JPH0792167A - IgE吸着材 - Google Patents

IgE吸着材

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JPH0792167A
JPH0792167A JP23800893A JP23800893A JPH0792167A JP H0792167 A JPH0792167 A JP H0792167A JP 23800893 A JP23800893 A JP 23800893A JP 23800893 A JP23800893 A JP 23800893A JP H0792167 A JPH0792167 A JP H0792167A
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JP
Japan
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ige
peptide
asn
leu
lys
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JP23800893A
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Hidekazu Yamada
秀和 山田
Tadashi Tezuka
正 手塚
Kazunori Inamori
和紀 稲森
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Kinki University
Toyobo Co Ltd
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Kinki University
Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 血中IgEと特異的に結合してこれを除去す
ることができるIgE吸着材を提供する。 【構成】 IgEFcε高アフィニティレセプターにお
けるアミノ酸配列中に存在しており、IgEとの結合性
を有するIgE結合性ペプチドまたは該IgE結合性ペ
プチド領域を含む修飾ペプチドを水不溶性担体に固定化
したものであることを特徴とするIgE吸着材である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、何らかの原因により血
液中に過剰に産生されたIgE(イムノグロブリンE)
と特異的に結合してこれを除去することができるIgE
吸着材に関するものである。詳細には、血液中のIgE
により惹起される免疫障害であるI型アレルギー反応を
抑制し、特に薬物等による治療が困難なアトピー性疾患
や高IgE症候群などの治療に非常に有用なIgE吸着
材である。
【0002】
【従来の技術】I型アレルギーはダニ、カビ、花粉ある
いは種々の食物などのアレルゲンと呼ばれる外因性の抗
原との接触により引き起こされる過敏症の総称である。
アレルゲンが体内に侵入するとこれに特異的なIgEが
産生され、肥満細胞や好塩基球の表面に存在するFcレ
セプターと結合する。この結合によりIgEが2分子以
上架橋するとFc部分に構造変化が生じ、肥満細胞に刺
激を与え細胞内の酵素系を活性化し、これら細胞の保有
する顆粒を放出させる。その結果顆粒中に含まれるヒス
タミン、セロトニン、SRS−Aなどの化学伝達因子が
遊離され、I型アレルギーの諸症状が引き起こされる。
このようなIgEに関連するI型アレルギー症状として
は、喘息、花粉症、鼻アレルギー、蕁麻疹、アトピー性
皮膚炎などのアトピー性疾患や高IgE症候群などが挙
げられる。
【0003】IgEは分子量は約19万とIgGよりも
やや大きく、熱などに対する安定性は弱い。IgEの生
理学的な意義はあまり明らかにされていないが、寄生虫
の感染防御に関して重要な役割を果たしているものと考
えられている。正常人の血中にはIgEは0.1ないし
0.4μg/mlとごく微量しか存在しないが、上記の
ような通常のアトピー性疾患や高IgE症候群の患者で
は多くの場合に高度の上昇が見られ、例えばアトピー性
疾患の患者では10ないし30μg/ml前後にまで達
する。
【0004】我が国におけるアトピー性疾患患者数は年
々増加の傾向にあり、近年では小児における罹患率も高
くなってきている。これらの疾患の治療方法はその症状
や程度に応じて種々試みられており、例えば病因となる
抗原を見出しこれを回避する手段がある。具体的には、
室内塵、カビ、花粉などを遠ざけたり、原因となる食物
や薬剤の摂取を制限したりするものである。その他に、
薬物療法として気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、ステロ
イド剤、プロスタグランジンなどの投与によりアレルギ
ー反応系を抑制する方法がある。また、抗原の注射を、
最初は少量から始めて徐々にその量を増やしていく減感
作療法も行なわれている。その他に血漿交換療法なども
報告されているが、重篤なアトピー性疾患患者の場合に
はいずれの方法を用いても十分な効果が得られていない
場合が多い。また、高IgE症候群の場合には感染率が
高いという問題があり、このような患者に対しても有効
な治療が確立されていない。従って、これらの患者に対
する有効な治療の確立が急がれているのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
を解決するためになされたものであり、その目的は、I
gEと特異的に結合してこれを除去することができ、そ
の結果、重篤なアトピー性疾患や高IgE症候群を治癒
することができるIgE吸着材を提供しようとするもの
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すること
ができる本発明のIgE吸着材は、IgEFcε高アフ
ィニティレセプターにおけるアミノ酸配列中に存在して
おり、IgEとの結合性を有するIgE結合性ペプチド
または該IgE結合性ペプチド領域を含む修飾ペプチド
を水不溶性担体に固定化したものであることに要旨を有
するものである。好適な実施態様では、上記IgE結合
性ペプチドが、以下の(1)〜(9):
【0007】(1)Val−Ser−Leu−Asn−
Pro−Pro−Trp−Asn−Arg−Ile−P
he−Lys−Gly−Glu−Asn−Val−Th
r (2)Leu−Thr−Cys−Asn−Gly−As
n−Asn−Phe−Phe−Glu−Val−Ser
−Ser−Thr−Lys−Trp−Phe−His−
Asn (3)Asn−Gly−Ser−Leu−Ser−Gl
u−Glu−Thr−Asn−Ser−Ser−Leu
−Asn (4)Asn−Ala−Lys−Phe−Glu−As
p−Ser−Gly−Glu−Tyr−Lys−Cys
−Gln−His (5)Ser−Glu−Pro−Val−Tyr−Le
u−Glu−Val−Phe−Ser−Asp−Trp
−Leu−Leu−Leu−Gln (6)Pro−Leu−Phe−Leu−Arg−Cy
s−His−Gly−Trp−Arg−Asn−Trp
−Asp−Val−Tyr−Lys−Val−Ile−
Tyr−Tyr (7)Tyr−Tyr−Lys−Asp−Gly−Gl
u−Ala−Leu−Lys−Tyr−Trp−Tyr
−Glu−Asn−His−Asn−Ile−Ser (8)Ser−Glu−Pro−Leu−Asn−Il
e−Thr−Val−Ile−Lys−Ala−Pro
−Arg−Glu−Lys (9)Lys−Ile−Lys−Arg−Thr−Ar
g−Lys−Gly−Phe−Arg−Leu−Leu
−Asn−Pro−His−Pro−Lys よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0008】さらに好適な実施態様では、上記修飾ペプ
チドは、上記IgE結合性ペプチド領域の両末端または
片末端が (a)α−アミノ酸 (b)α−アミノ酸を2から60個含有するペプチド (c)炭素数が1から20個のω−アミノ酸、ジアミ
ン、またはジカルボン酸のいずれか のいずれかで修飾されたものである。
【0009】
【作用】以下の記載ではIgEFcε高アフィニティレ
セプターを単にFcεRIと略して記載し、また上記
(1)〜(9)に示すアミノ酸配列を単に(1)〜
(9)のアミノ酸配列と略して記載する。
【0010】本発明において用いられるIgE結合性ペ
プチドとは、FcεRI中に存在しており、IgEとの
結合性を有するペプチドである。上記FcεRIは分子
量40ないし50キロダルトンの1本のポリペプチドか
ら成る糖タンパク質であり、すでにcDNAがクローニ
ングされている(Nuc.Acid Res.,16,
3584,1988)。この糖タンパク質は257個の
アミノ酸から構成されており、N末端部には25個のア
ミノ酸から成るシグナルペプチドが存在する。FcεR
Iにおいて免疫原性を有するペプチドとしては、Fcε
RIのアミノ酸配列における32ないし48番目に相当
するVSLNPPWNRIFKGENVT(上記(1)
のアミノ酸配列),49ないし67番目のLTCNGN
NFFEVSSTKWFHN(上記(2)のアミノ酸配
列),67ないし79番目のNGSLSEETNSSL
N(上記(3)のアミノ酸配列),82ないし95番目
のNAKFEDSGEYKCQH(上記(4)のアミノ
酸配列),101ないし116番目のSEPVYLEV
FSDWLLLQ(上記(5)のアミノ酸配列),12
7ないし146番目のPLFLRCHGWRNWDVY
KVIYY(上記(6)のアミノ酸配列),145ない
し162番目のYYKDGEALKYWYENHNIS
(上記(7)のアミノ酸配列),187ないし201番
目のSEPLNITVIKAPREK(上記(8)のア
ミノ酸配列),235ないし251番目のKIKRTR
KGFRLLNPHPK(上記(9)のアミノ酸配列)
の9つの領域がエンザイムイムノアッセイ(以下ELI
SA法と言う)等の免疫学実験により確認された領域で
ある。これらの領域はいずれも親水性の比較的強い領域
であり、FcεRI分子表面に存在し、かつ免疫原性を
発現しやすい高次構造を形成していることが推定され
る。
【0011】本発明に用いられるIgE結合性ペプチド
は、その領域中に好ましくは上記(1)〜(9)のいず
れかのアミノ酸配列を有している。これらのアミノ酸配
列は単独で含まれていてもよく、あるいは2種以上がペ
プチド結合していてもよい。このようなアミノ酸配列を
用いることにより、血液中のIgEとの結合におけるペ
プチド構造の安定性が向上すると共に、該ペプチドを担
体に固定化する際には水系溶媒に対する溶解性やリガン
ドとしての安定性がさらに向上する。
【0012】本発明に用いられる修飾ペプチドは、上記
IgE結合性ペプチド領域を含むものであり、好ましく
は該IgE結合性ペプチド領域の両末端または片末端
が、(a)α−アミノ酸、(b)α−アミノ酸を2から
60個含有するペプチド、(c)炭素数が1から20個
のω−アミノ酸、ジアミン、またはジカルボン酸のいず
れか、のいずれかで修飾されたものである。このような
修飾ペプチドを用いることにより、血液中のIgEとの
結合におけるペプチド構造の安定性が向上すると共に、
担体に固定化する際には水系溶媒に対する溶解性やリガ
ンドとしての安定性がさらに向上する。
【0013】このうち、上記α−アミノ酸としては、例
えばリジンのような水溶性を高めることができるアミノ
酸;システインなどが挙げられ、これらα−アミノ酸で
上記IgE結合性ペプチド領域を修飾させることによ
り、担体への固定化を容易に行うことができる。
【0014】また、上記α−アミノ酸を2から60個含
有するペプチドとしては、例えばリジンを数個含有する
ペプチドなどが挙げられ、これらのペプチドでIgE結
合性ペプチドのN末端をアミド化させるなどの方法によ
り、担体への固定化を容易に行うことができるととも
に、リガンドの安定性などをさらに向上させることがで
きる。
【0015】さらに、上記炭素数が1から20個のω−
アミノ酸、ジアミン、またはジカルボン酸で上記IgE
結合性ペプチドの片末端を修飾させることにより、Ig
Eとの結合性あるいはその強度をより高めることも可能
である。ここでジアミンとしては、エチレンジアミン、
トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペン
タメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂
肪族ジアミン;o−フェニレンジアミン、m−フェニレ
ンジアミン、p−フェニレンジアミンなどの芳香族ジア
ミン;ポリアルキレンオキサイドの両末端にアミノ基を
有するものなどが挙げられ、またジカルボン酸として
は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジ
ピン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸;マレイン酸、フ
マル酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸;フタル酸、イ
ソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;
ポリアルキレンオキサイドの両末端にカルボキシル基を
有するものなどが挙げられる。
【0016】上記IgE結合性ペプチドまたは修飾ペプ
チドの全アミノ酸の個数は2から70個であることが好
ましいが、合成の困難さやコスト、構造上の安定性など
を考慮すると30個以内がより好ましい。さらに免疫原
性を発揮するのに必要な高次構造の形成しやすさなども
考慮すると10ないし25個までが最も好ましい。
【0017】上記IgE結合性ペプチドの合成方法につ
いては特に限定されず、液相合成法および固相合成法の
いずれもが用いられるが、液相合成法よりも固相合成法
の方が操作が簡単である。固相合成法としては例えば、
有機溶媒に不溶性である支持体に、合成するペプチドの
C末端に対応するアミノ酸を結合させ、α−カルボキシ
ル基以外のα−アミノ基などの官能基をt−ブトキシカ
ルボニル基などの保護基で保護した後、これら保護され
た対応するアミノ酸をN末端方向に順次縮合反応により
結合させ、該保護基を脱離させる反応を交互に繰返すこ
とによりペプチド鎖を延長させる方法が用いられる。固
相ペプチド合成法は、用いられる保護基の種類によりt
ーBoc法とFーmoc法とに大別される。
【0018】この様にして目的とするIgE結合性ペプ
チドを合成した後、脱保護基反応およびペプチド鎖の支
持体からの切断を行なう。脱保護基反応にはフッ化水素
がしばしば用いられるが、安全性や取扱いやすさの点か
ら、t−Boc法ではトリフルオロメタンスルホン酸
(以下TFMSAと言う)を、またFーmoc法ではト
リフルオロ酢酸(以下TFAと言う)を用いるのが適当
である。例えばt−Boc法では、TFMSA中で上記
ペプチドをチオアニソールおよび1,2−エタンジチオ
ールと反応させて保護基を脱離させた後、TFAにより
支持体からの切断を行ない、ペプチドを回収する。これ
を凍結乾燥することにより粗ペプチドが得られる。一
方、F−moc法ではTFA中において上記と同様の操
作で脱保護基反応およびペプチド鎖の支持体からの切断
反応を行なうことが可能である。
【0019】上記粗ペプチドは逆相系カラムを用いた高
速液体クロマトグラフィ(以下HPLCと言う)に供す
ることにより分取、精製を行なう。HPLCは、タンパ
ク質の精製に通常用いられる水−アセトニトリル溶媒系
を基本として最適化条件で行なうのがよい。得られたク
ロマトピークに相当する画分を分取し、これを凍結乾燥
する。この様にして得られた精製ペプチド画分につい
て、マススペクトル分析による分子量解析、アミノ酸組
成分析あるいはアミノ酸配列解析などにより同定を行な
う。
【0020】上記IgE結合性ペプチドあるいは修飾ペ
プチドは、水不溶性担体に固定化されてIgE吸着材と
する。用いられる水不溶性担体としては特に限定されな
いが、該IgE吸着材を血液浄化療法に用いる場合に
は、血液中の補体系や凝固系などに及ぼす影響を考慮し
て、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリス
チレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステ
ルあるいはこれらの誘導体の多孔質担体を用いることが
好ましい。平均細孔径は20ないし3000nmである
ことが好ましく、30ないし1000nmであることが
より好ましい。また担体の形態としてはビーズ状、繊維
状、膜状(中空糸も含む)などのいずれもが可能であ
る。
【0021】また、上記IgE結合性ペプチドあるいは
修飾ペプチドを水不溶性担体に固定化する際には、立体
障害を小さくして吸着効率を向上させ、非特異的吸着を
抑えるために、親水性スペーサーを介して固定化するこ
とが好ましい。用いられる親水性スペーサーとしては、
例えばその両末端がカルボキシル基、アミノ基、アルデ
ヒド基、エポキシ基などで置換されたポリアルキレンオ
キサイドの誘導体を用いることが好ましく、その重合度
は10ないし1000であることが好ましく、100な
いし500であることがより好ましい。
【0022】上記固定化方法については特に限定される
ものではないが、酵素や抗体を水系溶媒中で担体に固定
化するのに一般に用いられるシッフ塩基反応、エポキシ
反応、カルボジイミド試薬などを用いた縮合反応などを
適用することが好ましい。上記IgE結合性ペプチドや
修飾ペプチドは、比較的低分子量であり、酵素や抗体な
どのタンパク質と比べると比較的安定な物質であるの
で、酵素や抗体などを用いた場合と比較すると、その固
定化反応条件の制約が若干少なくなることも、本発明の
有利な要因の一つである。この様にして得られたIgE
吸着材は、カラムに充填して体外循環などによる血液浄
化療法に適用される。
【0023】以下に実施例を示して本発明を詳細に説明
するが、これは本発明を限定するものではなく、前・後
記の趣旨を逸脱しない範囲で本発明を変更して実施する
ことは本発明の範囲内に含まれる。
【0024】
【実施例】
<実施例1> IgE結合性ペプチド(1種類)のセル
ロースへの固定化 (1)ペプチドの合成 (1)〜(9)のアミノ酸配列からなる9種類のペプチ
ド: (1)VSLNPPWNRIFKGENVT (2)LTCNGNNFFEVSSTKWFHN (3)NGSLSEETNSSLN (4)NAKFEDSGEYKCQH (5)SEPVYLEVFSDWLLLQ (6)PLFLRCHGWRNWDVYKVIYY (7)YYKDGEALKYWYENHNIS (8)SEPLNITVIKAPREK (9)KIKRTRKGFRLLNPHPK はそれぞれ、ペプチドシンセサイザーModel430
A(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてt−B
oc法による固相合成法により合成した。すなわち、各
ペプチドのC末端に対応するアミノ酸が結合した支持体
であるPAM担体(0.5mmol;アプライドバイオ
システムズ社製)を用いて、上記ペプチドシンセサイザ
ーに掲載されている合成プログラムに従って、t−ブト
キシカルボニル基などの保護基で保護された対応するア
ミノ酸をN末端方向に順次縮合反応により結合させ、次
に脱保護基反応を行う工程を繰返してペプチド鎖を延長
した。すなわち、保護基であるt−ブトキシカルボニル
基をTFAにより除去し、ジクロロメタン(以下DCM
と言う)で洗浄し、ジイソプロピルエチルアミンで中和
した後、ジメチルホルムアミドで洗浄し、ジシクロカル
ボジイミド(DCC)で縮合反応を行ない、DCMで洗
浄する操作を繰返した。なお、本実施例に用いられるア
ミノ酸は各アミノ酸配列中に存在するt−Bocアミノ
酸(いずれもアプライドバイオシステムズ社製)の2.
0mmolのカートリッジを用いた。
【0025】(2)脱保護基、ペプチド鎖の切断 上記の様にして(1)〜(9)のアミノ酸配列からなる
ペプチドが結合した各支持体1gに、チオアニソールを
1ml、1,2−エタンジオールを0.5ml加えて1
0分間撹拌した後、氷水で冷やしながらTFA10ml
を加えてさらに10分間撹拌した。次に、TFMSAを
1ml加えて室温で30分間撹拌した。これに、あらか
じめ充分冷却しておいたジエチルエーテルを、沈殿が生
成しなくなるまで加えて撹拌し、ミディアム孔のガラス
フィルターを用いてジエチルエーテルで共洗いしながら
濾過し、TFAを加えてペプチドを溶解してエーテル中
に捕集した。エーテル中のペプチドをファイン孔のガラ
スフィルターで濾過し、ガラスフィルター上のペプチド
を2N酢酸に溶解して、凍結乾燥を行なうことにより粗
ペプチドを得た。
【0026】(3)ペプチドの精製 上記各粗ペプチドを再度2N酢酸に溶解して、0.2μ
mのメンブレンフィルターで濾過した溶液をHPLCに
供した。HPLCは600Eシステム(ウォーターズ社
製)を用い、カラムは逆相系のBONDASPHERE
−C18(ウォーターズ社製)を用いた。移動相は0.
1%TFAを含む水をA液,0.08%TFAを含む7
0%アセトニトリル/水(v/v)をB液として、A液
からB液への濃度直線勾配により溶出した。いずれもク
ロマトピークはほぼ単一なものが得られ、主ピーク相当
画分を分取した。分取を数回繰返しこれを凍結乾燥する
ことにより精製ペプチドを得た。得られたペプチドはB
IOION20マスアナライザー(アプライドバイオシ
ステムズ社製)により解析して目的ペプチドが得られて
いることを確認した。
【0027】(4)ペプチドの免疫原性 得られたペプチドの免疫原性をELISA法により評価
した。まず96穴マイクロプレート(アミノプレート;
住友ベークライト製)において、グルタルアルデヒド溶
液(pH9.6)中で上記ペプチドを固相化(4℃,1
6時間)させた。次にスキムミルク溶液でブロッキング
(室温,2時間)した後、IgE(ケミコン社製)溶液
を反応させた(4℃,16時間)。さらにビオチン標識
抗IgE抗体(タゴ社製)を反応させ(室温,2時
間)、その後アビジン標識西洋ワサビ由来ペルオキシダ
ーゼを反応させた(室温,2時間)。それぞれの工程の
間には洗浄を行なった。最後に過酸化水素−o−フェニ
レンジアミン溶液(pH5.0)を加えて遮光下で反応
させ(室温,30分)、6N硫酸を加えて反応を停止さ
せて492nmで比色定量した。その結果いずれも陽性
と判定されたのでこれらをリガンドとした。
【0028】(5)ペプチドのセルロースへの固定化 上記ペプチドを多孔質セルロースへ固定化させた。詳細
には、セルロースとしてセルロファインシリーズGCL
−1000m(チッソ製)を用い、過ヨウ素酸ナトリウ
ム3.5gを1N硫酸300ml中に溶解して、該GC
L−1000mを100g添加し、室温で20時間撹拌
して反応させた。反応生成物を回収し、十分に洗浄して
[アルデヒド]−[セルロース]を得た。アルデヒドの
含有量はオキシム法により定量を行なったところ、0.
62meq/gであった。
【0029】次に分子量5000であり、両末端にアミ
ノ基を有するポリアルキレンオキサイド(以下PEOア
ミンと言う)15gをpH9.5の炭酸緩衝液300m
lに溶解し、上記[アルデヒド]−[セルロース]を加
えて室温で24時間撹拌して反応させた。反応生成物を
回収し、十分に洗浄して[PEOアミン]−[セルロー
ス]を得た。アミノ基の含有量は、COMTITE10
1(平沼産業製)を用いて塩酸による電位差滴定を行な
ったところ、0.52meq/gであった。
【0030】上記[PEOアミン]−[セルロース]を
pH9.5の炭酸緩衝液300mlに懸濁し、25%グ
ルタルアルデヒド溶液30mlを加えて室温で24時間
撹拌して反応させた。反応生成物を回収し、十分に洗浄
して[PEOアルデヒド]−[セルロース]を得た。ア
ルデヒドの含有量はオキシム法により定量を行なったと
ころ、0.48meq/gであった。
【0031】一方上記精製ペプチド20mgをpH9.
5の炭酸緩衝液50mlに溶解し、上記[PEOアルデ
ヒド]−[セルロース]5gを加えて、室温で24時間
撹拌して反応させた。反応生成物を回収し十分に洗浄し
て[ペプチド]−[セルロース]を得た。ペプチド固定
化率は反応残液中の窒素含有量をマイクロケルダール法
により定量することにより算出したところ、いずれも7
0ないし80%であった。上記[ペプチド]−[セルロ
ース]をpH9.0の炭酸緩衝液50mlに懸濁して水
素化ホウ素ナトリウム500mgを加えて、室温で20
時間撹拌して反応させた。反応生成物を回収し十分に洗
浄して目的のIgE吸着材を得た。
【0032】(6)IgE吸着材の吸着性能評価 高IgE値血清を用いて上記吸着材のIgEの吸着性能
を評価した。すなわち、ガラス製ミニカラムに上記吸着
材ゲル5ml容量を充填した。ヘパリン含有生理食塩水
でカラムおよび血液回路を十分に洗浄した後、高IgE
値(22.4μg/ml)血清100mlをプールして
チュービングポンプを用いて1ml/分の速度で1時間
循環させた。処理後の血清中のIgE値をRAST法に
より定量し、吸着率(%)を算出した。またアルブミン
の吸着性能(非特異的吸着)に関しても、アルブミンB
−テストワコー(和光純薬工業製)を用いて定量し、同
様に吸着率(%)を算出した。なお処理前の血清中のア
ルブミン量は4.4g/dlであった。これらの結果を
表1に示す。なお、表中の(1)〜(9)は本実施例に
用いた(1)〜(9)のアミノ酸配列を示す。
【0033】
【表1】
【0034】表から明らかなように、いずれのIgE結
合性ペプチドを用いた場合においても、IgE吸着率は
約40〜60%と高い値を示した。これに対して、アル
ブミンの非特異的吸着率は約0.2〜0.5%であり、
非常に低いことがわかった。
【0035】<実施例2> IgE結合性ペプチド(2
種類のIgE結合性ペプチドを結合)のセルロースへの
固定化 分子量100であり、両末端にカルボキシル基を有する
ポリアルキレンオキサイド(以下PEO酸と言う)5g
をpH4.5のクエン酸緩衝液100mlに溶解し、こ
れに実施例1の(1)から(4)の工程を経て得られた
(8)および(9)のアミノ酸配列からなるペプチドを
15mgずつを加えて十分に氷冷して、さらに水溶性カ
ルボジイミドである1−エチル−3−(3−ジメチルア
ミノプロピル)−カルボジイミド(以下EDCと言う)
5mgを加えて30分間撹拌して反応させた後、さらに
室温で20時間反応させて(8)および(9)のペプチ
ドがいずれもアミノ基でPEO酸に縮合した修飾ペプチ
ドの溶液を得た。
【0036】上記修飾ペプチド溶液を十分に洗浄した
後、実施例1の(5)と同様の方法で得た[PEOアミ
ン]−[セルロース](アミノ基含有量:0.54me
q/g)5gを加えてさらにEDC5mgを加えて30
分間撹拌して反応させた後、さらに室温で20時間反応
させた。反応生成物を回収し、十分に洗浄して目的のI
gE吸着材を得た。ペプチド固定化率を実施例1と同様
にして求めたところ、約75%であった。この様にして
得られたIgE吸着材の吸着性能に関しても実施例1と
同様の方法により実施した。結果を上記表1に併記す
る。
【0037】表から明らかなように、本実施例のIgE
結合性ペプチドを用いた場合には、約90%と非常に高
いIgE吸着率を示した。これは実施例1のいずれのペ
プチドを用いた場合よりも高く、2種類のIgE結合性
ペプチドを組み合わせて用いることによりIgE吸着能
は一層高まることが明らかになった。なお、本実施例に
おいても実施例1と同様にアルブミンの非特異的吸着率
は0.4%と非常に低かった。
【0038】
【発明の効果】本発明のIgE吸着材は、血液中のIg
Eと特異的に感度良く結合することができるので、重篤
なアトピー性疾患や高IgE症候群の治療に適用するこ
とが可能である。また、本発明のIgE吸着材をカラム
に充填して血液浄化療法などの治療法にも用いることが
できるが、この治療法は副作用もなく安全性が高いもの
であり、保存などの安定性の面でも非常に有用であるこ
とが期待される。また、本発明のIgE吸着材はオート
クレーブによる蒸気滅菌を行なってもリガンドとしての
活性の低下がほとんど生じないことから、種々の医療機
材への適用が期待される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲森 和紀 滋賀県大津市堅田2丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 IgEFcε高アフィニティレセプター
    におけるアミノ酸配列中に存在しており、IgEとの結
    合性を有するIgE結合性ペプチドまたは該IgE結合
    性ペプチド領域を含む修飾ペプチドを水不溶性担体に固
    定化したものであることを特徴とするIgE吸着材。
  2. 【請求項2】 前記IgE結合性ペプチドは、以下の
    (1)〜(9)よりなる群から選択されるアミノ酸配列
    を有する請求項1に記載のIgE吸着材。 (1)Val−Ser−Leu−Asn−Pro−Pr
    o−Trp−Asn−Arg−Ile−Phe−Lys
    −Gly−Glu−Asn−Val−Thr (2)Leu−Thr−Cys−Asn−Gly−As
    n−Asn−Phe−Phe−Glu−Val−Ser
    −Ser−Thr−Lys−Trp−Phe−His−
    Asn (3)Asn−Gly−Ser−Leu−Ser−Gl
    u−Glu−Thr−Asn−Ser−Ser−Leu
    −Asn (4)Asn−Ala−Lys−Phe−Glu−As
    p−Ser−Gly−Glu−Tyr−Lys−Cys
    −Gln−His (5)Ser−Glu−Pro−Val−Tyr−Le
    u−Glu−Val−Phe−Ser−Asp−Trp
    −Leu−Leu−Leu−Gln (6)Pro−Leu−Phe−Leu−Arg−Cy
    s−His−Gly−Trp−Arg−Asn−Trp
    −Asp−Val−Tyr−Lys−Val−Ile−
    Tyr−Tyr (7)Tyr−Tyr−Lys−Asp−Gly−Gl
    u−Ala−Leu−Lys−Tyr−Trp−Tyr
    −Glu−Asn−His−Asn−Ile−Ser (8)Ser−Glu−Pro−Leu−Asn−Il
    e−Thr−Val−Ile−Lys−Ala−Pro
    −Arg−Glu−Lys (9)Lys−Ile−Lys−Arg−Thr−Ar
    g−Lys−Gly−Phe−Arg−Leu−Leu
    −Asn−Pro−His−Pro−Lys
  3. 【請求項3】 前記修飾ペプチドは、前記IgE結合性
    ペプチド領域の両末端または片末端が (a)α−アミノ酸 (b)α−アミノ酸を2から60個含有するペプチド (c)炭素数が1から20個のω−アミノ酸、ジアミ
    ン、またはジカルボン酸のいずれか のいずれかで修飾されたものである請求項1または2に
    記載のIgE吸着材。
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