JPH0620912Y2 - サスペンション用アッパサポート - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案は車両のサスペンション用アッパサポートに関す
るものである。

従来技術 車両のサスペンションの一種に、車体に固定される金属
製板材の凸部の外周面に、筒状かつ弾性材料製のカバー
部材の一端部が嵌合されたアッパサポートと、シリンダ
およびピストンロッドを有し、前記カバー部材内を挿通
する状態で一端部が前記アッパサポートに固定され且つ
他端部が車輪側に取り付けられるショックアブソーバ
と、前記カバー部材の外周側において前記アッパサポー
トおよびショックアブソーバのシリンダの間に介挿され
た圧縮コイルスプリングとを備えて構成されたものがあ
り、前記カバー部材は、通常、その一端に一体に設けら
れた外向フランジが前記アッパサポートの金属製板材と
圧縮コイルスプリングとの間に挟まれることにより、金
属製板材の凸部外周面からの外れが防止されている。そ
して、上記アッパサポート、ショックアブソーバ、およ
び圧縮コイルスプリングを車両に組み付けるに先立っ
て、それらの部品を予め一体的に組み立てることが行わ
れており、斯かる組立て作業においては、通常、上記金
属製板材の凸部外周面にカバー部材の一端部を圧入によ
り嵌合してアッパサポートを予め一体的に構成し、その
後、そのアッパサポートのカバー部材をショックアブソ
ーバの外周側であって且つそのショックアブソーバに一
体的に設けられたスプリング受けに載置された圧縮コイ
ルスプリングの内周側に挿入してその圧縮コイルスプリ
ングの一端をカバー部材の外向フランジにて受けた状態
で、ショックアブソーバの一端部をアッパサポートに固
定することが行われている。

考案が解決すべき問題点 しかしながら、上記カバー部材の一端部の内径寸法およ
び金属製板材の凸部の外径寸法のばらつき等に起因し
て、カバー部材をその凸部の外周面に圧入により嵌合し
た場合に充分な締付力が得られず、アッパサポート、シ
ョックアブソーバ、および圧縮コイルスプリングを一体
的に組み立てる際に、カバー部材が前記凸部外周面から
外れてしまって、組立て作業性が損なわれる場合があっ
た。

これに対し、例えば実開昭６０−１７３７３５号公報や
特開昭５８−２２７０６号公報に記載の技術を参考にし
て、金属製板材の凸部の外周面であって且つカバー部材
の一端部が嵌合される部分に外側へ突き出すフランジ状
の突起を設け、カバー部材の一端部を金属製板材の凸部
の外周面に嵌合したときにそのカバー部材の一端部の内
周面に前記突起を弾性的に係合させるようにすれば、サ
スペンションの組立作業時においてカバー部材が金属製
板材の凸部から外れるのを好適に防止できると考えられ
る。

しかし、この場合においても未だ解決すべき問題を有し
ている。すなわち、カバー部材の一端部を金属製板材の
凸部外周面に嵌合する際には、前記突起の存在によりそ
のカバー部材の一端部を外周側へ比較的大きく拡張する
必要があるが、そのカバー部材の一端部の肉厚は前記外
向フランジの存在により他の部分よりも厚くなっている
ため、カバー部材の一端部を金属製板材の凸部外周面へ
嵌合する作業を円滑に為し難いという欠点があるのであ
る。

問題点を解決するための手段 本考案は以上の事情を背景として為されたものであっ
て、その目的とするところは、カバー部材の一端部を金
属製板材の凸部外周面へ嵌合する作業を阻害することな
く、サスペンションの組立て作業時においてカバー部材
の一端部が金属製板材の凸部外周面から外れるのを一層
確実に防止し得るアッパサポートを提供することにあ
る。かかる目的を達成するために、本考案は、凸部を有
して車体に固定される金属製板材と、筒状を成して一端
部に外周側へ突き出すフランジを有し、軸心と直角な方
向におけるそのフランジの厚みが他の部分の厚みよりも
厚い弾性材料製のカバー部材とを備え、前記金属製板材
の凸部の外周面にそのカバー部材の一端部が嵌合される
とともにそのカバー部材の周りに配設された圧縮コイル
スプリングの一端を前記フランジにおいて受ける形式の
サスペンション用アッパサポートにおいて、前記金属製
板材の凸部の外周面の前記カバー部材の一端部のフラン
ジが嵌合される部分よりもその凸部の突出方向へ所定距
離離隔した位置において外周側へ突き出すようにその金
属製板材に一体的に設けられ、突出端がその凸部の外周
面のフランジが嵌合される部分よりも内周側に位置し、
前記カバー部材の一端部をその凸部の外周面に嵌合する
際にそのカバー部材の内周面と弾性的に係合させられる
ことにより、そのカバー部材がその凸部の外周面から外
れるのを防止する係合突起を設けたことを特徴とする。

作用および考案の効果 このようにすれば、カバー部材の一端部を金属製板材の
凸部外周面に嵌合する際に、その金属製板材に一体的に
設けられた係合突起がカバー部材の内周面に弾性的に係
合させられることにより、それら金属製板材およびカバ
ー部材を一体的に備えたアッパサポート、ショックアブ
ソーバ、および圧縮コイルスプリング等から成るサスペ
ンションを組み立てる作業時において、カバー部材の一
端部が金属製板材の凸部外周面から外れるのを一層確実
に防止し得る。これにより、サスペンションの組立て作
業を一層円滑に為し得る。

この場合において、前記係合突起は、金属製板材の凸部
外周面のカバー部材のフランジが嵌合される部分よりも
その凸部の突出方向へ所定距離離隔した位置に設けられ
ているとともに、その係合突起の突出端は、前記凸部外
周面の前記フランジが嵌合される部分よりも内周側に位
置させられているので、カバー部材の一端部を凸部外周
面に嵌合する際には、そのカバー部材の一端部のフラン
ジが設けられている厚い部分を外周側へ拡張しなくても
そのフランジの内周側を係合突起が通過できるため、そ
の係合突起によりカバー部材の一端部の凸部外周面への
嵌合作業が阻害されることなく、上記効果が得られる。

実施例 以下、本考案の一実施例を示す図面に基づいて詳細に説
明する。

第１図は本考案が適用されたアッパサポートを備えたリ
ヤサスペンションの要部を示す図であって、１０はショ
ックアブソーバである。ショックアブソーバ１０は、一
端部（図中下端部）において図示しないリヤアクスルに
取り付けられるとともに外周面にスプリング受け１２が
一体的に固着されたシリンダ１４と、そのシリンダ１４
内に摺動可能に嵌合され且つシリンダ１４の他端部から
突出し可能に設けられたピストンロッド１６とを有して
構成されており、そのピストンロッド１６の先端部にお
いて、車体１８に固定されるアッパサポート２０に固定
されている。前記スプリング受け１２とアッパサポート
２０との間には、ショックアブソーバ１０の外周側にお
いて圧縮コイルスプリング２２が介挿されている。

アッパサポート２０は、突出端側（第１図において下
方）に向かう程径が小さくなる円錐台状の凸部２４が形
成されるとともに凸部２４の外周側にその凸部２４の突
出し方向と反対方向へ複数（第１図においては一個のみ
図示）のボルト２５が突設された第一金属製板材２６、
その凸部２４の裏側に形成された凹所内に埋設されると
ともに内周側に金属製の固定部材２８が一体成形により
固着されたゴム製の弾性体３０、および、その弾性体３
０を覆うように第一金属製板材２６に一体的に設けられ
た第二金属製板材３２を有し、前記ボルト２５により車
体１８に固定されるサポート本体３４と、比較的長い円
筒状を成し、一端部において第一金属製板材２６の凸部
２４の外周面に嵌合されるとともに外周側へ突き出すフ
ランジ３６が前記一端部に一体に設けられたゴム製のカ
バー部材３８とを備えて構成されている。上記フランジ
３６のカバー部材３８の軸心と直角な方向における厚み
は、カバー部材３８のフランジ３６以外の部分の厚みよ
りも大幅に厚くなっている。上記第一金属製板材２６が
本実施例の金属製板材に相当する。そして、カバー部材
３８が圧縮コイルスプリング２２の内周側であって且つ
ショックアブソーバ１０の外周側に位置するとともに、
ピストンロッド１６の先端部側が前記第一金属製板材２
６、弾性体３０、および固定部材２８をそれぞれ挿通す
る状態で、その固定部材２８とピストンロッド１６の段
付面との間にブッシュ４０を挟んでナット４２が締め付
けられることにより、ピストンロッド１６の先端部がア
ッパサポート２０に固定されている。このとき、カバー
部材３８のフランジ３６は第一金属製板材２６と圧縮コ
イルスプリング２２とによって挟まれており、これによ
り、カバー部材３８の第一金属製板材２６からの外れが
防止されている。

上記凸部２４の底部外表面には、ピストンロッド１６の
外周側であって且つカバー部材３８の内周側に位置する
状態で有底円筒状部材４４がその底部側において溶接等
により一体的に固着されている一方、ピストンロッド１
６の外周側にはダンパ４６が嵌合されており、そのダン
パ４６の一端部は有底円筒状部材４４の内周面に所定の
抜け荷重が付与された状態で嵌合されている。この有底
円筒状部材４４の外周面には、一端に外向きフランジ４
８を有する金属製かつ比較的薄肉の円筒状部材５０が一
体的に嵌合されており、その外向きフランジ４８の外周
縁部が前記カバー部材３８の内周面に僅かに（たとえば
０．５mm程度）喰い込んで弾性的に係合させられた状態
とされている。この円筒状部材５０は、板状素材に絞り
加工を施して円筒状部分を形成した後、外向きフランジ
４８を打抜き加工により形成して成形されたものであ
り、その外向きフランジ４８の外径寸法は比較的精度良
く確保されている。上記外向きフランジ４８は、本実施
例の係合突起に相当するものであって、第１金属製板材
２６の凸部２４外周面のカバー部材３８の一端部のフラ
ンジ３６が嵌合される部分よりも凸部２４の突出方向へ
所定距離離隔した位置に設けられているとともに、その
外向きフランジ４８の突出端は、前記凸部２４外周面の
カバー部材３８のフランジ３６が嵌合される部分よりも
内周側に位置させられている。なお、以上のように構成
されたショックアブソーバ１０、アッパサポート２０、
および圧縮コイルスプリング２２等の作動は本考案の理
解に必ずしも必要ではないとともに良く知られたもので
あるため、その詳細な説明は省略する。

上記ショックアブソーバ１０、アッパサポート２０，お
よび圧縮コイルスプリング２２等は車両に組み付けるに
先立って予め一体的に組み立てられる。この組立て作業
においては、まず、第一金属製板材２６に固着された有
底円筒状部材４４にダンパ４６を圧入により嵌合すると
ともに、その第一金属製板材２６の凸部２４外周面にカ
バー部材３８の一端部を圧入により嵌合することによ
り、ダンパ４６が取り付けられたアッパサポート２０を
組み立てる。このとき、前記円筒状部材５０の外向きフ
ランジ４８の外周縁部がカバー部材３８の内周面に喰い
込まされることにより、それら外向きフランジ４８の外
周縁部とカバー部材３８の内周面との弾性的な係合に基
づいてカバー部材３８の前記凸部２４外周面からの外れ
が好適に防止されている。次に、ショックアブソーバ１
０のスプリング受け１２上にショックアブソーバ１０の
外周側において圧縮コイルスプリング２２を載置すると
ともに、カバー部材３８をショックアブソーバ１０と圧
縮コイルスプリング２２との間に挿入してその圧縮コイ
ルスプリング２２の一端をカバー部材３８のフランジ３
６にて受けた状態でピストンロッド１６の先端側に、ダ
ンパ４６、第一金属製板材２６、および弾性体３０等を
挿通し、第二金属製板材３２に設けられた貫通穴５２を
通して前記ナット４２を締め付ける。これにより、ショ
ックアブソーバ１０、アッパサポート２０、および圧縮
コイルスプリング２２等が一体的に組み立てられる。

このように本実施例によれば、アッパサポート２０、シ
ョックアブソーバ１０、および圧縮コイルスプリング２
２を一体的に組み立てる際には、前記外向きフランジ４
８の外周縁部とカバー部材３８の内周面との弾性的な係
合に基づいてカバー部材３８の前記凸部２４外周面から
の外れが好適に防止されるので、その凸部２４外周面に
対するカバー部材３８の締付力が充分でない場合におい
ても、カバー部材３８が凸部２４外周面から外れるのを
従来に比べて一層確実に防止し得て、アッパサポート２
０を構成する第一金属製板材２６およびカバー部材３８
を一体的に維持することができる。これにより、アッパ
サポート２０、ショックアブソーバ１０、および圧縮コ
イルスプリング２２の組立て作業を一層円滑に為し得る
のである。

また、本実施例によれば、外向きフランジ４８は、第一
金属製板材２６の凸部２４外周面のカバー部材３８のフ
ランジ３６が嵌合される部分よりも凸部２４の突出方向
へ所定距離離隔した位置に設けられているとともに、外
向きフランジ４８の突出端は、前記凸部２４外周面のフ
ランジ３６が嵌合される部分よりも内周側に位置させら
れているので、カバー部材３８の一端部を凸部２４外周
面に嵌合する際には、そのカバー部材３８の一端部のフ
ランジ３６が設けられている厚い部分を外周側へ拡張し
なくてもそのフランジ３６の内周側を外向きフランジ４
８が通過できるため、その外向きフランジ４８によりカ
バー部材３８の一端部の凸部２４外周面への嵌合作業が
阻害されることなく、上記効果が得られる。

また、本実施例によれば、第一金属製板材２６の凸部２
４は突出端側に向かうに連れて径が小さくなる円錐台形
状とされており、カバー部材３８を凸部２４外周面に圧
入した場合にカバー部材３８の凸部２４外周面に対する
締付力を充分に得難いため、本考案の係合突起としての
外向きフランジ４８を設ける効果が一層顕著となるので
ある。

また、本実施例によれば、円筒状部材５０の外向きフラ
ンジ４８は打抜き加工により形成されて外径寸法が比較
的精度良く確保されているので、この外向きフランジ４
８の外径寸法のばらつきに起因して外向きフランジ４８
の外周縁部とカバー部材３８の内周面との係合状態が損
なわれるのを好適に防止し得る。

また、本実施例によれば、ダンパ４６は、その外周面に
おいて有底円筒状部材４４の内周面に所定の抜け荷重が
付与された状態で嵌合されるため、ダンパ４６のピスト
ンロッド１６に対する軸心方向のずれを好適に防止し得
る利点がある。

なお、前記実施例では、円筒状部材５０の外向きフラン
ジ４８の外周縁部はカバー部材３８の内周面に喰い込ま
されているが、カバー部材３８の内周面に環状溝を設け
てその環状溝内に前記外向きフランジ４８の外周縁部を
嵌め入れるようにしても良い。

また、前記係合突起は、たとえば第２図に示すように、
前記有底円筒状部材４４の開口側端部に設けられた外向
きフランジ５４にて構成されてもよい。この場合におい
て、外向きフランジ５４を、第２図に示すように、カバ
ー部材３８の内周面に突設された環状突起５８あるいは
カバー部材３８の内周面に周方向の所定間隔毎に突設し
た複数の突起と弾性的に係合させるようにしてもよい
し、または、有底円筒状部材４４の開口側端部に前記外
向きフランジ５４に替えて周方向の所定間隔毎に外周側
へ突き出す複数の突起を設けてもよい。

また、前記係合突起は、たとえば、第３図に示すよう
に、第一金属製板材２６の凸部２４の底部の一部を周方
向の所定間隔毎に切り起こして形成された複数の突起５
８にて構成されても良い。

また、前記実施例では、カバー部材３８は前記凸部２４
外周面に圧入により嵌合されているが、所定の遊びを有
して嵌合されても良い。

また、前記実施例では、リヤサスペンション用のアッパ
サポートに本考案が適用された場合について説明した
が、フロントサスペンション用のアッパサポートに本考
案を適用することも可能である。

その他、本考案はその趣旨を逸脱しない範囲において種
々変更が加えられ得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例であるアッパサポートを備え
たリヤサスペンションの要部を示す図であって、一部を
断面にして示す図である。第２図および第３図は本考案
の他の例をそれぞれ示す図であって、第１図の要部に相
当する図である。 ２０：アッパサポート ２２：圧縮コイルスプリング ２４：凸部 ３６：フランジ ３８：カバー部材 ４８，５４：外向きフランジ ５６：環状突起 ５８：突起

フロントページの続き (72)考案者 鈴木 順一 愛知県豊田市和会町道上10番地 豊生ブレ ーキ工業株式会社内 (72)考案者 田中 晶秀 大阪府大阪市西区江戸堀１丁目17番18号 東洋ゴム工業株式会社内 (72)考案者 平野 豊 愛知県豊田市トヨタ町１番地 トヨタ自動 車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭58−22706（ＪＰ，Ａ) 実開 昭60−173735（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】凸部を有して車体に固定される金属製板材
   と、筒状を成して一端部に外周側へ突き出すフランジを
   有し、軸心と直角な方向における該フランジの厚みが他
   の部分の厚みよりも厚い弾性材料製のカバー部材とを備
   え、前記金属製板材の凸部の外周面に該カバー部材の一
   端部が嵌合されるとともに該カバー部材の周りに配設さ
   れた圧縮コイルスプリングの一端を前記フランジにおい
   て受ける形式のサスペンション用アッパサポートにおい
   て、 前記金属製板材の凸部の外周面の前記カバー部材の一端
   部のフランジが嵌合される部分よりも該凸部の突出方向
   へ所定距離離隔した位置において外周側へ突き出すよう
   に該金属製板材に一体的に設けられ、突出端が該凸部の
   外周面のフランジが嵌合される部分よりも内周側に位置
   し、前記カバー部材の一端部を該凸部の外周面に嵌合す
   る際に該カバー部材の内周面と弾性的に係合させられる
   ことにより、該カバー部材が該凸部の外周面から外れる
   のを防止する係合突起を設けたことを特徴とするサスペ
   ンション用アッパサポート。