JPH06314097A - 能動型騒音制御装置 - Google Patents

能動型騒音制御装置

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Publication number
JPH06314097A
JPH06314097A JP5104615A JP10461593A JPH06314097A JP H06314097 A JPH06314097 A JP H06314097A JP 5104615 A JP5104615 A JP 5104615A JP 10461593 A JP10461593 A JP 10461593A JP H06314097 A JPH06314097 A JP H06314097A
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JP
Japan
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noise
filter
signal
inverse
inverse filter
Prior art date
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Application number
JP5104615A
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English (en)
Inventor
Izuho Hirano
出穂 平野
Akio Kinoshita
明生 木下
Yoshiharu Nakaji
義晴 中路
Tsutomu Hamabe
勉 浜辺
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】発生する騒音や残留騒音の周波数特性がフラッ
トでない場合でも、全ての周波数帯域において騒音低減
効果が得られるようにする。 【構成】騒音の発生状態を表す基準信号xk を、適応デ
ィジタルフィルタWkmでフィルタ処理して駆動信号ym
を生成する一方、フィルタ係数更新部12によって、騒
音が低減するようにLMSアルゴリズムに従って適応デ
ィジタルフィルタWkmのフィルタ係数を更新する。そし
て、フィルタ係数更新部12において必要な基準信号x
k 及び残留騒音信号el は、それぞれの周波数特性の逆
のゲイン特性を有する逆フィルタIx ,Ie でフィルタ
処理してから、LMSアルゴリズムに用いるようにす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、騒音源から伝達され
る騒音に制御音源から発せられる制御音を干渉させるこ
とにより騒音の低減を図る能動型騒音制御装置に関し、
特に、騒音の発生状態を表す基準信号を適応ディジタル
フィルタでフィルタ処理して制御音源を駆動する信号を
生成する手段と、基準信号及び空間内の残留騒音を表す
信号に基づいて空間内の騒音が低減するように適応ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数を更新する手段とを備え
た能動型騒音制御装置において、コヒーレンスを有する
全ての周波数帯域で騒音の低減効果が得られるようにし
たものである。
【0002】
【従来の技術】従来の能動型騒音制御装置として、英国
特許第2149614号や特表平1−501344号に
記載のものがある。これら従来の装置は、航空機の客室
やこれに類する閉空間に適用される騒音低減装置であっ
て、閉空間の外部に位置するエンジン等の単一の騒音源
は、基本周波数f0 及びその高調波f1 〜fn を含む騒
音を発生するという条件の下において作動するものであ
る。
【0003】具体的には、閉空間内の複数の位置に設置
され音圧を検出するマイクロフォンと、その閉空間に制
御音を発生する複数のラウドスピーカとを備え、騒音源
の周波数f0 〜fn 成分に基づき、それら周波数f0
n 成分と逆位相の信号でラウドスピーカを駆動させ、
もって閉空間に伝達される騒音と逆位相の制御音をラウ
ドスピーカから発生させて騒音を打ち消している。
【0004】そして、ラウドスピーカから発せられる制
御音の生成方法として、PROCEEDINGS OF THE IEEE,VOL.
63 PAGE 1692,1975,“ADAPTIVE NOISE CANSELLATION :
PRINCIPLES AND APPLICATIONS ”で述べられている‘WI
DROW LMS’アルゴリズムを多チャンネルに展開したアル
ゴリズムを適用している。その内容は、上記特許の発明
者による論文、“A MULTIPLE ERROR LMS ALGORITHM AND
ITS APPLICATION TOTHE ACTIVE CONTROL OF SOUND AND
VIBRATION ”,IEEE TRANS.ACOUST.,SPEECH,SIGNAL PRO
CESSING,VOL.ASSP −35,PP.1423−1434,1987 にも述べ
られている。
【0005】即ち、LMSアルゴリズムは、適応ディジ
タルフィルタのフィルタ係数を更新するのに好適なアル
ゴリズムの一つであって、例えばいわゆるFilter
ed−X LMSアルゴリズムにあっては、ラウドスピ
ーカからマイクロフォンまでの伝達関数をモデル化した
伝達関数フィルタを全てのラウドスピーカとマイクロフ
ォンとの組み合わせについて設定し、騒音源の騒音発生
状態を表す基準信号をそのフィルタで処理した値と各マ
イクロフォンが検出した残留騒音とに基づいた所定の評
価関数の値が低減するように、各ラウドスピーカ毎に設
けられたフィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタの
フィルタ係数を更新している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上記従来の能
動型騒音制御装置であっても空間内の騒音レベルを低減
することは可能であるが、空間内の騒音に音圧レベルの
高い周波数成分と低い周波数成分とが含まれている場
合、LMSアルゴリズム等の逐次更新型の適用アルゴリ
ズムによって適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を
更新する処理を実行すると、音圧レベルの高い周波数成
分が大きく低減するようにフィルタ係数が更新されてい
くため、音圧レベルの低い周波数成分に対する騒音低減
効果が小さいという不具合がある。
【0007】例えば、上記従来の能動型騒音制御装置
を、車両の車室内に伝達されるロード・ノイズ(走行中
に車輪及び路面間で発生するランダム・ノイズ)を低減
する装置とした場合、車室内に伝達されるロード・ノイ
ズは、低周波側の音圧レベルが高く、高周波になるほど
音圧レベルが低くなるという周波数特性を有しているた
め、低周波側に対しては比較的顕著な騒音低減効果が得
られるが、高周波側に対してはあまり効果が得られない
のである。
【0008】そして、人間が不快に感ずる周波数帯域と
音圧レベルの高い周波数帯域とは必ずしも一致しないた
め、機械的な測定によれば騒音レベルが低減できている
ことが確認されている状況であっても、人間の評価では
騒音レベルが低減できていないとの結果を得ることにも
なりかねないのである。本発明は、このような従来の技
術が有する未解決の課題に着目してなされたものであっ
て、周波数成分によって騒音の音圧レベルに差がある場
合であっても、広い周波数帯域に渡って騒音低減効果を
得ることができる能動型騒音制御装置を提供することを
目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、騒音源から騒音が伝達され
る空間に制御音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の
騒音発生状態を検出し基準信号として出力する騒音発生
状態検出手段と、前記空間内の所定位置における残留騒
音を検出し残留騒音信号として出力する残留騒音検出手
段と、フィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタと、
前記基準信号を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ
処理して前記制御音源を駆動する信号を生成する駆動信
号生成手段と、前記基準信号及び前記残留騒音信号に基
づいて前記空間内の騒音が低減するように前記適応ディ
ジタルフィルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段
と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記適応処
理手段に入力される前記基準信号又は前記残留騒音信号
のうちの少なくとも一方の信号を位相情報のみからなる
信号とする位相情報抽出手段を設けた。
【0010】また、請求項2記載の発明は、上記請求項
1記載の発明における位相情報抽出手段として、対象と
する信号の周波数特性と逆のゲイン特性を有する逆フィ
ルタを用いたものである。そして、請求項3記載の発明
は、上記請求項2記載の発明において、騒音の複数の周
波数特性に対応して特性の異なる複数の逆フィルタを設
けるとともに、騒音の周波数特性を検出する周波数特性
検出手段と、この周波数特性検出手段の検出結果に応じ
て前記複数の逆フィルタのうち使用する逆フィルタを選
択する逆フィルタ選択手段と、を備えた。
【0011】さらに、請求項4記載の発明は、上記請求
項2記載の発明において、逆フィルタを作成する逆フィ
ルタ作成手段を設けた。そして、請求項5記載の発明
は、上記請求項4記載の発明における逆フィルタ作成手
段として、適応アルゴリズムに従って逆フィルタを作成
する手段を設けたものであり、請求項6記載の発明は、
請求項5記載の発明における適応アルゴリズムとして、
LMSアルゴリズムを適用したものである。
【0012】また、請求項7記載の発明は、上記請求項
4乃至請求項6記載の発明において、逆フィルタ作成手
段は周波数領域で演算処理を行い、逆フィルタは時間領
域でフィルタ処理を行うこととした。そして、請求項8
記載の発明は、上記請求項4乃至請求項6記載の発明に
おいて、逆フィルタ作成手段は周波数領域で演算処理を
行い、逆フィルタは周波数領域でフィルタ処理を行うこ
ととした。
【0013】またさらに、請求項9記載の発明は、上記
請求項2乃至請求項8記載の発明において、逆フィルタ
に人間の聴感特性に基づいたA特性補正を重畳した。
【0014】
【作用】基準信号及び残留騒音信号は、そのままでは各
周波数成分ごとに所定の振幅及び位相を有する信号であ
るが、請求項1記載の発明であれば、位相情報抽出手段
を設けているため、適応処理手段に入力される基準信号
又は残留騒音信号のうちの少なくとも一方の信号は、位
相情報のみからなる信号(振幅情報を有しない信号)と
なっている。
【0015】従って、適応処理手段が、その入力される
基準信号及び残留騒音信号に基づいて適応ディジタルフ
ィルタのフィルタ係数を更新すると、振幅情報の影響を
受けずに更新処理を行うことになるから、適応ディジタ
ルフィルタのフィルタ係数は、全ての周波数帯域の騒音
を低減し得る最適値に向かって収束していく。そして、
請求項2記載の発明であれば、位相情報抽出手段として
設けられた逆フィルタが、対象とする信号(基準信号又
は残留騒音信号のうち、位相情報のみからなる信号とし
て適応処理手段に供給される信号)の周波数特性とは逆
のゲイン特性を有するため、かかる逆フィルタで対象と
する信号をフィルタ処理すれば、振幅情報が除去されて
位相情報のみからなる信号となる。
【0016】また、請求項3記載の発明であれば、周波
数特性検出手段が、現在発生している騒音の周波数特性
を検出すると、その検出結果に応じて、逆フィルタ選択
手段が、騒音の複数の周波数特性に対応して設けられた
特性の異なる複数の逆フィルタのうち使用する逆フィル
タを選択する。従って、位相情報抽出手段としての逆フ
ィルタが、発生している騒音の周波数特性に応じて使い
分けられることになるから、騒音の周波数特性が変化す
る場合であっても、適応処理手段に入力される基準信号
又は残留騒音信号のうちの一方の信号が位相情報のみか
らなる信号となる。
【0017】一方、請求項4記載の発明であれば、請求
項2記載の発明における逆フィルタを作成する逆フィル
タ作成手段自体を有しているため、複数の逆フィルタを
記憶しておかなくても、騒音の周波数特性が変化する場
合に、適応処理手段に入力される基準信号又は残留騒音
信号のうちの一方の信号が位相情報のみからなる信号と
なる。
【0018】そして、請求項5記載の発明では、逆フィ
ルタ作成手段は、適応アルゴリズム(例えば請求項6記
載の発明のようなLMSアルゴリズム)に従って逆フィ
ルタを作成するため、発生している騒音の周波数特性が
変化する状況であっても、逆フィルタが高精度に作成さ
れる。また、請求項7記載の発明であれば、逆フィルタ
作成手段が周波数領域の演算処理によって逆フィルタを
作成するため、演算量が少なくて済む。特に、LMSア
ルゴリズム等の適応アルゴリズムに従う場合には、畳み
込み演算が必要であることから、これを周波数領域で行
えば演算量が大幅に低減される。
【0019】なお、周波数領域の演算処理を行うために
は、一般にはFFT(高速フーリエ変換)を使用する必
要があることから、データを所定個数のブロック単位で
扱うことになるが、この発明では、逆フィルタにおける
フィルタ処理は時間領域で行われるため、適応処理手段
に取り込まれる信号が時間的に遅れてしまうことは防止
される。
【0020】しかし、演算量の軽減を図るためには、逆
フィルタにおけるフィルタ処理も周波数領域で行うこと
が望ましいのであり、発生する騒音の周波数特性が短時
間で頻繁に変化するものでない場合には、逆フィルタに
おけるフィルタ処理を周波数領域で行っても特に問題は
ない。従って、そのような場合には、請求項8記載の発
明のように、逆フィルタ作成手段における演算処理及び
逆フィルタにおけるフィルタ処理の両方を周波数領域で
行えば、演算量が大幅に軽減される。
【0021】さらに、請求項9記載の発明であれば、逆
フィルタに、人間の聴感特性を考慮しているA特性補正
が重畳されているため、逆フィルタによって位相情報の
みの信号となっている信号は、結局、A特性に応じた振
幅特性を有する信号となる。よって、適応処理手段が適
応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新すると、適
応ディジタルフィルタのフィルタ係数は、人間がよく聞
こえる周波数帯域の音を大きく低減し得る最適値に向か
って収束していく。
【0022】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図1乃至図6は本発明の第1実施例を示す図で
あり、これは本発明に係る能動型騒音制御装置を、車両
2の車室3内の騒音の低減を図る車両用能動型騒音制御
装置1に適用したものである。
【0023】先ず、構成を説明すると、図1に示すよう
に、この車両用能動型騒音制御装置1は、車輪2aと路
面4との間の騒音源から空間としての車室3内に伝達さ
れる騒音としてのロード・ノイズの低減を図る装置であ
って、車輪2aの所定位置には、騒音発生状態検出手段
としての加速度センサ5が配設されていて、この加速度
センサ5は、車輪2aに生じる生じる振動加速度でなる
基準信号xを、マイクロコンピュータ等から構成された
コントローラ10に供給する。なお、図1には四つの車
輪のうちの一つの車輪2aに設けられた加速度センサ5
及びそれから出力される基準信号xのみを図示している
が、実際には加速度センサは各車輪に対応して設けられ
ていて、それら加速度センサ5から出力された基準信号
k (k=1〜K:Kは加速度センサ5の個数であり、
各車輪ごとに一つであればK=4となる)がコントロー
ラ10に供給されている。
【0024】一方、車室3内には、車室3内に残留する
騒音の音圧を測定する残留騒音検出手段としてのマイク
ロフォン8と、車室3内に制御音を発生する制御音源と
してのラウドスピーカ9とが配設されていて、マイクロ
フォン8は、測定された車室3内の残留騒音を、残留騒
音信号eとしてコントローラ10に供給する。なお、こ
のマイクロフォン8も図1には一つしか示していない
が、実際には、乗員の耳位置近傍等の複数の位置にそれ
ぞれ配設されていて、それらマイクロフォン8が検出し
た残留騒音信号el (l=1,…,L:Lはマイクロフ
ォンの個数)がコントローラ10に供給されている。
【0025】コントローラ10は、供給される基準信号
k 及び残留騒音信号el に基づいて所定の演算処理を
実行し、車輪2a及び路面4間から車室3内に伝達され
るロード・ノイズが打ち消されるような制御音がラウド
スピーカ9から発せられるように、ラウドスピーカ9に
駆動信号yを供給する。なお、ラウドスピーカ9も図1
には一つしか示していないが、実際には、複数個のラウ
ドスピーカ9が所定の位置に配設されていて、コントロ
ーラ10からは、それらラウドスピーカ9のそれぞれに
対して駆動信号ym (m=1,…,M:Mはラウドスピ
ーカ9の個数)が供給される。
【0026】そして、コントローラ10は、その機能構
成をブロック図で表した図2に示すように、K個の基準
信号xk 及びM個のラウドスピーカ9に対応したK×M
個のフィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタW
kmと、この適応ディジタルフィルタWkm及び基準信号x
k を畳み込みその結果を添字mごとに足し合わせて駆動
信号ym を演算する駆動信号生成手段としての駆動信号
生成部11と、を有している。
【0027】また、コントローラ10は、適応ディジタ
ルフィルタWkmのフィルタ係数を更新するフィルタ係数
更新部12を有していて、このフィルタ係数更新部12
は、LMSアルゴリズムに基づいて適応ディジタルフィ
ルタWkmの各フィルタ係数W kmi (i=0,1,…,I
−1:Iは適応ディジタルフィルタWkmのタップ数)を
適宜更新するものである。
【0028】そして、コントローラ10は、車室内3に
おけるラウドスピーカ9及びマイクロフォン8間の伝達
関数Cを有限インパルス応答関数の形でモデル化したデ
ィジタルフィルタである伝達関数フィルタC^lmを有し
ている。具体的には、M個のラウドスピーカ9とL個の
マイクロフォン8と間にはM×L個の組み合わせがある
ため、M×L個の伝達関数フィルタC^lmが設けられて
いる。ここで、伝達関数フィルタC^lmの各フィルタ係
数をC^lmj (j=0,1,…,J−1:Jは伝達関数
フィルタC^lmのタップ数)で表す。
【0029】この伝達関数フィルタC^lmの出力rklm
が、フィルタ係数更新部12に供給されている。さら
に、コントローラ10には、基準信号xk が入力される
逆フィルタIx と、残留騒音信号el が入力される逆フ
ィルタIe とが設けられていて、逆フィルタIx の出力
k ' は伝達関数フィルタC^lmに入力され、逆フィル
タIe の出力信号el ' は、フィルタ係数更新部12に
入力されている。
【0030】逆フィルタIx は、これに入力される基準
信号xk の周波数特性とは逆のゲイン特性を有するフィ
ルタである。具体的には、車両2のサスペンションの振
動特性や一般に走行する路面の凹凸等に基づいて車室3
内に伝達される前のロード・ノイズの周波数特性が決ま
ることから、それを実験等で測定して逆フィルタIx
設計することになる。
【0031】一方、逆フィルタIe は、これに入力され
る残留騒音信号el の周波数特性とは逆のゲイン特性を
有するフィルタである。そして、残留騒音信号el は、
ロード・ノイズに起因する成分が支配的であること及び
サスペンション及びマイクロフォン8間の音響伝達特性
Gの一般的な周波数特性が高周波側ほど低レベルとなる
右下がりの特性となることから、逆フィルタIe は一般
的には、高周波側ほど通過し易いハイパス・フィルタと
なる。
【0032】ここで、フィルタ係数更新部12における
フィルタ係数更新処理はLMSアルゴリズムに従うこと
から、適応ディジタルフィルタWkmのフィルタ係数W
kmi の更新式は、収束係数をαとすれば、下記の(1)
式のようになる。 図3はコントローラ10内で実行される処理の概要を示
すフローチャートであって、以下、図3に従って本実施
例の動作を説明する。
【0033】即ち、図3に示す処理は所定のサンプリン
グ周期ごとの割り込み処理として実行されるようになっ
ていて、先ず、そのステップ110において基準信号x
k 及び残留騒音信号el を読み込んだら、ステップ12
0に移行し、逆フィルタIxで基準信号xk をフィルタ
処理し、次いでステップ130に移行し、逆フィルタI
e で残留騒音信号el をフィルタ処理する。
【0034】ここで、基準信号xk 及び残留騒音信号e
l は、図4の(a)に示すように、実軸Re,虚軸I
m,周波数軸fでなる3次元座標で表現すると、各周波
数成分f1 ,f2 ,f3 ,…,ごとに所定の振幅情報及
び位相情報を有する物理量として表せる。ちなみに、振
幅情報は図4に矢印で示される各ベクトルの長さで表現
され、位相情報は各ベクトルの向きで表現され、各ベク
トルは1秒間にfn 回、周波数軸の周りを回転する。こ
の場合、図4の(b)にも示すように、正の周波数ベク
トルfn と、負の周波数ベクトル−fn とは、実軸Re
に対称な形で反対方向に回転する。そして、信号波形の
時々刻々の振幅は、その時刻における全ベクトルの総和
(虚数成分は打ち消されて0になり、常に実数成分のみ
が残る)に等しくなる。
【0035】しかし、ステップ120及び130の処理
が行われると、基準信号xk は逆フィルタIx によって
フィルタ処理され、残留騒音信号el は逆フィルタIe
によってフィルタ処理されるため、それら基準信号xk
及び残留騒音信号el は、例えば図5に示すように全て
の周波数成分において同じ振幅を有することになり、実
質的には、位相情報のみからなる信号xk ' 、el ' と
なっている。
【0036】そして、ステップ140に移行し、基準信
号xk ' を伝達関数フィルタC^lmでフィルタ処理して
処理信号rklm を演算し、次いでステップ150に移行
して、上記(1)式に従って適応ディジタルフィルタW
kmの各フィルタ係数Wkmi を更新する。ステップ150
で全てのフィルタ係数Wkmi の更新を終えたら、ステッ
プ160に移行し、基準信号xk ' を適応ディジタルフ
ィルタWkmでフィルタ処理し、添字mごとに足し合わせ
て駆動信号ym を演算し、この駆動信号ym をステップ
170で対応するラウドスピーカ9に出力する。
【0037】すると、ラウドスピーカ9から車室3内に
制御音が発せられるが、制御開始直後は、適応ディジタ
ルフィルタWkmの各フィルタ係数Wkmi が最適値に収束
しているとは限らないので、その制御音によって車室3
内のロード・ノイズが必ずしも低減されるとはいえな
い。しかし、図3に示す処理が繰り返し実行されると、
フィルタ係数更新部12がLMSアルゴリズムに基づ
き、車室3内の騒音が低減するように適応ディジタルフ
ィルタWkmのフィルタ係数Wkmi を更新していくので、
ラウドスピーカ9から発せられる制御音によってロード
・ノイズが打ち消され、車室3内の騒音が低減されるよ
うになる。
【0038】そして、本実施例では、基準信号xk は逆
フィルタIx でフィルタ処理してから伝達関数フィルタ
C^lmに取り込まれ、残留騒音信号el は逆フィルタI
e でフィルタ処理してからフィルタ係数更新部12に取
り込まれているため、図5に示すような実質的に位相情
報のみからなる信号に基づいてLMSアルゴリズムが実
行されることになる。
【0039】仮に、図4に示すように各周波数成分ごと
に所定の振幅情報及び位相情報を有する基準信号xk
び残留騒音信号el に基づいてLMSアルゴリズムが実
行されると、振幅情報の大きい(図4の例では低周波
側)成分の影響を大きく受けてフィルタ係数Wkmi が更
新されてしまうため、その大きな影響を与える周波数成
分の騒音は比較的良好に低減することができるが、振幅
情報の小さい(図4の例では高周波側)の騒音はそれほ
ど低減されなくなってしまう。
【0040】これに対し、本実施例では、振幅情報を無
視してLMSアルゴリズムが実行されることになるた
め、図6に示すように全ての周波数帯域において騒音低
減効果が得られるのである。特に、本実施例のように車
室3内に伝達されるロード・ノイズの低減を図る場合、
車室3内に伝達されるロード・ノイズは図6実線で示す
ように低周波側ほど音圧レベルが高いため、従来の構成
では低周波側の騒音は良好に低減されても高周波側の騒
音はあまり低減されないので、制御実行中には高周波側
の騒音が逆に浮き上がってしまい、乗員の感覚では高周
波側の騒音レベルが悪化したと評価されてしまう可能性
があったのに対し、本実施例の構成であれば、図6破線
で示すようにコヒーレンスを有する全ての周波数帯域の
騒音レベルが低減するので、乗員の感覚によっても確実
に騒音が低減されていると評価されるようになるのであ
る。
【0041】ここで、本実施例にあっては、逆フィルタ
x ,逆フィルタIe 及びステップ120,130の処
理によって位相情報抽出手段が構成され、伝達関数フィ
ルタC^lm,フィルタ係数更新部12及びステップ14
0,150の処理によって適応処理手段が構成される。
図7乃至図10は本発明の第2実施例を示す図であり、
この実施例も、上記第1実施例と同様に車室内に伝達さ
れる騒音としてのロード・ノイズの低減を図る車両用能
動型騒音制御装置に本発明を適用したものである。
【0042】図7はコントローラ10の機能構成を示す
ブロック図であり、基本的には上記第1実施例のコント
ローラの機能構成と同じであるため、同様の構成には同
じ符号を付しその重複する説明は省略する。即ち、本実
施例のコントローラ10は、複数P個の逆フィルタIx1
〜IxP及びIe1〜IePと、それら逆フィルタIx1〜IxP
及びIe1〜IePの入力側及び出力側に設けられた切換部
15a〜15dと、それら切換部15a〜15dの状態
を制御する切換制御部16と、を有していて、切換制御
部16には、車速を検出する車速センサ15から車速検
出信号Vが供給されている。
【0043】ここで、車輪及び路面間で発生し車室内に
伝達されるロード・ノイズの周波数特性は、主に路面の
凹凸パターンによって決まるのであるが、その路面の凹
凸パターンが一般の街中で略一定と考えれば、ロード・
ノイズの周波数特性は、図8に示すように特に車速の影
響を受けて変化することが判っている。具体的には、車
速の上昇に伴い低周波成分が減少し、高周波成分が増加
する特性となる。
【0044】そこで、例えば図9に示すように車速ごと
に周波数特性の異なる複数の逆フィルタを設け、それら
を車速に応じて使い分ければ、きめ細かな制御が可能と
なるのであり、具体的には、切換制御部16が、車速セ
ンサ17から供給される車速検出信号Vに基づいて最適
な逆フィルタIx1〜IxP及びIe1〜IePを判断し、それ
に応じて切換部15a〜15dを切り換えるものであ
る。
【0045】図10は本実施例のコントローラ10内で
実行される処理の概要を示すフローチャートである。な
お、上記第1実施例の処理と同様のステップには同じ符
号を付し、その重複する説明は省略する。即ち、本実施
例では、ステップ110で基準信号xk 及び残留騒音信
号el を読み込んだ後に、ステップ111に移行して、
車速検出信号Vを読み込む。
【0046】次いで、ステップ112に移行し、その車
速検出信号Vに基づいて、最適な逆フィルタIx1〜IxP
及びIe1〜IePを選択し、その選択された逆フィルタを
x,Ie としてセットする。ここで、切換部15a〜
15dが切り換えられたことになる。そして、ステップ
120に移行し、それ以降は上記第1実施例と同様の処
理を実行する。
【0047】このような処理を実行する結果、逆フィル
タIx ,Ie が固定であった上記第1実施例に比べて、
振幅情報を除去するのにより適した逆フィルタIx ,I
e が処理に用いられることになるから、逆フィルタ処理
された後の基準信号xk ' 及び残留騒音信号el ' の周
波数特性が車速によらず常にフラットになり、全ての周
波数帯域において騒音を低減するという作用効果が顕著
になる。
【0048】ここで、本実施例では、車速センサ17に
よって周波数特性検出手段が構成され、切換部15a〜
15d,切換制御部16及びステップ112における処
理によって逆フィルタ選択手段が構成される。図11は
本発明の第3実施例を示す図であり、この実施例も、上
記第1実施例と同様に車室内に伝達される騒音としての
ロード・ノイズの低減を図る車両用能動型騒音制御装置
に本発明を適用したものである。
【0049】即ち、図11はコントローラ10の機能構
成を示すブロック図であり、基本的には上記第1実施例
のコントローラの機能構成と同じであるため、同様の構
成には同じ符号を付しその重複する説明は省略する。こ
こで、ロード・ノイズは、実際にはサスペンション等の
部材を伝搬して車室内に放射されて車室内の騒音となる
ことため、そのサスペンション等を適宜選定することに
より、ある程度調整することが可能である。つまり、ロ
ード・ノイズの周波数特性をフラットにすることが車両
によっては可能なのである。
【0050】これに対し、残留騒音は、伝達系Gを伝わ
るロード・ノイズ及び伝達系Cを伝わる制御音yを合成
したものと考えることができるから、 e=GX+Cy ……(2) と表すことができる。そして、車室内に残留騒音が存在
するということは、上記(2)式において右辺第1項が
第2項に比べて大きいということであり、残留騒音はG
xが支配的であると考えることができ、上述したように
ロード・ノイズの周波数特性がフラットであれば、残留
騒音の周波数特性は、伝達系Gの特性によって略決まる
ことになる。
【0051】従って、残留騒音信号el を、伝達系Gの
周波数特性とは逆のゲイン特性を有する逆フィルタG-1
でフィルタ処理すれば、その出力el ' の周波数特性
は、略フラットになるのである。さらに、本実施例で
は、その逆フィルタG-1をLMSアルゴリズムに基づい
て制御中に同定する機能を設けることにより、サスペン
ション部材の使用頻度や車室内の温度,湿度等の変動に
よって伝達系Gの周波数特性が変化しても、良好な効果
が得られるようにしている。
【0052】具体的には、コントローラ10の機能構成
をブロック図で表した図11に示すように、駆動信号生
成部11の出力側にも伝達関数フィルタC^lmを設ける
とともに、その伝達関数フィルタC^lmの出力の反転値
と残留騒音信号el の非反転値とを加算する加算部20
の出力を、フィルタ係数可変の逆フィルタG-1及びフィ
ルタ係数更新部21に入力している。このフィルタ係数
更新部21は、逆フィルタG-1のフィルタ係数をLMS
アルゴリズムに従って更新する機能を有していて、ここ
には、加算部20の出力を逆フィルタG-1でフィルタ処
理した値の非反転値と基準信号xk を遅れ要素Z-nで処
理した結果の反転値とを加算する加算部22の出力も供
給されている。遅れ要素Z-nは、伝達系G及び適応ディ
ジタルフィルタWkmによるロード・ノイズ,基準信号x
k の時間遅れを調整するための要素である。
【0053】加算部20の出力は、残留騒音信号el
ら、駆動信号ym が伝達系Cを通じてマイクロフォン8
に到達した音に該当する成分を除いたものであるから、
基準信号xk が伝達系Gを通じてマイクロフォン8に到
達した成分に対応するものである。従って、加算部20
の出力を逆フィルタG-1でフィルタ処理した結果は、基
準信号xとなるから、フィルタ係数更新部21が、加算
部22の出力が零に近づくように、逆フィルタG-1のフ
ィルタ係数を更新すれば、逆フィルタG-1の周波数特性
は伝達系Gの周波数特性とは逆のゲイン特性に一致する
ようになる。
【0054】この結果、逆フィルタG-1において残留騒
音信号el を処理すれば、その出力el ' の周波数特性
は略フラットになり、その出力el ' をフィルタ係数更
新部12に供給して適応ディジタルフィルタWkmのフィ
ルタ係数Wkmi を更新すると、上記第1実施例と同様の
作用効果が得られるものである。むしろ、本実施例によ
れば、逆フィルタG-1が常に同定されるため、伝達系G
の周波数特性が変化しても出力el ' の周波数特性をフ
ラットにできるという利点がある。
【0055】なお、本実施例の構成において、逆フィル
タG-1の作成を周波数領域のLMSアルゴリズムに従っ
て行うこととすれば、時間領域の畳み込み演算は周波数
領域では単なる周波数成分ごとの乗算となるため、演算
量が軽減されるという利点があるし、その場合、逆フィ
ルタG-1による残留騒音信号el のフィルタ処理は時間
領域で行えば、フィルタ係数更新部12における更新処
理が時間的に遅れてしまうという不具合がない。
【0056】しかし、伝達系Gの周波数特性が短時間で
大きく変動しないことが明らかな場合には、フィルタG
-1による残留騒音信号el のフィルタ処理も周波数領域
で行えば、さらに演算量が軽減されるという利点があ
る。ここで、本実施例にあっては、フィルタ係数更新部
21,加算部20,21及び遅れ要素Z-nによって逆フ
ィルタ作成手段が構成されている。
【0057】図12及び図13は本発明の第4実施例を
示す図であり、この実施例も、上記第1実施例と同様に
車室内に伝達される騒音としてのロード・ノイズの低減
を図る車両用能動型騒音制御装置に本発明を適用したも
のである。図12はコントローラ10の機能構成を示す
ブロック図であり、基本的には上記第1実施例のコント
ローラの機能構成と同じであるため、同様の構成には同
じ符号を付しその重複する説明は省略する。
【0058】即ち、本実施例では、逆フィルタIx を作
成する逆フィルタ作成部25及び逆フィルタIe を作成
する逆フィルタ作成部26を設けたものであり、一方の
逆フィルタ作成部25には基準信号xk が入力され、他
方の逆フィルタ作成部26には残留騒音信号el が入力
されている。逆フィルタ作成部25及び26の具体的な
構成は同じであるため、逆フィルタ作成部25の構成の
みを図13に示す。
【0059】かかる逆フィルタ作成部25は、時間領域
の基準信号xk を周波数領域の基準信号xk (f)に変
換するフーリエ変換部25aと、周波数領域の基準信号
k(f)の各周波数成分のレベル関係を、例えば図8
という入力に対して図9のような結果が得られるように
反転するレベル反転部25bと、このレベル反転部25
bの出力を逆フーリエ変換して時間領域における逆フィ
ルタIx を作成する逆フーリエ変換部25cと、を備え
て構成される。
【0060】このような構成であれば、逆フィルタIx
及びIe が作成されるから、上記第1実施例と同様の作
用効果が得られるとともに、それら逆フィルタIx 及び
eは実際の基準信号xk 及び残留騒音信号el の周波
数特性に基づいて作成されるため、それら逆フィルタI
x 及びIe の出力xk ' ,el ' の周波数特性を確実に
フラットにすることができる。
【0061】しかも、逆フィルタIx 及びIe の作成の
ための演算処理は周波数領域で行うが、逆フィルタIx
及びIe におけるフィルタ処理は時間領域で行うため、
フィルタ係数更新部12における適応ディジタルフィル
タWkmのフィルタ係数Wkmiの更新処理が時間的に遅れ
てしまうようなこともない。ここで、本実施例では、逆
フィルタ作成部25,26によって逆フィルタ作成手段
が構成される。
【0062】図14及び図15は本発明の第5実施例を
示す図であり、この実施例も、上記第1実施例と同様に
車室内に伝達される騒音としてのロード・ノイズの低減
を図る車両用能動型騒音制御装置に本発明を適用したも
のである。図14はコントローラ10の機能構成を示す
ブロック図であり、基本的には上記第1実施例のコント
ローラの機能構成と同じであるため、同様の構成には同
じ符号を付しその重複する説明は省略する。
【0063】即ち、本実施例は、上記第4実施例と略同
様の構成であって、異なるのは、逆フィルタIx 及びI
e におけるフィルタ処理も、周波数領域で行う点にあ
る。具体的には、コントローラ10には、基準信号xk
が入力される可変逆フィルタ30と、残留騒音信号el
が入力される可変逆フィルタ31とが設けられていて、
可変逆フィルタ30の出力xk ' が伝達関数フィルタC
lmに入力され、可変逆フィルタ31の出力el がフィ
ルタ係数更新部12に入力されている。
【0064】可変逆フィルタ30及び31の具体的な構
成は同じであるため、可変逆フィルタ30の構成のみを
図15に示す。かかる可変逆フィルタ30は、時間領域
の基準信号xk を周波数領域の基準信号xk (f)に変
換するフーリエ変換部30aと、周波数領域の基準信号
k (f)の各周波数成分のレベル関係を、例えば図8
という入力に対して図9のような結果が得られるように
反転して周波数領域における逆フィルタIx (f)を作
成する逆フィルタ作成部30bと、基準信号xk (f)
を逆フィルタIx (f)でフィルタ処理して周波数領域
における逆フィルタの出力xk ' (f)を演算するフィ
ルタ処理部30cと、このフィルタ処理部30cの演算
結果を逆フーリエ変換して時間領域における出力xk '
を作成する逆フーリエ変換部30dと、を備えて構成さ
れる。
【0065】このような構成であると、フーリエ変換が
複数(一般には2の累乗)個のサンプル値を必要とする
ため、フィルタ係数更新部12の演算処理に必要な処理
信号rklm 及び残留騒音信号el ' の生成に時間遅れが
生じてしまうことになるが、伝達系Gの周波数特性が短
時間に大きく変動しないことが明らかならば、特に問題
はない。
【0066】むしろ、周波数領域におけるフィルタ処
理、つまりフィルタ処理部30cにおけるフィルタ処理
は、基準信号xk (f)及び逆フィルタIx (f)の各
周波数成分ごとの乗算で済むため、さらに演算量の軽減
が図られるという利点があるから、伝達系Gの特性変化
が急峻でない場合には、本実施例のような構成とするこ
とが望ましいのである。
【0067】ここで、本実施例では、可変逆フィルタ3
0,31内のフィルタ処理部30cによって位相情報抽
出手段が構成され、逆フィルタ作成部30bによって逆
フィルタ作成手段が構成される。なお、本実施例にあっ
ては、逆フィルタ作成部30bにおける演算処理は、フ
ィルタ処理部30cにおける処理に対して間欠的に行っ
てもよい。これは、伝達系Gの周波数特性が安定なら
ば、逆フィルタの特性も頻繁に変える必要は少ないから
であり、むしろ間欠的にした方が演算量の軽減が図られ
るからである。
【0068】図16は本発明の第6実施例を示す図であ
り、この実施例も、上記第1実施例と同様に車室内に伝
達される騒音としてのロード・ノイズの低減を図る車両
用能動型騒音制御装置に本発明を適用したものである。
この図16はコントローラ10の機能構成を示すブロッ
ク図であり、基本的には上記第1実施例のコントローラ
の機能構成と同じであるため、同様の構成には同じ符号
を付しその重複する説明は省略する。
【0069】即ち、本実施例では、逆フィルタIx 及び
e の出力側に、人間の聴感特性に応じたA特性フィル
タ35,36を配設したものであり、その他の構成は上
記第1実施例と同じである。このような構成であれば、
逆フィルタIx ,Ie によって周波数特性がフラットに
なった出力xk ' 及びel ' に、さらにA特性補正が重
畳されてからLMSアルゴリズムに用いられることにな
るから、ロード・ノイズのうち、人間が聴き取り易い周
波数帯域の成分が大きく低減されることになり、乗員の
感覚として大幅な騒音低減効果が得られるようになる。
【0070】なお、本実施例では、上記第1実施例の構
成にA特性フィルタ35,36を設けた場合について説
明したが、上記第2実施例乃至第5実施例の構成にA特
性フィルタ35,36を同様に設けてもよい。また、上
記第1実施例,第2実施例,第4実施例,第5実施例及
び第6実施例では、基準信号xk 及び残留騒音信号el
の両方に対応して逆フィルタを設けた場合について説明
しているが、やや精度は落ちるがコストの面等から考え
て、いずれか一方の逆フィルタを省略してもよい。
【0071】さらに、上記各実施例では、本発明に係る
能動型騒音制御装置を車両2の車室3内に伝達されるロ
ード・ノイズの低減を図る車両用能動型騒音制御装置1
に適用した場合について説明したが、本実施例の適用対
象はこれに限定されるものではなく、ロード・ノイズ以
外の騒音の低減を図る車両用能動型騒音制御装置1であ
ってもよいし、或いは、車室3以外の空間の騒音の低減
を図る装置としてもよい。
【0072】そして、上記各実施例では、位相情報抽出
手段として逆フィルタを適用した場合について説明した
が、位相情報抽出手段の具体的な構成は逆フィルタに限
定されるものではない。例えば、マイクロフォン8のエ
ンクロージャの形状等を適宜選定することにより、マイ
クロフォン8に振幅情報をキャンセルするような構造を
持たせても構わない。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
適応処理手段に入力される基準信号又は残留騒音信号の
うちの少なくとも一方を位相情報のみからなる信号とす
る構成としたため、基準信号や残留騒音信号の周波数特
性がフラットでなくても、全ての周波数帯域において騒
音を低減することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の全体構成を示す概念図で
ある。
【図2】第1実施例におけるコントローラの機能構成を
示すブロック図である。
【図3】第1実施例におけるコントローラ内で実行され
る処理の概要を示すフローチャートである。
【図4】逆フィルタで処理する前の信号の状態を説明す
る図である。
【図5】逆フィルタで処理した後の信号の状態を説明す
る図である。
【図6】第1実施例の効果を説明する周波数特性図であ
る。
【図7】第2実施例におけるコントローラの機能構成を
示すブロック図である。
【図8】車速とロード・ノイズとの関係を示す周波数特
性図である。
【図9】車速と逆フィルタの特性との関係を示す周波数
特性図である。
【図10】第2実施例におけるコントローラ内で実行さ
れる処理の概要を示すフローチャートである。
【図11】第3実施例におけるコントローラの機能構成
を示すブロック図である。
【図12】第4実施例におけるコントローラの機能構成
を示すブロック図である。
【図13】逆フィルタ作成部の機能構成を示すブロック
図である。
【図14】第5実施例におけるコントローラの機能構成
を示すブロック図である。
【図15】可変逆フィルタの機能構成を示すブロック図
である。
【図16】第6実施例におけるコントローラの機能構成
を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 車両用能動型騒音制御装置 2 車両 2a 車輪 3 車室(空間) 4 路面 5 加速度センサ(騒音発生状態検出手
段) 8 マイクロフォン(残留騒音検出手段) 9 ラウドスピーカ(制御音源) 10 コントローラ 11 駆動信号生成部(駆動信号生成手段) 12 フィルタ係数更新部 15a〜15d 切換部 16 切換制御部 17 車速センサ(周波数特性検出手段) 25,26 逆フィルタ作成部 30,31 可変逆フィルタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浜辺 勉 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 騒音源から騒音が伝達される空間に制御
    音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態
    を検出し基準信号として出力する騒音発生状態検出手段
    と、前記空間内の所定位置における残留騒音を検出し残
    留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、フィル
    タ係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号
    を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記
    制御音源を駆動する信号を生成する駆動信号生成手段
    と、前記基準信号及び前記残留騒音信号に基づいて前記
    空間内の騒音が低減するように前記適応ディジタルフィ
    ルタのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、を備え
    た能動型騒音制御装置において、 前記適応処理手段に入力される前記基準信号又は前記残
    留騒音信号のうちの少なくとも一方の信号を位相情報の
    みからなる信号とする位相情報抽出手段を設けたことを
    特徴とする能動型騒音制御装置。
  2. 【請求項2】 位相情報抽出手段は、対象とする信号の
    周波数特性と逆のゲイン特性を有する逆フィルタである
    請求項1記載の能動型騒音制御装置。
  3. 【請求項3】 騒音の複数の周波数特性に対応して特性
    の異なる複数の逆フィルタを設けるとともに、騒音の周
    波数特性を検出する周波数特性検出手段と、この周波数
    特性検出手段の検出結果に応じて前記複数の逆フィルタ
    のうち使用する逆フィルタを選択する逆フィルタ選択手
    段と、を備えた請求項2記載の能動型騒音制御装置。
  4. 【請求項4】 逆フィルタを作成する逆フィルタ作成手
    段を設けた請求項2記載の能動型騒音制御装置。
  5. 【請求項5】 逆フィルタ作成手段は、適応アルゴリズ
    ムに従って逆フィルタを作成する請求項4記載の能動型
    騒音制御装置。
  6. 【請求項6】 適応アルゴリズムはLMSアルゴリズム
    である請求項5記載の能動型騒音制御装置。
  7. 【請求項7】 逆フィルタ作成手段は周波数領域で演算
    処理を行い、逆フィルタは時間領域でフィルタ処理を行
    う請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の能動型騒音
    制御装置。
  8. 【請求項8】 逆フィルタ作成手段は周波数領域で演算
    処理を行い、逆フィルタは周波数領域でフィルタ処理を
    行う請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の能動型騒
    音制御装置。
  9. 【請求項9】 逆フィルタにA特性補正を重畳した請求
    項2乃至請求項8記載の能動型騒音制御装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5978489A (en) * 1997-05-05 1999-11-02 Oregon Graduate Institute Of Science And Technology Multi-actuator system for active sound and vibration cancellation
JP2009156732A (ja) * 2007-12-27 2009-07-16 Nitto Seiko Co Ltd 異常検出装置
JP2010012813A (ja) * 2008-07-01 2010-01-21 Honda Motor Co Ltd 能動型振動騒音制御装置
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