JPH0623312B2 - 炭素繊維用原料ピツチ - Google Patents
炭素繊維用原料ピツチInfo
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- JPH0623312B2 JPH0623312B2 JP7429886A JP7429886A JPH0623312B2 JP H0623312 B2 JPH0623312 B2 JP H0623312B2 JP 7429886 A JP7429886 A JP 7429886A JP 7429886 A JP7429886 A JP 7429886A JP H0623312 B2 JPH0623312 B2 JP H0623312B2
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- pitch
- raw material
- spinning
- carbon fiber
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- Inorganic Fibers (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、高強度・高弾性率炭素繊維(高性能炭素繊
維)の製造原料として優れた性能を有するピッチに関す
る。
維)の製造原料として優れた性能を有するピッチに関す
る。
更に詳しくは、特定構造のアルキルベンゼンとホルムア
ルデヒドまたはアセトアルデヒドを反応させた重合物を
メソフェーズピッチ化して得られる、低軟化点の光学的
異方性ピッチに関するものである。
ルデヒドまたはアセトアルデヒドを反応させた重合物を
メソフェーズピッチ化して得られる、低軟化点の光学的
異方性ピッチに関するものである。
(従来の技術) 一般に、炭素繊維は、工業的には主としてレーヨン、P
AN、ピッチを原料として製造されている。
AN、ピッチを原料として製造されている。
しかしながら、PANを原料とした場合、原料が高価で
あり、炭化収率も低いという欠点がある。この点、ピッ
チは価格が安く、経済的に魅力がある。
あり、炭化収率も低いという欠点がある。この点、ピッ
チは価格が安く、経済的に魅力がある。
しかし、ピッチの中でも等方性ピッチから製造された炭
素繊維は、分子配向性が悪いため、強度が低く、高性能
品は得られていない。
素繊維は、分子配向性が悪いため、強度が低く、高性能
品は得られていない。
これと対照的に、メソフェーズピッチと呼ばれる光学的
異方性ピッチから製造された炭素繊維は、縮合多環芳香
族を中心とする分子が繊維軸方向に配列して、高度の分
子配向性を有しており、強度と弾性率が高く、優れた機
械的特性を示す。
異方性ピッチから製造された炭素繊維は、縮合多環芳香
族を中心とする分子が繊維軸方向に配列して、高度の分
子配向性を有しており、強度と弾性率が高く、優れた機
械的特性を示す。
そして、石油の接触分解残油、ナフサタールピッチある
いはコールタールピッチからメソフェーズピッチを作る
研究が広く進められている。
いはコールタールピッチからメソフェーズピッチを作る
研究が広く進められている。
しかし、これらを原料とするメソフェーズピッチは、縮
合多環芳香族同志の相互作用が大きいため、粘度が高
く、軟化点も高い。
合多環芳香族同志の相互作用が大きいため、粘度が高
く、軟化点も高い。
一般に、紡糸温度は原料ピッチの軟化点より40〜10
0℃高いとされており、軟化点が高いと紡糸工程で様々
な問題が生じる。
0℃高いとされており、軟化点が高いと紡糸工程で様々
な問題が生じる。
このため、軟化点を下げて紡糸性を改善するための研究
が種々行なわれている。
が種々行なわれている。
しかし、従来の石油系ピッチあるいはコールタールピッ
チは、組成が複雑な混合物を原料としているため、これ
を加熱処理して縮合多環芳香族構造を発達させると、連
続的に広い分子量分布となり、化学構造までの制御が難
しく、極端に軟化点を下げることは困難であった。
チは、組成が複雑な混合物を原料としているため、これ
を加熱処理して縮合多環芳香族構造を発達させると、連
続的に広い分子量分布となり、化学構造までの制御が難
しく、極端に軟化点を下げることは困難であった。
このため、従来のメソフェーズピッチは、これまで30
0℃以下の温度で紡糸することが不可能であり、その多
くは340〜380℃という高い温度で紡糸されてい
た。その結果、紡糸時に熱分解や熱縮合反応が起こりや
すく、ガスや高分子量物質が生成しがちであり、長時間
安定して紡糸することが困難であった。
0℃以下の温度で紡糸することが不可能であり、その多
くは340〜380℃という高い温度で紡糸されてい
た。その結果、紡糸時に熱分解や熱縮合反応が起こりや
すく、ガスや高分子量物質が生成しがちであり、長時間
安定して紡糸することが困難であった。
従来のメソフェーズピッチのこの欠点を改良する試みが
種々行なわれてきた。
種々行なわれてきた。
例えば、メソフェーズピッチを部分的に水素化してその
積層状態を適度に弱め、等方性のピッチとして紡糸する
方法(特公昭59−30192号)あるいは、紡糸時に
は等方性であるピッチが炭化時には光学的異方性に転換
する特異なプリメソフェーズピッチを用いる方法(特開
昭58−18421号)などがる。
積層状態を適度に弱め、等方性のピッチとして紡糸する
方法(特公昭59−30192号)あるいは、紡糸時に
は等方性であるピッチが炭化時には光学的異方性に転換
する特異なプリメソフェーズピッチを用いる方法(特開
昭58−18421号)などがる。
しかし、これらの方法は、いずれも分子配向性の弱い等
方性段階で紡糸しており、繊維中の分子配向性が光学的
異方性ピッチから紡糸されるものより劣る。更に、縮合
多環芳香族が積層した粘度の高いピッチを水素化するこ
とは、工業的にもあまり有利ではない。
方性段階で紡糸しており、繊維中の分子配向性が光学的
異方性ピッチから紡糸されるものより劣る。更に、縮合
多環芳香族が積層した粘度の高いピッチを水素化するこ
とは、工業的にもあまり有利ではない。
また、従来技術が原料とする、コールタール、ナフサタ
ールあるいは石油留分の接触分解残油中には、フリーカ
ーボンや触媒分などの灰分となる無機質が含まれてい
る。
ールあるいは石油留分の接触分解残油中には、フリーカ
ーボンや触媒分などの灰分となる無機質が含まれてい
る。
これらの物質はピッチを紡糸する際の障害となるばかり
でなく、これらの微粒子が繊維中に含まれると炭素繊維
に欠陥を生じ、強度を弱める原因となる。
でなく、これらの微粒子が繊維中に含まれると炭素繊維
に欠陥を生じ、強度を弱める原因となる。
これらの除去法としては、例えば、接触分解残油を熱ソ
ーキングして得たピッチを溶剤抽出し、不溶性のコーク
ス、触媒微粒子などの灰分を除去した後、反溶剤化合物
で処理して光学的異方性ピッチの前駆物質を析出させる
方法(特開昭56−167788号)、あるいは、コー
ルタールピッチを2段階熱処理し、第1段階でメソフェ
ーズ球体を生成させ、1μm以下の微粒子であるフリー
カーボンや灰分となる無機質を一緒にろ過などによって
除去する方法(特開昭59−164386号)など、様
々な方法が多数工夫されている。
ーキングして得たピッチを溶剤抽出し、不溶性のコーク
ス、触媒微粒子などの灰分を除去した後、反溶剤化合物
で処理して光学的異方性ピッチの前駆物質を析出させる
方法(特開昭56−167788号)、あるいは、コー
ルタールピッチを2段階熱処理し、第1段階でメソフェ
ーズ球体を生成させ、1μm以下の微粒子であるフリー
カーボンや灰分となる無機質を一緒にろ過などによって
除去する方法(特開昭59−164386号)など、様
々な方法が多数工夫されている。
しかし、これらの方法によっても、サブミクロン粒子ま
で取り除くことは困難であり、繊維強度を上げることは
できない状況にある。
で取り除くことは困難であり、繊維強度を上げることは
できない状況にある。
(発明が解決しようとする問題点) 高性能炭素繊維を得るためには、原料ピッチの曵糸状態
で繊維軸方向に沿って分子が配向していることが肝要で
ある。このためには、光学的異方性の多いことが望まし
い。
で繊維軸方向に沿って分子が配向していることが肝要で
ある。このためには、光学的異方性の多いことが望まし
い。
また、繊維の強度を高めるためには、配向した分子の構
造が繊維軸方向に長い方が有利である。
造が繊維軸方向に長い方が有利である。
更に、ピッチの軟化点は低い方が望ましい。軟化点が低
いと、紡糸が容易となり、かつ長時間安定して紡糸でき
る。
いと、紡糸が容易となり、かつ長時間安定して紡糸でき
る。
本発明の目的は、従来のメソフェーズピッチとは全く異
なる、化学合成の手段により調節された重合物を原料と
して、光学的異方性組織が発達した状態にあるにもかか
わらず軟化点が低く、従来のメソフェーズピッチよりは
るかに低い温度で円滑に紡糸でき、しかも引張り強度の
高い炭素繊維を製造できる光学的異方性ピッチを提供す
ることにある。
なる、化学合成の手段により調節された重合物を原料と
して、光学的異方性組織が発達した状態にあるにもかか
わらず軟化点が低く、従来のメソフェーズピッチよりは
るかに低い温度で円滑に紡糸でき、しかも引張り強度の
高い炭素繊維を製造できる光学的異方性ピッチを提供す
ることにある。
(問題点を解決するための手段) はじめに、本明細書では、「光学的異方性」とは、常温
近くで固化したピッチ塊の断面を研磨し、反射型偏光顕
微鏡で直交ニコル下で観察したときに光輝が認められる
部分を示す。なお、光学的異方性の割合は面積%で示
す。
近くで固化したピッチ塊の断面を研磨し、反射型偏光顕
微鏡で直交ニコル下で観察したときに光輝が認められる
部分を示す。なお、光学的異方性の割合は面積%で示
す。
「トルエン不溶分」とは、JIS−K−2425に規定
された方法によって決定される。
された方法によって決定される。
「軟化点」とは、ホットステージ型顕微鏡で窒素雰囲気
中でピッチ粉末を10℃/分で昇温し、ピッチ粉末が変
形しはじめる温度を示す。
中でピッチ粉末を10℃/分で昇温し、ピッチ粉末が変
形しはじめる温度を示す。
以下、本発明の光学的異方性ピッチの出発原料、製造方
法、ピッチの性状について述べる。
法、ピッチの性状について述べる。
(1)出発原料 本発明のピッチは、メチル基および/またはエチル基に
より2ないし4個置換された炭素数9ないし10個のア
ルキルベンゼンと、ホルムアルデヒドまたはアセトアル
デヒドを出発原料とする。
より2ないし4個置換された炭素数9ないし10個のア
ルキルベンゼンと、ホルムアルデヒドまたはアセトアル
デヒドを出発原料とする。
この出発原料は、いままで殆ど利用されていなかった低
分子量化合物である。
分子量化合物である。
そして、上記出発原料を硫酸、燐酸、塩酸、過塩素酸、
強酸性陽イオン交換樹脂等のプロトン酸を触媒に用いて
反応させて得られる重合物を、本発明のピッチの製造原
料とする。
強酸性陽イオン交換樹脂等のプロトン酸を触媒に用いて
反応させて得られる重合物を、本発明のピッチの製造原
料とする。
アルキルベンゼンの2〜4置換体は、単品または混合物
のいずれを用いても良い。
のいずれを用いても良い。
側鎖のアルキル基の長さは、光学的異方性ピッチの収率
の点から、短い方が好ましい。側鎖の長いアルキルベン
ゼンは、重合体の熱処理段階で側鎖の熱分解によって生
じた生成物の構造がピッチと異なるため、好ましくな
い。側鎖の長いアルキルベンゼンを含む場合には、重合
体の構成部分に側鎖の長いものが入らないように反応条
件を選定することが必要である。
の点から、短い方が好ましい。側鎖の長いアルキルベン
ゼンは、重合体の熱処理段階で側鎖の熱分解によって生
じた生成物の構造がピッチと異なるため、好ましくな
い。側鎖の長いアルキルベンゼンを含む場合には、重合
体の構成部分に側鎖の長いものが入らないように反応条
件を選定することが必要である。
このため、アルキル基としては、メチル基および/また
はエチル基が好ましい。
はエチル基が好ましい。
また、上記のアルキルベンゼンとしては、炭素数9ない
し10のものが使用される。
し10のものが使用される。
この一例としては、石油工業における接触改質反応で生
成し、石油化学原料として用いられるベンゼン、トルエ
ン、キシレンを分離した残渣油が挙げられる。この残渣
油は、安価にかつ大量に得られるため経済的である。
成し、石油化学原料として用いられるベンゼン、トルエ
ン、キシレンを分離した残渣油が挙げられる。この残渣
油は、安価にかつ大量に得られるため経済的である。
上記の出発原料は、従来技術の原料(コールタールピッ
チ、接触分解残油など)と異なり、フリーカーボンや触
媒分などの無機質を本質的に全く含んでおらず、極めて
優れた原料である。
チ、接触分解残油など)と異なり、フリーカーボンや触
媒分などの無機質を本質的に全く含んでおらず、極めて
優れた原料である。
また、石油工業において厳しい前処理を施されているた
め、硫黄分などの異種元素が殆ど除去されている。
め、硫黄分などの異種元素が殆ど除去されている。
ホルムアルデヒドとしては、重合体を生成する系内で単
量体のホルムアルデヒドを発生するものであればその形
態を問わず、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリ
オキサンのいずれかの形で用いることができる。
量体のホルムアルデヒドを発生するものであればその形
態を問わず、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリ
オキサンのいずれかの形で用いることができる。
必要ならば、これらのホルムアルデヒド源から別途単量
体のホルムアルデヒドを発生させ、これを出発原料に溶
解して用いても良い。
体のホルムアルデヒドを発生させ、これを出発原料に溶
解して用いても良い。
また、アセトアルデヒドとしては、上記と同様に、重合
体を生成する系内で単量体のアセトアルデヒドを発生す
るものであればその形態を問わず利用できる。
体を生成する系内で単量体のアセトアルデヒドを発生す
るものであればその形態を問わず利用できる。
(2)製造方法 本発明のピッチを製造するためには、まず、化学構造の
限定された上記の出発原料を用い、十分制御された条件
で製造原料を調整することが必要である。
限定された上記の出発原料を用い、十分制御された条件
で製造原料を調整することが必要である。
製造原料は、上記出発原料を硫酸、燐酸、塩酸、過塩素
酸、強酸性陽イオン交換樹脂等のプロトン酸を触媒とし
て反応させて得られる重合物である。
酸、強酸性陽イオン交換樹脂等のプロトン酸を触媒とし
て反応させて得られる重合物である。
ここで重要なことは、上記重合物中の酸素含有量を2重
量%以下、好ましくは1重量%以下にすることである。
量%以下、好ましくは1重量%以下にすることである。
酸素含有量の多いものは、加熱処理の際に分解されやす
く、収率が低くなるばかりでなく、ピッチの軟化点が高
くなるため、本発明の目的には使用できない。
く、収率が低くなるばかりでなく、ピッチの軟化点が高
くなるため、本発明の目的には使用できない。
したがって、予め酸素の導入されない反応系を用いるの
が好ましい。反応条件により重合物中に酸素が含まれる
場合には、これから酸素を除去したものをピッチ材源と
して用いることもできる。
が好ましい。反応条件により重合物中に酸素が含まれる
場合には、これから酸素を除去したものをピッチ材源と
して用いることもできる。
このようにして調整した上記重合物を、温度350〜4
30℃、反応時間0.5〜10時間、還流下で反応させ
た後、不活性ガスを吹き込むか、あるいは減圧蒸留によ
り軽質分を除去することにより、本発明の目的とする光
学的異方性ピッチを得ることができる。
30℃、反応時間0.5〜10時間、還流下で反応させ
た後、不活性ガスを吹き込むか、あるいは減圧蒸留によ
り軽質分を除去することにより、本発明の目的とする光
学的異方性ピッチを得ることができる。
(3)ピッチの性状 高強度・高弾性率の高性能炭素繊維を得るためには、原
料ピッチの性状は、光学的異方性が85%以上、好まし
くは90%以上であることが必要である。
料ピッチの性状は、光学的異方性が85%以上、好まし
くは90%以上であることが必要である。
また、紡糸温度は、曵糸に必要な粘度を与える温度であ
るが、一般にピッチの軟化点より40〜100℃高くな
るとされている。
るが、一般にピッチの軟化点より40〜100℃高くな
るとされている。
このため、軟化点は低い方が紡糸が容易であり、かつ、
長時間安定して紡糸できる。しかし、軟化点が低くなり
すぎると、紡糸ノズルから出た繊維同志が融着するよう
になり、使用できない。
長時間安定して紡糸できる。しかし、軟化点が低くなり
すぎると、紡糸ノズルから出た繊維同志が融着するよう
になり、使用できない。
本発明のピッチは、軟化点が180〜250℃であり、
紡糸温度は約300℃以下になる。
紡糸温度は約300℃以下になる。
特に、200〜250℃の軟化点であれば、紡糸した繊
維はオゾンなどの特殊な酸化剤を使用しなくても空気で
不融化が可能であり、経済的で好ましい。
維はオゾンなどの特殊な酸化剤を使用しなくても空気で
不融化が可能であり、経済的で好ましい。
更に、光学的異方性組織が発達した状態で、かつ、軟化
点が低くなるためには、H/C(水素と炭素の原子比)
値が0.75〜0.85、特に0.78〜0.82が好
ましい。
点が低くなるためには、H/C(水素と炭素の原子比)
値が0.75〜0.85、特に0.78〜0.82が好
ましい。
この点は、従来のメソフェーズピッチのH/C値が0.
5〜0.6であるのに比べると著しく異なっている。
5〜0.6であるのに比べると著しく異なっている。
更に驚くべきことは、本発明のピッチは、トルエン不溶
分が少なく、言ってみればトルエン可溶性の光学的異方
性ピッチである。
分が少なく、言ってみればトルエン可溶性の光学的異方
性ピッチである。
トルエン不溶分の量は、前記重合物の分子量あるいは加
熱処理条件によって調節し得る。低い軟化点で光学的異
方性を高くするためには、トルエン不溶分は50重量%
以下、好ましくは20〜40重量%である。
熱処理条件によって調節し得る。低い軟化点で光学的異
方性を高くするためには、トルエン不溶分は50重量%
以下、好ましくは20〜40重量%である。
(作用) 本発明の一例として、トリメチルベンゼンを出発原料と
して生成された重合物の構造は、数個のベンゼン環がメ
チレン結合によりつながったものが主体である。
して生成された重合物の構造は、数個のベンゼン環がメ
チレン結合によりつながったものが主体である。
本発明者らは、この重合物を加熱処理すると、アルキル
側鎖を介して隣接したベンゼン環同志が環化し、いわゆ
るカタ型の縮合多環芳香族構造が比較的多くできること
を確認している。しかも、環化されないアルキル置換基
は、加熱処理の過程でもある程度保持される。
側鎖を介して隣接したベンゼン環同志が環化し、いわゆ
るカタ型の縮合多環芳香族構造が比較的多くできること
を確認している。しかも、環化されないアルキル置換基
は、加熱処理の過程でもある程度保持される。
このため、光学的異方性が高いにもかかわらず、従来技
術が使用する原料よりも縮合多環芳香族同志の相互作用
が緩やかになり、軟化点の低下、低い紡糸温度、そし
て、炭素繊維としたときの高い強度を達成することがで
きる。
術が使用する原料よりも縮合多環芳香族同志の相互作用
が緩やかになり、軟化点の低下、低い紡糸温度、そし
て、炭素繊維としたときの高い強度を達成することがで
きる。
また、本発明で使用する出発原料は、従来技術の原料の
ようにフリーカーボンや触媒粉などの灰分となる無機質
や硫黄分などの異種元素を殆ど含んでいない。
ようにフリーカーボンや触媒粉などの灰分となる無機質
や硫黄分などの異種元素を殆ど含んでいない。
このため、紡糸時の糸切れなどの障害もなく、炭素繊維
としたときの欠陥が少ない高強度の繊維を製造すること
ができる。
としたときの欠陥が少ない高強度の繊維を製造すること
ができる。
(実施例) 次に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、
本発明はこれに限定されるものではない。
本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 撹拌羽根および還流冷却器を備えたフラスコに、C9芳
香族留分(重質改質油の160〜180℃の沸点範囲の
留分)270g、トリオキサン30g、陽イオン交換樹
脂50gを仕込み、反応温度78〜84℃で4時間反応
させた。
香族留分(重質改質油の160〜180℃の沸点範囲の
留分)270g、トリオキサン30g、陽イオン交換樹
脂50gを仕込み、反応温度78〜84℃で4時間反応
させた。
反応終了後、触媒をろ過分離し、触媒をトルエン100
gで洗浄した後、トルエンと反応液の混合物を水層が中
性になるま純水を加えて洗浄した。
gで洗浄した後、トルエンと反応液の混合物を水層が中
性になるま純水を加えて洗浄した。
その後、減圧蒸留(120℃/10mmHg)で未反応物を
除去し、重合物120gを得た。
除去し、重合物120gを得た。
この重合物の酸素含有量は、0.2重量%であった。
上記重合物60gを窒素を用いた不活性雰囲気中で39
0℃で還流させながら5時間反応させた後、窒素の導入
管を液中に入れ、400cc/分の窒素を流しながら40
0℃で軽質分を除去し、ピッチ7.2gを得た。
0℃で還流させながら5時間反応させた後、窒素の導入
管を液中に入れ、400cc/分の窒素を流しながら40
0℃で軽質分を除去し、ピッチ7.2gを得た。
このピッチの性状は、光学的異方性95%、軟化点22
0℃、H/C値0.81、トルエン不溶分30.3重量
%であった。
0℃、H/C値0.81、トルエン不溶分30.3重量
%であった。
このピッチを、紡糸温度270℃で、ノズル孔0.5mm
φの紡糸ノズルを用いて溶融紡糸したところ、ピッチ繊
維直径15μmにおいて糸切れなく円滑に紡糸できた。
φの紡糸ノズルを用いて溶融紡糸したところ、ピッチ繊
維直径15μmにおいて糸切れなく円滑に紡糸できた。
このピッチ繊維(原糸)を空気雰囲気中で徐々に温度を
上げながら最終的に300℃で不融化した後、不活性ガ
ス雰囲気中で1000℃まで炭化焼成した。
上げながら最終的に300℃で不融化した後、不活性ガ
ス雰囲気中で1000℃まで炭化焼成した。
得られた炭素繊維の引張り強度は22Ton/cm2、弾性率
1460Ton/cm2であった。
1460Ton/cm2であった。
この繊維の一部をアルゴン雰囲気中2500℃で黒鉛化
した。
した。
この黒鉛化繊維の引張り強度は43Ton/cm2、弾性率6
900Ton/cm2であった。
900Ton/cm2であった。
実施例2 C10芳香族留分(重質改質油の180〜200℃の沸
点範囲の留分)300g、トリオキサン30g、陽イオ
ン交換樹脂50gを仕込み、実施例1と同様に反応させ
て、重合物130gを得た。
点範囲の留分)300g、トリオキサン30g、陽イオ
ン交換樹脂50gを仕込み、実施例1と同様に反応させ
て、重合物130gを得た。
この重合物の酸素含有量は、0.4重量%であった。
上記重合物60gを窒素を用いた不活性雰囲気中で40
0℃で還流させながら4時間反応させた後、窒素の導入
管を液中に入れ、400cc/分の窒素を流しながら41
0℃で軽質分を除去して、ピッチ6.2gを得た。
0℃で還流させながら4時間反応させた後、窒素の導入
管を液中に入れ、400cc/分の窒素を流しながら41
0℃で軽質分を除去して、ピッチ6.2gを得た。
このピッチの性状は、光学的異方性90%、軟化点23
0℃、H/C値0.80、トルエン不溶分35.0重量
%であった。
0℃、H/C値0.80、トルエン不溶分35.0重量
%であった。
このピッチを、ノズル孔0.5mmφの紡糸ノズルを用い
て紡糸温度280℃で溶融紡糸したところ、ピッチ繊維
直径15μmで糸切れなく紡糸できた。
て紡糸温度280℃で溶融紡糸したところ、ピッチ繊維
直径15μmで糸切れなく紡糸できた。
このピッチ繊維(原糸)を空気雰囲気中で徐々に温度を
上げながら最終的に300℃で不融化した後、不活性ガ
ス雰囲気中で1000℃まで焼成炭化した。
上げながら最終的に300℃で不融化した後、不活性ガ
ス雰囲気中で1000℃まで焼成炭化した。
得られた炭素繊維の引張り強度は21Ton/cm2、弾性率
1400Ton/cm2であった。
1400Ton/cm2であった。
実施例3 撹拌羽根および還流冷却器を備えたフラスコに、C9芳
香族留分(重質改質油の160〜180℃の沸点範囲の
留分)240g、パラホルムアルデヒド45g、陽イオ
ン交換樹脂50gを仕込み、反応温度75〜85℃で4
時間反応させた。
香族留分(重質改質油の160〜180℃の沸点範囲の
留分)240g、パラホルムアルデヒド45g、陽イオ
ン交換樹脂50gを仕込み、反応温度75〜85℃で4
時間反応させた。
反応終了後、触媒をろ過分離し、触媒をトルエン100
gで洗浄した後、トルエンと反応液の混合物を水層が中
性になるま純水を加えて洗浄した。
gで洗浄した後、トルエンと反応液の混合物を水層が中
性になるま純水を加えて洗浄した。
その後、減圧蒸留(120℃/10mmHg)で未反応物を
除去し、重合物126gを得た。
除去し、重合物126gを得た。
更に、減圧蒸留(240℃/1mmHg)を行ない、留出油
76gと釜残として重質物50gを得た。
76gと釜残として重質物50gを得た。
この重質物の酸素含有量は、1.2重量%であった。
上記重質物50gを窒素を用いた不活性雰囲気中で40
0℃で還流させながら6時間反応させた後、減圧蒸留
(400℃/10mmHg)で軽質分を除去し、メソフェー
ズピッチ化を行ない、ピッチ10.5gを得た。
0℃で還流させながら6時間反応させた後、減圧蒸留
(400℃/10mmHg)で軽質分を除去し、メソフェー
ズピッチ化を行ない、ピッチ10.5gを得た。
このピッチの性状は、光学的異方性90%、軟化点25
0℃、H/C値0.76、トルエン不溶分47.5重量
%であった。
0℃、H/C値0.76、トルエン不溶分47.5重量
%であった。
このピッチを、紡糸温度310℃で、ノズル孔0.5mm
φの紡糸ノズルを用いて溶融紡糸したところ、ピッチ繊
維直径15μmにおいて糸切れなく円滑に紡糸できた。
φの紡糸ノズルを用いて溶融紡糸したところ、ピッチ繊
維直径15μmにおいて糸切れなく円滑に紡糸できた。
このピッチ繊維(原糸)を空気雰囲気中で徐々に温度を
上げながら最終的に300℃で不融化した後、不活性ガ
ス雰囲気中で1000℃まで炭化焼成した。
上げながら最終的に300℃で不融化した後、不活性ガ
ス雰囲気中で1000℃まで炭化焼成した。
得られた炭素繊維の引張り強度は17Ton/cm2、弾性率
1490Ton/cm2であった。
1490Ton/cm2であった。
実施例4 撹拌羽根および還流冷却器を備えたフラスコに、C9芳
香族留分(重質改質油の160〜180℃の沸点範囲の
留分)350g、パラホルムアルデヒド62g、75%
硫酸135gを仕込み、反応温度125℃で4時間反応
させた。
香族留分(重質改質油の160〜180℃の沸点範囲の
留分)350g、パラホルムアルデヒド62g、75%
硫酸135gを仕込み、反応温度125℃で4時間反応
させた。
反応終了後、トルエン200gを加えた後、水層が中性
になるま純水を加えて洗浄した。
になるま純水を加えて洗浄した。
その後、減圧蒸留(120℃/10mmHg)で未反応物を
除去し、重合物250gを得た。
除去し、重合物250gを得た。
更に、減圧蒸留(240℃/1mmHg)を行ない、留出油
150gと釜残として重質物100gを得た。
150gと釜残として重質物100gを得た。
この重質物の酸素含有量は、0.2重量%であった。
上記重質物50gを窒素を用いた不活性雰囲気中で41
0℃で還流させながら5時間反応させた後、減圧蒸留
(400℃/10mmHg)で軽質分を除去し、メソフェー
ズピッチ化を行ない、ピッチ22gを得た。
0℃で還流させながら5時間反応させた後、減圧蒸留
(400℃/10mmHg)で軽質分を除去し、メソフェー
ズピッチ化を行ない、ピッチ22gを得た。
このピッチの性状は、光学的異方性100%、軟化点2
25℃、H/C値0.80、トルエン不溶分37.5重
量%であった。
25℃、H/C値0.80、トルエン不溶分37.5重
量%であった。
このピッチを、紡糸温度280℃で、ノズル孔0.5mm
φの紡糸ノズルを用いて溶融紡糸したところ、ピッチ繊
維直径15μmにおいて糸切れなく円滑に紡糸できた。
φの紡糸ノズルを用いて溶融紡糸したところ、ピッチ繊
維直径15μmにおいて糸切れなく円滑に紡糸できた。
このピッチ繊維(原糸)を空気雰囲気中で徐々に温度を
上げながら最終的に300℃で不融化した後、不活性ガ
ス雰囲気中で1000℃まで炭化焼成した。
上げながら最終的に300℃で不融化した後、不活性ガ
ス雰囲気中で1000℃まで炭化焼成した。
得られた炭素繊維の引張り強度は21Ton/cm2、弾性率
1670Ton/cm2であった。
1670Ton/cm2であった。
この繊維の一部をアルゴン雰囲気中2500℃で黒鉛化
した。
した。
この黒鉛化繊維の引張り強度は38Ton/cm2、弾性率7
900Ton/cm2であった。
900Ton/cm2であった。
比較例1 市販のメシチレンホルムアルデヒド樹脂(商品名ニカノ
ールM)を本発明の重合物の代わりに用いた。
ールM)を本発明の重合物の代わりに用いた。
この酸素含有量を分析したところ、11.5重量%であ
った。
った。
この樹脂100gを実施例1と同じ条件で加熱処理し、
軽質分を除去して、黒色のピッチ5gを得た。
軽質分を除去して、黒色のピッチ5gを得た。
このピッチは、光学的異方性90%であったが、軟化点
は275℃であり、紡糸温度は335℃であった。
は275℃であり、紡糸温度は335℃であった。
(発明の効果) 本発明の光学的異方性ピッチは、従来殆ど利用されてい
なかった、化学構造の限定された低分子量化合物を出発
原料とするところに特徴がある。
なかった、化学構造の限定された低分子量化合物を出発
原料とするところに特徴がある。
そして、光学的異方性が高いにもかかわらず、従来の石
炭もしくは石油系メソフェーズピッチよりはるかに低い
温度で紡糸できる、全く新しいタイプのピッチである。
炭もしくは石油系メソフェーズピッチよりはるかに低い
温度で紡糸できる、全く新しいタイプのピッチである。
本発明のピッチは、軟化点が180〜250℃であるた
め、従来技術では困難であった300℃以下の低い温度
で容易に、かつ長時間安定して紡糸できる。
め、従来技術では困難であった300℃以下の低い温度
で容易に、かつ長時間安定して紡糸できる。
また、従来のメソフェーズピッチのように繊維の欠陥原
因となる灰分などの不純物が少ない。
因となる灰分などの不純物が少ない。
このため、本発明のピッチは、炭素繊維製造用原料ピッ
チとして優れた性状を有し、引張り強度の高い炭素繊維
を製造することができる。
チとして優れた性状を有し、引張り強度の高い炭素繊維
を製造することができる。
更に、本発明のピッチを従来のメソフェーズピッチに混
ぜることにより、光学的異方性を減ずることなく、軟化
点を下げて紡糸性を改善することもできる。
ぜることにより、光学的異方性を減ずることなく、軟化
点を下げて紡糸性を改善することもできる。
Claims (2)
- 【請求項1】メチル基および/またはエチル基により2
ないし4個置換された炭素数9ないし10個のアルキル
ベンゼンと、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒド
を出発原料として、プロトン酸を触媒として重合反応を
行ない、酸素含有量2重量%以下の重合物を製造し、こ
の重合物を加熱処理し、次いで軽質分を除去してなる光
学的異方性を有する炭素繊維用原料ピッチ。 - 【請求項2】ピッチの性状が、光学的異方性85%以
上、軟化点180〜250℃、水素と炭素の原子比(H
/C)0.75〜0.85、トルエン不溶分50重量%
以下である、特許請求の範囲第1項記載の炭素繊維用原
料ピッチ。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8138485 | 1985-04-18 | ||
JP60-81384 | 1985-04-18 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6243461A JPS6243461A (ja) | 1987-02-25 |
JPH0623312B2 true JPH0623312B2 (ja) | 1994-03-30 |
Family
ID=13744803
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7429886A Expired - Lifetime JPH0623312B2 (ja) | 1985-04-18 | 1986-04-02 | 炭素繊維用原料ピツチ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0623312B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS63315614A (ja) * | 1987-06-19 | 1988-12-23 | Mitsubishi Oil Co Ltd | 高導電性黒鉛繊維の製造法 |
JP6392701B2 (ja) * | 2015-05-12 | 2018-09-19 | 株式会社神戸製鋼所 | 炭素繊維製造用原料ピッチ |
-
1986
- 1986-04-02 JP JP7429886A patent/JPH0623312B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6243461A (ja) | 1987-02-25 |
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