JP2001187796A - 含フッ素化合物、及び磁気ディスク、磁気ディスク装置 - Google Patents

含フッ素化合物、及び磁気ディスク、磁気ディスク装置

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JP2001187796A
JP2001187796A JP37479999A JP37479999A JP2001187796A JP 2001187796 A JP2001187796 A JP 2001187796A JP 37479999 A JP37479999 A JP 37479999A JP 37479999 A JP37479999 A JP 37479999A JP 2001187796 A JP2001187796 A JP 2001187796A
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magnetic disk
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perfluoropolyether
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Hiroshi Sasaki
佐々木  洋
Saburo Shoji
三良 庄司
Takayuki Nakakawaji
孝行 中川路
Mina Ishida
美奈 石田
Yutaka Ito
伊藤  豊
Heigo Ishihara
平吾 石原
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は潤滑剤飛散低減、潤滑剤分解抑制、粘
着低減を同時に達成する潤滑剤を提供する。また、前記
潤滑剤を用いた磁気ディスクは高回転での長期連続回転
を行った後も表面に十分な潤滑性を有し、かつヘッドと
の粘着力が小さい効果を有し、信頼性の高い磁気ディス
ク装置を提供することにある。 【解決手段】下記の一般式(1) 【化1】 (ただし、式中―Rは―R1または―R2であり、且つ-R
のうち1個は-R1。又―R1:‐OCH2‐CF2CF2‐(OCF
2CF2CF2)nF(nは正の整数),‐R2:‐OHであ
る。)で表される含フッ素化合物及び磁気ディスク、磁
気ディスク装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、含フッ素化合物、
及び磁気ディスク、磁気記録装置に関し、特に摺動特性
が良好で、低飛散性の磁気ディスク用潤滑剤として用い
る含フッ素化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置の記録密度の増大に伴
い、記録媒体である磁気ディスクと情報の記録・再生を
行うヘッドとの距離は殆ど接触するまで狭くなってい
る。磁気ディスク表面にはヘッドとの接触・摺動の際の
摩耗を抑える目的で潤滑層が設けられている。この潤滑
層は通常潤滑剤を磁気ディスク表面に塗布し形成してい
る。
【0003】該潤滑剤としてはパーフルオロポリエーテ
ルがヘッドとの粘着力が低く、低摩擦力の特徴を有する
Fomblin系化合物が主流である。Fomblin
系化合物の基本骨格は繰り返し単位が (CF2CF2O)m-(CF2
O)n- のパーフルオロポリエーテルである。
【0004】しかし、Fomblin系のパーフルオロ
ポリエーテルはヘッドの部材中のAl2O3がルイス酸
としてパーフルオロポリエーテル鎖中の酸素原子と反応
してその鎖を切断する(Macromolecule
s, 25, 6791―6799[1992])。この切
断が進行するとFomblin系のパーフルオロポリエ
ーテルは低分子化し、最終的には磁気ディスク上から揮
発する。
【0005】Fomblin系のパーフルオロポリエー
テルの分解を抑制する添加剤としてダウケミカル株式会
社製X―1Pが知られている。X‐1Pは分子内にシク
ロフォスファーゼン環を有し、この環にフルオロフェニ
レン基とトリフルオロメチルフェニレン基が6個結合し
た構造(後記の化合物6)である。
【0006】X―1Pの潤滑剤分解抑制効果はシクロフ
ォスファーゼン環がパーフルオロポリエーテルに先立ち
Al2O3と相互作用することで、パーフルオロポリエ
ーテルの分解を抑制する。(Proceedings
of The Micromechanics for I
nformation and PrecisionEq
uipment Conference, Tokyo,
Japan, 363―370 ,1997)しかし、X
‐1Pは末端にメトキシ基又はエトキシ基を有するパー
フルオロブタンを基本構造とする溶媒(例えば、3M株
式会社製HFE―7100,HFE―7200)にはあ
る程度溶解するものの、通常潤滑剤の塗布に用いるパー
フルオロカーボン系の溶媒には溶解しない。また、パー
フルオロポリエーテルとの相溶性も低くい。このため、
磁気ディスク表面の潤滑層が海島構造(海:パーフルオ
ロポリエーテル、島:X―1P)になる。
【0007】一方、パーフルオロカーボン系の溶媒に溶
解する化合物(日本潤滑学会第34期全国大会(198
9年)予稿集,425頁記載の化合物:157AP)が
提案されている。該化合物は分子内にシクロフォスファ
ーゼン環を有し、この環にポリパーフルオロイソプロポ
キシ構造のパーフルオロポリエーテル鎖が6個結合した
構造(後記の化合物7)である。
【0008】該化合物はFomblin系のパーフルオ
ロポリエーテルの分解を抑制するが、CSS(コンタク
ト・スタート・ストップ)後のヘッドと粘着力が大き
く、スピンドルモーターが停止してしまう問題がある。
これを無理に回転させようとするとヘッドの破損やディ
スクへの損傷、ディスク上の記録層の破壊を起こすため
ディスク装置の信頼性を確保する上で解決しなければな
らない課題である。
【0009】また、特開平8‐319491号公報には
シクロフォスファーゼン基含有パーフルオロポリエーテ
ルからなる潤滑剤及びこれを潤滑層に用いた磁気記録媒
体の開示がある。しかし、これらの潤滑剤は本発明の含
フッ素化合物とその構造は異なり、効果も相違する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】現在、潤滑剤は低飛散
性と良好な摺動特性を有するパーフルオロポリエーテル
を基本骨格とする誘導体が主に用いられている。情報の
記録・再生の高速化を図るためディスクの回転数は近い
将来10,000 rpm以上(現在は5,000〜7,
000 rpm)となる可能性が高い。ディスクの回転数
が大きくなるにつれ潤滑剤の飛散が大きくなる傾向があ
る。これは高回転になるにつれディスクの回転速度が上
昇するためだけでなく装置自体の温度の上昇も大きな因
子になる。
【0011】また、高回転で長期摺動を行うと潤滑剤が
分解して、潤滑層が薄くなり十分な摺動特性を示さなく
なり最終的にディスクの記録層の破壊に至る問題もあ
る。更に磁気ディスク表面とヘッドとの粘着が大きいと
ディスクを回転させるスピンドルモーターに負荷がかか
りすぎてディスクの回転が停止してしまう。トルクの大
きなスピンドルモーターを用いて強制的に回転させる
と、ヘッドの破損やディスクの損傷を起こす可能性があ
る。ディスクの損傷は記録層の破壊につながるため装置
の信頼性を確保する上で潤滑剤の分解の抑制が重要であ
る。
【0012】添加剤を併用しても現状の磁気ディスク用
潤滑剤においては単独でも添加剤を併用しても潤滑剤飛
散低減、潤滑剤分解抑制、粘着低減を同時に満足する材
料の開発が重要となっている。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
種々の化合物を合成しその特性性を検討した。
【0014】その結果、フォスファーゼン環にDemn
um系構造のパーフルオロポリエーテル鎖を有する化合
物が上記課題を克服することを見出した。また、磁気デ
ィスクの潤滑剤であるFomblin系潤滑剤の分解を
抑制する添加剤としての効果を見出した。
【0015】前記のDemnum系化合物は繰り返し単
位がCF2CF2CF2Oのパーフルオロポリエーテルで
ある。該化合物を用いた磁気ディスクが高回転での記録
・再生に適することも見出した。
【0016】添加剤を併用しても更にこの磁気ディスク
を用いた磁気記録装置がディスクとヘッドの間の距離が
狭くても信頼性の高い動作が可能な磁気ディスク装置で
あることを見出した。
【0017】本発明の要旨は以下のように示される。
【0018】(1)下記一般式(1)
【0019】
【化4】
【0020】(ただし、式中―Rは―R1または―R2
であり、かつ―Rのうち1個は―R1。
【0021】又―R1:‐OCH2‐CF2CF2‐(O
CF2CF2CF2)nF(nは正の整数)、―R2:‐O
Hである。)で表される含フッ素化合物である。
【0022】(2)支持体上に少なくとも1層以上の記
録層を備え、最表面に少なくとも1種類以上のパーフル
オロポリエーテル鎖を有する化合物からなる潤滑層を有
する磁気ディスクにおいて、該潤滑層が下記一般式
(1)
【0023】
【化5】
【0024】(ただし、式中―Rは―R1または―R2
であり、かつ―Rのうち1個は―R1。
【0025】又―R1:‐OCH‐CF2CF2‐(O
CF2CF2CF2)nF(nは正の整数)、―R2:‐O
Hである。)で表される含フッ素化合物を1重量%以上
含有することを特徴とする磁気ディスクである。
【0026】(3)少なくとも磁気ディスク、該磁気デ
ィスクへの情報の書き込み・消去及び該磁気ディスクか
らの情報の読み出しを行うヘッド、該ヘッドの動きを制
御するアクチュエーター、該磁気ディスクを回転させる
スピンドルモーター、ならびに該アクチュエーターと該
スピンドルモーターを制御する回路を有する磁気ディス
ク装置において、該磁気ディスクが 支持体上に少なく
とも1層以上の記録層を備え、最表面に少なくとも1種類
以上のパーフルオロポリエーテル鎖を有する化合物を含
む潤滑層を有し、該潤滑層が下記一般式(1)
【0027】
【化6】
【0028】(ただし、式中―Rは―R1または―R2
であり、かつ―Rのうち1個は―R1。
【0029】又―R1:‐OCH‐CF2CF2‐(O
CF2CF2CF2)nF(nは正の整数)、―R2:‐O
Hである。)で表される含フッ素化合物を1重量%以上
含有することを特徴とする磁気ディスク装置である。
【0030】本発明の前記一般式(1)で表される含フ
ッ素化合物はガラス、金属等の固体表面に適用する撥水
剤、撥油剤としての効果も有する。
【0031】
【発明の実施の形態】(1)本発明の含フッ素化合物に
ついて (1‐1)合成方法 まず、繰り返し単位が CF2CF2CF2Oで片末端が水
酸基のパーフルオロポリエーテルをパーフルオロブチル
アルキルエーテルに溶解し、これに水酸化ナトリウムの
メタノール溶液を加える。水酸化ナトリウムの添加量は
パーフルオロポリエーテルと当モル量である。次いで、
該混合液を40〜50℃で数分間攪拌後、エバポレータ
ー及び真空ポンプを用いて揮発させる。次いで、該混合
物に2、2、4、4、6、6―ヘキサクロロトリシクロ
フォスファーゼンをジクロルメタン、テトラヒドロフラ
ン等の有機溶媒に溶解した溶液を加える。その後加熱・
攪拌して目的の含フッ素化合物を得る。
【0032】片末端が水酸基のパーフルオロポリエーテ
ルとしてはダイキン工業株式会社製Demnum SA
がある。この化学構造はF(CF2CF2CF2O)n‐C
2CF2CH2OHである。不純物としてF‐(CF2
2CF2O)n‐CF2CF2CFのものが2〜18%
程度含まれている。そこで本発明ではDemnum S
Aの純度を末端構造が―CF2CF2CH2OHのものの
割合で表わす。
【0033】このパーフルオロポリエーテルは次の方法
で合成されている。まず、モノマーである2,2,3,3-テト
ラフルオロオキセタンを重合させた後、該重合物をフッ
素ガスに接触させる。これにより末端がカルボキシル基
のパーフルオロポリエーテルであるDemnum SH
が得られる。これを還元して目的のDemnum SA
が得られる。Demnum SAの分子量は分布があ
り、平均分子量は約1400〜7000である。
【0034】本発明の含フッ素化合物は、1個のフォス
ファーゼン環に前記のパーフルオロポリエーテルが最大
6個まで結合可能である。パーフルオロポリエーテルが
6個結合した含フッ素化合物の平均分子量は8400〜
42000となる。本発明では1個のフォスファーゼン
環にパーフルオロポリエーテルが6個結合した場合の置
換率を100%とする。例えば、パーフルオロポリエー
テルが3個結合した場合には置換率が50%となる。
【0035】ところで、発明者はフォスファーゼン環に
対してパーフルオロポリエーテルをほぼ等倍モル当量、
2倍モル当量、3倍モル当量をそれぞれ添加して合成し
た。その結果、パーフルオロポリエーテルの分子量にか
かわらずフォスファーゼン環にパーフルオロポリエーテ
ルがそれぞれ約1個、約2個、約3個結合して、添加し
たパーフルオロポリエーテルのほぼ100%が反応し
た。
【0036】パーフルオロポリエーテルが3倍モル当量
を超えて添加するとパーフルオロポリエーテルが100
%は反応せず、残りのクロル基は水酸基に置換される。
【0037】この傾向は平均分子量が大きいパーフルオ
ロポリエーテルを用いた場合に著しい。例えば平均分子
量が約7000のパーフルオロポリエーテルを用いた場
合、フォスファーゼン環には最大で平均4.3個結合し
たものしか得られなかった。平均分子量が約1400の
パーフルオロポリエーテルを用いた場合、フォスファー
ゼン環には最大で平均5.8個結合したものが得られ
た。
【0038】置換率が50%以下のものを合成する場合
は用いるパーフルオロポリエーテルのほとんどがフォス
ファーゼン環に結合するが50%を超える場合は添加し
たパーフルオロポリエーテルがすべては反応しない。こ
の結果はパーフルオロポリエーテルの反応性が分子量で
異なることを意味している。
【0039】フォスファーゼン環はリン原子を分子内に
3個有している。パたーフルオロポリエーテルはフォス
ファーゼン環の1個のリン原子に理論上2個結合する。
パーフルオロポリエーテルは通常長い鎖が糸毬状に集ま
っており、平均分子量が大きいほどかさ高い糸毬状の構
造であると思われる。
【0040】そのためリン原子にパーフルオロポリエー
テルが1個結合する反応はスムーズに進行するものの、
2個目は1個目のパーフルオロポリエーテルによる立体
障害で結合を抑制され、置換率を100%に達しにくく
なる。特に平均分子量の大きなパーフルオロポリエーテ
ルほどかさ高くなるため上記の結合抑制効果はより強く
発現する。結果として平均分子量の大きなパーフルオロ
ポリエーテルを用いるほど置換率が低くなる。
【0041】(1―2)用途 本発明の含フッ素化合物の用途は磁気ディスク装置内の
磁気ディスクの摺動特性を向上させるための潤滑剤とし
ての用途が挙げられる。これは磁気ディスクとヘッドと
の摩擦係数の低減が目的であるので、磁気ディスク以外
にも記録媒体とヘッドとの間に摺動が伴う他の記録装置
に対する用途も考えられる。また記録装置に限らず摺動
を伴う部分を有する機器の潤滑剤としての用途も考えら
れる。更にFomblin系のパーフルオロポリエーテ
ルの分解を抑制する効果も期待できるので潤滑剤の添加
剤としての用途も挙げられる。なお磁気ディスク、及び
磁気ディスク装置についての詳細は後述する。
【0042】ところで撥水性、撥油性のあるパーフルオ
ロポリエーテル鎖を有するため、ガラス、金属等の固体
表面に適用する撥水剤、撥油剤としての用途も挙げられ
る。
【0043】(1―3)使用方法 本発明の含フッ素化合物を用いて潤滑層、或いは撥水・
撥油層を形成するにはバルクの状態で表面に塗布する方
法もあるが、必要以上に厚く付着してしまうことがあ
る。この場合は溶媒に希釈して塗布する。溶媒は含フッ
素のものが本発明の含フッ素化合物との相溶性が良好で
ある。例えば3M株式会社製FC―72,FC―75,F
C―77,PF―5080,PF―5052,HFE―7
100,HFE―7200、デュポン株式会社製バート
レルXF等が挙げられる。なお磁気ディスクの潤滑剤と
して用いる際は一般に塗布法によるが、その詳細は後述
する。
【0044】(2)磁気ディスクについて (2―1)磁気ディスクの構成 図1に本発明の磁気ディスクの断面の模式図を示す。
【0045】本発明の磁気ディスクは、まず支持体1上
に少なくとも1層以上の記録層2、その上に保護層3、更
にその上に本発明の含フッ素化合物を含有する潤滑層4
を最外層として有するという構成である。但しヘッドの
荷重が小さい場合や、記録層の強度がある程度確保され
れば保護層は無くともよい。
【0046】支持体としてはアルミニウム合金、ガラス
等のセラミックス、ポリカーボネート等が挙げられる。
特にガラスの場合は硬度を高める目的で通常のもの(窓
ガラスやコップ等に用いられるものはナトリウム含有量
が5%程度、カリウム含有量が0〜1%程度)よりもナ
トリウム、及びカリウム含有量の多いものが好適であ
る。ただ硬度と実用性を考慮するとナトリウムの含有量
は10〜20%程度、カリウムの含有量は1〜5%程度
が望ましい。
【0047】磁気ディスクの記録層である磁性層の構成
材料としては鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体を形
成可能な元素を中心として、これにクロム、白金、タン
タル等を加えた合金、又はそれらの酸化物が挙げられ
る。これらはメッキ法、或いはスパッタ法等で形成され
る。
【0048】保護層はカーボン、SiC,SiO2党の
材質が挙げられる。これらは主にスパッタ法で形成され
る。また保護層をスパッタ法で製膜する場合、Ar/N
2ガス雰囲気下で行うことで保護層の硬度を高めること
が可能である。
【0049】ところでディスクの表面には1〜3nm程
度の突起のあるものと平滑なものがある。突起の有無は
磁気ディスク装置の構成によって異なる。ディスク停止
時にヘッドがディスク表面に接触状態で待機するCon
tact Start Stop(CSS)方式の場合はデ
ィスク起動時のディスクとヘッドの間には大きな粘着力
がかかる恐れがある。そのためこの方式のディスクには
この粘着力を小さくするために突起が設けられている。
【0050】一方ディスク停止時にヘッドがディスク面
外に退避するLoad/Unload方式の場合はディ
スク起動時のディスクとヘッドの間に粘着力が発生する
ことは無いので突起の無い平坦なディスクを用いること
ができる。
【0051】(2―2)潤滑層の形成方法 次に潤滑層の形成方法を記述する。現在潤滑層の厚さは
約1〜2nmであるため、粘性が30℃で0.01 P
A・s程度のバルクのパーフルオロポリエーテルを塗布
したのでは膜厚が大きくなりすぎる恐れがある。そこで
塗布の際は溶媒(後述の含フッ素溶媒が適当である)に
溶解したものを用いる。本発明の含フッ素化合物を潤滑
剤として用いる場合も潤滑剤の添加剤として用いる場合
も溶媒に溶解した方が必要な膜厚に制御しやすい。但
し、濃度は塗布方法・条件、添加割合等により異なる。
【0052】塗布方法はディップ法、スピンコート法等
が挙げられる。ディップ法では浸漬時間や引き上げ速
度、スピンコート法では回転数や回転時間等が濃度設定
のパラメーターになる。溶液の濃度が同じであればディ
ップ法では浸漬時間が長いほど、また引き上げ速度が速
いほど潤滑層が厚く形成される傾向がある。ただ用いる
溶媒にもよるが、引き上げ速度によっては潤滑層表面に
細かな凹凸の形成されることがある。これは引き上げ速
度以外に、用いる溶媒の沸点や蒸発熱、塗布作業時の環
境(温度、湿度、オイルミストや粉じん等の汚染物質の
個々の濃度等)等が影響する。スピンコート法では低回
転ほど、また回転時間が短いほど潤滑層が厚く形成され
る傾向がある。ただ用いる溶媒にもよるが、回転速度や
回転時間によっては潤滑層表面に細かな凹凸が形成され
ることがある。これは回転速度や回転時間以外に用いる
溶媒の沸点や蒸発熱、吸湿性等が影響する。
【0053】用いる溶媒は上記方法で精製したパーフル
オロポリエーテルを溶解するものを選択する。具体的に
は3M株式会社製のFC―72,FC―84,FC―7
7,FC―75,PF―5080,PF―5052,HFE
―7100、HFE―7200,Dupont株式会社
製のバートレルXF等の含フッ素溶媒が挙げられる。
【0054】(2―3)潤滑層中の含フッ素化合物の含有
量 本発明の含フッ素化合物と潤滑剤の磁気ディスクに対す
る付着性は同じではない。そのため本発明の含フッ素化
合物を潤滑剤の添加剤として用いる際はその添加量を見
積もる方法も検討することにした。磁気ディスクに潤滑
層形成のため例えば本発明の含フッ素化合物を10%含
有する塗布溶液を用いて潤滑層を形成した場合、形成さ
れた潤滑層に本発明の含フッ素化合物が10%含有され
るわけではない。そこで本発明では形成された潤滑層を
フッ素系の溶媒で抽出し、その組成から含有量を見積も
ることにした。なお用いるフッ素系の溶媒は地球温暖化
係数が低く、かつ抽出物から容易に除きやすい低沸点の
ものとして3M株式会社製HFE―7100(構造はパ
ーフルオロブチルメチルエーテル)を選択した。具体的
方法は以下の通りである。
【0055】まず潤滑層を形成した後の磁気ディスクを
約1cm2の大きさに細かく切断する。これを円筒ろ紙の中
に入れる。このろ紙をソックスレーの抽出器にセットし
HFE―7100を溶媒として抽出を行う。抽出後、エ
バポレーターと真空ポンプを用いてHFE―7100を
除くと潤滑剤と添加剤である本発明の化合物が残る。こ
れを19F-NMRで分析する。用いた潤滑剤と本発明の
含フッ素化合物それぞれの特徴あるシグナルの積分値か
ら、潤滑層中における本発明の含フッ素化合物の含有量
を定量する。
【0056】(3)磁気ディスク装置について 本発明の磁気ディスク装置はディスクを格納し、情報の
記録・再生・消去を行うためのヘッドやディスクを回転
するためのモーター等が装備されている磁気ディスクド
ライブとそのドライブを制御するための制御系からな
る。本発明の磁気ディスク装置では磁気ディスクを回転
させるモーターから生じる発熱でハードディスクドライ
ブ内の温度はかなり上がっている。この状態でヘッドと
ディスク表面が摺動状態にある。このような状態でもデ
ィスク表面の潤滑層は構成材料であるパーフルオロポリ
エーテルの分解がほとんど無く、飛散もほとんどせず長
期間にわたって安定な潤滑作用を示す。なお仮に潤滑層
を構成しているパーフルオロポリエーテルの分解が著し
い場合、潤滑層は十分な潤滑作用を示さず記録層の破壊
という事態を招く恐れがある。
【0057】また本発明の磁気記録装置は数枚の磁気デ
ィスクを重ねることで大きな記録容量を確保することが
できる。
【0058】本発明の磁気ディスク、及び磁気ディスク
装置の用途としては電子計算機、ワードプロセッサー等
の外部メモリーが挙げられる。またナビゲーションシス
テム、ゲーム、携帯電話、PHS等の各種機器、及びビル
の防犯、発電所等の管理・制御システムの内部・外部メ
モリー等にも適用可能である。
【0059】
【作用】本発明の含フッ素化合物が潤滑剤飛散低減、潤
滑剤分解抑制、粘着低減を同時に付与できたことによ
り、該潤滑剤を用いて形成された潤滑層を有する磁気デ
ィスクを提供でき,該磁気ディスクを装着した磁気ディ
スク装置は高速の記録再生が可能になった。
【0060】本発明の含フッ素化合物が固体表面の撥水
性を高める理由は分子構造中に撥水性の高いフッ素原子
と水酸基をバランス良く含むためと思われる。以下、実
施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の
範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
【実施例1】まず実施例で用いる化合物(化合物1〜4,
1a〜1c,3a〜3c,4a〜4c)の合成方法を以下
に記述する。また表1にこれら化合物の置換率、及び合
成に用いられたパーフルオロポリエーテルの平均分子量
とその純度を示す。
【0062】
【表1】
【0063】(化合物1)水酸化ナトリウム(4 g, 10
0 mmol)にメタノール(76 g)を加え、超音波洗
浄器を用いて水酸化ナトリウムを溶解する。こうして
5.0 wt%水酸化ナトリウムのメタノール溶液をあ
らかじめ調製しておく。
【0064】パーフルオロポリエーテルとして末端が水
酸基のものを含むダイキン工業株式会社製Demnum
SA(平均分子量1470、純度98%)(5.18
g, 3.45 mmol)を3M株式会社製フッ素系溶媒
HFE―7200(20 g)に溶解する。なおモル数は
DemnumSA中の末端が水酸基のパーフルオロポリ
エーテルのモル数を用いた。以下の化合物2〜4、1a〜
1c、3a〜3c、4a〜4cの合成についても同様であ
る。
【0065】この溶液に上記方法で調製した5.0 wt
%水酸化ナトリウムのメタノール溶液(2.76 g, 水酸化
ナトリウムとしては0.138 g, 3.45 mmol)
を加え、50℃で10分間攪拌した後、エバポレーター
と真空ポンプで溶媒を除去する。以上の操作によりDe
mnumSA末端の水酸基(―OH)がナトリウムアルコ
ラート(―ONa)の形に変換される。これに窒素ガスを
バブリングしながら2、2、4、4、6、6-ヘキサク
ロロトリシクロフォスファーゼン(0.200 g, 0.
575 mmol)をテトラヒドロフラン(10 g)に溶解
したものを加える。なお窒素ガスのバブリングは以下の
操作における反応液の冷却が終わるまで続ける。テトラ
ヒドロフランが揮発した後、140℃で7時間加熱・攪拌す
る。冷却後反応液に3M株式会社製フッ素系溶媒PF―
5052(200 g)、ジクロルメタン (100 g)、
水(100 g)を加えよく攪拌後、分液ロートに移す。
最下層のPF―5052層を分取し、定性ろ紙(東洋濾
紙株式会社製NO.2)でろ過後、これにメタノール(1
00g) を加えよく攪拌後、分液ロートに移す。最下
層のPF―5052層を分取しエバポレーターと真空ポ
ンプでPF‐5052を除去し、目的の化合物1(4.
0 g)を得た。
【0066】元素分析は化合物1が完全燃焼しないため
求められなかった。以下に合成方法を示す化合物(化合
物2〜4、1a〜1c、3a〜3c、4a〜4c)も完
全燃焼しないため求められなかった。この原因はこれら
化合物のフッ素の含有量が大きいためと推定される。
【0067】原料のDemnum SAと化合物1のI
Rを測定した結果、Demnum SAで観測された3
360カイザーの水酸基由来の吸収が化合物1ではその
存在がほとんど確認できなくなるまで小さくなった。そ
れ以外の明らかな吸収の違いは観測されなかった。以下
に合成方法を示す化合物2〜4もIR測定では水酸基由
来の吸収強度が若干変化する以外に明らかな吸収の違い
は観測されなかった。ただ化合物1a〜1c、3a〜3
c、4a〜4cは水酸基由来の吸収強度がむしろ大きく
なったがそれ以外に明らかな吸収の違いは観測されなか
った。
【0068】よって本発明の化合物の分析結果はNMR
のみ示す。
【0069】1H−NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):σ =1.6‐2.2(3
H, b, パーフルオロポリエーテルーCH2、フォ
スファーゼン環―OH), 3.85‐4.05(3H,
m, パーフルオロポリエーテルーC2 OH), 4.1‐
4.5(97H,m, ‐C2 ‐O‐フォスファーゼン
環)。
【0070】19F‐NMR(CDCl3:CCl2FCC
lF2=1:10の混合溶媒):σ =83.5‐84
(3F, C3 CF2CF2O‐), 84.5‐86.5(3
2F, CF32 2 O‐(CF22 2 O)n ),
87.5‐88(2F, -C2 2 CHO‐), 89
‐89.5(0.06F, (CF2CF2CF2O)n-CF2
3 ), 91‐91.5(0.04F, (CF2CF2CF
2O)n-C2 CF3), 125.5‐127(1.90F, -
CF22 CH2O‐フォスファーゼン環), 128.5
‐129(0.06F, -CF22 CH2OH), 13
0.5‐132(15F, (CF22 CF2O)n), 13
2‐132.5(2F, CF32 CF2O‐)。
【0071】化合物1の置換率(フォスファーゼン環に
結合しているパーフルオロポリエーテルの個数が6個で
100%とした場合の割合)は1H―NMRより求め
た。SA末端の構造はCH2OHである。このうちCH2
由来のシグナル(3.85―4.05 ppm、このシグ
ナルの積分値をAとする)がフォスファーゼン環に結合
すると低磁場(4.1―4.5 ppm、このシグナルの
積分値をBとする)にシフトする。そこで置換率はフォ
スファーゼン環に結合したCH2由来のシグナルの積分値
(B)をCH2由来のシグナルの積分値の和(A+B)で割っ
た値、即ちB・[A+B]と定義する。
【0072】その結果、化合物1のAは3,Bは97で
あるので、置換率は97%であった。
【0073】以下の化合物(化合物2〜4、1a〜1c、
3a〜3c、4a〜4c)も同様にして置換率を求め
た。
【0074】(化合物2)用いるSAを平均分子量147
0、純度98%のものから平均分子量2380、純度8
9%のもの(9.23 g, 3.45 mmol)に代える
以外は化合物1と同様の方法で化合物2(7.5 g)を得
た。
【0075】1H−NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):σ =1.6‐2.2(1
4H, b, パーフルオロポリエーテルーCH2、フ
ォスファーゼン環―OH), 3.85‐4.05(14
H, m, パーフルオロポリエーテルーC2 OH), 4.
1‐4.5(86H,m, ‐C2 ‐O‐フォスファーゼ
ン環)。
【0076】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(54
F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF2
CH2O-),89-89.5(0.33F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-9
1.5(0.22F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(1.53F,
-CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(0.25F,
-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(26F, (CF2CF2 CF2O)n), 132-
132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0077】1H―NMRより化合物2の置換率は86
%であった。
【0078】(化合物3)用いるSAを平均分子量147
0、純度98%のものから平均分子量3920、純度8
2%のもの(16.50 g, 3.45 mmol)に代え
る以外は化合物1と同様の方法で化合物3[14.0
g]を得た。
【0079】1H−NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):σ =1.6‐2.2(2
2H, b, パーフルオロポリエーテルーCH2、フ
ォスファーゼン環―OH), 3.85‐4.05(22
H, m, パーフルオロポリエーテルーC2 OH), 4.
1‐4.5(97H,m, ‐C2 ‐O‐フォスファーゼ
ン環)。
【0080】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(91
F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF2
CH2O-),89-89.5(0.54F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-9
1.5(0.36F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(1.28F,
-CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(0.36F,
-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(45F, (CF2CF2 CF2O)n), 132-
132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0081】1H―NMRより化合物3の置換率は78
%であった。
【0082】(化合物4)用いるSAを平均分子量147
0、純度98%のものから平均分子量6960、純度9
0%のもの(26.68 g, 3.45 mmol)に代え
る以外は化合物1と同様の方法で化合物4(24.4 g)
を得た。
【0083】1H−NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):σ =1.6‐2.2(2
8H, b, パーフルオロポリエーテルーCH2、フ
ォスファーゼン環―OH), 3.85‐4.05(28
H, m, パーフルオロポリエーテルーC2 OH), 4.
1‐4.5(97H,m, ‐C2 ‐O‐フォスファーゼ
ン環)。
【0084】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(16
4F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF
2CH2O-), 89-89.5(0.30F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-
91.5(0.20F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(1.30
F, -CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(0.50
F,-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(81F, (CF2CF2 CF2O)n), 13
2-132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0085】1H-NMRより化合物4の置換率は72%であ
った。
【0086】次に化合物1,3,4の置換率を17〜5
0%とした化合物(化合物1a〜1c,3a〜3c,4
a〜4c)の合成方法を記述する。化合物1a〜1cは
化合物1と同様に平均分子量1470、純度98%のパ
ーフルオロポリエーテルと反応させたものであり、化合
物3a〜3cは化合物3と同様に平均分子量3920、
純度82%のパーフルオロポリエーテルと反応させたも
のであり、化合物4a〜4cは化合物4と同様に平均分
子量6960、純度90%のパーフルオロポリエーテル
と反応させたものである。また後述の合成のNMR測定
結果からも再度示すが、化合物1a,3a,4aは置換
率17%、1b、3b、4bは置換率33%、1c,3
c,4cは置換率50%の化合物である。
【0087】即ち化合物1a,3a,4aはフォスファ
ーゼン環に1個のパーフルオロポリエーテルを有してい
る化合物である。同様に化合物1b,3b,4bはフォ
スファーゼン環に2個、化合物1c,3c,4cはフォ
スファーゼン環に3個のパーフルオロポリエーテルを有
している化合物である。
【0088】(化合物1a)パーフルオロポリエーテル
として末端が水酸基のダイキン工業株式会社製Demn
umSA(平均分子量1470、純度98%)(5.1
8 g, 3.45 mmol)を3M株式会社製フッ素系
溶媒HFE‐7200(20 g)に溶解する。これに上
記方法で調製した5.0 wt%水酸化ナトリウムのメ
タノール溶液(2.76 g, 水酸化ナトリウムとしては
0.138 g, 3.45 mmol)を加え、50℃で
10分間攪拌した後、エバポレーターと真空ポンプで溶
媒を除去する。以上の操作によりDemnumSA末端
の水酸基(‐OH)がナトリウムアルコラート(‐ONa)
の形に変換される。これに窒素ガスをバブリングしなが
ら2,2,4,4,6,6-ヘキサクロロトリシクロフォスファーゼ
ン(1.32 g, 3.80mmol)をテトラヒドロフ
ラン(10 g)に溶解したものを加える。なお窒素ガス
のバブリングは以下の操作の反応液の冷却が終わるまで
続ける。テトラヒドロフランが揮発した後、140℃で
7時間加熱・攪拌する。冷却後反応液に5.0wt%水
酸化ナトリウムのメタノール溶液とHFE‐7200
(20 g)を加え、50℃で10分間攪拌した後、エバ
ポレーターと真空ポンプで溶媒を除去する。次に140
℃で7時間加熱・攪拌する。冷却後3M社製フッ素系溶媒
PF‐5052(400 g)、ジクロルメタン (200
g)、水(200 g)を加えよく攪拌後、分液ロートに移
す。最下層のPF‐5052層を分取し、定性ろ紙(東
洋濾紙製NO.2)でろ過後、これにメタノール(100
g)を加えよく攪拌後、分液ロートに移す。最下層のP
F‐5052層を分取しエバポレーターと真空ポンプで
PF‐5052を除去し、目的の化合物1a(3.0
g)を得た。
【0089】1H―NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(42
H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0090】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(32
F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF2
CH2O-),89-89.5(0.06F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-9
1.5(0.04F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.33F,
-CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(1.63F,
-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(15F, (CF2CF2 CF2O)n), 132-
132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0091】1H―NMRより化合物1aの置換率は17%
であった。
【0092】(化合物1b)用いる2,2,4,4,6,6-ヘキサクロ
ロトリシクロフォスファーゼンを1.32 gから0.
66 g(1.90 mmol)に変更する以外は化合物1
aと同様の方法で化合物1b(3.4 g)を得た。
【0093】1H―NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(34
H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0094】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(32
F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF2
CH2O-),89-89.5(0.06F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-9
1.5(0.04F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.65F,
-CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(1.31F,
-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(15F, (CF2CF2 CF2O)n), 132-
132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0095】1H―NMRより化合物1bの置換率は3
3%であった。
【0096】(化合物1c)用いる2,2,4,4,6,6-ヘキサク
ロロトリシクロフォスファーゼンを1.32 gから
0.420 g(1.21 mmol)に変更する以外は
化合物1aと同様の方法で化合物1c(3.8 g)を得
た。
【0097】1H―NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(25
H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0098】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(32
F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF2
CH2O-),89-89.5(0.06F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-9
1.5(0.04F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.98F,
-CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(0.98F,
-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(15F, (CF2CF2 CF2O)n), 132-
132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0099】1H―NMRより化合物1cの置換率は5
0%であった。
【0100】(化合物3a)用いるSAを平均分子量14
70、純度98%のものから平均分子量3920、純度
82%のもの(16.50 g, 3.45 mmol)に代
える以外は化合物1aと同様の方法で化合物3a(1
3.0 g)を得た。
【0101】1H―NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(42
H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0102】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(91
F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF2
CH2O-),89-89.5(0.54F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-9
1.5(0.36F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.28F,
-CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(1.36F,
-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(45F, (CF2CF2 CF2O)n), 132-
132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0103】1H―NMRより化合物3aの置換率は1
7%であった。
【0104】(化合物3b)用いるSAを平均分子量14
70、純度98%のものから平均分子量3920、純度
82%のもの(16.50 g, 3.45 mmol)に
代え、用いる2,2,4,4,6,6-ヘキサクロロトリシクロフォ
スファーゼンを1.32 gから0.66g(1.90
mmol)に変更する以外は化合物1aと同様の方法で
化合物3b(13.4 g)を得た。
【0105】1H―NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(34
H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0106】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(91
F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF2
CH2O-),89-89.5(0.54F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-9
1.5(0.36F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.54F,
-CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(1.10F,
-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(45F, (CF2CF2 CF2O)n), 132-
132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0107】1H―NMRより化合物3bの置換率は3
3%であった。
【0108】(化合物3c)用いるSAを平均分子量14
70、純度98%のものから平均分子量3920、純度
82%のもの(16.50 g, 3.45 mmol)に代
え、用いる2,2,4,4,6,6-ヘキサクロロトリシクロフォス
ファーゼンを1.32 gから0.420g(1.21
mmol)に変更する以外は化合物1aと同様の方法で
化合物3c(13.8 g)を得た。
【0109】1H―NMR (CDCl3:CCl2FCC
lF2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(2
5H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0110】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(91
F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF2
CH2O-),89-89.5(0.54F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-9
1.5(0.36F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.82F,
-CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(0.82F,
-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(45F, (CF2CF2 CF2O)n), 132-
132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0111】1H―NMRより化合物3cの置換率は5
0%であった。
【0112】(化合物4a)用いるSAを平均分子量14
70、純度98%のものから平均分子量6960、純度
90%のもの(26.68 g, 3.45 mmol)に
代える以外は化合物1aと同様の方法で化合物4a(2
3.0 g)を得た。
【0113】1H―NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(42
H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0114】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(16
4F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF
2CH2O-), 89-89.5(0.30F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-
91.5(0.20F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.31
F, -CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(1.49
F,-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(81F, (CF2CF2 CF2O)n), 13
2-132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0115】1H―NMRより化合物4aの置換率は1
7%であった。
【0116】(化合物4b)用いるSAを平均分子量14
70、純度98%のものから平均分子量6960、純度
90%のもの(26.68 g, 3.45 mmol)に代
え、用いる2,2,4,4,6,6-ヘキサクロロトリシクロフォス
ファーゼンを1.32 gから0.66 g(1.90
mmol)に変更する以外は化合物1aと同様の方法で
化合物4b(23.2 g)を得た。
【0117】1H―NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(34
H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0118】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(16
4F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF
2CH2O-), 89-89.5(0.30F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-
91.5(0.20F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.59
F, -CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(1.21
F,-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(81F, (CF2CF2 CF2O)n), 13
2-132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0119】1H―NMRより化合物4bの置換率は3
3%であった。
【0120】(化合物4c)用いるSAを平均分子量14
70、純度98%のものから平均分子量6960、純度
90%のもの(26.68 g, 3.45 mmol)に代
え、用いる2,2,4,4,6,6-ヘキサクロロトリシクロフォス
ファーゼンを1.32 gから0.420g(1.21
mmol)に変更する以外は化合物1aと同様の方法で
化合物4c(24.0 g)を得た。
【0121】1H―NMR(CDCl3:CCl2FCCl
2=1:10の混合溶媒):δ=1.6‐2.2(25
H, b,フォスファーゼン環―OH)。
【0122】19F-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合
溶媒):-δ=83.5-84(3F, CF3 CF2CF2O-), 84.5-86.5(16
4F, CF3CF2CF2 O-(CF2 CF2CF2 O)n ), 87.5-88(2F, -CF2 CF
2CH2O-), 89-89.5(0.30F, (CF2CF2CF2O)n-CF2CF3 ), 91-
91.5(0.20F, (CF2CF2CF2O)n-CF2 CF3), 125.5-127(0.90
F, -CF2CF2 CH2O-フォスファーゼン環), 128.5-129(0.90
F,-CF2CF2 CH2OH), 130.5-132(81F, (CF2CF2 CF2O)n), 13
2-132.5(2F, CF3CF2 CF2O-)。
【0123】1H―NMRより化合物4cの置換率は5
0%であった。
【0124】次に合成した化合物の撥水性を水との接触
角で調べた。
【0125】化合物1〜4、及び化合物1a〜1c、3
a〜3c、4a〜4cをそれぞれ3M株式会社製HFE
7100に溶解する。この溶液の化合物1〜4、及び化
合物1a〜1c、3a〜3c、4a〜4cの濃度はいず
れも300 ppmである。直径3インチの表面研磨し
たシリコンウエハこの溶液に1分間浸漬し、速度1mm
/s で引き上げた。その後80℃の恒温層に30分間
このシリコンウエハを入れ、溶媒であるHFE7100
を揮発させる。この後IRでCF伸縮 (1200 cm
‐1) の吸光度からシリコンウエハ上の化合物の平均膜
厚を測定したところ、いずれの化合物の膜も35〜40
Åであった。これら表面の水との接触角を測定した。結
果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】化合物1〜4、及び化合物1a〜1c,3
a〜3c,4a〜4cのいずれの化合物を塗布したシリ
コンウエハも接触角が115°以上であった。併記した
化合物の置換率と比較すると、置換率の高いものほど接
触角が高い傾向があるがその差は最大3°である。また
化合物1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cを塗布する
前のシリコンウエハの接触角は約60°であった。以上
の結果から本発明の含フッ素化合物は高い撥水性を持っ
た表面を形成できるという効果が確認された。
【0128】
【実施例2】実施例1と同様にして濃度300 ppm
の化合物1〜4、及び化合物1a〜1c,3a〜3c、
4a〜4cのHFE7100溶液を調製する。これを用
いて磁気ディスクを作製する。図2にその構成を示し、
作製方法を以下に記述する。
【0129】直径3インチのAl合金製ディスク5の表
面にCr‐Ti層6(層厚:約20nm),Cr層7(層
厚:約5 nm)、Co‐Cr‐Pt‐Ta層8(層
厚:約20 nm)、カーボン層9(層厚:約12 n
m)をこの順にスパッタ蒸着法で形成した。Co‐Cr
‐Pt‐Ta層は記録層であり、Cr‐Ti層とCr層
は記録層の下地となる層である。カーボン層は保護層で
ある。このディスクを上記HFE7100溶液に1分間
浸漬し、速度1 mm/s で引き上げた。その後80℃
の恒温層に30分間放置することで化合物1〜4、及び
化合物1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cからなる潤
滑層10を表面に形成した磁気ディスクを作製した。こ
の潤滑層の平均膜厚は平均16〜18Åである。また比
較のためアウジモント社製Fomblin Z‐DOL
からなる潤滑層を形成した磁気ディスクも作製した。潤
滑層形成は化合物1〜4、及び化合物1a〜1c,3a
〜3c,4a〜4cと同様の方法であるが溶液の濃度
(700 ppm)のみ異なる。こうして形成された潤
滑層の平均膜厚は17Åである。なおFomblin
Z‐DOLを今後化合物5と記述する。
【0130】
【化7】
【0131】こうして作製された磁気ディスクをピンオ
ンディスクタイプの摩擦測定装置(榛名通信株式会社
製)に装着し、ヘッドをディスク外に待機させた状態に
して回転数10,000 rpmで1,000時間連続
回転させた後、ヘッドをディスク上に移動させヘッド荷
重2 g、回転数10,000 rpmでヘッドをディス
クと摺動し、回転時の摩擦力を測定した。
【0132】すると化合物1〜4、及び化合物1a〜1
c,3a〜3c,4a〜4cを塗布した磁気ディスクの
摩擦力はいずれも2 g以下であった。しかし化合物5
を塗布した磁気ディスクの摩擦力は5 g以上であっ
た。
【0133】これら磁気ディスク表面を顕微鏡で観察し
たところ化合物5を塗布した磁気ディスクではヘッドと
の接触部分には摺動したことを示す痕跡がついた。これ
は保護層が削れていることを示している。更に摺動を続
けていると保護層の下の記録層を傷つけ記録・再生に影
響を与える恐れがある。なお化合物1〜4、及び化合物
1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cを塗布した磁気デ
ィスク表面には上記摺動痕は観察されなかった。
【0134】これら磁気ディスクの1,000時間回転
した後の潤滑層の厚さを調べた結果、化合物1〜4、及
び化合物1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cからなる
潤滑層はいずれも1,000時間回転後に初期膜厚の7
割以上の11Å以上を確保していた。しかし化合物5か
らなる潤滑層は1,000時間回転後、初期膜厚の約4
割の6Åになった。潤滑層が薄くなるということは磁気
ディスクの回転によって潤滑層を構成している化合物が
飛散するために起こる現象である。平均膜厚が6Å程度
まで減少すると表面上の部分的には化合物の全く存在し
ない箇所がでてくると考えられる。即ち潤滑層に部分的
な欠陥が生じるためその潤滑性が大幅に低下し摩擦力が
大きくなったと考えられる。
【0135】以上の結果より、本発明の含フッ素化合物
は極めて低飛散性の磁気ディスク用潤滑剤として機能す
る効果が認められた。
【0136】また本発明の含フッ素化合物を潤滑層とす
る磁気ディスクは10,000rpmの高回転で1,0
00時間、長期の連続回転を行った後でも表面に十分な
潤滑性を有する効果が認められた。
【0137】
【実施例3】実施例2で作製した磁気ディスクをピンオ
ンディスクタイプの摩擦測定装置(榛名通信株式会社
製)に装着し、ヘッド荷重5 g、回転数10,000
rpmで連続回転させ、ディスクの摺動耐久性を調べ
た。
【0138】結果を図3に示す。(■の部分が本実施例
の結果。その外は次の実施例の結果) なおこの時の回転回数は特に障害が発生しない場合は
1,000,000回を上限とした。また装置はディス
クとヘッドの摩擦力が12g以上になると停止するよう
プログラムされている。これは装置のスピンドルモータ
ー保護のためである。また摩擦力がこれだけ大きくなる
とディスク表面は摺動により削れて記録層にダメージを
与えるため記録・再生に支障をきたすようになる。
【0139】化合物1〜4、及び化合物1a〜1c,3
a〜3c,4a〜4cを塗布した磁気ディスクを装着し
た摩擦測定装置は1,000,000回回転後もディス
クとヘッドの摩擦力が4 g以下であった。しかし化合
物5を塗布したものを装着した摩擦測定装置ではディス
クが約10,000回回転後、ディスクとヘッドの摩擦
力が急激に大きくなり回転が停止した。即ちディスクと
ヘッドの摩擦力が12g以上になった。
【0140】これら磁気ディスク表面を顕微鏡で観察し
たところ化合物5を塗布した磁気ディスクでは実施例2
の実験の結果と同様ヘッドとの接触部分には摺動したこ
とを示す痕跡がついた。なお化合物1〜4、及び化合物
1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cを塗布した磁気デ
ィスク表面には上記摺動痕は観察されなかった。回転が
停止したディスクと摺動していたヘッドの摺動面をX‐
ray Photoelectron Spectroscopy(XPS)で調べたとこ
ろ、Al‐Fの結合由来のシグナルが強く観測され、パ
ーフルオロポリエーテルがヘッド表面のAlと反応し分
解したことを示唆している。これに比べ化合物1a〜1
c,3a〜3c,4a〜4cを塗布したディスクと摺動
していたヘッドはAl‐Fの結合由来のシグナルが非常
に小さい。このことから化合物1〜4、及び化合物1a
〜1c,3a〜3c,4a〜4cは化合物5に比べて分
子内のパーフルオロポリエーテル鎖がヘッド部材中のA
l化合物により分解しにくいものと考えられる。
【0141】以上の結果より、本発明の含フッ素化合物
はヘッドとの摺動による分解を起こしにくいため極めて
摺動耐久性の高い磁気ディスク用潤滑剤としての効果を
有することが認められた。
【0142】また本発明の含フッ素化合物を潤滑層とす
る磁気ディスクは10,000rpmと言う高回転で回
転回数1,000,000回と言う長期の連続摺動を行
った後でもディスクが摺動により傷つくことの無い極め
て摺動耐久性の高い磁気ディスクであるという効果が認
められた。
【0143】
【実施例4】次に化合物5に化合物1〜4、及び化合物
1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cを添加剤として混
合した潤滑層を有する磁気ディスクの摺動耐久性を調べ
た。
【0144】添加の割合は以下の8種類となるよう作製
した。即ち、化合物5:化合物1〜4,1a〜1c,3
a〜3c,4a〜4c=0%:100%、70%:30
%、90%:10%、97%:3%、98%:2%、9
9%:1%、99.5%:0.5%、100%:0%の
8種類である。この場合0%:100%は化合物1〜
4、1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cのみであり、
100%:0%は化合物5のみとなる。前記の%は重量
%である。
【0145】化合物5を化合物1〜4,1a〜1c,3
a〜3c,4a〜4cと同等量磁気ディスク表面へ付着
させるには塗布溶液の濃度を化合物1〜4,1a〜1
c,3a〜3c,4a〜4cの約2〜2.5倍程度にす
る必要があった。これを目安に潤滑層を形成するための
塗布溶液を調製し、潤滑層を作製した。
【0146】潤滑層中の化合物の添加割合はソックスレ
ーの抽出器を用いて潤滑層の構成物を抽出し分析するこ
とで求めた。方法は以下の通りである。まず潤滑層形成
後の磁気ディスクを約1cm2程度の大きさに細かく切
断後、円筒ろ紙中に入れる。このろ紙をソックスレーの
抽出器にセットし3M株式会社製HFE‐7100を溶
媒として抽出を行う。抽出時間は8時間である。抽出
後、エバポレーターと真空ポンプを用いてHFE‐71
00を除くと化合物5と化合物1〜4,1a〜1c,3
a〜3c,4a〜4cのいずれかの化合物が残る。これ
19F‐NMRで分析する。化合物1〜4,1a〜1
c,3a〜3c,4a〜4cは―83.5〜‐84 p
pm にパーフルオロポリエーテル末端のCF3由来のシグ
ナルがある。しかしこの領域に化合物5由来のシグナル
は無い。また化合物5は―93、及び―94 ppm に
主鎖の繰り返し単位―C2 2 O‐由来のシグナルが
ある。しかしこの領域に化合物1〜4,1a〜1c,3
a〜3c,4a〜4c由来のシグナルは無い。そこでこ
れらシグナルの積分値の比から潤滑層中の化合物1〜
4,1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cの添加割合を
定量した。
【0147】また膜厚は16〜18Åとなるように溶液
濃度を調整した。摺動特性評価は実施例3と同様に行っ
た。結果を図3に併記する。
【0148】化合物1〜4,1a〜1c,3a〜3c,
4a〜4cのいずれの化合物も1重量%以上添加した場
合、ヘッドはディスクが1,000,000回回転後も
ディスクとヘッドの摩擦力が4 g以下であった。
【0149】しかし、化合物1〜4、1a〜1c,3a
〜3c,4a〜4cを全く添加しない化合物5のみを塗
布したディスクを装着した摩擦測定装置では約10,0
00回回転後、ディスクとヘッドの摩擦力が急激に大き
くなり回転が停止した。即ちディスクとヘッドの間の摩
擦力が12g以上になったことを示している。
【0150】回転が停止したディスクと摺動していたヘ
ッドの摺動面をXPSにより調べたところ、Al‐Fの
結合由来のシグナルが強く観測され、パーフルオロポリ
エーテルがヘッド表面のAlと反応し分解したことを示
唆している。これに比べ回転が停止しなかったディスク
と摺動していたヘッドはAl‐Fの結合由来のシグナル
が非常に小さい。これは化合物1〜4,及び化合もの1
a〜1c,3a〜3c,4a〜4cは化合物5のパーフ
ルオロポリエーテル鎖がヘッド部材中のAl化合物によ
り分解する反応を抑制しているためと考えられる。
【0151】以上の結果より、本発明の含フッ素化合物
は極めて摺動耐久性の高い磁気ディスク用潤滑剤である
という効果が認められた。また分解しやすいため長期の
摺動耐久性に難のある潤滑剤に少量添加することでその
潤滑剤の摺動耐久性を高めるという効果も認められた。
【0152】なお摺動耐久性の向上はヘッド部材中のA
l化合物による潤滑剤分子中のパーフルオロポリエーテ
ル鎖の分解を抑制しているためと考えられる。
【0153】また本発明の含フッ素化合物を1重量%以
上含有する潤滑層を有する磁気ディスクは10,000
rpmと言う高回転で回転回数1,000,000回と
言う長期の連続摺動を行った後でもディスクが摺動によ
り傷つくことの無い極めて摺動耐久性の高い磁気ディス
クであるという効果が認められた。
【0154】
【比較例1】本発明との比較のため化合物1〜4、及び
化合物1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cの代わりに
ダウケミカル株式会社製X‐1P(以下、化合物6とい
う)、及び化合物7(合成方法は後述した)を添加剤とし
て化合物5と混合し、潤滑層を形成したディスクの摺動
耐久性も実施例5と同様に調べた。結果を図5に併記す
る。
【0155】
【化8】
【0156】
【化9】
【0157】この実験に用いた装置は実施例3で用いた
摩擦測定装置であり実験条件も実施例3と同じである。
また化合物5:化合物6の比が0%:100%と70
%:30%(いずれも重量%)の潤滑層を作製するため
の塗布溶液を調製する際、用いた溶媒に対して化合物6
が完全には溶解しなかった。そこでこの比率の潤滑層を
有する磁気ディスクの作製を断念した。
【0158】その結果、化合物6、或いは7は添加量が
3重量%以上にならないと1,000,000回の耐久
性を確保することができないことがわかった。実施例4
との比較から本発明の化合物はわずか一重量%という少
ない添加量で潤滑剤の分解を抑制し摺動耐久性を向上さ
せる化合物であることが示された。なお化合物7の合成
方法を以下に記述する。
【0159】2,2,4,4,6,6-ヘキサクロロトリシクロフォ
スファーゼン(0.81 g, 2.33 mmol)をエタ
ノール (20 g)に溶解し、これにアジ化ナトリウム
(0.65 g, 10.0 mmol)を加え、5時間還流
する。反応液中のエタノールをエバポレーターで揮発さ
せた後、水(20 g)とジクロルメタン(20 g)を加
え、良く攪拌する。これを分液ロートに移し、下層を分
取する。エバポレーターでジクロルメタンを揮発させ2,
2,4,4,6,6-ヘキサアジドトリシクロフォスファーゼンの
未精製物(0.5 g)を得る。
【0160】次に上記操作で得られた2,2,4,4,6,6-ヘキ
サアジドトリシクロフォスファーゼンの未精製物の全量
をエタノール(20 g)に溶解し、これにトリフェニル
フォスフィン(0.5 g, 5.72 mmol)と28%
アンモニア水(10 g)を加え、室温で24時間攪拌す
る。エバポレーターで反応液中のエタノールとアンモニ
アを揮発させた後、水(10 g)とジクロルメタン(20
g)を加え、良く攪拌する。これを分液ロートに移し、
下層を分取する。エバポレーターでジクロルメタンを揮
発させた後アルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶
媒はジクロルメタン:n-ヘキサン=1:1(重量比)の混
合溶媒)で精製し2,2,4,4,6,6-ヘキサアミノトリシクロ
フォスファーゼン(0.27 g, 1.17 mmol)を
得る。末端がカルボキシル基(‐COH)のパーフルオ
ロポリエーテルとしてDuPont株式会社製Kryt
ox 157FS‐L、平均分子量2020、純度98
%)(14.22 g, 6.90 mmol)を3M株式会
社製フッ素系溶媒HFE‐7200(20 g)に溶解す
る。これに塩化チオニル (5.0 g, 42.0 mm
ol)を加え48時間還流する。反応液を室温まで冷却
後、エバポレーターでHFE‐7200と塩化チオニル
を揮発させ、末端のカルボキシル基(-CO2H)を酸クロ
ライド(-COCl)に変換した物質(以下、化合物7'と
いう)(14 g, 6.86 mmol)を得る。
【0161】2,2,4,4,6,6-ヘキサアミノトリシクロフォ
スファーゼン(0.27 g, 1.17 mmol)をクロ
ロホルム(20 g)に溶解し、これにピリジン(1.0
g,12.7 mmol)を加え、更に化合物7'(14
g, 6.86 mmol)をHFE‐7200(20 g)
に溶解したものを加える。反応液を60℃で8時間攪拌
する。反応液中のクロロホルムとHFE7200をエバ
ポレーターで揮発させると粘性の高い液体が容器に残
る。これに3M社製フッ素系溶媒PF‐5052 (20
g)を加え、攪拌すると粘性の高い液体がほぼ溶解す
る。更にこれに10%塩酸をすこしづつ加える。この操
作はピリジンを塩酸塩に変えるためであり、溶液が酸性
になるまで加える。その後、分液ロートに移し下層(P
F‐5052層)を分取する。分取したものを洗液が中
性になるまで飽和食塩水で洗った後、硫酸ナトリウムで
乾燥する。硫酸ナトリウム除去後、エバポレーターでP
F‐5052を揮発させ、目的の化合物7(10 g)を
得る。
【0162】元素分析は化合物7が完全燃焼しないため
求められなかった。この原因は化合物1と同様にやはり
化合物7のフッ素の含有量が大きいためと推定される。
【0163】7F化合物7と原料のKrytox 15
7FS‐LのIRを測定した結果、Krytox 15
7FS‐Lでは1780cm‐1のCO2Hに由来する吸
収が観測された。化合物7ではこの領域がCONH(ア
ミド結合)になるため1780cm‐1の吸収がなくな
り、1710cm‐1と1550cm‐1の吸収が現れ
た。1H-NMR(CDCl3:CCl2FCClF2=1:10の混合溶媒):δ=
8.1-8.4(H, b, -CONH-フォスファーゼン環)。
【0164】19F‐NMR(CDCl:CClFC
ClF=1:10の混合溶媒):-δ=80‐85(6
0F, C CF O‐(CF(C )C
O)nCFC CH), 89‐89.2(0.06
F, (CF(CF)CFO)n‐C ),
90.5‐90.7(0.04F, (CF(CF)C
O)n‐C CF), 131.5‐131.7
(2F, CF CFO‐(CF(CF)CF
O)n), 134.5‐135(0.98F, ‐ C
CFCONH‐フォスファーゼン環), 146.5‐
147.5 (10.4F, (C(CF)CFO)
n)。
【0165】化合物7の置換率(フォスファーゼン環に
結合しているパーフルオロポリエーテルの個数が6個で
100%とした場合の割合)は19F-NMRより求め
た。その結果原料であるKrytox 157FS‐L
の-CFCF3CO2Hに由来するシグナル(134 pp
m)は観測されず、フォスファーゼン環に結合した場合
に生じる-CFCF3CONH-フォスファーゼン環に由
来するシグナル(134.5‐135 ppm)のみ観測
された。よって置換率は100%と判断した。
【0166】
【実施例5】潤滑層形成のため磁気ディスクに塗布する
溶液において、潤滑剤である化合物5に対して添加剤と
して化合物1〜4、及び化合物1a〜1c,3a〜3
c,4a〜4cを添加した場合のディスクのContact St
art Stop(CSS)後のヘッドとディスクとの粘着力を調
べた。
【0167】粘着力測定はディスク回転数10,000
rpmでディスクを10,000回回転後、6時間放
置し再起動させたときのヘッドの静止摩擦力を求める方
法で行った。なお再起動時の回転数は1 rpmであ
る。
【0168】化合物の添加割合は化合物5:化合物1〜
4,1a〜1c,3a〜3c,4a〜4c=0%:10
0%、70%:30%、90%:10%、97%:3
%、98%:2%、99%:1%、100%:0%の7
種類(いずれも重量%)とした。また膜厚は実施例4と
同様に16〜18Åとなるように溶液濃度を調整した。
【0169】結果を図4、5、6に示す。なお粘着力が1
5 g以上になるとスピンドルモーターが焼き付き防止
のため停止する。これ以上大きな粘着力が発生するよう
な場合は、仮に大きな起動力で回転させたとしてもディ
スク表面に傷がつき、ヘッドもヘッドサスペンションの
部分が変形する等のトラブルが発生する可能性がある。
そのため粘着力が15 g以上というのは磁気ディス
ク、及び磁気ディスク装置にとっては許容外の値であ
る。化合物1,1a〜1c,2の結果を図4に示す。こ
れらの中で一番粘着力が大きかった化合物1cは添加量
1重量%で5.6 g、2重量%で6.0 g、3重量%
で6.2 g、更に100重量%でも7.0 gであり、
ディスクが停止するような大きな粘着力は発生しなかっ
た。
【0170】化合物3、3a〜3cの結果を図5に示
す。これらの中で粘着力が一番大きかった化合物3cで
も添加量1重量%で5.2 g、2重量%で5.8 g、
3重量%で6.0 g、更に100重量%でも6.7 g
であり図4の化合物1cを同量添加したものよりも更に
粘着力が小さかった。
【0171】化合物4,4a〜4cの結果を図6に示
す。これらの中で粘着力が一番大きかった化合物4cで
も添加量1重量%で5.0 g、2重量%で5.6 g、
3重量%で5.8 g、更に100重量%でも6.4 g
であり図4の化合物1cを同量添加したものよりも更に
粘着力が小さかった。
【0172】以上の結果より、本発明の含フッ素化合物
は粘着力の低い磁気ディスク用潤滑剤としての効果を有
することが認められた。また他の潤滑剤と併用した場合
でも粘着力の増加量はわずかであり実用上問題のでるレ
ベルでないことが確認された。
【0173】また本発明の含フッ素化合物を1重量%以
上含有する潤滑層を有する磁気ディスクはヘッドとの粘
着力が実用上問題とならないほど小さいことが確認され
た。
【0174】
【比較例2】化合物1〜4、及び化合物1a〜1c,3
a〜3c,4a〜4cの代わりに化合物6、7を化合物
5とを混合した場合のディスクのContact Start Stop
(CSS)後のヘッドとディスクとの粘着力を実施例5と
同様の方法で調べることにした。結果を図4に併記す
る。なお比較例1にも記述したが化合物5:化合物6の比
が0%:100%と70%:30%(いずれも重量%)
の潤滑層を作製するための塗布溶液を調製する際、用い
た溶媒に対して化合物6が完全には溶解しなかった。そ
こでこの比率の潤滑層を有する磁気ディスクの作製を断
念した。
【0175】化合物6は添加量1重量%で7.0 g、
2重量%で9.4 gと大きく3重量%では15 g以上
となりディスクが停止した。化合物7も1重量%で8.
2 g、2重量%で10.8 gと大きく3重量%では化
合物6と同様にディスクが停止した。このことから同じ
フォスファーゼン環を有する化合物でも化学構造が異な
ると粘着力が大きく変わる。
【0176】以上より本発明の化合物は磁気ディスク用
潤滑剤として実用上問題とならないほど粘着力の小さい
ことが明らかになった。
【0177】
【実施例6】実施例2で作製した磁気ディスクを図7の
磁気ディスク装置に装着する。更にこの磁気ディスク装
置を構成物の一つとする図8の磁気ディスク装置用評価
設備を用いて上記磁気ディスクを10,000 rpm
で1,000時間回転させた。この場合はヘッドをディ
スク外に待機させた状態にして回転させた。その後ヘッ
ドをディスク上に移動させ10分間記録・再生を繰り返
し行った。
【0178】化合物1〜4、及び化合物1a〜1c,3
a〜3c,4a〜4cを塗布した磁気ディスクを装着し
た磁気ディスク装置は10分間記録・再生を正常に行う
ことができた。しかし化合物5を塗布したものを装着し
た磁気ディスク装置では再生出力が約20%低下し、結
果として再生が困難になった。この装置のディスク表面
を顕微鏡で観察したところ、実施例2のピンオンディス
クタイプの摩擦測定装置での摺動実験のときと同様、ヘ
ッドとの摺動部分には摺動したことを示す痕跡がつい
た。なお化合物1a〜1c,3a〜3c,4a〜4cを
塗布した磁気ディスクでは摺動痕は観察されなかった。
【0179】以上の結果より、情報の記録を行う磁気デ
ィスクと該磁気ディスクへの情報の記録・再生・消去を
行うヘッドを有する磁気ディスク装置において、本発明
の含フッ素化合物を潤滑層とする該磁気ディスクを有す
る磁気ディスク装置はディスクを10,000rpmと
いう高回転で1,000時間の長期の連続回転を行った
後でも正常な記録・再生を行える効果が認められた。
【0180】磁気ディスク装置の構成は以下の通りであ
る。まず磁気ディスク11が回転制御機構であるスピン
ドルモーター12の回転軸部分に固定されており、各磁
気ディスク11にはそれぞれ上面と下面とに記録・再生
を行うための素子の組み込まれたヘッド13が設けられ
ている。ヘッド13はヘッドサスペンション14を介し
てヘッド13の位置決め機構であるアクチュエーター1
5に接続されている。磁気ディスク11、ヘッド13、
ヘッドサスペンション14、アクチュエーター15は、
メカニカルシール16によって外界から塵等が入り込ま
ないように密封されている。磁気ディスク装置の制御部
であるコントローラー17との情報信号のやりとり(転
送)はヘッドとケーブル(データ信号転送用)18を介
して行われる。アクチュエーターの制御はケーブル(ア
クチュエーター制御用)19を介し、スピンドルモータ
ーの制御はケーブル(スピンドルモーター制御用)20
を介して行われる。
【0181】また磁気ディスク装置の評価設備の構成は
以下の通りである。磁気ディスク装置21は電源ユニッ
ト22から電源ケーブル23を介して各々の部位を稼働
させるための電気を得る。磁気ディスク装置21は制御
盤24で制御される。この間はケーブル25でつながっ
ている。また装置の稼働状態はディスプレイ26によっ
てモニターできる。制御盤24とディスプレイ26の間
はケーブル27でつながっている。
【0182】
【実施例7】実施例6で用いた磁気ディスク装置に実施
例4で評価したものと同様の磁気ディスクを装着し、ヘ
ッド荷重5 g、回転数10,000 rpmで連続で記
録・再生させ、磁気ディスクの摺動耐久性を調べた。特
に障害が発生しない場合、ディスクの回転回数の上限は
1,000,000回とした。
【0183】その結果、化合物5を潤滑層とする磁気デ
ィスクを用いた磁気ディスク装置は、ディスクを約1
0,000回回転後に再生出力が約20%低下し再生が
困難になった。そこで磁気ディスク表面を調べたところ
ヘッドとの摺動部分に摺動の痕跡があった。しかし化合
物5に化合物1〜4,1a〜1c,3a〜3c,4a〜
4c,6,7をある程度の割合添加することでこの実験
の上限であるディスクの回転回数1,000,000回
における正常な記録・再生を行うことが可能となった。
特に化合物1〜4,1a〜1c,3a〜3c,4a〜4
cを添加した場合、添加割合1重量%以上で上限まで正
常な記録・再生を行うことが可能であった。化合物6,
7は3重量%以上添加しないと上限まで正常な記録・再
生を行うことができなかった。これらの結果は実施例4
とよく対応する。
【0184】以上より、本発明の含フッ素化合物は極め
て摺動耐久性の高い磁気ディスク用潤滑剤として機能す
る効果がある。また分解しやすいため長期の摺動耐久性
に難のある潤滑剤に本発明の含フッ素化合物を少量添加
することで潤滑剤の摺動耐久性を高める効果もある。更
にその添加量は従来の添加剤に比べて非常に少ない長所
もある。
【0185】また本発明の含フッ素化合物を1重量%以
上含有する潤滑層とする磁気ディスクを用いた磁気ディ
スク装置はディスクを10,000rpmで回転回数
1,000,000回の長期の連続摺動を行った後も安
定して記録・再生が可能な信頼性の高い装置であること
が確認された。
【0186】
【発明の効果】本発明の含フッ素化合物は従来困難であ
った潤滑剤飛散低減、潤滑剤分解抑制、粘着低減という
3つの課題を同時に達成する潤滑剤を提供する。また、
本発明の含フッ素化合物を他の潤滑剤の添加剤として用
いた場合、その潤滑剤の摺動耐久性を向上させる効果が
ある。更にこの含フッ素化合物は固体表面に高い撥水性
を与える効果がある。また、本発明の含フッ素化合物を
潤滑剤、及び潤滑剤の添加剤として用いた磁気ディスク
は高回転での長期連続回転を行った後も表面に十分な潤
滑性を有し、かつヘッドとの粘着力が小さい効果を有す
る。
【0187】更に本発明の磁気ディスク装置は高回転で
の連続回転を行った後でも正常に情報の記録・再生を行
なうことが可能であるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気ディスクの構成を示す断面模式
図である。
【図2】 実施例2で作製した磁気ディスクの構成を示
す断面模式図である。
【図3】 実施例4の摺動耐久性の評価結果を示す図で
ある。
【図4】 実施例5のヘッドと磁気ディスクとの粘着力
を調べた結果を示す図である。
【図5】 実施例5のヘッドと磁気ディスクとの粘着力
を調べた結果を示す図である。
【図6】 実施例5のヘッドと磁気ディスクとの粘着力
を調べた結果を示す図である。
【図7】 実施例6の磁気ディスク装置の構成を示す断
面模式図である。
【図8】 実施例6で作製した磁気ディスク装置用評価
設備の構成を示す模式図である。
【符号の説明】 1…支持体、2…記録層、3…保護層、4…潤滑層、5
…Al合金製ディスク、6…Cr‐Ti層、7…Cr
層、8…Co‐Cr‐Pt‐Ta層、9…カーボン層、
10…潤滑層、11…磁気ディスク、12…スピンドル
モーター、13…ヘッド、14…ヘッドサスペンショ
ン、15…アクチュエーター、16…メカニカルシー
ル、17…コントローラー、18…ケーブル(データ信
号転送用)、19…ケーブル(アクチュエーター制御
用)、20…ケーブル(スピンドルモーター制御用)、
21…磁気ディスク装置、22…電源ユニット、23…
電源ケーブル、24…制御盤、25…ケーブル、26…
ディスプレイ、27…ケーブル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中川路 孝行 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 石田 美奈 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 伊藤 豊 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 石原 平吾 神奈川県小田原市国府津2880番地 株式会 社日立製作所ストレージシステム事業部内 Fターム(参考) 4H050 AB91 4H104 BH14A BH14C CH09A CH09C LA15 LA20 PA16 5D006 AA01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の一般式(1) 【化1】 (ただし、式中―Rは―R1または―R2であり、かつ―
    Rのうち1個は―R1。又―R1:‐OCH2‐CF2CF2‐(OC
    F2CF2CF2)nF(nは正の整数),‐R2:‐OHであ
    る。)で表される含フッ素化合物。
  2. 【請求項2】支持体上に少なくとも1層以上の記録層を
    備え、最表面に少なくとも1種類以上のパーフルオロポ
    リエーテル鎖を有する化合物からなる潤滑層を有する磁
    気ディスクにおいて、該潤滑層が下記の一般式(1) 【化2】 (ただし、式中―Rは―R1または―R2であり,かつ―R
    のうち1個は―R1。又―R1:‐OCH2‐CF2CF2‐(OCF2
    CF2CF2)nF(nは正の整数)、―R2:‐OHである。)で
    表される含フッ素化合物を1重量%以上含有することを
    特徴とする磁気ディスク。
  3. 【請求項3】少なくとも情報を記録する磁気ディスク
    と、該磁気ディスクへの情報の書き込み・消去及び該磁
    気ディスクからの情報の読み出し機能を有するヘッド
    と、該ヘッドの動きを制御するアクチュエーターと、該
    磁気ディスクを回転させるスピンドルモーター及び該ア
    クチュエーターと該スピンドルモーターを制御する回路
    を有する磁気ディスク装置において、該磁気ディスクが
    支持体上に少なくとも1層以上の記録層を備え、最表面
    に少なくとも1種類以上のパーフルオロポリエーテル鎖
    を有する化合物からなる潤滑層を有し、該潤滑層が下記
    の一般式(1) 【化3】 (ただし、式中―Rは―R1または―R2であり,かつ―R
    のうち1個は―R1。又―R1:‐OCH2‐CF2CF2‐(OCF2
    CF2CF2)nF(nは正の整数)、―R2:‐OHである。)で
    表される含フッ素化合物を1重量%以上含有することを
    特徴とする磁気ディスク装置。
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US6816341B2 (en) 2000-07-05 2004-11-09 Hitachi, Ltd. Hard disk drive utilizing second lubricant over a first lubricant having a phosophezine group
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