JPH0565537A - 高い透磁率を有する高珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

高い透磁率を有する高珪素鋼板の製造方法

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JPH0565537A
JPH0565537A JP3258373A JP25837391A JPH0565537A JP H0565537 A JPH0565537 A JP H0565537A JP 3258373 A JP3258373 A JP 3258373A JP 25837391 A JP25837391 A JP 25837391A JP H0565537 A JPH0565537 A JP H0565537A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Si拡散浸透処理による高透磁率の高珪素鋼
板の製造方法を提供することにある。 【構成】 Si:4.0wt%以下、Sol.Al:
0.1wt%以下を含有する鋼を熱延、冷延した後、S
i拡散浸透処理することによりSi:4.0wt%以上
の高珪素鋼板を製造する方法において、素材の熱延仕上
温度を700℃以下とすることにより板厚方向熱延組織
の70%以上を未再結晶組織である層状組織とする。ま
た好ましくは、浸珪処理中、鋼板表層のSi濃度が常に
14.3wt%以下となるようなSi拡散浸透処理を実
施する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はSiの拡散浸透処理法に
よる高珪素鋼板の製造方法であって、高い透磁率を有す
る高珪素鋼板を製造するための方法に関する。
【0002】
【従来技術】珪素鋼板は優れた軟磁気特性を持つため、
トランスやモーターのコア材として広く用いられてい
る。この種の珪素鋼板はSi含有量が増すほど鉄損が低
減され、Siが6.5wt%では磁歪が0となり、最大
透磁率もピークとなるなど、優れた磁気特性を呈するこ
とが知られている。しかし、鋼中のSi含有量が4.0
wt%を超えると延性が急激に低下するため、通常の圧
延による製造は困難である。このような問題を生じない
高珪素鋼板の製造方法として、Siの拡散浸透処理法に
よる製造方法が知られている。この方法は低珪素鋼を溶
製して圧延により薄板化した後、表面からSiを浸透さ
せることにより高珪素鋼板を製造するもので、この方法
によれば加工性の問題を生じることなくSi含有量4.
0wt%以上の高珪素鋼板を得ることができる。
【0003】この拡散浸透処理法による高珪素鋼板の製
造は、一般に、普通鋼板または低珪素鋼板(通常Si:
4.0wt%以下)に対して、SiCl4等のSi化合
物を含む無酸化性ガス雰囲気中でSiの浸透処理(浸珪
処理)を施して、鋼板の表面からSiを浸透させ、次い
でSi化合物を含まない無酸化性ガス雰囲気中で鋼板に
対して拡散熱処理を施し、浸透させたSiを鋼板中に拡
散させ、Siを均一に含有させた高珪素鋼板を得るもの
である。このような拡散浸透処理法に関して、例えば、
特公昭45−21181号や特開昭62−227078
号等が提案されている。
【0004】従来、この種の製造方法に関しては、鋼板
を連続的に処理する場合の諸条件が十分検討されておら
ず、処理時間が30分以上と長いことや、処理温度が極
めて高くエッジ部が溶解するおそれがあるなど、処理条
件が事実上連続ラインには適用できず、鋼板の連続ライ
ンでの安定製造が期待できないという問題があった。こ
れに対して上述した特開昭62−227078号等にお
いては、鋼板を加熱しSiCl4を含む無酸化性ガス雰
囲気中で連続的に浸珪処理した後、SiCl4を含まな
い無酸化性ガス雰囲気中で拡散熱処理してSiを均一化
し、冷却後コイル状に巻き取る一連のプロセスを、連続
ライン化して珪素鋼板を効率よく製造する方法を提案し
ており、連続ラインにおいて浸珪処理する際の反応ガス
濃度、反応時間、均熱拡散処理時間および処理温度等を
詳細に検討且つ特定し、連続ラインでの拡散浸透処理に
よる高珪素鋼板の製造を可能ならしめたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従
来の技術では、拡散浸透条件および方法について検討が
なされているものの、磁気特性を支配する素材の製造条
件およびその組織等については何ら検討がなされていな
い。本発明者らの検討によれば、この種の製造法により
製造される鋼板の透磁率を支配する組織(集合組織、結
晶粒径)は熱延−冷延条件に大きく支配され、透磁率を
改善するためには素材鋼板の圧延条件を適正化し、これ
によって素材鋼板の組織を十分に適正化しておくことが
不可欠であることが判明した。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記のような観点から本
発明者らは、Si拡散浸透処理法における素材鋼板の熱
延組織とSi拡散浸透処理後の集合組織および結晶粒径
の関係について検討を行った。この結果、拡散浸透処理
後の最終製品の高い透磁率を得るために有効な集合組織
や結晶粒径、つまり磁化容易軸である(100)面の安
定化や結晶粒径の粗大化を図るためには、素材鋼板の熱
延仕上温度を700℃以下とし、板厚方向熱延組織の7
0%以上を未再結晶組織である層状組織とすることが有
効であることを見出した。この場合、巻取温度が700
℃以下であれば磁気特性に有意差は認められなかった。
また、処理温度1023〜1250℃の範囲で行った浸
珪・拡散熱処理後の組織評価により、素材段階で得られ
た組織が浸珪・拡散熱処理後も優勢的に形成されている
ことが確認できた。本発明はこのような知見に基づきな
されたもので、その構成は以下の通りである。
【0007】(1)Si:4.0wt%以下、Sol.
Al:0.1wt%以下を含有する鋼を熱間圧延および
冷間圧延して薄板となし、この薄板にその表面からSi
を浸透させる浸珪処理を施し、次いでSiを板厚方向に
拡散させることによりSi:4.0wt%以上の高珪素
鋼板を製造する方法において、素材の熱延仕上温度を7
00℃以下とすることにより板厚方向熱延組織の70%
以上を未再結晶組織である層状組織とし、冷間圧延によ
り所定板厚とした後、浸珪処理およびSiの拡散熱処理
を施すことを特徴とする、高い透磁率を有する高珪素鋼
板の製造方法。
【0008】(2)浸珪処理中、鋼板表層のSi濃度が
常に14.3wt%以下となるよう処理することを特徴
とする上記(1)に記載の高い透磁率を有する高珪素鋼
板の製造方法。
【0009】
【作用】Si拡散浸透処理法による高珪素鋼板の製造に
おいて、素材鋼板の熱延条件と熱延組織との関係、さら
に、これらが最終製品の磁気特性に及ぼす影響を調べ
た。まず、Si:3wt%、Sol.Al:110pp
mの成分のスラブを1150℃に加熱し、仕上温度:6
00〜860℃、巻取温度:500〜700℃で板厚約
2mmに熱間圧延し、熱延仕上温度と熱延板組織との関
係について調べた。この結果、仕上温度700℃以下の
熱延板組織では板厚方向の70%以上が層状組織となる
ことが判った。図1の写真は、仕上温度がそれぞれ65
0℃、700℃、800℃、860℃の各熱延板の板厚
方向熱延組織を示したもので、この板厚方向熱延組織
は、仕上温度700℃以下の場合に70%以上が層状組
織となっている。
【0010】次いで、上記熱延板を板厚0.35mmま
で冷間圧延した後、浸珪処理−拡散熱処理を施して平均
Si量が6.4〜6.6wt%の高珪素鋼板を製造し、
それらの透磁率と素材鋼板の熱延仕上温度との関係を調
べた。図2はその結果を示すもので、素材鋼板の熱延仕
上温度が700℃以下のものが特に高い透磁率を示して
いる。この理由は、後述する実施例1に示されるよう
に、熱延仕上温度700℃以下では熱延板組織の大部分
が上述したような層状組織となるため粒が粗大化し、冷
延−Si拡散浸透処理後の(100)面強度が強くなる
ためと考えられる。熱延仕上温度が700℃を超えるも
のでは、粒の粗大化は認められず、しかも(111)面
および(211)面強度が強くなるため、優れた磁気特
性が得られないものと考えられる。
【0011】以上の理由から、本発明では素材鋼板の熱
延仕上温度を700℃以下とすることで、板厚方向熱延
組織の70%以上を層状組織とすることをその条件とす
る。
【0012】また、Siを浸珪処理により鋼板に富化し
ていくと、表層にはSi濃度が約14.3wt%のFe
3Si層が形成される。このように鋼板表層にFe3Si
層が形成されると集合組織は(100)面強度が減少す
る傾向があり、Fe3Si層が形成されない、すなわ
ち、浸珪処理中常に表層Si濃度が14.3wt%未満
である材料に較べ磁気特性が劣ることになる。したがっ
て、浸珪・拡散熱処理後の(100)面を安定化させる
ためには、浸珪処理中の鋼板表層Si濃度を常に14.
3wt%未満となるよう処理することが好ましい。この
ような処理は浸珪処理速度を制御すること、具体的に
は、浸珪処理速度を比較的小さくし、急速浸珪処理を避
けることにより実現できる。
【0013】本発明において、浸珪処理前の素材となる
鋼板は、Si:4wt%以下、Sol.Al:0.1w
t%以下の鋼板であって、これには普通鋼板およびS
i:4wt%以下の無方向性または方向性珪素鋼板が含
まれる。本発明は圧延による薄板化が可能なSi:4w
t%以下の鋼板を素材鋼板とし、これに浸珪処理を施す
ことにより高珪素鋼板を得ることを基本とする技術であ
り、このため素材鋼板のSi量は4.0wt%をその上
限とする。また、鋼板中のAlは浸珪処理時に鋼板中に
濃化、偏析して磁気特性に悪影響を及ぼすため、その上
限を厳密に規定する必要がある。
【0014】Alの濃化、偏析の影響を調べるため、S
ol.Al濃度の異なる鋼板を浸珪処理し、板厚方向平
均Si量が6.4〜6.6wt%で、且つ磁気特性に悪
影響を及ぼす鋼板断面内の残量ボイド数が鋼板幅方向1
mm当り5個以下である高珪素鋼板を製造した。このよ
うな鋼板について、Alの濃化、偏析の発生状況を調べ
た結果、大きく分けて、鋼板のSol.Al濃度が10
0ppm以下、0.1%以下、0.1%超の各場合で
は、Alの濃化、偏析状況に差が見られた。
【0015】すなわち、これら鋼板のIMAによるイオ
ン撮像写真によれば、Sol.Al濃度が100ppm
以下では、Alは鋼板内にまばらに且つ平均的に点在
し、Alの濃化、偏析は全く見られなかった。一方、S
ol.Al濃度が0.1wt%の鋼板では、一直線上に
Alが点在しはじめ、濃化傾向が認められる。但し、極
端な濃化、偏析には至っていない。これに対し、So
l.Al濃度が0.3%の鋼板では、Alは一直線上に
つながって濃化しており、濃化、偏析部分が鋼板内でか
なりの面積を占めている。
【0016】この試験結果に基づくAlの濃化、偏析と
磁気特性との関係から、優れた磁気特性の高珪素鋼板を
得るためには、Alが鋼板内に点在した程度の均質さを
持たねばならず、鋼板のSol.Al濃度は0.1%以
下としなければならないことが判った。特に、Alがイ
オン像に写らない程度の、若しくは鋼板内にまばらに且
つ平均的に点在する程度のより均一で優れた磁気特性の
高珪素鋼板を得るためには、Sol.Al濃度は100
ppm以下とする必要がある。
【0017】従来の珪素鋼板では、Alの電気抵抗を高
める効果と展延性の改善効果とを利用して、Siの一部
をAlで置き換える方法を採っているが、本発明では浸
珪処理により平均Si含有量を容易に6.0〜7.0w
t%とできるため、磁性改善のためにAlを添加する必
要はなく、逆に上述した観点から、Sol.Al:0.
1wt%以下、望ましくは100ppm以下とする。
【0018】本発明において、素材鋼板中のSiおよび
Al以外の不純物成分は特に限定されるものではない
が、優れた磁気特性を得るために以下のように規定する
ことが好ましい。
【0019】まず、非金属元素について説明すると、 C:Cは初透磁率、最大透磁率を低下させ、Hcを増
し、鉄損を増大させる。この影響は、図10に示すよう
に0.01wt%を超えると顕著になることが知られて
おり、したがって、Cは0.01wt%以下とすること
が好ましい。但し、結晶方位改善を目的として製鋼段階
でCを0.01wt%を超えて含有させ、圧延すること
も可能であるが、この場合には、時効および特性劣化を
防止するため脱炭焼鈍を実施し、Cを0.01wt%以
下とすることが好ましい。すなわち、C濃度の調整は溶
製段階で行ってもよく、また、脱炭焼鈍を実施すること
により行なってもよい。
【0020】O:Oは鉄損を高め、SiO2のようなコ
ロイド状微粒子として存在する場合には、磁気特性を著
しく劣化させる元素として知られている。また、OはC
とどの程度共存するかによっても磁気特性を変化させ
る。特に、図11に示すようにO含有量とC含有量とが
ほぼ同等の場合、鉄損値が最小になることも知られてお
り、上記C含有量の適正範囲と同様に、O含有量も0.
01wt%以下とすることが好ましい。
【0021】N、S:共に時効の原因となるため極力少
なくすることが好ましく、これらの成分もそれぞれ0.
01wt%以下とすることが好ましい。 P:Pは酸素による磁性劣化を軽減し、鉄損を減少させ
る作用があるが、多量に添加すると、熱間での加工性を
劣化させるという問題があり、その上限を0.02wt
%とすることが好ましい。 H:Hは鋼板を著しく脆くさせるため、高圧下でHを含
有させる等、積極的な含有は避けるべきである(通常p
pmレベル以下)。以上のように非金属元素について
は、C、O、N、S等を極力低く抑え、且つCとOの比
率を適正化することが好ましい。
【0022】次に金属元素について説明すると、 Mn:熱間圧延時の展延性の改善と、脱硫作用および規
則−不規則変態における磁性改善効果を考慮すると、M
nは0.5wt%以下の範囲で添加することが好まし
い。 Ca:Caは多量に含有すると透磁率を低下させるた
め、0.3wt%以下とすることが好ましい。
【0023】V:若干のVを添加することにより、Hc
が改善されることが知られている。すなわち、Vは0.
05wt%程度添加することにより、結晶粒の発達が促
進され、磁性が改善される。このため、Vは0.1wt
%を上限として添加することができる。 Ti:0.05wt%程度添加することでVと同様の効
果を期待でき、このため、0.1wt%を上限として添
加することができる。Be、As:若干の磁気特性改善
効果が期待でき、それぞれ0.1wt%を上限として添
加することができる。
【0024】Cu:0.7wt%程度までは、磁性を大
きく劣化させることはないが、0.7wt%を超えて含
有すると鉄損が増大する。このため、Cuは0.7wt
%以下、好ましくは0.1wt%以下とすることが望ま
しい。 Cr:鉄損を増大させる傾向があり、0.03wt%以
下とすることが好ましい。 Ni:磁気特性を著しく悪化させるため、極力低減させ
ることが好ましく、0.01wt%以下とすることが好
ましい。
【0025】なお、本発明では冷間圧延率については特
に限定はなく、60〜93%の広い範囲において同様の
効果が得られる。
【0026】
【実施例】
〔実施例1〕表1に示す成分組成の3%Si鋼を真空溶
解してスラブとし、これを熱延仕上温度:600〜86
0℃、巻取温度:550℃〜700℃で熱間圧延して板
厚約2mmの熱延板とし、次いで、板厚0.35mmま
で冷間圧延した後、N2またはArガス雰囲気中で浸珪
・拡散熱処理し、平均Si量が6.4〜6.6wt%の
高珪素鋼板を製造した。なお、本実施例では、浸珪・拡
散熱処理はN2またはArの雰囲気にかかわらず同等の
結果が得られたため、以下はAr雰囲気中にて浸珪・拡
散熱処理を実施した場合を代表して示す。
【0027】図1に、熱延仕上温度がそれぞれ650
℃、700℃、800℃、860℃である各熱延板の板
厚方向熱延組織の顕微鏡拡大写真を示す。これによれば
熱延仕上温度が860℃の熱延板では、板厚方向の全断
面が再結晶組織となり、また、熱延仕上温度が800℃
の熱延板でも30%を超える部分(表層部)に再結晶組
織が認められる。これに対し、仕上温度700℃以下の
熱延板では、未再結晶組織である層状組織が70%以上
を占めている。図2は上記浸珪・拡散熱処理後の鋼板
(Si量:6.4〜6.6wt%)の磁気特性をそれら
の熱延仕上温度との関係で示したもので、熱延仕上温度
を700℃以下とし、層状組織が70%以上を占める素
材鋼板を用いた場合には高い透磁率を有する高珪素鋼板
が得られている。
【0028】また、図3に浸珪・拡散熱処理後の鋼板の
平均結晶粒径と素材鋼板の熱延仕上温度との関係を、図
4には熱延仕上げ温度が650℃、860℃の各鋼板の
浸珪・拡散熱処理後の集合組織を示す。なお、図4に示
されるP値とは、X線回折を用いた集合組織の評価法に
よる評価指数であり、低次の結晶面のピーク(7個のピ
ーク)を代表的な結晶方位と仮定して統計的に結晶面の
分布を示すものである。概念的に述べれば、粉末試料を
全くランダムな集合組織をもつ標準試料として、それに
より面強度を規格化する。この場合には、各面方位は7
面ともそれぞれ1という値をとる。これに対して、異方
性のある集合組織ではその面方位は1以上の値をとるこ
とになる。極端な場合、材料がある面方位のみをとれ
ば、その方位のみ7という値をとり、他の面はすべて0
をとることになる。図4は、このような評価法を用い
て、集合組織を評価したものである。
【0029】これらによれば、層状組織が70%以上を
占める素材鋼板を用いた場合において、(100)面集
合組織の安定化および結晶粒径の粗大化傾向が認められ
る。そして、このような素材組織の改良により、浸珪・
拡散処理後の鋼板の磁気特性が改善できるものと考えら
れる。
【0030】〔実施例2〕表1に示す成分組成の3%S
i鋼を真空溶解してスラブとし、これを熱延仕上温度6
50℃、860℃の各条件で熱間圧延し、次いで板厚
0.35mmまで冷間圧延した後、N2またはAr雰囲
気中において1150℃で浸珪・拡散熱処理を施して平
均Si量が6.4〜6.6wt%の高珪素鋼板を製造
し、浸珪・拡散熱処理前後の鋼板の集合組織について検
討を行った。なお、この実施例の浸珪処理条件は、表層
のSi濃度が約14.3wt%に達し、表層部にFe3
Si層が形成された場合(急速浸珪処理:処理時間3分
30秒)と、表層のSi濃度が常に14.3wt%未満
であった場合(緩浸珪処理:処理時間10分)の2水準
で実施した。また、本実施例でも、浸珪・拡散熱処理は
2またはArの雰囲気にかかわらず同等の結果が得ら
れたため、以下はAr雰囲気中にて浸珪・拡散熱処理を
実施した場合を代表して示す。
【0031】上記試験の結果、実施例1の結果と同様、
浸珪処理中表層のSi濃度が常に14.3wt%未満と
なるように処理した場合には、熱延仕上温度が650
℃、860℃の各鋼板ともに、浸珪・拡散熱処理前後で
の集合組織の変化は認められなかった。
【0032】これに対し、表層のSi濃度が約14.3
wt%となり、表層部にFe3Si層が形成された場合
には、熱延仕上温度860℃材では浸珪・拡散熱処理前
後で集合組織の変化はなかったのに対し、熱延仕上温度
650℃材では(100)面強度が減少し、磁化容易軸
を持たない(111)面強度が増加した。図5に、熱延
仕上温度650℃材について、浸珪・拡散熱処理後の集
合組織を、処理中表層Si濃度が約14.3wt%にな
った鋼板と、処理中常に14.3wt%未満であった鋼
板について示す。処理中に表層のSi濃度が約14.3
wt%に達し、表層部にFe3Si層が形成された鋼板
は、(100)面強度が減少し、(111)面強度が増
加していることが判る。
【0033】表2に、熱延仕上温度650℃材で、浸珪
処理中に表層のSi濃度が約14.3wt%に達した鋼
板(浸珪条件の異なる2つの試料)と表層のSi濃度が
常に14.3wt%未満であった鋼板(浸珪条件が異な
る2つの試料)の浸珪・拡散熱処理後の磁気特性を示
す。これによれば浸珪処理中に表層Si濃度が14.3
wt%に達した鋼板は、粒径の粗大化による磁気特性の
改善効果は認められるものの、浸珪処理中表層のSi濃
度が常に14.3wt%未満であった鋼板と比較してそ
の効果は小さい。
【0034】以上の結果から、表層Si濃度が常に1
4.3wt%未満である場合には、浸珪・拡散熱処理後
も(100)面がより安定となり、透磁率の高い高珪素
鋼板が得られることが判った。
【0035】〔実施例3〕熱延組織に及ぼす熱延巻取温
度の影響を調べるため、表1に示す成分組成の3wt%
Si鋼スラブを、種々の熱延条件で熱延し、この熱延板
を0.35mmまで冷間圧延した後、表層Si濃度を常
に14.3wt%未満とする浸珪・拡散熱処理を施して
平均Si量が6.4〜6.7wt%の高珪素鋼板を製造
し、それらの磁気特性を評価した。表3に熱延条件およ
び磁気特性を示す。これによれば、巻取温度500〜7
00℃の範囲では磁気特性は熱延仕上温度に依存してお
り、巻取温度には依存しないことが判る。
【0036】〔実施例4〕磁気特性に及ぼすSol.A
l濃度の影響を調べるため、表4に示すようなSol.
Al濃度の異なる3%Si鋼スラブを熱延仕上温度70
0℃、巻取温度550℃で熱間圧延した後、板厚0.3
5mmまで冷間圧延し、これに表層のSi濃度が常に1
4.3wt%未満となるような条件で浸珪・拡散熱処理
を施し、板厚方向平均Si量が6.4〜6.65wt%
の高珪素鋼板を製造した。
【0037】図6に、上記鋼板のSol.Al濃度と浸
珪・均熱拡散処理後の鋼板の最大透磁率との関係を示
す。これによれば、Sol.Al濃度が0.1wt%以
下の鋼板において最大透磁率:30000以上の材料が
得られており、特に、Sol.Al濃度が100ppm
以下においてより優れた磁気特性が得られている。
【0038】図7〜図9は、Sol.Al濃度60pp
m(図7)、0.1wt%(図8)、0.3wt%(図
9)の各鋼板について、浸珪・拡散熱処理後における鋼
板断面内でのAl濃化および偏析の状況を示すIMAイ
オン撮像写真である。これによれば、Sol.Al濃度
が60ppmの鋼板では、浸珪処理・均熱拡散処理後の
Alはせいぜい鋼板断面内にまばらに点在している程度
(或いはIMAイオン撮像写真には表われない程度)で
ある。これに対し、Sol.Al濃度が0.1wt%の
鋼板では、Alは浸珪処理時のSi濃度勾配部(特に、
Fe3Si層との境界部近傍)に一直線上に数多く点在
し、濃化傾向を示しはじめる。さらに、Sol.Al濃
度が0.3wt%の鋼板ではAlの濃化は激しくなり、
つながった状態で濃化している。なお、鋼板のSol.
Al濃度に拘りなく、Alの濃化部に存在する析出物
は、Al23であった。
【0039】以上の結果から、IMAイオン撮像写真で
Alが鋼板断面内に点在する程度であれば優れた磁気特
性が得られ、そのためには鋼板のSol.Al濃度を
0.1wt%以下としなければならず、さらに優れた磁
気特性を得るためには、鋼板のSol.Al濃度を10
0ppm以下とすることが好ましいことが確認できた。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】熱延仕上温度が650℃、700℃、800
℃、860℃の各熱延板の板厚方向金属組織の顕微鏡拡
大写真
【図2】浸珪・拡散熱処理後の鋼板の磁気特性をそれら
の熱延仕上温度との関係で示したグラフ
【図3】浸珪・拡散熱処理後の鋼板の平均結晶粒径と鋼
板の熱延仕上温度との関係を示すグラフ
【図4】熱延仕上温度が650℃、860℃の各鋼板の
浸珪・拡散熱処理後の集合組織を各面方向のP値強度で
示す図面
【図5】熱延仕上温度650℃材について、浸珪処理中
に表層Si濃度が約14.3wt%となった鋼板と、処
理中常に14.3wt%未満であった鋼板の、浸珪処理
・拡散熱処理後における集合組織を各面方向のP値強度
で示す図面
【図6】素材鋼板のSol.Al量と浸珪・拡散熱処理
後の最大透磁率との関係を示すグラフ
【図7】Sol.Al濃度:60ppmの素材の浸珪・
拡散熱処理後における鋼板断面内でのAlの濃化、偏析
状況を示すIMAイオン撮像写真
【図8】Sol.Al濃度:0.1wt%の素材の浸珪
・拡散熱処理後における鋼板断面内でのAlの濃化、偏
析状況を示すIMAイオン撮像写真
【図9】Sol.Al濃度:0.3wt%の素材の浸珪
・拡散熱処理後における鋼板断面内でのAlの濃化、偏
析状況を示すIMAイオン撮像写真
【図10】不純物元素の含有量が鉄損に及ぼす影響を示
すグラフ
【図11】炭素と酸素の含有量比が鉄損に及ぼす影響を
示すグラフ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:4.0wt%以下、Sol.A
    l:0.1wt%以下を含有する鋼を熱間圧延および冷
    間圧延して薄板となし、この薄板にその表面からSiを
    浸透させる浸珪処理を施し、次いでSiを板厚方向に拡
    散させることによりSi:4.0wt%以上の高珪素鋼
    板を製造する方法において、素材の熱延仕上温度を70
    0℃以下とすることにより板厚方向熱延組織の70%以
    上を未再結晶組織である層状組織とし、冷間圧延により
    所定板厚とした後、浸珪処理およびSiの拡散熱処理を
    施すことを特徴とする、高い透磁率を有する高珪素鋼板
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 浸珪処理中、鋼板表層のSi濃度が常に
    14.3wt%未満となるよう処理することを特徴とす
    る請求項1に記載の高い透磁率を有する高珪素鋼板の製
    造方法。
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