JPH0614775A - アルカリイソアミラーゼ及びそれを生産する微生物並びに該アルカリイソアミラーゼの製造方法 - Google Patents

アルカリイソアミラーゼ及びそれを生産する微生物並びに該アルカリイソアミラーゼの製造方法

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JPH0614775A
JPH0614775A JP17567792A JP17567792A JPH0614775A JP H0614775 A JPH0614775 A JP H0614775A JP 17567792 A JP17567792 A JP 17567792A JP 17567792 A JP17567792 A JP 17567792A JP H0614775 A JPH0614775 A JP H0614775A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 下記酵素学的性質を有するアルカリイソアミ
ラーゼ。 (1)グリコーゲン等のα−1,6グルコシド結合を分
解する。 (2)pH5〜11.5で作用し、至適pHが9付近であ
る。 (3)pH7〜10で極めて安定である。 (4)40〜60℃で作用し、至適温度が約55℃であ
る。 (5)50℃まで極めて安定である。 (6)分子量が65000±1000である。 【効果】 洗浄剤組成物配合成分として好適に使用でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規、かつ洗浄剤成分等
として有用なアルカリイソアミラーゼ及びこれを生産す
る微生物並びに該アルカリイソアミラーゼの製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】イソア
ミラーゼは、グリコーゲン、アミロペクチン等の分岐構
造を有する澱粉系多糖類分子中のα−1,6グルコシド
結合のみを切断する酵素で、1951年丸尾と小林〔
ature,167,606(1951)〕により、酵
母菌体中から初めて発見されたものである。その後、原
田らによりシュードモナス アミロデラモーサ(Pse
udomonas amyloderamosa SB
−15)〔Biochim.Biophys.Act
a,212,458(1970)〕の生産するイソアミ
ラーゼが分離精製され、その性質が明らかにされた。
【0003】更にフラボバクテリウム(Flavoba
cterium sp.)〔Staerke 32,1
32(1980)〕、シトファージ(Cytophag
sp.)〔FEBS lett.,12,96(19
70)〕、バチルス アミロリケファシエンス(Bac
illus amyloliquefaciens
FEBS lett.,57,1(1975)〕、エ
ッシェリシア インターメディア(Escherich
ia intermedia)〔ApplMicro
biol.,15,492(1967)〕、酵母リポマ
イセス コノネンコエ(Lipomyces kono
nekoae)〔ApplEnvironMicr
obiol.,44,1253(1982)〕等の微生
物がイソアミラーゼを生産することが報告されている。
【0004】イソアミラーゼはグリコーゲン及びアミロ
ペクチンのみならず、澱粉、プルランやこれらの部分分
解により生じた分岐オリゴ糖中のα−1,6グルコシド
結合に対しても水解活性を有することが知られており、
『枝切り酵素』と呼ばれている。また、イソアミラーゼ
はグリコーゲンやアミロペクチンの微細構造の研究に利
用されており、更に本酵素は他の枝切り酵素に比して非
常に強力であるため、逆反応が強く、種々の分岐シクロ
デキストリンを容易に合成できることから、工業的に利
用されつつある〔「澱粉科学」,33,119(198
6)〕。
【0005】かかるイソアミラーゼを含む枝切り酵素を
アミラーゼとともに洗浄剤に配合することにより、主と
して澱粉汚れに対する洗浄力が飛躍的に向上することが
見出されている(特開平1−132192号公報)。
【0006】しかし、自然界に於いて従来見出されてい
るイソアミラーゼはpHが3.5〜6.5と中性乃至酸性
領域に於いて最大かつ安定な酵素活性を示す、所謂中性
若しくは酸性イソアミラーゼであり、食器用洗浄剤及び
衣料用洗浄剤組成物成分として要求されるアルカリ領域
で最大活性を示すか、あるいはアルカリ耐性を有するイ
ソアミラーゼ、所謂アルカリイソアミラーゼ及びアルカ
リ耐性イソアミラーゼは未だ見出されていない。
【0007】なお、本明細書に於いてアルカリイソアミ
ラーゼとは、至適pHがアルカリ領域にあるものを言い、
アルカリ耐性イソアミラーゼとは、至適pHは中性から酸
性領域にあるが、アルカリ領域に於いても至適pHでの活
性と同程度の活性を有しかつ安定性を保持するものを言
う。また、中性とはpH6〜8の範囲を言い、アルカリ性
とはそれを超えるpH範囲を言う。
【0008】そこで、洗浄剤組成物成分として好適な、
アルカリ領域に至適pHを有するイソアミラーゼの開発が
望まれていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる実
情に鑑み鋭意検討した結果、特定のバチルス(Baci
llus)属に属する微生物を培養することによって、
アルカリ領域に至適pHを有するイソアミラーゼが得られ
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明は下記(1)〜(6)の
酵素学的性質を有するアルカリイソアミラーゼを提供す
るものである。
【0011】(1)作用、 グリコーゲン及びアミロペクチンのα−1,6グルコシ
ド結合を加水分解する。また、アミロース、プルランの
α−1,6グルコシド結合を加水分解しない。 (2)作用pH及び至適pH、 pH5から11.5のpH範囲で作用し、至適pHを9付近に
有する。 (3)pH安定性、 pH7から10の範囲で極めて安定であり、pH6〜10.
5においても約50%以上の活性を維持する(40℃、
10分間処理)。 (4)作用温度範囲及び至適作用温度、 40〜60℃の範囲で作用し、至適作用温度は約55℃
である。 (5)温度安定性、 50℃までは極めて安定である(pH9.0のグリシン−
食塩−水酸化ナトリウム緩衝液中、30分間処理)。 (6)分子量、 ソジウムドデシル硫酸(SDS)電気泳動法による分子
量が約65000±1000である。
【0012】本発明はまた、バチルス(Bacillu
)属に属し、かつ上記アルカリイソアミラーゼ生産能
を有する微生物を提供するものである。
【0013】本発明は、更に、上記微生物を培養し、そ
の培養物から上記アルカリイソアミラーゼを採取するこ
とを特徴とするアルカリイソアミラーゼの製造方法を提
供するものである。
【0014】本発明のアルカリイソアミラーゼの酵素学
的性質について以下に説明する。なお、酵素活性測定
は、測定pHに応じそれぞれ以下に示す緩衝液(各々40
mM)を使用し、下記の方法に従った。
【0015】(緩衝液種) pH4〜6; 酢酸緩衝液、 pH6〜8; トリス−マレイン酸緩衝液、 pH8〜11; グリシン−食塩−水酸化ナトリウム緩
衝液、 pH11〜12; 塩化カリウム−水酸化ナトリウム緩衝
液、
【0016】(酵素活性測定方法) (1)DNS法によるイソアミラーゼ活性の測定、 各種緩衝液中にカキ由来グリコーゲン(反応系に於ける
最終濃度は0.5%)を溶解させた緩衝液0.9mlに、
酵素液0.1mlを加え、40℃で、30分間反応させ
た。反応後、3,5−ジニトロサリチル酸(DNS)法
にて、還元糖の定量を行った。すなわち、反応液1.0
mlにDNS試薬1.0mlを加え、5分間、100℃で加
熱発色させ、冷却後、4.0mlの脱イオン水を加えて希
釈し、波長535nmで比色定量した。酵素の力価は、1
分間に1μmol のグルコースに相当する還元糖を生成す
る酵素量を1単位(1U)とした。
【0017】(2)沃素発色法によるイソアミラーゼ活
性の測定、 精製ステップにおける活性測定は、以下の条件で行っ
た。すなわち、1%(w/v)ポテト由来アミロペクチ
ン1mlに酵素液0.5ml加え、40℃で30分間反応を
行った。反応後、反応液から0.2mlを抜き取り、沃素
溶液(0.005% I2 +0.015% KI)2ml
を加え、更に8.0mlの脱イオン水を加えて希釈し、波
長600nmで比色定量した。酵素の力価は、吸光度を1
分間に0.01上昇させるのに必要な酵素量を1単位
(1U)とした。
【0018】(酵素学的性質) (1)作用、 グリコーゲン及びアミロペクチンのα−1,6グルコシ
ド結合を加水分解する。また、アミロース、プルランの
α−1,6グルコシド結合を加水分解しない。表1にア
ルカリイソアミラーゼのそれぞれの基質に対する相対活
性測定結果を示す。
【0019】
【表1】
【0020】(2)作用pH及び至適pH、 pH5〜11.5の範囲で作用し、至適pHを9付近に有す
る。なお、イソアミラーゼ活性は0.5%カキ由来グリ
コーゲン、10mM酢酸緩衝液(pH4〜6)、トリス−マ
レイン酸緩衝液(pH6〜8)、グリシン−食塩−水酸化
ナトリウム緩衝液(pH8〜11)及び塩化カリウム−水
酸化ナトリウム緩衝液(pH11〜12)の反応系を用
い、40℃で15分間反応させて測定した反応pHと相対
活性との関係を図1に示す。
【0021】(3)pH安定性、 pH7から10で極めて安定であり、pH6〜10.5に於
いても約50%以上の活性を維持する(40℃10分間
処理)。なお、各pHにおけるイソアミラーゼ活性は0.
5%カキ由来グリコーゲン、10mM酢酸緩衝液(pH4〜
6)、トリス−マレイン酸緩衝液(pH6〜8)、グリシ
ン−食塩−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8〜11)及び
塩化カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液(pH11〜1
2)の反応系を用い、40℃で10分間反応させて測定
した処理pHと残存活性との関係を図2に示す。
【0022】(4)作用温度範囲及び至適作用温度、 40〜60℃の広範囲で作用し、至適作用温度は約55
℃に認められる。なお、pH9.0に於いて上記条件で反
応させたときの反応温度と相対活性との関係を測定した
結果を図3に示す。
【0023】(5)温度安定性、 50℃までは極めて安定である(pH9.0のグリシン−
食塩−水酸化ナトリウム緩衝液中、30分間処理)。ま
た、55℃に於いても40%以上の残存活性を示す。上
記条件で反応させて測定した処理温度と残存活性との関
係を図4に示す。
【0024】(6)分子量、 SDS電気泳動法により測定した分子量が約65000
±1000である。
【0025】本発明のアルカリイソアミラーゼは、更
に、下記(7)〜(9)の性質を有する。
【0026】(7)金属イオンの影響、 1mMのHg2+で強く活性が阻害される。
【0027】(8)界面活性剤の影響、 各種界面活性剤(例えば、線状アルキルベンゼンスルフ
ォン酸ナトリウム(LAS)、アルキル硫酸エステルナ
トリウム塩(AS)、ポリオキシエチレンアルキル硫酸
エステルナトリウム塩(ES)、α−オレフィンスルフ
ォン酸ナトリウム(AOS)、α−スルフォン化脂肪酸
エステルナトリウム(α−SFE)、アルキルスルフォ
ン酸ナトリウム(SAS)、石鹸及びソフタノールの
0.05%溶液で40℃、30分間処理しても殆ど活性
阻害を受けない。
【0028】(9)キレート剤の影響、 キレート剤であるEDTA(10mM)、クエン酸(0.
05%)及びゼオライト(0.05%)により殆ど活性
阻害を受けない。
【0029】本発明のアルカリイソアミラーゼを生産し
得る微生物としては、バチルス属に属し、上記酵素学的
性質(1)〜(6)を有するイソアミラーゼを生産する
能力を有するものであれば特に限定されないが、例えば
茨城県水戸市の土壌より採取した好アルカリ微生物の一
種であるバチルス エスピー(Bacillus
p.)KSM−3309が挙げられる。
【0030】本発明微生物の一例であるバチルス エス
ピー(Bacillus sp.)KSM−3309は
次のような菌学的性質を有する。なお、以下において菌
株の分類に用いた培地は次の培地20種類であり、特に
断りの無い限り別滅菌した炭酸ナトリウム(Na2
3)を0.5重量%(以下、単に%という)含有す
る。
【0031】使用した培地の組成(表示は%): 培地1.ニュートリエントブロス,0.8;寒天末(和
光純薬社製),1.5。 培地2.ニュートリエントブロス,0.8。 培地3.ニュートリエントブロス,0.8;ゼラチン,
20.0;寒天末(和光純薬社製),1.5。 培地4.バクトリトマスミルク,10.5。 培地5.ニュートリエントブロス,0.8;KNO3
0.1。 培地6.バクトペプトン,0.7;NaCl,0.5;
ブドウ糖,0.5。 培地7.SIM寒天培地(栄研化学社製),指示量。 培地8.TSI寒天培地(栄研化学社製),指示量。 培地9.酵母エキス,0.5;バクトペプトン,1.
5;K2HPO4 ,0.1;MgSO4・7H2O,0.
02;可溶性澱粉,2.0;寒天末(和光純薬社製),
1.5。 培地10.コーサー培地(栄研化学社製),指示量。
【0032】培地11.(イ)酵母エキス,0.05;N
2SO4 ,0.1;KH2PO4 ,0.1;ブドウ糖,
1.0。 (ロ)酵母エキス,0.05;Na2SO4 ,0.1;
KH2PO4 ,0.1;ブドウ糖,1.0;CaCl2
2H2O,0.05;MnSO4・4〜6H2O,0.0
1;FeSO4・7H2O,0.001;MgSO4・7
2O,0.02。なお、窒素源としては、硝酸ナトリ
ウム、亜硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム及びリン酸
アンモニウムをそれぞれ0.25%、0.2025%、
0.158%、0.195%となるように上記(イ)及
び(ロ)の培地に加えて用いた。 培地12.キングA培地“栄研”(栄研化学社製),指示
量。 培地13.キングB培地“栄研”(栄研化学社製),指示
量。 培地14.尿素培地“栄研”(栄研化学社製),指示量。 培地15.チトクローム・オキシダーゼ試験用濾紙(日水
製薬社製)。 培地16.3%過酸化水素水。 培地17.バクトペプトン,0.5;酵母エキス,0.
5;K2HPO4 ,0.1;ブドウ糖,1.0;MgS
4・7H2O,0.02。 培地18.バクトペプトン,2.7;NaCl,5.5;
2HPO4 ,0.3;ブドウ糖,0.5;ブロモチモ
ールブルー,0.06;寒天末(和光純薬社製),1.
5。 培地19.(NH42HPO4 ,0.1;KCl,0.0
2;MgSO4・7H2O,0.02;酵母エキス,0.
05;糖,1.0。 培地20.カゼイン,0.5;酵母エキス,0.5;ブド
ウ糖,1.0;K2HPO4 ,0.1;MgSO4・7H
2O,0.02;寒天末(和光純薬社製),1.5。
【0033】(菌学的性質) (a)顕微鏡的観察結果、 菌体の大きさは、0.8〜1.2μm ×2.8〜4.0
μm の桿菌であり、菌体の中央に楕円形の内生胞子
(0.8〜1.0μm ×2.0〜2.5μm )を作る。
周鞭毛を有し運動性がある。グラム染色は陽性。抗酸性
はない。
【0034】(b)各種培地に於ける生育状態、 (イ)肉汁寒天平板培養(培地1) 生育状態は良好。集落の形状は不規則であり、表面は粗
雑、周縁は樹根状である。集落の色調は淡黄色半透明で
ある。 (ロ)肉汁寒天斜面培養(培地1) 生育する。 (ハ)肉汁液体培養(培地2) 生育状態は不良。 (ニ)肉汁ゼラチン穿刺培養(培地3) 生育状態は良い。ゼラチンの液化が認められる。 (ホ)リトマスミルク培地(培地4) ミルクの凝固、ペプトン化は認められない。リトマスの
変色は培地がアルカリのため判定できない。
【0035】(c)生理学的性質、 (イ)硝酸塩の還元及び脱窒反応(培地5) 硝酸塩の還元は陽性。脱窒反応は陰性。 (ロ)MRテスト(培地6) 培地がアルカリのため判定できない。 (ハ)VPテスト(培地6) 陰性。 (ニ)インドールの生成(培地7) 陰性。 (ホ)硫化水素の生成(培地8) 陰性。 (ヘ)澱粉の加水分解(培地9) 陽性。 (ト)クエン酸の利用 コーサー培地(培地10)で陽性。
【0036】(チ)無機窒素源の利用(培地11) 硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム塩ともに利用する。 (リ)色素の生成(培地12,13) 陰性。 (ヌ)ウレアーゼ(培地14) 陰性。 (ル)オキシダーゼ(培地15) 陰性。 (ヲ)カタラーゼ(培地16) 陽性。 (ワ)生育の範囲(培地17) 生育の温度範囲は12〜45℃、生育最適温度範囲は1
8〜42℃であった。生育のpH範囲はpH8.5〜10.
5、生育最適pHはpH9.5であった。 (カ)酸素に対する態度 好気的。
【0037】(ヨ)O−Fテスト(培地18) アルカリ性のため変色は判定できない。好気状態でのみ
生育する。 (タ)糖の利用性(培地19) D−キシロース、D−グルコース、D−マンノース、D
−フラクトース、麦芽糖、ショ糖、トレハロース、D−
マンニトール、D−イノシトール、D−ソルビトール、
グリセリン、デンプン及びデキストリンを利用する。 (レ)食塩含有培地に於ける生育(培地1を改変) 食塩濃度が7%まで生育。食塩濃度が10%で生育不
良。 (ソ)カゼインの分解(培地20) 陽性。
【0038】以上の菌学的性質に基づき、バージーズ・
マニュアル・オブ・システマティク・バクテリオロジー
(Bergey’s Mannual of Syst
ematic Bacteriology)第2巻及び
ザ.ジーナス.バチルス(“The Genus Ba
cillus”R.E.Gordonら,Agricu
lture Handbook No.427,Agr
iculturalResearch Servic
e,U.S.Depertment of Agric
ulture Washington D.C.,(1
973))を参照し、比較検索した結果、本菌株は有胞
子桿菌であるバチルス(Bacillus)属の一種で
あると認められる。そして、本菌株は中性領域では生育
できず、専ら高アルカリ領域で良好な生育を示すことか
ら、最近HorikoshiとAkiba(“Alka
lophilic Microorganism”,J
apan Scientific Society P
ress(Tokyo),1982年刊)が主張してい
る、所謂好アルカリ性(Alkalophilic)微
生物(中性pH範囲で生育するバチルス属細菌)とは区別
される。
【0039】更に、本菌株の菌学的性質は、上記好アル
カリ性バチルスのいずれとも一致しないので、これを新
規菌株と判断してバチルス エスピー KSM−330
9と命名し、微工研菌寄第13005号として通産省工
業技術院微生物工業技術研究所に寄託した。
【0040】上記の菌株を用いて本発明のアルカリイソ
アミラーゼを得るには、培地に菌株を接種し、常法に従
って培養すればよい。培地中には、資化し得る炭素源及
び窒素源を適当量含有せしめておくことが好ましい。
【0041】この炭素源及び窒素源については特に制限
はないが、具体例としては、窒素源としてコーングルテ
ンミール、大豆粉、コーンスチープリカー、カザミノ
酸、酵母エキス、ファーマメディア、肉エキス、トリプ
トン、ソイトン、ハイプロ、アジパワー、ソイビーンミ
ール、綿実油粕、カルチベーター、アジプロン、ゼスト
など有機窒素源及び硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウ
ム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸ナト
リウム、酢酸アンモニウム等の無機窒素源が挙げられ、
また炭素源としては、可溶性澱粉、不溶性澱粉、アミロ
ペクチン、グリコーゲン、プルラン及びこれらの部分分
解により生じた分岐オリゴ糖に加え、資化し得る炭素
源、例えばグルコース、マルトース、キシロース、マン
ノース、フラクトース、麦芽糖、ショ糖、乳糖、トレハ
ロース、マンニット、ソルビット、グリセリンや資化し
うる有機酸、例えば酢酸などが挙げられる。
【0042】その他、リン酸塩、マグネシウム塩、カル
シウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、コバルト塩、ナトリウ
ム塩、カリウム塩等の無機塩や、必要に応じ、無機、有
機微量栄養源を培地中に適宜添加することもできる。
【0043】かくして得られる培養物中の目的物質であ
るアルカリイソアミラーゼの採取及び精製は、一般の酵
素の採取及び精製の手段に準じて行うことができる。す
なわち、遠心分離又は濾過等の通常の固液分離手段によ
り菌体を培養液から除去して粗酵素液を得ることができ
る。この粗酵素液は、そのまま使用することもできる
が、必要に応じて、塩析法、沈澱法、限外濾過法等の分
離手段により粗酵素を得、更に公知の方法により精製結
晶化して、精製酵素として使用することもできる。
【0044】以下に本発明のアルカリイソアミラーゼの
製造方法及び精製方法の例を挙げる。アルカリ性バチル
ス属細菌KSM−3309株を1%グリコーゲン(カキ
由来)、0.2%トリプトン、0.1%酵母エキス、
0.03%KH2PO4、0.1%(NH4)SO4
0.02%MgSO4・7H2O、0.02%CaCl2
・2H2O、0.001%FeSO4・7H2O、0.0
001%MnCl2・4H2O及び0.5%Na2CO3
含む培地で、30℃にて3日間好気的に振盪培養し、得
られた培養液から菌体を除き、上澄液を得る。次いで、
該上澄液に硫安を80%飽和になる様に加え、5℃にて
12時間攪拌し蛋白を沈澱させる。遠心分離により沈澱
物を回収し、10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に
懸濁した後、同緩衝液にて一昼夜透析する。
【0045】得られた透析液にDEAE−セルロース粉
末を加え、イソアミラーゼを完全にDEAE−セルロー
スに吸着させる。次いで、10mMトリス−塩酸緩衝液
(pH8.0)で樹脂を洗浄した後、1Mの食塩を含む1
0mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で酵素を溶出す
る。更に、10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対
して透析濃縮後、同緩衝液で平衡化した「DEAE−B
io Gel A」(バイオラッド社製)に吸着させ、
10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて0〜1
Mの食塩の濃度勾配により溶出し、その活性画分を集
め、平均分画分子量10000の限外濾過膜を用いて濃
縮した後、0.1M食塩を含む10mMトリス−塩酸緩衝
液(pH8.0)を用いて一夜透析する。
【0046】活性画分は、更に0.1M食塩を含む10
mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化した「Se
phacryl S−200」(ファルマシア社製)カ
ラムに充填し、0.1M食塩を含む同緩衝液で溶出し、
その活性画分を集めた。これを限外濾過膜を用いて濃縮
した後、10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を用い
て一夜透析する。
【0047】かくして得られる精製酵素は、ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動(ゲル濃度7.5%)及びSDS
電気泳動(ゲル濃度15%)で単一のバンドを与え、活
性収率は約4%である。
【0048】
【発明の効果】本発明のアルカリイソアミラーゼは、従
来得られているイソアミラーゼとは異なってアルカリ側
に至適pHを有するとともに広範囲のpHにおいて極めて安
定なものであり、しかも至適温度である55℃において
も40%以上の活性が残存するものであることから、洗
浄剤組成物の配合成分として好適に使用することができ
る。更に、このようなアルカリイソアミラーゼを生産し
得る微生物を使用して該酵素を簡便に製造することがで
きる本発明は、工業的に大きな意義を有するものであ
る。
【0049】
【実施例】以下に本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】実施例1 茨城県水戸市の土壌を薬匙一杯(約0.5g)、滅菌生
理食塩水に懸濁し、80℃で15分間熱処理した。この
熱処理液の上清を適当に希釈して、分離用寒天培地(培
地A)に塗布した。次いで、これを30℃にて3日間培
養し、集落を形成させた。集落の周囲にグリコーゲン
(カキ由来)の溶解に基づく透明帯を形成するものを選
出し、イソアミラーゼ生産菌を取得した。更に、取得菌
を液体培地Bに接種し、30℃で3日間振盪培養した。
培養後、遠心分離した上清液についてイソアミラーゼ活
性を、pH9.0にて測定し、アルカリイソアミラーゼ生
産菌をスクリーニングし、本発明のアルカリイソアミラ
ーゼ生産菌バチルス エスピー KSM−3309(F
ERM P−13005)を取得した。以下に培地A及
び培地Bの組成を示す。
【0051】
【表2】 培地A: 組成 (重量%) グリコーゲン(カキ由来) 0.5 ポリペプトン 0.2 酵母エキス 0.1 KH2PO4 0.03 (NH42SO4 0.1 MgSO4・7H2O 0.02 CaCl2・2H2O 0.02 FeSO4・7H2O 0.001 MnCl2・4H2O 0.0001 寒天 1.5 Na2CO3 0.5 精製水 バランス pH9.2
【0052】
【表3】 培地B: 組成 (重量%) グリコーゲン(カキ由来) 1 トリプトン 0.2 酵母エキス 0.1 KH2PO4 0.03 (NH42SO4 0.1 MgSO4・7H2O 0.02 CaCl2・2H2O 0.02 FeSO4・7H2O 0.001 MnCl2・4H2O 0.0001 Na2CO3 0.5 精製水 バランス pH9.2
【0053】実施例2 アルカリイソアミラーゼ生産菌、バチルス エスピー
KSM−3309株を実施例1の液体培地Bに接種し、
30℃で3日間振盪培養した。培養後、菌体を遠心分離
して除き、粗イソアミラーゼ酵素液とした。更に、通常
の方法に従って凍結乾燥し、下記表4に示す粗酵素標品
を得た(酵素活性はpH9.0に於ける測定値である)。
【0054】
【表4】
【0055】実施例3 実施例2で得られた粗酵素液について、以下の手順に従
って精製を行い、アルカリイソアミラーゼを得た。すな
わち、粗酵素液の上澄液に硫安を80%飽和になるよう
に攪拌しながら加えた後、5℃にて12時間保存し蛋白
を沈澱させる。遠心分離により沈澱物を回収し、10mM
トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した後、同緩衝
液にて一昼夜透析する。次いで透析液にDEAE−セル
ロース粉末を加え、イソアミラーゼを完全にDEAE−
セルロースに吸着させる。次いで、10mMトリス−塩酸
緩衝液(pH8.0)で洗浄した後、1Mの食塩を含む1
0mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で酵素を溶出させ
る。更に、10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対
して透析濃縮後、同緩衝液で平衡化した「DEAE−B
io Gel A」に吸着させ、10mMトリス−塩酸緩
衝液(pH8.0)を用いて0〜1Mの食塩の濃度勾配に
より溶出し、その活性画分を集め、平均分画分子量10
000の限外濾過膜を用いて濃縮した後、0.1M食塩
を含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて
一夜透析する。上記活性画分を0.1M食塩を含む10
mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化した「Se
phacryl S−200」カラムに充填し、0.1
M食塩を含む同緩衝液で溶出し、その活性画分を集め
た。これを限外濾過膜を用いて濃縮した後、10mMトリ
ス−塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて一夜透析した。得
られたイソアミラーゼについて図5に示すようにデービ
ス(Ann.N.Y.Acad.Sci.,121,4
04(1964))の方法に従って電気泳動を行った
後、コマシー・ブリリアント・ブルーで染色し、単一の
バンドを与えることを確認した。
【0056】実施例4 実施例3で得られたイソアミラーゼについて、常法に従
い、SDS電気泳動を行った。結果を図6に示す。これ
より本酵素の分子量は65000±1000であること
がわかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリイソアミラーゼの反応pHと相
対活性との関係を示す図面である。
【図2】本発明のアルカリイソアミラーゼの処理pHと残
存活性との関係を示す図面である。
【図3】本発明のアルカリイソアミラーゼの反応温度
(pH9.0)と相対活性との関係を示す図面である。
【図4】本発明のアルカリイソアミラーゼの処理温度
(pH9.0)と残存活性との関係を示す図面である。
【図5】本発明のアルカリイソアミラーゼをデービスの
方法に従って電気泳動を行った結果を示す図面である。
【図6】本発明のアルカリイソアミラーゼのSDS電気
泳動の結果を示す図面である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年12月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】(2)沃素発色法によるイソアミラーゼ活
性の測定、 精製ステップにおける活性測定は、以下の条件で行っ
た。すなわち、1%(w/v)ポテト由来アミロペクチ
ン0.5mlに酵素液0.5ml加え、40℃で30分
間反応を行った。反応後、反応液から0.2mlを抜き
取り、沃素溶液(0.005% I+0.015%
KI)2mlを加え、更に8.0mlに脱イオン水を加
えて希釈し、波長600nmで比色定量した。酵素の力
価は、吸光度を1分間に0.01上昇させるのに必要な
酵素量を1単位(1U)とした。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:07) (C12N 1/20 C12R 1:07)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の酵素学的性質を有するアルカリイ
    ソアミラーゼ。 (1)作用、 グリコーゲン及びアミロペクチンのα−1,6グルコシ
    ド結合を加水分解する。また、アミロース、プルランの
    α−1,6グルコシド結合を加水分解しない。 (2)作用pH及び至適pH、 pH5から11.5のpH範囲で作用し、至適pHを9付近に
    有する。 (3)pH安定性、 pH7から10の範囲で極めて安定であり、pH6〜10.
    5においても約50%以上の活性を維持する(40℃、
    10分間処理)。 (4)作用温度範囲及び至適作用温度、 40〜60℃の範囲で作用し、至適作用温度は約55℃
    である。 (5)温度安定性、 50℃までは極めて安定である(pH9.0のグリシン−
    食塩−水酸化ナトリウム緩衝液中、30分間処理)。 (6)分子量、 ソジウムドデシル硫酸(SDS)電気泳動法による分子
    量が約65000±1000である。
  2. 【請求項2】 バチルス(Bacillus)属に属
    し、かつ請求項1記載のアルカリイソアミラーゼ生産能
    を有する微生物。
  3. 【請求項3】 バチルス・エスピー(Bacillus
    sp.)KSM−3309と命名され微工研菌寄第1
    3005号として寄託された請求項1記載のアルカリイ
    ソアミラーゼ生産能を有する微生物。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の微生物を培養し、その培
    養物からアルカリイソアミラーゼを採取することを特徴
    とするアルカリイソアミラーゼの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項3記載の微生物を培養し、その培
    養物からアルカリイソアミラーゼを採取することを特徴
    とするアルカリイソアミラーゼの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100966758B1 (ko) * 2002-03-01 2010-06-30 라이온 가부시키가이샤 제균처리 방법, 제균세정제 조성물 및 세탁 방법

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