JPH06235560A - 水素吸蔵合金利用移動体 - Google Patents

水素吸蔵合金利用移動体

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JPH06235560A
JPH06235560A JP31821893A JP31821893A JPH06235560A JP H06235560 A JPH06235560 A JP H06235560A JP 31821893 A JP31821893 A JP 31821893A JP 31821893 A JP31821893 A JP 31821893A JP H06235560 A JPH06235560 A JP H06235560A
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hydrogen
hydrogen storage
storage alloy
pressure
heat
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JP31821893A
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English (en)
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Koji Gamo
孝治 蒲生
Noboru Taniguchi
昇 谷口
Junji Niikura
順二 新倉
Kazuhito Hado
一仁 羽藤
Eiichi Yasumoto
栄一 安本
Kinichi Adachi
欣一 足立
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 急速に加熱冷却することが可能な、低公害で
省エネルギーな加熱冷却装置を有する移動体を提供す
る。 【構成】 複数の水素解離平衡圧の異なる水素吸蔵合金
20、21及び22を個別に収納した複数の水素吸蔵合
金貯蔵容器38、24および25と、それぞれの水素吸
蔵合金貯蔵容器の水素を相互に移動可能にする連通結合
手段39と、水素吸蔵合金のうち最も低い水素平衡解離
圧を有する低圧水素貯蔵合金20を移動体のエンジン3
または外燃機関の燃料燃焼熱を熱源として加熱する手段
31、37及び29とを有し、水素吸蔵合金の反応熱を
利用して移動体内の空気または移動体の部品を加熱する
水素吸蔵合金利用移動体であって、連通結合手段39が
水素ガス貯蔵容器26を有する水素合金利用移動体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水素吸蔵合金を利用し
た移動体に関する。特に、移動体用加熱冷却装置に水素
吸蔵合金を利用する移動体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の移動体用加熱冷却装置としては、
エンジンの回転駆動部分の一部からファンベルトなどに
よって動力を取り出し、フロン等を使用した圧縮機を動
作させる電動圧縮機型、または蓄電池を充電ながら蓄電
池の電力を使用する電動圧縮機型、スターリングエンジ
ンなど外熱を駆動源として利用する外熱機関蒸気圧縮型
の加熱冷却装置が主に用いられいる。また、移動体の部
品を個別に加熱するためには、電気ヒータによる抵抗加
熱装置が主に用いられている。一方、移動体の部品を個
別に冷却する簡単な加熱冷却装置は無かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のエンジン回転動
力を利用する電動圧縮型の加熱冷却装置は、エンジンに
負荷をかけるためエンジンの効率を低下させる。また、
圧縮機型の冷却装置は、冷媒として特定フロン、自動車
の冷房装置用のフロンにはR12、冷蔵庫用のフロンに
はR22、を用いるので、オゾン層破壊するという公害
問題を発生している。さらに、圧縮機型の加熱冷却装置
は、振動部分を有するので、振動や騒音を発生するとい
う問題がある。蓄電池を利用する電動圧縮型の加熱冷却
装置は、蓄電池の消耗を早め、加熱または冷房能力が蓄
電池の電気容量に依存するので、加熱冷却能力を高める
ためには大容量の蓄電池を必要とする。外熱蒸気圧縮型
の加熱冷却装置は、エンジンの排熱を有効利用するとい
う利点を有しているが、数十気圧になる外熱機関内部の
圧力に耐えるために、加工精度に高い精密性と気密性が
必要とされるので、製造コストが高いという問題があ
る。
【0004】一方、キャンピングカーなどの自動車を使
用した屋外レジャーが盛んになるにつれて、ポータブル
用冷蔵庫や冷凍庫の需要が大きくなっている。また、夏
季に、移動体の部品、特にハンドルの表面が高温になる
ので、運転開始時に部品を早急に冷却できる冷却装置が
要望されている。また、冬季に、短時間で移動体の室内
暖房や移動体の座席を暖房できる加熱装置が切望されて
いる。
【0005】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたも
のであり、その目的とするところは、低公害で省エネル
ギーな加熱冷却装置を有する移動体を提供することにあ
り、さらに、急速に加熱冷却することが可能な、低公害
で省エネルギーな加熱冷却装置を有する移動体を提供す
ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による水素吸蔵合
金利用移動体は、複数の水素解離平衡圧の異なる水素吸
蔵合金を個別に収納した複数の水素吸蔵合金貯蔵容器
と、該水素吸蔵合金貯蔵容器の水素を相互に移動可能に
する連通結合手段と、該水素吸蔵合金のうち最も低い水
素平衡解離圧を有する低圧水素貯蔵合金を移動体のエン
ジンまたは外燃機関の燃料燃焼熱を熱源として加熱する
手段とを有し、該加熱手段によって該低圧水素貯蔵合金
を加熱し、該低圧水素貯蔵合金から放出された水素を該
低圧水素貯蔵合金の水素解離平衡圧よりも高い水素解離
平衡圧を有する高圧水素吸蔵合金に水素を吸蔵させ、該
高圧水素吸蔵合金の水素放出時の吸熱反応を利用して移
動体の部品を冷却、または、該高圧水素吸蔵合金から放
出させた水素を該低圧水素吸蔵合金に吸蔵させて水素吸
蔵時の発熱反応を利用して移動体の部品を加熱する水素
吸蔵合金利用移動体であって、該連通結合手段が、水素
ガス貯蔵容器を有することによって、上記目的が達成さ
れる。
【0007】本発明の他の局面では、少なくとも3種類
の水素解離平衡圧の異なる水素吸蔵合金を個別に収納し
た少なくとも3個の水素吸蔵合金貯蔵容器と、該水素吸
蔵合金貯蔵容器の水素を相互に移動可能にする連通結合
手段と、該水素吸蔵合金のうち最も低い水素平衡解離圧
を有する低圧水素貯蔵合金を移動体のエンジンまたは外
燃機関の燃料燃焼熱を熱源として加熱する手段とを有
し、該加熱手段によって該低圧水素貯蔵合金を加熱し、
該低圧水素貯蔵合金から放出された水素を該低圧水素貯
蔵合金の水素解離平衡圧よりも高い水素解離平衡圧を有
する高圧水素吸蔵合金に水素を吸蔵させ、該高圧水素吸
蔵合金の水素放出時の吸熱反応を利用して移動体の部品
を冷却、または、該高圧水素吸蔵合金から放出させた水
素を該低圧水素吸蔵合金に吸蔵させて水素吸蔵時の発熱
反応を利用して移動体の部品を加熱するこのとによっ
て、上記目的が達成される。
【0008】また、ある実施例では、前記水素吸蔵合金
貯蔵容器の熱容量が、内部に貯蔵する前記水素吸蔵合金
の熱容量以下であってもよい。
【0009】
【作用】以上述べたように、本発明は、移動体の排熱を
利用して、水素吸蔵合金ヒートポンプを駆動し、水素吸
蔵合金の吸蔵熱や放出熱を移動体内の空調や移動体の部
品の加熱冷却に利用し、水素吸蔵合金ヒートポンプの水
素経路中に、水素ガス貯蔵容器を設けることにより、さ
らに、水素吸蔵合金ヒートポンプの熱を出力する水素吸
蔵合金と加熱冷却の対象である移動体の部品とを直接熱
交換するように配設することにより、低公害で省エネル
ギーでしかも、急速な加熱冷却が可能な加熱冷却装置を
有する移動体を提供する。
【0010】
【実施例】以下に、実施例について、図及び表を参照し
ながら本発明を説明する。
【0011】(実施例1)ある種の金属または合金は、
約−100℃〜約+700℃の広範囲な温度領域で極め
て大量の水素を、迅速に可逆的に吸蔵または放出する。
これらの金属または合金は、水素吸蔵合金と呼ばれる。
水素吸蔵合金は、水素の吸蔵及び放出に伴い、大量の反
応熱、吸熱または発熱、を生成する。一般に、この反応
熱は、水素吸蔵時には、発熱(周囲を加熱)、水素放出
時には吸熱(周囲を冷却)である。この原理に基づい
て、水素吸蔵合金を利用した加熱冷却装置、例えば水素
吸蔵合金ヒートポンプ等を構成することが可能である。
すなわち、水素平衡解離圧の異なる2種類の水素吸蔵合
金、低圧水素吸蔵合金と高圧水素吸蔵合金、を組合せる
と、水素平衡解離圧力差によって水素は一方の合金から
他方の合金へ移動する。水素平衡解離圧は、水素吸蔵合
金のP−C−T(圧力−濃度−温度)特性におけるプラ
トー圧として知られている。上述の水素移動の結果、そ
れぞれの水素吸蔵合金は、水素放出時の吸熱(冷房)ま
たは水素吸蔵時の発熱(暖房)を発生する。この反応熱
を移動体の加熱または冷却に利用することができる。こ
の2種類の水素吸蔵合金の組を2組以上組合せ、それぞ
れの動作サイクルをずらすことによって、連続的な熱エ
ネルギー変換サイクルを構成することが可能である。
【0012】水素吸蔵合金を用いたヒートポンプは、熱
増幅、冷却及び加熱を行うことができる。また、このヒ
ートポンプは、−100℃〜+700℃程度の広い温度
範囲で動作できるので、太陽熱等の低中温の熱から工業
排熱及びエンジン排熱などの高温の熱まで、各種温度の
熱を幅広く利用することができる。さらに、クリーンで
低公害、しかも静かな熱機関である。
【0013】ヒートポンプの成績係数(COP)は、系
に加えた熱量に対して利用できる熱量の比で表され、例
えば冷凍サイクルでは、数1で表される。
【0014】
【数1】
【0015】ここで、ΔHは、水素吸蔵合金の吸蔵熱ま
たは放出熱で、Cpは熱容量、それぞれの下付き文字1及
び2は、各々2種の合金についての物理量であることを
示す。TH、TM、及びTL は、それぞれ、高温、中温及び
低温の温度を示す。式1に示したCOPを大きくするた
めに、吸収式冷凍機などにおいて多重効用型も提案され
ている。
【0016】まず最初に、種々の水素吸蔵合金を用い
て、ヒートポンプ装置を作製し、水素吸蔵合金の諸特性
を調べた。評価に用いた水素吸蔵合金ヒートポンプは、
図1に示す基本サイクルで表される動作を行う。図1
は、2種類の水素吸蔵合金、低圧水素吸蔵合金MH1
び高圧水素吸蔵合金MH2について、絶対温度の逆数と
水素平衡解離圧の関係を示すP−T線図であり、水素吸
蔵合金ヒートポンプの動作状態を示している。図1中、
低圧側(高温側)の実線は、低圧水素吸蔵合金MH1
動作を、高圧側(低温側)の実線は、高圧水素吸蔵合金
MH2の動作を、それぞれ表す。a点は、低圧水素吸蔵
合金MH1が水素を吸蔵している水素吸蔵動作(発熱)
点、b点は、移動体の高温排熱などで加熱された低圧水
素吸蔵合金MH 1が水素を放出している動作(吸熱)
点、c点は高圧水素吸蔵合金MH2が水素を吸蔵してい
る水素吸蔵動作(発熱)点、d点は、高圧水素吸蔵合金
MH2が低圧水素吸蔵合金MH1に水素を放出している水
素放出動作(冷却)点である。本発明のヒートポンプ
は、図1のd点における高圧水素吸蔵合金MH2の吸熱
反応を冷却に、a点における低圧水素吸蔵合金MH1
発熱反応を加熱に、利用したものである。ここで、ΔP
H1、ΔPH2は、各々、水素吸蔵合金の反応開始時の差圧
を、PH(最高温度での最大圧)、PM(周囲温度での高
圧水素吸蔵合金MH2の動作圧)、PL(周囲温度での
低圧水素吸蔵合金MH1の動作圧)、Pc(冷却温度での
高圧水素吸蔵合金MH2の動作圧)は、各動作点での水
素圧力を示す。
【0017】種々の水素吸蔵合金について、図1の、a
→b→c→d→aの右回りサイクルを使用した種々の実
験を行い、水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出反応の反応速
度、反応熱(吸熱・発熱)量、有効水素吸蔵・放出量、
水素平衡解離圧の安定性、ヒステリシス性、耐久性など
を評価した。上記実験結果及び水素吸蔵合金の均質性や
コストの観点から、本発明に用いられる水素吸蔵合金と
して、一般式ABα(ただし、AはTi,Zr,Hfか
ら選んだ1種または2種以上の元素,BはMn,V,F
e,Ni,Cr,Co,Cu,Zn,Al,Si,N
b,Mo,W,Mg,Ca,Y,Ta,Pd,Ag,A
u,Cd,In,Sn,Bi,La,Ce,Mm,P
r,Nd,Th,Smから選んだ1種または2種以上の
元素、α=1.3〜2.9、Mmは希土類元素(ランタ
ノイド)の混合物を示し,またAとBは異種元素)で表
され、結晶構造が六方晶系のC14(MgZn2)型ま
たは立方晶系のC15(MgCu2)型に属するラーベ
ス相合金、および結晶構造がAB5型(AとBは異種元
素)、特にCaCu5型に属するCa系またはMm系合
金が、優れていることを見いだした。これらの合金は7
00℃以下の温度で、迅速に、容易に多量の水素を可逆
的に吸蔵・放出し、反応熱も大きかった。
【0018】図2は、本発明の第1の実施例の水素吸蔵
合金ヒートポンプシステム構成の概略を示している。本
実施例の水素吸蔵合金ヒートポンプシステムは、水素平
衡解離圧の異なる2種類の水素吸蔵合金、低圧水素吸蔵
合金MH1及び高圧水素吸蔵合金MH2の組合せを2組用
いる。すなわち、図2の低圧水素吸蔵合金MH11aと
高圧水素吸蔵合金MH22a、及び低圧水素吸蔵合金M
11bと高圧水素吸蔵合金MH22bを用いている。そ
れぞれの組は、水素導通管4a、4bによって連通結合
されている。低圧水素吸蔵合金MH11a、1bと高圧
水素吸蔵合金MH22a、2bは、それぞれ、熱交換機
能を有する水素吸蔵合金貯蔵容器5a、5bと6a、6
bに貯蔵されている。水素導通管4aと水素吸蔵合金貯
蔵容器5a、6a及び水素導通管4bと水素吸蔵合金貯
蔵容器5b、6bとの結合部には、それぞれ、水素吸蔵
合金粉末の流出を防止するためのフィルタ12a、12
bが設けてある。また、水素導通管4a及び4bには、
水素流量調節弁7a及び7bがそれぞれ設けられてい
る。低圧水素吸蔵合金MH11aには、移動体のエンジ
ン3の排熱を導入するための加熱用熱媒体管11が設け
られている。低圧水素吸蔵合金MH12aには、合金M
12aで発生する熱を放出するために放熱用熱媒体管
10が設けられている。高圧水素吸蔵合金MH22aに
は、合金MH22aで発生する熱を放出するために放熱
用ファンが設けられている。高圧水素吸蔵合金MH2
bには、高圧水素吸蔵合金MH22bで発生された冷熱
を移動体の室内に導くための冷気送風用ファン9を備え
ている。
【0019】図2中の符号a,b,c及びdは、図1中
の各動作点、a点、b点、c点及びd点の状態に対応す
ることを示している。また、図2中の矢印は水素の流れ
の方向を示している。それぞれの組の動作サイクル(a
→b→c→d→aが1サイクル)を半サイクルずらすこ
とによって、連続運転が可能な水素吸蔵合金ヒートポン
プシステムを得た。図2中の、上段の低圧水素吸蔵合金
MH11aと高圧水素吸蔵合金MH22aの組は、b→c
の動作を行っており、下段の低圧水素吸蔵合金MH1
bと高圧水素吸蔵合金MH22bの組は、d→aの動作
を行っている。図2中では、それぞれの動作に寄与しな
い部品は、簡単のために省略してある。実質的に、いず
れの組も等価な構成を有している。
【0020】図2の水素吸蔵合金ヒートポンプシステム
の動作の概略を以下に説明する。まず、低圧水素吸蔵合
金MH1を、エンジン3の排ガスを熱源として加熱す
る。低圧水素吸蔵合金MH1から放出された水素を高圧
水素吸蔵合金MH2に吸蔵させる。この過程で発生する
熱は、放熱用ファンで除去される(図2中の上段の動
作)。続いて、放熱用熱媒体管を用いて低圧水素吸蔵合
金MH1を冷却し、高圧水素吸蔵合金MH2から水素を放
出させ、水素放出時にMH2が発生する冷熱を、冷気送
風用ファンを用いて、移動体の室内の冷却に利用する
(図2中下段の動作)。
【0021】低圧水素吸蔵合金MH11a及び1bに
は、ZrMn1.5Cr0.5を26kg、高圧水素吸蔵合金
MH22a及び2bには、Ti0.8Zr0.2Mn0.8Cr
0.8Cu0 .4を22kg使用した。水素吸蔵合金MH1
びMH2 は、共に結晶系が六方晶系のC14型ラーベス
相に属する合金である。各水素吸蔵合金は機械的に平均
粒径100μmに粉砕し、ボイド率が約50%となるよ
うに、それぞれ、熱交換機能を有する水素吸蔵合金貯蔵
容器5a、5b、6a及び6bに収納した。
【0022】水素吸蔵合金の水素親和力を高めるための
初期活性化は、2種類の合金毎に独立に行った。水素吸
蔵合金を室温で、油回転ポンプを用いて約3時間排気
し、その後45気圧の圧力で水素を充填する操作を繰り
返した。いずれの合金も、約1時間以内に容易に水素を
吸蔵し、最高吸蔵量はH/M(水素原子数/合金原子
数)=1.1であった。次いで、低圧水素吸蔵合金MH
1の水素量がH/M=0.9になるように水素を充填し
た。
【0023】熱源にはエンジン3の排気ガスを使用し
た。この時の熱源温度は約500℃、エネルギー量は
3.5kwまで得られるが、本実施例では、排気ガスの
温度を約400℃に低下させて、低圧水素吸蔵合金MH
1に供給した。低圧水素吸蔵合金MH1として用いたZr
Mn1.5Cr0.5の400℃における水素平衡解離圧は約
35気圧であった。低圧水素吸蔵合金MH1及び高圧水
素吸蔵合金MH2をそれぞれ熱媒体管10、放熱ファン
8を用いて、外気によって冷却すると、45℃まで冷却
することができた。低圧水素吸蔵合金MH1の45℃に
おける水素吸蔵圧は0.01気圧、高圧水素吸蔵合金M
2の45℃における吸蔵圧力は16気圧であった。ま
た、高圧水素吸蔵合金MH2の冷却時の吹き出し温度は
0℃であり、高圧水素吸蔵合金MH2用貯蔵容器の温度
は−5℃で、水素平衡解離圧は2気圧であった。高圧水
素吸蔵合金MH2の冷却反応熱は約50kcal/kg
であった。見かけの合金比重は約3.0で、容器のボイ
ド率(水素吸蔵合金以外の空間率)は50%で、水素吸
蔵合金貯蔵容器の体積は約20リットルであった。
【0024】ここで、水素吸蔵合金貯蔵容器のボイド率
について述べる。ボイド率が40%未満では、水素吸蔵
合金の水素吸蔵による体積膨張(約15%以上)、及び
反応熱による急激な加熱のため、サイクルを繰り返すと
水素吸蔵合金粉末が固結化焼結し、水素吸蔵合金貯蔵容
器の破壊を発生し易い。また、水素吸蔵合金の水素吸蔵
時の体積膨張を阻害するので、水素吸蔵能力も低下し
た。一方、ボイド率が75%を越えると、水素吸蔵合金
貯蔵容器の熱容量に対する水素吸蔵合金の熱容量の割合
が小さくなり、ヒートポンプの成績係数(COP)が減
少し、熱利用効率および経済性が大幅に低下した。従っ
て、ボイド率は40%以上、75%以下が好適である。
【0025】また、本実施例の場合の各水素吸蔵合金と
各水素吸蔵合金貯蔵容器の熱容量の比は、(水素吸蔵合
金貯蔵容器の熱容量)/(水素吸蔵合金の熱容量)の比
が1.0以下でないと貯蔵容器自体の加熱・冷却に多くの
熱量を要し、COPが低く、実用上経済的に不適当であ
ることがわかった。
【0026】ヒートポンプのサイクル時間(運転速度)
と冷却特性との関係について、検討した結果を(表1)
に示す。表から理解できるように、運転速度を遅く(サ
イクル時間を長く)すればするほど、COPは高くなっ
た。しかしながら、運転速度を遅くし過ぎると、単位時
間当りの冷却出力はかえって低下した。水素吸蔵合金の
反応速度の観点からは、反応速度を上昇することは、ヒ
ートポンプの運転速度を低下させることに対応する。従
って、反応速度の速い水素吸蔵合金を用いると、COP
は高くなるので、合金の量を少なくできるが、反応速度
が速過ぎると、単位時間当りの冷却出力はかえって低下
する。本実施例については、3サイクル/h(20分で
1サイクル)の運転速度で、時間当りの冷却出力が36
69kcal/hで最高となり、3サイクル/時間〜6
サイクル/時間で運転した場合に、熱交換効率が高いこ
とがわかった。
【0027】
【表1】
【0028】(実施例2)図11は、本発明の第2の実
施例の水素吸蔵合金利用移動体の構成を示す。スターリ
ングエンジン43の排熱を利用し、低圧吸蔵合金MH1
41を加熱できある。冷熱を出力する高圧水素吸蔵合金
MH242は、ハンドル内に貯蔵されている。図8は、
本実施例で用いられるハンドル急速冷却装置の構成を示
している。本実施例では、外熱機関の一つであるスター
リングエンジン43の燃焼熱を冷却用熱媒体を通して燐
酸銅継目無し管44(重量2.4kg)で、低圧水素吸
蔵合金MH141に導くことによって、約150℃の熱
源を得た。冷熱を出力する高圧水素吸蔵合金MH242
を、ハンドル40内のアルミニウムフィン付き銅製イン
ナーフィンチューブ47に充填し、水素吸蔵合金粉末の
流出防止用フィルター12(平均孔径約0.5μm)で
粉末の流出を防止した。低圧水素吸蔵合金MH 141と
高圧水素吸蔵合金MH242とは、キャピラリーチュー
ブ45で連通結合されている。
【0029】低圧水素吸蔵合金MH141としてTi
0.35Zr0.65Mn1.2Cr0.8Co0.2を2kg、高圧水
素吸蔵合金MH242としてTi0.8Zr0.2Mn0.8Cr
1.2を2kg使用した。低圧水素吸蔵合金MH141の反
応熱は114kcal、高圧水素吸蔵合金MH241の
反応熱は129kcalであった。また、30℃におけ
る水素平衡解離圧は、各々0.4atm(MH1)、1
1atm(MH2)、反応速度は30℃で各々2.5リットル
/g・min(MH1)、1.5リットル/g・min(MH2)であ
った。また、ボイド率は低圧水素吸蔵合金MH141が
約70%、高圧水素吸蔵合金MH242が約50%であ
った。
【0030】本実施例では、冷熱を出力する高圧水素吸
蔵合金MH2は、冷却の対象であるハンドル40に埋め
込まれており、冷却の対象と直接熱交換するので、熱媒
体を使用して間接的にハンドルを加熱冷却するよりはる
かに熱効率は優れていた。また、流出防止用フィルター
の使用は粉末の流出防止と固定に効果があった。
【0031】水素吸蔵合金貯蔵容器の熱容量は、低圧水
素吸蔵合金用貯蔵容器の熱容量が約190cal/de
g.高圧水素吸蔵合金用貯蔵容器の熱容量が約200c
al/deg.で、それぞれ吸蔵する水素吸蔵合金の熱
容量より小さく、水素吸蔵合金貯蔵容器による顕熱ロス
は、水素吸蔵合金の反応熱の約10%で比較的小さかっ
た。これに対し、高圧水素吸蔵合金用貯蔵容器の熱容量
が約380cal/deg.の場合には、水素吸蔵合金
貯蔵容器による顕熱ロスが約30%以上あった。このよ
うに、実用上、水素吸蔵合金貯蔵容器の熱容量は、吸蔵
される水素吸蔵合金の熱容量より小さく(熱容量比で
1.0以下)なければ、容器による熱損失が大きいこと
がわかった。また、実施例1でも同様であるが、水素吸
蔵合金貯蔵容器の長尺方向を水平に保持する方が垂直に
保持するよりも、水素吸蔵合金の固結化を防ぐ効果があ
り、水素吸蔵合金の長寿命化にも効果があった。
【0032】次に、本実施例で用いた2種類の水素吸蔵
合金MH1及びMH2の水素の圧力の時間変化特性を図3
に示す。図3に示したように、水素の圧力は急速に変化
しており、水素の吸蔵・放出反応速度が速いことがわか
る。また、本実施例のヒートポンプの冷却速度特性を図
4に示す。図4に示したように、高圧水素吸蔵合金MH
2は、冷却開始して、1分後に−9.7℃、2分後に−1
3.1℃、20分後に−25.2℃に達した。この様に冷
却速度は非常に速く、本実施例の装置は、従来の装置に
比べ、優れた急速冷却特性を有することがわかった。な
お、上記実施例1と2では、加熱源を排気ガス及び冷却
媒体から得たが、燃焼室から直接得ても当然同様の効果
が得られる。
【0033】図5に、本発明の水素吸蔵合金ヒートポン
プに用いられる代表的な水素吸蔵合金のP−T線図を示
す。即ち、一般式ABα(ただし、AはTi,Zr,H
fから選んだ1種または2種以上の元素,BはMn,
V,Fe,Ni,Cr,Co,Cu,Zn,Al,S
i,Nb,Mo,W、Mg,Ca,Y,Ta,Pd,A
g,Au,Cd,In,Sn,Bi,La,Ce,M
m,Pr,Nd,Th,Smから選んだ1種または2種
以上の元素、α=1.3〜2.9、Mmは希土類元素
(ランタノイド)の混合物を示し,またAとBは異種元
素)で表され、その結晶構造が六方晶系のC14型、ま
たは立方晶系のC15型に属するラーベス相合金のう
ち、代表的な水素吸蔵合金のP−T特性を示す。これら
の水素吸蔵合金について、本実施例の装置の特性を評価
した結果、いずれの水素吸蔵合金も優れた特性を示し
た。特に、C14型ラーベス相合金でMnまたはCrを
含む水素吸蔵合金の特性が優れていた。
【0034】(表2)および(表3)に本発明に使用で
きる水素吸蔵合金の組成式と、それらの80℃での吸蔵
水素量(ml/g)、放出水素量(ml/g)、およびP−C−T特
性における平衡解離圧の安定性(平坦性)の相対的特
性、吸蔵・放出のヒステリシス特性の相対的特性を示
す。なお、相対的特性の評価は、3段階評価を行い、結
果は特性の優れたものから順に、符号◎、○及び△で表
示した。なお、100ml/g以上の放出水素量を有す
る水素吸蔵合金を評価の対象とした。(表2)に示した
ように、ラーベス相合金ABαにおいて、α=1.3〜
2.9(合金番号1〜44)の水素吸蔵合金の特性が優
れていた。一方、α=2.9を越えるものは水素放出量
は多いものの、特に水素吸蔵量が少なく、逆にα=1.
3未満のものは水素吸蔵量は多いものの、水素放出量が
少なかった。AB5型合金については、A元素に対する
B元素の原子数の比が約5.0の水素吸蔵合金(合金番
号45から48)の特性が良好で、特にCaCu5型結
晶構造を有するCa系(AB5型合金においてAサイト
がCa)およびMm系(AB5型合金においてAサイト
がMm)の水素吸蔵合金の特性が優れていた。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】(実施例3)本発明によるの移動体座席用
加熱装置の構成を図6に示す。本実施例では、エンジン
3の燃焼熱を冷却用熱媒管17によって低圧水素吸蔵合
金MH113に導いくことができる。低圧水素吸蔵合金
MH113と高圧水素吸蔵合金MH214とは、水素導通
管16a及び16bを介して連通結合されている。低圧
水素吸蔵合金MH113または高圧水素吸蔵合金MH2
4で生成される反応熱は、熱媒体管18aまたは19を
介して熱媒体管50に導かれる。切り換えバルブ51及
び52を操作することによって、熱媒体管50に結合さ
れる熱媒体管18aまたは19を切り換えることができ
る。
【0038】まず、エンジンが稼働中の加熱動作につい
て説明する。バルブ55を開放して、エンジン3の燃焼
熱を熱媒体管17を介して、低圧水素吸蔵合金MH1
3に導く。加熱された低圧水素吸蔵合金MH113は、
水素を放出する。この時、バルブ54を開放しておく
と、高圧水素吸蔵合金MH214は、低圧水素吸蔵合金
MH113から放出された水素を吸蔵し、反応熱を発生
する。この反応熱は、切り換えバルブ51及び52を操
作することにより、加熱用熱媒体管19及び50を介し
て、各座席15に導かれる。
【0039】次に、上記動作により、高圧水素吸蔵合金
MH214に水素が満充填された状態で、エンジン3を
停止し、移動体全体が冷えた状態での、加熱動作につい
て説明する。バルブ53を開放すると高圧水素吸蔵合金
MH214から放出された水素は低圧水素吸蔵合金MH1
13に吸蔵される。この時、低圧水素吸蔵合金MH1
3が発生する反応熱は、切り換えバルブ51及び52を
操作することにより、熱媒体管18a及び熱媒体管50
を介して各座席15に導かれる。
【0040】本実施例では、高圧水素吸蔵合金MH2
Ti0.9Zr0.1Mn1.6Cr0.20.2を12.5kg、低
圧水素吸蔵合金MH1には、Mm成分にLaを多く含む
MmNi4.7Mn0.3を14.0kg使用した。これらを
インナーフィンを有するシェルアンドチューブ型二重銅
管内のシェル側に収納し、これらの銅管多数を束ねて熱
媒体用管中に納めて1組の熱交換器として組み立てた。
本実施例の加熱装置の性能を評価した結果、加熱能力が
160kcal/hであり、座席表面を約45℃まで加
熱することができた。本実施例では、高圧水素吸蔵合金
MH214及び低圧水素吸蔵合金MH113の反応熱を加
熱用熱媒体管19及び18aを介して、各座席15に導
いたが、それぞれの水素吸蔵合金の貯蔵容器を各座席に
設けることにより、急速な加熱が可能となる。
【0041】(実施例4)高圧水素吸蔵合金MH2と並
列に、水素ガス貯蔵容器を用いた加熱冷却装置の構成を
図7に示す。本実施例では、熱源にはエンジン3の排熱
を利用している。エンジン3の排熱は熱媒体管31を介
して、加熱用熱交換器37に導かれる。加熱用熱交換器
37に導かれた熱は、熱媒体用開閉弁32を開くと、熱
媒体管29中を流れる加熱用熱媒体を介して低圧水素吸
蔵合金MH120に導かれ、低圧水素吸蔵合金MH120
を150℃まで加熱することができる。高圧水素吸蔵合
金MH2a21及び高圧水素吸蔵合金MH2b22は、各々
水素吸蔵合金貯蔵容器24及び25内に収納された水素
平衡解離圧の異なる高圧水素吸蔵合金で、MH2a21の
水素平衡解離圧の方がMH2b22の水素平衡解離圧より
も高い。MH2a21及びMH2b22は、冷熱または温熱
を出力し、出力された熱は、熱媒体管27または28に
よって、外部に取り出される。本実施例では、水素経路
に水素ガス貯蔵容器26を設けている。各容器24、2
5及び26中は、開閉弁33、34及び35を有する水
素導通管39を介して、低圧水素吸蔵合金MH1と連通
結合されている。放熱ファン36は、高圧水素吸蔵合金
MH2a21及びMH2b22において、逆反応時に発生す
る熱を除去するため、または移動体の加熱冷却に利用す
るために設置してある。放熱ファン36で得られる熱を
移動体内で利用するか、移動体外に除去するかは、ダン
パー(不図示)の切り換えによって行える。また、熱媒
体管30は、低圧水素吸蔵合金MH120が、水素を吸
蔵する際に発生する熱を除去するための熱媒体管であ
る。本実施例では、低圧水素吸蔵合金MH120の重量
は40kg,高圧水素吸蔵合金MH2a21及びMH2b
2の重量は各15kgとした。また、水素ガス貯蔵容器
26の容積は、低圧水素吸蔵合金MH 120の容積の約
25倍で300リットルである。本実施例で用いた合金
は、C14型結晶構造を有するTi−Mn多元系合金で
ある。
【0042】次に、本実施例の加熱冷却装置の動作例を
示す。まず最初に、環境温度が低い場合(冬季)に、加
熱装置として動作する状態を、図9のP−T線図を参照
しながら説明する。図9は、本発明の第4の実施例にお
ける水素吸蔵合金ヒートポンプの加熱動作の基本サイク
ルを表すP−T線図である。
【0043】まず、エンジン3が稼働している時に、移
動体室内を加熱する動作について、説明する。エンジン
3が稼働中は、その排熱を用いて、低圧水素吸蔵合金M
H120を150℃に加熱し(図9中の最も低圧側の実
線)、放出された水素を、水素吸蔵合金貯蔵容器24及
び25内の高圧水素吸蔵合金MH2a21及びMH2b22
に吸蔵させる。この際、まず最初に、開閉弁33のみを
開放し、MH120中の水素をMH2a21へ導入し、約
40℃の温度を得る(図9中の最も高圧側の実線)。M
2a21が満充填に近づけば、熱出力が低下する。そこ
で、次いで、開閉弁33を閉じて、開閉弁34を開け、
水素平衡解離圧がMH2a21よりも低いMH2b22に水
素を導入することによって、約60℃の熱を得ることが
できる(図9中の中間の実線)。MH2b22が満充填さ
れれば、開閉弁34を閉じて、開閉弁35を開いて、予
め空にしておいた水素ガス貯蔵容器26に約10気圧の
水素ガスを満たす。
【0044】このように冬季に移動体室内に暖かい熱を
得たい場合には、低圧水素吸蔵合金MH120の水素を
水素平衡解離圧の低い方の高圧水素吸蔵合金MH2b22
から吸蔵させ、吸蔵が完了した後、続いて水素平衡解離
圧の高い方の高圧水素吸蔵合金MH2a21に吸蔵させる
ことによって、徐々に温度を高め、ほとんど余すことな
く高圧水素吸蔵合金MH2a21及びMH2b22に水素を
吸蔵させ、この時に放熱ファン36によって吸蔵熱を取
り出すことができる。さらに、空の水素ガス貯蔵容器2
6に水素ガスを高圧で満たすことができる。
【0045】次に、高圧水素吸蔵合金MH2a21及びM
2b22に10気圧で水素が吸蔵され、水素ガス貯蔵容
器に10気圧の水素が貯蔵された状態で、エンジン3を
停止し、移動体全体が冷えた状態における本実施例の加
熱動作を説明する。開閉弁33及び34を開放すると高
圧水素吸蔵合金MH2a21及びMH2b22から水素が放
出され、低圧水素吸蔵合金MH120に吸蔵される。こ
の時、低圧水素吸蔵合金MH120で発生する水素吸蔵
熱を、加熱用熱媒体管29、熱交換器37、及び熱媒体
管31を通して、エンジン3の始動前にエンジン3を暖
める熱源に利用することができる。この時に、高圧水素
吸蔵合金MH2a21及びMH2b22で発生する冷熱は、
放熱ファン36で除去される。
【0046】上記の動作を図9を参照しながら詳細に説
明する。まず、開閉弁34を開き高圧水素吸蔵合金MH
2b22から水素を低圧水素吸蔵合金MH120に水素に
導入し、初期に約40℃、最高で約80℃の熱を得るこ
とができる(図9中低圧側の破線)。高圧水素吸蔵合金
MH2b22から、水素が流れなくなったら開閉弁34を
閉じ、開閉弁33を開いて高圧水素吸蔵合金MH2a21
から低圧水素吸蔵合金MH120に水素を導入し、最高
で100℃の熱を得る(図9中高圧側の破線)。次い
で、開閉弁33を閉じ弁開閉35を開けると、水素ガス
貯蔵容器26から10気圧の水素ガスが低圧水素吸蔵合
金MH1に導入され、吸蔵される。従って、最高で15
0℃の熱を得ることができる。
【0047】次に、環境温度が高い場合(夏季)に、移
動体室内を冷却する動作を説明する。基本的な動作は、
上述の例と同じである。すなわち、エンジンの加熱が不
要の時には、低圧水素吸蔵合金MH120で発生した熱
を冷却用熱媒体管30で除去し、高圧水素吸蔵合金MH
2a21及びMH2b22で発生する冷熱を、放熱ファン3
6を用いて移動体の部品を冷却するために利用すること
ができる。この場合には、エンジン3が室温の時に、開
閉弁35を開放し、水素ガス貯蔵容器26の水素ガスの
圧力を1気圧よりもずっと低い圧力にしておく。
【0048】上述の動作を図10のP−T線図を参照し
ながら説明する。図10は、本発明の第4の実施例にお
ける水素吸蔵合金ヒートポンプの冷却動作の基本サイク
ルを表すP−T線図である。まず、開閉弁34を開き高
圧水素吸蔵合金MH2b22から低圧水素吸蔵合金MH1
20に水素を放出し、約20℃を得る(図10中の中間
の実線)。次いで、高圧水素吸蔵合金MH2b22から、
水素が流れなくなったら開閉弁34を閉じ、開閉弁33
を開いて高圧水素吸蔵合金MH2a21から低圧水素吸蔵
合金MH120に水素を放出し、10℃を得ることがで
きた(図10中高圧側の実線)。しかし、低圧水素吸蔵
合金MH120の温度は、水素を吸蔵することによって
上昇し、徐々に水素平衡解離圧が上昇し、高圧水素吸蔵
合金MH 2a21及びMH2b22は水素を放出できなくな
る。そこで、開閉弁33を閉じ、開閉弁35を開けると
同時に開閉弁34及び33をこの順序で開放することに
よって、5℃という低温を得ることができた。なぜなら
ば、水素ガス貯蔵容器26の水素の圧力が、低圧水素吸
蔵合金MH120の25℃における水素平衡解離圧であ
る約0.1気圧に保持されていたために、高圧水素吸蔵
合金MH2a21及びMH2b22から、水素が放出された
からである。
【0049】また、ハンドル等の移動体部品を急激に冷
却したいときには、最初から開閉弁33及び34と同時
に開閉弁35を開き、高圧水素吸蔵合金MH2a21及
びMH2b22の水素を放出させることによって、きわ
めて急速に約5℃まで冷却することができた。
【0050】さらに、低圧水素吸蔵合金MH120の温
度が十分に低くないために、高圧水素吸蔵合金MH2a
1及びMH2b22から低圧水素吸蔵合金MH120への
水素の放出速度が遅い時は、水素ガス貯蔵容器26へ水
素ガスを流し込むことによって、高圧水素吸蔵合金MH
2a21及びMH2b22の水素の放出を促進することがで
きる。
【0051】上述したように、水素ガス貯蔵容器を設け
ることにより、加熱または冷却を急速に行うことが可能
となる。また、加熱または冷却動作の持続時間を長くす
ることが可能となる。なぜなら、水素吸蔵合金の反応熱
は、加熱や冷却に利用される一方反応を停止するように
作用するが、水素ガス貯蔵容器への水素の流入及び流出
は、反応熱を伴わないからである。すなわち、水素ガス
貯蔵容器の圧力と水素吸蔵合金の平衡解離圧によって、
水素の移動の方向が決まる。従って、水素吸蔵合金ヒー
トポンプの動作中に、必要に応じて、水素貯蔵容器の圧
力を設定することができる。
【0052】さらに、本実施例では高圧水素吸蔵合金M
2a21、MH2b22は各々異なる水素平衡解離圧を有
し、反応温度および得られる出力温度が異なるので、所
望の用途に応じた動作サイクルを設定できる。また、利
用する熱源温度に応じたシステム構成や動作サイクルの
設定が可能である。
【0053】以上、4つの実施例の成績係数は、冷房時
で最高0.69、暖房時で最高1.32であった。この値
は、入力エネルギーを消費するとしたときの値である。
しかし、通常、エンジン排熱は廃棄しているエネルギー
であるから、熱入力はゼロである。従って、捨てている
エネルギーから有益な加熱冷却用の熱エネルギーが出力
として得られ、省エネルギーの効果は極めて大きい。
【0054】
【発明の効果】以上のように、本発明は、移動体の駆動
源の排熱と水素吸蔵合金ヒートポンプを結合させた新規
な移動体である。すなわち、電気エネルギーを一切使用
せず、公害物質のフロンを使用しないノンフロン型で、
しかも電動圧縮型などと比較して振動部分がなく低騒音
で、かつ従来使用されなかったエンジンの余剰熱または
廃棄熱を極めて有効に利用した、地球環境保全に大きく
貢献する低公害で省エネルギーな加熱冷却装置を搭載し
た移動体を提供するものである。さらに、夏季に温度の
高い移動体の部品、特にハンドルなどを早急に冷却で
き、冬季に座席等の部品を有効に加熱することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水素吸蔵合金ヒートポンプの動作の基
本サイクルを表すP−T線図
【図2】本発明の第1の実施例の水素吸蔵合金ヒートポ
ンプの構成を示す図
【図3】第1の実施例の水素吸蔵合金ヒートポンプにお
ける高圧水素吸蔵合金と低圧水素吸蔵合金の水素圧力の
時間変化特性を示す図
【図4】第1の実施例の水素吸蔵合金ヒートポンプにお
ける急速冷却時の冷却速度特性を示す図
【図5】本発明の水素吸蔵合金ヒートポンプに用いられ
る代表的な水素吸蔵合金のP−T線図
【図6】本発明の第3の実施例における移動体の座席加
熱装置の構成を示す図
【図7】本発明の第4の実施例における水素吸蔵合金ヒ
ートポンプの構成を示す図
【図8】本発明の第2の実施例における水素吸蔵合金ヒ
ートポンプの構成を示す図
【図9】本発明の第4の実施例における水素吸蔵合金ヒ
ートポンプの加熱動作の基本サイクルを表すP−T線図
【図10】本発明の第4の実施例における水素吸蔵合金
ヒートポンプの冷却動作の基本サイクルを表すP−T線
【図11】本発明の第2の実施例の水素吸蔵合金利用移
動体の構成を示す概略図
【符号の説明】
3 エンジン 20 低圧水素吸蔵合金 21 高圧水圧吸蔵合金 22 高圧水素吸蔵合金 24 高圧水圧吸蔵合金貯蔵容器 25 高圧水圧吸蔵合金貯蔵容器 26 水素ガス貯蔵容器 36 放熱ファン 38 低圧水素吸蔵合金貯蔵容器 39 連通結合手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 羽藤 一仁 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 安本 栄一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 足立 欣一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の水素解離平衡圧の異なる水素吸蔵
    合金を個別に収納した複数の水素吸蔵合金貯蔵容器と、 該水素吸蔵合金貯蔵容器の水素を相互に移動可能にする
    連通結合手段と、 該水素吸蔵合金のうち最も低い水素平衡解離圧を有する
    低圧水素貯蔵合金を移動体のエンジンまたは外燃機関の
    燃料燃焼熱を熱源として加熱する手段と、を有し、 該加熱手段によって該低圧水素貯蔵合金を加熱し、該低
    圧水素貯蔵合金から放出された水素を該低圧水素貯蔵合
    金の水素解離平衡圧よりも高い水素解離平衡圧を有する
    高圧水素吸蔵合金に水素を吸蔵させ、該高圧水素吸蔵合
    金の水素吸蔵時の発熱反応を利用して移動体内の空気ま
    たは移動体の部品を加熱、または、該高圧水素吸蔵合金
    から水素を放出させ、該高圧水素吸蔵合金の水素放出時
    の吸熱反応を利用して移動体内の空気または移動体の部
    品を冷却、 または、該高圧水素吸蔵合金から放出させた水素を該低
    圧水素吸蔵合金に吸蔵させて水素吸蔵時の発熱反応を利
    用して移動体内の空気または移動体の部品を加熱する水
    素吸蔵合金利用移動体であって、 該連通結合手段が、水素ガス貯蔵容器を有する水素合金
    利用移動体。
  2. 【請求項2】 少なくとも3種類の水素解離平衡圧の異
    なる水素吸蔵合金を個別に収納した少なくとも3個の水
    素吸蔵合金貯蔵容器と、 該水素吸蔵合金貯蔵容器の水素を相互に移動可能にする
    連通結合手段と、 該水素吸蔵合金のうち最も低い水素平衡解離圧を有する
    低圧水素貯蔵合金を移動体のエンジンまたは外燃機関の
    燃料燃焼熱を熱源として加熱する手段と、を有し、 該加熱手段によって該低圧水素貯蔵合金を加熱し、該低
    圧水素貯蔵合金から放出された水素を該低圧水素貯蔵合
    金の水素解離平衡圧よりも高い水素解離平衡圧を有する
    高圧水素吸蔵合金に水素を吸蔵させ、該高圧水素吸蔵合
    金の水素吸蔵時の発熱反応を利用して移動体内の空気ま
    たは移動体の部品を加熱、または、該高圧水素吸蔵合金
    から水素を放出させ、該高圧水素吸蔵合金の水素放出時
    の吸熱反応を利用して移動体内の空気または移動体の部
    品を冷却、 または、該高圧水素吸蔵合金から放出させた水素を該低
    圧水素吸蔵合金に吸蔵させて水素吸蔵時の発熱反応を利
    用して移動体内の空気または移動体の部品を加熱する水
    素吸蔵合金利用移動体。
  3. 【請求項3】 前記水素吸蔵合金貯蔵容器の熱容量が、
    内部に貯蔵する前記水素吸蔵合金の熱容量以下である、
    請求項1または2に記載の水素吸蔵合金利用移動体。
  4. 【請求項4】 複数の水素解離平衡圧の異なる水素吸蔵
    合金を個別に収納した複数の水素吸蔵合金貯蔵容器と、 該水素吸蔵合金貯蔵容器の水素を相互に移動可能にする
    連通結合手段と、 該水素吸蔵合金のうち最も低い水素平衡解離圧を有する
    低圧水素貯蔵合金を移動体のエンジンまたは外燃機関の
    燃料燃焼熱を熱源として加熱する手段と、を有し、 該加熱手段によって該低圧水素貯蔵合金を加熱し、該低
    圧水素貯蔵合金から放出された水素を該低圧水素貯蔵合
    金の水素解離平衡圧よりも高い水素解離平衡圧を有する
    高圧水素吸蔵合金に水素を吸蔵させ、該高圧水素吸蔵合
    金の水素吸蔵時の発熱反応を利用して移動体内の空気ま
    たは移動体の部品を加熱、または、該高圧水素吸蔵合金
    から水素を放出させ、該高圧水素吸蔵合金の水素放出時
    の吸熱反応を利用して移動体内の空気または移動体の部
    品を冷却、 または、該高圧水素吸蔵合金から放出させた水素を該低
    圧水素吸蔵合金に吸蔵させて水素吸蔵時の発熱反応を利
    用して移動体内の空気または移動体の部品を加熱する水
    素吸蔵合金利用移動体であって、 少なくとも1個の該水素吸蔵合金貯蔵容器が移動体の部
    品と直接熱交換する水素合金利用移動体。
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