JPH06121834A - 抗血小板抗体吸着材 - Google Patents

抗血小板抗体吸着材

Info

Publication number
JPH06121834A
JPH06121834A JP4274450A JP27445092A JPH06121834A JP H06121834 A JPH06121834 A JP H06121834A JP 4274450 A JP4274450 A JP 4274450A JP 27445092 A JP27445092 A JP 27445092A JP H06121834 A JPH06121834 A JP H06121834A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
peptide
antibody
boc
glu
woven fabric
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP4274450A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazunori Inamori
和紀 稲森
Masahiro Seko
政弘 世古
Hideyuki Yokota
英之 横田
Masakazu Tanaka
昌和 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyobo Co Ltd filed Critical Toyobo Co Ltd
Priority to JP4274450A priority Critical patent/JPH06121834A/ja
Publication of JPH06121834A publication Critical patent/JPH06121834A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • External Artificial Organs (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 血液の体外循環療法などに適用することによ
り、何らかの原因で生じた抗血小板抗体を除去すること
が可能な、抗血小板抗体との結合性を有するペプチドま
たは修飾ペプチドを不織布に固定化した抗血小板抗体吸
着材を提供する。 【構成】 カルボキシル基を有する平均繊維径2ないし
30μmの不織布に、抗血小板抗体と結合性を有するペ
プチドまたは修飾ペプチドを固定化した抗血小板抗体吸
着材およびその製法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は何らかの原因により血液
中に産生された自己抗体である抗血小板抗体を、特定の
アミノ酸配列を含有しているペプチドまたはそのペプチ
ド領域を含む有機化合物を固定化した不織布を用いて、
血液の体外循環治療を行なうことにより血液中の抗血小
板抗体と結合させることを特徴とする抗血小板抗体の除
去が可能である抗血小板抗体吸着材に関するものであ
る。本発明は特に抗血小板抗体の存在による血小板数の
減少に起因して、出血,紫斑などの諸症状をもたらす特
発性血小板減少性紫斑病(以下ITPと言う)のような
疾患に関する治療において非常に有用なものである。
【0002】
【従来の技術】ITPは自己免疫疾患の一種であり、血
小板寿命の短縮,血小板結合免疫グロブリンである抗血
小板抗体の増加を特徴とし、骨髄では巨核球数は正常あ
るいは増加を示し、他の血液疾患の存在を示唆する所見
を認めない免疫性の血小板減少症のうち膠原病,リンパ
増殖性疾患,薬剤アレルギーなどの原因疾患の認められ
ないものを指す。
【0003】ITPは急性型と慢性型に分けられる。急
性型は小児に多く見られ、出血症状は激しいが比較的治
癒はしやすい。発症3週間以前に上気道感染,ウイルス
感染などの先行感染が認められることが多い。感染の回
復期に血小板減少を認めることから、形成された免疫複
合体が血小板膜Fc受容器に結合し、血小板が非特異的
に破壊される免疫複合病の可能性が強い。一方慢性型は
出血症状は弱いが長期間持続し、成人で特に20才代の
女性に多く、抗血小板抗体による自己免疫病と考えられ
ているものである。
【0004】抗血小板抗体による血小板数の減少により
見られる症状には個人差があるが、一般的には血小板数
50000個/μl以上では通常出血症状は見られず、
30000ないし50000個/μlでは外傷時の易出
血性,斑状出血,10000ないし30000個/μl
では露出部への紫斑の出現,月経過多,10000個/
μl以下では血尿,不正性器出血,鼻出血,歯肉出血が
認められ、頭蓋内出血,消化管出血がしばしば直接の死
因となっている。
【0005】ITPの治療に際してはその症状の程度に
応じて副腎皮質ホルモン剤の投与,脾臓の摘出,ステロ
イド系免疫抑制剤の投与などが適用される。しかしこう
した薬物療法や摘脾手術では血小板数が効果的には回復
しないような症例も多く存在している。ITPをはじめ
種々の自己免疫疾患の発生に関するメカニズムはまだ十
分には解明されておらず、こうした患者に対する治療方
法についても絶対的なものは確立されていないのが現状
であり対策が急がれている。
【0006】こうした自己免疫疾患の治療方法として、
免疫吸着カラムを用いた血液の体外循環による自己抗体
の吸着除去も種々試みられている。たとえば免疫グロブ
リンと結合性を有するプロテインAを担体に固定化した
カラムの適用も検討されている。しかしプロテインAは
高価であり、吸着特異性の点で優れず、さらには副作用
の問題も有しておりあまり有用なものではない。また除
去対象物質に対する抗体の固定化カラムも種々検討され
ているが、安全性,保存安定性の問題,抗体が有効に反
応できるような固定化が困難なこと,滅菌方法が限定さ
れるなどの理由から医用機材として用いるには多くの課
題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は血液中の抗血
小板抗体を認識して結合性を有するようなペプチドある
いはそれを修飾した有機化合物を固定化した不織布を用
いて、ITP患者における血液の体外循環を行なうこと
により抗血小板抗体を特異的に結合させ除去しようとす
るものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明は抗血小板抗体の抗原決定基となりうるアミノ酸配列
を含有しているペプチドあるいは修飾ペプチドを固定化
した不織布による抗血小板抗体の除去を要旨とするもの
である。
【0009】一般にITP患者における抗血小板抗体は
血小板膜表面に存在する糖タンパク質の複合体であるG
P2b/3aやGP1b/9に対する抗体である場合が
多いことが知られている。本発明において固定化される
ペプチド領域は上記血小板膜糖タンパク質の一次構造か
ら種々の方法により抗原決定基となりうる領域を予測お
よびスクリーニングすることにより得られたものである
ことが好ましい。
【0010】GP2bとGP3aは骨髄中の骨髄巨核球
またはその前駆細胞において複合体を形成する。血小板
膜表面においてGP2bとGP3aは非共有結合により
1:1の複合体を形成している。GP2bにおける55
8ないし747番目のアミノ酸残基の部分とGP3aに
おける114ないし303番目のアミノ酸残基の部分と
で会合していることが推定されている(医学のあゆみ,
160,681,1992)。GP2b/3aは血小板
膜表面上に最も多く存在している糖タンパク質である。
【0011】GP1bはα鎖およびβ鎖から成り、血小
板膜表面においてGP9と非共有的に結合して複合体を
形成すると考えられている(医学のあゆみ,160,6
77,1992)。GP1b/9は非活性状態の血小板
が内皮下組織に存在するvon Willebrand
因子を認識する際の膜受容体であり、血小板血栓形成の
ごく初期段階を制御する分子として重要と考えられてい
る。
【0012】GP3aは分子量約105キロダルトンの
1本のポリペプチドから成る糖タンパク質であり、すで
にcDNAがクローニングされている(J.Biol.
Chem.,262,3939,1987)。762個
のアミノ酸残基から構成されており、N末端部には26
アミノ酸残基から成るシグナルペプチドが存在する。細
胞外の部分は689個,膜貫通ドメインは29個,細胞
質内は41個のアミノ酸が存在する。460ないし62
7番目のアミノ酸残基から成る領域には33ないし38
個のアミノ酸より成るシステインリッチなドメインの繰
返しが4ヵ所存在する。
【0013】GP2bは分子量が約140キロダルトン
であり、約125キロダルトンのH鎖と約25キロダル
トンのL鎖から構成されておりこれらがSS結合により
結合している。1039個のアミノ酸残基から成りその
配列が決定されている(J.Biol.Chem.,2
62,8476,1987)。H鎖には871個、L鎖
には137個およびN末端部には30アミノ酸残基から
成るシグナルペプチドが存在する。膜貫通ドメインはL
鎖内に存在し26個の疎水性アミノ酸より構成される。
【0014】GP3aとGP2bは骨髄中の骨髄巨核球
またはその前駆細胞において複合体を形成する。血小板
膜表面においてGP2bとGP3aは非共有結合により
1:1の複合体を形成している。GP2bにおける55
8ないし747番目のアミノ酸残基の部分とGP3aに
おける114ないし303番目のアミノ酸残基の部分と
で会合していることが推定されている(医学のあゆみ,
160,681,1992)。本分子上にはフィブリノ
ーゲンなどの粘着性タンパク質に対する受容体が潜在す
る。GP2b/3aは血小板膜表面上に最も多く存在し
ている糖タンパク質である。
【0015】GP1b/9はGP1bα鎖,β鎖,GP
9の3つのサブユニットから構成され、非活性化状態の
血小板が内皮下組織に存在するvon Willebr
and因子を認識する際の膜受容体であり血小板血栓形
成のごく初期段階を制御する分子として重要と考えられ
ている。α鎖とβ鎖はSS結合で結ばれており、分子量
はそれぞれ140キロダルトンと24キロダルトンであ
る。GP9は17ないし18キロダルトンであり、非共
有結合的にGP1bに結合していると考えられる(医学
のあゆみ,160,677,1992)。いずれについ
てもアミノ酸配列が決定されており、α鎖は610個
(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,8
4,5615,1987)、β鎖は181個(Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA,85,21
35,1988)、GP9は160個(Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA,86,6773,1
989)のアミノ酸残基から成る。
【0016】上記の各糖タンパク質に関する抗血小板抗
体に対する免疫原性を有するペプチドとしては、最も多
く存在しているGP2b/3aを例にするとGP3aの
アミノ酸配列中において、68ないし78番目に相当す
るPro−Leu−Ser−Asp−Lys−Gly−
Ser−Gly−Asp−Ser−Ser,349ない
し364番目のGly−Lys−Ile−Arg−Se
r−Lys−Val−Glu−Leu−Glu−Val
−Arg−Asp−Leu−Pro−Glu,475な
いし490番目のGlu−Glu−Asp−Tyr−A
rg−Pro−Ser−Gln−Gln−Asp−Gl
u−Cys−Ser−Pro−Arg−Glu,619
ないし623番目のLys−Phe−Asp−Arg−
Glu,741ないし744番目のThr−Ala−A
sn−Asnの5つの領域がエンザイムイムノアッセイ
(以下ELISA法と言う)により確認された領域であ
る。これらの領域はいずれも親水性の比較的強い領域で
あり、GP3a分子表面に存在している領域であること
が推定される。またGP2bに関してはGlu−Thr
−Arg−Asn−Val−Gly−Ser(106な
いし112番目),Glu−Lys−Thr−Glu−
Glu−Ala−Glu−Lys−Thr(148ない
し156番目),Glu−Pro−Glu−Gln−P
ro−Ser−Arg−Leu(896ないし903番
目)の3つの領域が抗血小板抗体に対して免疫原性を有
している。これらも親水性の強い領域であり分子表面に
存在することが推定される。またGP1b/9に関して
も数種のペプチドについて抗血小板抗体に対する免疫原
性が確認されている。
【0017】上記に示した領域は抗血小板抗体との結合
に最小限必要な領域であると考えられる。実際にこうし
たペプチドを用いて抗血小板抗体を除去することを行な
う場合には、血液中に存在する抗血小板抗体との反応様
式に近い状態を再現する必要がある。また血液中に存在
する場合の構造の安定性や、あるいは担体に固定化する
場合には水系溶媒に対する溶解性を大きくしたりするこ
とを考慮する必要があることが多い。
【0018】そこで上記に示したペプチド領域の一方の
末端または両末端の領域を各タンパク質のアミノ酸配列
に従って領域を延長したり、たとえばリジンのような水
溶性を大きくするようなアミノ酸を数個末端に結合させ
たり、システインのようなアミノ酸を末端に結合させて
担体に固定化しやすくするなどすることが好ましい。実
際に用いるペプチドまたは修飾ペプチドの全アミノ酸残
基数としては60個以内であることが好ましいが、合成
の困難さやコスト,安定性などを考慮すると30個以内
がより好ましい。さらに免疫原性を発現するのに要する
高次構造の形成しやすさなども考慮すると10ないし2
5個までが最適であると言える。
【0019】また固定化反応や安定性などを考慮して、
たとえばN末端をアミド化したり、末端に適当な官能基
を導入したりして上記ペプチドを修飾した有機化合物を
用いることも好ましい。また複数のペプチドを−A−
(CH2 n −B−(A,BはNHまたはCOを示す)
で示されるような側鎖を用いて結合させたものも抗血小
板抗体との結合性をより高めることが可能である。この
場合のnの値は1ないし20が好ましく3ないし10が
より好ましい。
【0020】ペプチドの合成の方法については特に限定
されないが、液相合成法よりも固相合成法を適用する方
が操作が簡単である。この場合有機溶媒に不溶性である
支持体に合成するペプチドのC末端に対応するアミノ酸
を結合させ、N末端方向にαカルボキシル基以外のαア
ミノ基などの官能基を保護した対応するアミノ酸を順に
縮合反応により結合させた後、結合した後その保護基を
脱離させる反応を交互に繰返すことによりペプチド鎖を
延長させる。
【0021】目的とするペプチドを得た後、ペプチド鎖
を支持体から切断および脱保護基を行なう。これにはフ
ッ化水素がしばしば用いられるが、安全性,取扱いやす
さの点からトリフルオロメタンスルホン酸(以下TFM
SAと言う)を用いるのが適当である。チオアニソー
ル,1,2−エタンジチオールとTFMSA中で反応さ
せ脱保護基を行なった後、トリフルオロ酢酸(以下TF
Aと言う)により支持体からの切断を行ないペプチドを
回収する。これを凍結乾燥することによりクルードペプ
チドが得られる。
【0022】上記クルードペプチドは逆相系カラムを用
いた高速液体クロマトグラフィ(以下HPLCと言う)
に供することにより分取,精製を行なう。HPLC条件
は通常タンパク質の精製に用いる系を基本として最適化
を行なうのがよい。得られたクロマトピークに相当する
画分を分取しこれを凍結乾燥する。得られた精製ペプチ
ド画分についてマススペクトル分析による分子量解析,
アミノ酸組成分析あるいはアミノ酸配列解析などにより
同定を行なう。
【0023】上記ペプチドあるいは修飾ペプチドを固定
化する場合に用いる不織布の種類は特に限定されるもの
ではないが、血液浄化に用いる場合には血液中成分と接
触した際の補体系や凝固系などへの影響を考慮する必要
性があることから、ポリエチレンテレフタレート(PE
T),ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(P
E),ポリアミド,セルロース(綿)およびビスコース
などが挙げられるが、改質の容易さ、改質後の強度保持
性を考慮するとPET,PP,PE,綿またはビスコー
スが好ましく、特にPET,PP,綿が好ましい。また
血球成分の粘着性を抑えるためには、繊維径は1ないし
30μmが好ましく、3ないし20μmがより好まし
い。
【0024】さらに補体活性,凝固因子活性の抑制およ
び血球粘着を抑制し、リガンドであるペプチド類の導入
を容易に行なうために、カルボキル基の導入された不織
布を担体とすることが好ましい。カルボキル基の含量は
0.01ないし1meq/gが好ましく、0.1ないし
1.0meq/gがより好ましい。
【0025】不織布にカルボキル基を導入する方法は種
々のものが挙げられるが、たとえばPP,PEの場合に
はアクリル酸(AA),メタクリル酸(MAA)または
これらの誘導体を重合時に共重合させて不織布を製造す
る方法がある。またこれらの素材を電子線,紫外線また
はオゾンを照射することによりラジカルやイオンを発生
させ、AA,MAAまたはこれらの誘導体をグラフトさ
せる方法がある。この場合には他のビニルモノマーを共
存させることも可能である。
【0026】綿やビスコースの場合には過ヨウ素酸によ
り酸化してそのグリコール部位を開裂させてアルデヒド
基を導入して、これを酸化してカルボキル基を導入して
もよいし、あるいはアルデヒド基にアンモニア,エチレ
ンジアミン,ヘキサメチレンジアミンのような少なくと
も一級のアミノ基を1個以上有する化合物を反応させて
シッフ塩基を形成し、これを還元してアミノ基を導入し
た後、このアミノ基とAA,MAA,およびこれらの誘
導体またはポリアクリル酸(PAA),ポリメタクリル
酸(PMAA)およびこれらの誘導体ポリマーとを縮合
させてもよい。この時のPAA,PMAAおよびそれら
の誘導体ポリマーの分子量は200ないし20000が
好ましく、500ないし10000がより好ましい。こ
こでいう誘導体ポリマーとはAAまたはMAAのモノマ
ー単位を少なくとも1種類を10ないし80モル%以上
を含む他のビニルモノマーとの共重合体を意味するもの
である。
【0027】さらに電子線照射によりカルボキル基を導
入する方法として、PAA,PMAAおよびそれらの誘
導体ポリマーとビニル基を1分子中に少なくとも2個以
上有する架橋性モノマーとの混合溶液を不織布にコーテ
ィングし乾燥させた後、電子線を照射してカルボキル基
を導入することができる。この場合のポリマーの分子量
は200ないし20000が好ましく、500ないし1
0000がさらに好ましい。
【0028】用いる架橋性モノマーとしてはメチレンビ
スアクリルアミド,トリメチロールプロパンジアクリレ
ート,トリメチロールプロパントリアクリレート,テト
ラメチロールメタンテトラアクリレート,トリアリルイ
ソシアヌレートのようなビニル基を複数個有するモノマ
ーの他に、化1の一般式で示される化合物が挙げられ
る。これらの架橋性化合物のうちで化1を用いた場合が
カルボキル基の導入率が最も良好で、カルボキル基濃度
も所望の値に制御することが可能である。化1における
1,R2,R3はそれぞれ水素原子またはメチル基を示
す。nは1ないし100の整数を示しているが、3ない
し70の整数の場合が好ましく、5ないし60の整数が
さらに好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】コーティングする溶液の濃度は0.1ない
し20%、好ましくは0.5ないし10%であり、用い
る溶媒は架橋性化合物とPAA,PMAAおよびそれら
の誘導体ポリマーの両方を溶解する溶媒であればすべて
使用できるが、水,メタノール,エタノール,塩化メチ
レン,クロロホルム,アセトン,ジオキサン,テトラヒ
ドロフランまたはこれらの混合溶媒を用いることができ
る。PAA,PMAAおよびそれらの誘導体ポリマーと
架橋性化合物との混合比は50:1ないし1:50、好
ましくは30:1ないし1:30である。コーティング
する混合物は不織布に対して0.5ないし30wt%、
好ましくは1ないし20wt%である。
【0031】不織布へのカルボキル基の導入方法を種々
検討したところ、PAA,PMAAおよびそれらの誘導
体ポリマーと化1で示される化合物とを混合してコーテ
ィングした後、電子線照射により処理する方法が最も好
ましい。この場合に用いる素材としてはPET,PEお
よび綿が好ましく、特にPETが好ましい照射線量は1
ないし20Mrad、好ましくは2ないし10Mrad
である。このようにしてカルボキル基を導入した不織布
はカルボキル基とポリエチレングリコールとの相乗効果
により、血小板,白血球などの粘着がなく血液の補体活
性や凝固系因子の活性化も抑制されており、抗血小板抗
体の吸着,除去に際して血漿と血球成分とを分離した後
血漿から抗体を吸着して血漿と血球成分を再混合して患
者に返す必要がなく全血処理により一段階で抗体を吸着
することができる。
【0032】カルボキル基の導入された不織布への抗血
小板抗体との結合性を有する上記のようなペプチド類の
固定化に関しても種々の方法がある。この場合リガンド
に用いるペプチドや修飾ペプチドは比較的安定で低分子
量の物質であり、たとえば酵素や抗体のような高分子量
のタンパク質を固定化する場合と比較してその固定化反
応条件は制約が少なくなることも有利な要因の一つであ
る。したがって固定化方法については特に限定されるも
のではないが、以下のような方法によるものが好まし
い。
【0033】通常は立体障害を小さくすることにより抗
体の吸着効率,結合性の向上させ、また非特異的吸着を
抑えることを目的として、親水性スペーサーを導入し
て、その末端にペプチド類を固定化するのが好ましい。
親水性スペーサーとしては導入したカルボキル基を利用
するのが好ましく、両末端にアミノ基またはグリシジル
基を有するポリエチレングリコールを用いることが好ま
しい。この場合のポリエチレングリコールの分子量は1
00ないし20000、好ましくは200ないし100
00、さらに好ましくは500ないし5000である。
【0034】両末端にアミノ基を有するポリエチレング
リコール(以下PEOアミンと言う)を用いる場合、ま
ず不織布のカルボキシル基とカルボジイミドなどの縮合
剤を用いてアミド結合により結合させ、次にもう一方の
アミノ基とペプチドのカルボキシル基末端を縮合剤の存
在下に縮合させてアミド基を介した固定化を行なう。
【0035】またグリシジル基を両末端に有するポリエ
チレングリコールを用いる場合には、まず片端のグリシ
ジル基と不織布のカルボキシル基との反応によりスペー
サーを導入し、次いでもう一方の末端のグリシジル基と
ペプチドのアミノ基とを反応させて固定化を行なう。
【0036】しかしPAA,PMAAおよびそれらの誘
導体ポリマーと化1を用いてカルボキシル基を導入した
場合においては、グラフトされたPAA,PMAAおよ
びそれらの誘導体ポリマー自体が親水性スペーサーの役
割を果たしており、このことからも好ましいものであ
る。すなわちグラフトされたPAA,PMAAおよびそ
れらの誘導体ポリマーのカルボキシル基とペプチドのア
ミノ基末端を上記の方法により縮合させることにより固
定化が他の方法と比較して有利である。
【0037】
【実施例】本発明におけるペプチド類のカルボキシル基
を導入した不織布への導入方法は上記に述べたものを基
本とすれば特に限定されるものではない。以下に実施例
を用いて本発明を説明する。
【0038】<実施例1> Lys−Lys−Pro−
Leu−Ser−Asp−Lys−Gly−Ser−G
ly−Asp−Ser−Serの不織布への固定化 (1)ペプチドの合成 GP3aにおいて免疫原性を有する68ないし78番目
までの領域のN末端にリジン残基を2個結合させたLy
s−Lys−Pro−Leu−Ser−Asp−Lys
−Gly−Ser−Gly−Asp−Ser−Serの
配列を有するペプチドの合成をペプチドシンセサイザー
Model430A(アプライドバイオシステムズ社
製)を用いて固相合成法により行なった。C末端のセリ
ンの結合した支持体であるPAMセリン(t−Boc−
L−Ser(Bzl))0.5mmol(アプライドバ
イオシステムズ社製)を用いて、N末端の方向に順に上
記ペプチドシンセサイザーに掲載されている合成プログ
ラムにより脱保護基反応および縮合反応を繰返してペプ
チド鎖を延長した。すなわちTFAおよびジクロロメタ
ン(以下DCCと言う)により保護基であるt−ブトキ
シカルボニル基の除去を行ない、ジクロロメタン(以下
DCMと言う)で洗浄し、ジイソプロピルエチルアミン
およびDCCで中和した後、ジメチルホルムアミド(以
下DMFと言う)で洗浄し、DMFで縮合反応を行な
い、DCMで洗浄する操作を繰返した。アミノ酸はt−
Boc−L−Lys(Cl−Z),t−Boc−L−S
er(Bzl),t−Boc−L−Asp(OBz
l),t−Boc−L−Gly,t−Boc−L−Le
u・H2 O,t−Boc−L−Pro(いずれもアプラ
イドバイオシステムズ社製)の2.0mmolのカート
リッジを用いた。
【0039】(2)脱保護基,ペプチド鎖の切断 上記の反応が終了した支持体1gにチオアニソール1m
l,1,2−エタンジチオール0.5mlを加えて10
分間攪拌した後、氷水で冷やしながらTFA10mlを
加えて10分間攪拌した。さらにTFMSA1mlを加
えて室温で30分間攪拌した。これにあらかじめ冷やし
ておいたジエチルエーテルを沈殿が現れなくなるまで加
えて攪拌し、ミディアム孔のガラスフィルターを用いて
ジエチルエーテルで共洗いしながら濾過し、TFAを加
えてペプチドを溶解してエーテル中に補集した。エーテ
ル中のペプチドをファイン孔のガラスフィルターで濾過
し、ガラスフィルター上のペプチドを2N酢酸に溶解し
て、凍結乾燥を行ないクルードペプチドを得た。
【0040】(3)ペプチドの精製 上記クルードペプチドを再度2N酢酸に溶解して、0.
2μmのメンブレンフィルターで濾過した溶液をHPL
Cに供した。HPLCはModel130Aシステム
(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、カラムは
逆相系のAquapore Prep−10,C8(ア
プライドバイオシステムズ社製)を用いた。移動相は
0.1%TFAを含む水をA液,0.1%TFAを含む
70%アセトニトリル/水(v/v)をB液として、A
液からB液への濃度直線勾配により溶出した。クロマト
ピークはほぼ単一なものが得られ、相当画分を分取し
た。分取を数回繰返し、これを凍結乾燥することにより
精製ペプチドを得た。得られたペプチドはBIOION
20マスアナライザー(アプライドバイオシステムズ社
製)により解析して目的ペプチドが得られていることを
確認した。
【0041】(4)不織布の改質 化1においてR1 ,R2 ,R3 が水素原子でありnの値
が14であるポリエチレンジアクリレート(CH2=C
H−COO−(CH2 CH2 O)14−OC−CH2 =C
2 )2gおよび分子量10000のPAA0.2gを
200mlのメタノールに溶解し、15cm平方の大き
さに切断した繊維径3.5μmのPET製不織布をこの
溶液に浸した後、5Mradずつ合わせて10Mrad
の電子線を不織布の両面に照射した。電子線照射の終了
した不織布を水およびメタノールで3回ずつ洗浄を行な
い風乾した。得られた不織布のカルボキシル基含量の定
量を水酸化ナトリウム溶液による滴定により行ない、
0.085meq/gであった。
【0042】(5)ペプチドの不織布への導入 (3)で得た精製ペプチド25mgをpH4.5のクエ
ン酸緩衝液に溶解した後氷冷を行ない、水溶性カルボジ
イミド試薬であるEDC(1−エチル−3−(3−ジメ
チルアミノプロピル)カルボジイミド)10mgを加え
て氷冷しながら30分間攪拌した。さらに上記の改質し
た不織布を加えて、室温で24時間振盪して反応させ
た。反応の終了した不織布を水で3回洗浄して、目的で
ある吸着材を得た。ペプチドの固定化率は反応残液中の
窒素含量をマイクロケルダール法により定量して算出し
85%が導入されていた。
【0043】(6)ペプチド固定化吸着材の性能評価 上記吸着材における上記のITP患者の血液を用いて抗
血小板抗体の吸着性能を評価した。一辺7cmの菱形の
ポリカーボネート製モジュールケースの形状およびその
大きさに切断した上記吸着材を20枚充填したカラムを
組立て、100U/mlのヘパリンを含む生理食塩水1
00ml、次いで1U/mlのヘパリンを含む生理食塩
水100mlでカラム内および血液回路内を洗浄した。
一方クエン酸を添加したITP患者の血液(5種類)1
00mlをビーカーに取り、カラムを通して再びビーカ
ーに戻すような血液回路を組み、この装置を用いて血液
流量30ml/分で1時間連続して潅流実験を行なっ
た。
【0044】本処理を行なった後の血清中の抗血小板抗
体量をELISA法により定量した(Acta.hae
mat.,66,251,1981)。結果は表1に示
す通りであり、本処理を行なう前の血清での値から算出
した吸着率[%]で示した。またアルブミンの非特異的
吸着に関しても、アルブミンBーテストワコー(和光純
薬工業製)を用いて定量した。結果は表2に示す通りで
あり、表1と同様に吸着率[%]で示した。また血小板
の粘着性についても本処理を行なう前後の血小板数をコ
ールターカウンターZM型(コールターエレクトロニク
ス社製)を用いて定量することにより調べた。結果は表
3に示す通りであり、血小板数の減少率[%]で示し
た。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】<実施例2> Glu−Glu−Asp−
Tyr−Arg−Pro−Ser−Gln−Gln−A
sp−Glu−Cys−Ser−Pro−Arg−Gl
uの不織布への固定化 GP3aにおける475ないし490番目の領域に相当
するGlu−Glu−Asp−Tyr−Arg−Pro
−Ser−Gln−Gln−Asp−Glu−Cys−
Ser−Pro−Arg−Gluの配列を有するペプチ
ドの合成に関してもPAMグルタミン酸(t−Boc−
L−Glu(OBzl))(アプライドバイオシステム
ズ社製)およびt−Boc−L−Arg(Tos),t
−Boc−L−Pro,t−Boc−L−Ser(Bz
l),t−Boc−L−Cys(4−CH3 OBz
l),t−Boc−L−Glu(OBzl),t−Bo
c−L−Asp(OBzl),t−Boc−L−Gl
n,t−Boc−L−Tyr(Br−Z)(いずれもア
プライドバイオシステムズ社製)を用いて実施例1と同
様にして実施した。合成の終了した支持体の脱保護基,
ペプチド鎖の切断,逆相系HPLCによる精製および同
定についても実施例1と同様にして行なった。
【0049】化1においてR1 ,R2 ,R3 が水素原子
でありnの値が9であるポリエチレンジアクリレート
(CH2 =CH−COO−(CH2 CH2 O)9 −OC
−CH 2 =CH2 )1gおよび分子量4000のPAA
1gを200mlのメタノールに溶解し、実施例1と同
様に15cm平方の大きさに切断した繊維径3.5μm
のPET製不織布をこの溶液に浸した後、5Mradず
つ合わせて10Mradの電子線を不織布の両面に照射
した。電子線照射の終了した不織布を水およびメタノー
ルで3回ずつ洗浄を行ない風乾した。得られた不織布の
カルボキシル基含量の定量を水酸化ナトリウム溶液によ
る滴定により行ない、0.355meq/gであった。
【0050】上記ペプチド50mgを実施例1と同様に
pH4.5のクエン酸緩衝液に溶解した後氷冷を行な
い、EDC10mgを加えて氷冷しながら30分間攪拌
した。さらに上記の改質した不織布を加えて、室温で2
4時間振盪して反応させた。反応の終了した不織布を水
で3回洗浄して、目的である吸着材を得た。ペプチドの
固定化率は実施例1と同様にして求め78%が導入され
ていた。得られた吸着材の性能評価を実施例1と同様に
して、カラムを組立てた後ITP患者の血液を用いた潅
流実験により行なった。処理後の血清中の抗血小板抗体
量およびアルブミン量を実施例1と同様にして定量し
た。結果をそれぞれ表1および表2に吸着率[%]で示
した。血小板粘着性についても実施例1と同様に検討し
た結果を表3に血小板数の減少率[%]で示した。
【0051】<実施例3> Arg−Ala−Lys−
Trp−Asp−Thr−Ala−Asn−Asn−P
ro−Leu−Tyr−Lys−Gluの不織布への固
定化 GP3aにおける741ないし744番目のThr−A
la−Asn−Asnの配列の両端を5残基ずつ延長さ
せたArg−Ala−Lys−Trp−Asp−Thr
−Ala−Asn−Asn−Pro−Leu−Tyr−
Lys−Gluの配列を有するペプチドの合成に関して
もPAMグルタミン酸(t−Boc−L−Glu(OB
zl))(アプライドバイオシステムズ社製)およびt
−Boc−L−Lys(Cl−Z),t−Boc−L−
Tyr(Br−Z),t−Boc−L−Leu・H
2 O,t−Boc−L−Pro,t−Boc−L−As
n,t−Boc−L−Ala,t−Boc−L−Thr
(Bzl),t−Boc−L−Asp(OBzl),t
−Boc−L−Trp(CHO),t−Boc−L−A
rg(Tos)(いずれもアプライドバイオシステムズ
社製)を用いて実施例1と同様にして実施した。合成の
終了した支持体の脱保護基については配列中にt−Bo
c−L−Trp(CHO)を含んでいるので、先に1g
の合成を終えた支持体に1,2−エタンジチオール0.
2ml,m−クレゾール0.8ml,ジメチルスルフィ
ド3ml,TFA5ml,TFMSA1mlを加えて、
氷水で冷やしながら3時間攪拌して反応させた。反応物
をあらかじめ冷やしておいたジエチルエーテルで洗浄し
ながらガラスフィルター(ミディアム孔)で濾過し後に
実施例1で行なった脱保護基反応を行なった。以下ペプ
チド鎖の切断,逆相系HPLCによる精製および同定に
ついては実施例1と同様にして行なった。
【0052】分子量1000のPEOアミンを30gを
pH4.5のクエン酸緩衝液500mlに溶解した後氷
冷し、EDC10mgを加えて氷冷しながら30分間攪
拌した。実施例1と同様にして得たカルボキシル基を導
入(0.089meq/g)した改質不織布30枚を、
上記PEOアミン溶液中で室温で振盪させることにより
24時間反応させた。反応終了後不織布を水で3回洗浄
して、PEOアミンを導入した不織布を得た。アミノ基
含量はの定量は塩酸による電位差滴定をCOMTITE
101(平沼産業製)を用いて行ない0.039meq
/gであった。
【0053】上記ペプチド25mgを実施例1と同様に
pH4.5のクエン酸緩衝液に溶解した後氷冷を行な
い、EDC10mgを加えて氷冷しながら30分間攪拌
した。さらに上記のPEOアミンの導入された不織布を
加えて、室温で24時間振盪して反応させた。反応の終
了した不織布を水で3回洗浄して、目的である吸着材を
得た。ペプチドの固定化率を実施例1と同様にして求め
84%が導入されていた。得られた吸着材の性能評価を
実施例1と同様にして、カラムを組立てた後ITP患者
の血液を用いた潅流実験により行なった。処理後の血清
中の抗血小板抗体量およびアルブミン量を実施例1と同
様にして定量した。結果をそれぞれ表1および表2に吸
着率[%]で示した。血小板粘着性についても実施例1
と同様に検討した結果を表3に血小板数の減少率[%]
で示した。
【0054】<実施例4> LysーGly−Lys−
Ile−Arg−Ser−Lys−Val−Glu−L
eu−Glu−Val−Arg−Asp−Leu−Pr
o−Gluの不織布への固定化 GP3aにおける349ないし364番目の配列のN端
にLys残基を1つ結合させたLysーGly−Lys
−Ile−Arg−Ser−Lys−Val−Glu−
Leu−Glu−Val−Arg−Asp−Leu−P
ro−Gluの配列を有するペプチドの合成に関しても
PAMグルタミン酸(t−Boc−L−Glu(OBz
l))(アプライドバイオシステムズ社製)およびt−
Boc−L−Lys(Cl−Z),t−Boc−L−G
ly,t−Boc−L−Ile・1/2H2O,t−B
oc−L−Arg(Tos),t−Boc−L−Ser
(Bzl),t−Boc−L−Val,t−Boc−L
−Glu(OBzl),t−Boc−L−Leu・H2
O,t−Boc−L−Asp(OBzl),t−Boc
−L−Pro(いずれもアプライドバイオシステムズ社
製)を用いて実施例1と同様にして実施した。合成の終
了した支持体の脱保護基,ペプチド鎖の切断,逆相系H
PLCによる精製および同定についても実施例1と同様
にして行なった。
【0055】分子量5000のPEOアミンを6gをp
H4.5のクエン酸緩衝液500mlに溶解した後氷冷
し、EDC10mgを加えて氷冷しながら30分間攪拌
した。実施例2で得たカルボキシル基を導入(0.35
8meq/g)した改質不織布30枚を、上記PEOア
ミン溶液中で室温で振盪させることにより24時間反応
させた。反応終了後不織布を水で3回洗浄して、PEO
アミンを導入した不織布を得た。アミノ基含量を実施例
3と同様にして定量し0.147meq/gであった。
【0056】上記ペプチド50mgを実施例1と同様に
pH4.5のクエン酸緩衝液に溶解した後氷冷を行な
い、EDC10mgを加えて氷冷しながら30分間攪拌
した。さらに上記のPEOアミンの導入された不織布を
加えて、室温で24時間振盪して反応させた。反応の終
了した不織布を水で3回洗浄して、目的である吸着材を
得た。ペプチドの固定化率を実施例1と同様にして求め
81%が導入されていた。得られた吸着材の性能評価は
実施例1と同様のカラムを組立てた後ITP患者の血液
を用いた潅流実験により行なった。処理後の血清中の抗
血小板抗体量およびアルブミン量を実施例1と同様にし
て定量した。結果をそれぞれ表1および表2に吸着率
[%]で示した。血小板粘着性についても実施例1と同
様に検討した結果を表3に血小板数の減少率[%]で示
した。
【0057】
【比較例】
<比較例1> Glu−Glu−Asp−Tyr−Ar
g−Pro−Ser−Gln−Gln−Asp−Glu
−Cys−Ser−Pro−Arg−Gluの不織布へ
の固定化 実施例2で得たGlu−Glu−Asp−Tyr−Ar
g−Pro−Ser−Gln−Gln−Asp−Glu
−Cys−Ser−Pro−Arg−Gluの綿不織布
への導入を次のようにして実施した。15cm平方の大
きさに切断した繊維径12μmの綿不織布30枚を、1
wt%濃度の過ヨウ素酸ナトリウムを1N硫酸に溶解し
た溶液500ml中に加えて振盪により22時間反応さ
せた。反応終了後不織布を水で3回洗浄して、アルデヒ
ド基の導入された不織布を得た。アルデヒド含量はオキ
シム法により定量を行ない0.50meq/gであっ
た。
【0058】上記ペプチド25mgをpH9.5の炭酸
緩衝液500mlに溶解して、上記アルデヒド基導入不
織布を加えて振盪により24時間シッフ塩基反応を行な
った。反応終了後不織布を水で3回洗浄した。ペプチド
の固定化率を実施例1と同様にして求め89%が導入さ
れていた。次に1gの水素化ホウ素ナトリウム(NaB
4)をpH9.0の炭酸緩衝液500mlに溶解し
て、上記の不織布を加えて振盪により20時間反応させ
た。反応終了後不織布を水で3回洗浄して目的の吸着材
を得た。得られた吸着材の性能評価を実施例1と同様に
して、カラムを組立てた後ITP患者の血液を用いた潅
流実験により行なった。処理後の血清中の抗血小板抗体
量およびアルブミン量を実施例1と同様にして定量し
た。結果をそれぞれ表1および表2に吸着率[%]で示
した。
【0059】<比較例2> Thr−Thr−Arg−
Thr−Asp−Thr−Cys−Met−Ser−S
er−Asn−Gly−Leuの不織布への固定化 GP3aにおける561ないし673番目の領域に相当
するThr−Thr−Arg−Thr−Asp−Thr
−Cys−Met−Ser−Ser−Asn−Gly−
Leuの配列を有するペプチドの合成に関して、PAM
ロイシン(t−Boc−L−Leu)(アプライドバイ
オシステムズ社製)およびt−Boc−L−Gly,t
−Boc−L−Asn,t−Boc−L−Ser(Bz
l),t−Boc−L−Met,t−Boc−L−Cy
s(4−CH3OBzl),t−Boc−L−Thr
(Bzl),t−Boc−L−Asp(OBzl),t
−Boc−L−Arg(Tos)(いずれもアプライド
バイオシステムズ社製)を用いて実施例1と同様にして
実施した。このペプチド領域も親水性の比較的大きな領
域である。合成の終了した支持体の脱保護基,ペプチド
鎖の切断,逆相系HPLCによる精製および同定につい
ても実施例1と同様にして行なった。
【0060】比較例1と同じ条件を用いてアルデヒド基
を導入(0.51meq/g)した綿不織布に、上記ペ
プチドの綿不織布への導入を比較例1と同じ反応条件に
より行なった。ペプチドの固定化率は実施例1と同様に
して求め87%が導入されていた。得られた吸着材の性
能評価を実施例1と同様にして、カラムを組立てた後I
TP患者の血液を用いた潅流実験により行なった。処理
後の血清中の抗血小板抗体量およびアルブミン量を実施
例1と同様にして定量した。結果をそれぞれ表1および
表2に吸着率[%]で示した。血小板粘着性についても
実施例1と同様に検討した結果を表3に血小板数の減少
率[%]で示した。
【0061】
【発明の効果】本発明により血液中の抗血小板抗体と効
果的に結合させることが可能であり、重症なITP患者
の治療に適用が可能である。本発明における抗血小板抗
体吸着材を用いた血液浄化療法は副作用もなく安全であ
り、保存による安定性の面でも優れている。不織布を利
用することにより従来のような血漿分離を必要としない
全血処理による体外循環が可能である。またカルボキシ
ル基が存在することによりリガンドであるペプチド類の
導入も容易である。さらにオートクレーブ処理による蒸
気滅菌を行なってもリガンドとしての活性が低下するこ
とがほとんどない点も医療機材として有利である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年12月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正内容】
【0023】上記ペプチドあるいは修飾ペプチドを固定
化する場合に用いる不織布の種類は特に限定されるもの
ではないが、血液浄化に用いる場合には血液中成分と接
触した際の補体系や凝固系などへの影響を考慮する必要
性があることから、ポリエチレンテレフタレ−ト(PE
T)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(P
E)、ポリアミド、セルロ−ス(綿)およびビスコ−ス
などが挙げられるが、改質の容易さ、改質後の強度保持
性を考慮するとPET、PP、PE、綿またはビスコ−
スが好ましく、特にPET、PP、綿が好ましい。また
血球成分の粘着性を抑えるためには、繊維径は1ないし
30μmが好ましく3ないし20μmがより好ましい。
これらの繊維から構成される不織布としては、本発明の
目的からして、不織布の密度(充填率)は、0.6g/
cm3 以下、より好ましくは0.4g/cm3 以下のも
のである。またその下限としては、接触効率の点から
0.01g/cm3 以上、より好ましくは0.02g/
cm3 以上である。
フロントページの続き (72)発明者 田中 昌和 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボキシル基を含有する平均繊維径1
    ないし30μmの繊維からなる不織布に、抗血小板抗体
    と結合性を有するペプチドまたは修飾ペプチドを固定化
    したことを特徴とする抗血小板抗体吸着材。
JP4274450A 1992-10-13 1992-10-13 抗血小板抗体吸着材 Pending JPH06121834A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4274450A JPH06121834A (ja) 1992-10-13 1992-10-13 抗血小板抗体吸着材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4274450A JPH06121834A (ja) 1992-10-13 1992-10-13 抗血小板抗体吸着材

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH06121834A true JPH06121834A (ja) 1994-05-06

Family

ID=17541863

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4274450A Pending JPH06121834A (ja) 1992-10-13 1992-10-13 抗血小板抗体吸着材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH06121834A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109252364A (zh) * 2018-09-19 2019-01-22 安徽升医疗设备有限公司 一种血液相容性聚丙烯无纺布的制备方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109252364A (zh) * 2018-09-19 2019-01-22 安徽升医疗设备有限公司 一种血液相容性聚丙烯无纺布的制备方法
CN109252364B (zh) * 2018-09-19 2020-12-22 福建金成纤维制品有限公司 一种血液相容性聚丙烯无纺布的制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH08502023A (ja) ポリアルキレンオキシド複合化ヘモグロビン溶液の分画
JP4945876B2 (ja) ハイモビリティーグループタンパクの吸着材および体液浄化カラム
HU214905B (hu) Eljárás VIII. faktor izolálására
JP4495258B2 (ja) 物質の供給および除去のための相互作用システム
JP2004506651A (ja) 抗ヘパリンペプチド
JP2001299904A (ja) フィブリノーゲンおよび/またはフィブリンの濃度を減少させるための吸着剤、吸着装置の製造のための吸着剤の使用、および吸着剤を有する吸着装置
US5171837A (en) Peptide capable of binding interleukin 6 and an adsorbent comprising the peptide immobilized on a carrier
US20030190732A1 (en) Plasma fraction containing bikunin, method for the production thereof and use of the same
JP3926573B2 (ja) フィブリノーゲンおよび/またはフィブリンの濃度を減少させるための吸着剤の製造法、吸着剤、および吸着装置の製造のための吸着剤の使用
JPH06121834A (ja) 抗血小板抗体吸着材
US6414125B1 (en) Method of chromatographically purifying or fractionating, respectively, von Willebrand factor from a VWF-containing starting material
JPH06142198A (ja) 抗血小板抗体吸着材
CN116322920A (zh) 使用氧化硅吸附从血浆中纯化fviii
JPH06218050A (ja) 抗血小板抗体吸着材
JPH06269498A (ja) 抗血小板抗体吸着材
JP3357139B2 (ja) 抗デオキシリボ核酸抗体の吸着剤
JPH06154316A (ja) Cd4陽性細胞捕集材
JPH06154317A (ja) Cd4陽性細胞捕集材
JPH06269663A (ja) Cd4陽性細胞捕集材
JPH06218051A (ja) Cd4陽性細胞捕集材
JPH06105909A (ja) 抗血小板抗体吸着材
JPH04327600A (ja) ペプチド複合体およびそれを有効成分とする医薬
US20070225226A1 (en) C-reactive protein apheresis
JPH0792167A (ja) IgE吸着材
JP4443309B2 (ja) フィブリノゲン吸着剤iii