JP2528750B2 - 均質で優れた磁気特性をもつ高珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

均質で優れた磁気特性をもつ高珪素鋼板の製造方法

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JP2528750B2 JP3184153A JP18415391A JP2528750B2 JP 2528750 B2 JP2528750 B2 JP 2528750B2 JP 3184153 A JP3184153 A JP 3184153A JP 18415391 A JP18415391 A JP 18415391A JP 2528750 B2 JP2528750 B2 JP 2528750B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Siの拡散浸透法(浸
珪処理法)による高珪素鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電磁鋼板として高珪素鋼板が用いられて
いる。この種の鋼板はSiの含有量が増すほど鉄損が低
減され、Si:6.5wt%付近では磁歪が0となり、
最大透磁率もピークとなる等、最も優れた磁気特性を示
すことが知られている。しかし、Si量が4wt%以上
では加工性が著しく悪くなるため、圧延等による製造は
困難である。そこで、圧延での薄板化が可能な4wt%
以下の珪素鋼板を用い、これにSiを拡散浸透法により
浸透させSiを富化することで高珪素鋼板を製造する方
法が提案されている。このような拡散浸透法に関して、
例えば特公昭38−26263号、特公昭45−211
81号、特公昭62−227078号等が提案されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、SiC
4、SiH4、SiHCl3等のSi化合物を原料と
し、拡散浸透法によりSiを鋼板表層より内部に拡散浸
透させる場合、Si原子の拡散速度がFe原子の約2倍
であることにより、Si濃度勾配の急な箇所にカーケン
ダルボイドが発生するという問題がある。また、通常電
磁鋼板にはAlが含まれているが、このような材料を浸
珪処理した場合、Alの含有量が40ppm程度であっ
てもボイドの発生した付近にAlが濃化し、また、Al
が鋼板中の酸素や窒素と結合してAl23やAlNの偏
析が発生するという問題がある。そして、このように浸
珪処理工程でAlの濃化、偏析や顕著なボイドが発生す
ると、これらが拡散処理後も残留し、鋼板の磁気特性を
著しく劣化させる。
【0004】しかし、上述したような従来の製造法で
は、主に浸珪条件について検討がなされているだけであ
り、磁気特性に悪影響を及ぼすAl等の不純物元素の偏
析、カーケンダルボイドの挙動については、十分検討さ
れているとは言い難い。
【0005】すなわち、特公昭38−26263号は、
炭素含有量が0.15wt%以下の薄鋼板にSiCl4
を用いて拡散浸透処理を施すもので、鋼板の磁気特性を
改善することを目的としている。この提案では、Siの
浸透処理中Fe−Fe3Si間の不均等拡散により生じ
るカ−ケンダルボイドについては詳細な検討がなされて
いるが、半溶融状態となる1250℃以上の高温下で浸
透均熱拡散処理を行うことにより、このボイドを融着除
去することを提案しており、このような温度条件下で
は、均一な板厚、板形状の薄鋼板を製造することは不可
能に近く、現実的ではない。
【0006】また、特公昭45−21181号では、ボ
イドの発生を抑えるためにSiCl 4の濃度をAr雰囲
気中では1vol%以下に、また、N2雰囲気中では
0.7vol%以下にすべきであると規定している。し
かし、磁気特性が特に優れているSi:6.0wt%以
上の珪素鋼板を連続的に製造するという観点からして、
このような反応ガスの低濃度条件では拡散浸透処理時間
が長くなり過ぎ、珪素鋼板の連続製造を実現することは
困難である。また、本発明者らによる実験によれば、反
応ガスを上記よりも高濃度にして浸珪処理を行っても、
ボイドやAlの偏析が発生せず、非常に優れた磁気特性
を有する高珪素鋼板が得られる場合があることが確認さ
れている。これは、ボイド発生等を支配する因子が反応
ガス濃度だけではなく、炉構造やノズル等によるガス供
給の態様等とも密接に関係しており、したがって、ボイ
ドやAl偏析の発生を防止するためには、これらを前提
とした鋼板の浸珪速度を制御しなければならないことを
意味している。
【0007】さらに、特公昭62−227078号は、
先に本出願人が提案したもので、連続ラインにおいてS
iの拡散浸透処理を行い、短時間で高品質の高珪素鋼板
を製造することができる方法に関するものである。この
製造方法では、浸珪処理過程で生じるボイドについて
は、次工程の均熱拡散処理過程で消失するという認識か
ら、磁気特性上特に問題としていなかった。しかし、本
発明者らによるその後の研究で、浸珪処理条件によって
は顕著なボイドが発生することがあり、また、特に酸洗
等の鋼板の前処理が不十分である場合や、炉内でほんの
わずかでも鋼板が酸化した場合等には、Siの浸透処理
過程で生じるボイドが均熱拡散処理後も残留し易いこと
が判明した。また、ボイドの発生するような浸珪条件で
は、Alが鋼板のある深さに濃化して偏析を生じ、鋼板
の磁気特性を悪化させる。このため、ボイドの生じにく
い条件下でSiの拡散処理を行うことが重要であること
も判明した。
【0008】本発明はこのような従来の問題に鑑みなさ
れたもので、その目的とするところは、浸珪処理におい
て磁気特性上好ましくないAl等の偏析や顕著なボイド
を発生させることなく、均質で磁気特性の優れた高珪素
鋼板を製造することができる方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】Siを浸珪処理により鋼
板に富化していくと、表層にはSiが約14.3wt%
のFe3Si層が形成され、このFe3Si層と鋼板内部
とでSiの濃度勾配が生じる。この部分では格子定数が
連続的に変化している上に、鋼板内のFeとSi、Al
の拡散速度が異なるために、Siの濃度勾配が急になる
箇所に、Alが濃化しAlの偏析が発生する。このよう
なAlの濃化は、鋼板の磁気特性を悪化させるため好ま
しくない。
【0010】本発明者らは、このAlの濃化が、鋼板表
層部から内部にかけてのSi濃度勾配と素材Al濃度と
に起因して生じることを見い出した。すなわち、Siの
浸透初期においては、表層部のSiが約14.3wt%
となるまでは、鋼板表層部から内部にかけてのSiの濃
度勾配の程度にかかわらず、鋼板内にAlの濃化および
顕著なボイドは発生しない。ところが、表層にSiが約
14.3wt%のFe3Si層が形成され始めると、S
iの濃度勾配部にAlの濃化および顕著なボイドが発生
し始めることが判った。
【0011】このため本発明は、C:0.01wt%以
下、O:0.01wt%以下、N:0.01wt%以
下、S:0.01wt%以下、P:0.02wt%以
下、Mn:0.5wt%以下、Si:4wt%以下、S
ol.Al:0.1wt%以下を含む鋼板を素材鋼板と
し、浸珪処理中、鋼板表層部のSi濃度が常に14.3
wt%未満となるように、Siの鋼板表層からの浸透速
度を制御することで、Alの濃化や偏析および顕著なボ
イドの発生を防止し、鋼板内にAlを点在させることを
その基本的特徴とする。
【0012】また、素材鋼板のSol.Al濃度が11
0ppmを超える素材では、Sol.Al濃度が高くな
るにしたがい、Siの濃度勾配部にAlの濃化や偏析が
顕著に生じ始める。このため、素材鋼板のSol.Al
濃度は110ppm以下とすることが好しい。なお、本
発明法は、鋼板ストリップの製造に限らず、切板等の材
料の製造についても適用することができる。
【0013】
【作用】以下、本発明の詳細とその限定理由を説明す
る。工業的にSiの拡散浸透法を用いて高珪素鋼板を連
続製造する場合、できるだけ短時間で処理が行えること
が望ましい。しかし、後述の実施例1に示されるよう
に、Siの添加を短時間で行えば行うほど、Siの浸珪
処理直後では表層部にSi濃度が約14.3wt%のF
3Si層が形成され、このFe3Si層からSi濃度勾
配が急になる箇所にかけて、Alの偏析および顕著なボ
イドの発生が認められる。このようなAlの濃化層や偏
析は、均熱拡散処理後も残留したまま変化しない。
【0014】これに対し、反応ガス濃度を下げ、浸珪処
理中の鋼板表層部のSi濃度が常に14.3wt%未満
であるようにした場合には、Siの浸珪処理直後もAl
の濃化や偏析および顕著なボイドの発生が認められず、
Alが点在した程度の均質な高珪素鋼板が得られる。実
際ミクロ的に見れば、浸珪処理過程でボイドは生じてい
るであろうが、この条件で浸透処理した場合はサブミク
ロン以下の大きさであり、次工程の均熱拡散処理過程で
ボイドは確実に消滅する。
【0015】後述の実施例1(図12、図13)に示さ
れるように、本発明の条件で製造した試料では磁気特性
が向上している。これは、Alの濃化や偏析およびボイ
ド等の材質欠陥が改善されたためと考えられる。また、
Siの浸透拡散処理については、一定の浸珪速度でSi
を添加した場合も、また浸珪−拡散を繰返し行ってSi
を添加した場合でも、表層Si濃度が14.3wt%以
下であれば、顕著なボイドの生成、Alの偏析は認めら
れなかった。
【0016】以上のことから、均質でかつ優れた磁気特
性をもつ高珪素鋼板を製造するためには、反応ガス濃
度、浸珪処理時間、反応ガス供給方式等を制御し、鋼板
表層部のSi濃度が常に14.3wt%未満となるよう
に、Siの表層からの浸透速度を制御することにより、
Alの濃化や偏析およびボイドの発生を防止することが
重要である。
【0017】ところで、上述した条件で浸珪処理した場
合でも、素材のSol.Al濃度によりAlの濃化、偏
析状況に差がみられる。すなわち、後述する実施例に示
したように、Sol.Al濃度が100ppm以下、
0.1wt%以下、0.1wt%超ではAlの濃化、偏
析状況に明らかな差がみられた。IMAイオン撮像写真
による観察結果によれば、Sol.Al濃度が60pp
mの素材では、Alは鋼板内にまばらに平均的に点在
し、Alの濃化、偏析は全くみられなかった。これに対
して、Sol.Al濃度が0.1wt%の素材では、A
lが一直線上に点在しはじめ、濃化傾向が認められる。
但し、この程度のSol.Al濃度では極端な濃化、偏
析には至っていない。さらに、Sol.Al濃度が0.
3wt%の素材ではAlは一直線につながって濃化し、
Alの濃化、偏析部分が鋼板内でかなりの面積を占める
に至った。
【0018】以上結果から、優れた磁気特性を得るため
には、浸珪処理後にAlが鋼板内に点在した程度の均質
さを持たねばならず、このためには素材のSol.Al
濃度は0.1wt%以下とする必要があることが判っ
た。また、AlをIMAイオン撮像写真にも写らない程
度或いは鋼板内にまばらに平均的に点在する程度とし、
より均質で優れた磁気特性を得るためには、素材のSo
l.Al濃度は110ppm以下とすることが好まし
い。
【0019】従来の珪素鋼板では、Alの電気抵抗を高
める効果と展延性の改善効果とを利用して、Siの一部
をAlで置き換える方法を採っているが、本発明では平
均Si含有量を6.0〜7.0wt%としているため、
磁性改善のためにAlを添加する必要はなく、逆に上述
した観点から、Sol.Al:0.1wt%以下、望ま
しくは110ppm以下とすることが好ましい。
【0020】本発明は、圧延可能なSi:4wt%以下
の鋼板、すなわち普通鋼板或いはSi:4wt%以下の
方向性または無方向性珪素鋼板を素材鋼板とする。ま
た、本発明における素材鋼板中Si,Al以外の成分の
限定理由は以下の通りである。 C:Cは初透磁率、最大透磁率を低下させ、Hcを増
し、鉄損を増大させる。この影響は、図23に示すよう
に0.01wt%を超えると顕著になることが知られて
おり、したがって、Cは0.01wt%以下とする。C
濃度の調整は溶製段階で行ってもよく、また、脱炭焼鈍
を実施することにより行なってもよい。
【0021】O:Oは鉄損を高め、SiO2のようなコ
ロイド状微粒子として存在する場合には、磁気特性を著
しく劣化させる元素として知られている。また、OはC
とどの程度共存するかによっても磁気特性を変化させ
る。特に、図24に示すようにO含有量とC含有量とが
ほぼ同等の場合、鉄損値が最小になることも知られてお
り、上記C含有量の適正範囲と同様に、O含有量も0.
01wt%以下とする。 N、S:共に時効の原因となるため極力少なくすること
が好ましく、これらの成分もそれぞれ0.01wt%以
下とする。
【0022】P:Pは酸素による磁性劣化を軽減し、鉄
損を減少させる作用があるが、多量に添加すると、熱間
での加工性を劣化させるというという問題があり、その
上限を0.02wt%とする。なお、Hは鋼板を著しく
脆くさせるため、高圧下でHを含有させる等、積極的な
含有は避けるべきである(通常ppmレベル以下)。以
上のように非金属元素については、C、O、N、S等を
極力低く抑え、且つCとOの比率を適正化することが好
ましい。
【0023】次に金属元素について説明すると、 Mn:熱間圧延時の展延性の改善と、脱硫作用および規
則−不規則変態における磁性改善効果を考慮し、Mnは
0.5wt%以下の範囲で添加する。 V:若干のVを添加することにより、Hcが改善される
ことが知られている。すなわち、Vは適量添加すること
により、結晶粒の発達が促進され、磁性が改善される。
このため、Vは0.05wt%を上限として添加するこ
とができる。 Ti:若干のTiを添加することでVと同様の効果を期
待でき、このため、0.05wt%を上限として添加す
ることができる。 Ca:Caは多量に含有すると透磁率を低下させるた
め、0.3wt%以下とすることが好ましい。
【0024】Be、As:若干の磁気特性改善効果が期
待でき、それぞれ0.1wt%を上限として添加するこ
とができる。 Cu:0.7wt%程度までは、磁性を大きく劣化させ
ることはないが、0.7wt%を超えて含有すると鉄損
が増大する。このため、Cuは0.7wt%以下、好ま
しくは0.1wt%以下とすることが望ましい。 Cr:鉄損を増大させる傾向があり、0.03wt%以
下とすることが好ましい。 Ni:磁気特性を著しく悪化させるため、極力低減させ
ることが好ましく、0.01wt%以下とすることが好
ましい。
【0025】
【実施例】
〔実施例1〕表1に示す成分組成を有し、板厚が0.3
5mmの冷延珪素鋼板に、反応ガス濃度(SiCl4
度を1〜30vol%の範囲で変化させた)と処理時間
を変えて1150℃で浸珪処理し、板厚方向平均Si濃
度:6.3〜6.8wt%の高珪素鋼板を製造し、これ
ら高珪素鋼板について浸珪処理条件とAlの偏析および
ボイド生成状況との関係を調べた。また、浸珪処理後、
不活性ガス雰囲気中で均熱処理を行うことで板厚方向に
Siをほぼ均一に拡散させた材料については、磁気特性
の評価も合わせて行った。なお、浸珪−拡散均熱処理
は、ArとN2の2水準の雰囲気ガス条件で行ったが、
雰囲気ガス条件に拘りなくほぼ同じ結果が得られた。し
たがって、以下には雰囲気ガスとしてArを用いた場合
において得られた結果を示す。
【0026】図1および図2に、浸珪処理時間:3分で
処理された鋼板と浸珪処理時間:10分で処理された鋼
板の、浸珪処理直後におけるEPMA(エレクトロン
プロ−ブ マイクロ アナライザ−)によるSiおよびA
lの板厚方向分布を示す。また、図3および図4に浸珪
処理時間:3分の上記鋼板の浸珪処理直後におけるSE
M断面拡大写真(図3:鋼板板厚方向全断面、図4:表
層部断面)を、図5および図6に同鋼板のAlとSiの
IMAイオン撮像写真(図5:Al、図6:Si)を示
す。また、図7および図8に浸珪処理時間:10分の上
記鋼板の浸珪処理直後におけるSEM断面拡大写真(図
7:鋼板板厚方向全断面、図8:表層部断面)を、ま
た、図9および図10に同鋼板のIMAイオン撮像写真
(図9:Al、図10:Si)を示す。なお、図5、図
6、図9、図10に示す写真の撮影範囲を図11に示
す。
【0027】図1〜図10によれば、浸珪処理時間:3
分で約3.5wt%分Siを富化した場合には、明らか
に表層にFe3Si層が形成されているのが判る。そし
て、Fe3Si層と鋼板内部の3%Si部との間には急
激なSi濃度勾配が形成され、この箇所にボイドおよび
Alの偏析が認められる。これに対し、反応ガス濃度を
下げて処理時間を長くするにしたがい、鋼板内部へのS
iの拡散量が増し、表層のSi濃度が低くなる。すなわ
ち、浸珪処理時間:10分では、表層のSi濃度は11
wt%程度であり、Siの勾配は緩やかなものとなり、
Fe3Si層は形成されていない。この場合、浸珪処理
直後でもAlの偏析およびボイドは生成していない。
【0028】図5および図9において、Alが存在して
いる部分は白く光っており、浸珪処理時間:3分の場合
には、Alがボイドの発生付近および表層に濃化してい
ることが判る。このなかには、Alが1ミクロン程度の
Al23やAlNとして析出している場合があった。こ
れに対して、浸珪処理時間:10分ではAlは点在して
おり、析出物はなく、均質であることが判る。図12お
よび図13は、浸珪処理時間:3分−拡散処理時間:1
7分で処理した鋼板と、浸珪処理時間:10分−拡散処
理時間:10分で処理した鋼板の磁気特性を示している
(いずれも、ト−タル処理時間:20分)。なお、これ
らの鋼板については、Siが板厚方向で均一に拡散して
いることがEPMAにより確認できた。これらの結果か
らも、表層にFe3Si層が形成されず、Alの偏析の
ない均質な高珪素鋼板のほうが磁気特性に優れているこ
とが判る。
【0029】〔実施例2〕 Si:6.3〜6.8wt%で、且つAlの偏析の生じ
ない高珪素鋼板の製造例を示す。表1に示す成分組成を
有し、板厚が0.35mmの冷延珪素鋼板に、反応ガス
濃度(SiCl4濃度を1〜30vol%の範囲で変化
させた)と処理時間を変えて1150℃で浸珪処理し、
板厚方向でのSi量分布およびAl偏析の発生状況を調
べた。なお、浸珪−拡散均熱処理は、ArとN2の2水
準の雰囲気ガス条件で行ったが、雰囲気ガス条件に拘り
なくほぼ同じ結果が得られた。したがって、以下には雰
囲気ガスとしてArを用いた場合において得られた結果
を示す。
【0030】図14ないし図16は、それぞれ反応ガス
濃度を約5〜6%、約8〜9%、約13%と一定とし、
浸珪処理時間を変化させて得られた鋼板の板厚方向Si
量分布を示している。これによれば、板厚0.35mm
の3%Si鋼板を浸珪処理して6.3〜6.8%Si鋼
板とする場合、反応ガス濃度:約8〜9%、浸珪処理時
間:約7分30秒が、鋼板表層のSi濃度を14.3w
t%未満とする最適浸珪処理条件と考えられる。反応ガ
ス濃度がこれより低いと、Alの濃化や偏析は生じない
が、Si量を6.3〜6.8%とするためには必要浸珪
処理時間が長くなり、実製造の観点から好ましくない。
また、反応ガス濃度がこれより高いと、Si量:6.3
〜6.8wt%となる前に、表層のSi濃度が約14.
3wt%となってFe3Si層が形成され、Alの濃化
や偏析および顕著なボイドが生成してしまう。
【0031】図17に反応温度と浸珪量の関係を示す
が、これによれば1023〜1250℃の範囲では、浸
珪速度に大差はなく、したがって上記方法が有効である
と考えられる。以上のように、反応ガス濃度、処理時
間、反応温度等を制御することにより、浸珪処理過程で
の表層のSi濃度を14.3wt%未満とすることがで
き、Alの濃化や偏析および顕著なボイドが生じない高
珪素鋼板を製造することができる。
【0032】〔実施例3〕浸珪処理後のボイドの生成、
Alの濃化や偏析に及ぼす素材成分、特にSol.A
l、Siの影響について検討した。素材鋼板の成分組成
は表2に示す通りである。このうち、鋼板Aは低Si
材、鋼板B〜Eは3%Si材でSol.Al濃度を変え
たものである。なお、板厚は鋼板Aが1mm、鋼板Bが
0.1mm、鋼板C〜Eが0.35mmであった。浸珪
処理は総て1150℃で行った。また、浸珪処理はAr
とN2の2水準の雰囲気ガス条件で行ったが、雰囲気ガ
ス条件に拘りなくほぼ同じ結果が得られた。したがっ
て、以下には雰囲気ガスとしてArを用いた場合におい
て得られた結果を示す。
【0033】鋼板A,Bを用い、表層Si濃度が14.
3wt%となるように浸珪処理した場合の、鋼板断面拡
大写真と板厚方向のSi量分布を図18(鋼板A)およ
び図19(鋼板B)に示す。両鋼板とも、浸珪処理直後
ではSi濃度勾配位置に顕著なボイドが生成しており、
素材鋼板のSi濃度および板厚に関係なく、表層Si濃
度が14.3wt%となるような浸珪処理を行えば、ボ
イドの生成およびAlの濃化が生じることが判った。
【0034】次に、Sol.Al濃度の異なる3wt%
Si鋼板(C〜E)に、表層Si濃度が常に14.3w
t%未満となるように浸珪処理を行った。処理条件は上
記と同様である。図20〜図22は、Sol.Al濃度
が60ppm(図20)、0.1wt%(図21)、
0.3wt%(図22)の各素材について、浸珪処理直
後における鋼板断面内でのAl濃化および偏析の状況を
示すIMAイオン撮像写真である。
【0035】これによれば、Sol.Al濃度が60p
pmの素材では、浸珪処理直後のAlはせいぜい鋼板断
面内にまばらに点在している程度であり、Alの濃化お
よび偏析は全く見られない。これに対し、Sol.Al
濃度が0.1wt%の素材では、Alは浸珪処理時のS
i濃度勾配部(特に、Fe3Si層との境界部近傍)に
一直線上に数多く点在し、濃化傾向を示しはじめる。但
し、極端なAlの濃化、偏析には到っていない。さら
に、Sol.Al濃度が0.3wt%の素材ではAlの
濃化は激しくなり、つながった状態で濃化しており、表
層Si濃度が常に14.3wt%未満となるように浸珪
処理を行っても、均一な材料が得られない。
【0036】以上の結果を踏まえ、Sol.Al濃度が
約100ppm、200ppm、500ppmの各素材
鋼板に対して浸珪処理した結果を比較したところ、So
l.Al濃度が200ppm以上の素材について、一直
線上にAlが点在しはじめる傾向が見られた。したがっ
て、Alが点在した程度の均一な高珪素鋼板を得るため
には、素材鋼板のSol.Al濃度を0.1%以下とし
なければならないことが判った。さらに、Alがイオン
像に写らないような、若しくは鋼板内にまばらに平均的
に点在する程度の、より均質で優れた磁気特性の高珪素
鋼板を得るためには、素材鋼板のSol.Al濃度を1
10ppm以下とすることが好ましいことが確認でき
た。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】以上述べた本発明によれば、Alの偏析
やボイドの残留等の材質欠陥のない、均質な、したがっ
て磁気特性に優れた高珪素鋼板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において、素材鋼板を3分間浸珪処理
した際の板厚方向Si,Al濃度分布を拡散処理時間別
に示した説明図
【図2】実施例1において、素材鋼板を10分間浸珪処
理した際の板厚方向Si,Al濃度分布を拡散処理時間
別に示した説明図
【図3】実施例1における浸珪処理時間:3分の鋼板の
板厚方向全断面の金属組織を示すSEM断面拡大写真。
【図4】図3の写真に示される鋼板の表層部断面の金属
組織を示すSEM断面拡大写真。
【図5】図3の写真に示される鋼板の表層部断面におけ
るAlのIMAイオン撮像写真。
【図6】図3の写真に示される鋼板の表層部断面におけ
るSiのIMAイオン撮像写真。
【図7】実施例1における浸珪処理時間:10分の鋼板
の板厚方向全断面の金属組織を示すSEM断面拡大写
真。
【図8】図7の写真に示される鋼板の表層部断面の金属
組織を示すSEM断面拡大写真。
【図9】図7の写真に示される鋼板の表層部断面におけ
るAlのIMAイオン撮像写真。
【図10】図7の写真に示される鋼板の表層部断面にお
けるSiのIMAイオン撮像写真。
【図11】図5、図6、図9、図10に示す写真の撮影
範囲を示す説明図。
【図12】実施例1における浸珪処理時間3分、浸珪処
理時間10分の各鋼板の最大透磁率を製品鋼板のSi量
との関係で示すグラフ
【図13】実施例1における浸珪処理時間3分、浸珪処
理時間10分の各鋼板の鉄損を製品鋼板のSi量との関
係で示すグラフ
【図14】実施例2において、素材鋼板を反応ガス濃度
約5〜6%で浸珪処理した際の板厚方向Si濃度分布を
浸珪処理時間別に示した説明図
【図15】実施例2において、素材鋼板を反応ガス濃度
約8〜9%で浸珪処理した際の板厚方向Si濃度分布を
浸珪処理時間別に示した説明図
【図16】実施例2において、素材鋼板を反応ガス濃度
約13%で浸珪処理した際の板厚方向Si濃度分布を浸
珪処理時間別に示した説明図
【図17】浸珪処理温度と浸珪処理速度との関係を示す
グラフ
【図18】実施例3において、低Si材を浸珪処理して
得られた鋼板のSEM断面拡大写真と板厚方向でのSi
量分布を示す図面
【図19】実施例3において、3%Si材を浸珪処理し
て得られた鋼板のSEM断面拡大写真と板厚方向でのS
i量分布を示す図面
【図20】実施例3において、Sol.Al濃度:60
ppmの素材の浸珪処理直後における鋼板断面内でのA
lの濃化、偏析状況を示すIMAイオン撮像写真
【図21】実施例3において、Sol.Al濃度:0.
1wt%の素材の浸珪処理直後における鋼板断面内での
Alの濃化、偏析状況を示すIMAイオン撮像写真
【図22】実施例3において、Sol.Al濃度:0.
3wt%の素材の浸珪処理直後における鋼板断面内での
Alの濃化、偏析状況を示すIMAイオン撮像写真
【図23】不純物元素の含有量が鉄損に及ぼす影響を示
すグラフ
【図24】炭素と酸素の含有量比が鉄損に及ぼす影響を
示すグラフ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.01wt%以下、O:0.01
    wt%以下、N:0.01wt%以下、S:0.01w
    t%以下、P:0.02wt%以下、Mn:0.5wt
    %以下、Si:4wt%以下、Sol.Al:0.1w
    t%以下を含む鋼板を素材鋼板とし、処理炉内で鋼板に
    その表面からSiを浸透させる浸珪処理を施し、このS
    iを板厚方向に拡散させることにより高珪素鋼板を製造
    する方法であって、浸珪処理中、鋼板表層部のSi濃度
    が常に14.3wt%未満となるように鋼板表層からの
    Siの浸透速度を制御することにより、鋼板表層部およ
    び鋼板内部でのボイドの残留およびAlの偏析のない高
    珪素鋼板を製造することを特徴とする均質で優れた磁気
    特性をもつ高珪素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 素材鋼板として、Sol.Al:110
    ppm以下の鋼板を用いることを特徴とする請求項1に
    記載の均質で優れた磁気特性をもつ高珪素鋼板の製造方
    法。
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