JPH0625829A - 超電導体及びその製造方法 - Google Patents
超電導体及びその製造方法Info
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- JPH0625829A JPH0625829A JP17813492A JP17813492A JPH0625829A JP H0625829 A JPH0625829 A JP H0625829A JP 17813492 A JP17813492 A JP 17813492A JP 17813492 A JP17813492 A JP 17813492A JP H0625829 A JPH0625829 A JP H0625829A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 超電導体を大気中で使用可能にする。
【構成】 超電導体1は、基材2と、基材2上に形成さ
れた下記の一般式(1)で示される超電導化合物層3
と、この超電導化合物層3上に形成されたフタロシアニ
ン系化合物層4とを含んでいる。 【化1】
れた下記の一般式(1)で示される超電導化合物層3
と、この超電導化合物層3上に形成されたフタロシアニ
ン系化合物層4とを含んでいる。 【化1】
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超電導体及びその製造
方法、特に、基材上に超電導化合物層を形成した超電導
体及びその製造方法に関する。
方法、特に、基材上に超電導化合物層を形成した超電導
体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】基材上に超電導化合物層を形成した超電
導体が知られている。この種の超電導体に用いられる超
電導化合物層として、ネイチャー,350巻,600
頁,1991年(Nature,350,600,19
91)、ネイチャー,351巻,462頁,1991年
(Nature,351,462,1991)及びネイ
チャー,352巻,787頁,1991年(Natur
e,352,787,1991)には、AX C60の一般
式で示される超電導化合物が示されている。なお、この
超電導化合物において、Aは、K、Cs及びRbからな
る群から選ばれた少なくとも1種の元素である。また、
Xは、0<X<6である。
導体が知られている。この種の超電導体に用いられる超
電導化合物層として、ネイチャー,350巻,600
頁,1991年(Nature,350,600,19
91)、ネイチャー,351巻,462頁,1991年
(Nature,351,462,1991)及びネイ
チャー,352巻,787頁,1991年(Natur
e,352,787,1991)には、AX C60の一般
式で示される超電導化合物が示されている。なお、この
超電導化合物において、Aは、K、Cs及びRbからな
る群から選ばれた少なくとも1種の元素である。また、
Xは、0<X<6である。
【0003】このような超電導体は、次のような工程に
より製造されている。まず、ガラスやKBr基板上にC
60の薄膜を真空蒸着法により形成する。次に、C60の薄
膜に真空蒸着法により上述の元素の蒸気を反応させる。
これにより、元素がC60の分子結晶に固溶し、AX C60
で示される超電導化合物層が形成される。
より製造されている。まず、ガラスやKBr基板上にC
60の薄膜を真空蒸着法により形成する。次に、C60の薄
膜に真空蒸着法により上述の元素の蒸気を反応させる。
これにより、元素がC60の分子結晶に固溶し、AX C60
で示される超電導化合物層が形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記従来の超電導体
は、大気に曝すと超電導化合物層が分解し、超電導性を
喪失してしまうため、真空中又は不活性ガス雰囲気中で
しか使用できない。本発明の目的は、超電導体に関し、
大気中でも使用可能にすることにある。他の目的は、大
気中でも使用可能な超電導体の製造方法を提供すること
にある。
は、大気に曝すと超電導化合物層が分解し、超電導性を
喪失してしまうため、真空中又は不活性ガス雰囲気中で
しか使用できない。本発明の目的は、超電導体に関し、
大気中でも使用可能にすることにある。他の目的は、大
気中でも使用可能な超電導体の製造方法を提供すること
にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る超電導体
は、基材と、基材上に形成された下記の一般式(1)で
示される超電導化合物層と、この超電導化合物層上に形
成されたフタロシアニン系化合物層とを含んでいる。
は、基材と、基材上に形成された下記の一般式(1)で
示される超電導化合物層と、この超電導化合物層上に形
成されたフタロシアニン系化合物層とを含んでいる。
【0006】
【化3】
【0007】本発明に係る超電導体の製造方法は、次の
工程を含んでいる。 ◎基材上にC60分子の結晶性薄膜を形成する工程。 ◎結晶性薄膜にK、Cs及びRbからなる群から選ばれ
た少なくとも1種の金属を蒸着により固溶させ、下記の
一般式(1)で示される超電導物質層を形成する工程。 ◎超電導物質層上にフタロシアニン系化合物を蒸着し、
フタロシアニン系化合物層を形成する工程。
工程を含んでいる。 ◎基材上にC60分子の結晶性薄膜を形成する工程。 ◎結晶性薄膜にK、Cs及びRbからなる群から選ばれ
た少なくとも1種の金属を蒸着により固溶させ、下記の
一般式(1)で示される超電導物質層を形成する工程。 ◎超電導物質層上にフタロシアニン系化合物を蒸着し、
フタロシアニン系化合物層を形成する工程。
【0008】なお、本発明の製造方法では、上述の各工
程を真空中で連続的に行う。
程を真空中で連続的に行う。
【0009】
【化4】
【0010】*******超電導体 本発明に係る超電導体の一例を図1に示す。図におい
て、超電導体1は、基材2と、基材2上に形成された超
電導体化合物層3と、超電導化合物層3上に形成された
フタロシアニン化合物層4とから主に構成されている。
て、超電導体1は、基材2と、基材2上に形成された超
電導体化合物層3と、超電導化合物層3上に形成された
フタロシアニン化合物層4とから主に構成されている。
【0011】基材2は、ニッケル,クロム,チタン,
金,銀,白金等の金属、これらの金属の少なくとも1種
類を主成分とする合金、ガラス,炭素,シリカ,アルミ
ナ,マグネシア,ジルコニア,チタニア,ストロンチウ
ムチタネート,窒化ホウ素,窒化珪素,炭化ケイ素、炭
化ホウ素,窒化アルミニウム等の無機材料、ポリエステ
ル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリスチレン樹脂等の高分子
材料等の室温において、又、空気中及び真空中において
安定な物質である。このような材料からなる基材2の形
状は、繊維状、フィルム状、板状、バルク状等であり、
特に限定されない。
金,銀,白金等の金属、これらの金属の少なくとも1種
類を主成分とする合金、ガラス,炭素,シリカ,アルミ
ナ,マグネシア,ジルコニア,チタニア,ストロンチウ
ムチタネート,窒化ホウ素,窒化珪素,炭化ケイ素、炭
化ホウ素,窒化アルミニウム等の無機材料、ポリエステ
ル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリスチレン樹脂等の高分子
材料等の室温において、又、空気中及び真空中において
安定な物質である。このような材料からなる基材2の形
状は、繊維状、フィルム状、板状、バルク状等であり、
特に限定されない。
【0012】超電導体化合物層3は、AX C60の一般式
で示される超電導化合物からなる層である。なお、一般
式において、AはK、Cs及びRbからなる群から選ば
れた少なくとも1種の元素である。また、Xは0<X<
6である。このような超電導化合物層3の厚みは、通常
0.001〜100μm、好ましくは0.01〜10μ
mに設定される。
で示される超電導化合物からなる層である。なお、一般
式において、AはK、Cs及びRbからなる群から選ば
れた少なくとも1種の元素である。また、Xは0<X<
6である。このような超電導化合物層3の厚みは、通常
0.001〜100μm、好ましくは0.01〜10μ
mに設定される。
【0013】フタロシアニン化合物層4は、フタロシア
ニン、金属フタロシアニン又はこれらの誘導体からなる
層である。金属フタロシアニンとしては、シリコンジク
ロロフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、鉄
フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニ
ン、錫フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、鉛フ
タロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、ニッケル
フタロシアニン、バナジルフタロシアニン等が例示でき
る。また、フタロシアニンの誘導体としては、テトラア
ミノフタロシアニン、テトラtert−ブチルフタロシ
アニン、テトラカルボキシフタロシアニン等が例示でき
る。さらに、金属フタロシアニンの誘導体としては、銅
テトラアミノフタロシアニン,コバルトテトラアミノフ
タロシアニン,バナジルテトラアミノフタロシアニン,
ニッケルテトラアミノフタロシアニン等のテトラアミノ
フタロシアニン金属錯体、鉛テトラtert−ブチルフ
タロシアニン,銅テトラtert−ブチルフタロシアニ
ン,ニッケルテトラtert−ブチルフタロシアニン,
鉄テトラtert−ブチルフタロシアニン,亜鉛テトラ
tert−ブチルフタロシアニン,コバルトテトラte
rt−ブチルフタロシアニン,バナジルテトラtert
−ブチルフタロシアニン,マグネシウムテトラtert
−ブチルフタロシアニン等のテトラtert−ブチルフ
タロシアニン金属錯体、銅テトラカルボキシフタロシア
ニン,コバルトテトラカルボキシフタロシアニン,ニッ
ケルテトラカルボキシフタロシアニン,バナジルテトラ
カルボキシフタロシアニン,鉄テトラカルボキシフタロ
シアニン等のテトラカルボキシフタロシアニン金属錯体
等が例示できる。
ニン、金属フタロシアニン又はこれらの誘導体からなる
層である。金属フタロシアニンとしては、シリコンジク
ロロフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、鉄
フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニ
ン、錫フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、鉛フ
タロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、ニッケル
フタロシアニン、バナジルフタロシアニン等が例示でき
る。また、フタロシアニンの誘導体としては、テトラア
ミノフタロシアニン、テトラtert−ブチルフタロシ
アニン、テトラカルボキシフタロシアニン等が例示でき
る。さらに、金属フタロシアニンの誘導体としては、銅
テトラアミノフタロシアニン,コバルトテトラアミノフ
タロシアニン,バナジルテトラアミノフタロシアニン,
ニッケルテトラアミノフタロシアニン等のテトラアミノ
フタロシアニン金属錯体、鉛テトラtert−ブチルフ
タロシアニン,銅テトラtert−ブチルフタロシアニ
ン,ニッケルテトラtert−ブチルフタロシアニン,
鉄テトラtert−ブチルフタロシアニン,亜鉛テトラ
tert−ブチルフタロシアニン,コバルトテトラte
rt−ブチルフタロシアニン,バナジルテトラtert
−ブチルフタロシアニン,マグネシウムテトラtert
−ブチルフタロシアニン等のテトラtert−ブチルフ
タロシアニン金属錯体、銅テトラカルボキシフタロシア
ニン,コバルトテトラカルボキシフタロシアニン,ニッ
ケルテトラカルボキシフタロシアニン,バナジルテトラ
カルボキシフタロシアニン,鉄テトラカルボキシフタロ
シアニン等のテトラカルボキシフタロシアニン金属錯体
等が例示できる。
【0014】このようなフタロシアニン化合物は、2種
以上が併用されても良い。なお、フタロシアニン化合物
層4の厚みは、通常0.001〜100μm、好ましく
は0.01〜1μmに設定される。次に、前記超電導体
1の製造方法について説明する。まず、基材2を用意す
る。基材2は、上述の材料をフィルム状等の所定形状に
形成すると得られる。なお、基材2は、表面を研磨して
平滑にし、さらに洗浄して油分等による汚れを除去して
おくのが好ましい。
以上が併用されても良い。なお、フタロシアニン化合物
層4の厚みは、通常0.001〜100μm、好ましく
は0.01〜1μmに設定される。次に、前記超電導体
1の製造方法について説明する。まず、基材2を用意す
る。基材2は、上述の材料をフィルム状等の所定形状に
形成すると得られる。なお、基材2は、表面を研磨して
平滑にし、さらに洗浄して油分等による汚れを除去して
おくのが好ましい。
【0015】次に、上述の基材2上にC60分子の結晶性
薄膜を形成する。ここでは、真空蒸着装置や分子線蒸着
装置等を用いて基板2上にC60分子を蒸着する。これら
の装置を用いてC60分子を蒸着する際には、C60分子の
粉末もしくは塊を10-3Torr以下の圧力下において
250〜450℃に加熱する。ここで、設定圧力を10
-3Torrよりも高く設定すると、C60分子が酸化され
易くなり、超電導膜が形成できない場合がある。また、
加熱温度を250℃以下に設定すると、C60分子の蒸発
量が少なくなり、C60の結晶性薄膜が形成されにくい。
逆に、加熱温度を450℃より高く設定すると、昇温過
程においてC60分子全てが蒸発してしまう場合がある。
薄膜を形成する。ここでは、真空蒸着装置や分子線蒸着
装置等を用いて基板2上にC60分子を蒸着する。これら
の装置を用いてC60分子を蒸着する際には、C60分子の
粉末もしくは塊を10-3Torr以下の圧力下において
250〜450℃に加熱する。ここで、設定圧力を10
-3Torrよりも高く設定すると、C60分子が酸化され
易くなり、超電導膜が形成できない場合がある。また、
加熱温度を250℃以下に設定すると、C60分子の蒸発
量が少なくなり、C60の結晶性薄膜が形成されにくい。
逆に、加熱温度を450℃より高く設定すると、昇温過
程においてC60分子全てが蒸発してしまう場合がある。
【0016】なお、C60分子の蒸着工程は、基材2を加
熱しながら実施しても良い。この場合、基材2の加熱温
度は、50〜250℃に設定するのが好ましい。次に、
基材2上に形成したC60分子の結晶性薄膜に、K、Cs
及びRbからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素
の蒸着を行う。ここでは、K、Cs、Rbの元素がC60
分子の結晶性薄膜中に固溶し、上に示したAX C60の超
電導化合物が形成される。
熱しながら実施しても良い。この場合、基材2の加熱温
度は、50〜250℃に設定するのが好ましい。次に、
基材2上に形成したC60分子の結晶性薄膜に、K、Cs
及びRbからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素
の蒸着を行う。ここでは、K、Cs、Rbの元素がC60
分子の結晶性薄膜中に固溶し、上に示したAX C60の超
電導化合物が形成される。
【0017】この工程では、真空蒸着装置、分子線蒸着
装置、電子ビーム蒸着装置、スパッタリング装置等を用
いることができる。但し、後述のフタロシアニン化合物
層4を形成するための工程は真空を保ったまま行う必要
があるため、これが可能な装置を用いる必要がある。上
述の元素の蒸着工程では、基材2の温度を100〜20
0℃に設定するのが好ましい。また、設定圧力は、10
-3Torr以下に設定するのが好ましい。設定圧力を1
0-3Torrよりも高くは設定すると、C60の結晶性薄
膜やK,Cs,Rb加熱温度が酸化され易くなり、超電
導化合物層3が形成できない場合がある。また、K、C
s及びRbの加熱温度は、それぞれ300〜400℃、
280〜350℃及び300〜400℃に設定するのが
好ましい。加熱温度がこれらの温度範囲以下の場合は、
蒸着速度が低下し、超電導化合物層3の形成に長時間を
要する。逆に、加熱温度がこれらの温度範囲を超える場
合は、蒸着速度が速くなり過ぎ、元素がC60分子の結晶
性薄膜に固溶しにくくなる。この結果、均質な超電導化
合物層3が得られなくなる。
装置、電子ビーム蒸着装置、スパッタリング装置等を用
いることができる。但し、後述のフタロシアニン化合物
層4を形成するための工程は真空を保ったまま行う必要
があるため、これが可能な装置を用いる必要がある。上
述の元素の蒸着工程では、基材2の温度を100〜20
0℃に設定するのが好ましい。また、設定圧力は、10
-3Torr以下に設定するのが好ましい。設定圧力を1
0-3Torrよりも高くは設定すると、C60の結晶性薄
膜やK,Cs,Rb加熱温度が酸化され易くなり、超電
導化合物層3が形成できない場合がある。また、K、C
s及びRbの加熱温度は、それぞれ300〜400℃、
280〜350℃及び300〜400℃に設定するのが
好ましい。加熱温度がこれらの温度範囲以下の場合は、
蒸着速度が低下し、超電導化合物層3の形成に長時間を
要する。逆に、加熱温度がこれらの温度範囲を超える場
合は、蒸着速度が速くなり過ぎ、元素がC60分子の結晶
性薄膜に固溶しにくくなる。この結果、均質な超電導化
合物層3が得られなくなる。
【0018】この工程において、上述の一般式(1)の
Xは、K等の元素の蒸着膜の堆積膜厚を調整することに
より所定の範囲に設定できる。例えば、K6 C60の超電
導物質層3を形成する場合は、厚さ100オングストロ
ームのC60分子の結晶性薄膜に対し、Kを厚さが11オ
ングストロームになるよう蒸着する。なお、元素の蒸着
膜の膜厚は、エリプソメーターにより測定できる。
Xは、K等の元素の蒸着膜の堆積膜厚を調整することに
より所定の範囲に設定できる。例えば、K6 C60の超電
導物質層3を形成する場合は、厚さ100オングストロ
ームのC60分子の結晶性薄膜に対し、Kを厚さが11オ
ングストロームになるよう蒸着する。なお、元素の蒸着
膜の膜厚は、エリプソメーターにより測定できる。
【0019】なお、このような元素の蒸着工程は、C60
分子の結晶性薄膜の形成工程と同時に行っても良い。次
に、上述の工程で形成された超電導化合物層3上にフタ
ロシアニン化合物層4を形成する。ここでは、フタロシ
アニン、金属フタロシアニン又はこれらの誘導体を超電
導化合物層3上に蒸着する。この蒸着は、真空蒸着装置
や分子線蒸着装置等を用いて行える。蒸着条件は、圧力
を10-3Torr以下に設定し、上述のフタロシアニン
化合物の粉末又は塊の加熱温度を250〜450℃に設
定するのが好ましい。設定圧力を10-3Torrよりも
高く設定すると、蒸着時にフタロシアニン化合物が酸化
され易くなり、安定な超電導体1が形成できない場合が
ある。また、加熱温度を250℃未満に設定すると、フ
タロシアニン化合物の蒸発量が少なくなり、フタロシア
ニン化合物層4が形成されにくい。逆に、加熱温度を4
50℃より高く設定すると、昇温過程においてフタロシ
アニン化合物の全てが蒸発してしまう場合がある。
分子の結晶性薄膜の形成工程と同時に行っても良い。次
に、上述の工程で形成された超電導化合物層3上にフタ
ロシアニン化合物層4を形成する。ここでは、フタロシ
アニン、金属フタロシアニン又はこれらの誘導体を超電
導化合物層3上に蒸着する。この蒸着は、真空蒸着装置
や分子線蒸着装置等を用いて行える。蒸着条件は、圧力
を10-3Torr以下に設定し、上述のフタロシアニン
化合物の粉末又は塊の加熱温度を250〜450℃に設
定するのが好ましい。設定圧力を10-3Torrよりも
高く設定すると、蒸着時にフタロシアニン化合物が酸化
され易くなり、安定な超電導体1が形成できない場合が
ある。また、加熱温度を250℃未満に設定すると、フ
タロシアニン化合物の蒸発量が少なくなり、フタロシア
ニン化合物層4が形成されにくい。逆に、加熱温度を4
50℃より高く設定すると、昇温過程においてフタロシ
アニン化合物の全てが蒸発してしまう場合がある。
【0020】なお、このようなフタロシアニン化合物層
4の形成工程において、基材2は加熱しないのが好まし
い。基材2を加熱すると、超電導体1の超電導特性が不
安定になる場合がある。例えば、超電導への転移がシャ
ープでなくなったり、空気中で不安定になる場合があ
る。本発明の超電導体1は、上述のように超電導化合物
層3上にフタロシアニン化合物層4を形成したので、大
気中でも安定に使用できる。
4の形成工程において、基材2は加熱しないのが好まし
い。基材2を加熱すると、超電導体1の超電導特性が不
安定になる場合がある。例えば、超電導への転移がシャ
ープでなくなったり、空気中で不安定になる場合があ
る。本発明の超電導体1は、上述のように超電導化合物
層3上にフタロシアニン化合物層4を形成したので、大
気中でも安定に使用できる。
【0021】
【実施例】実施例1 3つの分子線源室と1つの成長室とを備え、各分子線源
室と成長室とが独立したゲートバルブにより分離された
分子線蒸着装置を用いて超電導体を製造した。ここで
は、2つの分子線源室にそれぞれC60の粉末及びフタロ
シアニンの粉末0.1gを収容した。そして、これらの
粉末を、100℃に加熱しながら液体窒素トラップを有
する油拡散式真空ポンプを用いて20時間真空引きし
た。また、残りの分子線源室には、アンプルに封入され
たカリウムを収容した。そして、真空引きした後に真空
中でアンプルを割り、カリウムの蒸着源とした。
室と成長室とが独立したゲートバルブにより分離された
分子線蒸着装置を用いて超電導体を製造した。ここで
は、2つの分子線源室にそれぞれC60の粉末及びフタロ
シアニンの粉末0.1gを収容した。そして、これらの
粉末を、100℃に加熱しながら液体窒素トラップを有
する油拡散式真空ポンプを用いて20時間真空引きし
た。また、残りの分子線源室には、アンプルに封入され
たカリウムを収容した。そして、真空引きした後に真空
中でアンプルを割り、カリウムの蒸着源とした。
【0022】一方、成長室には、抵抗測定用に表面にス
トライプ状に金が蒸着されたシリコンウエハーを配置し
た。このように準備をした分子線蒸着装置において、C
60の粉末を350℃に加熱し、その粉末が収納された分
子線源室と成長室との間のゲートバルブを開放してシリ
コンウエハーに対してC60の蒸着を開始した。この際、
成長室内の圧力は、クライオポンプ、イオンポンプ及び
液体窒素シュラウドを用いて排気することにより3×1
0-10 Torrに設定した。C60の堆積膜厚を水晶振動
式膜厚計を用いてモニタし、堆積膜厚が50オングスト
ロームになったところでC60の蒸着を停止した。
トライプ状に金が蒸着されたシリコンウエハーを配置し
た。このように準備をした分子線蒸着装置において、C
60の粉末を350℃に加熱し、その粉末が収納された分
子線源室と成長室との間のゲートバルブを開放してシリ
コンウエハーに対してC60の蒸着を開始した。この際、
成長室内の圧力は、クライオポンプ、イオンポンプ及び
液体窒素シュラウドを用いて排気することにより3×1
0-10 Torrに設定した。C60の堆積膜厚を水晶振動
式膜厚計を用いてモニタし、堆積膜厚が50オングスト
ロームになったところでC60の蒸着を停止した。
【0023】次に、C60の薄膜が形成されたシリコンウ
エハーを200℃に加熱しながら、同様の操作によりカ
リウムの蒸着を行った。この際、C60薄膜の抵抗値をモ
ニタしながら蒸着操作を行い、抵抗値が下がらなくなっ
たところで蒸着を停止した。これによりK3 C60の超電
導化合物層が得られた。次に、同様の操作により、得ら
れた超電導化合物層上にフタロシアニンの蒸着を実施し
た。フタロシアニンの堆積膜厚は500オングストロー
ムに設定した。これにより、超電導体が得られた。
エハーを200℃に加熱しながら、同様の操作によりカ
リウムの蒸着を行った。この際、C60薄膜の抵抗値をモ
ニタしながら蒸着操作を行い、抵抗値が下がらなくなっ
たところで蒸着を停止した。これによりK3 C60の超電
導化合物層が得られた。次に、同様の操作により、得ら
れた超電導化合物層上にフタロシアニンの蒸着を実施し
た。フタロシアニンの堆積膜厚は500オングストロー
ムに設定した。これにより、超電導体が得られた。
【0024】この超電導体を空気中に取り出して放置し
た後に超電導転移温度を測定した所、18Kであった。実施例2 カリウムに代えてルビジウムを用いた点を除き、実施例
1と同様に超電導体を製造した。ここでは、Rb3 C60
の超電導化合物層を含む超電導体が得られた。この超電
導体の超電導転移温度は、実施例1と同様に測定した
所、29Kであった。実施例3 カリウムの蒸着に代えて、カリウムとルビジウムとが原
子数比で2:1となるように蒸着した点を除き、実施例
1と同様に超電導体を製造した。なお、カリウムとルビ
ジウムは、それぞれ別々の分子線源室に入れ、実施例1
のカリウムと同様に蒸着処理した。この実施例では、K
2 Rb1 C60の超電導化合物層を含む超電導体が得られ
た。
た後に超電導転移温度を測定した所、18Kであった。実施例2 カリウムに代えてルビジウムを用いた点を除き、実施例
1と同様に超電導体を製造した。ここでは、Rb3 C60
の超電導化合物層を含む超電導体が得られた。この超電
導体の超電導転移温度は、実施例1と同様に測定した
所、29Kであった。実施例3 カリウムの蒸着に代えて、カリウムとルビジウムとが原
子数比で2:1となるように蒸着した点を除き、実施例
1と同様に超電導体を製造した。なお、カリウムとルビ
ジウムは、それぞれ別々の分子線源室に入れ、実施例1
のカリウムと同様に蒸着処理した。この実施例では、K
2 Rb1 C60の超電導化合物層を含む超電導体が得られ
た。
【0025】得られた超電導体の超電導転移温度を実施
例1と同様に測定したところ、32Kであった。実施例4 カリウムとルビジウムとの原子数比を1:2に設定した
点を除き、実施例3と同様に超電導体を製造した。この
実施例では、K1 Rb2 C60の超電導化合物層を含む超
電導体が得られた。この超電導体の超電導転移温度は、
実施例1と同様に測定したところ、21Kであった。実施例5 カリウムに代えてセシウムを用い、実施例3と同様の超
電導体を製造した。この実施例では、Cs3 C60の超電
導化合物層を含む超電導体が得られた。この超電導体の
超電導転移温度は、実施例1と同様に測定した所、31
Kであった。
例1と同様に測定したところ、32Kであった。実施例4 カリウムとルビジウムとの原子数比を1:2に設定した
点を除き、実施例3と同様に超電導体を製造した。この
実施例では、K1 Rb2 C60の超電導化合物層を含む超
電導体が得られた。この超電導体の超電導転移温度は、
実施例1と同様に測定したところ、21Kであった。実施例5 カリウムに代えてセシウムを用い、実施例3と同様の超
電導体を製造した。この実施例では、Cs3 C60の超電
導化合物層を含む超電導体が得られた。この超電導体の
超電導転移温度は、実施例1と同様に測定した所、31
Kであった。
【0026】上述の各実施例から、本発明の超電導体
は、空気中に配置しても超電導性を喪失しないことが確
認できた。
は、空気中に配置しても超電導性を喪失しないことが確
認できた。
【0027】
【発明の効果】本発明に係る超電導体は、超電導化合物
層上にフタロシアニン系化合物層を形成したので、大気
中でも使用できる。本発明に係る超電導体の製造方法に
よれば、超電導物質層上にフタロシアニン系化合物層を
形成する工程を含んでいるため、大気中でも使用可能な
超電導体が製造できる。
層上にフタロシアニン系化合物層を形成したので、大気
中でも使用できる。本発明に係る超電導体の製造方法に
よれば、超電導物質層上にフタロシアニン系化合物層を
形成する工程を含んでいるため、大気中でも使用可能な
超電導体が製造できる。
【図1】本発明に係る超電導体の一例の縦断面図。
1 超電導体 2 基材 3 超電導化合物層 4 フタロシアニン化合物層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石谷 炯 滋賀県大津市園山3丁目3番7号 株式会 社東レリサーチセンター内
Claims (2)
- 【請求項1】基材と、 前記基材上に形成された下記の一般式(1)で示される
超電導化合物層と、 前記超電導化合物層上に形成されたフタロシアニン系化
合物層と、を含む超電導体。 【化1】 - 【請求項2】基材上にC60分子の結晶性薄膜を形成する
工程と、 前記結晶性薄膜にK、Cs及びRbからなる群から選ば
れた少なくとも1種の金属を蒸着により固溶させ、下記
の一般式(1)で示される超電導物質層を形成する工程
と、 前記超電導物質層上にフタロシアニン系化合物を蒸着
し、フタロシアニン系化合物層を形成する工程とを含
み、 前記各工程を真空中で連続的に行う、超電導体の製造方
法。 【化2】
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17813492A JPH0625829A (ja) | 1992-07-06 | 1992-07-06 | 超電導体及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17813492A JPH0625829A (ja) | 1992-07-06 | 1992-07-06 | 超電導体及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0625829A true JPH0625829A (ja) | 1994-02-01 |
Family
ID=16043249
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17813492A Pending JPH0625829A (ja) | 1992-07-06 | 1992-07-06 | 超電導体及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0625829A (ja) |
-
1992
- 1992-07-06 JP JP17813492A patent/JPH0625829A/ja active Pending
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