JPH06130970A - 能動型騒音制御装置 - Google Patents

能動型騒音制御装置

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Publication number
JPH06130970A
JPH06130970A JP4281821A JP28182192A JPH06130970A JP H06130970 A JPH06130970 A JP H06130970A JP 4281821 A JP4281821 A JP 4281821A JP 28182192 A JP28182192 A JP 28182192A JP H06130970 A JPH06130970 A JP H06130970A
Authority
JP
Japan
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noise
coefficient
filter
convergence
signal
Prior art date
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Pending
Application number
JP4281821A
Other languages
English (en)
Inventor
Akio Kinoshita
明生 木下
Tsutomu Hamabe
勉 浜辺
Izuho Hirano
出穂 平野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Publication of JPH06130970A publication Critical patent/JPH06130970A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【目的】演算負荷の大幅な増加及び入力が通常レベルに
ある場合の収束の遅延を招くことなく、過大入力があっ
た場合の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の大幅
な変動を防止し、安定した騒音低減制御が行えるように
する。 【構成】騒音の発生状態を表す基準信号xk を適応ディ
ジタルフィルタWkmでフィルタ処理して駆動信号ym
生成する駆動信号生成部11と、基準信号xk をラウド
スピーカ及びマイクロフォン間の音響伝達特性を表すデ
ィジタルフィルタC^lmでフィルタ処理した値rklm
残留騒音信号el とに基づいて所定の更新式に従って騒
音が低減するように適応ディジタルフィルタWkmのフィ
ルタ係数W kmi を更新するフィルタ係数更新部12と、
残留騒音信号el に基づいてフィルタ係数更新部12内
の更新式に含まれる収束係数をフィルタ係数Wkmi の更
新量に反比例する方向に変更する収束係数変更部13
と、を備えることとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、騒音源から伝達され
る騒音に制御音源から発せられる制御音を干渉させるこ
とにより騒音の低減を図る能動型騒音制御装置に関し、
特に、制御音源の駆動信号を生成するためのフィルタ係
数可変の適応ディジタルフィルタと、この適応ディジタ
ルフィルタのフィルタ係数を所定の更新式に従って空間
内の騒音が低減される方向に更新する適応処理手段とを
備えた能動型騒音制御装置の騒音低減効果の向上を図っ
たものである。
【0002】
【従来の技術】従来の能動型騒音制御装置として、英国
特許第2149614号や特表平1−501344号に
記載のものがある。これら従来の装置は、航空機の客室
やこれに類する閉空間に適用される騒音低減装置であっ
て、閉空間の外部に位置するエンジン等の単一の騒音源
は、基本周波数f0 及びその高調波f1 〜fn を含む騒
音を発生するという条件の下において作動するものであ
る。
【0003】具体的には、閉空間内の複数の位置に設置
され音圧を検出するマイクロフォンと、その閉空間に制
御音を発生する複数のラウドスピーカとを備え、騒音源
の周波数f0 〜fn 成分に基づき、それら周波数f0
n 成分と逆位相の信号でラウドスピーカを駆動させ、
もって閉空間に伝達される騒音と逆位相の制御音をラウ
ドスピーカから発生させて騒音を打ち消している。
【0004】そして、ラウドスピーカから発せられる制
御音の生成方法として、PROCEEDINGS OF THE IEEE,VOL.
63 PAGE 1692,1975,“ADAPTIVE NOISE CANSELLATION :
PRINCIPLES AND APPLICATIONS ”で述べられている‘WI
DROW LMS’アルゴリズムを多チャンネルに展開したアル
ゴリズムを適用している。その内容は、上記特許の発明
者による論文、“A MULTIPLE ERROR LMS ALGORITHM AND
ITS APPLICATION TOTHE ACTIVE CONTROL OF SOUND AND
VIBRATION ”,IEEE TRANS.ACOUST.,SPEECH,SIGNAL PRO
CESSING,VOL.ASSP −35,PP.1423−1434,1987 にも述べ
られている。
【0005】即ち、LMSアルゴリズムは、適応ディジ
タルフィルタのフィルタ係数を更新するのに好適なアル
ゴリズムの一つであって、例えばいわゆるFilter
ed−X LMSアルゴリズムにあっては、ラウドスピ
ーカからマイクロフォンまでの伝達関数をモデル化した
伝達関数フィルタを全てのラウドスピーカとマイクロフ
ォンとの組み合わせについて設定し、騒音源の騒音発生
状態を表す基準信号をそのフィルタで処理した値と各マ
イクロフォンが検出した残留騒音とに基づいて制御空間
内の騒音が低減するように、各ラウドスピーカ毎に設け
られた適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新し
ている。
【0006】そして、このような能動型騒音制御装置に
適用されるFiltered−XLMSアルゴリズム等
の適応アルゴリズムでは、基準信号や残留騒音信号に応
じて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数が更新され
ていくのであるが、エンジン等を騒音源として騒音低減
制御を実行する場合、基準信号は例えばそのエンジンの
回転に同期した正弦波となり、エンジン音の大小等の振
幅に関する情報を有していない。このため、良好な騒音
低減効果を得るためには、適応ディジタルフィルタのフ
ィルタ係数は、音響伝達系を表現するだけではなく、騒
音の発生状態をも表現しなければならない。
【0007】従って、エンジン音の大小に応じて制御音
を適切に発生させるためには、目まぐるしく変動するフ
ィルタ係数の最適値を追随するようにフィルタ係数を頻
繁に更新することが必要になるから、フィルタ係数の追
随性が良いほど騒音低減効果が向上することになるが、
フィルタ係数の収束速度に関与する収束係数を単に大き
くすると最適値への収束が保証されなくなる等の不具合
が生じてしまう。
【0008】そこで、本出願人は、フィルタ係数の変化
量に比例して収束係数を変化させることにより、最適値
への収束を不可能にすることなく、フィルタ係数の追随
性を向上させる技術を提案している(特願平3−220
634号明細書参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ここで、例えば走行中
の車両の車輪及び路面間から発生するロード・ノイズの
ようにランダム性の高い騒音を低減する場合、基準信号
としてサスペンションの振動加速度が適用でき、騒音の
大小等もその基準信号によってかなり良く表現されるた
め、適応ディジタルフィルタのフィルタ係数は音響伝達
系のみを表現できればよく、エンジン等を騒音源とした
場合と異なり残留騒音信号や基準信号の大小に応じて適
応ディジタルフィルタのフィルタ係数を頻繁に更新する
必要はない。
【0010】つまり、ロード・ノイズのようなランダム
性の高い騒音を低減する場合、適応ディジタルフィルタ
のフィルタ係数の最適値は音響伝達系が変化しない限り
安定しているので、大レベルの残留騒音信号や基準信号
に応じて適応ディジタルフィルタのフィルタ係数が大き
く変化するのは好ましくないのである。しかし、適応デ
ィジタルフィルタのフィルタ係数の収束速度に関与する
収束係数を単に小さくしてしまうと、確かに適応ディジ
タルフィルタのフィルタ係数が大きく変動するようなこ
とが防がれるが、最適値への収束が遅くなってしまうと
いう不具合がある。
【0011】なお、このような不具合に対し、本出願人
は、各フィルタ係数毎にそのフィルタ係数に対する評価
関数の曲率に応じて個別に収束係数を設定するという技
術を提案しているが(特願平4−32259号明細書参
照)、良好な効果が期待できる一方で、演算量が多大に
なるという改良すべき点がある。本発明は、上述したよ
うな従来の技術が有する未解決の課題に着目してなされ
たものであって、少ない演算量によって、通常入力時に
おける最適値への収束性を妨げることなく、過大入力が
あった場合の適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の
不要な変動を防止することができる能動型騒音制御装置
を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の能動型騒音制御装置は、騒音源から
騒音が伝達される空間に制御音を発生可能な制御音源
と、前記空間内の所定位置における残留騒音を検出し残
留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記騒
音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力する騒
音発生状態検出手段と、フィルタ係数可変の適応ディジ
タルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタルフ
ィルタでフィルタ処理して前記制御音源を駆動する信号
を生成する駆動信号生成手段と、前記残留騒音信号及び
前記基準信号に基づき且つ所定の更新式に従って前記空
間内の騒音が低減する方向に前記適応ディジタルフィル
タのフィルタ係数を更新する適応処理手段と、前記更新
式に含まれる前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係
数の収束速度に関与する収束係数をそのフィルタ係数の
更新量に反比例する方向に変更する収束係数変更手段
と、を備えた。
【0013】また、請求項2記載の発明は、上記請求項
1記載の能動型騒音制御装置において、適応ディジタル
フィルタのフィルタ係数が安定領域にあるか否かを判定
する安定領域判定手段を設け、収束係数変更手段は前記
安定領域判定手段が前記フィルタ係数は安定領域にある
と判定した場合に収束係数を変更する。そして、請求項
3記載の発明は、上記請求項1又は請求項2記載の能動
型騒音制御装置において、収束係数変更手段は、残留騒
音信号及び基準信号のうちの少なくとも一方に基づいて
収束係数を変更する。
【0014】さらに、請求項4記載の発明は、上記請求
項1又は請求項2記載の能動型騒音制御装置において、
収束係数変更手段は、周波数領域に変換した残留騒音信
号及び周波数領域に変換した基準信号のうちの少なくと
も一方に基づいて、周波数毎に収束係数を変更する。ま
たさらに、請求項5記載の発明は、上記請求項1又は請
求項2記載の能動型騒音制御装置において、収束係数変
更手段は、周波数領域に変換した残留騒音信号及び周波
数領域に変換した基準信号のうちの少なくとも一方と、
それら残留騒音信号及び基準信号間のコヒーレンスとに
基づいて、周波数毎に収束係数を変更する。
【0015】
【作用】請求項1記載の発明にあっては、駆動信号生成
手段が、騒音発生状態検出手段から出力された基準信号
を適応ディジタルフィルタでフィルタ処理することによ
り制御音源を駆動する信号を生成するから、制御音源か
らは、騒音源から発生する騒音に相関のある制御音が発
生するが、制御開始直後は、その適応ディジタルフィル
タのフィルタ係数が最適な値に収束しているとは限らな
いので、必ずしも騒音が低減するとはいえない。
【0016】しかし、適応処理手段が、残留騒音検出手
段から出力される空間内の所定位置の残留騒音を表す残
留騒音信号と、基準信号とに基づき、所定の更新式に従
って空間内の騒音が低減する方向に適応ディジタルフィ
ルタのフィルタ係数を更新するので、かかるフィルタ係
数は最適値に収束していき、制御音源から発せられる制
御音によって騒音が打ち消されるようになり、空間内の
騒音が低減する。
【0017】そして、本発明では、収束係数変更手段
が、適応処理手段が用いる更新式に含まれる収束係数
を、適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新量に
反比例する方向に変更するから、過大な残留騒音信号や
基準信号が取り込まれた場合等のように更新量が大きく
なる状況においては収束係数が小さくなり、逆に小さな
残留騒音信号や基準信号が入力された場合等のように更
新量が小さくなる状況においては収束係数が大きくな
る。
【0018】この結果、フィルタ係数の更新量は、それ
が大きくなる状況においては大きくなることが抑えら
れ、それが小さくなる状況においては小さくなることが
抑えられるので、残留騒音信号や基準信号の大きさに関
わらず略一定の範囲に収まるようになり、過大な残留騒
音信号や基準信号が取り込まれた場合等の適応ディジタ
ルフィルタのフィルタ係数の大変動が防止されるととも
に、残留騒音信号や基準信号が通常のレベルにある場合
に更新量が小さ過ぎて最適値への収束が極端に遅くなる
ようなこともない。
【0019】また、請求項2記載の発明にあっては、安
定領域判定手段が、適応ディジタルフィルタのフィルタ
係数が適応途上ではなく安定領域にあると判定した場合
に、収束係数変更手段が収束係数を適宜変更する。ここ
で、フィルタ係数の安定領域とは、騒音低減制御がある
程度良好に働いているので適応ディジタルフィルタのフ
ィルタ係数を大きく変動させる必要のない領域のことで
あり、フィルタ係数が安定領域にある場合に大きな残留
騒音信号や基準信号に応じてフィルタ係数を大きく変動
させることは、却って騒音低減制御を悪化させることに
なる。
【0020】逆に、フィルタ係数が安定領域にない場合
には、最適値への収束を速めるために、大きな残留騒音
信号や基準信号に応じてフィルタ係数を大きく変動させ
るのが好ましい場合が多い。従って、この請求項2記載
の発明のように、フィルタ係数が安定領域にある場合
に、収束係数変更手段が収束係数をフィルタ係数の更新
量に反比例する方向に変更すると、制御を開始した時点
からフィルタ係数が最適値に収束するまでに要する時間
が上記請求項1記載の発明よりも短くなるとともに、フ
ィルタ係数が安定領域にあると判定された後は、上記請
求項1記載の発明と同様に適応ディジタルフィルタのフ
ィルタ係数の不必要な大変動が防止される。
【0021】そして、適応ディジタルフィルタのフィル
タ係数の更新量は、残留騒音信号及び基準信号の大きさ
によって略決まるため、請求項3記載の発明のように、
残留騒音信号及び基準信号のうちの少なくとも一方に基
づけば、収束係数をフィルタ係数の更新量に反比例する
方向に変更することができる。また、請求項4記載の発
明にあっては、周波数領域に変換した残留騒音信号及び
周波数領域に変換した基準信号のうちの少なくとも一方
に基づいて、周波数毎に収束係数を変更するため、入力
の大きい周波数帯域では収束係数が小さくなり、入力の
小さい周波数帯域では収束係数が大きくなる。
【0022】この結果、適応ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数の不必要な大変動が周波数毎に防止され、残留
騒音信号や基準信号が通常のレベルにある周波数におい
ては更新量が小さ過ぎて最適値への収束が極端に遅くな
るようなこともない。さらに、請求項5記載の発明にあ
っては、周波数領域に変換した残留騒音信号及び周波数
領域に変換した基準信号のうちの少なくとも一方と、残
留騒音信号及び基準信号間のコヒーレンスとに基づい
て、周波数毎に収束係数を変更するため、上記請求項4
記載の発明と同様の作用が得られるとともに、残留騒音
信号及び基準信号間のコヒーレンスをも考慮しているか
ら、コヒーレンスの大きい周波数帯域と小さい周波数帯
域とで収束係数が異なるようになり、例えばコヒーレン
スの小さい周波数帯域では収束係数を小さくすれば、相
関の小さい入力に応じてフィルタ係数が変動することが
防止されるようになる。
【0023】なお、ここで、上記請求項1乃至請求項4
記載の発明における「フィルタ係数の更新量に反比例す
る方向」とは、フィルタ係数が増加した際には減少し且
つフィルタ係数が減少した際には増加するという意であ
る。従って、一定比率で変化する場合の他、2次曲線的
に変化する場合等をも含むものである。
【0024】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図1は、本発明の第1実施例の全体構成を示す
図であり、この実施例は、路面及び車輪2a〜2d間の
騒音源から空間としての車室6内に伝達されるロード・
ノイズの低減を図る能動型騒音制御装置1に本発明を適
用したものである。
【0025】先ず、構成を説明すると、車体3は、前輪
2a,2b,後輪2c,2d及び各車輪2a〜2dと車
体3との間に介在するサスペンション(図示せず)によ
って支持されている。各車輪2a〜2d及び車体3間に
介在するサスペンションのそれぞれには、騒音発生状態
検出手段としての加速度センサ5a,5b,5c及び5
dが取り付けられていて、路面から入力されるロード・
ノイズに対応した加速度信号である基準信号xk (k=
1〜K:Kは加速度センサ5a〜5dの個数であって、
本実施例では、K=4である。)をコントローラ10に
供給する。
【0026】また、車体3内の空間としての車室6内に
は、制御音源としてのラウドスピーカ7a,7b,7c
及び7dが、前部座席S1 ,S2 及び後部座席S3 ,S
4 のそれぞれに対向するドア部に配置されている。さら
に、各座席S1 〜S4 のヘッドレスト位置には、残留騒
音検出手段としてのマイクロフォン8a〜8hが、それ
ぞれ二つずつ配設されていて、これらマイクロフォン8
a〜8hが音圧として測定した残留騒音信号el (l=
1〜L:Lはマイクロフォン8a〜8hの個数であっ
て、本実施例では、L=8である。)が、コントローラ
10に供給される。
【0027】コントローラ10は、必要なインタフェー
ス回路やマイクロプロセッサ等から構成されていて、加
速度センサ5a〜5dから供給される基準信号xk と、
マイクロフォン8a〜8hから供給される残留騒音信号
l とに基づいて、後述する演算処理を実行し、車室6
内に伝達されるロード・ノイズを打ち消すような制御音
がラウドスピーカ7a〜7dから発せられるように、そ
れらラウドスピーカ7a〜7dに駆動信号ym (m=1
〜M:Mはラウドスピーカ7a〜7dの個数であって、
本実施例では、M=4である。)を出力する。
【0028】そして、コントローラ10における演算処
理は、本実施例では、LMSアルゴリズム(より具体的
には、Filtered−X LMSアルゴリズム)に
基づいていて、コントローラ10の機能構成を表すブロ
ック図である図2に示すように、コントローラ10は、
駆動信号生成手段としての駆動信号生成部11と、ラウ
ドスピーカ7a〜7d及びマイクロフォン8a〜8h間
の伝達関数を有限インパルス応答関数の形でモデル化し
たL×M個のディジタルフィルタC^lmと、加速度セン
サ5a〜5d及びラウドスピーカ7a〜7dの個数に対
応したK×M個のフィルタ係数可変の適応ディジタルフ
ィルタWkmとを有していて、駆動信号生成部11におい
て基準信号xk を適応ディジタルフィルタWkmでフィル
タ処理し且つそのフィルタ処理の結果を各ラウドスピー
カ7a〜7d毎(即ち、添字m毎)に加算して駆動信号
m を生成し出力する。
【0029】さらに、コントローラ10は、基準信号x
k をディジタルフィルタC^lmでフィルタ処理すること
により生成した処理信号rklm と、マイクロプロセッサ
8a〜8hから供給される残留騒音信号el とに応じ
て、後述する更新式に従って、車室6内に伝達されたロ
ード・ノイズが低減する方向に、適応ディジタルフィル
タWkmの各フィルタ係数Wkmi をLMSアルゴリズムに
基づいて更新するフィルタ係数更新部12を備えてい
る。
【0030】ここでFiltered−X LMSアル
ゴリズムについて説明すると、l番目のマイクロフォン
が検出した残留騒音信号をel (n)、ラウドスピーカ
から制御音が発生していない時のl番目のマイクロフォ
ンが検出した残留騒音信号をdl (n)、ディジタルフ
ィルタC^lmのj番目(j=0,1,2,…,J−1:
JはディジタルフィルタC^lmを構成するフィルタ係数
の個数(タップ数))のフィルタ係数をC^lmj 、基準
信号をxk (n)、基準信号xk (n)が入力されたm
番目のラウドスピーカを駆動する適応ディジタルフィル
タWkmのi番目(i=0,1,2,…,I−1:Iは適
応ディジタルフィルタWkmを構成するフィルタ係数の個
数(タップ数))のフィルタ係数をWkmi とすると、 が成立する。
【0031】なお、(n)がつく項は、いずれもサンプ
リング時刻nにおけるサンプル値を表す。上記(1)式
中、右辺の「ΣΣWkmi k (n−j−i)」の項は適
応ディジタルフィルタに基準信号xk を入力した時のm
番目のラウドスピーカへの出力y m を表し、「ΣC^
lmj {ΣΣWkmi k (n−j−i)}」の項はm番目
のラウドスピーカに入力された信号ym がそこから制御
音として空間に出力され伝達関数C^lmを経てl番目の
マイクロフォンに到達した時の信号を表し、さらに、
「ΣΣC^lmj {ΣΣWkmi k (n−j−i)}」の
項はl番目のマイクロフォンへ到達した信号を足し合わ
せているから、l番目のマイクロフォンに到達する制御
音の総和を表している。
【0032】次いで、評価関数Jeを、 とする。
【0033】そして、評価関数Jeを最小にするフィル
タ係数Wkmi を求めるのが、LMSアルゴリズムであ
り、具体的には、評価関数Jeを各フィルタ係数Wkmi
について偏微分した値で、フィルタ係数Wkmi を更新す
る。そこで、上記(2)式より、 となるが、上記(1)式より、 となるから、この(4)式の右辺をrklm (n−i)と
おけば、フィルタ係数の更新は、下記の(5)式のよう
になる。
【0034】 つまり、フィルタ係数更新部11は、上記(5)式で表
される更新式に従って、適応ディジタルフィルタWkm
フィルタ係数Wkmi を逐次更新する。
【0035】なお、上記(5)式中のαは収束係数と呼
ばれる係数であって、適応ディジタルフィルタのフィル
タ係数の収束の速度に関与する係数である。そして、コ
ントローラ10は、残留騒音信号el に基づいて、上記
更新式に含まれる収束係数αを変更する収束係数変更手
段としての収束係数変更部13を備えている。
【0036】即ち、収束係数変更部13は、残留騒音信
号el の絶対値の平均値の逆数を重み係数λとして求
め、その重み係数λと基準収束係数α0 とを乗じて収束
係数αを演算し変更するものであって、フィルタ係数更
新部12は、その収束係数変更部13において変更され
た収束係数αを読み込み上記(5)式に従ってフィルタ
係数Wkmi を更新することになる。
【0037】図3及び図4は、コントローラ10内で実
行される処理の概要を示すフローチャートであって、以
下、図4及び図5に従って、本実施例の動作を説明す
る。なお、図3は駆動信号生成部11,フィルタ係数更
新部12及びディジタルフィルタC^lmにおける処理に
対応し、図4は収束係数変更部13における処理に対応
していて、いずれもサンプリング・クロックに同期した
割り込み処理として実行される。
【0038】先ず、図3の処理を説明すると、ステップ
101で現時点における基準信号x k (n)及び残留騒
音信号el (n)を読み込み、次いでステップ102に
移行し、基準信号xk (n)をディジタルフィルタC^
lmでフィルタ処理することにより(具体的には、基準信
号xk (n)とディジタルフィルタC^lmの各フィルタ
係数C^lmj とを畳み込むことにより)処理信号rklm
(n)を演算する。
【0039】次いで、ステップ103に移行し、所定の
記憶領域に保存してある収束係数αを読み込む。なお、
この収束係数αが、後に説明する図4の処理において適
宜変更される。そして、ステップ104に移行し、上記
(5)式に従ってフィルタ係数Wkmiを演算して適応デ
ィジタルフィルタWkmのフィルタ係数Wkmi を更新し、
次いでステップ105に移行し、基準信号xk (n)を
適応ディジタルフィルタWkmでフィルタ処理することに
より(具体的には、基準信号xk (n)と適応ディジタ
ルフィルタWkmの各フィルタ係数Wkmi とを畳み込むこ
とにより)駆動信号ymを生成し、この駆動信号ym
ステップ106で各ラウドスピーカ7a〜7dに出力す
る。
【0040】すると、ラウドスピーカ7a〜7dから車
室6内に制御音が発生するが、制御開始直後は適応ディ
ジタルフィルタWkmの各フィルタ係数Wkmi が最適な値
に収束しているとは限らないので、必ずしも車室6内に
伝達されたロード・ノイズが低減されるとはいえない。
しかし、図3の処理が繰り返し実行されると、上記
(5)式に従って適応ディジタルフィルタWkmの各フィ
ルタ係数Wkmi が適宜更新されていくから、各フィルタ
係数Wkmi は最適値に向かって収束していき、車室6内
に伝達されるロード・ノイズがラウドスピーカ7a〜7
dから発せられる制御音によって打ち消されるようにな
り、車室6内の騒音の低減が図られる。
【0041】一方、図4に示す処理にあっては、先ずそ
のステップ110において、上記図3に示す処理のステ
ップ101で逐次読み込む残留騒音信号el (n)の絶
対値の平均値e ̄(=|el (n)| ̄)を演算し、次
いでステップ111に移行し、その平均値e ̄の逆数1
/e ̄を重み係数λとする。そして、ステップ112に
移行し、下記の(6)式に従って収束係数αを演算しこ
れを変更する。
【0042】 α=λ・α0 ……(6) 即ち、この図4に示す処理を実行する結果、収束係数α
は、残留騒音信号elに反比例するようになる。そし
て、残留騒音信号el は、上記(5)式の右辺第2項で
表されるフィルタ係数Wkmi の更新量を決める一つの要
因であるため、結局、図4に示す処理を実行する結果、
収束係数αは、フィルタ係数Wkmi の更新量に反比例す
る方向に変更されることになる。
【0043】すると、フィルタ係数Wkmi の更新量は、
大きくなる状況(残留騒音信号elが大きい場合)にお
いては小さくなるように抑えられ、小さくなる状況(残
留騒音信号el が小さい場合)においては大きくなるよ
うに補われるから、評価関数Jeと各フィルタ係数W
kmi とで決まる評価関数曲面に沿って収束していく様子
を表す図5に示すように、略一定の範囲に収まるように
なる。
【0044】つまり、本実施例の構成であれば、残留騒
音信号el として例えばオーディオ音やクラクション等
の過大な入力があった場合においても、適応ディジタル
フィルタWkmのフィルタ係数Wkmi が大きく変動しない
ため、収束過程又は略収束状態にあるフィルタ係数W
kmi が発散してしまうようなことが防止される。そし
て、単に収束係数αを小さくしたのとは異なり、通常レ
ベルの残留騒音信号el が入力されている状況において
は、フィルタ係数Wkmi の更新量は適度な大きさを有す
るため、収束速度が極端に遅くなってしまうようなこと
もない。
【0045】しかも、その収束係数αを演算し変更する
処理には、特に時間を要する演算処理が不要であるた
め、本実施例の構成とすることにより演算負荷が大幅に
増大してしまうこともない。図6は本発明の第2実施例
を示す図であって、本実施例も、上記第1実施例と同様
に本発明に係る能動型騒音制御装置を車両の車室内に伝
達されるロード・ノイズの低減を図る装置に適用したも
のであり、その主な構成は上記第1実施例と同様であ
る。
【0046】図6に示す処理は、上記第1実施例で説明
した図4に示す処理に対応するものであって、そのステ
ップ201において上記図3に示す処理のステップ10
1で逐次読み込む基準信号xk (n)の絶対値の平均値
x ̄(=|xk (n)| ̄)を演算し、次いでステップ
202に移行し、その平均値x ̄の逆数1/x ̄を重み
係数λとする。
【0047】そして、ステップ203に移行し、上記
(6)式に従って収束係数αを演算しこれを変更する。
即ち、本実施例にあっては、収束係数αは、フィルタ係
数Wkmi の更新量を決める一つの要因である基準信号x
k (n)に反比例するようになるから、上記第1実施例
と同様に、フィルタ係数Wkmi の更新量は、大きくなる
状況(基準信号xk が大きい場合)においては小さくな
るように抑えられ、小さくなる状況(基準信号xk が小
さい場合)においては大きくなるように補われるから、
上記第1実施例と同等の作用効果が得られる。
【0048】そして、基準信号xk (n)は車両のサス
ペンションに入力される振動加速度であるため、路面の
ギャップを乗り越える際等のサスペンションへの大入力
に対する発散防止効果が得られる。図7は本発明の第3
実施例を示す図であって、本実施例も、上記第1実施例
と同様に本発明に係る能動型騒音制御装置を車両の車室
内に伝達されるロード・ノイズの低減を図る装置に適用
したものであり、その主な構成は上記第1実施例と同様
である。
【0049】図7に示す処理は、上記第1実施例で説明
した図4に示す処理に対応するものであって、そのステ
ップ301において上記図3に示す処理のステップ10
1で逐次読み込む基準信号xk (n)の絶対値の平均値
x ̄(=|xk (n)| ̄)を演算し、次いでステップ
302に移行し、その平均値x ̄の自乗x ̄2 の逆数1
/x ̄2 を重み係数λとする。
【0050】そして、ステップ303に移行し、上記
(6)式に従って収束係数αを演算しこれを変更する。
即ち、本実施例にあっても、上記第2実施例と同様に、
収束係数αはフィルタ係数Wkmi の更新量を決める一つ
の要因である基準信号xk (n)に反比例するようにな
るが、上述のように、平均値x ̄の自乗x ̄2 の逆数1
/x ̄2 を重み係数λとしているため、上記第2実施例
で得られる作用効果がより急峻になるという効果があ
る。
【0051】図8は本発明の第4実施例を示す図であっ
て、本実施例も、上記第1実施例と同様に本発明に係る
能動型騒音制御装置を車両の車室内に伝達されるロード
・ノイズの低減を図る装置に適用したものであり、その
主な構成は上記第1実施例と同様である。図8に示す処
理は、上記第1実施例で説明した図4に示す処理に対応
するものであって、そのステップ401において上記図
3に示す処理のステップ102で求めた処理信号rklm
(n)の絶対値の逆数1/|rklm (n)|を重み係数
λとし、そして、ステップ402に移行し、上記(6)
式に従って収束係数αを演算しこれを変更する。
【0052】即ち、処理信号rklm (n)は、上記
(5)式からも判るようにフィルタ係数Wkmi の更新量
を決める一つの要因であるから、その処理信号r
klm (n)に反比例するように収束係数αを決定すれ
ば、上記第1実施例と同様に、フィルタ係数Wkmi の更
新量は、大きくなる状況(処理信号rklm (n)が大き
い場合)においては小さくなるように抑えられ、小さく
なる状況(処理信号rklm (n)が小さい場合)におい
ては大きくなるように補われるから、上記第1実施例と
同等の作用効果が得られる。
【0053】そして、本実施例では、基準信号x
k (n)をそのまま収束係数αの変更処理に用いるので
はなく、基準信号xk (n)とディジタルフィルタC^
lmの各フィルタ係数C^lmj とを畳み込むことにより生
成される処理信号rklm (n)を用いているので、例え
ば路面からの入力が小さく基準信号xk (n)がそれほ
ど大きくないのにラウドスピーカ7a〜7d及びマイク
ロフォン8a〜8h間の伝達関数Clmが大きい(音を伝
え易い)ためフィルタ係数Wkmi の更新量が大きくなり
易い場合等の発散防止効果が得られる。
【0054】図9は本発明の第5実施例を示す図であっ
て、本実施例も、上記第1実施例と同様に本発明に係る
能動型騒音制御装置を車両の車室内に伝達されるロード
・ノイズの低減を図る装置に適用したものであり、その
主な構成は上記第1実施例と同様である。図9に示す処
理は、上記第1実施例で説明した図4に示す処理に対応
するものであって、そのステップ501において例えば
超音波センサを利用して車両前方の路面状態を認識でき
るプレビュー機能により車両前方の路面状態を検出し、
その検出結果に基づき、ステップ502で車両前方の路
面にギャップが存在するか否かを判定する。
【0055】そして、ステップ502においてギャップ
が存在すると判定された場合は、ステップ503に移行
し、その時点の基準信号xk (n)の絶対値|x
k (n)|の逆数1/|xk (n)|を重み係数λと
し、さらにステップ512に移行し、上記(6)式に従
って収束係数αを演算し変更する。一方、ステップ50
2でギャップは存在しないと判定された場合には、ステ
ップ505に移行し、下記の(7)式の判定を行う。
【0056】 el (n)/xk (n)≧ef /xf ……(7) このステップ505における判定は、現時点の路面入力
の大きさを表す基準信号xk (n)及び車室内騒音の大
きさを表す残留騒音信号el (n)の比率el(n)/
k (n)と、騒音低減制御が良好に働いていると判断
できる状況における路面入力xf 及び残留騒音ef の比
率ef /xf とを比較するものであって、前者の方が大
きいと判定された場合には、例えばクラクション等のよ
うに路面入力に相関のない騒音のレベルが高いと判断で
きる。
【0057】そこで、ステップ505の判定が「YE
S」の場合には、ステップ506に移行し、その時点の
残留騒音信号el (n)の絶対値|el (n)|の逆数
1/|el (n)|を重み係数λとし、さらにステップ
512に移行し、上記(6)式に従って収束係数αを演
算し変更する。そして、ステップ505の判定が「N
O」の場合には、ステップ508に移行してオーディオ
アンプのレベルLa を検出し、ステップ509でレベル
a と、しきい値Lthとを比較して、La ≧Lthである
場合にはステップ510に移行する。
【0058】ステップ510では、オーディオアンプの
レベルLa の逆数1/La を重み係数λとし、そして、
ステップ512に移行し上記(6)式に従って収束係数
αを演算し変更する。なお、ステップ509の判定が
「NO」の場合には、ステップ511に移行して重み係
数λを1に設定し、そして、ステップ512に移行し上
記(6)式に従って収束係数αを演算し変更する。
【0059】即ち、本実施例の構成であれば、基準信号
k (n),残留騒音信号el (n)及びオーディオア
ンプのレベルLa を状況別に適宜考慮して収束係数αを
演算することになるので、上記第1実施例及び上記第2
実施例の両方の作用効果を得ることができる。また、オ
ーディオアンプのレベルLa をも考慮していることか
ら、特にオーディオ音に対する制御の安定化をも図るこ
とができる。
【0060】さらに、ステップ503及び506では、
平均値ではなく瞬時値を用いて重み係数λを設定してい
るため、ギャップを通過する際の大入力やクラクション
音等の大入力に対して確実に収束係数αを小さくして発
散を防止することができるという利点がある。なお、ス
テップ503及び504における処理は基準信号x
k (n)に基づいていればよいから、重み係数λは、基
準信号xk (n)の絶対値の自乗の逆数や処理信号r
klm (n)の絶対値の逆数としてもよい。
【0061】図10は本発明の第6実施例を示す図であ
って、本実施例も、上記第1実施例と同様に本発明に係
る能動型騒音制御装置を車両の車室内に伝達されるロー
ド・ノイズの低減を図る装置に適用したものであり、そ
の主な構成は上記第1実施例と同様である。即ち、本実
施例では、上記第1実施例乃至第5実施例で説明したよ
うな収束係数変更処理を常に実行状態としておくのでは
なく、適応ディジタルフィルタWkmのフィルタ係数W
kmi が最適値への適応途中である適応領域にあるか、若
しくは略最適値に適応した安定領域にあるかを判定し、
安定領域にあると判定された場合にのみ収束係数変更処
理を実行するようにしている。
【0062】そこで、先ずステップ601において残留
騒音信号el (n)の絶対値の平均値e ̄(=|e
l (n)| ̄)を演算し、次いでステップ602に移行
して、その平均値e ̄と、騒音低減制御が良好に働いて
いると判断できる状況における残留騒音ef とを比較す
る。ここで、図11に示すように、騒音低減制御が良好
に働いている状況になると、残留騒音は、制御を実行す
る前のレベルe0 に比較してかなり低いレベルで安定す
る。従って、ステップ602においてe ̄<ef と判定
された場合、つまり、残留騒音がある程度の時間低いレ
ベルで安定していると判定された場合には、騒音低減制
御が良好に働いていると判断できる。
【0063】そこで、ステップ602の判定が「YE
S」の場合にはステップ603に移行して、上記第1実
施例乃至第5実施例で説明したような収束係数変更処理
を実行する。しかし、ステップ602の判定が「NO」
の場合には、フィルタ係数Wkmi は未だ適応途中にある
と判断できる。そして、かかる場合には収束係数αを小
さくすると逆に収束を妨げるおそれがあると考えられる
から、ステップ604に移行し、収束係数αを、フィル
タ係数Wkmi の更新量を適度な大きさにすることができ
るα0 に設定する。
【0064】このような処理を実行する結果、収束係数
変更処理は制御系が安定領域にあると判定された場合に
のみ実行されることになるから、上記第1実施例と同等
の作用効果が得られるとともに、適応領域にある場合に
は収束係数αが特に小さくなることがないので、制御を
開始した時点からフィルタ係数Wkmi が最適値に収束す
るまでの全体の時間を短縮することができるという利点
がある。
【0065】ここで、本実施例にあっては、ステップ6
01及び602における処理によって安定領域判定手段
が構成される。図12は本発明の第7実施例を示す図で
あって、本実施例も、上記第1実施例と同様に本発明に
係る能動型騒音制御装置を車両の車室内に伝達されるロ
ード・ノイズの低減を図る装置に適用したものであり、
その主な構成は上記第1実施例と同様である。
【0066】本実施例も上記第6実施例と同様に安定領
域にあると判定された場合にのみ収束係数変更処理を実
行するようにしたものであるが、その安定領域にあるか
否かの判定処理が上記第6実施例と異なっている。即
ち、本実施例では、そのステップ701において残留騒
音信号el (n)の絶対値の平均値e ̄(=|e
l (n)| ̄)を演算し、次いでステップ702におい
て基準信号xk (n)の絶対値の平均値x ̄(=|xk
(n)| ̄)を演算し、そして、ステップ703に移行
してそれら平均値の比率e ̄/x ̄と、騒音低減制御が
良好に働いていると判断できる状況における路面入力x
f 及び残留騒音ef の比率ef /xf と比較し、e ̄/
x ̄<ef /xf と判定された場合には、ステップ70
4に移行して収束係数変更処理を実行する一方、ステッ
プ703の判定が「NO」の場合にはステップ704に
移行して収束係数αをα0 に設定する。
【0067】つまり、本実施例にあっては、上記第6実
施例と異なり、単に残留騒音のレベルのみに基づいて安
定領域か否かを判定するのではなく、路面入力に対する
騒音レベルの比率を判定基準としているため、路面入力
の大小の影響を受け難く、従って、より正確に安定領域
にあるか否かを判定することができるという利点があ
る。
【0068】その他の作用効果は上記第6実施例と同様
である。ここで、本実施例にあっては、ステップ701
乃至703における処理によって安定領域判定手段が構
成される。図13乃至図15は、本発明の第8実施例を
示す図であって、本実施例も、上記第1実施例と同様に
本発明に係る能動型騒音制御装置を車両の車室内に伝達
されるロード・ノイズの低減を図る装置に適用したもの
であり、その基本的な構成は上記第1実施例と同様であ
る。
【0069】即ち、本実施例では、周波数領域のLMS
アルゴリズムを適用して騒音低減制御を実行するもので
あり、そして、収束係数変更処理も周波数領域において
周波数毎に実行するものである。なお、周波数領域のL
MSアルゴリズムの詳細は、文献「R.FERRAR
A,“Fast Implementation of LMS Adaptive Filter
s”,IEEE Trans.Acoust.,Speech,Signal Processi
ng ,vol .ASSP−28,pp.474 −475 ,1980」等にも
述べられている。
【0070】この周波数領域のLMSアルゴリズムを本
発明に適用すると、コントローラ10における処理は、
図13乃至図15に示すようになる。即ち、本実施例で
は、周波数領域のアルゴリズムであるため、先ず、図1
3のステップ801で基準信号xk (n)及び残留騒音
信号el (n)を読み込み、ステップ802でカウンタ
変数Nをインクリメントし、そして、ステップ803で
カウンタ変数Nが定数N0 に達するまでステップ801
の処理を繰り返し実行し、N0 個の基準信号xk (n)
及び残留騒音信号el (n)を取り込む。なお、定数N
0 の値は、2の累乗とする。これは、後述するFFT
(高速フーリエ変換)では、通常2の累乗のポイント数
を計算対象としているからである。
【0071】そして、図13のステップ803の判定が
「YES」となったら、ステップ804でカウンタ変数
Nをゼロリセットした後に、図14及び図15の処理を
実行する。図14のステップ805では、N0 個の基準
信号xk (n)及び残留騒音信号el (n)を高速フー
リエ変換して、周波数領域の基準信号Xk (f)及び残
留騒音信号El (f)を求め、次いでステップ806に
移行し、基準信号Xk (f)をフィルタClm(f)で処
理して処理信号Rklm (f)を求める。
【0072】そして、ステップ807に移行して収束係
数α(f)を読み込んだら、ステップ808で周波数領
域で表現された適応ディジタルフィルタWkm(f)のフ
ィルタ係数Wkmi (f)を演算して更新する。次いで、
ステップ809に移行し、基準信号Xk (f)を適応デ
ィジタルフィルタWkm(f)でフィルタ処理して(具体
的には、各周波数成分毎に乗算して)駆動信号Y
m (f)を演算する。そして、ステップ810で駆動信
号Ym (f)を逆フーリエ変換してN0 個の駆動信号y
m (n)を求め、ステップ811でこの駆動信号y
m (n)を出力する。
【0073】一方、図15に示す収束係数変更処理にあ
っては、そのステップ812において収束係数α(f)
を乗算する前のフィルタ係数Wkmi (f)の更新量H
(f)を下記の(8)式に従って演算する。 H(f)=E(f)・C(f)・X(f) =E(f)・R(f) ……(8) そして、ステップ813に移行し、下記の(9)式に従
って周波数毎に収束係数α(f)を演算し変更する。
【0074】 α(f)=a・1/H(f) ……(9) ただし、aは比例定数である。このように、本実施例に
あっては、周波数毎に収束係数α(f)を演算し変更す
る処理を実行するため、収束係数α(f)は各周波数毎
にフィルタ係数Wkmi(f)の更新量H(f)に反比例
するようになるから、入力の大きい周波数帯域では収束
係数が小さくなり、入力の小さい周波数帯域では収束係
数が大きくなるので、適応ディジタルフィルタWkmのフ
ィルタ係数Wkmi の不必要な大変動が周波数毎に防止さ
れ、残留騒音信号E(f)や基準信号X(f)が通常の
レベルにある周波数においては更新量が小さ過ぎて最適
値への収束が極端に遅くなるようなこともないという特
有の効果がある。
【0075】また、本実施例の構成であると、FFTを
実行するためその分の演算量が増大するが、周波数領域
のLMSアルゴリズムであると例えば時間領域における
畳み込み演算が周波数成分毎の積算で済むという利点も
あるため、全体としての演算量は時間領域のそれに比較
して特に増大することはなく、適応ディジタルフィルタ
kmのタップ数等によっては逆に演算量の低減が図られ
るようになる。
【0076】図16及び図17は本発明の第9実施例を
示す図であって、本実施例も、上記第1実施例と同様に
本発明に係る能動型騒音制御装置を車両の車室内に伝達
されるロード・ノイズの低減を図る装置に適用したもの
であり、その基本的な構成は上記第1実施例と同様であ
る。即ち、本実施例も、上記第8実施例と同様に、周波
数領域のLMSアルゴリズムを適用して騒音低減制御を
実行し、収束係数を周波数領域において周波数毎に変更
するものであるが、さらに、基準信号X(f)と残留騒
音信号E(f)との間のコヒーレンスγ(f)をも考慮
して収束係数α(f)を設定する点が上記第8実施例と
異なる。
【0077】図16は上記第8実施例の図15に対応す
るものであって、ステップ901における処理は図15
のステップ812における処理と同様である。そして、
ステップ902では、上記第8実施例と異なり、基準信
号X(f)と残留騒音信号E(f)との間のコヒーレン
スγ(f)をも考慮し下記の(10)式に従って収束係
数α(f)を演算し変更する。
【0078】 α(f)=a・1/H(f)・γ(f) ……(10) 図17は本実施例における収束係数変更処理の状況を説
明する図であって、図17(1)〜(7)はそれぞれ各
信号,係数と周波数fとの関係の一例を示している。即
ち、本実施例にあっては、上記第8実施例と同様に、周
波数毎に収束係数α(f)を演算し変更する処理を実行
するため上記第8実施例と同等の作用効果が得られると
ともに、基準信号X(f)と残留騒音信号E(f)との
間のコヒーレンスγ(f)をも考慮しているから、コヒ
ーレンスγ(f)が小さい周波数においては収束係数α
(f)がさらに小さくなるので、そのようなコヒーレン
スγ(f)が小さく従って基準信号X(f)に基づく騒
音低減制御の効果が期待できない周波数ではフィルタ係
数Wkmi の更新量がさらに小さくなり、安定した制御が
行えるという利点がある。
【0079】なお、上記各実施例では、本発明を車室6
内に伝達されるロード・ノイズの低減を図る能動型騒音
制御装置1に適用した場合について説明しているが、本
発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、ロー
ド・ノイズ以外の騒音を低減する装置或いは車両以外に
適用される装置であっても構わない。また、上記各実施
例では、残留騒音信号el (n),基準信号x
k (n),処理信号rklm (n)及び残留騒音信号el
(n),基準信号xk (n)を周波数領域に変換した信
号E(f),X(f)のうちの少なくとも一つに基づい
て収束係数を演算し変更する処理を実行しているが、基
礎となる信号はこれらに限定されるものではない。例え
ば、ラウドスピーカ7a〜7d及びマイクロフォン8a
〜8h間の音響特性を表すディジタルフィルタC^
lmを、騒音の発生状態に応じて可変とするシステムを適
用した場合であれば、そのディジタルフィルタC^lm
基づいて収束係数を演算し変更するようにしても、上記
第1実施例等と同等の作用効果が得られる。
【0080】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新式に含ま
れる収束係数を、そのフィルタ係数の更新量に反比例す
る方向に変更する構成としたため、演算負荷の大幅な増
大及び入力が通常レベルにある場合の収束を遅らせると
いう不具合を招くことなく、過大入力があった場合にフ
ィルタ係数が大きく変動して騒音低減制御が悪化してし
まうようなことが防止されるという効果がある。
【0081】特に、請求項2記載の発明にあっては、安
定領域判定手段がフィルタ係数が安定領域にあると判定
した場合にのみ収束係数を変更する処理を実行する構成
としたため、制御を開始した時点からフィルタ係数が最
適値に収束するまでに要する時間の短縮化も図られると
いう効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の全体構成を示す図である。
【図2】コントローラの機能構成を示すブロック図であ
る。
【図3】第1実施例の処理の概要を示すフローチャート
である。
【図4】第1実施例の処理の概要を示すフローチャート
である。
【図5】適応ディジタルフィルタのフィルタ係数の収束
状況を表す図である。
【図6】第2実施例の処理の概要を示すフローチャート
である。
【図7】第3実施例の処理の概要を示すフローチャート
である。
【図8】第4実施例の処理の概要を示すフローチャート
である。
【図9】第5実施例の処理の概要を示すフローチャート
である。
【図10】第6実施例の処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図11】騒音レベルとサンプリング回数との関係を示
すグラフである。
【図12】第7実施例の処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図13】第8実施例の処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図14】第8実施例の処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図15】第8実施例の処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図16】第9実施例の処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図17】第9実施例の収束係数変更処理の状況を説明
する図である。
【符号の説明】
1 能動型騒音制御装置 2a〜2d 車輪(騒音源) 5a〜5d 加速度センサ(騒音発生状態検出手段) 6 車室(空間) 7a〜7d ラウドスピーカ(制御音源) 8a〜8h マイクロフォン(残留騒音検出手段) 10 コントローラ 11 駆動信号生成部(駆動信号生成手段) 12 フィルタ係数更新部(適応処理手段) 13 収束係数変更部(収束係数変更手段)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 騒音源から騒音が伝達される空間に制御
    音を発生可能な制御音源と、前記空間内の所定位置にお
    ける残留騒音を検出し残留騒音信号として出力する残留
    騒音検出手段と、前記騒音源の騒音発生状態を検出し基
    準信号として出力する騒音発生状態検出手段と、フィル
    タ係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号
    を前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記
    制御音源を駆動する信号を生成する駆動信号生成手段
    と、前記残留騒音信号及び前記基準信号に基づき且つ所
    定の更新式に従って前記空間内の騒音が低減する方向に
    前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新する
    適応処理手段と、前記更新式に含まれる前記適応ディジ
    タルフィルタのフィルタ係数の収束速度に関与する収束
    係数をそのフィルタ係数の更新量に反比例する方向に変
    更する収束係数変更手段と、を備えたことを特徴とする
    能動型騒音制御装置。
  2. 【請求項2】 適応ディジタルフィルタのフィルタ係数
    が安定領域にあるか否かを判定する安定領域判定手段を
    設け、収束係数変更手段は前記安定領域判定手段が前記
    フィルタ係数は安定領域にあると判定した場合に収束係
    数を変更する請求項1記載の能動型騒音制御装置。
  3. 【請求項3】 収束係数変更手段は、残留騒音信号及び
    基準信号のうちの少なくとも一方に基づいて収束係数を
    変更する請求項1又は請求項2記載の能動型騒音制御装
    置。
  4. 【請求項4】 収束係数変更手段は、周波数領域に変換
    した残留騒音信号及び周波数領域に変換した基準信号の
    うちの少なくとも一方に基づいて、周波数毎に収束係数
    を変更する請求項1又は請求項2記載の能動型騒音制御
    装置。
  5. 【請求項5】 収束係数変更手段は、周波数領域に変換
    した残留騒音信号及び周波数領域に変換した基準信号の
    うちの少なくとも一方と、それら残留騒音信号及び基準
    信号間のコヒーレンスとに基づいて、周波数毎に収束係
    数を変更する請求項1又は請求項2記載の能動型騒音制
    御装置。
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