JPH06102723B2 - 含フッ素ポリエーテル及び含フッ素潤滑剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、新規な含フッ素ポリエーテル、及び含フッ素
ポリエーテルから成る潤滑剤に関する。

［従来の技術］ パーフルオロポリエーテルは、不燃性であり耐久性等に
優れた含フッ素油である。しかし、パーフルオロポリエ
ーテルは、金属、ガラス等の材料の表面に対する親和性
に乏しいので、例えば、金属表面に薄く塗布して潤滑剤
として使用する場合に、マイグレーション等が生じて耐
久性が低いという難点があった。パーフルオロポリエー
テルのこのような難点を克服するために、従来、分子末
端に−COOH、−CH₂OH、−COOR 等を導入した含フッ素ポリエーテルが開発されている。
しかしながら、このような含フッ素ポリエーテルには、
取り扱いに注意を要したり（例えば、カルボン酸基を有
するもの）、また潤滑性又は耐久性などの性能が不充分
であるという欠点があった。

［発明の目的］ 本発明の目的は、取り扱いが容易であり、潤滑性及び耐
久性等の性能に優れた含フッ素ポリエーテルを提供する
ことにある。

［発明の構成］ 本発明の１つの要旨は、式： Rf¹COORf² （Ｉ） 又は Rf²OCO-Rf¹′−COORf² （II） ［上記式中、Rf¹及びRf¹′はパーフルオロアルキルポリ
エーテル基を含有する基、Rf²は含フッ素アルキル基又
は含フッ素アルキルポリエーテル基である。］で示され
る含フッ素ポリエーテルに存する。

本発明の含フッ素ポリエーテル（Ｉ）又は（II）におい
てRf¹基又はRf¹′基のパーフルオロアルキルポリエーテ
ル基は、式： −C₃F₆O− （ａ） で示される繰り返し単位、式： −C₂F₄O− （ｂ） で示される繰り返し単位及び式： −CF₂O− （ｃ） で示される繰り返し単位から成る群から選択された少な
くとも１種の繰り返し単位を有し、繰り返し単位（ａ）
又は（ｂ）の少なくとも一方を含む。繰り返し単位
（ａ）、（ｂ）及び（ｃ）の合計数は少なくとも３であ
る。繰り返し単位−C₃F₆O−は、−CF₂CF₂CF₂O−及び−C
F(CF₃)CF₂O−を含む。−C₂F₄O−は、通常、−CF₂CF₂O−
である。

Rf²基は、例えば、 C_aF_2a+1C_bH_2b− （Ａ） （ａは１〜10の整数、ｂは１又は２である。） H(C₂F₄)_dCH₂− （Ｂ） （ｄは、１〜５の整数である。） 又は ＦC₃F₆O_１C₂F₄O_ｍCF₂O_ｎCF₂CH₂− （Ｃ） （１、ｍ及びｎは０又は正の整数であり、１及びｍの少
なくとも一方は０ではなく、１＋ｍ＋ｎは３以上であ
る。） である。含フッ素ポリエーテル基（Ｃ）において、各繰
り返し単位の分子中での配列は任意であり、前記の順に
配列していることを意味するものでない。

本発明の含フッ素ポリエーテルの具体例は、例えば、 ＦCF₂CF₂CF₂O_mCF₂CF₂COOCH₂CF₂CF₃ （１） （ｍの平均値＝25） ［HCF₂CF₂CH₂OCOCF₂CF₂OCF₂CF₂CF₂O_mCF₂CF_2
2 （２） （ｍの平均値＝20） ＦCF₂CF₂CF₂O_mCF₂CF₂COOCH₂CF₂OCF₂CF₂CF_{2 n}F
（３） （ｍの平均値＝20、ｎの平均値＝20） である。

本発明の含フッ素ポリエーテルの製造は、例えば、式： Rf¹−COOH、 Rf¹−COF 又は HOOC−Rf¹′−COOH ［式中、Rf¹及びRf¹′は前記と同意義。］ で示される含フッ素化合物を、式： Rf²OH ［式中、Rf²は前記と同意義。］ で示される含フッ素アルコールと反応させることによっ
て行える。反応において、触媒、例えば、硫酸などの酸
を使用することが好ましい。通常、反応は、50〜150℃
の温度で１〜10時間行う。

本発明の含フッ素ポリエーテルは、金属、ガラス、シリ
カゲル、グラファイト等の各種材料の潤滑剤として使用
できる。特に、薄膜磁気テープ、薄膜磁気ディスク等の
潤滑剤として有用である。

したがって、本発明の別の要旨は前記含フッ素ポリエー
テルから成る潤滑剤に存する。

本発明の潤滑剤を各種材料の表面に適用するためには、
通常、溶媒を使用して潤滑剤溶液を調製することが好ま
しい。溶媒の好ましい例は、含フッ素溶媒、例えば、ト
リクロロトリフルオロエタン（例えば、ダイキン工業株
式会社製ダイフロンＳ−３）、Cl(CF₂CFCl)₂Cl、N(C
₃F₇)₃、Cl(CF₂CFCl)F、C₈F₁₈である。溶媒の量は、通
常、潤滑剤１重量部に対して200〜2000重量部である。

次いで、潤滑剤溶液を磁気テープ又は磁気ディスクなど
の基材の表面に浸漬法又はスプレー法などにより塗布
し、加熱することによって、潤滑膜が形成する。加熱に
より溶媒が蒸発する。加熱は、通常、約80℃の温度で行
う。本発明の潤滑剤により形成される潤滑膜の厚さは、
通常、0.002〜0.01μｍである。

本発明の潤滑剤が優れた耐久性などの性能を有する理由
は、明確にはわかっていないが、金属、ガラス、シリカ
ゲル又はグラファイト等の表面には相当量の水酸基があ
るので、含フッ素ポリエーテルがその水酸基とエステル
交換反応を行って吸着するためと考えられる。表面水酸
基の酸性度に比べて充分に大きい酸性度を有する含フッ
素アルコールを使用すれば、含フッ素ポリエーテルの含
フッ素アルコール残基と表面水酸基とのエステル交換反
応が速やかに行われる。エステル交換反応は、溶媒を蒸
発させるための加熱工程により生じ、この交換反応は使
用時の摩擦熱により完結する。

［発明の効果］ 本発明の含フッ素ポリエーテルは、取り扱いが容易であ
り、潤滑剤としての潤滑性及び耐久性等の性能に優れて
いる。

［実施例］ 以下、本発明の実施例を示し、本発明を具体的に説明す
る。

実施例１ 200ml3つ口フラスコに、含フッ素カルボン酸 ＦCF₂CF₂CF₂O_pCF₂CF₂COOH（ｐの平均値＝25）200g
（57ミリモル）を仕込み、五フッ化プロパノール20g（1
30ミリモル）を加え、混合した。次いで濃硫酸0.5ccを
加え、攪拌下、90℃で５時間反応を行った。反応の終了
は、IR分析によるカルボン酸の1780cm^-1の吸収が消失
し、1820cm^-1のエステル結合の吸収が出現したことによ
り確認した。反応終了後、水100mlで洗い、下層を分取
した。下層にシリカゲル30gを加え、未反応のカルボン
酸を除去した。外径0.2μｍのフィルターにより濾過
し、含フッ素ポリエーテル ＦCF₂CF₂CF₂O_pCF₂CF₂COOCH₂CF₂CF₃ （ｐは前記と同意義。）を得た。収量:300g（78％）。

生成含フッ素ポリエーテルのIRチャートを第１図に示
す。

実施例２ 含フッ素カルボン酸 ＦCF₂CF₂CF₂O_qCF₂CF₂COOH（ｑの平均値＝20）20g
に、含フッ素アルコール ＦCF₂CF₂CF₂O_rCF₂CF₂CH₂OH（ｒの平均値＝15）15g
を加え、混合した。次いで濃硫酸2ccを加え、攪拌下、1
50℃で10時間反応を行った。なお、反応の終了は、IR分
析によるカルボン酸の1780cm^-1の吸収が消失し、1820cm
^-1のエステル結合の吸収が出現したことにより確認し
た。反応終了後、水50mlで３回洗い、下層を分取した。
下層にシリカゲル10gを加え、未反応のカルボン酸を除
去した。孔径0.2μｍのフィルターにより濾過し、含フ
ッ素ポリエーテル ＦCF₂CF₂CF₂O_qCF₂CF₂COOCH₂CF₂CF₂OCF₂CF₂CF_{2 r}
F（ｑ及びｒは前記と同意義。）を得た。収量:24g（64
％）。

実施例３ 最上層にカーボン層を有する２パッチ型のハードディス
クを、実施例１で得られた含フッ素ポリエーテル ＦCF₂CF₂CF₂O_pCF₂CF₂COOCH₂CF₂CF₃ （ｐは前記と同意義。） の0.1重量％トリクロロトリフルオロエタン溶液から成
る潤滑剤溶液に浸漬し、取り出した後、オーブン中で80
℃で１時間加熱処理した。形成した潤滑膜の厚さは0.01
μｍであった。

CSSテスターを使用して、ハードディスクについて耐久
試験を行った。２万回経過してもμ値は0.5以下であっ
た。

比較例１ 含フッ素ポリエーテルに代えてパーフルオロポリエーテ
ル油 ＦCF₂CF₂CF₂O_pCF₂CF₃ （ｐは前記と同意義。）を使用する以外は実施例３を繰
り返した。潤滑膜の厚さは、0.01μｍであった。1100回
でμ値が0.5を越えた。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の含フッ素ポリエーテルのIRチャート
である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−45238（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−45237（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−161744（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−186531（ＪＰ，Ａ)

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】式： Rf¹COORf² （Ｉ） 又は Rf²OCO-Rf¹′−COORf² （II） ［上記式中、Rf¹及びRf¹′はパーフルオロアルキルポリ
   エーテル基を含有する基、Rf²は含フッ素アルキル基又
   は含フッ素アルキルポリエーテル基である。］で示され
   る含フッ素ポリエーテル。
2. 【請求項２】Rf¹基又はRf¹′基のパーフルオロアルキル
   ポリエーテル基が式：−C₃F₆O− （ａ） で示される繰り返し単位、式： −C₂F₄O− （ｂ） で示される繰り返し単位及び式： −CF₂O− （ｃ） で示される繰り返し単位から成る群から選択された少な
   くとも１種の繰り返し単位を有し、繰り返し単位（ａ）
   又は（ｂ）の少なくとも一方を含み、繰り返し単位
   （ａ）、（ｂ）及び（ｃ）の合計数が少なくとも３であ
   る特許請求の範囲第１項記載の含フッ素ポリエーテル。
3. 【請求項３】Rf²基が C_aF_2a+1C_bH_2b− （Ａ） （ａは１〜10の整数、ｂは１又は２である。） H(C₂F₄)_dCH₂− （Ｂ） （ｄは、１〜５の整数である。） 又は ＦC₃F₆O_１C₂F₄O_ｍCF₂O_ｎCF₂CH₂− （Ｃ） （１、ｍ及びｎは０又は正の整数であり、１及びｍの少
   なくとも一方は０ではなく、１＋ｍ＋ｎは３以上であ
   る。） である特許請求の範囲第１項記載の含フッ素ポリエーテ
   ル。
4. 【請求項４】特許請求の範囲第１項記載の含フッ素ポリ
   エーテルから成る潤滑剤。