JPH0633291A - 電鋳加工による多孔質成形型の製造方法 - Google Patents

電鋳加工による多孔質成形型の製造方法

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JPH0633291A
JPH0633291A JP19378292A JP19378292A JPH0633291A JP H0633291 A JPH0633291 A JP H0633291A JP 19378292 A JP19378292 A JP 19378292A JP 19378292 A JP19378292 A JP 19378292A JP H0633291 A JPH0633291 A JP H0633291A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電鋳加工によって母型の表面に金属を多孔状
に電着させて多孔質成形型を製造する方法にあって、電
着金属層の多孔質化を十分に図る。 【構成】 母型1の表面は、導電部の表面に絶縁部を無
数の微細斑点状に有したポーラス化用処理がなされてい
る。電鋳加工を行うにあたっては、電鋳槽8(電解液
9)内にニッケル電極10及び母型1を配置し、それら
の間に直流電流を流す。母型1の表面に水素ガスの微細
な気泡が多数発生し、ニッケルが気泡を包み込むように
延びながら析出する。電解液9中には、表面張力を大き
くするための界面活性剤が添加されており、発生した気
泡が母型1表面や電着ニッケル表面から離脱し難くな
り、十分に多孔状とされた多孔質成形型を得ることがで
きるものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばプラスチック成
形品の真空成形に用いられる多孔質成形型を電鋳加工に
より製造する方法を改良した電鋳加工による多孔質成形
型の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電鋳加工により例えば成形型を製造する
にあたっては、成形品の外形と逆の凹凸形状を有する反
転型を製作し、その反転型から、原型と同一の凹凸形状
を表面に有する例えばエポキシ樹脂製の母型を製造する
ようにしている。そして、この母型の表面全体に例えば
銀鏡反応により導電層を形成した後、電鋳加工を行うこ
とにより、母型の表面に例えばニッケルを所定厚みに電
着させ、その電着ニッケル層を母型から離型して成形型
を得るものである。
【0003】而して、近年、このような電鋳加工によ
り、例えばプラスチック成形品の真空成形に使用される
多孔質の成形型を製造する技術が開発されてきている。
このような多孔質成形型を製造する技術として、特開昭
60−152692号公報や、特開昭61−25339
2号公報に示されたものがある。
【0004】これらの技術は、母型に対し、その表面層
を導電部と絶縁部とのいわば微細な斑状とするポーラス
化用処理を行い、この母型を例えばスルファミン酸ニッ
ケル浴にて電鋳加工を行うことにより、母型の表面にニ
ッケルを多孔状に電着させようとするものである。即
ち、母型の表面層に、導電部と絶縁部とを斑状に有した
ポーラス化用処理がなされていることにより、導電部の
表面にニッケルが析出すると共に、導電部と絶縁部と境
界部で過電界が生じて水素ガスの微細な気泡が多数発生
し、ニッケルはこの気泡を包み込むようにしながら成長
し、以て電着ニッケルの多孔質化を図るものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、電鋳加工を
行うための電解液には、一般に、ラウリル硫酸ナトリウ
ム等のアンチピット剤が添加されており、これにて、母
型の表面に発生する水素ガスの気泡を、速やかに母型表
面から離脱させるようにしている。ところが、上述のよ
うに金属を多孔状に電着させたい場合に、アンチピット
剤を含んだ電解液をそのまま用いると、電着金属層内の
気孔となるべき気泡が、母型の表面に十分に付着されな
くなり、この結果、電着金属層が十分な多孔状とならな
い不具合が生じてしまう。
【0006】そこで、上述の特開昭60−152692
号公報には、電解液中にラウリル硫酸ナトリウムを添加
しない技術が開示されている。しかしながら、このよう
にアンチピット剤を電解液中から取除いただけでは、必
ずしも母型の表面に気泡が十分に付着するようにはなら
ないため、十分な多孔状とされた多孔質成形型を得るま
でには至らず、さらなる改善が要求されるものであっ
た。
【0007】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、その目的は、電鋳加工によって母型の表面に金属を
多孔状に電着させて多孔質成形型を製造する方法にあっ
て、電着金属層の多孔質化を十分に図ることができる電
鋳加工による多孔質成形型の製造方法を提供するにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の電鋳加工による
多孔質成形型の製造方法は、成形品と同一外形を有し表
面がポーラス化用処理された母型を用い、電鋳加工によ
って前記母型の表面に金属を多孔状に電着させた後、電
着層を前記母型から離型することにより多孔質成形型を
得るようにした多孔質成形型の製造方法であって、前記
電鋳加工を行うための電解液に、表面張力を大きくする
界面活性剤を添加するようにしたところに特徴を有する
ものである。
【0009】この場合、界面活性剤としては、低級脂肪
酸又は高級アルコールのうち1種以上又はその誘導体を
含んでなるものが好適である。
【0010】また、使用する母型を、成形品の外形と逆
の凹凸形状を有する反転型の表面に多数の微細斑点状に
付着硬化された絶縁塗料と、前記反転型の表面全体に前
記絶縁塗料の上から付着硬化された導電塗料とからなる
塗料層を、前記反転型から離型させてなる表面層を有す
るように構成すれば効果的である。
【0011】
【作用】電鋳加工によって母型の表面に金属を多孔状に
電着させるためには、母型の表面をポーラス化用処理す
ることにより、母型の表面に水素ガス等の微細な気泡を
発生させやすくし、発生した気泡を包み込むようにさせ
ながら金属を電着させることが必要となる。従って、一
般的な電鋳加工とは正反対に、母型の表面に適度に気泡
を付着させるようにすることにより、十分な多孔状とな
った多孔質電着金属を得ることができるようになる。
【0012】本発明者等は、いかにして母型の表面に気
泡を付着し易くするかに関して、種々の実験,研究を重
ねた結果、電解液に表面張力を大きくする界面活性剤を
添加することにより、発生した気泡が母型表面から離脱
しにくくなって気泡が母型表面に付着したままの状態が
極力維持され、ひいては十分な多孔状となった電着金属
層を得ることができることを知見し、本発明を完成させ
たのである。
【0013】そして、さらなる研究の結果、上記界面活
性剤としては、ギ酸,酢酸,アクリル酸等の低級脂肪酸
や、グリセリン,エリトリトール,ペンタエリトリトー
ル等の三,四価の高級アルコールが特に好適することが
明らかとなった。この場合、それらの物質のうち2種以
上を混合して使用しても良く、又、それらの誘導体を使
用しても良いことは勿論である。
【0014】また、電鋳加工に使用する母型を、反転型
の表面に付着硬化された絶縁及び導電塗料からなる塗料
層をその反転型から離型した表面層を有するものとすれ
ば、母型の表面のポーラス化用処理を後の表面処理によ
ることなく済ませることができ、しかも転写精度に優れ
たものとなる。
【0015】
【実施例】以下、本発明の一実施例について、図面を参
照して説明する。まず、本実施例において使用する母型
1について、図3及び図4を参照して述べる。この母型
1は、後述するように、例えばプラスチックの真空成形
用の多孔質成形型を電鋳加工により製造するためのもの
であり、図3に示すように、電着が行われる表面層が、
塗料が硬化した塗料層2とされており、この塗料層2の
裏面に、例えばエポキシ樹脂及び強化用繊維等を積層し
ていわばFRP構造とされた裏打層3を備えて構成され
ている。
【0016】そして、前記塗料層2は、裏打層3の上面
側全体にわたって付着硬化された導電塗料からなる導電
部2aと、この導電部2aの表面に無数の微細斑点状に
付着硬化された絶縁塗料からなる絶縁部2bとから構成
され、これにて、電着金属を多孔状とするために必要な
ポーラス化用処理がなされている。
【0017】このような母型1を製造する手順を、図4
を参照しながら簡単に説明する。母型1を製造するに
は、まず、図4(a)に示すように、成形品(図示せ
ず)と同一形状を備えた木型からなる原型4を製作す
る。また、図示はしないが、この原型4の表面には、必
要に応じて例えば皮しぼ模様等の細密な凹凸模様を有す
るビニールレザーが貼付けられている。
【0018】次に、この原型4から、図4(b)に示す
ような、原型4(成形品)の外形とは逆の凹凸形状を有
する反転型5が製作される。この反転型5は、前記原型
4の表面部に例えばシリコン樹脂を注型して硬化させ、
その後、原型4から離型することにより得られる。この
場合、シリコン樹脂の注型方式で製作されるので、高い
転写精度が得られ、また、アンダーカット形状等の複雑
な形状を有する原型4にも対応できる。
【0019】そして、前記反転型5からさらに反転され
ることにより、原形4(成形品)と同一外形を有した母
型1が製作されるのであるが、本実施例においては、ま
ず、例えばスプレーにより、反転型5の内表面に向けて
絶縁塗料を霧状に吹付けることにより、絶縁塗料を多数
の微細斑点状に付着させるようにしている。絶縁塗料の
硬化により、図4(c)に示すように、前記塗料層2の
うちまず絶縁部2bが、反転型5の内表面に付着した形
態に形成される。
【0020】引続き、例えばスプレーにより、反転型5
の内表面全体に向けて導電塗料を所定厚みに吹付け、硬
化させることにより、図4(d)に示すように、表面側
において導電部2aと絶縁部2bとがいわば微細な斑状
に混在し且つ裏面側において導電部2aが全体に渡って
形成された塗料層2が、反転型5の内表面に付着した形
態に形成される。尚、この際、絶縁塗料及び導電塗料は
比較的粘度が低いから、反転型5の内表面と塗料層2と
の間に気泡を巻込む虞はない。
【0021】この後、図4(e)に示すように、前記塗
料層2の上にエポキシ樹脂及び強化用繊維等を積層して
裏打層3が形成され、最後に、前記塗料層2を裏打層3
と共に前記反転型5から離型することにより、図4
(f)に示すような、裏打層3の表面に塗料層2を有し
た母型1が得られるのである。この母型1は、表面に反
転型5の内表面の凹凸形状がそのまま反転転写された、
言換えれば成形品の表面の凹凸形状がそのまま転写され
た塗料層2を有した状態に製造されるものである。そし
て、上述のように、母型1の表面は、導電部2aの中に
無数の微細斑点状の絶縁部2bを有したポーラス化用処
理がなされた状態とされるのである。
【0022】さて、上述のようにして得られた母型1を
用いて、電鋳加工により多孔質成形型6を製造する手順
について、図1及び図2も参照して述べる。図2は電鋳
加工装置7を概略的に示しており、ここで、電鋳槽8内
には、例えばスルファミン酸ニッケルを主な組成として
なる電解液9が、所要のpH及び温度に保たれた状態で
収容されている。そして、この電解液9中には、表面張
力を大きくするための界面活性剤例えばグリセリンが所
要量添加されている。
【0023】この界面活性剤としては、ギ酸(HCOO
H),酢酸(CH3 COOH),アクリル酸(CH2 =
CHCOOH)等の低級脂肪酸や、グリセリン(CH2
OH−CHOH−CH2 OH),エリトリトール(CH
2 OH−CHOH−CHOH−CH2 OH),ペンタエ
リトリトール(C(CH2 OH)4 )等の三,四価の高
級アルコールが特に好適する。
【0024】電鋳加工を行うにあたっては、電鋳槽8内
にニッケル電極10,10(陽極)及び前記母型1(陰
極)を配置すると共に、それらの間に直流電源11を接
続し、母型1の塗料層2(導電部2a)と前記ニッケル
電極10,10との間に所要の電流密度となるように直
流電流を流す。この場合の電鋳加工の条件の一例を次の
表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】これにより、母型1(塗料層2)の表面に
ニッケル金属が析出し電着が行われるのであるが、この
際、塗料層2の表面は導電部2aと絶縁部2bとがいわ
ば微細斑状となったポーラス化用処理がなされているた
め、導電部2の表面にニッケルが析出すると共に、導電
部2aと絶縁部2bと境界部で過電界が生じて水素ガス
の微細な気泡が多数発生し、ニッケルはこの気泡を包み
込むように延びながら成長するようになる。
【0027】ニッケルの電着が進行するに伴い、母型1
の表面部に生じた気泡から連続するようにして母型1の
外側に向けてさらに気泡が発生し、ニッケルはさらにそ
の気泡を包むように延びながら析出して行く。この場
合、気泡は母型1の表面から外側に行くに従って次第に
径大となる。所定厚みの(例えば3mm)の電着が終了
した後、電着ニッケル層を母型1から離型することによ
り、図1に示すような、厚み方向に連続する多数個の気
孔6aを有する多孔質成形型6が得られるのである。
【0028】尚、この成形型6の表面は、母型1の表面
の凹凸形状がそのまま反転転写された状態となり、従っ
て、この成形型6を用いた真空成形品の表面には、母型
1ひいては原型4の外形と同一の凹凸形状が転写される
のである。
【0029】而して、上述の電鋳加工の際に、母型1の
表面に発生した水素ガスからなる気泡を母型1からすぐ
に離脱させてしまうと、電着ニッケル層が十分な多孔質
とはならなくなる。従って、母型1及び析出した電着ニ
ッケルの表面にできるだけ気泡を付着させるようにする
ことにより、高品質な多孔質成形型6を得ることができ
るようになる。本実施例においては、電解液9に表面張
力を大きくする界面活性剤を添加するようにしたので、
発生した気泡が母型1表面や電着ニッケル表面から離脱
し難くなって気泡が付着したままの状態が極力維持さ
れ、十分に多孔状とされた多孔質成形型6を得ることが
できるものである。
【0030】このように本実施例によれば、電解液9に
表面張力を大きくする界面活性剤を添加したことによ
り、電着金属層の多孔質化を十分に図ることができ、こ
の結果、従来技術により製造されたものと比較し、極め
て高品質な多孔質成形型を得ることができるようになっ
た。
【0031】特に本実施例では、反転型5の内表面に付
着硬化された塗料層2を裏打層3と共に離型してポーラ
ス化用処理がなされた母型1を得るようにしたので、次
のような効果も得ることができる。即ち、反転型からの
離型後に母型の表面に塗料や銀鏡層等を付着させること
によりポーラス化用処理を行っていた従来技術と異な
り、母型1の表面のポーラス化用処理を後の表面処理に
よることなく済ませることができ、母型1の製造を極め
て容易且つ安価に済ませることができる。
【0032】また、本実施例の母型1は、その表面に皮
しぼ模様等の細密な凹凸模様が反転方5から確実に転写
されるようになり、しかも、反転型5と母型1との間に
気泡を巻込むことによるピンホールの発生もなくなる。
この結果、従来のものに比べて、成形型6及び成形品に
対する極めて高い転写精度を得ることができるものであ
る。因みに、本実施例の方法によれば、0.1μ程度の
凹凸模様の転写も可能となった。
【0033】尚、本発明は上記実施例に限定されるもの
ではなく、他の方法によりポーラス化用処理された母型
を用いても、電解液に表面張力を大きくする界面活性剤
を添加することにより電着金属層の多孔質化を十分に図
ることができ、また、ニッケルに限らず銅などの他の電
鋳加工にも適用することができるなど、要旨を逸脱しな
い範囲内で種々の変形が可能である。
【0034】
【発明の効果】以上の説明にて明らかなように、本発明
の電鋳加工による多孔質成形型の製造方法によれば、電
鋳加工を行うための電解液に、表面張力を大きくする界
面活性剤を添加するようにしたので、電着金属層の多孔
質化を十分に図ることができ、高品質な多孔質成形型を
得ることができるという極めて優れた実用的効果を奏す
るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、多孔質成形型
の部分的な拡大縦断面図
【図2】電鋳加工装置を概略的に示す図
【図3】母型の表面層部分の拡大縦断面図
【図4】母型の製造工程を説明するための図
【符号の説明】
図面中、1は母型、2は塗料層、2aは導電部、2bは
絶縁部、3は裏打層、4は原型、5は反転型、6は多孔
質成形型、6aは気孔、7は電鋳加工装置、8は電鋳
槽、9は電解液、10はニッケル電極、11は直流電源
を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成形品と同一外形を有し表面がポーラス
    化用処理された母型を用い、電鋳加工によって前記母型
    の表面に金属を多孔状に電着させた後、電着層を前記母
    型から離型することにより多孔質成形型を得るようにし
    た多孔質成形型の製造方法において、前記電鋳加工を行
    うための電解液に、表面張力を大きくする界面活性剤を
    添加するようにしたことを特徴とする電鋳加工による多
    孔質成形型の製造方法。
  2. 【請求項2】 界面活性剤は、低級脂肪酸又は高級アル
    コールのうち1種以上又はその誘導体を含んでなること
    を特徴とする請求項1記載の電鋳加工による多孔質成形
    型の製造方法。
  3. 【請求項3】 母型は、成形品の外形と逆の凹凸形状を
    有する反転型の表面に多数の微細斑点状に付着硬化され
    た絶縁塗料と、前記反転型の表面全体に前記絶縁塗料の
    上から付着硬化された導電塗料とからなる塗料層が、前
    記反転型から離型されて表面層とされることにより、表
    面がポーラス化用処理されていることを特徴とする請求
    項1又は2のいずれかに記載の電鋳加工による多孔質成
    形型の製造方法。
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