JPH0553984B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、デユアルキヤビテイ式トロイダル型
無段変速機に関し、特にその加圧機構に関する。

（従来の技術） 一般に、トロイダル型無段変速機の入出力デイ
スクと伝動ローラとの間の転がり伝達面に伝達す
べきトルクにほぼ比例した押圧力を与える手段と
しては油圧方式とカム方式とが知られている。

このうち、油圧方式は外部から押圧力を制御で
きる利点があるが、高圧の油圧源と油圧の制御装
置を要し、且つ急激なトルク変動に追従しにくい
欠点がある。これに対して、カム方式は構造が簡
単で追従性も良い。したがつて、今日では、カム
方式が主流となつており、一対のトロイダルキヤ
ビテイを有するデユアルキヤビテイ式トロイダル
型無段変速機においてもカム方式を採用した例が
多数みられる。

例えば、一つの従来例（従来例１）として一方
の外側デイスクを貫通軸に固定し、他方の外側デ
イスクの軸方向外側で貫通軸にスプライン結合し
たカム装置を配置している。したがつて、デイス
クと貫通軸との相対回転に伴なうカムの乗り上げ
を利用して貫通軸のトルクにほぼ比例した押圧力
を発生させる構造となつている。

また、他の従来例（従来例２）として２つの外
側デイスクを円筒形の部材で連結し、２つの内側
デイスクと貫通軸との間にスプラグとキーを備え
た加圧機構（ワンウエイクラツチと同様の働きを
する）を設けた構造もある。

（発明が解決しようとする問題点） 上述の従来例１には以下のような問題点があ
る。この構造においては、カム側の外側デイスク
はトルクの増加と共に貫通軸に対して回転するの
で貫通軸に固定された反対側の外側デイスクとの
間に回転位相差が生ずる。この位相差は、定常状
態では特別問題とならないが、変速機が急激なト
ルク変化を受けて瞬間的に２つの外側デイスクの
間に回転位相差が生ずる場合は、両外側デイスク
の回転速度に差が生じる。従つて、２つのトロイ
ダルキヤビテイの伝動ローラによる伝達トルクの
平等な分担が崩れ、一方の伝動ローラの負担が増
大して負担の増大した側のデイスクと伝動ローラ
との間で滑りを生ずる。上述の説明から明らかな
ように、この種の構造の場合には滑りを防ぎ、作
動を安定化するため、常時大きな押圧力を加えて
伝達トルクの不均等に備えておく必要があり、そ
の結果、必要な耐久性を確保するために変速機全
体が必然的に大型化するという欠点を有してい
る。

また、従来例２の構造においても、この場合２
つの内側デイスクに回転位相差が生じるので、前
述の従来例１と同様の問題が生ずる。更にまた、
この構造は伝動ローラを支持し、かつ変速制御す
るための機構がすべて円筒形の部材の中に収容さ
れるので外部から変速制御することが容易でない
という問題点をも有している。

従つて、本発明の目的は、２つの内側デイスク
および２つの外側デイスクそれぞれの間に回転位
相差が生ずることがなく、耐久性に優れ、構造が
簡単で小型のデユアルキヤビテイ式トロイダル型
無段変速機を提供することである。

（問題点を解決するための手段） 上述の目的を達成するため、本発明に係るデユ
アルキヤビテイ式トロイダル型無段変速機は、 貫通軸と、 貫通軸に嵌合支持され、トロイダル面を互いに
対向させ、相対回転不能にされた２つの環状の外
側デイスクと、 外側デイスク間で軸方向に摺動自在に貫通軸に
遊嵌支持され、トロイダル面を互いに背向させた
２つの環状の内側デイスクと、 内側デイスクと外側デイスク間で両トロイダル
面と接触回動して動力を伝達する伝動ローラと、 伝動ローラを回動自在に支持するトラニオン
と、 から成り、２つのトロイダルキヤビテイを有する
デユアルキヤビテイ式トロイダル型無段変速機で
あつて、 内側デイスクと貫通軸との間で貫通軸に回動自
在に遊嵌支持され、各内側デイスクを連結して相
対回転不能とする連結部材を備え、各内側デイス
クに軸方向の押圧力を与えるため、環状のカム装
置を内側デイスク間で連結部材の外周に嵌合配置
したことを特徴としているのである。

（実施例） 以下、図面を参照して本発明の実施例の詳細を
説明する。

先ず、第１図は本発明の第１実施例を示してお
り、デユアルキヤビテイ式トロイダル型無段変速
機３０（以後、説明の便宜上「変速機」と略記す
る）がハウジング２７内に配置されている様子を
示す。

貫通軸、すなわち入力軸１は一端でエンジン等
の動力源（略図）に接続されており、他端はハウ
ジング２７の壁に設けた凹所で回転自在に軸受に
より支持されている。また、入力軸１は、ハウジ
ング２７に入る入口開口においても軸受で回転自
在に支持されている。

入力軸１はハウジング２７内において、その両
端でトロイダル面を互いに対向させて、２つの外
側デイスク３ａおよび３ｂを貫通支持している。
入力軸１と外側デイスク３ａおよび３ｂとはスプ
ライン部２１によりスプライン結合しているの
で、外側デイスク３ａおよび３ｂは入力軸１に対
して回動不能であるが、軸方向に摺動自在となつ
ている。

外側デイスク３ａおよび３ｂの間には、２つの
内側デイスク５ａおよび５ｂがトロイダル面を互
いに背向させて、すなわち外側デイスク３ａおよ
び３ｂのトロイダル面と内側デイスク５ａおよび
５ｂのトロイダル面とそれぞれ対向させて、入力
軸１に貫通支持されている。従つて、第１図に示
すように２つのトロイダルキヤビテイが画成され
る。

２つのトロイダルキヤビテイには、それぞれ２
組のトラニオン９とそれに回動自在に支持された
伝動ローラ７が配置され、伝動ローラ７は内側お
よび外側デイスクのトロイダル面とそれぞれ接
し、転がり摩擦面を形成している。この構成によ
り、伝動ローラにより両デイスク間で動力が伝達
される。

内側デイスク５ａおよび５ｂの入力軸１に接す
る内周面の一部には、環状の段部６が設けられて
おり、入力軸１との間で環状の空間を画成してい
る。内周面の他の部分は、入力軸１に対して回動
自在に接している。

環状の空間には、円筒形の連結部材４が入力軸
１の外周に装着されている。連結部材４の内周面
は円筒形であり、その両端で入力軸１との間に
は、例えばニードル軸受等の一対の軸受１７が介
装されているので、連結部材４は入力軸１上で回
動自在である。両軸受１７の間には、入力軸１の
外周に環状の軸受スペーサ１９が介装されて両軸
受１７を所定の間隔に保つている。

連結部材４は、円筒形の外周面の軸方向両端で
内側デイスク５ａおよび５ｂの環状の段部６とス
プライン部２３によりスプライン結合している。
このため、内側デイスク５ａおよび５ｂは、連結
部材４と共に入力軸１に対して回動自在である
が、連結部材４とスプライン結合しているので、
相対回転はできない。つまり、内側デイスク５ａ
および５ｂは、見かけ上、一体部材として回転す
る。しかしながら、内側デイスク５ａおよび５ｂ
は軸方向には摺動自在となつている。

内側デイスク５ａおよび５ｂの間には、内側デ
イスク５ａと対向する面にカム面を有する環状の
カムデイスク１１が配置され、ニードル軸受等の
軸受１７を介して連結部材４に貫通され、その滑
らかな外周面で支持され、連結部材４と入力軸１
に対して回動自在となつている。内側デイスク５
ａのカムデイスク１１と対向する面はカム面１５
となつており、内側デイスク５ａとカムデイスク
１１との間には、更にカムローラ１３が介装され
ている。カム面とカムデイスク１１との界面でカ
ムローラ１３がカム面の形状に応じて係合状態を
変えることで、内側デイスク５ａおよび５ｂに軸
方向の押圧力を与えている。カムデイスク１１と
内側デイスク５ｂとの間には、スラスト玉軸受１
８が環状に介装されている。上述の構成により、
カムデイスク１１と内側デイスク５ａおよび５ｂ
はそれぞれ相対的に回動自在となつている。カム
デイスク１１、カムローラ１３およびカム面とで
カム装置を構成している。

前述の説明中、カムデイスク１１、そのカム面
の形状、内側デイスク５ａのカム面１５の形状、
またカムローラ１３等はすべて公知のものであ
る。

カムデイスク１１の外周面はギア部１２となつ
ており、ギア部１２は出力軸２に固定されたギア
２５と噛合しており、入力軸１からの動力を出力
軸２へ伝達している。出力軸２はハウジング２７
内へ延びる端部と外部と連絡する開口部で軸受に
より回転自在に支持され、ハウジング２７外の端
部で車軸等に接続されている。

尚、外側デイスク３ａのトロイダル面と反対側
で入力軸１の外周には予圧用の環状の皿ばね１０
が介装され、各デイスクに対して所定の軸方向の
予圧を与えている。また、説明の便宜上、２つの
トロイダルキヤビテイを貫通する軸を入力軸、ま
たカムデイスクを介して動力を受けとる軸を出力
軸としたが、この構成は逆であつてもよいことは
云うまでもない。更に、外側デイスク３ａおよび
３ｂは入力軸１に対して軸方向で摺動自在とせ
ず、入力軸１に固定状態にすることもできる。そ
の場合は、外側デイスク３ａおよび３ｂが軸方向
に摺動しないので、皿ばね１０は不要となる。

次に、本発明に係る変速機３０の第１実施例に
基づく作動を第１図により説明する。

先ず、入力軸１を介して変速機３０内に動力が
伝達されると、入力軸１の回転はスプライン部２
１を介して外側デイスク３ａおよび３ｂに伝達さ
れる。すなわち、外側デイスク３ａおよび３ｂは
共に、見かけ上、入力軸１と一体となつて回転す
る。従つて、外側デイスク３ａおよび３ｂの間に
は回転位相差が生じない。

外側デイスク３ａおよび３ｂの回転は各伝動ロ
ーラ７に伝達され、更に伝動ローラ７を介して内
側デイスク５ａおよび５ｂに伝達される。このと
き、連結部材４の外周面とスプライン部２３によ
りスプライン結合しているため、内側デイスク５
ａおよび５ｂも見かけ上、一体となつて回転し、
両デイスク５ａおよび５ｂの間に回転位相差は生
じない。

動力伝達中、伝達トルクに応じた押圧力を与え
るカム装置が内側デイスク５ａおよび５ｂの間に
配置されているので、発生する押圧力はカムロー
ラ１３とスラスト玉軸受１８とを介してそれぞれ
両デイスク５ａおよび５ｂに均等に伝わる。所定
の押圧力を与えている状態では、内側デイスク５
ａおよび５ｂとカム装置とが一体となつて回転
し、カムデイスク１１のギア部１２と出力軸２の
ギア２５を介して出力軸２に動力を伝達する。

次に、本発明の第２実施例を第２図を参照して
説明する。第２図は、第１図における主要部分の
断面図であり、同一部分は同一符号で表わされて
いる。第２実施例では、第１実施例におけるカム
装置をカムデイスク１１の両側に設けている。カ
ムデイスク１１の軸方向両面にカム面を設け、内
側デイスク５ｂのカムデイスク１１に対向する面
をカム面１６とし、両者の間にカムローラ１３を
介装する。変速機３０におけるその他の構成およ
び動力の伝達過程は第１実施例と同じである。

第２実施例による構成では、カムデイスク１１
の両側に対称にカム装置を配しているので、トル
ク急変時に内側デイスク５ａおよび５ｂを動的に
同じ力で押すことになり、トルク変動に対する追
従性が第１実施例に比して更に良くなる。

尚、第１および第２実施例においては、連結部
材４は内・外周面とも円筒形であり、外周面にス
プラインを設けたが、外周面の形状は円筒形であ
る必要はなく、内側デイスク５ａおよび５ｂの相
対回転を阻止するものであればよく、例えば、断
面が多角形等の形状でも連結部材４の軸方向両端
面に放射状に歯を設けた平面キーやドツグ等を用
いることも可能である。この場合は、外周面のス
プラインは必要がなくなる。

（発明の効果） 本発明のデユアルキヤビテイ式無段変速機には
次のような効果がある。

(1) トルクに応じてカム装置により発生する軸方
向の押圧力は、２つの内側デイスクに均等に作
用し、特に２つの内側デイスクの間に回転位相
差が発生しないので、２つのトロイダルキヤビ
テイの伝動ローラの伝達トルクも常に均等に分
配され、変速機の作動が安定する。

(2) (1)の結果、余分な押圧力を加える必要がなく
なるので、耐久性に優れ、小形の変速機が得ら
れる。

(3) カムデイスクは、伝達トルクが加わることに
より、カムローラ（またはスラスト玉軸受の
玉）により両面から圧縮力を受けるが、両面の
力は均衡しているのでカムデイスクには曲げ力
が作用せず、カムデイスクを薄くでき、そのた
め変速機の全長を短くできる。

(4) ２つの外側デイスクを貫通軸で連結している
ので、伝動ローラの支持や変則制御機構を覆う
筒形部材が不要となり、各部分の配置の自由度
が増し、外側デイスク間の回転位相差も発生し
ないため作動が安定する。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明に係るデユアルキヤビテイ式
トロイダル型無段変速機の第１実施例を示す断面
図であり、第２図は、第２実施例を示す第１図の
主要部の断面図である。 主要部分の符号の説明、入力軸……１、出力軸
……２、外側デイスク……３ａ，３ｂ、連結部材
……４、内側デイスク……５ａ，５ｂ、カムデイ
スク……１１、カムローラ……１３。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 貫通軸と、 貫通軸に嵌合支持され、トロイダル面を互いに
   対向させ、相対回転不能にされた２つの環状の外
   側デイスクと、 外側デイスク間で軸方向に摺動自在に貫通軸に
   遊嵌支持され、トロイダル面を互いに背向させた
   ２つの環状の内側デイスクと、 内側デイスクと外側デイスク間で両トロイダル
   面と接触回動して動力を伝達する伝動ローラと、 伝動ローラを回動自在に支持するトラニオン
   と、 から成り、２つのトロイダルキヤビテイを有する
   デユアルキヤビテイ式トロイダル型無段変速機で
   あつて、 内側デイスクと貫通軸との間で貫通軸に回動自
   在に遊嵌支持され、各内側デイスクを連結して相
   対回転不能とする連結部材を備え、各内側デイス
   クに軸方向の押圧力を与えるため、環状のカム装
   置を内側デイスク間で連結部材の外周に嵌合配置
   したことを特徴とするデユアルキヤビテイ式トロ
   イダル型無段変速機。