JPH059703A - チタン材の表面硬化処理方法 - Google Patents

チタン材の表面硬化処理方法

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博義 末永
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廣茂 大屋
Tsunenori Itou
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Abstract

(57)【要約】 【構成】チタン材をCO2 ガスを含む雰囲気で加熱処理
してチタン材の表面に硬化層を形成する。 【効果】表面の荒れを伴うことなく、簡便に、深い硬化
層が得られるチタン材の表面硬化処理方法が提供され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はチタン材の表面硬化処
理方法に関する。
【0002】
【従来技術】チタン材に適用されている表面硬化処理方
法には,イオンプレーティングに代表されるPVD(Ph
ysical Vapor Deposition )法やCVD(Chmical Vapo
r Deposition)法、あるいは真空加熱炉を用いた窒素ガ
スによる窒化処理方法などがある。これら従来方法の共
通した欠点として(1)バッチ処理方法に限定される、
(2)処理時間が長い割りに表面から深い硬化層が得ら
れない、(3)設備費が高価なうえに工数がかかる、
(4)以上の結果として表面硬化処理費用が非常に高価
である、などが挙げられる。
【0003】また硬質Crメッキ法などの適用も考えら
れるが、これをチタン材料に適用した場合には硬化層が
薄く、耐久性や安定性に問題を有している。
【0004】近年、上記の問題を解決すべく、種々の表
面硬化処理方法が提案されているが、いまだ十分な効果
が得られていないのが現状である。
【0005】例えば特開昭61−284559号公報に
は、表面酸化皮膜を形成させた後、真空中又は不活性ガ
ス中でチタン材を加熱し、表面酸化皮膜を消失させると
いう方法が開示されている。しかし、この方法では表面
は金属光沢を示すものの、一度表面に酸化皮膜を形成さ
せるため、表面がどうしても荒れてしまうという欠点が
ある。
【0006】また特開昭61−69956号公報には、
2 −O2 −N2 雰囲気中でチタン材を加熱することに
より表面硬化層を得る方法が提案されている。しかし、
この方法では、鉄鋼材料への浸炭処理方法(特開昭63
−72821号公報参照)をチタン材に適用する場合と
同様、チタン中に水素が含有されてしまい、後工程の脱
水素が必要不可欠になり、工程が複雑化するという欠点
を有している。
【0007】また、本願発明者らはすでにCaCO3
末を用いたパックプロセスによるチタン材の表面硬化処
理方法を提案している(特開昭63−195258)。
この方法は上記従来方法に比較して短時間処理により非
常に高い表面硬度と深い硬化層が得られる利点を有して
いる。しかしながら、(1)表面硬化処理温度がCaC
O3 粉末の分解温度である898℃以上に限定される、
(2)CaAO3 粉末をパックするために工数がかか
る、などの欠点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明はかかる事情
に鑑みてなされたものであって、表面の荒れを伴うこと
なく、簡便に、深い硬化層が得られるチタン材の表面硬
化処理方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】この発明は、上
記課題を解決するために、チタン材をCO2 ガスを含む
雰囲気で加熱処理することを特徴とするチタン材の表面
硬化処理方法を提供する。これにより、酸素及び炭素が
固溶した深い表面硬化層を得ることができる。
【0010】この場合のCO2 ガスはチタン材の表面で
還元され酸素、炭素源として働く。そして、この酸素、
炭素はいずれもチタン材に対し顕著な固溶硬化能を示
す。酸素及び炭素は、チタン材のα域、β域の両相にお
いて固溶度が十分高く、また両元素とも侵入型元素のた
めに拡散速度が著しく速いため、α域、β域のいずれの
温度域においても従来法と比較して著しく短時間の処理
により高い表面硬度と深い硬化層が得られることとな
る。
【0011】この場合に、加熱処理雰囲気は、CO2
スと、Ar,He及びN2 のうちの1種以上を含むガス
との混合ガス雰囲気であることが好ましい。Ar,H
e,N2 ガスはチタン材に対し不活性であるため、CO
2 ガスの分圧を下げ、CO2 ガスによるチタン材の過剰
酸化を防止し、表面荒れを防ぐ効果がある。これらの混
合ガスの成分組成は表面硬化特性及び表面荒れに影響は
及ぼさず、CO2 ガス分圧のみが表面硬化特性及び表面
荒れに影響を及ぼす。このため表面硬化処理後の表面粗
さRmax を、ショットなどの処理のみで使用可能な10
μm以下とするには、CO2 分圧を一定範囲にコントロ
−ルすることが必要であり、この値を1/2以下とする
ことが好ましい。
【0012】加熱はチタン材とCO2 ガスとを活性化
し、これらの間の反応を促進するために行う。従って、
高温度であるほど、CO2 ガスの分解が速く生じ、併せ
て酸素、炭素のチタン材中の拡散速度も速くなるため、
深い硬化層を得ることができる。実用的には10時間以
内の硬化処理でHv500以上の硬化層を深さ5μm以
上で形成することが好ましく、このような観点からは加
熱処理温度が700℃以上であることが要求される。
【0013】本発明の熱処理に際しては、気密性の高い
一般の熱処理炉(ピット炉や管状炉)、又は鋼の浸炭や
窒化処理に用いられている工業炉を利用することができ
るが、これらに限定されず種々の炉を使用することがで
きる。
【0014】加熱処理の実例を上げると、上述したピッ
ト炉、管状炉、又は工業炉の中にチタン材を挿入後、昇
温前にまずArやHe,N2 などのチタン材に対し不活
性なガスを連続的に吹き込んで炉内を置換した後、一定
のCO2 ガス分圧に制御された混合ガスに切り換え、昇
温、加熱硬化処理を行う。そして、加熱硬化処理後、処
理材を炉冷又は急冷する。この昇温、冷却過程や表面硬
化処理中(混合ガス中の不純物としての酸素)に過剰の
酸素が存在する場合、酸化により表面荒れが発生するこ
ととなり、したがって表面硬化処理後の表面粗さRmax
を、表面硬化処理後そのまま使用可能な5μm以下とす
るには、500℃以上の温度域での酸素分圧を1/10
以下とすることが好ましい。
【0015】上述したように、本発明におけるチタン材
の表面硬化の機構は、雰囲気ガス中のCO2 ガスがチタ
ン表面で反応して還元され、酸素と炭素とに分解し、こ
れらがチタン表面から内部に拡散し、これらが侵入型元
素であることから固溶強化によりチタン材の表面が硬化
することに基づいている。従って、処理温度の制約がな
く、前述したパックプロセスでは不可能であった898
℃以下での処理が可能である。特に純チタンの表面硬化
処理では結晶粒成長の抑制の観点から低温処理が望まし
いが、本法によってこれが可能となる。
【0016】なお、本発明におけるチタン材は、純チタ
ン、各種チタン合金、各種チタン基金属間化合物を総称
するものであり、このように材料による制限がないこと
も本発明の特徴である。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0018】実験に用いたチタン材はCP2種純チタン
とTi−6%Al−4%Vチタン合金であり、1mm板
厚、幅30mm、長さ50mmの板状サンプルの表面を
研削し、表面粗さRmax を2μm以下として供試材とし
た。表面硬化処理は管状炉又はピット炉を用いて行っ
た。いずれの炉もCO2 、Ar,He,N2 ,O2 の混
合ガスを使用することが可能であり、付属のガス分析装
置によりCO2 ガス等の濃度を測定した。
【0019】先ず、Ti−6%Al−4%V合金を80
0℃で3時間、CO2 +Ar雰囲気(CO2 分圧1/
4)で加熱し、表面硬化処理した場合の試料表面から板
厚方向の酸素と炭素の濃度分布をX線マイクロアナライ
ザ−で調査した。その結果を図1に示す。この図に示す
ように、表面部分において両元素とも著しく濃度が高く
なっており、表面側からこれらの元素が同時に侵入して
いることが確認された。
【0020】次に、純チタン(Cp2種チタン)をCO
2 分圧1/10及び1/20で、温度を800℃、95
0℃にて20分間乃至3時間加熱処理した際における、
表面から深さ方向の硬度分布(荷重5gの微小硬度計を
使用)を測定した。比較のため、従来の真空加熱炉にお
けるガス窒化法(800℃、30時間)を用いた場合に
ついても測定した。その結果を図2に示す。この図に示
すように、従来の真空加熱炉によるガス窒化法に比較し
て本発明の方法では極めて短時間の処理で、より深い硬
化層が得られていることが確認された。
【0021】図3は、同様の硬度分布を、Ti−6%A
l−4%V合金を本発明法により処理した場合について
示すものであり、この場合にも純チタンの場合と同様、
短時間処理で深い硬化層が得られることを示している。
【0022】次に、処理条件を種々変化させて実験を行
った結果について説明する。実験に用いたガスはC
2 、Ar,He,N2 ,O2 であり、CO2 ガス分圧
を1/20〜2/3、処理温度を300℃〜1000
℃、混合ガス中のO2 分圧を1/20〜1/5と変化さ
せた。このような処理材について、荷重5gの微小硬度
計による深さ方向の硬度分布、及び表面粗さ計による表
面粗さRmax を評価した。
【0023】(実験1)混合ガス中のO2 分圧を1/1
0とした条件下でCO2 ガス分圧を1/2に設定し、3
00℃〜1000℃で10時間加熱処理後、炉冷してサ
ンプルを作成した。その後、これらサンプルの深さ方向
の硬度分布を測定した。その結果を表1に示す。表1
中、硬化層の欄はHv500以上の硬化層が5μm以上
形成されたか否かを示すものであり、硬化層がこのよう
な条件を満足するものを○、満足しないものを×で示
す。
【0024】
【表1】
【0025】この表に示すように、700℃以上での加
熱処理によって、Hv500以上の硬化層が5μm以上
形成されることが確認された。
【0026】(実験2)混合ガス中のO2 分圧を1/1
0とした条件下でCO2 ガス分圧を1/20〜2/3と
変化させ、800℃で3時間加熱処理後、炉冷してサン
プルを作成した。その後、これらサンプルの硬度分布、
表面粗さを測定した。その結果を表2に示す。表2中、
硬化層の欄は、実験1と同様、Hv500以上の硬化層
が5μm以上形成されたか否かを示すものであり、表面
粗さの欄は、Rmax が10μm以下か否かを示すもので
あって、これを満たすものを○、満たさないものを×で
示す。
【0027】
【表2】
【0028】この表に示すように、CO2 分圧が1/2
0でも十分な硬化層が形成され、CO2 分圧が1/20
でも硬化処理が可能であることが確認された。また、C
2 分圧が1/2を超えた場合、表面粗さが10μm以
上と劣化することが確認された。
【0029】(実験3)混合ガスの酸素分圧を500℃
以上の温度範囲で1/5〜1/20と変化させ、CO2
分圧を1/2に設定して800℃で3時間加熱処理後、
炉冷してサンプルを作成した。その後、これらサンプル
の表面粗さを測定した。その結果を表3に示す。表3
中、表面粗さの欄は、Rmax が5μm以下か否かを示す
ものであって、これを満たすものを○、満たさないもの
を×で示す。
【0030】
【表3】
【0031】この表に示すように、500℃以上の温度
における混合ガスの酸素分圧が1/10以下の場合、R
max が5μm以下と極めて良好な表面状態が得られるこ
とが確認された。
【0032】
【発明の効果】この発明によれば、表面の荒れを伴うこ
となく、簡便に、深い硬化層が得られるチタン材の表面
硬化処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の方法を行った場合の試料表面から厚
さ方向の酸素及び炭素の濃度分布を示す図。
【図2】この発明の方法により処理された純チタン試料
及び比較例の試料における表面から深さ方向の硬度分布
を示す図。
【図3】この発明の方法により処理されたTi−6%A
l−4%V合金試料における表面から深さ方向の硬度分
布を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大屋 廣茂 神奈川県厚木市上依知字上ノ原3012番地3 大屋熱処理株式会社内 (72)発明者 伊藤 経教 神奈川県厚木市上依知字上ノ原3012番地3 大屋熱処理株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン材をCO2 ガスを含む雰囲気で加
    熱処理することを特徴とするチタン材の表面硬化処理方
    法。
  2. 【請求項2】 加熱処理雰囲気が、CO2 ガスと、A
    r,He及びN2 のうちの1種以上を含むガスとの混合
    ガス雰囲気であることを特徴とする請求項1に記載のチ
    タン材の表面硬化処理方法。
  3. 【請求項3】 加熱処理温度が700℃以上であること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のチタン材の表面硬
    化処理方法。
  4. 【請求項4】 CO2 ガス分圧が1/2以下であること
    を特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載のチタ
    ン材の表面硬化処理方法。
  5. 【請求項5】 500℃以上の温度域での酸素分圧が1
    /10以下であることを特徴とする請求項1乃至3いず
    れか1項記載のチタン材の表面硬化処理方法。
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