JPH0610109Y2 - エンジンのブローバイガス燃焼室還元装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 本考案は、エンジンの燃焼室からクランク室に漏洩した
ブローバイガスを、ブレザ装置で油分離してから、連通
路及び吸気系統を経て、燃焼室に還元し、ここで燃焼さ
せて無害化してから、大気中に排出するようにしたエン
ジンのブローバイガス燃焼室還元装置に関する。

《従来技術》 ブローバイガスを燃焼室に還元させるようにしたものと
して、従来、例えば実公昭62-24737号公報に示されたも
のがある。

一般にブローバイガスを吸気系統に戻すクローズドブレ
ザー装置では、クランクケース内の圧力を安定させるた
めに、大気解放穴が必要である。そこで前記従来のもの
では、エンジンのブローバイガスに混合した油分を分離
除去するブレザ装置をエンジンに付設し、ブレザ装置の
ブレザ室の入口をエンジンのクランク室に連通し、ブレ
ザ室の出口を燃焼室の吸気系統に連通路を介して連通
し、これにより燃焼室からクランク室に漏洩したブロー
バイガスを、ブレザ装置で油分離してから、連通路及び
吸気系統を経て燃焼室に還元するように構成するととも
に、クランク室の内圧の異常上昇時にクランク室のブロ
ーバイガスを大気中に排出するブローバイガス排出装置
をエンジンに付設し、このブローバイガス排出装置内に
油分離手段を設け、ブレザ装置における油分離手段の通
気抵抗よりもブローバイガス排出装置での油分離手段の
通気抵抗を大きく設定した構成になっている。

《解決しようとする問題点》 従来のブローバイガス排出手段では、ブローバイガス排
出装置内にスチールウール等の油分離手段を配置してい
るだけであったことから、ブローバイガス排出装置に開
口している大気解放穴は排気時のみならず吸入時にも作
用することになる。ところが、通常の場合クランクケー
ス内は負圧となって入ることから、大気解放穴から外気
を吸っている。このため、大気解放穴から吸い込んだ外
気がブレザ装置を通ってエンジンの吸気系統に吸い込ま
れることになり、外気とともに吸い込まれたダストの影
響でピストンリングやシリンダライナが異常摩耗すると
いう問題があった。

そこで本考案者は、第３図に示すようなクローズドブレ
ザー装置を先に考えた。

これは、頭上弁式エンジン(41)のロッカアームカバー(4
2)にブレザ装置(43)とブローバイガス排出装置(44)とを
配置し、ブローバイガス排出装置(44)のロッカアームカ
バー(42)内との連通口(45)に対向させて、ヘッドブロッ
ク(46)の上壁(47)にエンジン潤滑油のオイル溜り部(48)
を形成するとともに、その連通口(45)を細く絞った形状
に形成し、ブローバイガス排出装置(44)から吸い込まれ
る外気を高速にしてオイル溜り部(48)にぶつけることに
より、外気に混入しているダストを潤滑油で除去し、潤
滑油に混入したダストをエンジンのオイルフィルターで
捕捉するようにしたものである。

ところがこの場合にはブローバイガス排出装置(44)に形
成した連通口(45)の下端部とオイル溜り部(48)に溜まっ
ている潤滑油の油面との間に隙間を開けておかなければ
クランクケース内の圧力を安定させるという機能を果た
せなくなることから、連通口(45)の下端部とオイル溜り
部(48)に溜まっている潤滑油の油面との間に隙間が形成
されている。このため、クランクケース内の負圧力によ
って吸い込まれる外気の流れが変化し、外気が直接吸気
系統に流れ込み初期の目的を十分に達成しないことがあ
った。

《問題点を解決するための手段》 本考案は、上記の問題点を解決して吸い込まれた外気が
直接吸気系統に流れ込まないようにしたもので、そのた
めに、ブローバイガス排出装置内に油分離手段を設け、
ブローバイガス排出装置とエンジンとを連通させるブロ
ーバイガス排出路にブローバイガスの排出を許す逆止弁
を配置するとともに、ブローバイガス排出装置とエンジ
ンのクランク室とをオイル戻し路で連通させたことを特
徴とするものである。

《作用》 本考案では、ブローバイガス排出装置内に油分離手段を
設け、ブローバイガス排出装置とエンジンとを連通させ
るブローバイガス排出路にブローバイガスの排出を許す
逆止弁を配置するとともに、ブローバイガス排出装置と
エンジンのクランク室とをオイル戻し路で連通させてい
るので、クランク室内が負圧状態にある場合には、逆止
弁でブローバイガス排出路を閉塞するため、外気はブレ
ザ装置側には直接流れ込むことができない。また、クラ
ンク室の負圧が高くなった場合には、外気がオイル戻し
路を通ってクランク室に流れ込むことになるから外気に
混入しているダストはオイル戻し路を流下する間に潤滑
油と接触し、またクランク室内でオイルミストやオイル
パン内の潤滑油と接触して、潤滑油で除去されることに
なる。これにより、外気が直接吸気系統に流れ込むこと
はなくなる。

《実施例》 第１図は本考案の一実施例を示す縦断正面図、第２図は
要部の拡大図である。

図において、(1)は水冷縦型直列多気筒ディーゼルエン
ジンを示し、このエンジン(1)の主燃焼室(2)からクラン
ク室(3)に漏洩したブローバイガスは、クランク室(3)、
動弁カム室(4)、タペット孔(5)及びロッカアーム室(6)
を順に通過するうちに、そこに浮遊する霧状の潤滑油を
含み、ブレザ装置(7)でその油分の殆どを分離除去して
から、連通路(8)を通って吸気マニホールド(9)に吸い込
まれ、主燃焼室(2)で燃焼されて無害化されてから、大
気に排出されるようになっている。

ブレザ装置(7)はエンジン(1)のロッカアームカバー(10)
における上壁の左端寄り部に設けられており、そのブレ
ザケース(11)はロッカアームカバー(10)から上向きに膨
出形成されている。ブレザケース(11)内のブレザ室(12)
の下端部に入口(13)が、防油板(14)を介してロッカアー
ム室(6)に連通する状態に明けられている。ブレザ室(1
2)内の下半部にはスチールウール層(15)が、その上半部
には通気口（図示略）を明けた門形の防油板(16)が設け
てあり、スチールウール層(15)と門形の防油板(16)とで
油分離手段(17)が構成されている。ブレザ装置(7)の出
口(18)は、門形の防油板(16)の左外方でブレザケース(1
1)に開口しており、連通路(8)を介して吸気マニホール
ド(9)に連通されている。

ブローバイガス排出装置(19)は第２図に示すように構成
されている。

即ち、ブローバイガス排出ケース(20)内の排出室(21)に
スチールウール層で構成した油分離手段(22)が収容され
ており、ブローバイガス排出ケース(20)の底壁に開設し
たブローバイガス流入口(23)に接続されているブローバ
イガス排出路(24)で排出室(21)とロッカアーム室(6)と
が連通されている。そして、このブローバイガス流入口
(23)部分には逆止弁(25)が配置してあり、この逆止弁(2
5)はブローバイガスがロッカアーム室(6)からブローバ
イガス排出室(21)に流れ込むのは許容するが、ブローバ
イガス排出室(21)からロッカアーム室(6)に逆流するの
を阻止するように作用する。

ブローバイガス排出ケース(20)の上壁には大気開放口(2
6)が開口しており、ブローバイガス排出室(21)内に流れ
込んだブローバイガスが油分離手段(22)を通過する間に
油を分離して、油分を含まないブローバイガスが大気に
放出されるように構成してある。そして、油分離手段(2
2)で取り除かれた油分は、ブローバイガス排出ケース(2
0)の底壁に開口しているオイル戻し口(27)からオイル戻
し路(28)でクランク室(3)内のオイルパン部分(29)に戻
されるように構成してある。

ブローバイガス排出装置このように構成すると、連通路
(8)が閉塞したり、ブローバイガスの漏洩量が過多にな
ると、クランク室(3)の内圧が異常上昇し、ブローバイ
ガスは逆止弁(25)を圧し開けてブローバイガス排出装置
(19)から大気に放出される。

一方連通路(8)の閉塞もブローバイガス漏洩の過多も生
じない正常運転時には、ロッカアーム室(6)内のブロー
バイガスに吸気マニホールド(9)からの吸引力が作用し
ているから、ロッカアーム室(6)内の圧力は負圧状態と
なり、ブローバイガスがブローバイガス排出装置(19)か
ら放出されることはない。また、クランク室(3)内の圧
力が一定圧力以上の負圧状態になると、燃焼室からのブ
ローバイガス漏洩量が増加することになるから、クラン
ク室(3)内の負圧力でブローバイガス排出装置(19)を通
して外気をクランク室(3)内に取り入れることになる。
このとき、ブローバイガス排出装置(19)内の油分離手段
(22)で除去された潤滑油を吸い戻すことになる。従って
外気は吸い戻される潤滑油と接触するから外気中に含ま
れているダストは潤滑油で除去されることになり、ダス
トを含んだ外気が吸気系統に直接取り込まれることはな
い。潤滑油で除去されたダストは潤滑油のオイルフィル
ターで捕捉される。

なお、オイル戻し路(28)を第１図の仮想線で示すように
クランク室(3)の上部に連通するようにしてもよい。こ
の場合には、吸入外気に含まれているダストはクランク
室(3)に充満しているオイルミストと接触して取り除か
れることになる。

《効果》 本考案では、ブローバイガス排出装置内に油分離手段を
設け、ブローバイガス排出装置とエンジンとを連通させ
るブローバイガス排出路にブローバイガスの排出を許す
逆止弁を配置するとともに、ブローバイガス排出装置と
エンジンのクランク室とをオイル戻し路で連通させてい
るので、クランク室内が負圧状態にある場合には、逆止
弁でブローバイガス排出路を閉塞することができ、外気
は直接ブレザ装置側に流れ込むことことがなくなる。そ
して、クランク室の圧力が一定圧以下になると外気がオ
イル戻し路からクランク室に流れ込むことになる。これ
により、外気が直接吸気系統に流れ込むことはなくな
り、ピストンリングやシリンダライナが異常摩耗するこ
とを防止することができる。

また、外気に混入しているダストはオイル戻し路を流下
する間に潤滑油と接触し、またクランク室内でオイルミ
ストやオイルパン内の潤滑油と接触して潤滑油で除去さ
れ、潤滑油に混入したダストは潤滑油のオイルフィルタ
ーで捕捉されるから、このダストが潤滑部に影響を与え
ることもない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す縦断正面図、第２図は
その要部の拡大図、第３図は先考案例の要部断面図であ
る。 １……エンジン、２……燃焼室、３……(1)のクランク
室、７……ブレザ装置、８……連通路、９……吸気系
統、12……ブレザ室、18……(13)の出口、19……ブロー
バイガス排出装置、22……油分離手段、24……ブローバ
イガス排出路、25……逆止弁、28……オイル戻し路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジン(1)のブローバイガスに混合した
   油分を分離除去するブレザ装置(7)をエンジン(1)に付設
   し、ブレザ装置(7)のブレザ室(12)の入口(14)をエンジ
   ン(1)のクランク室(3)に連通し、ブレザ室(13)の出口(1
   8)を燃焼室(2)の吸気系統(9)に連通路(8)を介して連通
   し、これにより燃焼室(2)からクランク室(3)に漏洩した
   ブローバイガスを、ブレザ装置(7)で油分離してから、
   連通路(8)及び吸気系統(9)を経て燃焼室(2)に還元する
   ように構成するとともに、クランク室(3)の内圧の異常
   上昇時にクランク室(3)のブローバイガスを大気中に排
   出するブローバイガス排出装置(19)をエンジン(1)に付
   設したものにおいて、 ブローバイガス排出装置(19)内に油分離手段(22)を設
   け、ブローバイガス排出装置(19)とエンジン(1)とを連
   通させるブローバイガス排出路(24)にブローバイガスの
   排出を許す逆止弁(25)を配置するとともに、ブローバイ
   ガス排出装置(19)とエンジン(1)のクランク室(3)とをオ
   イル戻し路(28)で連通させたことを特徴とするエンジン
   のブローバイガス燃焼室還元装置