JPH06179048A - 高炭素合金鋼の水平連続鋳造用鋳型 - Google Patents

高炭素合金鋼の水平連続鋳造用鋳型

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JPH06179048A
JPH06179048A JP35206092A JP35206092A JPH06179048A JP H06179048 A JPH06179048 A JP H06179048A JP 35206092 A JP35206092 A JP 35206092A JP 35206092 A JP35206092 A JP 35206092A JP H06179048 A JPH06179048 A JP H06179048A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 1次ウィットネスマークの研削および熱間圧
延時の悪影響を皆無とする水平連続鋳造用鋳型の提供。 【構成】 本発明は、タンディッシュ下部に水平に設け
たフィードチューブ(3)およびブレークリング(2)
に連結された高炭素合金鋼の水平連続鋳造用鋳型(1)
であって、前記鋳型の形状は、前記ブレークリング
(2)、前記鋳型(1)および溶鋼(4)によって構成
される三重点(T)から引抜き方向に、鋳型の内径また
は鋳型の対向面間が漸次大きくなり、その後の内径また
は対向面間が実質的に同一であり、前記内径または対向
面間の最大部R0と、前記三重点部の内径または対向面
間R1との差が2mm以上4mm未満、かつ前記三重点Tから
引抜き方向へ傾斜する面と前記実質的に同一である鋳型
内面とのなす角度(θ)が130°〜160°であることを特
徴とする高炭素合金鋼の水平連続鋳造用鋳型である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主として高炭素合金鋼
の水平連続鋳造に適した鋳型に関する。
【0002】
【従来の技術】水平連続鋳造装置では、水冷鋳型および
二次冷却帯で冷却凝固した鋳片をピンチロールで、水平
方向に引抜いていく。図7は、一般に使用されている水
平連続鋳造装置の鋳型周辺の断面図を示す。溶鋼が供給
される鋳型1入口部にはブレークリング2が内挿され、
タンディッシュ下部に設けられたフィードチューブ3に
接続されている。鋳片はピンチロールにより、引抜き−
停止のパターンを繰り返しながら引き抜かれていく。ま
た、ブレークリング2の近傍に成長した初期凝固殻7を
安定して引抜くために、通常凝固収縮に相当する量の押
戻しを行なっている。
【0003】図2は、引抜きの1サイクルにおける凝固
殻の成長および移動を示した図である。図2において、
引抜き開始により、ブレークリング、鋳型および溶鋼に
よって構成される三重点(T)の近傍で成長した初期凝
固殻は、三重点から離れ、この移動によって生じた空間
に溶鋼が流入する。引抜きの期間においては、三重点
(T)および、上記初期凝固殻の端面から次の初期凝固
殻が形成されていく。そして、押戻しおよび停止時期に
おいて、厚みがほとんどなく、強度不十分な部分Sは、
強度を引抜き抵抗より大きくなるまで成長し、凝固殻全
体の成長も起こっている。以上の繰返しにより、鋳片は
安定して製造されている。
【0004】一方、初期凝固殻において、ブレークリン
グ面と接した面Pは1次ウィットネスマークと呼ばれ、
上記の説明からわかるように、湯境となるためこのP面
の前後では、凝固組織が不連続となる。また、高速度鋼
や冷間金型用鋼のようにレデブライト共晶を有する鋼に
おいては、固液共存領域が広く、炭素濃度の高い濃化溶
鋼が存在するため、この濃化溶鋼が引抜きによって生じ
る空間へ吸引され、1次ウィットネスマーク面へ流れて
くるので、1次ウィットネスマーク面には、炭化物が極
めて多く存在する。この炭化物の密集は、引抜きのサイ
クル数を高めても防止することはできない。高炭素合金
鋼では、固液共存温度範囲が広く、1次ウィットネスマ
ーク部では、図3のミクロ組織で代表されるように炭化
物が直線的に形成された直線部と、ブレークリング面上
で比較的緩やかに冷却した固液共存領域の凝固によって
生じる粗いレデブライト共晶である粗共晶部で構成され
る。
【0005】図4は、引抜きサイクル数と1次ウィット
ネスマークの直線部の深さの関係を示したもので、ピン
チロールの可能サイクル数である200回/minにおいて
も、直線部は約1mmの深さを持つことがわかる。この1
次ウィットネスマークが発生するのを防止する水平連続
鋳造用鋳型が特公平1−31973号で提案されてい
る。
【0006】特公平1−31973号による鋳型では、
三重点(T)の位置が最大鋳型内面より内側にあり、従
来の1次ウィットネスマークの直線部を引抜き方向に対
して傾斜させたものである。前記公報によれば、三重点
(T)の内径R1は、鋳型内面の最大の内径R0との差が
4〜20mmの範囲にあり、傾斜させた直線部の半径方向の
深さ(R0−R1)/2は2〜10mm存在する。この鋳型で鋳
造を行なった場合には、先に述べたように傾斜させた直
線部のさらに内部に粗共晶部が形成され、全体の1次ウ
ィットネスマークの深さは、(R0−R1)/2よりもさ
らに大きくなる。この鋳型の特徴は、引抜きによって生
じる空間が、従来のブレークリングと鋳型が直角に配置
された三重点形状の時に得られる空間よりも大きくなる
ため、1次ウィットネスマークの直線部に存在する炭化
物の割合が軽減されることである。 図5は、特公平1
−31973号による鋳型を用いた時の凝固殻の成長を
示す。図6はその時のミクロ組織のスケッチである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前述の二種類の鋳型で
は、次のような問題点があった。三重点(T)が直角で
ある従来の鋳型では、1次ウィットネスマークの直線部
は、鋳片表面に対し直角に形成され、炭化物の偏析が顕
著であるため、極めて靭性が低くなり、研削時の熱応力
および機械的応力により容易に1次ウィットネスマーク
が開口してしまう。この開口先端な極めて鋭角となるた
め、研削により割れの進展が起こり研削歩留を著しく劣
化させるだけでなく、研削の工数を増大させる問題があ
った。
【0008】また、熱間加工時においても、1次ウィッ
トネスマークの開口が容易に起こり、疵取り工数および
歩留低下の問題がある。さらに、前述の特公平1−31
973号による鋳型では、1次ウィットネスマークの直
線部は鋳片表面に対し傾斜して形成され、直線部への炭
化物の偏析は少なくなるため、研削による1次ウィット
ネスマークの開口は軽減されるが、1次ウィットネスマ
ークが深いため、研削時に開口しない1次ウィットネス
マークの直線部が残存し、これが熱間加工時に割れが発
生する起点となる問題があるだけでなく、製品の表層部
には粗共晶部が残ってミクロ組織が異常となる品質上の
問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、タ
ンディッシュ下部に水平に設けたフィードチューブ
(3)およびブレークリング(2)に連結された高炭素
合金鋼の水冷連続鋳造用鋳型(1)であって、前記鋳型
の形状は、前記ブレークリング(2)、前記鋳型(1)
および溶鋼(4)によって構成される三重点(T)から
引抜き方向に、鋳型の内径または鋳型の対向面間が漸次
大きくなり、その後の内径または対向面間が実質的に同
一であり、前記内径または対向面間の最大部R0と、前
記三重点部の内径または対向面間R1との差が2mm以上4m
m未満、かつ前記三重点Tから引抜き方向へ傾斜する面
と前記実質的に同一である鋳型内面とのなす角度(θ)
が130°〜160°であることを特徴とする高炭素合金鋼の
水平連続鋳造用鋳型である。
【0010】
【作用】本発明である高炭素合金鋼の水平連続鋳造用鋳
型の作用とその特徴について述べる。従来の水平連続鋳
造用鋳型である丸形鋳片用の内径、または四角形鋳片用
の対向面側(以下、代表して内径と記す)が全長実質的
に同一の場合には、前述のように対象とする溶鋼が高炭
素合金鋼の鋳片表面部に発生する1次ウィットネスマー
クが直角に形成され、炭化物の偏析が顕著となって開口
する。本発明の鋳型の特徴を図1に示すように、特に高
炭素合金鋼の鋳片の1次ウィットネスマーク部に発生し
易い炭化物偏析を軽減するために、ブレークリング2、
鋳型1および溶鋼4によって構成される三重点(T)か
ら引抜き方向に鋳型1の内径が漸次大きくなるように傾
斜させる。
【0011】三重点(T)位置の径R1と鋳型内面の最
大径R0との差が2mm未満では、ブレークリング面で凝固
完了した初期凝固殻は、鋳片表面に1次ウィットネスマ
ークの直線部が直角となる部分で形成させると共に、炭
化物の偏析が十分に軽減できず、研削時に1次ウィット
ネスマーク部の開口と割れの進展を引き起こし、研削歩
留を低下させ、研削工数を増大させる。また、R0−R1
が4mm以上では、研削時に直線部が長くなり、研削後に
残存する直線部が熱間加工時に開口する。さらに本発明
の鋳型は、前述の三重点(T)と鋳型内面とのなす角度
を130〜160°にすることで1次ウィットネスマーク部の
長さを最小限にして、炭化物の偏析を著しく軽減させ
る。
【0012】傾斜角度が130°より小さい場合には、炭
化物の偏析を軽減する効果が得られず、逆に傾斜角度が
160°より大きい場合には、引抜き時に初期凝固殻の傾
斜部と平行部との接点部の強度が不足し、溶鋼圧により
初期凝固殻の傾斜部が鋳型内面側に押し曲げられ、安定
した鋳造ができなくなる。さらに、傾斜角度が大きくな
ると、引抜き時に生じる空間が極めて狭く溶湯が十分に
流れ込めなくなり、鋳片の表面性状を悪くする。そのた
め、三重点を鋳型内面とのなす角度を130°〜160°に限
定する。
【0013】
【実施例】次に実施例に基づいて詳細に説明する。水平
連続鋳造法により、100角鋳片を鋳造速度 1.2m/min、引
抜きサイクル数 12cpmで製造した。鋼種は、SKD1,
SKH51の2種類である。これらの鋼種は、冷却割れ
を生じやすいので鋳造後2mで切断し、直ちに860℃×5hr
で焼鈍を実施した。使用した鋳型形状を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】焼鈍後の鋳片を自動ビレット研削機を用い
て#24の砥石を使用して研削を行なった。1回の研削代
は約0.5mmとし、研削後浸透探傷検査を実施した。続い
て、疵が皆無になるまで、研削−浸透探傷検査を繰り返
した。そして、疵を完全除去した時の歩留を表2に示
す。
【0016】
【表2】
【0017】表2より、従来鋳型Dでは、研削歩留が80
%以下で極めて悪いことがわかる。本発明鋳型A,B,
Cおよび従来鋳型E,Fでは、研削歩留は90%前後に
あり、従来鋳型Dと比較し、約10%歩留が良くなってい
ることがわかる。上記の結果は先に述べたように、1次
ウィットネスマークの直線部への炭化物の偏析が軽減し
たために、研削を行なう表層部の靭性が改善されたこと
に依るものである。
【0018】表3は、SKH51の1次ウィットネスマ
ークの深さを直線部および粗共晶部に分けて示した。表
3からわかるように、従来鋳型Dで最も浅く、特公平1
−31973号の鋳型片で最も深くなっている。したが
って、研削後において鋳型A〜Dによる鋳片表面には、
1次ウィットネスマークの直線部の残りはなく、鋳型
E,Fによる鋳片表面には、その残りが数mmの深さで存
在していることがわかる。
【0019】
【表3】
【0020】次に、研削後の鋳片を1150℃×30分で加熱
したのち、熱間圧延を行なって、直径が10mmの線材に仕
上げた。A〜Fの鋳型で得られた各20本を熱間圧延した
後の線材について、表面疵の有無を検査した。疵の検出
には、螢光探傷法を用い、各20本のうち、疵は皆無であ
った本数を表4に示す。
【0021】
【表4】
【0022】表4からわかるように、本発明鋳型A〜C
で得られた線材の全数に疵の発生がなく、良好に熱間圧
延されていることがわかる。従来鋳型Dから得られた線
材も同様な成績であるが、鋳片の研削歩留が悪い問題が
ある。従来鋳型E,Fから得られた線材では、極めて熱
間圧延時の疵発生率が高く、研削歩留が高くても実用的
でないことがわかる。この疵の発生は、先に述べたよう
に従来鋳型E,Fを用いた鋳片では、1次ウィットネス
マークの残存が多く、この残存ウィットネスマーク部が
圧延時の引張応力により開口したためである。
【0023】
【発明の効果】本発明鋳型によれば、1次ウィットネス
マークを浅くでき、かつ1次ウィットネスマークの直線
部の炭化物の偏析を軽減することができるため、従来研
削歩留が悪く、または熱間加工時の疵発生率が高かった
水平連続鋳造用鋳片を高歩留で熱間加工性の良い鋳片と
して製造ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高炭素合金鋼の連続鋳造用鋳型の一例
を示す縦断面図である。
【図2】従来鋳型(θ=90°)による凝固殻形成を示す
図である。
【図3】1次ウィットネスマーク部の代表的な金属ミク
ロ組織(SKH51)写真である。
【図4】1次ウィットネスマークの直線部深さと引抜き
サイクル数の関係(SKD1)を示す図である。
【図5】特公平1−31973号の鋳型による凝固殻形
成を示す図である。
【図6】特公平1−31973号の鋳型による1次ウィ
ットネスマーク部のミクロ組織のスケッチ図である。
【図7】一般の水平連続鋳造装置の鋳型周辺の縦断面図
である。
【符号の説明】
1 鋳型、2 ブレークリング、3 フィードチュー
ブ、4 溶鋼、5 耐火物、6 鋳片、7 初期凝固殻
【手続補正書】
【提出日】平成5年2月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正内容】
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、タ
ンディッシュ下部に水平に設けたフィードチューブ
(3)およびブレークリング(2)に連結された高炭素
合金鋼の水平連続鋳造用鋳型(1)であって、前記鋳型
の形状は、前記ブレークリング(2)、前記鋳型(1)
および溶鋼(4)によって構成される三重点(T)から
引抜き方向に、鋳型の内径または鋳型の対向面間が漸次
大きくなり、その後の内径または対向面間が実質的に同
一であり、前記内径または対向面間の最大部R0と、前
記三重点部の内径または対向面間R1との差が2mm以上4m
m未満、かつ前記三重点Tから引抜き方向へ傾斜する面
と前記実質的に同一である鋳型内面とのなす角度(θ)
が130°〜160°であることを特徴とする高炭素合金鋼の
水平連続鋳造用鋳型である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】
【実施例】次に実施例に基づいて詳細に説明する。水平
連続鋳造法により、100角鋳片を鋳造速度 1.2m/min、引
抜きサイクル数 120cpmで製造した。鋼種は、SKD
1,SKH51の2種類である。これらの鋼種は、冷却
割れを生じやすいので鋳造後2mで切断し、直ちに860℃
×5hrで焼鈍を実施した。使用した鋳型形状を表1に示
す。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンディッシュ下部に水平に設けたフィ
    ードチューブ(3)およびブレークリング(2)に連結
    された高炭素合金鋼の水冷連続鋳造用鋳型(1)であっ
    て、前記鋳型の形状は、前記ブレークリング(2)、前
    記鋳型(1)および溶鋼(4)によって構成される三重
    点(T)から引抜き方向に、鋳型の内径または鋳型の対
    向面間が漸次大きくなり、その後の内径または対向面間
    が実質的に同一であり、前記内径または対向面間の最大
    部R0と、前記三重点部の内径または対向面間R1との差
    が2mm以上4mm未満、かつ前記三重点Tから引抜き方向へ
    傾斜する面と前記実質的に同一である鋳型内面とのなす
    角度(θ)が130°〜160°であることを特徴とする高炭
    素合金鋼の水平連続鋳造用鋳型。
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