JP2528746B2 - 高珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

高珪素鋼板の製造方法

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JP2528746B2
JP2528746B2 JP3117979A JP11797991A JP2528746B2 JP 2528746 B2 JP2528746 B2 JP 2528746B2 JP 3117979 A JP3117979 A JP 3117979A JP 11797991 A JP11797991 A JP 11797991A JP 2528746 B2 JP2528746 B2 JP 2528746B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Siの拡散浸透法によ
る高珪素鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電磁鋼板として高珪素鋼板が用いられて
いる。この種の鋼板はSiの含有量が増すほど鉄損が低
減され、Si:6.5wt%付近では磁歪が0となり、
最大透磁率もピークとなる等、最も優れた磁気特性を示
すことが知られている。しかし、Si量が4wt%以上
では加工性が著しく悪くなるため、圧延等による製造は
困難である。そこで、圧延での薄板化が可能な4wt%
以下の珪素鋼板を用い、これにSiを拡散浸透法により
浸透させSiを富化することで高珪素鋼板を製造する方
法が提案されている。このような拡散浸透法に関して、
例えば特公昭45−21181号や特公昭62−227
078号等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、SiC
4、SiH4、SiHCl3等のSi化合物を原料と
し、拡散浸透法によりSiを鋼板表層より内部に拡散浸
透させる場合、Si原子の拡散速度がFe原子の約2倍
であることにより、Si濃度勾配の急な箇所にカーケン
ダルボイドが発生するという問題がある。また、通常電
磁鋼板にはAlが含まれているが、このような材料を浸
珪処理した場合、Alの含有量が40ppm程度であっ
てもボイドの発生した付近にAlが濃化し、また、Al
が鋼板中の酸素や窒素と結合してAl23やAlNの偏
析が発生するという問題がある。そして、このように浸
珪処理工程でAlの濃化、偏析や顕著なボイドが発生す
ると、これらが拡散処理後も残留し、鋼板の磁気特性を
著しく劣化させる。
【0004】しかし、上述したような従来の製造法で
は、主に浸珪条件について検討がなされいるだけであ
り、磁気特性に悪影響を及ぼすAl等の不純物元素の偏
析、カーケンダルボイドの挙動については、十分検討さ
れているとは言い難い。
【0005】すなわち、特公昭45−21181号で
は、ボイドの発生を抑えるためにSiCl4の濃度をA
r雰囲気中では1vol%以下に、また、N2雰囲気中
では0.7vol%以下にすべきであると規定してい
る。しかし、磁気特性が特に優れている6.0wt%以
上の珪素鋼板を連続的に製造するという観点からして、
このような反応ガスの低濃度条件では拡散浸透処理時間
が長くなり過ぎ、珪素鋼板の連続製造を実現することは
困難である。また、本発明者らによる実験によれば、反
応ガスを上記よりも高濃度にして浸珪処理を行っても、
ボイドやAlの偏析が発生せず、非常に優れた磁気特性
を有する高珪素鋼板が得られる場合があることが確認さ
れている。これは、ボイド発生等を支配する因子が反応
ガス濃度だけではなく、炉構造やノズル等によるガス供
給の態様等とも密接に関係しており、したがって、ボイ
ドやAl偏析の発生を防止するためには、これらを考慮
した鋼板の浸珪速度を規定しなければならないことを意
味している。
【0006】また、特公昭62−227078号は、先
に本出願人が提案したもので、連続ラインにおいてSi
の拡散浸透処理を行い、短時間で高品質の高珪素鋼板を
製造することができる方法に関するものである。この製
造方法では、浸珪処理過程で生じるボイドについては、
次工程の均熱拡散処理過程で消失するという認識から、
磁気特性上特に問題としていなかった。しかし、本発明
者らによるその後の研究で、浸珪処理条件によっては顕
著なボイドが発生することがあり、また、特に酸洗等の
鋼板の前処理が不十分である場合や、炉内でほんのわず
かでも鋼板が酸化した場合等には、Siの浸透処理過程
で生じるボイドが均熱拡散処理後も残留し易いことが判
明した。また、ボイドの発生するような浸珪条件では、
Alが鋼板のある深さに濃化して偏析を生じ、鋼板の磁
気特性を悪化させる。このため、ボイドの生じにくい条
件下でSiの拡散処理を行うことが重要であることも判
明した。
【0007】本発明はこのような従来の問題に鑑みなさ
れたもので、その目的とするところは、浸珪処理におい
て磁気特性上好ましくないAl等の偏析や顕著なボイド
を発生させることなく、均質で磁気特性の優れた高珪素
鋼板を製造することができる方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】Siを浸珪処理により鋼
板に付加していくと、表層にはSiが約14.3wt%
のFe3Si層が形成され、表層のSi濃度はこれ以上
には高くならず、この表層のFe3Si層から鋼板内部
にかけてSiの濃度勾配が生じる。このSiの急激な濃
度勾配部分では、格子定数が連続的に変化している上
に、鋼板内のFeとSi、Alの拡散速度が異なるため
にボイドが発生し、Alの偏析も生じる。このようなボ
イドの生成やAlの濃化、偏析は、表層のFe3Si層
からSi濃度勾配部にかけてのSi濃度が変化する位置
において特に顕著である。そして、このような顕著なボ
イドやAlの濃化、偏析は、均熱拡散処理後も残留し、
磁気特性を悪化させる。
【0009】ボイドの残留およびAlの濃化、偏析は以
下のようなメカニズムによるものと考えられる。すなわ
ち、ボイドの残留は、鋼板表層が酸化している場合や、
雰囲気中から鋼板内に酸素が取り込まれたような場合
に、Siの濃度勾配部に発生したボイドの内表面部分が
酸化し、この酸化層により均熱拡散中の原子の移動が妨
げられ、この結果、ボイドは消滅することなく、均熱拡
散後も残留するものと考えられる。
【0010】同様にAlについては、Siの鋼板表層か
らの浸透拡散に伴って、主に表層部のAlがSiの濃度
勾配部に濃化し、鋼板内およびボイド内の酸素や窒素と
結合してAl23やAlNの偏析を生じ、これが均熱拡
散後も残留するものと考えられる。
【0011】このような推定に基づけば、基本的には顕
著なボイドの発生を防止することが重要であり、そのた
めには鋼板内のSi濃度勾配をある勾配以下に緩和しな
ければならない。そして、このSi濃度勾配の緩和によ
り、Alの濃化も防止することができる。
【0012】浸珪処理法によって得られる高珪素鋼板で
は、板厚方向での平均Si濃度が6.0〜7.0wt%
であることが、磁気特性上特に重要である。本発明者ら
は、このようなSi量の範囲において顕著なボイド発生
およびAlの濃化、偏析を防止することができるSiの
濃度勾配条件について検討を行った。この結果、表層
部のSi濃度が14.3wt%未満となるような、つま
り、Fe3Si層を形成させないような濃度勾配としつ
つ浸珪処理を行うことにより、磁気特性に悪影響を与え
るような顕著なボイドやAlの濃化、偏析が生じない浸
珪処理鋼板が得られること、さらに、素材板厚との関
係で規定される所定の浸珪速度で浸珪処理を行なうこと
により、表層部のSi濃度を常に14.3wt%未満と
した浸珪処理が可能であること、という事実を見出し
た。
【0013】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴とするところは、Si:4.0wt%
以下を含む珪素鋼板を素材とし、処理炉内で鋼板にその
表面からSiを浸透させる浸珪処理を施し、このSiを
板厚方向に拡散させることにより高珪素鋼板を製造する
方法において、反応条件を制御することにより、板厚が
0.2mm以上の鋼板については、 0.6/t2<Vsi<1.4/t2 但し、t:素材鋼板の板厚(mm) を満足する浸珪速度Vsi(g/m2・min)で、ま
た、板厚が0.2mm未満の鋼板については、 Vsi<1.4/t2 を満足する浸珪速度Vsi(g/m2・min)で浸珪処
理するようにしたことにある。
【0014】
【作用】以下、本発明の詳細とその限定理由を説明す
る。上述したように浸珪処理法によって得られる高珪素
鋼板では、板厚方向での平均Si濃度が6.0〜7.0
wt%であることが、磁気特性上特に重要である。この
ようなSi量の範囲において、磁気特性に悪影響を与え
るような顕著なボイドやAlの濃化、偏析が残留しない
均質な高珪素鋼板を製造するためには、浸珪処理中に鋼
板の表層部のSi濃度が14.3wt%とならないこ
と、すなわちFe3Si層が形成されないことが重要で
あり、このためには図13に示すように素材板厚tに対
し、 Vsi<1.4/t2 但し、t:素材鋼板の板厚(mm) を満足する浸珪速度Vsi(g/m2・min)で浸珪処
理を行なう必要がある。浸珪速度が上記に規定される速
度よりも大きいと表層にFe3Si層が形成され、Al
の偏析や顕著なボイドが発生し、これらが拡散処理後も
残留することになる。したがって、本発明では上記式を
満足するような反応条件を決定し、浸珪処理を行うもの
であり、このような条件を満足する限り、SiCl4
度:1vol%以上の条件で浸珪処理を行っても、ボイ
ドの残留やAlの濃化、偏析のない均質で優れた磁気特
性の高珪素鋼板が得られる。
【0015】鋼板内に残留ボイドやAlの濃化、偏析を
生じると、鋼板が磁化される際にこれらが磁束の通りを
阻害し、この結果磁気特性が劣化するものである。浸珪
処理時に生じたボイドは浸珪処理後の拡散処理によりあ
る程度消滅するが、ボイド生成が著しい場合、拡散処理
後も残留し、これが磁気特性に悪影響を与える。本発明
者らが浸珪処理−拡散処理後の鋼板の断面写真から、残
留ボイド数を測定し、残留ボイド数と最大透磁率との関
係を調べたところ、図14に示すように鋼板断面0.5
mm長さの範囲での残留ボイド数が10個以下であれば
優れた磁気特性が得られること、そして、上記Vsi<
1.4/t2という浸珪速度条件であれば、残留ボイド
数が10個以下となることが確認できた。
【0016】但し、浸珪処理速度が極端に小さいと、A
lの偏析やボイド発生という点で問題はないが、板厚方
向平均Si量:6.0〜7.0wt%とするための必要
浸珪処理時間が長くなり、実製造の観点からは好ましく
ない。先に述べた従来法(特公昭45−21181号)
に基づき本発明者らが実験したところによれば、板厚
0.5mm材に浸珪処理を実施してSi濃度を例えば3
wt%から6wt%に高めた場合、浸珪処理時間は優に
1時間30分を超え、均熱拡散処理まで含めるとト−タ
ル処理時間は2〜3時間にもなった。しかし、このよう
な処理時間では、実際上連続ラインでの製造は不可能で
あると言わざるをえない。
【0017】そこで、本発明者らは、高珪素鋼板を連続
製造するという観点から、実際上連続ラインで実施可能
な浸珪処理時間の上限を45分間と規定し、通常浸珪処
理法で製造される最も厚肉の素材である板厚0.5mm
材について、Si量:3wt%の素材から板厚方向平均
Si量:6.0〜7.0wt%とするための浸珪処理速
度の下限を求めた。この結果、 0.6/t2<Vsi 但し、t:素材鋼板の板厚(mm) を満足する浸珪速度Vsi(g/m2・min)で浸珪処
理することにより、板厚0.5mm以下の素材におい
て、45分以内での浸珪処理が可能であることが確認で
きた。
【0018】一方、板厚0.2mm未満の材料について
は、Si濃度を3wt%から6.0〜7.0wt%とす
るための浸珪処理時間は1〜2分程度と十分短時間であ
り、浸珪速度の下限を規定する必要はない。
【0019】以上の理由から、Alの偏析および顕著な
ボイドの生成、残留がない均質で優れた磁気特性をもつ
高珪素鋼板を連続的に製造できる浸珪速度して、板厚が
0.2mm以上の鋼板については、 0.6/t2<Vsi<1.4/t2 また、板厚が0.2mm未満の鋼板については、 Vsi<1.4/t2 と規定した。
【0020】ところで、Vsi<1.4/t2という条件
で浸珪処理した場合でも、素材のSol.Al濃度によ
りAlの濃化、偏析状況に差がみられる。すなわち、後
述する実施例に示したように、Sol.Al濃度が10
0ppm以下、0.1wt%以下、0.1wt%超では
Alの濃化、偏析状況に明らかな差がみられた。IMA
イオン撮像写真による観察結果によれば、Sol.Al
濃度が100ppmの素材では、Alは鋼板内にまばら
に平均的に点在し、Alの濃化、偏析は全くみられなか
った。これに対して、Sol.Al濃度が0.1wt%
の素材では、Alが一直線上に点在しはじめ、濃化傾向
が認められる。但し、この程度のSol.Al濃度では
極端な濃化、偏析には至っていない。さらに、Sol.
Al濃度が0.3wt%の素材ではAlは一直線につな
がって濃化し、Alの濃化、偏析部分が鋼板内でかなり
の面積を占めるに至った。
【0021】以上結果から、優れた磁気特性を得るため
には、浸珪処理後にAlが鋼板内に点在した程度の均質
さを持たねばならず、このためには素材のSol.Al
濃度は0.1wt%以下とすることが好ましいことが判
った。図15はその結果を示している。また、AlをI
MAイオン撮像写真にも写らない程度或いは鋼板内にま
ばらに平均的に点在する程度とし、より均質で優れた磁
気特性を得るためには、素材のSol.Al濃度は10
0ppm以下とすることが好ましい。
【0022】従来の珪素鋼板では、Alの電気抵抗を高
める効果と展延性の改善効果とを利用して、Siの一部
をAlで置き換える方法を採っているが、本発明では平
均Si含有量を6.0〜7.0wt%としているため、
磁性改善のためにAlを添加する必要はなく、逆に上述
した観点から、Sol.Al:0.1wt%以下、望ま
しくは100ppm以下とすることが好ましい。
【0023】本発明において、素材鋼板中のSiおよび
Al以外の不純物成分は特に限定されるものではない
が、優れた磁気特性を得るために以下のように規定する
ことが好ましい。まず、非金属元素について説明する
と、 C:Cは初透磁率、最大透磁率を低下させ、Hcを増
し、鉄損を増大させる。この影響は、図19に示すよう
に0.01wt%を超えると顕著になることが知られて
おり、したがって、Cは0.01wt%以下とすること
が好ましい。但し、結晶方位改善を目的として製鋼段階
でCを0.01wt%を超えて含有させ、圧延すること
も可能であるが、この場合には、時効および特性劣化を
防止するため脱炭焼鈍を実施し、Cを0.01wt%以
下とすることが好ましい。すなわち、C濃度の調整は溶
製段階で行ってもよく、また、脱炭焼鈍を実施すること
により行なってもよい。
【0024】O:Oは鉄損を高め、SiO2のようなコ
ロイド状微粒子として存在する場合には、磁気特性を著
しく劣化させる元素として知られている。また、OはC
とどの程度共存するかによっても磁気特性を変化させ
る。特に、図20に示すようにO含有量とC含有量とが
ほぼ同等の場合、鉄損値が最小になることも知られてお
り、上記C含有量の適正範囲と同様に、O含有量も0.
01wt%以下とすることが好ましい。 N、S:共に時効の原因となるため極力少なくすること
が好ましく、これらの成分もそれぞれ0.01wt%以
下とすることが好ましい。
【0025】P:Pは酸素による磁性劣化を軽減し、鉄
損を減少させる作用があるが、多量に添加すると、熱間
での加工性を劣化させるというという問題があり、その
上限を0.02wt%とすることが好ましい。 H:Hは鋼板を著しく脆くさせるため、高圧下でHを含
有させる等、積極的な含有は避けるべきである(通常p
pmレベル以下)。以上のように非金属元素について
は、C、O、N、S等を極力低く抑え、且つCとOの比
率を適正化することが好ましい。
【0026】次に金属元素について説明すると、 Mn:熱間圧延時の展延性の改善と、脱硫作用および規
則−不規則変態における磁性改善効果を考慮すると、M
nは0.5wt%以下の範囲で添加することが好まし
い。 Ca:Caは多量に含有すると透磁率を低下させるた
め、0.3wt%以下とすることが好ましい。 V:若干のVを添加することにより、Hcが改善される
ことが知られている。すなわち、Vは0.05wt%程
度添加することにより、結晶粒の発達が促進され、磁性
が改善される。このため、Vは0.1wt%を上限とし
て添加することができる。
【0027】Ti:0.05wt%程度添加することで
Vと同様の効果を期待でき、このため、0.1wt%を
上限として添加することができる。 Be、As:若干の磁気特性改善効果が期待でき、それ
ぞれ0.1wt%を上限として添加することができる。 Cu:0.7wt%程度までは、磁性を大きく劣化させ
ることはないが、0.7wt%を超えて含有すると鉄損
が増大する。このため、Cuは0.7wt%以下、好ま
しくは0.1wt%以下とすることが望ましい。 Cr:鉄損を増大させる傾向があり、0.03wt%以
下とすることが好ましい。 Ni:磁気特性を著しく悪化させるため、極力低減させ
ることが好ましく、0.01wt%以下とすることが好
ましい。
【0028】
【実施例】
〔実施例1〕Si:3wt%、Sol.Al:110p
pm(表2の鋼種A)で、板厚がそれぞれ0.06m
m、0.1mm、0.24mm、0.35mm、0.5
0mmの冷延珪素鋼板に、反応ガス濃度(SiCl4
度を1〜30vol%の範囲で変化させた)と処理時間
を変えて1150℃で浸珪処理し、板厚方向平均Si濃
度:6.3〜6.8wt%の高珪素鋼板を製造した。な
お、浸珪処理はArとN2の2水準の雰囲気ガス条件で
行ったが、雰囲気ガス条件に拘りなくほぼ同じ結果が得
られた。したがって、以下には雰囲気ガスとしてArを
用いた場合において得られた結果を示す。
【0029】本実施例では、ボイドが顕著に生じない最
大浸珪速度条件を調べるため、異なる浸珪速度で浸珪処
理を行い、板厚方向のSi濃度分布とボイドおよびAl
の濃化、偏析の発生状況との相関を調べた。図1ないし
図3に、板厚0.35mmの鋼板を素材とし、SiCl
4ガス濃度:5〜6vol%、8〜9vol%、13v
ol%の各場合について、処理時間を変化させて製造し
た高珪素鋼板の板厚方向Si濃度分布を示す。
【0030】また、このようにして得られた高珪素鋼板
のうち、図4および図5に表層にSi濃度が14.3w
t%のFe3Si層が形成された鋼板のSEM断面拡大
写真(図4:鋼板板厚方向全断面、図5:表層部断面)
を、図6および図7に同鋼板のAlとSiのIMAイオ
ン撮像写真(図6:Al、図7:Si)を示す。また、
図8および図9に浸珪処理中表層が常に14.3wt%
未満であった鋼板のSEM断面拡大写真(図8:鋼板板
厚方向全断面、図9:表層部断面)を、また、図10お
よび図11に同鋼板のIMAイオン撮像写真(図6:A
l、図7:Si)を示す。なお、図6、図7、図10、
図11に示す写真の撮影範囲を図12に示す。
【0031】これら写真に示されるように、表層にFe
3Si層が形成された鋼板(図4〜図7)では、Fe3
i層との境界部近傍のSi濃度勾配部にボイドが顕著に
発生し、また、ここにAlが激しく濃化した。これに対
し、浸珪処理中表層が常に14.3wt%未満であった
鋼板(図8〜図11)では顕著なボイドは発生せず、ま
た、Alも濃化することなく鋼板内に点在していた。以
上の結果から、板厚0.35mmの素材については、S
iCl4濃度:約8〜9vol%、浸珪処理時間:7分
30秒という条件が顕著なボイドおよびAlの濃化、偏
析が生じない浸珪処理の限界条件であることが判った。
また、同様に板厚0.24mmの素材については、反応
ガス濃度:約14vol%、浸珪速度処理時間:2分3
0秒が浸珪処理の限界条件であった。
【0032】表1は、本実施例において製造された各板
厚の鋼板について、反応ガス濃度、浸珪処理速度Vsiと
それらの鋼板の顕著なボイドの発生、Alの濃化の有無
および磁気特性をまとめたものである。
【0033】単位面積、単位時間に素材鋼板に浸透する
Si量は、浸珪速度Vsi(g/m2・min)、素材板
厚をt(mm)とすれば、板内の拡散速度が板厚の2乗
に比例することから、定性的に、 Vsi=a/t2 但し、a:比例定数 と表すことができる。
【0034】ここで、この式に板厚0.24mm、0.
35mmの上記試験結果を代入すると、aはそれぞれ
1.34、1.38となり、したがって、aは略1.4
と考えることができる。以上の結果から、均質で優れた
磁気特性をもつ高珪素鋼板を製造するためには 、 Vsi<1.4/t2 但し、t:素材鋼板の板厚(mm) を満足する浸珪速度Vsi(g/m2・min)で浸珪処
理するような反応条件としなければならない。
【0035】図13に、上述した各板厚の試験結果に基
づき、板厚tに対する適正浸珪処理速度範囲を示した。
これによれば、板厚0.5mmの場合も上述した浸珪速
度条件が妥当することが判る。また、0.1mm以下の
板厚のものについても、ボイドおよびAlの偏析は生じ
なかった。すなわち、上記式は反応ガスの種類や板厚等
に拘りなく鋼板への適正浸珪速度条件を表しており、こ
の条件を満足する反応条件とすることにより、顕著なボ
イドやAlの濃化、偏析を生じることなく、均質で優れ
た磁気特性をもつ高珪素鋼板の連続製造が可能であるこ
とが判る。
【0036】〔実施例2〕磁気特性に及ぼす残留ボイド
の影響を調べるため、Si:3wt%、Sol.Al:
110ppm、板厚0.35mmの冷延珪素鋼板(表2
の鋼種A)に、浸珪速度を変えて浸珪処理を実施するこ
とによりボイド発生の程度が異なる鋼板を製造し、浸珪
処理後、ArまたはN2中で連続的に均熱処理(115
0℃)して板厚方向にSiをほぼ均一に拡散させた。こ
れら鋼板の残留ボイド数と磁気特性を測定、評価した。
なお、これら鋼板の浸珪、均熱拡散処理後の板厚方向平
均Si量は6.40〜6.65wt%であった。この実
施例では、雰囲気ガス条件に拘りなくほぼ同じ結果が得
られたため、以下には雰囲気ガスとしてArを用いた場
合において得られた結果を示す。
【0037】残留ボイドは、各鋼板の断面拡大写真よ
り、0.5mm長さ範囲でのボイドの個数により評価し
た。観察されたボイドの大きさはほとんどがサブミクロ
ンから2〜3ミクロンであり、ボイドがつながっている
場合には、これを1ミクロン単位に分割して計数した。
【0038】図14に残留ボイド数と最大透磁磁率との
関係を示す。本実施例では、磁気特性の良否の評価する
上で最大透磁磁率:30000を目標値とした。これに
よれば、断面0.5mm長さ範囲でのサブミクロンの残
留ボイド数が略10個以下であれば、最大透磁率300
00以上の値が得られている。この場合、残留ボイド数
10個程度の浸珪速度Vsi(g/m2・min)は、Vs
i=14.0であったことから、これは、 Vsi=1.7/t2 という条件に相当する。これにより、Vsi<1.4/t
2という条件で浸珪処理を行なうことにより、優れた磁
気特性を持つ高珪素鋼板が確実に得られることが確認で
きた。
【0039】〔実姉例3〕磁気特性に及ぼすSol.A
lの影響を調べるため、Sol.Al濃度の異なるS
i:3wt%、板厚0.35mmの珪素鋼板(表2の鋼
種B〜G)を用いて、浸珪−均熱拡散処理を行なった。
浸珪処理は、浸珪速度Vsiを10.6g/m2・min
とし、常に表層Si濃度が14.3wt%未満となるよ
うな浸珪処理速度条件で行なった。均熱拡散処理後の鋼
板の板厚方向平均Si濃度は6.4〜6.65wt%で
あった。
【0040】図15に、素材鋼板のSol.Al濃度と
浸珪−均熱拡散処理後の鋼板の最大透磁率との関係を示
す。これによれば、Sol.Al濃度が0.1wt%以
下の素材において最大透磁率:30000以上の材料が
得られており、特に、Sol.Al濃度が100ppm
以下においてより優れた磁気特性が得られている。図1
6〜図18は、Sol.Al濃度60ppm(図1
6)、0.1wt%(図17)、0.3wt%(図1
8)の各素材について、浸珪−拡散処理後における鋼板
断面内でのAl濃化および偏析の状況を示すIMAイオ
ン撮像写真である。
【0041】これによれば、Sol.Al濃度が60p
pmの素材では、浸珪処理−拡散処理後のAlはせいぜ
い鋼板断面内にまばらに点在している程度(或いはIM
Aイオン撮像写真には表われない程度)である。これに
対し、Sol.Al濃度が0.1wt%の素材では、A
lは浸珪処理時のSi濃度勾配部(特に、Fe3Si層
との境界部近傍)に一直線上に数多く点在し、濃化傾向
を示しはじめる。さらに、Sol.Al濃度が0.3w
t%の素材ではAlの濃化は激しくなり、つながった状
態で濃化している。なお、素材のSol.Al濃度に拘
りなく、Alの濃化部に存在する析出物は、Al23
あった。以上の結果から、IMAイオン撮像写真でAl
が鋼板断面内で点在する程度であれば優れた磁気特性が
得られ、そのためには素材のSol.Al濃度を0.1
wt%以下としなければならず、さらに優れた磁気特性
を得るためには、素材のSol.Al濃度を100pp
m以下とすることが好ましいことが確認できた。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】以上述べた本発明によれば、Alの偏析
やボイドの残留等の材質欠陥のない、均質な、したがっ
て磁気特性に優れた高珪素鋼板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】板厚0.35mmの素材鋼板をSiCl4ガス
濃度:3〜4vol%で浸珪処理した際の板厚方向Si
濃度分布を浸珪処理時間別に示している。
【図2】板厚0.35mmの素材鋼板をSiCl4ガス
濃度:5〜6vol%で浸珪処理した際の板厚方向Si
濃度分布を浸珪処理時間別に示している。
【図3】板厚0.35mmの素材鋼板をSiCl4ガス
濃度:7〜8vol%で浸珪処理した際の板厚方向Si
濃度分布を浸珪処理時間別に示している。
【図4】表層にFe3Si層が形成された鋼板の板厚方
向全断面の金属組織を示すSEM断面拡大写真。
【図5】表層にFe3Si層が形成された鋼板の表層部
断面の金属組織を示すSEM断面拡大写真。
【図6】表層にFe3Si層が形成された鋼板の表層部
断面におけるAlのIMAイオン撮像写真。
【図7】表層にFe3Si層が形成された鋼板の表層部
断面におけるSiのIMAイオン撮像写真。
【図8】浸珪処理中表層が常に14.3wt%未満であ
った鋼板の板厚方向全断面の金属組織を示すSEM断面
拡大写真。
【図9】浸珪処理中表層が常に14.3wt%未満であ
った鋼板の表層部断面の金属組織を示すSEM断面拡大
写真。
【図10】浸珪処理中表層が常に14.3wt%未満で
あった鋼板の表層部断面におけるAlのIMAイオン撮
像写真。
【図11】浸珪処理中表層が常に14.3wt%未満で
あった鋼板の表層部断面におけるSiのIMAイオン撮
像写真。
【図12】図6、図7、図10、図11に示す写真の撮
影範囲を示す説明図。
【図13】試験結果に基づく板厚に対する適正浸珪処理
速度範囲を示す。
【図14】浸珪処理−拡散処理後の残留ボイド数と最大
透磁率との関係を示す。
【図15】素材鋼板のSol.Al量と浸珪処理−拡散
処理後の最大透磁率との関係を示す。
【図16】Sol.Al濃度:60ppmの素材の浸珪
−拡散処理後における鋼板断面内でのAlの濃化、偏析
状況を示すIMAイオン撮像写真。
【図17】Sol.Al濃度:0.1wt%の素材の浸
珪−拡散処理後における鋼板断面内でのAlの濃化、偏
析状況を示すIMAイオン撮像写真。
【図18】Sol.Al濃度:0.3wt%の素材の浸
珪−拡散処理後における鋼板断面内でのAlの濃化、偏
析状況を示すIMAイオン撮像写真。
【図19】不純物元素の含有量が鉄損に及ぼす影響を示
す。
【図20】炭素と酸素の含有量比が鉄損に及ぼす影響を
示す。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:4.0wt%以下を含み、板厚が
    0.2mm以上の珪素鋼板を素材とし、処理炉内で鋼板
    にその表面からSiを浸透させる浸珪処理を施し、この
    Siを板厚方向に拡散させることにより高珪素鋼板を製
    造する方法において、反応条件を制御することにより、 0.6/t2<Vsi<1.4/t2 但し、t:素材鋼板の板厚(mm) を満足する浸珪速度Vsi(g/m2・min)で浸珪処
    理することを特徴とする高珪素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 Si:4.0wt%以下を含み、板厚が
    0.2mm未満の珪素鋼板を素材とし、処理炉内で鋼板
    にその表面からSiを浸透させる浸珪処理を施し、この
    Siを板厚方向に拡散させることにより高珪素鋼板を製
    造する方法において、反応条件を制御することにより、 Vsi<1.4/t2 但し、t:素材鋼板の板厚(mm) を満足する浸珪速度Vsi(g/m2・min)で浸珪処
    理することを特徴とする高珪素鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 素材鋼板として、Sol.Al:0.1
    wt%以下の鋼板を用いることを特徴とする請求項1ま
    たは2に記載の高珪素鋼板の製造方法。
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