JP6794704B2 - 無方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板の製造方法及びモータコアの製造方法 - Google Patents
無方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板の製造方法及びモータコアの製造方法 Download PDFInfo
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Description
かかる知見に基づく本発明の要旨は、以下の通りである。
[2]残部のFeの一部に換えて、更に、Sn又はSbの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、[1]に記載の無方向性電磁鋼板。
[3]残部のFeの一部に換えて、更に、Ni、Cu又はCrの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、[1]又は[2]に記載の無方向性電磁鋼板。
[4]残部のFeの一部に換えて、更に、0.0005質量%以上0.0025質量%以下のCa、又は、0.0005質量%以上0.0050質量%以下のREMの少なくとも何れかを含有する、[1]〜[3]の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板。
[5]前記地鉄の表面に、更に絶縁被膜を有する、[1]〜[4]の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板。
[6]所定の化学成分を有する鋼塊に対して、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍を順に実施することで、無方向性電磁鋼板を製造する方法であって、前記鋼塊は、質量%で、C:0.0010%〜0.0050%、Si:2.5%〜4.0%、Al:0.2%〜2.0%、Mn:0.05%〜2.0%、P:0.005%〜0.15%、S:0.0001%〜0.0030%、Ti:0.0005%〜0.0030%、N:0.0010%〜0.0030%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、前記熱間圧延後にスケールを除去しないままで、焼鈍雰囲気中の露点を−40℃以上60℃以下とし、焼鈍温度を900℃以上1100℃以下とし、かつ、均熱時間を1秒以上300秒以下とした前記熱延板焼鈍を実施し、前記酸洗により、酸洗板における地鉄表面からの深さ方向でのAl濃度について、以下の式(2)に示す関係式を満足するように酸洗減量を制御しつつ、内部酸化層を含むスケール層を除去し、前記冷間圧延により、地鉄の最終板厚を0.10mm以上0.35mm以下とし、前記仕上焼鈍において、仕上焼鈍温度を950℃以下とする、無方向電磁鋼板の製造方法。
[7]前記仕上焼鈍後に、前記地鉄の表面に絶縁被膜を形成する、[6]に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
[8]前記鋼塊は、残部のFeの一部に換えて、更に、Sn又はSbの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、[6]又は[7]に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
[9]前記鋼塊は、残部のFeの一部に換えて、更に、Ni、Cu又はCrの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、[6]〜[8]の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
[10]前記鋼塊は、残部のFeの一部に換えて、更に、0.0005質量%以上0.0025質量%以下のCa、又は、0.0005質量%以上0.0050質量%以下のREMの少なくとも何れかを含有する、[6]〜[9]の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
[11]質量%で、C:0.0010%〜0.0050%、Si:2.5%〜4.0%、Al:0.2%〜2.0%、Mn:0.05%〜2.0%、P:0.005%〜0.15%、S:0.0001%〜0.0030%、Ti:0.0005%〜0.0030%、N:0.0010%〜0.0030%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、地鉄の板厚が0.10mm以上0.35mm以下であり、地鉄表面からの深さ方向でのAl濃度について、以下の式(1)に示す関係式を満足する無方向性電磁鋼板を、コア形状に打ち抜いて積層した後、70体積%以上窒素を含有した雰囲気中で、750℃以上900℃以下の温度で歪取り焼鈍を実施する、モータコアの製造方法。
[12]前記無方向性電磁鋼板は、前記地鉄の表面に、更に絶縁被膜を有する、[11]に記載のモータコアの製造方法。
[13]前記無方向性電磁鋼板は、残部のFeの一部に換えて、更に、Sn又はSbの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、[11]又は[12]に記載のモータコアの製造方法。
[14]前記無方向性電磁鋼板は、残部のFeの一部に換えて、更に、Ni、Cu又はCrの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、[11]〜[13]の何れか1つに記載のモータコアの製造方法。
[15]前記無方向性電磁鋼板は、残部のFeの一部に換えて、更に、0.0005質量%以上0.0025質量%以下のCa、又は、0.0005質量%以上0.0050質量%以下のREMの少なくとも何れかを含有する、[11]〜[14]の何れか1つに記載のモータコアの製造方法。
ここで、上記式(1)において、
x:地鉄表面からの深さ[μm]
Al(x≦2μm):地鉄表面から深さ2μmまでのAl濃度の平均値
Al(x=10μm):深さ10μmの位置でのAl濃度
を表す。
ここで、上記式(2)において、
x:地鉄表面からの深さ[μm]
Al(x≦5μm):地鉄表面から深さ5μmまでのAl濃度の平均値
Al(x=10μm):深さ10μmの位置でのAl濃度
を表す。
まず、図1〜図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造を模式的に示した説明図である。図2は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の地鉄について説明するための説明図である。図3は、本実施形態に係る地鉄におけるAl濃度の分布について模式的に示した説明図である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の地鉄11は、質量%で、C:0.0010%〜0.0050%、Si:2.5%〜4.0%、Al:0.2%〜2.0%、Mn:0.05%〜2.0%、P:0.005%〜0.15%、S:0.0001%〜0.0030%、Ti:0.0005%〜0.0030%、N:0.0010%〜0.0030%を含有し、残部がFe及び不純物からなる。
C(炭素)は、鉄損劣化を引き起こす元素である。Cの含有量が0.0050%を超える場合には、無方向性電磁鋼板において鉄損劣化が生じ、良好な磁気特性を得ることができない。従って、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、Cの含有量を、0.0050%以下とする。一方、Cの含有量が0.0010%未満となる場合には、無方向性電磁鋼板において磁束密度が低下し、良好な磁気特性を得ることができない。従って、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、Cの含有量を、0.0010%以上とする。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板において、Cの含有量は、好ましくは、0.0010%以上0.0040%以下であり、更に好ましくは、0.0015%以上0.0030%以下である。
Si(ケイ素)は、鋼の電気抵抗を上昇させて渦電流損を低減させ、高周波鉄損を改善する元素である。また、Siは、固溶強化能が大きいため、無方向性電磁鋼板の高強度化にも有効な元素である。かかる効果を十分に発揮させるためには、2.5%以上のSiを含有させることが必要である。一方、Siの含有量が4.0%を超える場合には、加工性が著しく劣化し、冷間圧延を実施することが困難となる。従って、Siの含有量は、4.0%以下とする。Siの含有量は、好ましくは、2.7%以上3.7%以下であり、更に好ましくは、3.0%以上3.5%以下である。
Al(アルミニウム)は、無方向性電磁鋼板の電気抵抗を上昇させることで渦電流損を低減し、高周波鉄損を改善するために有効な元素である。Alの含有量が0.2%未満である場合には、電気抵抗上昇の効果が小さく、また、AlNが電磁鋼板中に微細に析出するため、結晶粒が微細となることで鉄損低減に悪影響を及ぼす。そのため、Alの含有量は、0.2%以上とする。一方、Alの含有量が2.0%を超える場合には、無方向性電磁鋼板の磁束密度が著しく低下する。従って、Alの含有量は、2.0%以下とする。Alの含有量は、好ましくは、0.25%以上1.5%以下であり、更に好ましくは、0.3%以上1.2%以下である。
Mn(マンガン)は、鋼の電気抵抗を上昇させて渦電流損を低減し、高周波鉄損を改善するために有効な元素である。かかる効果を十分に発揮させるためには、0.05%以上のMnを含有させることが必要である。一方、Mnの含有量が2.0%超過となる場合、磁束密度の低下が顕著となる。従って、Mnの含有量は、2.0%以下とする。Mnの含有量は、好ましくは、0.2%以上1.5%以下であり、更に好ましくは、0.5%以上1.3%以下である。
P(リン)は、固溶強化能が大きく、加えて磁気特性の向上に有利な{100}集合組織を増加させる効果も有するため、高強度と高磁束密度とを両立するうえで極めて有効な元素である。更に、{100}集合組織の増加は、無方向性電磁鋼板の板面内における機械特性の異方性を低減することにも寄与するため、Pは、無方向性電磁鋼板の打ち抜き加工時の寸法精度を改善する効果も有する。このような強度、磁気特性、及び、寸法精度を改善する効果を得るためには、Pの含有量を0.005%以上とすることが必要である。一方、Pの含有量が0.15%を超える場合には、無方向性電磁鋼板の延性が著しく低下する。従って、Pの含有量は、0.15%以下とする。Pの含有量は、好ましくは、0.01%以上0.10%以下であり、更に好ましくは、0.04%以上0.08%以下である。
S(硫黄)は、MnSの微細析出物を形成することで鉄損を増加させ、無方向性電磁鋼板の磁気特性を劣化させる元素である。そのため、Sの含有量は、0.0030%以下とする必要がある。一方、Sの含有量を0.0001%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Sの含有量は、0.0001%以上とする。Sの含有量は、好ましくは、0.0003%以上0.0020%以下であり、更に好ましくは、0.0005%以上0.0010%以下である。
N(窒素)は、磁気時効を引き起こして鉄損を増加させ、無方向性電磁鋼板の磁気特性を劣化させる元素である。そのため、Nの含有量は、0.0030%以下とする必要がある。一方、Nの含有量を0.0001%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Nの含有量は、0.0001%以上とする。Nの含有量は、好ましくは、0.0010%以上0.0025%以下であり、更に好ましくは、0.0010%以上0.0020%以下である。
Ti(チタン)は、C、N、Mn等と結合して介在物を形成し、歪取り焼鈍中の結晶粒の成長を阻害して磁気特性を劣化させる元素である。従って、Tiの含有量は、0.0030%以下とする。一方、Tiの含有量を0.0005%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Tiの含有量は、0.0005%以上とする。Tiの含有量は、好ましくは、0.0005%以上0.0015%以下であり、更に好ましくは、0.0006%以上0.0010%以下である。
[Sb:0.01%〜0.2%]
Sn(スズ)及びSb(アンチモン)は、表面に偏析し焼鈍中の酸化を抑制することで、低い鉄損を確保するのに有用な任意添加元素である。従って、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、かかる効果を得るために、Sn又はSbの少なくとも何れか一方を、任意添加元素として地鉄中に含有させてもよい。かかる効果を十分に発揮させるためには、Sn又はSbの含有量を、それぞれ0.01%以上とすることが好ましい。一方、Sn又はSbの含有量がそれぞれ0.2%を超える場合には、地鉄の延性が低下して冷間圧延が困難となる可能性がある。従って、Sn又はSbの含有量は、それぞれ0.2%以下とすることが好ましい。Sn又はSbを地鉄中に含有させる場合に、Sn又はSbの含有量は、より好ましくは、それぞれ0.03%以上0.10%以下である。
[Cu:0.01%〜0.2%]
[Cr:0.01%〜0.2%]
Ni(ニッケル)、Cu(銅)、及び、Cr(クロム)は、比抵抗を高めて鉄損を低減させるのに有効な任意添加元素である。従って、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、かかる効果を得るために、Ni、Cu又はCrの少なくとも何れか一方を、任意添加元素として地鉄中に含有させてもよい。かかる効果を十分に発揮させるためには、Ni、Cu又はCrの含有量を、それぞれ0.01%以上とすることが好ましい。一方、Ni、Cu又はCrの含有量がそれぞれ0.2%を超える場合には、磁束密度が劣化する可能性がある。従って、Ni、Cu又はCrの含有量は、それぞれ0.2%以下とすることが好ましい。Ni、Cu又はCrを地鉄中に含有させる場合に、Ni、Cu又はCrの含有量は、より好ましくは、それぞれ0.03%以上0.10%以下である。
[REM:0.0005%〜0.0050%]
Ca(カルシウム)及びREM(Rare Earth Metal:希土類元素)は、それぞれ、仕上焼鈍時における結晶粒成長を促進させるのに有効な任意添加元素である。従って、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、かかる効果を得るために、Ca又はREMの少なくとも何れか一方を、任意添加元素として地鉄中に含有させてもよい。かかる効果を十分に発揮させるためには、Ca又はREMの含有量を、それぞれ0.0005%以上とすることが好ましい。一方、Caの含有量が0.0025%を超える場合、又はREMの含有量が0.0050%を超える場合には、効果が飽和してしまい、コストアップを招くだけである。従って、Caの含有量は、0.0025%以下とすることが好ましく、REMの含有量は、0.0050%以下とすることが好ましい。Ca又はREMを地鉄中に含有させる場合に、Caの含有量は、より好ましくは、0.0010%以上0.0025%以下であり、REMの含有量は、より好ましくは、0.0010%以上0.0030%以下である。
なお、無方向性電磁鋼板における地鉄の化学成分を、事後的に測定する場合には、公知の各種測定法を利用することが可能であり、例えば、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)法等を適宜利用すればよい。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10における地鉄11の板厚(図1における厚みt)は、高周波鉄損を低減するために0.35mm以下とする必要がある。一方、地鉄11の板厚tが0.10mm未満である場合には、板厚が薄いために焼鈍ラインの通板が困難となる可能性がある。従って、無方向性電磁鋼板10における地鉄11の板厚tは、0.10mm以上0.35mm以下とする。無方向性電磁鋼板10における地鉄11の板厚tは、好ましくは、0.19mm以上0.31mm以下である。
続いて、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の地鉄11におけるAlの深さ方向分布について、説明する。
先だって簡単に言及したように、歪取り焼鈍は、非酸化雰囲気として窒素中で行われることが多いが、その際に地鉄の窒化の進行と窒化に伴うAlNの析出とによって、鉄損の劣化が生じてしまう。不活性雰囲気に、窒素ではなくアルゴンやヘリウムを用いることで、窒化は抑制することができるが、コストがかかる。従って、歪取り焼鈍に窒素を主たる雰囲気として用いることは、工業的に不可欠である。ここで、本発明者らは、Nが結合する相手となるAlが少なければAlNの析出が抑制でき、鉄損の劣化を抑制できるとの知見を得た。
0.1≦Al(x≦2μm)/Al(x=10μm)<1.0 ・・・式(101)
x:地鉄11の表面からの深さ[μm]
Al(x≦2μm):地鉄表面から深さ2μmまでのAl濃度の平均値[質量%]
Al(x=10μm):深さ10μmの位置でのAl濃度[質量%]
を表す。
再び図1に戻って、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10が有していることが好ましい絶縁被膜13について、簡単に説明する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10は、上記のような構造を有することで、優れた磁気特性を示すものとなる。ここで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の示す各種の磁気特性は、JIS C2550に規定されたエプスタイン法や、JIS C2556に規定された単板磁気特性測定法(Single Sheet Tester:SST)に則して、測定することが可能である。
続いて、図4及び図5を参照しながら、以上説明したような本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の製造方法について、詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の流れの一例を示した流れ図であり、図5は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法について説明するための説明図である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10の製造方法では、まず、上記の化学組成を有する鋼塊(スラブ)を加熱し、加熱された鋼塊について熱間圧延を行って、熱延板を得る(ステップS101)。ここで、熱間圧延に供する際の鋼塊の加熱温度については、特に規定するものではないが、例えば、1050℃以上1200℃以下とすることが好ましい。また、熱間圧延後の熱延板の板厚についても、特に規定するものではないが、地鉄の最終板厚を考慮して、例えば、1.5mm〜3.0mm程度とすることが好ましい。
上記熱間圧延の後には、熱延板焼鈍が実施される(ステップS103)。ここで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、熱間圧延によって地鉄の表面に形成されたスケールを除去しないままで、熱延板焼鈍が実施される。以下で説明するように、熱間圧延によって生じたスケールを除去せずに焼鈍を実施することで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板10に特徴的な脱Al層103を形成することが可能となる。
上記熱延板焼鈍の後には、酸洗が実施される(ステップS105)。本実施形態に係る酸洗工程では、酸洗板における地鉄表面からの深さ方向でのAl濃度について、上記式(1)に示す関係式を満足するように酸洗減量を制御しつつ、内部酸化層(すなわち、Al濃化層)を含むスケール層が除去される。
0.1≦Al(x≦5μm)/Al(x=10μm)<1.0 ・・・式(103)
x:地鉄11の表面からの深さ[μm]
Al(x≦5μm):地鉄表面から深さ5μmまでのAl濃度の平均値[質量%]
Al(x=10μm):深さ10μmの位置でのAl濃度[質量%]
を表す。
上記酸洗の後には、冷間圧延が実施される(ステップS107)。かかる冷間圧延では、地鉄の最終板厚が0.10mm以上0.35mm以下となるような圧下率で、スケール及びAl濃化層の除去された酸洗板が圧延される。図5右下の図に示したように、かかる冷間圧延により、母材部の金属組織は、冷間圧延によって得られる冷延組織となる。
上記冷間圧延の後には、仕上焼鈍が実施される(ステップS109)。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法においては、熱延板焼鈍工程において脱Al層が形成され、その後の工程では、脱Al層の形成されている状態を維持しているが、仕上焼鈍工程において、仕上焼鈍温度が950℃を超える場合には、母材部から脱Al層へとAlが拡散して、脱Al層が消失してしまう可能性が高くなる。従って、かかる仕上焼鈍では、仕上焼鈍温度を950℃以下とする。仕上焼鈍温度を950℃以下とする仕上焼鈍を実施することで、母材部の組織に、モータコアの製造に際して実施される歪取り焼鈍において好適に再結晶組織の粒成長を生じさせることが可能な、微細な再結晶組織が生成される。一方、仕上焼鈍温度が750℃未満となる場合には、焼鈍時間が長くなりすぎて、生産性を低下させてしまう可能性が高い。従って、かかる仕上焼鈍において、仕上焼鈍温度は、750℃以上であることが好ましい。仕上焼鈍温度は、より好ましくは、775℃以上900℃以下である。
上記仕上焼鈍の後には、必要に応じて、絶縁被膜の形成工程が実施される(ステップS111)。ここで、絶縁被膜の形成工程については、特に限定されるものではなく、上記のような公知の絶縁被膜処理液を用いて、公知の方法により処理液の塗布及び乾燥を行えばよい。
続いて、図6を参照しながら、以上説明したような本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を用いた、モータコアの製造方法について、簡単に説明する。
図6は、本実施形態に係るモータコアの製造方法の流れの一例を示した流れ図である。
以下の表1に示す成分組成のスラブについて、1150℃に加熱した後、仕上温度850℃、仕上板厚2.0mmにて熱間圧延を施し、650℃で巻取って熱延板とした。表面のスケールについては、熱間圧延の巻取り前の冷却以降から熱延板焼鈍までスケール除去工程を経ずに、雰囲気露点10℃の窒素雰囲気にて1000℃×50秒の熱延板焼鈍を施し、塩酸で酸洗した。この際に、酸洗時の酸液の酸濃度、温度、時間を変更することで、以下の表2に示すようなAl(x≦5μm)/Al(x=10μm)となるような酸洗板を製造した。これらの酸洗板は、冷間圧延により板厚0.25mmの冷延板とした。更に、水素20%窒素80%露点0℃の混合雰囲気にて、表2に示すような仕上焼鈍条件で焼鈍し、絶縁被膜を塗布し、無方向性電磁鋼板とした。これらの無方向性電磁鋼板の一部を、露点−40℃の窒素雰囲気で800℃×2時間の歪取り焼鈍を施した。なお、熱延板焼鈍時における800℃〜500℃までの温度域での冷却速度を、40℃/秒とし、仕上焼鈍時における950℃以下700℃以上の温度域での加熱速度、及び、900℃以下500℃以上の温度域での冷却速度を、それぞれ、100℃/秒、及び、30℃/秒とした。また、歪取り焼鈍における500℃以上700℃以下での加熱速度、及び、冷却速度を、それぞれ、100℃/Hr、及び、100℃/Hrとした。また、絶縁被膜は、リン酸アルミニウムと粒径0.2μのアクリル−スチレン共重合体樹脂エマルジョンからなる絶縁被膜を所定付着量となるよう塗布し、大気中、350℃で焼付けることで形成した。
11 地鉄
13 絶縁被膜
101 母材部
103 脱Al層
Claims (15)
- 質量%で、
C:0.0010%〜0.0050%
Si:2.5%〜4.0%
Al:0.2%〜2.0%
Mn:0.05%〜2.0%
P:0.005%〜0.15%
S:0.0001%〜0.0030%
Ti:0.0005%〜0.0030%
N:0.0010%〜0.0030%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
地鉄の板厚が0.10mm以上0.35mm以下であり、
地鉄表面からの深さ方向でのAl濃度について、以下の式(1)に示す関係式を満足する、無方向性電磁鋼板。
0.1≦Al(x≦2μm)/Al(x=10μm)<1.0 ・・・(1)
ここで、上記式(1)において、
x:地鉄表面からの深さ[μm]
Al(x≦2μm):地鉄表面から深さ2μmまでのAl濃度の平均値
Al(x=10μm):深さ10μmの位置でのAl濃度
を表す。 - 残部のFeの一部に換えて、更に、Sn又はSbの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
- 残部のFeの一部に換えて、更に、Ni、Cu又はCrの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、請求項1又は2に記載の無方向性電磁鋼板。
- 残部のFeの一部に換えて、更に、0.0005質量%以上0.0025質量%以下のCa、又は、0.0005質量%以上0.0050質量%以下のREMの少なくとも何れかを含有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
- 前記地鉄の表面に、更に絶縁被膜を有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
- 所定の化学成分を有する鋼塊に対して、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍を順に実施することで、無方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
前記鋼塊は、質量%で、
C:0.0010%〜0.0050%
Si:2.5%〜4.0%
Al:0.2%〜2.0%
Mn:0.05%〜2.0%
P:0.005%〜0.15%
S:0.0001%〜0.0030%
Ti:0.0005%〜0.0030%
N:0.0010%〜0.0030%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
前記熱間圧延後にスケールを除去しないままで、焼鈍雰囲気中の露点を−40℃以上60℃以下とし、焼鈍温度を900℃以上1100℃以下とし、かつ、均熱時間を1秒以上300秒以下とした前記熱延板焼鈍を実施し、
前記酸洗により、酸洗板における地鉄表面からの深さ方向でのAl濃度について、以下の式(2)に示す関係式を満足するように酸洗減量を制御しつつ、内部酸化層を含むスケール層を除去し、
前記冷間圧延により、地鉄の最終板厚を0.10mm以上0.35mm以下とし、
前記仕上焼鈍において、仕上焼鈍温度を950℃以下とする、無方向電磁鋼板の製造方法。
0.1≦Al(x≦5μm)/Al(x=10μm)<1.0 ・・・(2)
ここで、上記式(2)において、
x:地鉄表面からの深さ[μm]
Al(x≦5μm):地鉄表面から深さ5μmまでのAl濃度の平均値
Al(x=10μm):深さ10μmの位置でのAl濃度
を表す。 - 前記仕上焼鈍後に、前記地鉄の表面に絶縁被膜を形成する、請求項6に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼塊は、残部のFeの一部に換えて、更に、Sn又はSbの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、請求項6又は7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼塊は、残部のFeの一部に換えて、更に、Ni、Cu又はCrの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、請求項6〜8の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼塊は、残部のFeの一部に換えて、0.0005質量%以上0.0025質量%以下のCa、又は、0.0005質量%以上0.0050質量%以下のREMの少なくとも何れかを含有する、請求項6〜9の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 質量%で、
C:0.0010%〜0.0050%
Si:2.5%〜4.0%
Al:0.2%〜2.0%
Mn:0.05%〜2.0%
P:0.005%〜0.15%
S:0.0001%〜0.0030%
Ti:0.0005%〜0.0030%
N:0.0010%〜0.0030%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
地鉄の板厚が0.10mm以上0.35mm以下であり、
地鉄表面からの深さ方向でのAl濃度について、以下の式(1)に示す関係式を満足する無方向性電磁鋼板を、
コア形状に打ち抜いて積層した後、70体積%以上窒素を含有した雰囲気中で、750℃以上900℃以下の温度で歪取り焼鈍を実施する、モータコアの製造方法。
0.1≦Al(x≦2μm)/Al(x=10μm)<1.0 ・・・(1)
ここで、上記式(1)において、
x:地鉄表面からの深さ[μm]
Al(x≦2μm):地鉄表面から深さ2μmまでのAl濃度の平均値
Al(x=10μm):深さ10μmの位置でのAl濃度
を表す。 - 前記無方向性電磁鋼板は、前記地鉄の表面に、更に絶縁被膜を有する、請求項11に記載のモータコアの製造方法。
- 前記無方向性電磁鋼板は、残部のFeの一部に換えて、更に、Sn又はSbの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、請求項11又は12に記載のモータコアの製造方法。
- 前記無方向性電磁鋼板は、残部のFeの一部に換えて、更に、Ni、Cu又はCrの少なくとも何れかを、それぞれ0.01質量%以上0.2質量%以下含有する、請求項11〜13の何れか1項に記載のモータコアの製造方法。
- 前記無方向性電磁鋼板は、残部のFeの一部に換えて、更に、0.0005質量%以上0.0025質量%以下のCa、又は、0.0005質量%以上0.0050質量%以下のREMの少なくとも何れかを含有する、請求項11〜14の何れか1項に記載のモータコアの製造方法。
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