JP3508436B2 - 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 - Google Patents

歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板

Info

Publication number
JP3508436B2
JP3508436B2 JP34120996A JP34120996A JP3508436B2 JP 3508436 B2 JP3508436 B2 JP 3508436B2 JP 34120996 A JP34120996 A JP 34120996A JP 34120996 A JP34120996 A JP 34120996A JP 3508436 B2 JP3508436 B2 JP 3508436B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
relief annealing
less
concentration
annealing
steel sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP34120996A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10183310A (ja
Inventor
芳宏 尾崎
正樹 河野
明男 藤田
厚人 本田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP34120996A priority Critical patent/JP3508436B2/ja
Publication of JPH10183310A publication Critical patent/JPH10183310A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3508436B2 publication Critical patent/JP3508436B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、磁気特性、特に
歪取焼鈍後の鉄損特性に優れた無方向性電磁鋼板に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】無方向性電磁鋼板の鉄損特性は、製品板
の結晶粒径に大きく依存し、低鉄損の製品を得るために
は、基本的に結晶粒径を粗大化させる必要があることが
知られている。粒成長性は、鋼中に分散する析出物の影
響が大きく、その成分やサイズ分布、分散状態に大きく
左右される。これらの析出物は、結晶粒界の移動をピン
止めする効果があるため、粒成長性向上のためには、か
ような析出物を極力低減させる必要があることはいうま
でもない。
【0003】しかしながら、現在の工業的技術レベルに
おいて、鋼材中の析出物、介在物を粒成長性に影響しな
い程度まで低減させた高清浄鋼を溶製することは極めて
難しく、また汎用の実用材料の製造に際してはコストの
問題も無視できないため、かような高清浄鋼の溶製は実
質的に不可能であった。
【0004】そこで、優れた磁気特性の製品を得るため
に、鋼中に分散する介在物、析出物の制御に多大な努力
が払われている(例えば特開昭51-62115号公報、特開昭
58−25426 号公報、特公昭58-17248号公報)。また一方
で、焼鈍で形成される内部酸化層によって表層付近に微
細結晶粒が残りこれが磁気特性を劣化させることも問題
となっており、仕上げ焼鈍の雰囲気を弱酸化性や非酸化
性にする等の改善方法が提案されている(例えば特開昭
57-35626号公報、特開昭58-23410号公報、特開平8-602
52号公報、特開平8-60311号公報)。
【0005】しかしながら、この発明が解決しようとす
る問題、すなわち歪取焼鈍での鋼板の窒化による磁性改
善不良に関する技術はほとんどない。わずかに、特開昭
55-50432号公報に、歪取焼鈍雰囲気を制御する方法が開
示されているが、これは炭化物生成の影響を考慮したも
のであり、近年の製鋼技術の進歩によりその影響は少な
くなってきている。その上、この方法では、従来N2雰囲
気で行われていた歪取焼鈍にH2 雰囲気を導入したり、
予熱処理を必要とするなど、コスト面で問題があるばか
りでなく、この発明が対象とすAl含有無方向性電磁鋼
板の歪取焼鈍での磁性改善不良には何等効果を与えな
い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以下、この発明が解決
しようとする歪取焼鈍での磁性改善不良について説明す
る。無方向性電磁鋼板は、主としてモーターの鉄心材料
として使用されることは周知であるが、近年その使用量
の増大と共に、要求される特性も様々になってきてい
る。モーター鉄心は、電磁鋼板を金型により打ち抜き、
それを積層し、カシメもしくは溶接して作られる。特に
高効率モーターの場合には、 750℃, 2時間程度の歪取
焼鈍により打ち抜きによる内部歪みを開放して使用され
る。しかも、最近では、この歪取焼鈍で歪みの開放のみ
ならず、結晶粒成長をも進行させ、使用時のさらなる高
効率化を指向した材料が作られるようになってきてい
る。
【0007】しかしながら、この歪取焼鈍が、不活性雰
囲気中でなくN2含有雰囲気中で行われると、鋼板の窒化
により十分な磁性改善がなされない場合があり、問題と
なっていた。この発明は、上記の問題を有利に解決する
もので、歪取焼鈍をN2含有雰囲気中で行っても効果的な
結晶粒成長を可能ならしめ、もって磁気特性とくに鉄損
特性の一層の改善を実現した無方向性電磁鋼板を提案す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、この発明は、
C:0.01wt%以下、Si:3.5 wt%以下、Mn:0.1 〜1.5
wt%、Al:0.6 〜2.5 wt%、P:0.1 wt%以下、S:0.
01wt%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物
組成になる無方向性電磁鋼板であって、鋼板表面から1
μm 以内の極表層にAlの濃化層をもち、その最大Al濃度
が全板厚平均値の1.1倍以上、2.0 倍以下であることを
特徴とする歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁
鋼板(第1発明)である。
【0009】また、この発明は、C:0.01wt%以下、S
i:3.5 wt%以下、Mn:0.1 〜1.5 wt%、Al:0.6 〜2.5
wt%、P:0.1 wt%以下、S:0.01wt%以下を含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる無方向
性電磁鋼板であって、鋼板表面から1μm 以内の極表層
にAlとSiの濃化層をもち、その最大Al濃度が全板厚平均
値の1.1 倍以上、2.0 倍以下で、かつその最大Si濃度が
全板厚平均値の1.1 倍以上、3.0 倍以下であることを特
徴とする歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼
板(第2発明)である。
【0010】以下、この発明を完成するに至った経緯を
実験結果に基づいて説明する。 実験1 表1に示す成分組成になる鋼を、転炉および真空脱ガス
により成分調整した後、連続鋳造によりスラブとし、こ
れらのスラブを通常のガス加熱炉により再加熱後、熱間
圧延により厚み:2.6 mmの熱延板とした。ついで、熱延
スケールを除去することなく、1000℃, 30秒の熱延板焼
鈍を施した後、ショットブラストの投射と反応促進剤を
添加した温度30℃以上の塩酸酸洗とにより、熱延板焼鈍
で形成されたスケールを除去し、冷間圧延で厚み:0.5
mmにした後、H2, N2混合雰囲気中において表2に示す条
件下で再結晶焼鈍を施し、製品板とした。かくして得ら
れた製品板およびそれらをN2雰囲気中にて 750℃, 2時
間の歪取焼鈍を施した後の磁気特性について調べた結果
を、表2に併記する。
【0011】
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】表2の結果によれば、製品板の磁気特性
は、仕上げ焼鈍温度に強く依存し、高温程良好になるこ
とが判る。一方、歪取焼鈍後の磁気特性は、仕上げ焼鈍
温度に対する依存性は小さいが、仕上げ焼鈍時の雰囲気
露点DP によって変わり、DP が−10℃以下の場合に良
好となることが判る。
【0014】図1に、これらの歪取焼鈍前の製品板につ
いて、GDS(グロー放電発光分光分析)によって調べ
た表層近傍のAl濃度プロファイルを示す。ここで、AlS
は表面から1μm 以内の極表層での最大Al濃度、またAl
B は板厚平均でのAl濃度であり、AlS / AlB を表層Al濃
化を表す指標とした。同図から明らかなように、表層近
傍ではAl濃化が生じていて、その濃化度は雰囲気露点が
高くなるほど増加する傾向がみられた。そして、表2の
結果と照らし合わせると、表層でのAl濃度が板厚平均値
の2倍を超えるようになると歪取焼鈍での磁気特性改善
代が、急激に少なくなることが判明した。
【0015】また、これらの製品板について、歪取焼鈍
の前後でそれぞれ測定した含有N量を同じく表2に示し
たが、歪取焼鈍前の含有N量は各条件でほとんど変化し
ていないのに対し、歪取焼鈍後は仕上げ焼鈍条件によっ
て変化しており、歪取焼鈍後の磁気特性が良好なもの
は、その歪取焼鈍による窒化増量が 20ppm以下であるこ
とが判る。
【0016】以上の結果より、表層近傍のAl濃度が板厚
平均の2倍以下の場合に歪取焼鈍時の窒化が防止され、
その結果、鉄損改善不良が起こらず、良好な磁気特性が
得られることが判明した。
【0017】実験2 表3に示す成分組成になる鋼を、転炉および真空脱ガス
により成分調整した後、連続鋳造によりスラブとし、こ
れらのスラブを通常のガス加熱炉により再加熱後、熱間
圧延により厚み:2.6 mmの熱延板とした。ついで、熱延
スケールを除去してから、1000℃, 30秒の熱延板焼鈍を
施した後、研削ロールの使用と、反応促進剤を添加した
温度30℃以上の塩酸酸洗により、熱延板焼鈍で形成され
たスケールを除去し、冷間圧延で厚み:0.5 mmにした
後、H2, N2混合雰囲気中において表4に示す条件下で再
結晶焼鈍を施し、製品板とした。かくして得られた製品
板およびそれらをN2雰囲気中にて 750℃, 2時間の歪取
焼鈍を施した後の磁気特性について調べた結果を、表4
に併記する。
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】表4の結果によれば、製品板の磁気特性
は、仕上げ焼鈍温度に強く依存し、高温程良好になって
いる。一方、歪取焼鈍後の磁気特性は、仕上げ焼鈍温度
に対する依存性は小さいが、仕上げ焼鈍時の雰囲気露点
P によって変わり、DP が−10℃以下の場合に良好と
なっている。
【0021】これら歪取焼鈍前の製品板について、GD
Sにより表層近傍のAl濃度およびSi濃度の変化を調べ、
表層近傍でのAlおよびSi濃化層の最大濃度AlS , SiS
全厚平均濃度AlB , SiB の比を同じく表4に示したが、
上述した実験1の場合と同様、濃化度は雰囲気露点が高
くなるほど増加する傾向がみられ、この表層でのAl濃度
が板厚平均値の2倍を超え、またSi濃度が板厚平均値の
3倍を超えると歪取焼鈍での磁気特性改善代が、急激に
少なくなることが判る。
【0022】また、これらの製品板について、歪取焼鈍
の前後でそれぞれ測定した含有N量を同じく表4に示し
たが、歪取焼鈍前の含有N量は各条件でほとんど変化し
ていないのに対し、歪取焼鈍後は仕上げ焼鈍条件によっ
て変化しており、歪取焼鈍後の磁気特性が良好なもの
は、その歪取焼鈍による窒化増量が 20ppm以下であるこ
とが判る。
【0023】以上の結果より、表層近傍のAl濃度が板厚
平均の2倍以下で、かつSi濃度が板厚平均の3倍以下の
場合に歪取焼鈍時の窒化が防止され、その結果、鉄損改
善不良が起こらず、良好な磁気特性が得られることが判
明した。
【0024】実験3 表5に示す成分組成になる鋼を、転炉および真空脱ガス
により成分調整した後、連続鋳造によりスラブとし、こ
れらのスラブを通常のガス加熱炉により再加熱後、熱間
圧延により厚み:2.6 mmの熱延板とした。ついで、熱延
スケールを除去してから、還元性雰囲気中にて 850℃,
6時間のコイル箱焼鈍を施した後、ショットブラストを
投射してから、冷間圧延で厚み:0.5 mmにした後、H2
N2混合雰囲気中において表6に示す条件下で再結晶焼鈍
を施し、製品板とした。かくして得られた製品板および
それらをN2雰囲気中にて 750℃, 2時間の歪取焼鈍を施
した後の磁気特性について調べた結果を、表6に併記す
る。
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】表6の結果によれば、製品板の磁気特性は
仕上げ焼鈍温度に強く依存し、高温程良好になることが
判る。一方、歪取焼鈍後の磁気特性は、仕上げ焼鈍温度
に対する依存性は小さいが、仕上げ焼鈍時の雰囲気露点
P によって変わり、DP が−20℃以下の場合に良好と
なっている。
【0028】これら歪取焼鈍前の製品板について、GD
Sにより表層近傍のAl濃度およびSi濃度の変化を調べ、
表層近傍でのAlおよびSi濃化層の最大濃度AlS , SiS
全厚平均濃度AlB , SiB の比を同じく表6に示したが、
上述した実験1,2の場合と同様、濃化度は雰囲気露点
が高くなるほど増加する傾向がみられ、この表層でのAl
濃度が板厚平均値の2倍を超え、またSi濃度が板厚平均
値の3倍を超えると歪取焼鈍での磁気特性改善代が、急
激に少なくなることが判る。
【0029】また、これらの製品板について、歪取焼鈍
の前後でそれぞれ測定した含有N量を同じく表6に示し
たが、歪取焼鈍前の含有N量は各条件でほとんど変化し
ていないのに対し、歪取焼鈍後は仕上げ焼鈍条件によっ
て変化しており、歪取焼鈍後の磁気特性が良好なもの
は、その歪取焼鈍による窒化増量が 20ppm以下であるこ
とが判る。
【0030】以上の結果より、表層近傍のAl濃度が板厚
平均の2倍以下で、かつSi濃度が板厚平均の3倍以下の
場合に歪取焼鈍時の窒化が防止され、その結果、鉄損改
善不良が起こらず、良好な磁気特性が得られることが判
明した。
【0031】実験4 実験1の記号A1の仕上げ焼鈍板について、化学研磨
(フッ酸と過酸化水素水の混合溶液による酸洗)によっ
て鋼板表層を除去してから、N2雰囲気で 750℃,2時間
の歪取焼鈍を施した。図2に、歪取焼鈍前のGDS測定
による表層近傍のAl濃度プロファイルを、化学研磨の前
後で比較して示す。
【0032】また、化学研磨材について、歪取焼鈍後の
含有N量および磁気特性を測定したところ、含有N量は
112 ppm、また鉄損W15/50 は 5.521 W/kg 、磁束密度
50は1.736 Tであった。このことから、極表層のAl濃
化がない場合にも歪取焼鈍時の窒化は抑制されず、歪取
焼鈍での鉄損改善が阻害されることが判明した。
【0033】以上、実験1〜4の結果より、表層近傍の
Al濃度が板厚平均の 1.1倍以上、2倍以下で、かつSi濃
度が板厚平均の 1.1倍以上、3倍以下の場合に歪取焼鈍
時の窒化が防止され、鉄損改善不良が起こらず、特性が
良好であることが究明されたのである。
【0034】極表層のAlおよびSi濃化層を低減すること
によって、このような効果が得られる理由については、
まだ明確に解明されたわけではないが、極表層にAl濃化
が生じている場合には歪取焼鈍での窒化物生成は極表層
部のみに止まるものの、その量が過度に多くなった場合
は、それにより粒界がピン止めされ表層近傍に微細粒が
残るために、鉄損の改善効果が小さくなったと考えられ
る。また、Siを含む成分系においては、AlのみならずSi
の濃化層も同様に作用し、歪取焼鈍における窒化抑制効
果をより一層高めるが、同じく過度の濃化は鉄損の改善
効果の妨げになるものと考えられる。とはいえ、表層の
AlおよびSiの濃化層が少ない、もしくは全然存在しない
場合には、Nは表層に止まらず内部にまで拡散し窒化物
を形成してしまうため、やはり粒径の粗大化を妨げるも
のと考えられる。
【0035】次に、この発明において成分組成を前記の
範囲に限定した理由について説明する。 C:0.01wt%以下 Cは、γ域を拡大し、α−γ変態点を低下させる。焼鈍
中にγ相がα粒界にフィルム状に生成しα粒の成長を抑
制するため、Cは基本的に少なくする必要がある。ま
た、SiやAl等のα相安定化元素を多量に含有し、全温度
域でγ相が生成しない場合でも鉄損特性の時効劣化を引
き起こすので、C含有量は0.01wt%以下とする必要があ
る。なお、下限は特に限定されないが、コスト等の面か
ら0.0005wt%以上とすることが望ましい。
【0036】Si:3.5 wt%以下 Siは、鋼の比抵抗を高め鉄損を低下させる有用元素であ
り、目標とする磁気特性に応じて含有量を変化させる。
しかしながら、同時に硬度も上昇させ、冷間圧延性およ
び打抜性を悪化させるので、上限を 3.5wtとした。
【0037】Al:0.6 〜2.5 wt% Alは、Siと同様に、鋼の比抵抗を高め鉄損を低下させる
元素であり、目標とする磁気特性に応じて含有量を変化
させる。しかしながら、その含有量が多い場合には連続
鋳造時にモールドとの潤滑性が低下し、鋳造が困難とな
るので、上限を2.5 wt%に定めた。また、Al量が少ない
場合には、この発明の問題とする歪取焼鈍での窒化は抑
制され、特性の劣化が生じることはないので、この発明
ではかような窒化が懸念される範囲として下限を 0.6wt
%に定めた。
【0038】Mn:0.1 〜1.5 wt% Mnも、SiやAlほどではないが鋼の比抵抗を高め、鉄損を
低下させる効果があり、また熱間圧延性を改善する効果
もあるので、下限は 0.1wt%とした。しかし、あまりに
多くなると冷間圧延性が劣化するので、上限は1.5 wt%
とした。
【0039】P:0.1 wt%以下 Pも、SiやAlほどではないが鋼の比抵抗を高め、鉄損を
低下させる効果があるだけでなく、粒界偏析により冷延
再結晶後の集合組織を改善して磁束密度を向上させる効
果がある。しかしながら、過度に添加すると粒界偏析量
が多くなってかえって粒成長性を阻害し鉄損を劣化させ
るので、0.1 wt%以下で含有させるものとした。
【0040】S:0.01wt%以下 Sは、析出物、介在物を形成し粒成長性を阻害するの
で、極力低減すべき元素である。鋼中における残存量が
多い場合には、介在物の粒子数が増え、粒成長性に悪影
響を及ぼす。特に,この発明では、歪取焼鈍の 750℃と
いう比較的低温で粒界移動度の低い状態での粒成長性を
確保するために、Sの上限は0.01wt%に制限した。
【0041】以上、必須成分について説明したが、その
他にも素材中に、各種の公知元素を添加することが可能
であり、例えば磁気特性改善成分としてB,Ni, Cu, S
b, Sn, BiおよびGe等を添加することができる。なお、
これらの元素は、製造過程において磁気特性改善の作用
を果たしたのちは、不純物として鋼板中に残留する。
【0042】次に、製造方法について説明する。溶製後
のスラブ製造条件や、熱間圧延条件および冷間圧延条件
については、特に限定されることはなく、常法に従って
行えば良い。
【0043】この発明において、極表層にAl濃化層さら
にはSi濃化層を適正範囲に形成するには、仕上げ焼鈍条
件とくに雰囲気露点が重要である。また、そればかりで
なく、熱延以降の工程において、鋼板表面のスケール特
に内部スケールの除去に留意する必要がある。というの
は、通常、スケールはFe,AlおよびSiの酸化物からな
り、外部スケールは還元によりはく離するものの、内部
スケールは還元されてもAl,Siの濃化層が残るため、こ
れによって仕上げ焼鈍後の鋼板の極表層に過剰な濃化層
が形成されてしまうからである。
【0044】従って、熱延板および熱延板焼鈍後の表面
スケールを、仕上げ焼鈍に先立ち、機械的および/また
は化学的に、望ましくはほぼ完全に除去する必要があ
る。具体的な除去方法としては、通常、ステンレス鋼板
等の外観を重視する場合に用いられるショットブラスト
投射や、研削ロール、研削ブラシ等による機械的除去、
さらにはフッ酸等の強酸または反応促進剤を添加した酸
による酸洗等の化学的除去が有利に適合する。
【0045】上記したように、鋼板表面のスケールをほ
ぼ完全に除去した場合には、仕上げ焼鈍時における雰囲
気露点を−10℃以下とすることによって、所望濃度のA
l,Si濃化層を形成させることができる。なお、表面ス
ケールが幾分残存している場合には、雰囲気露点を一層
下げてやれば、同様に所望濃度のAl,Si濃化層を得るこ
とができる。
【0046】なお、仕上げ焼鈍は、基本的にα単相域で
行うが、焼鈍温度が 700℃を下回ると冷延後の再結晶が
十分に達成されず、一方、Si, Al等を多く含有しγ相を
生じない成分系であっても、1000℃を超える高温の場合
にはスケールの生成量が増大し、モーター製造の際の打
ち抜き金型の寿命を短くしてしまうため、仕上げ焼鈍温
度は 700〜1000℃とするのが好ましい。
【0047】また、仕上げ焼鈍の雰囲気としてH2濃度が
20%を下回るとやはり鋼板表面にスケールが生成し、金
型による打ち抜き性を劣化させるのでH2濃度20%以上と
するのが好ましい。
【0048】なお、無方向性電磁鋼板は必要に応じて絶
縁性をはじめとして、耐食性、すべり性、接着性等の様
々な機能を付与するためコーティングを施すことは一般
的であるが、種々のコーティングが塗布された場合でも
この発明の効果は損なわれるものでなく、同様に歪取焼
鈍での磁性改善不良を防止することができる。
【0049】実施例 表7に示す成分組成になる鋼を、転炉および真空脱ガス
により成分調整した後、連続鋳造によりスラブとし、こ
れらのスラブを通常のガス加熱炉により再加熱した後、
熱間圧延により厚み:2.6 mmの熱延板とした。ついで、
熱延スケールを除去することなく、1100℃, 10秒の熱延
板焼鈍を施した後、ショットブラストの投射と反応促進
剤を添加した温度30℃以上の塩酸酸洗とにより、熱延板
焼鈍で形成されたスケールを除去し、冷間圧延で 0.5mm
厚とした後、H2, N2混合雰囲気中において表8に示す条
件下で再結晶焼鈍を施し、製品板とした。かくして得ら
れた製品板およびそれらをN2雰囲気にて 750℃, 2時間
の歪取焼鈍を施した後の磁気特性について調べた結果
を、表8に併記する。
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】表8に示したとおり、この発明に従い、仕
上げ焼鈍時に鋼板の極表層に、Al濃化層さらにはSi濃化
層を形成させたものはいずれも、歪取焼鈍後に優れた鉄
損特性が得られている。
【0053】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、歪取焼鈍
をN雰囲気中で行ったとしても、鋼板内部へのNの侵入
を効果的に抑制して、良好な粒成長性を確保することが
でき、従って歪取焼鈍による鉄損特性改善効果を最大限
実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上げ焼鈍条件の違いによる、表層近傍におけ
るAl濃度プロファイルの違いを比較して示したグラフで
ある。
【図2】仕上げ焼鈍ままと、表層を化学研磨により除去
したものそのAl濃度プロファイルの違いを比較して示し
たグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本田 厚人 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (56)参考文献 特開 平7−258736(JP,A) 特開 平8−60252(JP,A) 特開 平8−97023(JP,A) 特公 昭48−19766(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 8/12 C21D 9/46 501 H01F 1/16 - 1/18

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.01wt%以下、 Si:3.5 wt%以下、 Mn:0.1 〜1.5 wt%、 Al:0.6 〜2.5 wt%、 P:0.1 wt%以下、 S:0.01wt%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不
    純物の組成になる無方向性電磁鋼板であって、鋼板表面
    から1μm 以内の極表層にAlの濃化層をもち、その最大
    Al濃度が全板厚平均値の1.1倍以上、2.0 倍以下である
    ことを特徴とする歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向
    性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】C:0.01wt%以下、 Si:3.5 wt%以下、 Mn:0.1 〜1.5 wt%、 Al:0.6 〜2.5 wt%、 P:0.1 wt%以下、 S:0.01wt%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不
    純物の組成になる無方向性電磁鋼板であって、鋼板表面
    から1μm 以内の極表層にAlとSiの濃化層をもち、その
    最大Al濃度が全板厚平均値の1.1 倍以上、2.0 倍以下
    で、かつその最大Si濃度が全板厚平均値の1.1 倍以上、
    3.0 倍以下であることを特徴とする歪取焼鈍後の磁気特
    性に優れた無方向性電磁鋼板。
JP34120996A 1996-12-20 1996-12-20 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 Expired - Fee Related JP3508436B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34120996A JP3508436B2 (ja) 1996-12-20 1996-12-20 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34120996A JP3508436B2 (ja) 1996-12-20 1996-12-20 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10183310A JPH10183310A (ja) 1998-07-14
JP3508436B2 true JP3508436B2 (ja) 2004-03-22

Family

ID=18344230

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP34120996A Expired - Fee Related JP3508436B2 (ja) 1996-12-20 1996-12-20 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3508436B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4669515B2 (ja) * 2005-07-28 2011-04-13 オムロン株式会社 電磁鋼板部品およびその製造方法
KR101089310B1 (ko) 2009-07-10 2011-12-02 주식회사 포스코 고장력 무방향성 전기강판 및 그 제조방법
KR101649324B1 (ko) 2010-04-26 2016-08-19 주식회사 포스코 철손이 낮은 무방향성 전기강판 및 그 제조 방법
BR112018075826B1 (pt) 2016-08-05 2022-08-16 Nippon Steel Corporation Chapa de aço elétrica não orientada, método de fabricação de chapa de aço elétrica não orientada e método de fabricação de núcleo de motor
JP6794705B2 (ja) * 2016-08-05 2020-12-02 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板の製造方法及びモータコアの製造方法
JP6794704B2 (ja) * 2016-08-05 2020-12-02 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板の製造方法及びモータコアの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10183310A (ja) 1998-07-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3404124B1 (en) Non-oriented electrical steel sheet and production method thereof
CN113166869B (zh) 无方向性电磁钢板及其制造方法
JP6870687B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP2001316729A (ja) 鉄損が低くかつ磁束密度の高い無方向性電磁鋼板の製造方法
JPH0756048B2 (ja) 被膜特性と磁気特性に優れた薄型方向性けい素鋼板の製造方法
KR950005791B1 (ko) 고스(Goss) 방위로 집적한 결정방위를 갖는 방향성 규소강판의 제조방법
JP3508436B2 (ja) 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板
JP3846064B2 (ja) 方向性電磁鋼板
JP2004332071A (ja) 高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法
JP4810777B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2003293101A (ja) 歪取焼鈍後の磁気特性および耐食性に優れた無方向性電磁鋼板
JP3885428B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP3352904B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP3331401B2 (ja) 全周磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法
JP3312000B2 (ja) 被膜特性および磁気特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法
JP2005002401A (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP4258163B2 (ja) 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板
JP3430830B2 (ja) 磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法
JP2560579B2 (ja) 高透磁率を有する高珪素鋼板の製造方法
JPH0696743B2 (ja) 磁気特性の優れた一方向性珪素鋼板の製造方法
JP2003193141A (ja) 被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JPH0949023A (ja) 鉄損が優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JP2019085632A (ja) 方向性電磁鋼板及びその製造方法
JPH08279408A (ja) 磁気特性が優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JP7328597B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20031215

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080109

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090109

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090109

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100109

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110109

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130109

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130109

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140109

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees