JPH06220769A - フィブリル化織編物およびその製造方法 - Google Patents

フィブリル化織編物およびその製造方法

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JPH06220769A
JPH06220769A JP5026001A JP2600193A JPH06220769A JP H06220769 A JPH06220769 A JP H06220769A JP 5026001 A JP5026001 A JP 5026001A JP 2600193 A JP2600193 A JP 2600193A JP H06220769 A JPH06220769 A JP H06220769A
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Japan
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woven
fibrillated
fabric
rubbing
filaments
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JP5026001A
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English (en)
Inventor
Sumio Hishinuma
澄男 菱沼
Fumiko Tanizaki
文子 谷崎
Takashi Shiotani
隆 塩谷
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 フィブリル化織編物およびその製造方法 【目的】 優れた腰・反発性、引裂強力と真珠様のマイ
ルドな光沢を有すると共に、ファスナー欠点をもたず、
しっとり感のあるパウダータッチなピーチスキンタッチ
の織編物およびその製造方法を提供すること。 【構成】 単糸繊度0.8デニール以上のフィラメント
からなるマルチフィラメント糸を構成糸とする織編物で
あり、該織編物の少なくとも片面に有する組織交錯点総
数の60〜95%が表層部をフィブリル化され、そのフ
ィブリル化された各組織交錯点での切断フィラメント数
が前記構成糸のフィラメント数の20%以下であるフィ
ブリル化織編物。基端側の剛性を大にし、先端ほど可撓
性を大きくしたシート状粗面体の先端部により織物表面
を叩打し、かつその叩打時の擦過圧力を10〜70g/
mm、処理張力を2〜30g/mmにして擦過処理するフィ
ブリル化織編物の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ピーチスキンタッチを
有するフィブリル化織編物およびその製造方法に関し、
更に詳しくは良好な腰・反発性、引裂強力、マイルドな
光沢を有し、かつファスナー欠点をもたないパウダータ
ッチなピーチスキンタッチの織編物およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、桃のウブ毛に似たピーチスキンタ
ッチと呼ばれる非常に手触りのよい風合をもつ織編物の
需要が急増している。従来、このようなピーチスキンタ
ッチを有する織編物としては、0.05〜0.5デニー
ルの極細繊維を用いたものと、起毛加工で表面に毛羽を
出すようにしたものとが知られている。しかし、これら
従来のピーチスキンタッチの織編物のうち、前者の極細
繊維使いの織編物は、極細繊維を使用するため風合がク
タクタして腰・反発性がなく、また布帛の引裂強力も低
いという欠点があった。
【0003】他方、後者の起毛加工した織編物は、針布
や研磨紙等の起毛手段によって繊維を切断し、その布帛
表面に毛羽を出すようにしたものであるため、風合がふ
かふかしたり、もさもさしたものとなり、かつ布帛の引
裂強力も低いというという問題があった。また、起毛加
工品特有のファスナー欠点と呼ばれる現象、つまり、毛
羽面同士を合わせたときに強い密着力 (ファスナー効
果)が作用するため布帛を引き吊ったり、或いは毛羽面
が内衣と摩擦を起こして着心地を悪くしたり、或いは仕
立て栄えが乏しくなる等の欠点があった。光沢について
も、前述した従来の織編物では、極細繊維品は、繊維表
面積が増大するためギラギラ感の強い光沢になり、また
起毛加工品は、表面に多量の毛羽が発生しているため光
の吸収量が大きくなり、どんよりとした鈍い光沢にな
り、いずれの場合も、真珠のような微妙なマイルドな光
沢を得ることはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
した従来のピーチスキンタッチねらいの極細繊維品や起
毛加工品の欠点を解消し、優れた腰・反発性、引裂強力
と真珠様のマイルドな光沢を有すると共に、ファスナー
欠点をもたず、しっとり感のあるパウダータッチなピー
チスキンタッチの織編物およびその製造方法を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明は、単糸繊度0.8デニール以上のフィラメントから
なるマルチフィラメント糸を構成糸とする織編物であ
り、該織編物の少なくとも片面に有する組織交錯点総数
の60〜95%が表層部をフィブリル化され、そのフィ
ブリル化された各組織交錯点での切断フィラメント数が
前記構成糸のフィラメント数の20%以下であるフィブ
リル化織編物を特徴とするものである。また、その製造
方法は、単糸繊度0.8デニール以上のフィラメントか
らなるマルチフィラメント糸を構成糸とする織編物の表
面を、基端側の剛性を大にし、先端ほど可撓性を大きく
したシート状粗面体の先端部により叩打し、かつその叩
打時の擦過圧力を10〜70g/mm、処理張力を2〜3
0g/mmにして擦過処理することを特徴とするものであ
る。
【0006】本発明のフィブリル化された織編物は、単
糸繊度が0.8デニール以上のフィラメントからなるマ
ルチフィラメント糸から構成され、少なくとも片面を毛
羽を発生させない程度にフィブリル化されていることに
より、優れた腰・反発性と引裂強力とを有する。かつ、
表面は細やかなパウダータッチなピーチスキンタッチと
真珠様のマイルドな光沢を有するものとなる。また、表
層部に実質的に毛羽が存在しないためファスナー欠点も
ないものとなる。かかるフィブリル化織編物の製造方法
は、基端側の剛性を大にし、先端ほど可撓性が大となる
ようなシート状粗面体で擦過するため、被処理織編物の
ごく表層部分だけを鋭く、浅く、広く、かつ均一に処理
することができ、上記ピーチスキンタッチの条件を備え
た布帛を効率よく得ることができる。
【0007】本発明において、織編物の構成糸として使
用するマルチフィラメントは、単糸繊度0.8デニール
以上、好ましくは1.0〜3.0デニールのフィラメン
トから構成される。このような単糸繊度によって、織編
物の優れた腰・反発性や引裂強力を維持することができ
る。また、構成糸の素材は特に限定されないが、なかで
もポリエステル、ポリアミド、アクリル、アセテート、
レーヨン等は好ましい材料である。ポリエステルでは、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレ
ート系ポリエステルで、ポリエチレンテレフタレートに
アルキレングリコールやジカルボン酸、ナトリウムスル
ホイソフタル酸等を共重合したポリエステルが特に好ま
しい。ポリアミドではナイロン−6、ナイロン−66等
が特に好ましく適用される。
【0008】織編物の構成糸の形態としては、未加工の
原糸は勿論のこと、ウーリー加工糸、強撚糸なども使用
可能である。特に強撚糸を用いたジョーゼット、チリメ
ン、デシン等の強撚糸織物、編物は、ジャリ感が大幅に
改善され、従来にない高品質な風合を得ることができ
る。織編物の組織は特に限定されないが、織物の場合は
平織、綾織が本発明による加工を均一に行いやすいため
に好ましい。編物の場合は、インターロック、モックミ
ラノリブ、天竺などの丸編地およびハーフトリコットな
どが特に好ましく適用される。本発明が適用される織編
物の織密度や編密度は高密度にするほどよく、優れた腰
・反発性のある風合を得やすくする。
【0009】本発明において組織交錯点とは、織物の場
合には、タテ糸とヨコ糸とが互いに交錯し、その表面側
に露出する糸(例えばタテ糸)が他方の糸(例えばヨコ
糸)により前後(または左右)を区分された領域をい
う。また、編物の場合には、ループの交錯点において、
外側に露出する一方の部分が他方の糸により前後または
左右を区分された領域をいう。
【0010】本発明の織編物は、片面当りに存在する組
織交錯点の総数の60〜95%、好ましくは70〜90
%が擦過によってフィブリル化させてある。本発明にお
いてフィブリル化とは、構成糸の単糸(フィラメント)
が完全な切断には至らないで割繊化(ミクロフィブリル
化)された状態になることをいう。また、このフィブリ
ル化は、必ずしも単糸全体が割繊化されている必要はな
く、糸断面の一部だけが割繊化されている場合も含まれ
る。このようなフィブリル化や単糸切断の測定は、走査
型電子顕微鏡 (SEM) で50〜200倍の倍率に拡大
して観察するものとする。
【0011】本発明では、かかるフィブリル化された組
織交錯点では、その表層部で切断されている単糸フィラ
メントの数は極力少なくする必要があり、存在していて
も構成糸のフィラメント数の20%以下、好ましくは8
〜15%にしなければならない。フィブリル化された組
織交錯点1個所当りに存在する切断フィラメント数が2
0%を超えていると、毛羽立ちが著しくなってファスナ
ー欠点を生ずるようになる。
【0012】本発明において、組織交錯点における構成
糸の単糸1本でもフィブリル化していれば、フィブリル
化された組織交錯点として数えるものとする。このフィ
ブリル化された組織交錯点の比率は、織編物から無作為
に100cm2 ずつを10個からサンプリングし、これ
らサンプルにおけるフィブリル化された組織交錯点の数
を組織交錯点総数に対する比率として計算し、これらの
10個所の平均値をもって算出するものとする。
【0013】織編物の片面当りにおいて、フィブリル化
された組織交錯点の比率が60%未満であると、織編物
に占めるフィブリル化された面積が少ないため、本発明
の目的とするピーチスキンタッチ効果を奏することはで
きない。また、95%を超えたフィブリル化は、擦過処
理が過剰になりすぎるため毛羽や破れを生じ、ファスナ
ー欠点を生じやすくなる。また、フィブリル化状態にな
っている単糸フィラメントは、擦過によって扁平化され
た後の扁平度 (長径/短径比) が1.2〜1.6のもの
になっていることが好ましい。
【0014】本発明の織編物は、いずれか一方の面 (片
面) だけをフィブリル化し、他方は未処理のままにして
ある方が望ましいが、両面ともフィブリル化されていて
もよい。片面だけをフィブリル化する場合の方が、腰・
反発性や引裂強力の向上の上で有利であるからである。
両面をフィブリル化する場合は、いずれか一方の面は、
他方よりも弱いフィブリル化にすることが望ましい。本
発明の織編物において、その両面の表面粗さ (SMD
値) を対比するとき、非フィブリル化面、または弱フィ
ブリル化面の表面粗さは、フィブリル化されている面の
表面粗さに対して1. 1〜1. 7倍、さらに好ましくは
1.2〜1. 5倍にすることが表裏のピーチスキンタッ
チの風合差やファスナー欠点をなくす上で望ましい。
1. 1倍未満ではファスナー欠点が大きく発生するか、
或いはパウダータッチが全くないかの両極端となる。
1. 7倍を超える場合は表裏の凹凸差が違いすぎて、風
合差やファスナー欠点の差が大きすぎるようになる。な
お、ここで表面粗さのSMD値とは、風合測定器のKE
S−FB4 (カトーテック (株) 製) を用いて、布帛の
タテ・ヨコ方向を測定した平均値で表わしたものであ
る。
【0015】また、織編物の両面における光沢度および
光沢幅の対比についても、非フィブリル化面、または弱
フィブリル化面は、フィブリル化されている面に対し
て、それぞれ光沢度は1. 1〜1. 4倍、光沢幅は2.
5〜5. 0倍であるようにすることが望ましい。光沢度
の比が、1. 1倍未満では両面の光沢差が小さく、光沢
が沈んでしまうか、或いはギラギラした光沢となる。ま
た、1. 4倍を超えるものは、表裏両面が異質の光沢感
となってしまう。光沢幅の比が、2. 5倍未満の場合は
表裏の変化に乏しく、平凡な光沢になる、また、5. 0
倍を超えるものは、表裏の光沢の方向性が違いすぎるよ
うになる。なお、ここで光沢は、三次元光沢計により、
入射角45°、反射角45°の条件で、織編物試料を0
〜360°回転させながら測定したものであり、この時
の光沢の強さの最大値と最小値との平均値が光沢度であ
り、また、最大値と最小値との差が光沢幅 (光沢の方向
性) である。
【0016】上述した本発明のフィブリル化織編物の製
造方法は、以下に図を参照して説明するような擦過処理
によって効率的に行うことができる。図1は、本発明の
製造方法に適用する装置を例示するものである。支持ロ
ール2は被処理用の布帛Fを巻回させて移送させるもの
で、比較的大きな径を有しており、その外周にピンチロ
ール1とニップロール3とを配置すると共に、その中間
位置に独立した駆動系によって回転する二つの擦過用回
転体4が連続配置されている。
【0017】被処理用の布帛Fは、単糸デニール0.8
デニール以上のフィラメントからなるマルチフィラメン
トを構成糸とする織物又は編物である。この布帛Fは、
拡布状でピンチロール1に挟まれ、次いで支持ロール2
の外周に約3/4周密着状態に支持されて通過したの
ち、ニップロール3から離脱されるようになっている。
擦過用回転体4は、ロール6の外周に複数のシート状粗
面体5が一定間隔に放射状に固定されて構成されてい
る。シート状粗面体5は、研磨フィルムからなり、その
厚みがロール6に固定する側で厚く、剛性が大にしてあ
り、先端ほど薄く、可撓性が大になるように形成されて
いる。この擦過用回転体4は、図1に示すように布帛F
の搬送方向(支持ロール2の回転方向)と反対方向に回
転することにより、先端を撓ませながら布帛Fの表面を
叩打するようになっている。
【0018】本発明に適用する擦過用回転体4における
シート状粗面体5は、その先端部ほど可撓性を大にする
一方で、基端部は大きな剛性を有するように構成されて
いることが重要である。このような要件を備えた好まし
い擦過用回転体として、図2〜図4に示すような構造の
ものを例示することができる。
【0019】図2〜図4の擦過用回転体4のシート状粗
面体5は、厚さ0.20mm程度の可撓性の1枚の研磨フ
ィルムa1 、厚さ0.05〜0.20mm程度の可撓性を
有する3枚の金属薄板b1 〜b3 および厚さ1. 0mm以
上の非可撓性の金属厚板b4を積層し、かつ半径方向の
長さを、研磨フィルムa1 が最も長く、金属薄板b1
3 および金属厚板b4 の順に次第に短くするように構
成されている。このような構成により、シート状粗面体
5は、長さAの可撓部、長さBの非可撓部、また軸方向
に幅Cを有するように構成され、可撓部は先端ほど厚み
を薄くすると共に、先端ほど可撓性を大きくするように
なっている。
【0020】このシート状粗面体は、上述のように基端
部の剛性を高くし、先端ほど可撓性を大きくした構成に
なっているので、曲げに対する腰・反発性を全体として
強くするようになっている。したがって、先端部を撓ま
せて布帛表面を擦過させるときの切削作用を強く鋭く切
り込ませ、布帛表層部だけを浅く、広く、かつ均一にす
ることができる。また、先端部ほど可撓性を大きいた
め、厚さ0. 1〜0. 2mmの薄地布帛であっても、表層
部だけの均一な切削加工を可能にする。擦過用回転体に
おけるシート状粗面体の可撓部長さAは適度に短くする
ことが望ましい。それによって長さAの可撓部の先端部
を金属厚板b4 側に撓ませるときの擦過を強くし、組織
交錯点の構成糸の表面を、浅く、広く、かつ均一に処理
できるようになる。さらに具体的には、擦過用回転体の
半径を250mmとした場合、シート状粗面体の全長 (A
+B) は100〜150mm、可撓部長さAは20〜38
mm、非可撓部長さBは75〜100mmとし、布帛に接触
して長さAの可撓部が撓む長さは10〜27mmになるよ
うにすることが好ましい。
【0021】本発明の製造方法では、上記シート状粗面
体の可撓部により布帛表面を擦過するとき、その擦過圧
力を布帛の幅1mm当り10〜70g/mmにすると共に、
処理張力を布帛の幅1mm当り2〜30g/mmにする。擦
過圧力が10g/mm未満では十分な擦過面積を処理する
ことが難しく、本発明が目的とするピーチスキンタッチ
の織編物は得られなくなる。また、70g/mmを超える
場合は、擦過が強すぎることによって毛羽立ちを多くす
るようになる。この擦過圧力は、被処理布帛の厚さに応
じて変えることが好ましく、その目安として、薄地の場
合は13〜26g/mm、中厚地の場合は15〜30g/
mm、厚地の場合は20〜60g/mmにすると特によい。
【0022】また、処理張力は2g/mm未満では張力が
弱すぎるため、布帛がだぶり、シワが発生して均一な処
理が困難となる。また、30g/mmを超える場合は、タ
テ方向の構成糸に張力がかかりすぎるためヨコ方向の構
成糸が浮き上がり、タテ・ヨコのバランスが崩れるため
均一な処理が困難になる。この処理張力も、被処理布帛
の厚さに応じて変えることが好ましく、その目安とし
て、薄地の場合は4〜20g/mm、中厚地の場合は10
〜25g/mm、厚地の場合は15〜28g/mmにすると
特によい。ここで、擦過圧力とは、図1に示す装置にお
いて擦過用回転体を静かに回転させ、1枚のシート状粗
面体の先端部が撓みながら同幅の布帛に接触した時の抵
抗力をバネ秤で測定し、その抵抗力を擦過された布帛の
幅 (mm) で除した値 (g/mm) で表わしたものである。
【0023】また、処理張力は、図1に示す装置におい
て、ピンチロール1とニップロール3との間の布帛Fに
かかる長さ方向の全張力 (g) を張力計で測定し、その
全張力を布帛の幅 (mm) で除した値 (g/mm) で表した
ものである。本発明に使用されるシート状粗面体として
は、研磨フィルムが好ましく使用される。その研磨剤と
しては、酸化アルミナ、炭化ケイ素が好ましい。好まし
い研磨剤の粒番は、薄地を処理する場合は♯1000〜
♯600、中厚地および厚地を処理する場合は♯600
〜♯400が望ましい。布帛を擦過処理するときの1工
程当りの擦過用回転体の数としては2〜4体とし、その
1体当りに取り付けるシート状粗面体の枚数は6〜18
枚にするのがよい。また、擦過処理時の擦過用回転体の
回転数は、150〜300r.p.m として処理するのがよ
い。かかる擦過処理を行なったのち、織編物を常法に従
って染色、プリント等を行なって仕上げる。擦過処理
は、好ましくは染色前に行うのがよく、それによって布
帛の色が白っぽくなるのを防ぐことができる。
【0024】
【実施例】以下に実施例および比較例を説明するが、こ
れら実施例および比較例で示した布帛の評価は下記の方
法によって行った。 <擦過状態>走査型電子顕微鏡 (SEM S−2100
A (株) 日立製作所製) を使用し、織編物の組織交錯
点における構成糸のフィブリル化状態を、それぞれ50
倍と150倍に拡大し、10個所について写真撮影する
ことにより評価した。
【0025】<表面粗さ>SMD値を測定して評価し
た。SMD値が小さいほど、滑めらかで、パウダータッ
チのピーチスキンタッチになることを意味する。 <光沢>三次元偏光光沢計JSG−21 ( (株) 城南製
作所製) を用い、本文中に記載の方法で織編物の光沢度
および光沢幅を測定した。光沢度が小さい程、光沢強度
が弱く、光沢幅が小さい程、光沢の方向性が少ないこと
を意味する。 <腰・反発性>織編物全体の風合を5人のパネラーによ
り官能評価し、次の4段階に分類して評価した ◎:腰・反発性が極めて良好 ○:腰・反発性が良好 △:腰・反発性が欠け不良 ×:腰・反発性が極めて不良
【0026】<引裂強力>JIS L1096 (ペンジ
ュラム法) に従って測定した。引裂強力が800g以上
のものが、実用性に富むとされている。 <ファスナー欠点>織編物を30×30cmのサイズに2
枚に折りまげ、その擦過処理面同士を30×30cmのサ
イズに重ね合わせ、それに2kgの金属板の荷重をかけて
10分間放置する。その後除重し、互いに重ねた擦過処
理面を2枚にはがす際の剥離力により、下記のように評
価した。 ◎:スムーズにはがれ極めて良好 ○:はがれ略良好 △:はがれにくいため不良 ×:極めて不良 <擦過圧力>前述の本文中に記載の方法で測定し、5回
測定の平均値で表わした。
【0027】<処理張力>張力測定装置としてMBテン
ションセンサー ( (株) ニレコ製) を使用したことを除
き、前述の本文中に記載の方法で測定し、5回測定の平
均値で表わした。 実施例1 70デニール、52フィラメント (単繊維繊度1.3デ
ニール) のポリアミド繊維マルチフィラメント糸の三角
断面糸 (ナイロン−6、“アミック”、東レ (株) 製)
をタテ糸およびヨコ糸に使用して平織物 (タフタ) を製
織し、これを常法により精練、セットして、幅127c
m、タテ糸密度122本/吋、ヨコ糸密度86本/吋の
織物を作製した。その表面は図8に示す電子顕微鏡写真
(倍率150倍) のようになっていた。
【0028】この織物を被処理布帛として、図1に示す
擦過用回転体を2個設けた装置に、各擦過用回転体のシ
ート状粗面体として、図2〜図3に示す構成で、諸元を
下記のようにしたものを使用し、擦過圧力21.3g/
mm (27.1kg/127cm)、処理張力8.7g/mm
(11.0kg/127cm) で5.0m/分の処理速度
で、この織物の片面だけを擦過処理(1回処理)した。
このときの擦過用回転体の回転速度は250r.p.m 、シ
ート状粗面体先端部の布帛に対する食い込み深さは16
mmの条件とした。
【0029】シート状粗面体の諸元 研磨フィルム (a1 ) 材質:ポリエステル系フィルム 砥粒:粒番♯800のアルミナ砥粒 (WA砥粒) 金属板 (b1 〜b4 ) 材質:炭素鋼板 厚み:b1 ,b2 =0.08mm b3 =0.12mm、b4 =0.80mm 可撓部の長さA :35mm 非可撓部の長さB :50mm 軸方向の幅C :1270mm 擦過用回転体1個当りの枚数: 9枚
【0030】上記擦過処理ののち、常法により酸性染料
で若草色に染色して仕上げた。得られたナイロンタフタ
織物の評価結果は表1に示す通りであった。
【表1】
【0031】得られた織物は、その表面が図5に示す電
子顕微鏡写真 (倍率150倍) のようになっており、各
組織交錯点において構成糸が均一に、浅く、広く、フィ
ブリル化されていた。そのフィブリル化状態は、構成糸
の単糸が非常に細かく、扁平にフィブリル化され (平均
扁平度:1.4、平均フィブリル化サイズ:2〜8μ
m) 、単糸切断は極めて少ないため殆んど毛羽立ちがな
かった。そのため織物の表面はマイルドな柔らかい光沢
を有し、ファスナー欠点がなく、しっとり感のあるパウ
ダータッチのピーチスキンタッチを有していた。また、
良好な腰・反発性と引裂強力を有していた。また、擦過
処理操作は作業性、取扱い上の問題もなく、簡単に効率
よく処理することができた。
【0032】比較例1 シート状粗面体の可撓部における金属板 (b1 〜b3
および研磨フィルム (a1 ) の長さを、実施例1のよう
に先端部に向けて漸減した形状にしないで、全て同じ長
さにし、かつ擦過処理時の先端部の食い込み深さを20
mm、擦過圧力を31.5g/mm、処理張力を37g/mm
をしたことを除いて、実施例1と同様に擦過処理し、染
色仕上げした。得られたナイロン織物の表面の電子顕微
鏡写真 (倍率150倍) は図6のようであり、かつ評価
結果は表1に示す通りであった。織物の組織交差点にお
ける構成糸は、単糸切断が多く、毛羽立ちが多く存在し
ていた。また、擦過処理操作は、部分的に処理ムラが見
られ、シート状粗面体は擦過処理後に折れ曲がり、再使
用不能になった。
【0033】比較例2 擦過用回転体として、ロールに研磨紙を巻きつけたもの
を使用し、実施例1で使用したナイロン織物を通常のバ
フ加工(擦過処理)し、そののち染色仕上した。このと
きの擦過処理は、擦過用回転体の回転数を1000rpm
とした以外は、研磨紙の粒番、処理速度、処理回数は実
施例1と同様とした。このときの擦過処理操作はタテ張
力が強いためヨコ糸がより多く擦過され、タテ糸の方は
殆んど擦過されなかったため不均一な加工になった。ま
た、腰・反発性のなく、毛羽立ちが多いためファスナー
欠点があった。得られたナイロン織物の表面の電子顕微
鏡写真 (倍率150倍) は図7のようであり、評価結果
は表1に示す通りであった。
【0034】比較例3 実施例1で使用したナイロン織物を擦過処理せずに、染
色仕上だけした。その織物の表面の電子顕微鏡写真は図
8に示す通りであり、かつ評価結果は表1に示す通りで
あった。 実施例2 <処理布>タテ糸に75デニール、72フィラメント
(単繊維繊度1.04デニール) のポリエステル繊維マ
ルチフィラメント糸を、またヨコ糸に75デニール、3
6フィラメント (単繊維繊度2.08デニール) のポリ
エステル繊維マルチフィラメント糸を用い、これらタテ
糸、ヨコ糸にそれぞれ3000回/mの撚をかけて、平
織のジョーゼットクレープ織物を製織した。次いで、常
法によりシボ立て、セットし、アルカリ減量 (減量率:
25%) を行って、幅113cm、タテ糸密度174本/
吋、ヨコ糸密度91本/吋の高密度の強撚ジョーゼット
クレープ織物を用意した。この強撚ジョーゼットクレー
プ織物を被処理布帛として、擦過圧力26.6g/mm
(30.1kg/113cm) 、処理張力13.3g/mm
(15.0kg/113cm) 、研磨フィルムの研磨剤の粒
番♯600で、8m/分の処理速度とした以外は実施例
1と同様にして、片面だけを擦過処理した。擦過処理し
たのち、常法により分散染料を用いて、クリーム色に染
色仕上げした。得られた織物の評価結果は表2に示す通
りであった。
【0035】
【表2】 得られた強撚ジョーゼットクレープ織物の表面は、極め
て均一にフィブリル化されており、マイルドな光沢とジ
ャリ味のない、しっとりとしたパウダータッチなピーチ
スキンタッチを有する素晴しい高密度のジョーゼットク
レープ織物であった。また、織物は腰・反発性があり、
ファスナー欠点や、引裂強力に問題のない高品質のもの
であった。
【0036】比較例4 シート状粗面体の布帛に対する食い込み深さを24mmに
し、擦過圧力を77.5g/mm、処理張力を42g/mm
にした以外は実施例2と同様にして擦過処理したのち、
染色仕上げをした。得られた織物の評価結果は、表2に
示す通りであった。織物表面の毛羽立ちは著しく、ファ
スナー欠点が目立った。また、引裂強力は低下し、腰・
反発性も低くなっていた。 実施例3 50デニール、48フィラメント(単糸繊度104デニ
ール)のポリエステル繊維マルチフィラメント糸を用い
て、インターロックに丸編した。次いで、常法により精
練、セットして、幅155cm、ウェール密度62本/
吋、コース密度58本/吋の丸編地を作製した。この丸
編地を被処理布帛として、擦過圧力15.1g/mm、処
理張力4.8g/mmとした以外は実施例1と同様にして
擦過処理を行ない、次いで常法により、染色 (色相:
黒) 仕上げした。得られた編物は、組織交錯点の80.
2%がフィブリル化され、構成糸の切断フィラメント数
は12%になっており、非常にパウダータッチなピーチ
スキンタッチで、光沢も柔らかい特徴ある黒の編物であ
った。また、表裏の表面粗さの比が1.42倍、光沢度
比が1.24倍、光沢幅の比が3.4倍であり、ファス
ナー欠点および強力面 (引裂強度3.5g/cm) で問題
ないものであった。
【0037】実施例4 75デニール、36フィラメント(単糸繊度2.08デ
ニール)のポリエステル繊維マルチフィラメント糸を常
法でウーリー加工し、それをタテ糸とヨコ糸にそれぞれ
用いてツイル織物 (2/2綾) に製織した。次いで精練
乾燥して、幅148cm、タテ糸密度130×99本/吋
の織物にした。この織物を被処理布帛として、実施例1
と同様にして擦過処理し、常法に従ってグレーに染色仕
上げした。得られた織物は、非常にしっとり感のパウダ
ータッチなピーチスキンタッチを有し、マイルドな光沢
を有する素晴しいグレーのツイル織物であった。ファス
ナー欠点や引裂強力の低下もなく、優れた腰・反発性を
有していた。
【0038】
【発明の効果】上述したように、本発明によるフィブリ
ル化織編物は、表面がマイルドな光沢としっとり感のあ
るパウダータッチなピーチスキンタッチを呈し、良好な
腰・反発性と高い引裂強力を有し、かつ毛羽が殆んどな
いファスナー欠点のない高品質な布帛にすることができ
る。また、本発明による製造方法によれば、上記フィブ
リル化織編物を簡単、かつ均一に効率よく製造すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィブリル化織編物の製造方法を実施
する装置の概略図である。
【図2】図1の装置に使用される擦過用回転体の一例を
示す側面図である。
【図3】図2の擦過用回転体のシート状粗面体を示す側
面図である。
【図4】図3のシート状粗面体をIV矢視から見た正面
図である。
【図5】本発明の方法により製造されたナイロン織物の
表面状態を示す走査型顕微鏡写真である。
【図6】比較例の方法で製造されたナイロン織物の表面
状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】他の比較例で製造されたナイロン織物の表面状
態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】擦過処理しないナイロン織物の表面状態を示す
走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 ピンチロール 2 支持ロ
ール 3 ニップロール 4 擦過用
回転体 5 シート状粗面体 a 研磨フ
ィルム b1 〜b4 金属板 F 布帛 A 可撓部の長さ B 非可撓
部の長さ C シート状粗面体の幅

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単糸繊度0.8デニール以上のフィラメ
    ントからなるマルチフィラメント糸を構成糸とする織編
    物であり、該織編物の少なくとも片面に有する組織交錯
    点総数の60〜95%が表層部をフィブリル化され、そ
    のフィブリル化された各組織交錯点での切断フィラメン
    ト数が前記構成糸のフィラメント数の20%以下である
    フィブリル化織編物。
  2. 【請求項2】 単糸繊度0.8デニール以上のフィラメ
    ントからなるマルチフィラメント糸を構成糸とする織編
    物の表面を、基端側の剛性を大にし、先端ほど可撓性を
    大きくしたシート状粗面体の先端部により叩打し、かつ
    その叩打時の擦過圧力を10〜70g/mm、処理張力を
    2〜30g/mmにして擦過処理するフィブリル化織編物
    の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001073271A (ja) * 1999-07-08 2001-03-21 Toray Ind Inc 熱転写プリント用布帛およびその製造方法
WO2006009084A1 (ja) * 2004-07-22 2006-01-26 Chori Co., Ltd. 繊維製品の製造方法およびそれにより得られる繊維製品
CZ302978B6 (cs) * 1999-02-03 2012-02-01 Kufner Textil Gmbh Elastická vložka a zpusob její výroby

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