JP2022030684A - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2022030684A
JP2022030684A JP2020134849A JP2020134849A JP2022030684A JP 2022030684 A JP2022030684 A JP 2022030684A JP 2020134849 A JP2020134849 A JP 2020134849A JP 2020134849 A JP2020134849 A JP 2020134849A JP 2022030684 A JP2022030684 A JP 2022030684A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
plate
layer
oriented electrical
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020134849A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7331802B2 (ja
Inventor
正憲 大立
Masanori Odate
智幸 大久保
Tomoyuki Okubo
善彰 財前
Yoshiaki Zaizen
幸乃 宮本
Yukino MIYAMOTO
善彦 尾田
Yoshihiko Oda
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2020134849A priority Critical patent/JP7331802B2/ja
Publication of JP2022030684A publication Critical patent/JP2022030684A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7331802B2 publication Critical patent/JP7331802B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Abstract

【課題】鋼板表面に酸化物層を形成することなく、鋼板に張力を付与した無方向性電磁鋼板を提供すること。【解決手段】質量%で、C:0.005%以下、Si:1.0%以上7.0%以下、Mn:0.02%以上4.0%以下、Sol.Al:0.001%以上4.0%以下、P:0.001%以上0.2%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、格子定数が、板厚中心の格子定数より0.002Å以上大きい領域であるA層を両表面に有し、前記A層の表面から板厚方向への深さが20μm以下である、無方向性電磁鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関し、特に、モータの鉄心に使用される無方向性電磁鋼板とその製造方法に関する。
無方向性電磁鋼板はモータやトランスの鉄心として使用される材料であり、これら電気機器の効率向上の観点から無方向性電磁鋼板には低鉄損が要求される。無方向性電磁鋼板の鉄損低減には固有抵抗の増加や薄手化が有効である。しかしながら、無方向性電磁鋼板の固有抵抗を増加するには合金コストが、薄手化するには圧延や焼鈍のコストが増加するという課題があり、新たな鉄損低減手法の確立が望まれている。
固有抵抗や薄手化以外の鉄損低減手法として、無方向性電磁鋼板に張力を加えることでヒステリシス損を改善する手法が知られている。特許文献1にあるように、方向性電磁鋼板では鋼板表面に酸化物からなる皮膜を形成し、ガラスコーティングを施すことで、皮膜と鋼板との熱膨張差により張力を付与する方法がとられている。
また、特許文献2では、無方向性電磁鋼板において鋼板表面に酸化物を主体とする複層構造の被膜を形成することで、被膜と鋼板の密着性を損なうことなく鋼板に張力を付与する方法が開示されている。
特開2008-31499号公報 特開2017-101292号公報
しかしながら、前記特許文献1、2に開示された方法では、鋼板表面に硬い酸化物層を形成することから、打ち抜きによりモータ鉄心に加工する際に金型の寿命を縮めてしまい、生産性が低下、コストが増加するという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、鋼板表面に酸化物層を形成することなく、鋼板に張力を付与した無方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決に向け、α-Feに固溶し格子定数に及ぼす鋼成分の影響に着目して検討を重ねた。その結果、特定の固溶元素を鋼板表面に濃化させることで、鋼板表層と板厚中心層の格子定数差により、引張応力が生じることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は次の通りである。
[1]質量%で、
C:0.005%以下、
Si:1.0%以上7.0%以下、
Mn:0.02%以上4.0%以下、
Sol.Al:0.001%以上4.0%以下、
P:0.001%以上0.2%以下、
S:0.005%以下、
N:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
格子定数が、板厚中心の格子定数より0.002Å以上大きい領域であるA層を両表面に有し、前記A層の表面から板厚方向への深さが20μm以下である、無方向性電磁鋼板。
[2]前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、
Sb:0.002%以上0.5%以下、
Sn:0.002%以上0.5%以下、
W:0.002%以上0.5%以下、
Zn:0.002%以上0.5%以下から選んだ1種もしくは2種以上を含有する、[1]に記載の無方向性電磁鋼板。
[3]質量%で、
C:0.005%以下、
Si:1.0%以上7.0%以下、
Mn:0.02%以上4.0%以下、
Sol.Al:0.001%以上4.0%以下、
P:0.001%以上0.2%以下、
S:0.005%以下、
N:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延して熱延板とし、前記熱延板に熱延板焼鈍を施した後または熱延板焼鈍を施すことなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚の冷延板とした後、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、
CVD、PVD、メッキ、クラッドのいずれかの処理を施すことにより、
格子定数が、板厚中心の格子定数より0.002Å以上大きい領域であるA層を両表面に有し、前記A層の表面から板厚方向への深さが20μm以下となる無方向性電磁鋼板を製造する、無方向性電磁鋼板の製造方法。
[4]前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、
Sb:0.002%以上0.5%以下、
Sn:0.002%以上0.5%以下、
W:0.002%以上0.5%以下、
Zn:0.002%以上0.5%以下から選んだ1種もしくは2種以上を含有する、[3]に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、鋼板表面に酸化物層を形成することなく、鋼板に張力を付与した無方向性電磁鋼板を提供できる。
本発明による無方向性電磁鋼板は、打ち抜き加工での生産性と優れた鉄損特性を両立するものである。本発明の無方向性電磁鋼板はモータコア用として好適である。
鋼板表面からの深さと、板厚方向のAl濃度との関係を示すグラフの一例である。 鋼板表面からの深さと、板厚中心との格子定数差との関係を示すグラフの一例である。
まず、本発明の無方向性電磁鋼板の成分組成について説明する。なお、各元素の含有量を示す「%」は、特に断らない限り質量%を意味する。また、板厚方向で濃度が変化する元素は、板厚方向での平均値をその元素の含有量とする。
C:0.005%以下
Cは、磁気時効の原因となり製品板の磁気特性を劣化させる有害元素であるので、本発明ではC含有量を0.005%以下に制限する。Cは極力低減させたい元素であり、C含有量は、好ましくは0.003%以下である。
Si:1.0%以上7.0%以下
Siは、鋼板の固有抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効な元素であるので、本発明ではSi含有量を1.0%以上とする。一方、7.0%を超えるSiの添加は鋼を著しく脆化するので、Si含有量を7.0%以下に制限する。Si含有量は、好ましくは1.5%以上であり、より好ましくは1.8%以上である。また、Si含有量は、好ましくは6.5%以下であり、より好ましくは4.8%以下である。
Mn:0.02%以上4.0%以下
Mnは、熱間圧延時の赤熱脆性を防止するため、0.02%以上添加する必要がある。しかし、4.0%を超えると、磁束密度が低下し、脆化も顕著となる。よって、Mn含有量は0.02%以上4.0%以下の範囲とする。Mn含有量は、好ましくは0.02%以上2.0%以下の範囲である。Mnは、α-Feに固溶することで格子定数を増加させる元素であることから鋼板表層側のA層に多く固溶させることが好ましい。
Sol.Al:0.001%以上4.0%以下
Alは、鋼板の固有抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効な元素であるので、本発明では0.001%以上添加する。しかし、4.0%を超えて添加すると脆化が問題になる。よって、Al含有量は、Sol.Alとして0.001%以上4.0%以下の範囲とする。Alは、α-Feに固溶することで格子定数を増加させる元素であることから鋼板表層側のA層に多く固溶させることが好ましい。
P:0.001%以上0.2%以下
Pは、0.2%を超えて添加すると脆化が激しく、生産性を著しく低下させるので、本発明ではP含有量を0.2%以下とする。また、P含有量を0.001%未満とするためにはコストが著しく増加することからP含有量の下限を0.001%とする。
S:0.005%以下
Sは、MnS等の硫化物を生成し、鉄損を増加させる有害元素であるため、S含有量の上限を0.005%とする。S含有量は、好ましくは0.003%以下である。
N:0.005%以下
Nは、窒化物を生成し、鉄損を増加させる有害元素であるため、N含有量の上限を0.005%とする。N含有量は、好ましくは0.003%以下である。
本発明の無方向性電磁鋼板は、上記成分を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することが好ましい。
また、本発明の無方向性電磁鋼板は、上記成分組成に加えて、Sb:0.002%以上0.5%以下、Sn:0.002%以上0.5%以下、W:0.002%以上0.5%以下、Zn:0.002%以上0.5%以下から選んだ1種または2種以上を含有することが出来る。これらの元素はα-Feに固溶することで格子定数を増加させる元素であることから、鋼板表層側のA層に多く固溶させることが好ましい。
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の成分傾斜と鋼板内の応力状態について説明する。
本発明の無方向性電磁鋼板は、鋼板表層の領域と、板厚中心の領域が、異なる格子定数を有する。具体的には、本発明の無方向性電磁鋼板は、格子定数が、板厚中心(板厚中心面)の格子定数よりも0.002Å以上大きい領域であるA層を両表面に有する。そして、前記A層の間には、格子定数が、板厚中心の格子定数と0.002Å未満の差を有する領域であるB層を有する。
本発明の無方向性電磁鋼板は、上記A層を表層に有することで、鋼板に張力を付与できる。このため、本発明の無方向性電磁鋼板は、鋼板に張力を付与するための酸化物層を形成しなくても、鋼板に張力を付与することができる。
上述したA層の深さ(厚さ)は、表面から20μm以下(A層の厚さが20μm以下)である。A層は、B層から圧縮応力がかかるため、A層の深さが20μmを超えた場合、無方向性電磁鋼板の鉄損が劣化する。A層の深さは、好ましくは15μm以下である。
また、十分な鉄損改善効果を得るために、上記A層がB層に及ぼす引張応力は0.1MPa以上であることが好ましい。
十分な鉄損改善効果を得るために、A層とB層の境界における板厚方向深さに対する格子定数の勾配は0.0001Å/μm以上であることが好ましい。
A層は、例えば、鋼板表層にAl、Mn、Sb、Sn、W、Zn等のα-Feに固溶することで格子定数を増加させる元素を濃化させて存在させることで形成できる。すなわち、鋼板表層(A層)のAl、Mn、Sb、Sn、W、Zn濃度を、板厚中心よりも高くする(濃化する)ことで形成できる。なお、このような成分傾斜は、後述するCVD、PVD、メッキ、クラッドにより実施できる。また、上述のSb、Sn、W、Znから選んだ1種または2種以上をCVD、PVD、メッキ、クラッドにより鋼板に含有させる場合には、これらの元素は、鋼板表層(A層)のみに含まれてもよい。
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法について述べる。
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼スラブを熱間圧延して熱延板とし、前記熱延板に熱延板焼鈍を施した後または熱延板焼鈍を施すことなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚の冷延板とした後、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、さらに、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、メッキ、クラッドのいずれかの処理を施すことにより、鋼板表層の領域の格子定数を増加させる工程を有する。
各工程について、詳細に説明する。まず、上記の好適成分組成に調整した溶鋼から、鋼スラブを製造する。鋼スラブは、通常の造塊-分塊法や連続鋳造法によって製造してもよいし、100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。
次いで、鋼スラブは通常の方法で加熱して熱間圧延に供するが、鋳造後加熱せずに直ちに熱間圧延に供してもよい。ここで、上記熱間圧延後の鋼板(熱延板)の板厚は、1.0~5.0mmの範囲とするのが好ましい。1.0mm未満では、熱間圧延での圧延トラブルが増加する傾向となり、一方、5.0mm超えでは、冷延圧下率が高くなり過ぎ、集合組織が劣化するおそれがあるからである。
熱間圧延後に熱延板焼鈍を施す場合には、均熱温度は900~1200℃の範囲とするのが好ましい。均熱温度が900℃以上であると、熱延板焼鈍の効果をより享受することができ磁気特性をより高めやすくなる。また、均熱温度が1200℃以下であると、コスト的に有利となる他、スケール起因の表面疵の発生を抑制しやすくなる。
なお、熱延板焼鈍に代えて、熱間圧延後、巻き取ったコイルの自己焼鈍を活用してもよく、その場合には、コイル巻取温度は600℃以上とすることが好ましい。
熱間圧延後の熱延板または熱延板焼鈍後の熱延焼鈍板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し冷延板とする。特に、最終の冷間圧延は、設備上や生産制約上、コスト的に問題がなければ、磁束密度を向上する目的で、板温を200℃程度に昇温して圧延する温間圧延を採用することが好ましい。
なお、上記冷延板の板厚(最終板厚)は、0.1~1.0mmの範囲とするのが好ましい。冷延板の板厚が0.1mm以上であると、板厚を薄くすることによって生じる生産性の低下を抑制しやすくなる。冷延板の板厚が1.0mm以下であると、鉄損の低減効果を高めやすくなる。
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法においては、さらに、CVD、PVD、メッキ、クラッドのいずれかの処理を施す。
(クラッドによる処理)
上記熱間圧延または冷間圧延の際に、母鋼板(母材)に、母鋼板よりも格子定数が大きい薄板(合わせ板)を板厚方向の上下に重ね合わせて圧着するクラッド処理を施すことで、鋼板表層の領域の格子定数を増加することができる。この際、母鋼板の板厚に対して、圧着する薄板(合わせ板)の板厚は5%以下であることが好ましい。
具体的には、クラッド処理は、上述の鋼スラブを熱間圧延して熱延板とする際、前記鋼スラブを母材とし、その両表面に前記母材よりも格子定数が大きい薄板(合わせ板)を重ね合わせて圧着する処理とすることができる。また、クラッド処理は、熱延板または冷延板を母材とし、その両表面に前記母材よりも格子定数が大きい薄板(合わせ板)を重ね合わせて圧着する処理としてもよい。なお、薄板は、母材よりも格子定数が大きいものであれば、特に限定されないが、母材と同様に、上述の好適成分組成を有することが好ましく、さらにSb、Sn、W、Znを含む成分組成を有することが好ましい。
(CVD、PVD、メッキによる処理)
また、上記冷間圧延後の冷延板に対して、CVD、PVD、メッキのいずれかの処理を行うことでAl、Mn、Sb、Sn、W、Zn等のα-Feに固溶することで格子定数を増加させる元素の濃化層を鋼板表面に形成し、鋼板表層の領域の格子定数を増加させてもよい。その場合には、上記濃化層の厚みは、鋼板片面側20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
その後、上記最終板厚とした冷延板に仕上焼鈍を施す。仕上焼鈍は、700~1100℃の温度で1~3000秒間均熱する連続焼鈍を採用するのが好ましい。均熱温度が700℃以上であると、再結晶を十分に進行させることができ、良好な磁気特性が得られやすくなることに加え、連続焼鈍における形状矯正効果が十分に得られやすくなる。また、均熱温度が1100℃以下であると、結晶粒が過度に粗大化することを抑制しやすくなり、強度の低下や靭性の低下を抑制しやすくなる。均熱温度は、より好ましくは800~1100℃である。均熱時間は、より好ましくは1~100秒である。
なお、上記Al、Mn、Sb、Sn、W、Zn等の元素をCVD、PVD、メッキ処理により鋼板表面に濃化させた場合、仕上焼鈍により鋼中に上記元素を拡散させることが必要である。この際、拡散距離が長くなると引張応力が付与される体積が減り、十分な鉄損低減効果が得られなくなることから、上記元素の拡散距離は鋼板表面から20μm以下となるように仕上焼鈍時間と温度を制御する必要がある。
ここで、上記連続焼鈍の均熱時における雰囲気は、酸化性であると表層で急激に成長した酸化物が粒成長を阻害し、鉄損を劣化させるため、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が0.001以下の非酸化性雰囲気とするのが好ましい。酸素ポテンシャルは、より好ましくは0.0005以下である。
前記仕上焼鈍後に、必要に応じて絶縁コーティングを施し、製品板とする。絶縁コーティングは公知のものを用いることができ、無機コーティング、有機コーティング、無機-有機混合コーティングなどを目的に応じて使い分ければよい。
なお、本発明の無方向性電磁鋼板は、上述のA層を表層に有することで、あえて鋼板に張力を付与するための皮膜(酸化物層等)を形成しなくても、鋼板に張力を付与することができる。
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の評価方法について説明する。
上述したような製造方法で製造された仕上焼鈍後の板(無方向性電磁鋼板、以下、仕上焼鈍板ともいう)から、圧延方向に対してなす角度φがφ=0°、90°となる方向に長い300mm×100mmの試験片を採取し、単板磁気測定試験で1.5T、50Hzの正弦波により励磁した際の鉄損W15/50を測定し、φ=0°と90°の試験片の鉄損の平均値を求めた。
仕上焼鈍板から、10mm角の試験片を採取し、Cモールドに埋め込んだのち、表面を研磨することで鋼板断面観察用試験片を作製し、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により板厚方向の元素分布を評価した。
仕上焼鈍板から、30mm角のX線回折用試験片を採取し、化学研磨により段階的に鋼板を削りながらX線回折を行うことで鋼板表面から鋼板の板厚中心層(鋼板の板厚中心面)までの格子定数の変化を評価した。また、板厚中心の格子定数よりも格子定数が0.002Å以上大きい格子定数を有する領域をA層、板厚中心の格子定数に対する格子定数の差が0.002Å未満となる領域をB層として、A層の表面からの深さ(厚み)を評価した。
仕上焼鈍板から、300mm×30mmの応力測定用試験片を採取し、該試験片の片面から50μmの領域を化学研磨により除去したのち、鋼板の反り量を計測することで鋼板表面から加えられる応力(引張応力)を評価した。
(実施例1)
C:0.0020、Si:2.5%、Mn:0.5%、Sol.Al:0.7%、P:0.05%、S:0.0020%、N:0.0023%となる成分組成の鋼を実験室で溶解し、熱間圧延を行い、板厚2.0mmの熱延板を得た。前記熱延板に1000℃で10秒の熱延焼鈍を施し、酸洗したのち、仕上げ厚0.30mmとなる冷間圧延を施し冷延板とした。前記冷延板に、アルミ有機金属ガスを用いたCVD処理あるいはN雰囲気での熱処理を950℃で100秒の条件で行い、それぞれの条件の冷延板にさらに950℃のN雰囲気中で30から15000秒の間で均熱時間を変更した仕上焼鈍を施し、仕上焼鈍板(無方向性電磁鋼板)を作製した。得られた仕上焼鈍板から磁気測定試験片と断面観察用試験片、X線回折用試験片を作製し、磁気特性と板厚方向の元素分布を測定した。
一部の条件(後掲の表1の条件2、3、7)について、図1に板厚方向の元素分布を示す。CVD処理を施した試験片の鋼板表面ではAl濃度が高く、板厚中心に近づくほど低下し、板厚中心付近でほぼ一定となった。また、図2に示すように格子定数はAl濃度の低下とともに減少し、板厚中心付近でほぼ一定となった。
表1に引張応力と鉄損の評価結果を示す。仕上焼鈍を30秒施した場合、鋼板に50MPa程度の引張応力が付与されたが(条件2)、仕上焼鈍を15000秒施した場合、応力の変化は認められなかった(条件7)。これは拡散時間を長くしたことでAlが長距離拡散し、板厚中心と表層との格子定数差がほとんどなくなったことが原因と考えられる。鉄損W15/50は引張応力が付与された試験片の方が低い値となった。
Figure 2022030684000001
以上の結果から、鋼板表面にAlを固溶、拡散させ、格子定数の大きい領域を鋼板表層に形成し、鋼板に引張応力を付与したため、鉄損が低減することを見出した。
(実施例2)
表2に示す成分組成の鋼を実験室で溶解し、厚みが1mmあるいは140mmとなるよう鋼塊を切断したのち、表面を平滑にし、表3にある組み合わせで厚み140mmの鋼塊(母材)の上下に1mmの鋼塊(合わせ材)を積層し、真空雰囲気中で電子ビーム溶接した。溶接した鋼塊に熱間圧延を行い、板厚1.8mmの熱延板を得た。前記熱延板に1000℃で10秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗したのち、仕上げ厚0.30mmとなる冷間圧延を施し冷延板とした。前記冷延板に、1000℃のN雰囲気中で10秒仕上焼鈍を施し、鉄損と鋼板表面からの応力を評価した。評価結果を表3に示す。この結果から、格子定数の大きい鋼板表層を形成し、鋼板内部に引張応力を付与することで鉄損が改善することが分かる。
Figure 2022030684000002
Figure 2022030684000003

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.005%以下、
    Si:1.0%以上7.0%以下、
    Mn:0.02%以上4.0%以下、
    Sol.Al:0.001%以上4.0%以下、
    P:0.001%以上0.2%以下、
    S:0.005%以下、
    N:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    格子定数が、板厚中心の格子定数より0.002Å以上大きい領域であるA層を両表面に有し、前記A層の表面から板厚方向への深さが20μm以下である、無方向性電磁鋼板。
  2. 前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、
    Sb:0.002%以上0.5%以下、
    Sn:0.002%以上0.5%以下、
    W:0.002%以上0.5%以下、
    Zn:0.002%以上0.5%以下から選んだ1種もしくは2種以上を含有する、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 質量%で、
    C:0.005%以下、
    Si:1.0%以上7.0%以下、
    Mn:0.02%以上4.0%以下、
    Sol.Al:0.001%以上4.0%以下、
    P:0.001%以上0.2%以下、
    S:0.005%以下、
    N:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを熱間圧延して熱延板とし、前記熱延板に熱延板焼鈍を施した後または熱延板焼鈍を施すことなく、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚の冷延板とした後、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、
    CVD、PVD、メッキ、クラッドのいずれかの処理を施すことにより、
    格子定数が、板厚中心の格子定数より0.002Å以上大きい領域であるA層を両表面に有し、前記A層の表面から板厚方向への深さが20μm以下となる無方向性電磁鋼板を製造する、無方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、
    Sb:0.002%以上0.5%以下、
    Sn:0.002%以上0.5%以下、
    W:0.002%以上0.5%以下、
    Zn:0.002%以上0.5%以下から選んだ1種もしくは2種以上を含有する、請求項3に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2020134849A 2020-08-07 2020-08-07 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Active JP7331802B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020134849A JP7331802B2 (ja) 2020-08-07 2020-08-07 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020134849A JP7331802B2 (ja) 2020-08-07 2020-08-07 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022030684A true JP2022030684A (ja) 2022-02-18
JP7331802B2 JP7331802B2 (ja) 2023-08-23

Family

ID=80324232

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020134849A Active JP7331802B2 (ja) 2020-08-07 2020-08-07 無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7331802B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024070489A1 (ja) * 2022-09-30 2024-04-04 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04354861A (ja) * 1991-05-31 1992-12-09 Nkk Corp 連続ラインによる珪素鋼板の製造方法
JPH11293414A (ja) * 1998-04-10 1999-10-26 Nkk Corp 高周波磁気特性に優れた高珪素鋼板およびその製造方法
WO2009072394A1 (ja) * 2007-12-03 2009-06-11 Nippon Steel Corporation 高周波鉄損の低い無方向性電磁鋼板及びその製造方法
WO2010104067A1 (ja) * 2009-03-13 2010-09-16 新日本製鐵株式会社 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP2014196539A (ja) * 2013-03-29 2014-10-16 Jfeスチール株式会社 電磁鋼板
JP2015061940A (ja) * 2013-08-22 2015-04-02 新日鐵住金株式会社 優れた磁気特性を有するFe系金属板

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04354861A (ja) * 1991-05-31 1992-12-09 Nkk Corp 連続ラインによる珪素鋼板の製造方法
JPH11293414A (ja) * 1998-04-10 1999-10-26 Nkk Corp 高周波磁気特性に優れた高珪素鋼板およびその製造方法
WO2009072394A1 (ja) * 2007-12-03 2009-06-11 Nippon Steel Corporation 高周波鉄損の低い無方向性電磁鋼板及びその製造方法
WO2010104067A1 (ja) * 2009-03-13 2010-09-16 新日本製鐵株式会社 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP2014196539A (ja) * 2013-03-29 2014-10-16 Jfeスチール株式会社 電磁鋼板
JP2015061940A (ja) * 2013-08-22 2015-04-02 新日鐵住金株式会社 優れた磁気特性を有するFe系金属板

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024070489A1 (ja) * 2022-09-30 2024-04-04 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7331802B2 (ja) 2023-08-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2018179871A1 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法、モータコアの製造方法およびモータコア
JP5610084B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP6236470B2 (ja) 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
JP6738056B1 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
TWI665313B (zh) 無方向性電磁鋼板及其製造方法
KR20180016522A (ko) 방향성 전자 강판과 그의 제조 방법
TWI692534B (zh) 複層型電磁鋼板
JPWO2020262063A1 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法とモータコアの製造方法およびモータコア
JPWO2017022360A1 (ja) 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板の製造方法
JP2018115362A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2017122247A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6769587B1 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP7218794B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP7331802B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4810777B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2560579B2 (ja) 高透磁率を有する高珪素鋼板の製造方法
JP4457835B2 (ja) 低温酸化被膜形成処理用軟磁性鋼板および軟磁性鋼板、ならびにそれらの製造方法
JP5954527B2 (ja) 高周波鉄損特性に優れる極薄電磁鋼板
JP4259002B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
TWI718051B (zh) 無方向性電磁鋼板
WO2023149269A1 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2023132197A1 (ja) 無方向性電磁鋼板
JPH04337050A (ja) 磁気特性の優れた高抗張力磁性材料およびその製造方法
JPH03140442A (ja) 磁気特性に優れた珪素鋼板及びその製造方法
WO2023090138A1 (ja) 無方向性電磁鋼板とその製造方法並びにモータコアの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220323

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230417

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230711

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230724

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7331802

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150