JPH06272002A - 焼き付け塗装硬化性の高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方法 - Google Patents
焼き付け塗装硬化性の高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方法Info
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- JPH06272002A JPH06272002A JP8548093A JP8548093A JPH06272002A JP H06272002 A JPH06272002 A JP H06272002A JP 8548093 A JP8548093 A JP 8548093A JP 8548093 A JP8548093 A JP 8548093A JP H06272002 A JPH06272002 A JP H06272002A
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Abstract
(57)【要約】
【構成】 少なくもMg: 0.2wt%以上とSi: 0.2wt
%以上含有するAl合金鋳塊を均質化処理して熱間圧延
し、その後冷間圧延を施して板材とした後溶体化処理す
るにあたり、該板材の一部を 490℃以上固相線温度以下
に3秒以上保持する溶体化加熱部を板材の一端から他端
にかけて連続的に移動させ、かつ該溶体化加熱部が通過
した部分の板材を 100℃/min以上の冷却速度で90℃以下
まで冷却し、さらに誘導加熱方式により該板材の一部を
90〜160 ℃に加熱した誘導加熱部を板材の一端から他端
にかけて連続的に移動させた後コイルに巻き取り、その
後室温にて放冷することを特徴とする焼き付け塗装硬化
性の高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方法。 【効果】 従来材料では硬化しなかったような低温の焼
き付け塗装加熱によっても顕著な強度増大が望める材料
が得られ、自動車の外板等に好適である。
%以上含有するAl合金鋳塊を均質化処理して熱間圧延
し、その後冷間圧延を施して板材とした後溶体化処理す
るにあたり、該板材の一部を 490℃以上固相線温度以下
に3秒以上保持する溶体化加熱部を板材の一端から他端
にかけて連続的に移動させ、かつ該溶体化加熱部が通過
した部分の板材を 100℃/min以上の冷却速度で90℃以下
まで冷却し、さらに誘導加熱方式により該板材の一部を
90〜160 ℃に加熱した誘導加熱部を板材の一端から他端
にかけて連続的に移動させた後コイルに巻き取り、その
後室温にて放冷することを特徴とする焼き付け塗装硬化
性の高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方法。 【効果】 従来材料では硬化しなかったような低温の焼
き付け塗装加熱によっても顕著な強度増大が望める材料
が得られ、自動車の外板等に好適である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は焼き付け塗装を施すAl
−Mg−Si系合金板材の製造方法に関するものであ
り、更に詳しくは焼き付け塗装加熱により強度増大が顕
著なAl−Mg−Si系のアルミニウム合金板材の製造
方法に関するものである。
−Mg−Si系合金板材の製造方法に関するものであ
り、更に詳しくは焼き付け塗装加熱により強度増大が顕
著なAl−Mg−Si系のアルミニウム合金板材の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の外板、構造部材等には強度、耐
食性が要求され、さらに製品形状に加工する為に良好な
成形性が要求される。それゆえこれら部材にはAl−M
g−Si系あるいはAl−Mg系合金の板材にプレス加
工、曲げ加工等を施したものが使用されている。
食性が要求され、さらに製品形状に加工する為に良好な
成形性が要求される。それゆえこれら部材にはAl−M
g−Si系あるいはAl−Mg系合金の板材にプレス加
工、曲げ加工等を施したものが使用されている。
【0003】これら合金のうちAl−Mg系合金は高い
成形性を有するために主に複雑形状の部材に、Al−M
g−Si系合金は焼き付け塗装加熱後に高い強度を有す
るために高強度が要求される部材に使用されている。
成形性を有するために主に複雑形状の部材に、Al−M
g−Si系合金は焼き付け塗装加熱後に高い強度を有す
るために高強度が要求される部材に使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このAl−Mg−Si
系合金の板材は通常該合金鋳塊を均質化処理後熱間圧延
及び冷間圧延を施し、その後溶体化処理することにより
得られるが、さらに溶体化処理後の状態で成形し、その
後の焼き付け塗装加熱工程において時効硬化して高い強
度となる特長を有している。そして高強度を得るために
はこの塗装加熱工程で比較的高い加熱温度で長時間加熱
することが望ましい。なお現在の自動車車体の塗装加熱
条件は 170〜200 ℃×10〜60分程度の条件となってい
る。
系合金の板材は通常該合金鋳塊を均質化処理後熱間圧延
及び冷間圧延を施し、その後溶体化処理することにより
得られるが、さらに溶体化処理後の状態で成形し、その
後の焼き付け塗装加熱工程において時効硬化して高い強
度となる特長を有している。そして高強度を得るために
はこの塗装加熱工程で比較的高い加熱温度で長時間加熱
することが望ましい。なお現在の自動車車体の塗装加熱
条件は 170〜200 ℃×10〜60分程度の条件となってい
る。
【0005】しかし近年ではより低温・短時間で加熱が
施される傾向があり、このような加熱条件では時効硬化
が進行しにくく、充分な強度が得られにくくなってい
る。このような背景の中で、低温・短時間の加熱で硬化
する材料の開発が求められている。
施される傾向があり、このような加熱条件では時効硬化
が進行しにくく、充分な強度が得られにくくなってい
る。このような背景の中で、低温・短時間の加熱で硬化
する材料の開発が求められている。
【0006】Al−Mg−Si系合金の時効硬化挙動は
溶体化処理により過飽和固溶体となったMg,Si等の
主要添加元素が、室温でGPゾーンを形成し、その後の
焼き付け塗装加熱工程にてGPゾーンの分解とβ′と呼
ばれるMg2 Si中間相の析出により硬化するものであ
る。しかしながらこのGPゾーンの形成は時効硬化に寄
与するβ′の析出速度を低下させることが知られてお
り、そのために溶体化処理後の室温でGPゾーンの形成
を最小限に抑える工夫が種々試みられている。
溶体化処理により過飽和固溶体となったMg,Si等の
主要添加元素が、室温でGPゾーンを形成し、その後の
焼き付け塗装加熱工程にてGPゾーンの分解とβ′と呼
ばれるMg2 Si中間相の析出により硬化するものであ
る。しかしながらこのGPゾーンの形成は時効硬化に寄
与するβ′の析出速度を低下させることが知られてお
り、そのために溶体化処理後の室温でGPゾーンの形成
を最小限に抑える工夫が種々試みられている。
【0007】具体的には溶体化処理後の塗装加熱まで
の時間を制限する、溶体化処理後速やかにβ′相の形
成温度域に加熱してGPゾーン形成前に微細なβ′を形
成する等の手段が提唱されている。
の時間を制限する、溶体化処理後速やかにβ′相の形
成温度域に加熱してGPゾーン形成前に微細なβ′を形
成する等の手段が提唱されている。
【0008】しかしながらに関してはGPゾーンの形
成が室温においては1〜4日でほぼ完了してしまう事か
ら工業的には対応が困難であり、またでは溶体化処理
後に直接もしくは短時間で一定温度に加熱・保持する必
要があり、製造工程が煩雑かつ熱処理費用が高価になる
等の工業的な問題があった。
成が室温においては1〜4日でほぼ完了してしまう事か
ら工業的には対応が困難であり、またでは溶体化処理
後に直接もしくは短時間で一定温度に加熱・保持する必
要があり、製造工程が煩雑かつ熱処理費用が高価になる
等の工業的な問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上の問題点を解決すべ
く、本発明者らはAl−Mg−Si系合金板材の組成、
製造工程を詳細に検討した結果、溶体化処理後に連続的
に適切な温度に加熱し、そのまま適切な形状のコイルに
巻き取ることにより、GPゾーンの生成を最小限に留め
ると共に微細なβ′相が均一に生じることを見いだし、
本発明に至ったものである。
く、本発明者らはAl−Mg−Si系合金板材の組成、
製造工程を詳細に検討した結果、溶体化処理後に連続的
に適切な温度に加熱し、そのまま適切な形状のコイルに
巻き取ることにより、GPゾーンの生成を最小限に留め
ると共に微細なβ′相が均一に生じることを見いだし、
本発明に至ったものである。
【0010】即ち本発明のAl−Mg−Si系合金板材
の製造方法は、少なくともMg:0.2 wt%以上とSi:
0.2wt%以上含有するAl合金鋳塊を均質化処理して熱
間圧延し、その後冷間圧延を施して板材とした後溶体化
処理するにあたり、該板材の一部を 490℃以上固相線温
度以下に3秒以上保持した溶体化加熱部を板材の一端か
ら他端にかけて連続的に移動させ、かつ該溶体化加熱部
が通過した部分の板材を 100℃/min以上の冷却速度で90
℃以下まで冷却し、さらに誘導加熱方式により該板材の
一部を90〜160 ℃に加熱した誘導加熱部を板材の一端か
ら他端にかけて連続的に移動させた後コイルに巻き取
り、その後室温にて放冷することを特徴とするものであ
り、この際内径25cm以上75cm以下で外径3m以下のコイ
ルに巻き取るのは有効である。
の製造方法は、少なくともMg:0.2 wt%以上とSi:
0.2wt%以上含有するAl合金鋳塊を均質化処理して熱
間圧延し、その後冷間圧延を施して板材とした後溶体化
処理するにあたり、該板材の一部を 490℃以上固相線温
度以下に3秒以上保持した溶体化加熱部を板材の一端か
ら他端にかけて連続的に移動させ、かつ該溶体化加熱部
が通過した部分の板材を 100℃/min以上の冷却速度で90
℃以下まで冷却し、さらに誘導加熱方式により該板材の
一部を90〜160 ℃に加熱した誘導加熱部を板材の一端か
ら他端にかけて連続的に移動させた後コイルに巻き取
り、その後室温にて放冷することを特徴とするものであ
り、この際内径25cm以上75cm以下で外径3m以下のコイ
ルに巻き取るのは有効である。
【0011】
【作用】本発明において組成を限定した理由について述
べる。
べる。
【0012】MgおよびSiは本発明合金の析出硬化に
寄与する元素であり、しかしてそれぞれ 0.2wt%未満で
は本発明の製造方法によっても充分な強度が得られなく
なる。また上限については特に定めるものではないが、
それぞれ3wt%以下の組成で選定されることが一般的で
ある。
寄与する元素であり、しかしてそれぞれ 0.2wt%未満で
は本発明の製造方法によっても充分な強度が得られなく
なる。また上限については特に定めるものではないが、
それぞれ3wt%以下の組成で選定されることが一般的で
ある。
【0013】その他の元素については、塗装焼き付け後
の強度向上に有効なCu,Znはそれぞれ2wt%以下、
材料の結晶粒径の均一化に有効なCr,Mn,Zr,T
i等の遷移元素はMnは2wt%以下その他はそれぞれ
0.5wt%以下、またAl−Mg−Si系合金の主な不純
物元素であるFeは 0.5wt%以下、その他の時効促進等
に有効とされるAu,Sn,Ag,In,Cd,Be,
Sc等の元素、および不可避的不純物元素はそれぞれ
0.2wt%以下の含有量であれば本発明の効果を阻害しな
い。
の強度向上に有効なCu,Znはそれぞれ2wt%以下、
材料の結晶粒径の均一化に有効なCr,Mn,Zr,T
i等の遷移元素はMnは2wt%以下その他はそれぞれ
0.5wt%以下、またAl−Mg−Si系合金の主な不純
物元素であるFeは 0.5wt%以下、その他の時効促進等
に有効とされるAu,Sn,Ag,In,Cd,Be,
Sc等の元素、および不可避的不純物元素はそれぞれ
0.2wt%以下の含有量であれば本発明の効果を阻害しな
い。
【0014】次に本発明において製造方法を限定した理
由について述べる。本発明の特徴は溶体化処理において
連続加熱・冷却・再加熱方式を採用したことにある。こ
れは、先ず上記Al−Mg−Si系合金は冷間圧延によ
って板材とされて例えばコイルに巻き取られているが、
この板材に対して溶体化処理する際に該板材の一端から
他端にかけて加熱炉内を連続的に通過させることによ
り、板材の加熱炉内にある部分を溶体化温度まで加熱す
る。即ちこのように溶体化温度まで加熱された溶体化加
熱部を板材の一端から他端にかけて連続的に移動させ、
次に該加熱部が通過した後は空冷、水冷等何らかの手段
で冷却する。その後誘導加熱により再度連続的に加熱
し、即ち誘導加熱方式により加熱された板材の一部であ
る誘導加熱部をその一端から他端にかけて連続的に移動
し、その後コイルに巻き取る工程からなるものである。
由について述べる。本発明の特徴は溶体化処理において
連続加熱・冷却・再加熱方式を採用したことにある。こ
れは、先ず上記Al−Mg−Si系合金は冷間圧延によ
って板材とされて例えばコイルに巻き取られているが、
この板材に対して溶体化処理する際に該板材の一端から
他端にかけて加熱炉内を連続的に通過させることによ
り、板材の加熱炉内にある部分を溶体化温度まで加熱す
る。即ちこのように溶体化温度まで加熱された溶体化加
熱部を板材の一端から他端にかけて連続的に移動させ、
次に該加熱部が通過した後は空冷、水冷等何らかの手段
で冷却する。その後誘導加熱により再度連続的に加熱
し、即ち誘導加熱方式により加熱された板材の一部であ
る誘導加熱部をその一端から他端にかけて連続的に移動
し、その後コイルに巻き取る工程からなるものである。
【0015】この場合における溶体化処理時の加熱手段
は空気炉、誘導加熱炉、塩浴等の手段によることができ
る。また溶体化温度が 490℃未満では充分な溶体化効果
が得られず素材の強度、成形性および加熱硬化特性が低
下してしまい、一方溶体化温度が固相線温度を超えると
材料が溶融してしまう。さらに加熱時間が3秒未満では
充分に溶体化されず、他方加熱時間の上限は特にさだめ
るものではないが、一般的には経済的な理由等により30
分以内の時間が好ましい。
は空気炉、誘導加熱炉、塩浴等の手段によることができ
る。また溶体化温度が 490℃未満では充分な溶体化効果
が得られず素材の強度、成形性および加熱硬化特性が低
下してしまい、一方溶体化温度が固相線温度を超えると
材料が溶融してしまう。さらに加熱時間が3秒未満では
充分に溶体化されず、他方加熱時間の上限は特にさだめ
るものではないが、一般的には経済的な理由等により30
分以内の時間が好ましい。
【0016】次に溶体化加熱後の冷却において、90℃以
下までの冷却速度が 100℃/min未満では冷却中Mg,S
i等の主要元素が析出してしまい、充分な溶体化効果が
得られなくなるからである。なお冷却速度の上限は特に
定めるものではないが、冷却速度が大きい程溶体化効果
は大きく特性上は望ましい。
下までの冷却速度が 100℃/min未満では冷却中Mg,S
i等の主要元素が析出してしまい、充分な溶体化効果が
得られなくなるからである。なお冷却速度の上限は特に
定めるものではないが、冷却速度が大きい程溶体化効果
は大きく特性上は望ましい。
【0017】さらに90℃以下までの冷却速度を規定した
理由は90℃を越える温度域ではMg,Si等の元素が
β′ではなく、安定相のβ等として析出しやすく、これ
ら析出相が生じた場合はβ′の析出量が減少して、加熱
硬化性等を低下させる為である。また90℃から誘導加熱
による再加熱までの加熱速度は特に規定するものではな
いが、一般的には90℃まで冷却してから10分以内に再加
熱を施すことが好ましい。
理由は90℃を越える温度域ではMg,Si等の元素が
β′ではなく、安定相のβ等として析出しやすく、これ
ら析出相が生じた場合はβ′の析出量が減少して、加熱
硬化性等を低下させる為である。また90℃から誘導加熱
による再加熱までの加熱速度は特に規定するものではな
いが、一般的には90℃まで冷却してから10分以内に再加
熱を施すことが好ましい。
【0018】次いで本発明の大きな特長は誘導加熱方式
により90〜160 ℃の温度に再加熱後にコイルに巻き取
り、そのまま室温にて放冷することにある。この再加熱
条件を規定した理由は室温にて生じるGPゾーンが生成
する前にβ′を生成させることにある。
により90〜160 ℃の温度に再加熱後にコイルに巻き取
り、そのまま室温にて放冷することにある。この再加熱
条件を規定した理由は室温にて生じるGPゾーンが生成
する前にβ′を生成させることにある。
【0019】先ず誘導加熱方式とした理由は、材料が直
接発熱するこの方法によると非常に短時間で材料温度が
目的とする温度域に到達できる上に、原子の拡散が促進
されβ′の析出が促進されることを見出したからであ
る。他の加熱方法、例えば空気炉、塩浴炉等によると誘
導加熱炉方式ほど素早くβ′を生成させることは困難で
ある。
接発熱するこの方法によると非常に短時間で材料温度が
目的とする温度域に到達できる上に、原子の拡散が促進
されβ′の析出が促進されることを見出したからであ
る。他の加熱方法、例えば空気炉、塩浴炉等によると誘
導加熱炉方式ほど素早くβ′を生成させることは困難で
ある。
【0020】次に再加熱温度を規定した理由は室温にて
生じるGPゾーンの生成する前にβ′を生成させること
にある。さらにβ′生成前にコイルに巻き取ることによ
り適度な塑性歪みを材料中に与え、β′を短時間で均一
に分布させることが可能になる。
生じるGPゾーンの生成する前にβ′を生成させること
にある。さらにβ′生成前にコイルに巻き取ることによ
り適度な塑性歪みを材料中に与え、β′を短時間で均一
に分布させることが可能になる。
【0021】一般的に時効前の加工歪みは時効を促進さ
せることが知られており、溶体化・焼入れ後に冷間加工
を施してから人工時効を施す処理(T8処理等)により
高強度が得られる事が知られている。この処理は冷間加
工により導入された転位に析出相が不均一核生成し、そ
の結果析出相数が増大することによるものである。この
不均一核生成による析出相増は、その析出相が母相と非
整合な相である場合に非整合界面である転位に優先的に
核生成する為におこるものである。
せることが知られており、溶体化・焼入れ後に冷間加工
を施してから人工時効を施す処理(T8処理等)により
高強度が得られる事が知られている。この処理は冷間加
工により導入された転位に析出相が不均一核生成し、そ
の結果析出相数が増大することによるものである。この
不均一核生成による析出相増は、その析出相が母相と非
整合な相である場合に非整合界面である転位に優先的に
核生成する為におこるものである。
【0022】しかしながら本発明において問題となる
β′相は半整合相であるために、冷間で加工転位を多く
導入することは必ずしも析出相の増大に繋がらない場合
があることを本発明者らは知見し、β′相の均一析出の
増大のためにはβ′相が析出する温度域で低密度の歪み
を加えることにより、転位による元素拡散の促進と析出
を競合させることが効果的であることを見いだした。さ
らに本発明においては工業的な面から経済的に有利な製
造方法を採用する事を目的として、温度条件および歪み
の導入方法を規定したものである。
β′相は半整合相であるために、冷間で加工転位を多く
導入することは必ずしも析出相の増大に繋がらない場合
があることを本発明者らは知見し、β′相の均一析出の
増大のためにはβ′相が析出する温度域で低密度の歪み
を加えることにより、転位による元素拡散の促進と析出
を競合させることが効果的であることを見いだした。さ
らに本発明においては工業的な面から経済的に有利な製
造方法を採用する事を目的として、温度条件および歪み
の導入方法を規定したものである。
【0023】そこで誘導加熱により90℃未満もしくは 1
60℃を越える温度に再加熱後に巻き取った場合はいずれ
もβ′相を均一微細に析出させる事が困難となってしま
う。
60℃を越える温度に再加熱後に巻き取った場合はいずれ
もβ′相を均一微細に析出させる事が困難となってしま
う。
【0024】またコイルのサイズは内径25cm以上75cm以
下、外径3m以下であることが望ましい。これは内径が
25cm未満もしくは外径が3mを越えるとコイルの内周部
と外周部とで歪み量の差が大きくなり、均一な製品の製
造が困難となるからであり、また内径が75cmを越えると
コイル内径表面部からの熱放出が大きくなり、β′相の
均一微細分布か困難になるからである。
下、外径3m以下であることが望ましい。これは内径が
25cm未満もしくは外径が3mを越えるとコイルの内周部
と外周部とで歪み量の差が大きくなり、均一な製品の製
造が困難となるからであり、また内径が75cmを越えると
コイル内径表面部からの熱放出が大きくなり、β′相の
均一微細分布か困難になるからである。
【0025】コイルに巻き取った後の冷却は室温まで自
然放冷すればよく、その際の冷却速度は特に規定するも
のではないが、一般的な室温(0〜30℃)程度であれば
3〜48時間程度で室温近傍の温度に冷却すればよい。
然放冷すればよく、その際の冷却速度は特に規定するも
のではないが、一般的な室温(0〜30℃)程度であれば
3〜48時間程度で室温近傍の温度に冷却すればよい。
【0026】
【実施例】表1に示すAl−Mg−Si系合金を常法に
より厚さ 400×幅1500mmの鋳塊とした。この鋳塊を常法
により均質化処理、熱間圧延、冷間圧延を施してそれぞ
れ肉厚 1.2mmの板材とした。これら板材に対して、表2
に示す溶体化処理、誘導加熱処理、コイル巻き取りの条
件を、表3のように組み合せて施した。そして得られた
板材のコイル内周部近傍及び外周部近傍より試験片を採
取し、これら試験片の機械的性質、及び塗装焼付け加熱
相当として従来より低温の 160℃×20分の加熱を行った
後の機械的性質を調査した。結果を表3に併記する。
より厚さ 400×幅1500mmの鋳塊とした。この鋳塊を常法
により均質化処理、熱間圧延、冷間圧延を施してそれぞ
れ肉厚 1.2mmの板材とした。これら板材に対して、表2
に示す溶体化処理、誘導加熱処理、コイル巻き取りの条
件を、表3のように組み合せて施した。そして得られた
板材のコイル内周部近傍及び外周部近傍より試験片を採
取し、これら試験片の機械的性質、及び塗装焼付け加熱
相当として従来より低温の 160℃×20分の加熱を行った
後の機械的性質を調査した。結果を表3に併記する。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】表3から明らかなように本発明によるもの
は、塗装焼き付け加熱前であっても良好な機械的性質を
示し、かつ加熱後においてその強度の向上は顕著であ
る。これに対して比較例によるものは加熱によっても強
度向上は非常に小さく、さらにコイルの内外周部での差
が大きい。
は、塗装焼き付け加熱前であっても良好な機械的性質を
示し、かつ加熱後においてその強度の向上は顕著であ
る。これに対して比較例によるものは加熱によっても強
度向上は非常に小さく、さらにコイルの内外周部での差
が大きい。
【0031】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、従来の材
料では硬化しなかったような焼き付け塗装時の低温加熱
によっても顕著な強度増大が望める材料が得られる等工
業上顕著な効果を奏するものである。
料では硬化しなかったような焼き付け塗装時の低温加熱
によっても顕著な強度増大が望める材料が得られる等工
業上顕著な効果を奏するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 戸次 洋一郎 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河アルミニウム工業株式会社内 (72)発明者 佐々木 勝敏 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河アルミニウム工業株式会社内 (72)発明者 渡辺 元 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河アルミニウム工業株式会社内
Claims (2)
- 【請求項1】 少なくともMg: 0.2wt%以上とSi:
0.2wt%以上含有するAl合金鋳塊を均質化処理して熱
間圧延し、その後冷間圧延を施して板材とした後溶体化
処理するにあたり、該板材の一部を 490℃以上固相線温
度以下に3秒以上保持した溶体化加熱部を板材の一端か
ら他端にかけて連続的に移動させ、かつ該溶体化加熱部
が通過した部分の板材を 100℃/min以上の冷却速度で90
℃以下まで冷却し、さらに誘導加熱方式により該板材の
一部を90〜160 ℃に加熱した誘導加熱部を板材の一端か
ら他端にかけて連続的に移動させた後コイルに巻き取
り、その後室温にて放冷することを特徴とする焼き付け
塗装硬化性の高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方
法。 - 【請求項2】 内径25cm以上75cm以下で外径3m以下の
コイルに巻き取る請求項1記載の焼き付け塗装硬化性の
高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8548093A JPH06272002A (ja) | 1993-03-19 | 1993-03-19 | 焼き付け塗装硬化性の高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8548093A JPH06272002A (ja) | 1993-03-19 | 1993-03-19 | 焼き付け塗装硬化性の高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06272002A true JPH06272002A (ja) | 1994-09-27 |
Family
ID=13860077
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8548093A Pending JPH06272002A (ja) | 1993-03-19 | 1993-03-19 | 焼き付け塗装硬化性の高いAl−Mg−Si系合金板材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06272002A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH06340940A (ja) * | 1993-06-02 | 1994-12-13 | Kobe Steel Ltd | プレス成形性、焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板及びその製造方法 |
EP0874917A1 (en) † | 1995-12-18 | 1998-11-04 | Reynolds Metals Company | Process and apparatus to enhance the paintbake response and aging stability of aluminum sheet materials and product therefrom |
JP2008106370A (ja) * | 1994-09-06 | 2008-05-08 | Novelis Inc | アルミニウム合金シートの熱処理方法 |
US11447851B2 (en) | 2015-05-29 | 2022-09-20 | Arconic Technologies Llc | 6xxx aluminum alloys and methods of making the same |
-
1993
- 1993-03-19 JP JP8548093A patent/JPH06272002A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH06340940A (ja) * | 1993-06-02 | 1994-12-13 | Kobe Steel Ltd | プレス成形性、焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板及びその製造方法 |
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