回転に同期して発生するこもり音の周期TE を演算す
る。
【0079】そして、ステップ303に移行し、こもり
音の周期TE を、基準信号生成部11のサンプリング周
期TS で除算して、その余りSを演算する。次いで、ス
テップ304に移行し、下記の(13)式に基づいて、ず
れ量Zを演算する。 Z=|S−TS | ……(13) このステップ304における演算の結果、クランク角信
号Xと基準信号xとの間のずれ量Zが、定量的に認識さ
れることになる。
【0080】そこで、ステップ305に移行し、ずれ量
Zが0であるか否かを判定し、ここで、Z=0であると
判定された場合は、クランク角信号Xと基準信号xとの
間にずれは生じていないと判断できるから、ステップ3
06以降の処理は実行せずに今回の処理を終了する。し
かし、ステップ305でZ=0でないと判定された場合
は、クランク角信号Xと基準信号xとの間にずれが生じ
ていると判断できるから、今度は、ステップ306に移
行し、ずれ量Zが予め設定された発散判定のしきい値Z
thを超えているか否かを判定する。
【0081】このステップ306の判定が「NO」の場
合は、クランク角信号Xと基準信号xとの間にずれは生
じているが、発散が生じる程ではないと判断できるか
ら、ステップ307には移行せず、今回の処理を終了す
る。しかし、ステップ306の判定が「YES」の場合
は、発散が生じるおそれがあると判断できるから、ステ
ップ307に移行し、上記第1実施例で説明した発散抑
制処理(上記第2実施例で説明した発散抑制処理であっ
てもよい)を実行する。
【0082】この結果、クランク角信号Xと基準信号x
との間にずれが生じている場合であっても、制御の発散
を防止することができる。しかも、本実施例の構成であ
れば、クランク角信号Xと基準信号xとの間にずれを定
量的に把握することができるので、例えば、ずれ量Zに
応じて段階的に収束係数αを設定することにより、きめ
細かな制御が可能となる。
【0083】また、伝達関数フィルタC^lmを上記第2
実施例で説明した周期(Tx /2)よりも細かな周期で
オーバーサンプリングし、ずれ量Zに応じて段階的に伝
達関数フィルタC^lmのフィルタ係数を切り換えるよう
な制御を実行すれば、より高精度の騒音低減制御を行う
ことができる。ここで、本実施例では、エンジン回転数
センサ20,発散予測部21及びステップ301〜30
6の処理によって信号非同期検出手段が構成され、ステ
ップ307の処理によって効果低下抑制手段が構成され
る。
【0084】なお、上記各実施例では、本発明に係る車
両用能動型騒音制御装置を、車両のエンジンから車室内
に伝達されるこもり音の低減を図る装置に適用した場合
について説明したが、本発明によって低減可能な騒音
は、これらに限定されるものではなく、周期的な騒音を
発生するものであり、且つ、その騒音と同じ周期のイン
パルス列でなる基準信号を生成できるものであれば、適
用可能であることは勿論である。
【0085】例えば、トランスミッションで発生する騒
音の低減するのであれば、そのトランスミッションのシ
ャフトの回転信号及びギア位置に基づいて基準信号を生
成すればよいし、終減速装置で発生する騒音を低減する
のであれば、その終減速装置の回転信号及びギア位置に
基づいて基準信号を生成すればよいし、ドライブ・シャ
フトで発生する騒音の低減するのであれば、そのドライ
ブ・シャフト回転信号に基づいて基準信号を生成すれば
よいし、プロペラ・シャフトで発生する騒音の低減する
のであれば、そのプロペラ・シャフト回転信号に基づい
て基準信号を生成すればよいし、エアコンディショナの
コンプレッサで発生する騒音を低減するのであれば、そ
のコンプレッサの回転信号に基づいて基準信号を生成す
ればよいし、ラジエータのファンから発生する騒音を低
減するのであれば、そのファンの回転信号に基づいて基
準信号を生成すればよいし、過給器で発生する騒音を低
減するのであれば、その過給器の回転信号に基づいて基
準信号を生成すればよいし、ウォータ・ポンプやオイル
・ポンプで発生する騒音を低減するのであれば、そのポ
ンプの回転信号に基づいて基準信号を生成すればよい
し、オルタネータで発生する騒音を低減するのであれ
ば、そのオルタネータの回転信号に基づいて基準信号を
生成すればよいし、車輪の回転に伴って発生する騒音を
低減するのであれば、その車輪の回転信号に基づいて基
準信号を生成すればよい。
【0086】また、上記各実施例では、エンジン4で発
生するこもり音に相関のある信号として、クランク角検
出信号Xを適用しているが、これに限定されるものでは
なく、例えば、エンジン4での燃焼に同期した信号であ
ってもよい。
【0087】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
騒音源から発せられる騒音と同じ周期のインパルス列を
基準信号とし、且つ、騒音低減効果が低下するか否かを
判断する手段及び騒音低減効果の低下を抑制する手段を
設けたため、演算量が少なくなって処理の高速化が図ら
れるとともに、基準信号と騒音との間にずれが生じて
も、騒音低減効果の低下や制御の発散を防止することが
できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の全体構成を示す図である。
【図2】コントローラの機能構成を示すブロック図であ
る。
【図3】コントローラ内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである。
【図4】コントローラ内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである。
【図5】適応ディジタルフィルタと基準信号との畳み込
み演算の説明図である。
【図6】伝達関数フィルタと基準信号との畳み込み演算
の説明図である。
【図7】クランク角信号の周期と基準信号の周期との間
のずれを説明する図である。
【図8】コントローラ内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである。
【図9】第2実施例のコントローラの機能構成を示すブ
ロック図である。
【図10】伝達関数フィルタのオーバーサンプリングを
説明する図である。
【図11】コントローラ内で実行される処理の概要を示
すフローチャートである。
【図12】第2実施例の作用効果を説明する波形図であ
る。
【図13】第3実施例のコントローラの機能構成を示す
ブロック図である。
【図14】コントローラ内で実行される処理の概要を示
すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両用能動型騒音制御装置 4 エンジン(騒音源) 5 クランク角センサ 6 車室 7a〜7d ラウドスピーカ(制御音源) 8a〜8h マイクロフォン(残留騒音検出手段) 10 コントローラ 11 基準信号生成部 13 駆動信号生成部 14 基準処理信号生成部 17 適応処理部 18 周期性判断部 19 発散抑制部 20 エンジン回転数センサ 21 発散予測部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H03H 21/00 7037−5J (72)発明者 中路 義晴 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内 (72)発明者 村岡 健一郎 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 周期的な騒音を発する騒音源から騒音が
    伝達される車両の車室内に制御音を発生可能な制御音源
    と、前記騒音源から発せられる騒音と同じ周期のインパ
    ルス列でなる基準信号を生成する基準信号生成手段と、
    前記車室内の所定位置における残留騒音を検出する残留
    騒音検出手段と、前記制御音源及び前記残留騒音検出手
    段間の伝達関数をモデル化した伝達関数フィルタと、こ
    の伝達関数フィルタの値と前記基準信号とを畳み込んで
    基準処理信号を生成する基準処理信号生成手段と、前記
    基準処理信号及び前記残留騒音に基づいて前記車室内の
    騒音が低減するように適応ディジタルフィルタのフィル
    タ係数を更新する適応処理手段と、前記適応ディジタル
    フィルタの値と前記基準信号とを畳み込んで前記制御音
    源を駆動する信号を生成する駆動信号生成手段と、騒音
    低減効果の低下を予測する効果低下予測手段と、この効
    果低下予測手段の予測結果に基づいて騒音低減効果の低
    下を抑制する効果低下抑制手段と、を備えたことを特徴
    とする車両用能動型騒音制御装置。
  2. 【請求項2】 周期的な騒音を発する騒音源から騒音が
    伝達される車両の車室内に制御音を発生可能な制御音源
    と、前記騒音源から発せられる騒音と同じ周期のインパ
    ルス列でなる基準信号を生成する基準信号生成手段と、
    前記車室内の所定位置における残留騒音を検出する残留
    騒音検出手段と、前記制御音源及び前記残留騒音検出手
    段間の伝達関数をモデル化した伝達関数フィルタと、こ
    の伝達関数フィルタと前記基準信号とを畳み込んで基準
    処理信号を生成する基準処理信号生成手段と、前記基準
    処理信号及び前記残留騒音に基づいて前記車室内の騒音
    が低減するように適応ディジタルフィルタのフィルタ係
    数を更新する適応処理手段と、前記適応ディジタルフィ
    ルタと前記基準信号とを畳み込んで前記制御音源を駆動
    する信号を生成する駆動信号生成手段と、前記騒音源か
    ら発生する騒音と前記基準信号との間のずれを検出する
    信号非同期検出手段と、この信号非同期検出手段の検出
    結果に基づいて騒音低減効果の低下を抑制する効果低下
    抑制手段と、を備えたことを特徴とする車両用能動型騒
    音制御装置。
  3. 【請求項3】 信号非同期検出手段は、基準信号の周期
    の周期的な変化に基づいて騒音源から発生する騒音と前
    記基準信号との間のずれを検出する請求項2記載の車両
    用能動型騒音制御装置。
  4. 【請求項4】 基準信号生成手段のサンプリング周期に
    対しオーバーサンプリングでモデル化された伝達関数フ
    ィルタを有し、効果低下抑制手段は、信号非同期検出手
    段の検出結果に基づいて前記伝達関数フィルタのフィル
    タ係数を切り換える請求項2又は請求項3記載の車両用
    能動型騒音制御装置。
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