JPH06332471A - 能動型騒音制御装置及び能動型振動制御装置 - Google Patents

能動型騒音制御装置及び能動型振動制御装置

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Publication number
JPH06332471A
JPH06332471A JP5121123A JP12112393A JPH06332471A JP H06332471 A JPH06332471 A JP H06332471A JP 5121123 A JP5121123 A JP 5121123A JP 12112393 A JP12112393 A JP 12112393A JP H06332471 A JPH06332471 A JP H06332471A
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JP
Japan
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vibration
noise
signal
control
residual
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Application number
JP5121123A
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English (en)
Inventor
Hirofumi Aoki
弘文 青木
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】制御空間内に存在する人間に不快感を与えた
り、演算負荷が大幅に増大する等の不具合を招くことな
く、騒音低減制御又は振動低減制御に必要な伝達関数を
頻繁に同定できるようにする。 【構成】イグニッションスイッチ21の状態に基づいて
車両のエンジンが始動する直前であることを検出可能と
し、それが検出された場合には、駆動信号y1 〜y4
代えて、インパルス発生器25から発生したインパルス
信号を、順番に各ラウドスピーカ7a〜7dに供給す
る。そして、そのインパルス信号に応じた音をラウドス
ピーカ7a〜7dから発生させた時の残留騒音信号e1
〜e8 に基づいて、伝達関数C^lmを設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車両エンジン等の騒
音源から車室等の空間に伝達される騒音に制御音を干渉
させることにより騒音の低減を図る能動型騒音制御装置
及び車両エンジン等の振動源から発せられ車体等を伝搬
する振動に制御振動を干渉させることにより振動の低減
を図る能動型振動制御装置に関し、特に、制御音又は制
御振動を発生させる装置と残留騒音又は残留振動を検出
する装置との間の伝達関数を含む制御アルゴリズムを用
いた能動型騒音制御装置及び能動型振動制御装置におい
て、制御アルゴリズムに含まれる伝達関数を不具合なく
更新できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】従来の能動型騒音制御装置として、英国
特許第2149614号や特表平1−501344号に
記載のものがある。これら従来の装置は、航空機の客室
やこれに類する閉空間に適用される騒音低減装置であっ
て、閉空間の外部に位置するエンジン等の単一の騒音源
は、基本周波数f0 及びその高調波f1 〜fn を含む騒
音を発生するという条件の下において作動するものであ
る。
【0003】具体的には、閉空間内の複数の位置に設置
され音圧を検出するマイクロフォンと、その閉空間に制
御音を発生する複数のラウドスピーカとを備え、騒音源
の周波数f0 〜fn 成分に基づき、それら周波数f0
n 成分と逆位相の信号でラウドスピーカを駆動させ、
もって閉空間に伝達される騒音と逆位相の制御音をラウ
ドスピーカから発生させて騒音を打ち消している。
【0004】そして、ラウドスピーカから発せられる制
御音の生成方法として、PROCEEDINGS OF THE IEEE,VOL.
63 PAGE 1692,1975,“ADAPTIVE NOISE CANSELLATION :
PRINCIPLES AND APPLICATIONS ”で述べられている‘WI
DROW LMS’アルゴリズムを多チャンネルに展開したアル
ゴリズムを適用している。その内容は、上記特許の発明
者による論文、“A MULTIPLE ERROR LMS ALGORITHM AND
ITS APPLICATION TOTHE ACTIVE CONTROL OF SOUND AND
VIBRATION ”,IEEE TRANS.ACOUST.,SPEECH,SIGNAL PRO
CESSING,VOL.ASSP −35,PP.1423−1434,1987 にも述べ
られている。
【0005】即ち、LMSアルゴリズムは、適応ディジ
タルフィルタのフィルタ係数を更新するのに好適なアル
ゴリズムの一つであって、例えばいわゆるFilter
ed−X LMSアルゴリズムにあっては、ラウドスピ
ーカからマイクロフォンまでの伝達関数をモデル化した
伝達関数フィルタを全てのラウドスピーカとマイクロフ
ォンとの組み合わせについて設定し、騒音源の騒音発生
状態を表す基準信号をそのフィルタで処理した値と各マ
イクロフォンが検出した残留騒音とに基づいた所定の評
価関数の値が低減するように、各ラウドスピーカ毎に設
けられたフィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタの
フィルタ係数を更新している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上述したLM
Sアルゴリズム等の適応アルゴリズムを用いれば制御系
の特性が未知であっても騒音低減制御や振動低減制御が
可能であるが、それでも制御音又は制御振動を発生させ
る装置と残留騒音又は残留振動を検出する装置との間の
伝達関数は既知でなければならないから、予め伝達関数
を測定しておいて制御アルゴリズム内に設定しておく必
要がある。
【0007】しかし、かかる伝達関数は、例えばラウド
スピーカやマイクロフォン等の機器の劣化や、空間内の
温度変化等によって変動するものであるため、実空間の
伝達関数は制御アルゴリズム内に設定された当初の伝達
関数からずれてしまい、その制御アルゴリズム内の伝達
関数が実際の伝達関数から大きくずれてしまっていると
良好な騒音低減制御や振動低減制御が行えなくなってし
まう。例えば、それら伝達関数間のずれが周波数領域で
90度以上になると、制御が発散してしまうおそれさえ
ある。
【0008】従って、騒音低減制御や振動低減制御と並
行して、音響特性や振動特性を測定して伝達関数を設定
する処理を実行することが望ましいのであるが、例えば
音響特性を測定するためには測定のための音(同定音)
を発生させなければならず、制御空間内に人間が存在す
れば、その同定音が聞こえて不快感を与えてしまうおそ
れがあるため、同定音の音量やその発生時期等は単純に
は決まらない。
【0009】また、音響特性を測定するのであるから、
全ての周波数帯域の特性が測定できるように同定音をホ
ワイトノイズとすることが考えられるが、ホワイトノイ
ズに基づいて音響特性を測定するには、LMSアルゴリ
ズム等の適応アルゴリズムを用いて伝達特性を同定する
処理が必要となるため、演算負荷が大幅に増大してしま
うという不具合がある。
【0010】さらに、音響特性の測定処理にとっては、
空間内に存在する同定音以外の音は全てノイズであるた
め、騒音低減制御が必要な状況において同定音を発生さ
せて音響特性を測定するには、LMSアルゴリズム等を
用いても長時間を要するという問題点がある。このよう
な不具合や問題点等は振動低減制御に関しても同様であ
る。
【0011】本発明は、このような従来の技術が有する
未解決の課題に着目してなされたものであって、騒音低
減制御又は振動低減制御に必要な伝達関数を、大きな不
具合なく設定でき良好な騒音低減制御又は振動低減制御
を行うことができる能動型騒音制御装置及び能動型振動
制御装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、騒音源から騒音が伝達され
る空間に制御音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の
騒音発生状態を検出し基準信号として出力する騒音発生
状態検出手段と、前記空間内の所定位置における残留騒
音を検出して残留騒音信号として出力する残留騒音検出
手段と、前記基準信号及び前記残留騒音信号に基づき前
記制御音源及び前記残留騒音検出手段間の伝達関数を含
む制御アルゴリズムを用いて前記空間内の騒音が低減す
るように前記制御音源を駆動する能動制御手段と、を備
えた能動型騒音制御装置において、前記騒音源が騒音を
発していない状態から騒音を発する状態に移行する時点
の直前であることを検出する移行時点検出手段と、この
移行時点検出手段が前記移行する時点の直前であること
を検出した時に前記制御音源にインパルス信号を供給す
るインパルス信号供給手段と、前記制御音源から前記イ
ンパルス信号に応じた音が発せられた時の前記残留騒音
信号に基づいて前記伝達関数を設定する伝達関数設定手
段と、を設けた。
【0013】また、請求項2記載の発明は、上記請求項
1記載の発明において、伝達関数設定手段に残留騒音信
号が取り込まれるまで騒音源が騒音を発する状態に移行
することを禁止する移行禁止手段を設けた。上記目的を
達成するために、請求項3記載の発明は、騒音源から騒
音が伝達される空間に制御音を発生可能な制御音源と、
前記騒音源の騒音発生状態を検出し基準信号として出力
する騒音発生状態検出手段と、前記空間内の所定位置に
おける残留騒音を検出して残留騒音信号として出力する
残留騒音検出手段と、前記基準信号及び前記残留騒音信
号に基づき前記制御音源及び前記残留騒音検出手段間の
伝達関数を含む制御アルゴリズムを用いて前記空間内の
騒音が低減するように前記制御音源を駆動する能動制御
手段と、を備えた能動型騒音制御装置において、前記空
間内の騒音が周期的成分の支配的な状態であることを検
出する騒音支配状態検出手段と、前記制御音源にインパ
ルス信号を供給可能なインパルス信号供給手段と、前記
騒音支配状態検出手段が前記支配的な状態であることを
検出し且つ前記制御音源から前記インパルス信号に応じ
た音が発せられた時の前記残留騒音信号と前記騒音支配
状態検出手段が前記支配的な状態であることを検出し且
つ前記制御音源から前記インパルス信号に応じた音が発
せられていない時の前記残留騒音信号との差に基づいて
前記伝達関数を設定する伝達関数設定手段と、を設け
た。
【0014】また、請求項4記載の発明は、上記請求項
3記載の発明において、伝達関数設定手段は、騒音支配
状態検出手段が空間内の騒音が周期的成分の支配的な状
態であることを検出し且つ制御音源からインパルス信号
に応じた音が発せられていない時の残留騒音信号を少な
くとも2回取り込み、それら取り込んだ残留騒音信号間
の差が所定値以下である場合に伝達関数を設定する。
【0015】一方、上記目的を達成するために、請求項
5記載の発明は、振動源から発せられる振動と干渉する
制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動源の振動
発生状態を検出し基準信号として出力する振動発生状態
検出手段と、前記干渉後の振動を検出して残留振動信号
として出力する残留振動検出手段と、前記基準信号及び
前記残留振動信号に基づき前記制御振動源及び前記残留
振動検出手段間の伝達関数を含む制御アルゴリズムを用
いて前記振動が低減するように前記制御振動源を駆動す
る能動制御手段と、を備えた能動型振動制御装置におい
て、前記振動源が振動を発していない状態から振動を発
する状態に移行する時点の直前であることを検出する移
行時点検出手段と、この移行時点検出手段が前記移行す
る時点の直前であることを検出した時に前記制御振動源
にインパルス信号を供給するインパルス信号供給手段
と、前記制御振動源から前記インパルス信号に応じた振
動が発せられた時の前記残留振動信号に基づいて前記伝
達関数を設定する伝達関数設定手段と、を設けた。
【0016】また、請求項6記載の発明は、上記請求項
5記載の発明において、伝達関数設定手段に残留振動信
号が取り込まれるまで振動源が振動を発する状態に移行
することを禁止する移行禁止手段を設けた。上記目的を
達成するために、請求項7記載の発明は、振動源から発
せられる振動と干渉する制御振動を発生可能な制御振動
源と、前記振動源の振動発生状態を検出し基準信号とし
て出力する振動発生状態検出手段と、前記干渉後の振動
を検出して残留振動信号として出力する残留振動検出手
段と、前記基準信号及び前記残留振動信号に基づき前記
制御振動源及び前記残留振動検出手段間の伝達関数を含
む制御アルゴリズムを用いて前記振動が低減するように
前記制御振動源を駆動する能動制御手段と、を備えた能
動型振動制御装置において、前記振動が周期的成分の支
配的な状態であることを検出する振動支配状態検出手段
と、前記制御振動源にインパルス信号を供給可能なイン
パルス信号供給手段と、前記振動支配状態検出手段が前
記支配的な状態であることを検出し且つ前記制御振動源
から前記インパルス信号に応じた振動が発せられた時の
前記残留振動信号と前記振動支配状態検出手段が前記支
配的な状態であることを検出し且つ前記制御振動源から
前記インパルス信号に応じた振動が発せられていない時
の前記残留振動信号との差に基づいて前記伝達関数を設
定する伝達関数設定手段と、を設けた。
【0017】また、請求項8記載の発明は、上記請求項
7記載の発明において、伝達関数設定手段は、振動支配
状態検出手段が振動が周期的成分の支配的な状態である
ことを検出し且つ制御振動源からインパルス信号に応じ
た振動が発せられていない時の残留振動信号を少なくと
も2回取り込み、それら取り込んだ残留振動信号間の差
が所定値以下である場合に伝達関数を設定する。
【0018】
【作用】請求項1記載の発明にあっては、移行時点検出
手段が、騒音源が騒音を発していない状態から騒音を発
する状態に移行する直前であることを検出した時には、
未だ空間内には騒音が伝達されていない。従って、その
検出時に、インパルス信号供給手段から制御音源にイン
パルス信号供給され、そのインパルス信号に応じた音が
制御音源から空間内に発せられると、空間内には、主と
してインパルス信号に応じた音が存在するから、残留騒
音検出手段においては、そのインパルス信号に応じた音
が検出される。
【0019】そして、かかるインパルス信号に応じて発
生した音が残留騒音検出手段で検出されると、その検出
結果は、制御音源と残留騒音検出手段との間のインパル
ス応答に他ならないから、伝達関数設定手段において
は、その残留騒音検出手段の検出結果に基づけば、特に
LMSアルゴリズム等を用いなくても、制御音源と残留
騒音検出手段との間の伝達関数が設定されることにな
る。
【0020】従って、伝達関数の設定に要する時間は短
時間で済むし、騒音レベルが低いから同定音のレベルは
低くてよく、しかも、インパルス信号に応じた音は騒音
源から騒音が発せられる直前に発生するため、空間内に
存在する人間には、伝達関数の設定のために発せられた
同定音なのかエンジン等の騒音源が始動時に発する音な
のか区別は実質的に不可能であるから、特に空間内に存
在する人間に不快感を与えることもない。
【0021】また、請求項2記載の発明にあっては、騒
音源が騒音を発する状態に移行するのが、伝達関数設定
手段に残留騒音信号が取り込まれた後となる。従って、
伝達関数設定手段における伝達関数の設定が確実に行わ
れる。一方、請求項3記載の発明にあっては、騒音支配
状態検出手段が空間内の騒音が周期的成分の支配的な状
態であることを検出した時の騒音は、その支配的な周期
的成分が繰り返し現れる騒音であるので、そのような騒
音にインパルス信号に応じた音が重畳された場合の残留
騒音信号から、インパルス信号に応じた音が重畳されて
いない場合の残留騒音信号を差し引けば、インパルス信
号に応じた音、つまり制御音源と残留騒音検出手段との
間のインパルス応答が残る。
【0022】従って、伝達関数設定手段においては、そ
のような差に基づけば、特にLMSアルゴリズム等を用
いなくても、制御音源と残留騒音検出手段との間の伝達
関数が設定されることになる。そして、請求項4記載の
発明にあっては、少なくとも2回取り込まれた残留騒音
信号間の差が小さいということは、周期的な騒音が安定
したレベルで発生しているということであるから、伝達
関数設定手段が求めた上記差に含まれるインパルス応答
以外の成分が極めて小さくなる。
【0023】ここで、上記請求項1乃至請求項4記載の
発明はいずれも騒音を対象としているのに対し請求項5
乃至請求項8記載の発明は振動を対象としている。従っ
て、それら請求項5乃至請求項8記載の発明の作用は、
音と振動との違いはあるが、実質的に上記請求項1乃至
請求項4記載の発明と同様である。
【0024】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図1は、本発明の第1実施例の全体構成を示す
図であり、この実施例は、騒音源としてのエンジン4か
ら空間としての車室6内に伝達されるこもり音の低減を
図る車両用能動型騒音制御装置1に本発明を適用したも
のである。
【0025】先ず、構成を説明すると、車体3は、前輪
2a,2b,後輪2c,2d及び各車輪2a〜2dと車
体3との間に介在するサスペンションによって支持され
ている。なお、図1に示す車両は、前輪2a及び2bが
車体3前部に配置されたエンジン4によって回転駆動さ
れるいわゆる前置きエンジン前輪駆動車である。エンジ
ン4には、騒音発生状態検出手段としてのクランク角セ
ンサ5が取り付けられていて、このクランク角センサ5
は、エンジン4のクランク角の回転に基づき、こもり音
の原因となるエンジン4で発生する振動と同じ周期のイ
ンパルス列(例えば、レシプロ4気筒の場合は、1/2
回転する度に一つの、6気筒の場合には2/3回転する
度に一つのインパルス)でなる基準信号xを生成し、そ
の基準信号xをコントローラ10に供給する。
【0026】また、車体3の車室6内には、制御音源と
してのラウドスピーカ7a,7b,7c及び7dが、前
部座席S1 ,S2 及び後部座席S3 ,S4 のそれぞれに
対向するドア部に配置されている。さらに、各座席S1
〜S4 のヘッドレスト位置には、残留騒音検出手段とし
てのマイクロフォン8a〜8hが、それぞれ二つずつ配
設されていて、これらマイクロフォン8a〜8hが音圧
として測定した残留騒音信号e1 〜e8 が、コントロー
ラ10に供給される。
【0027】そして、コントローラ10は、クランク角
センサ5から供給される基準信号xと、マイクロフォン
8a〜8hから供給される残留騒音信号el (e1 〜e
8 )とに基づいて、後述する演算処理を実行し、車室6
内に伝達されるこもり音を打ち消すような制御音がラウ
ドスピーカ7a〜7dから発せられるように、それらラ
ウドスピーカ7a〜7dに駆動信号ym (y1 〜y4
を出力する。
【0028】さらに、コントローラ10には、イグニッ
ションスイッチ21が制御可能に接続されていて、コン
トローラ10は、上述した騒音低減のための駆動信号y
m 生成処理を実行する一方で、イグニッションスイッチ
21がオンとなることが検出されたタイミングで伝達関
数の同定処理を実行し、その同定処理が完了した後に、
イグニッションスイッチ21をオンとしてスタータが作
動状態となるような制御を実行するようになっている。
【0029】図2はコントローラ10の具体的な構成を
示すブロック図であって、このコントローラ10は、基
準信号xが入力されるディジタルフィルタ12と、同じ
く基準信号xが入力されるフィルタ係数可変の適応ディ
ジタルフィルタ13と、マイクロフォン8a〜8hから
供給され且つアンプ14a〜14hによって増幅された
残留騒音信号e1 〜e8 をディジタル値に変換するA/
D変換器15a〜15hと、ディジタルフィルタ12で
フィルタ処理された処理信号rlm及びA/D変換器15
a〜15hによってディジタル値に変換された残留騒音
信号e1 〜e8に基づいて所定の演算処理を実行して適
応ディジタルフィルタ13のフィルタ係数を更新するマ
イクロプロセッサ16と、適応ディジタルフィルタ13
から出力された駆動信号y1 〜y4 をアナログ値に変換
してラウドスピーカ7a〜7dを駆動するアンプ18a
〜18dに供給するD/A変換器17a〜17dと、を
備えている。
【0030】ディジタルフィルタ12は、ラウドスピー
カ7a〜7dとマイクロフォン8a〜8hとの間の伝達
関数Clmを有限インパルス応答関数の形でモデル化した
ディジタルフィルタC^lm(l=1,2,…,L、m=
1,2,…,M)を、M(Mはラウドスピーカの個数で
あって、本実施例では、M=4)個のラウドスピーカ7
a〜7d及びL(Lはマイクロフォンの個数であって、
本実施例では、L=8)個のマイクロフォン8a〜8h
の全ての組み合わせ(L×M)について有していて、基
準信号xをそれらディジタルフィルタC^lmでフィルタ
処理した値である処理信号rlmを生成し出力する。
【0031】一方、適応ディジタルフィルタ13は、ラ
ウドスピーカ7a〜7dの個数に対応してM個のフィル
タ係数可変の適応ディジタルフィルタWm を有してい
て、基準信号xをそれら適応ディジタルフィルタWm
フィルタ処理することにより、駆動信号y1 〜y4 を生
成し出力する。そして、マイクロプロセッサ16は、デ
ィジタルフィルタ12から供給される処理信号rlmと、
マイクロフォン8a〜8hから供給される残留騒音信号
1 〜e8 とに応じて、適応ディジタルフィルタ13の
各適応ディジタルフィルタWmのフィルタ係数Wmi(i
=0,1,…,I−1:Iは適応ディジタルフィルタW
m のタップ数)をLMSアルゴリズムに基づいて更新す
るようになっている。
【0032】ここで、適応ディジタルフィルタWm の各
フィルタ係数Wmiの更新式は、下記の(1)式のように
なる。 ただし、 である。
【0033】上記(1)式中、αは収束係数と呼ばれる
係数であって、フィルタが最適に収束する速度や、その
際の安定性に関与する。なお、収束係数αを本実施例で
は一つの定数のように扱っているが、各フィルタ毎に異
なる収束係数αmiとすることもできるし、また重み係数
γl を一緒に取り込んだ係数αl として演算することも
できる。そして、上記(2)式中、Jはディジタルフィ
ルタC^lmのタップ数である。
【0034】また、本実施例では、コントローラ10に
取り込まれる基準信号xが騒音の周期に同期したインパ
ルス列であることから、具体的には同期式Filter
ed−X LMSアルゴリズム(“日本音響学会講演論
文集 平成4年3月”の515〜516頁に詳しい。)
が実行されることになる。従って、上記(1)及び
(2)式中の畳み込み演算においては乗算が不要とな
り、加算のみで畳み込み演算を行うようになっている。
【0035】さらに、コントローラ10は、マイクロプ
ロセッサ16からの指令信号に応じてインパルス信号を
生成し出力するインパルス信号発生器25と、D/A変
換器17a〜17dの出力側に配設され且つマイクロプ
ロセッサ16からの指令信号に応じて切り換わって駆動
信号y1 〜y4 に代えてインパルス発生器25が出力し
たインパルス信号をアンプ18a〜18dに供給するア
ナログスイッチ28a〜28dと、を備えている。ただ
し、アナログスイッチ28a〜28hは、個別に切り換
わるようになっている。
【0036】そして、マイクロプロセッサ16にはイグ
ニッションスイッチ21が制御可能に接続されていて、
マイクロプロセッサ16は、上述した適応ディジタルフ
ィルタWm のフィルタ係数Wmiの更新処理の他に、イグ
ニッションスイッチ21がオンとなることが検出された
タイミングでアナログスイッチ28a〜28hを順番に
切り換えるとともにその切り換える度にインパルス信号
発生器25を作動させてインパルス信号を発生させ、各
ラウドスピーカ7a〜7dから順番にインパルス信号に
応じた音を発生させ、そして、そのインパルス信号に応
じた音を発生させた時の各マイクロフォン8a〜8hの
出力に基づいてディジタルフィルタ12内の伝達関数C
lmを更新し、その伝達関数を更新する処理が完了した
後に、イグニッションスイッチ21をオンとしてスター
タが作動状態となるような制御を実行するようになって
いる。
【0037】次に、本実施例の動作を説明する。図3及
び図4は、コントローラ10内で実行される処理の概要
を示すフローチャートであり、図3は駆動信号y1 〜y
4 を生成して車室6内のこりも音の低減を図る処理の概
要を示し、図4は伝達関数C^lmの設定処理の概要を示
す。先ず図3に示す処理について説明すると、そのステ
ップ101において基準信号x及び残留騒音信号e1
8 を読み込み、次いでステップ102に移行し、上記
(2)式に基づいて基準信号xとディジタルフィルタC
lmとを畳み込んで処理信号rlmを演算する。ただし、
この基準信号xとディジタルフィルタC^lmとの畳み込
みは、基準信号xがインパルス列であることから、ディ
ジタルフィルタC^lmのフィルタ係数C^lmj を適宜加
算することによって行われ、演算量の軽減が図られてい
る。また、エンジン4の回転数が低く基準信号xの周期
がディジタルフィルタC^lmのタップ数よりも長い場合
には、ステップ102の演算は実質的に不要となり、デ
ィジタルフィルタC^lmのフィルタ係数C^lmj がその
まま処理信号rlmとなる。
【0038】次いで、ステップ103に移行し、上記
(1)式に従って、適応ディジタルフィルタWm の各フ
ィルタ係数Wmiを更新する。このステップ103におけ
る畳み込み演算も、基準信号xがインパルス列であるこ
とから、乗算が不要であり、演算量の軽減が図られてい
る。そして、ステップ104に移行し、基準信号xと適
応ディジタルフィルタWmとを畳み込んで駆動信号y1
〜y4 を演算し、これら駆動信号y1 〜y4 をステップ
105で各ラウドスピーカ7a〜7dに出力する。
【0039】すると、ラウドスピーカ7a〜7dから車
室6内に制御音が発生するが、制御開始直後は適応ディ
ジタルフィルタWm の各フィルタ係数Wmiが最適値に収
束しているとは限らないので、必ずしも車室6内に伝達
されたこもり音が低減されるとはいえない。しかし、上
記ステップ101〜105の処理を繰り返し実行する結
果、各フィルタ係数Wmiは最適値に向かって収束してい
き、車室6内に伝達されるこもり音がラウドスピーカ7
a〜7dから発せられる制御音によって打ち消され、車
室6内の騒音の低減が図られる。
【0040】この図3に示す処理は、エンジン4から車
室6内にこもり音が伝達されている状況において実行さ
れる処理であるが、これに対し、図4に示す処理は、エ
ンジン4が停止状態から駆動状態に移行する際に実行さ
れる処理である。具体的には、図3に示す処理は、イグ
ニッションスイッチ21がオンとなることが例えばイグ
ニッションキーが差し込まれることによって検知された
タイミングで実行される処理であり、先ずそのステップ
201において、変数mを“1”にセットし、そして、
ステップ202に移行し、m番目のラウドスピーカ7a
〜7dにインパルス信号が供給されるように、インパル
ス信号発生器25及びアナログスイッチ28a〜28h
に指令信号を供給する。
【0041】次いで、ステップ203に移行し、残留騒
音信号e1 〜e8 を読み込むが、上記ステップ202の
処理を実行し結果、m番目のラウドスピーカ7a〜7d
からインパルス信号に応じた音が車室6内に発せられて
いるため、その時の残留騒音信号e1 〜e8 は、m番目
のラウドスピーカと、各マイクロフォン8a〜8hとの
間のインパルス応答を表すことになる。ただし、このス
テップ203で読み込む残留騒音信号e1 〜e8 は、瞬
間的な値ではなく、車室6内の残響時間、つまりディジ
タルフィルタC^lmのタップ数に応じた時間に応じた個
数だけ読み込む必要がある。
【0042】そして、ステップ204に移行し、ステッ
プ203で読み込んだ残留騒音信号e1 〜e8 に基づい
て、m番目のラウドスピーカと、各マイクロフォン8a
〜8hとの間の伝達関数C^lmを設定し、これをディジ
タルフィルタ12内に格納する。次いで、ステップ20
5に移行し、変数mがラウドスピーカ7a〜7dの個数
Mに達しているか否かを判定し、ここで達していないと
判定された場合には、ステップ206で変数mをインク
リメントした後に上記ステップ202に戻って、上述し
た処理を繰り返し実行する。
【0043】しかし、ステップ205の判定が「YE
S」の場合には、全てのラウドスピーカ7a〜7dに関
して上記ステップ202〜204の処理が実行されたと
判断できる、即ち、全ての伝達関数C^lmの設定が完了
したと判断できるから、ステップ207に移行し、イグ
ニッションスイッチ21に制御信号を出力してこれをオ
ン状態にしてスタータを駆動させてエンジン4を始動さ
せる。そして、その後は、上述した図3に示す処理に移
行する。
【0044】このように、本実施例の構成にあっては、
適応ディジタルフィルタWm のフィルタ係数Wmiの更新
処理に必要な伝達関数C^lmが、エンジン4を始動させ
る度に更新されるため、車室6内の音響伝達特性がラウ
ドスピーカ7a〜7d,マイクロフォン8a〜8hの劣
化や乗員数,温度等によって当初の設定値から変化して
も、ディジタルフィルタ12内の伝達関数C^lmが、実
空間の伝達関数から大きくずれてしまうことがなく、良
好な騒音低減効果を得ることができる。
【0045】また、その伝達関数C^lmの設定のために
発する同定音は、エンジン4が始動する直前に発せられ
るようになっているため、同定のための音なのか、エン
ジン4始動時の騒音なのか区別は実質的に不可能であ
る、つまり同定音が乗員に気付かれることがほとんどな
いから、特に乗員の不快感を増大させることもない。し
かも、同定のための信号がインパルス信号であり、発生
するタイミングもエンジン4始動前という暗騒音レベル
の低い時であるから、ラウドスピーカ7a〜7dから発
せられる同定のための音は、非常に短時間で且つレベル
の低いもので済む。例えば、サンプリング周波数を1k
Hzとし、伝達関数C^lmのタップ数を64とすれば、
一回の測定時間は僅か64msecであり、乗員の不快感を
増大させるおそれはほとんどない。
【0046】そして、同定のための信号がインパルス信
号であり、同定処理実行時にはエンジン4からこもり音
が伝達されていない状況であるから、伝達関数C^lm
設定のためにLMSアルゴリズム等の適応アルゴリズム
を用いる必要や相関解析処理を行う必要がなく、演算負
荷が増大してしまうこともない。従って、本実施例の構
成とするために特に高速処理が可能な高価な演算処理装
置を用いる必要もないから、大幅なコストアップを招い
てしまうこともない。
【0047】ここで、本実施例にあっては、ステップ1
02〜105の処理によって能動制御手段が構成され、
イグニッションスイッチ21が移行時点検出手段に対応
し、インパルス信号発生器25及びアナログスイッチ2
8a〜28hによってインパルス信号供給手段が構成さ
れ、ステップ203及び204の処理によって伝達関数
設定手段が構成され、ステップ201,205〜207
の処理によって移行禁止手段が構成される。
【0048】図5は、本発明の第2実施例の構成を示す
図であり、上記第1実施例の図2と同様にコントローラ
10の構成を示すブロック図である。なお、この実施例
も、上記第1実施例と同様の車両用能動型騒音制御装置
に本発明を適用したものであり、全体構成は図1と同じ
である。また、上記第1実施例と同じ構成には、同じ符
号を付し、その重複する説明は省略する。
【0049】即ち、本実施例では、イグニッションスイ
ッチ21はコントローラ10に接続されていないが、車
速センサ30が、アンプ31を介してコントローラ10
に接続されていて、アンプ31の出力が、A/D変換器
32を介してマイクロプロセッサ16に供給されるよう
になっている。そして、マイクロプロセッサ16は、上
記第1実施例の同様の適応ディジタルフィルタWm のフ
ィルタ係数Wmiの更新処理を実行する一方で、車速セン
サ30から供給される車速検出値Vに基づいて車両が停
車中であるか走行中であるかを判定し、停車中であると
判定した場合には、アナログスイッチ28a〜28hを
順番に切り換えるとともにその切り換える度にインパル
ス信号発生器25を作動させてインパルス信号を発生さ
せ、各ラウドスピーカ7a〜7dから順番にインパルス
信号に応じた音を発生させ、そして、そのインパルス信
号に応じた音を発生させた時の各マイクロフォン8a〜
8hの出力と、ラウドスピーカ7a〜7dからインパル
ス信号に応じた音を発生させていない時の各マイクロフ
ォン8a〜8hの出力との差に基づいてディジタルフィ
ルタ12内の伝達関数C^lmを更新する処理を実行する
ようになっている。
【0050】図6は、コントローラ10内で実行される
処理のうち、伝達関数C^lmの更新処理の概要を示すフ
ローチャートである。先ず、そのステップ301におい
て車速検出値Vを読み込み、次いでステップ302で車
速検出値Vが零であるか否か、つまり車両が停車中であ
るか走行中であるかを判定する。
【0051】このステップ302の判定が「NO」の場
合には、車両は走行中であると判断できるから、特に伝
達関数C^lmの更新処理は行わず、このまま図6の処理
を終了して図3に示す処理に移行する。しかし、ステッ
プ302の判定が「YES」の場合には、車両は停車中
であると判断できるから、ステップ303に移行し、変
数mを“1”にセットする。
【0052】そして、ステップ304に移行し、次の基
準信号xが入力されるまで待機した後に、ステップ30
5に移行して、m番目のラウドスピーカ7a〜7dにイ
ンパルス信号が供給されるように、インパルス信号発生
器25及びアナログスイッチ28a〜28hに指令信号
を供給する。次いで、ステップ306に移行して残留騒
音信号e1 〜e8 を読み込み、その読み込んだ結果を、
所定の記憶領域に保存する。
【0053】ステップ306の処理を終えたら、ステッ
プ307に移行し、次の基準信号xが入力されるまで待
機した後に、ステップ308に移行して、残留騒音信号
1〜e8 を読み込み、その読み込んだ結果を、所定の
記憶領域に保存する。ここで、ステップ303以降の処
理を実行した時点では、車両が停車中でありロード・ノ
イズ(走行中に車輪及び路面間から発せられるランダム
・ノイズ)のような非周期的な騒音は発生していない状
況である。従って、ステップ306の処理を実行した時
点では、車室6内には、主として、エンジン4から発せ
られる周期的な騒音N(n+kT)と、インパルス信号
に応じてラウドスピーカから発せられる同定音とが存在
すると考えられ、後者はラウドスピーカとマイクロフォ
ン8a〜8hとの間のインパルス応答であるから、ステ
ップ306で読み込んだ残留騒音信号el (n,1)
は、 el (n,1)=C^lm+N(n+kT) ……(3) と表される。
【0054】また、ステップ308で読み込んだ残留騒
音信号el (n,2)は、周期的な騒音N(n+kT)
については同じタイミングで読み込んでいるが、インパ
ルス信号に応じてラウドスピーカから発せられる同定音
は存在していないため、el (n,2)=N(n+k
T) ……(4) と表される。
【0055】以上から、ステップ306で読み込んだ残
留騒音信号e1 〜e8 からステップ308で読み込んだ
残留騒音信号e1 〜e8 を差し引けば、伝達関数C^lm
が求められることが判る。そこで、ステップ308から
309に移行し、残留騒音信号el (n,1)から残留
騒音信号el (n,2)を差し引いた結果に基づいて、
m番目のラウドスピーカと、各マイクロフォン8a〜8
hとの間の伝達関数C^lmを設定し、これをディジタル
フィルタ12内に格納する。
【0056】次いで、ステップ310に移行し、変数m
がラウドスピーカ7a〜7dの個数Mに達しているか否
かを判定し、ここで達していないと判定された場合に
は、ステップ311で変数mをインクリメントした後に
上記ステップ304に戻って、上述した処理を繰り返し
実行する。ステップ310の判定が「YES」となった
場合には、この図6の処理を終了し図3に示す処理に移
行する。
【0057】即ち、本実施例にあっては、車速検出値V
に基づいて、車室6内の騒音が、周期的成分が支配的な
状態であることを検出可能とし、そして、周期的成分が
支配的であることが検出された場合には、ステップ30
4〜309の処理を実行することにより伝達関数C^lm
を設定する構成であるため、特にエンジン4を始動させ
るタイミングに限られず伝達関数C^lmを更新すること
ができる。
【0058】このため、上記第1実施例よりもさらに頻
繁に伝達関数C^lmを更新することができるから、ディ
ジタルフィルタ12内の伝達関数C^lmの精度をさらに
高くすることができ、さらに良好な騒音低減効果を得る
ことができる。また、伝達関数C^lmの同定のために発
する音も、上記第1実施例と同様にインパルス信号に応
じた音であるため、車室6内に同定音が存在する時間も
短時間であり、そのレベルも低くて済むので、乗員に不
快感を与えることもない。
【0059】そして、ステップ309では減算によって
伝達関数C^lmが設定でき、LMSアルゴリズム等の適
応アルゴリズム等も不要であるから、演算負荷が大幅に
増大することもなく、大幅なコストアップを招くことも
ない。なお、上記(3)式中の周期的な騒音N(n+k
T)と、上記(4)式中の周期的な騒音N(n+kT)
とは、エンジンが非定常状態にある場合には、一致しな
いことも考えられる。
【0060】そこで、ステップ307,308の処理を
繰り返し2回以上行い、同定音を含まない残留騒音信号
を、 el (n,1)=N(n+T) el (n,2)=N(n+2T) というように二つ以上取り込み、そして、それら残留騒
音信号el (n,1),el (n,2)間の差が十分小
さい場合には、エンジンが定常状態にあると判断して、
その場合にのみステップ309の処理を実行するように
すれば、高精度に伝達関数C^lmを設定することができ
るようになる。
【0061】また、本実施例の構成は、エンジン4駆動
中にのみ適用可能な訳ではなく、エンジン4が停止して
いる時であってもよい。その場合には、基準信号xに同
期してステップ305,308の処理を実行しなくても
よい。ここで、本実施例にあっては、車速センサ30及
びステップ301,302の処理によって騒音支配状態
検出手段が構成され、ステップ303〜311の処理に
よって伝達関数設定手段が構成される。
【0062】なお、上記各実施例では、本発明に係る能
動型騒音制御装置を、エンジン4から車室6内に伝達さ
れるこもり音の低減を図る車両用能動型騒音制御装置1
に適用した場合について説明したが、本発明の適用対象
はこれに限定されるものではなく、こもり音以外の騒音
を低減する装置であってもよいし、車両以外に適用して
もよい。また、低減の対象は騒音に限定されるものでは
なく、例えば、エンジン4及びメンバ間に能動的な制御
力を発生するエンジンマウント(制御振動源)を介在さ
せるとともに、そのメンバ側に残留振動を検出する加速
度センサ(残留振動検出手段)を配設し、そして、かか
るエンジンマウントを上記実施例と同様の基準信号x及
び加速度センサの出力信号(残留振動信号)に基づいて
制御すれば、エンジン4からメンバ側に伝達される周期
的な振動を低減し得る車両用能動型振動制御装置とな
る。
【0063】また、上記第1実施例では、変数mに従っ
て処理を繰り返し実行し、全ての伝達関数C^lmが設定
されたらイグニッションスイッチ21をオンとすること
により移行禁止手段を実現しているが、例えば、図4に
示す処理が実行されると同時にスタートするタイマを設
けておき、所定時間が経過するまでの間は、ステップ2
01〜206の処理を繰り返し実行するようにしてもよ
い。そのような場合には、伝達関数C^lmが複数回求め
られることになるから、それらを平均して伝達関数C^
lmを設定するようにしてもよい。
【0064】さらに、上記第2実施例では、車速検出値
Vに基づいて車両が停車中であるか否かを判定し、その
結果に基づいて車室内の騒音が周期的成分が支配的であ
ることを検出するようにしているが、これに限定される
ものではなく、例えばパーキングブレーキの状態に基づ
いて車両が停車中であるか否かを判定するようにしても
よいし、場合によっては、騒音に基づいて直接判断する
ようにしてもよい。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
騒音低減制御又は振動低減制御に必要な伝達関数を頻繁
に設定することができるから、良好な騒音低減効果又は
振動低減効果が得られるとともに、伝達関数の設定をイ
ンパルス信号に基づいて行う構成であるため、演算負荷
を大幅に増大させることもなく、また人間等に不快感を
与えることもないという効果がある。
【0066】特に、請求項1,2,5,6記載の発明で
あれば、同定音が人間に気付かれることもないし、請求
項3,4,7,8記載の発明であれば、極めて頻繁に伝
達関数の設定が可能であるからさらに良好な騒音低減効
果又は振動低減効果が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の全体構成を示す図であ
る。
【図2】第1実施例におけるコントローラの構成を示す
ブロック図である。
【図3】第1実施例におけるコントローラ内で実行され
る処理の概要を示すフローチャートである。
【図4】第1実施例におけるコントローラ内で実行され
る処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】第2実施例におけるコントローラの構成を示す
ブロック図である。
【図6】第2実施例におけるコントローラ内で実行され
る処理の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両用能動型騒音制御装置 3 車体 4 エンジン(騒音源) 5 クランク角センサ(騒音発生状態検出手
段) 6 車室(空間) 7a〜7d ラウドスピーカ(制御音源) 8a〜8h マイクロフォン(残留騒音検出手段) 10 コントローラ 12 ディジタルフィルタ 13 適応ディジタルフィルタ 16 マイクロプロセッサ 21 イグニッションスイッチ(移行時点検出
手段)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 騒音源から騒音が伝達される空間に制御
    音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態
    を検出し基準信号として出力する騒音発生状態検出手段
    と、前記空間内の所定位置における残留騒音を検出して
    残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記
    基準信号及び前記残留騒音信号に基づき前記制御音源及
    び前記残留騒音検出手段間の伝達関数を含む制御アルゴ
    リズムを用いて前記空間内の騒音が低減するように前記
    制御音源を駆動する能動制御手段と、を備えた能動型騒
    音制御装置において、 前記騒音源が騒音を発していない状態から騒音を発する
    状態に移行する時点の直前であることを検出する移行時
    点検出手段と、この移行時点検出手段が前記移行する時
    点の直前であることを検出した時に前記制御音源にイン
    パルス信号を供給するインパルス信号供給手段と、前記
    制御音源から前記インパルス信号に応じた音が発せられ
    た時の前記残留騒音信号に基づいて前記伝達関数を設定
    する伝達関数設定手段と、を設けたことを特徴とする能
    動型騒音制御装置。
  2. 【請求項2】 伝達関数設定手段に残留騒音信号が取り
    込まれるまで騒音源が騒音を発する状態に移行すること
    を禁止する移行禁止手段を設けた請求項1記載の能動型
    騒音制御装置。
  3. 【請求項3】 騒音源から騒音が伝達される空間に制御
    音を発生可能な制御音源と、前記騒音源の騒音発生状態
    を検出し基準信号として出力する騒音発生状態検出手段
    と、前記空間内の所定位置における残留騒音を検出して
    残留騒音信号として出力する残留騒音検出手段と、前記
    基準信号及び前記残留騒音信号に基づき前記制御音源及
    び前記残留騒音検出手段間の伝達関数を含む制御アルゴ
    リズムを用いて前記空間内の騒音が低減するように前記
    制御音源を駆動する能動制御手段と、を備えた能動型騒
    音制御装置において、 前記空間内の騒音が周期的成分の支配的な状態であるこ
    とを検出する騒音支配状態検出手段と、前記制御音源に
    インパルス信号を供給可能なインパルス信号供給手段
    と、前記騒音支配状態検出手段が前記支配的な状態であ
    ることを検出し且つ前記制御音源から前記インパルス信
    号に応じた音が発せられた時の前記残留騒音信号と前記
    騒音支配状態検出手段が前記支配的な状態であることを
    検出し且つ前記制御音源から前記インパルス信号に応じ
    た音が発せられていない時の前記残留騒音信号との差に
    基づいて前記伝達関数を設定する伝達関数設定手段と、
    を設けたことを特徴とする能動型騒音制御装置。
  4. 【請求項4】 伝達関数設定手段は、騒音支配状態検出
    手段が空間内の騒音が周期的成分の支配的な状態である
    ことを検出し且つ制御音源からインパルス信号に応じた
    音が発せられていない時の残留騒音信号を少なくとも2
    回取り込み、それら取り込んだ残留騒音信号間の差が所
    定値以下である場合に伝達関数を設定する請求項3記載
    の能動型騒音制御装置。
  5. 【請求項5】 振動源から発せられる振動と干渉する制
    御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動源の振動発
    生状態を検出し基準信号として出力する振動発生状態検
    出手段と、前記干渉後の振動を検出して残留振動信号と
    して出力する残留振動検出手段と、前記基準信号及び前
    記残留振動信号に基づき前記制御振動源及び前記残留振
    動検出手段間の伝達関数を含む制御アルゴリズムを用い
    て前記振動が低減するように前記制御振動源を駆動する
    能動制御手段と、を備えた能動型振動制御装置におい
    て、 前記振動源が振動を発していない状態から振動を発する
    状態に移行する時点の直前であることを検出する移行時
    点検出手段と、この移行時点検出手段が前記移行する時
    点の直前であることを検出した時に前記制御振動源にイ
    ンパルス信号を供給するインパルス信号供給手段と、前
    記制御振動源から前記インパルス信号に応じた振動が発
    せられた時の前記残留振動信号に基づいて前記伝達関数
    を設定する伝達関数設定手段と、を設けたことを特徴と
    する能動型振動制御装置。
  6. 【請求項6】 伝達関数設定手段に残留振動信号が取り
    込まれるまで振動源が振動を発する状態に移行すること
    を禁止する移行禁止手段を設けた請求項5記載の能動型
    振動制御装置。
  7. 【請求項7】 振動源から発せられる振動と干渉する制
    御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動源の振動発
    生状態を検出し基準信号として出力する振動発生状態検
    出手段と、前記干渉後の振動を検出して残留振動信号と
    して出力する残留振動検出手段と、前記基準信号及び前
    記残留振動信号に基づき前記制御振動源及び前記残留振
    動検出手段間の伝達関数を含む制御アルゴリズムを用い
    て前記振動が低減するように前記制御振動源を駆動する
    能動制御手段と、を備えた能動型振動制御装置におい
    て、 前記振動が周期的成分の支配的な状態であることを検出
    する振動支配状態検出手段と、前記制御振動源にインパ
    ルス信号を供給可能なインパルス信号供給手段と、前記
    振動支配状態検出手段が前記支配的な状態であることを
    検出し且つ前記制御振動源から前記インパルス信号に応
    じた振動が発せられた時の前記残留振動信号と前記振動
    支配状態検出手段が前記支配的な状態であることを検出
    し且つ前記制御振動源から前記インパルス信号に応じた
    振動が発せられていない時の前記残留振動信号との差に
    基づいて前記伝達関数を設定する伝達関数設定手段と、
    を設けたことを特徴とする能動型振動制御装置。
  8. 【請求項8】 伝達関数設定手段は、振動支配状態検出
    手段が振動が周期的成分の支配的な状態であることを検
    出し且つ制御振動源からインパルス信号に応じた振動が
    発せられていない時の残留振動信号を少なくとも2回取
    り込み、それら取り込んだ残留振動信号間の差が所定値
    以下である場合に伝達関数を設定する請求項7記載の能
    動型振動制御装置。
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