JPH0614604U - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】部品点数、組立工数の低減による製作費の低廉
化と、軽量化とを図る。 【構成】入力側ディスク２の内周面に円筒状のカラー３
０の端部を内嵌固定する。このカラー３０の一端縁を前
記ボールスプライン１５を構成するボール２４、２４に
対向させて、このボール２４、２４が入力側ディスク２
の内周面から外れ出るの防止する。又、前記カラー３０
の他端縁をニードル軸受２３に対向させて、このニード
ル軸受２３が出力側ディスク４の内周面から外れ出る事
を防止する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案に係るトロイダル型無段変速機は、例えば自動車用変速機として利用 する。

【０００２】

【従来の技術】

自動車用変速機として、図２〜３に略示する様な、トロイダル型無段変速機を 使用する事が研究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭６ ２−７１４６５号公報に開示されている様に、入力軸１と同心に入力側ディスク ２を支持し、出力軸３の端部に出力側ディスク４を固定している。トロイダル型 無段変速機を納めたケーシングの内面、或はこのケーシング内に設けられた支持 ブラケットには、前記入力軸１並びに出力軸３に対して捻れの位置にある枢軸を 中心として揺動するトラニオン５、５が設けられている。

【０００３】 各トラニオン５、５は、十分な剛性を有する金属材により形成されたもので、 両端部外側面に前記枢軸を設けている。又、各トラニオン５の中心部に設けた変 位軸６、６の周囲には、それぞれパワーローラ７、７を回転自在に支持している 。そして、各パワーローラ７、７を、前記入力側、出力側両ディスク２、４の間 に挟持している。

【０００４】 入力側、出力側両ディスク２、４の互いに対向する内側面２ａ、４ａは、それ ぞれ断面が前記枢軸を中心とする円弧形の凹面をなしている。そして、球面状の 凸面に形成された各パワーローラ７、７の周面７ａ、７ａは、前記内側面２ａ、 ４ａに当接させている。

【０００５】 前記入力軸１と入力側ディスク２との間には、ローディングカム式の加圧装置 ８を設け、この加圧装置８によって、前記入力側ディスク２を出力側ディスク４ に向け弾性的に押圧している。この加圧装置８は、入力軸１と共に回転するカム 板９と、保持器１０により保持された複数個（例えば４個）のローラ１１、１１ とから構成されている。前記カム板９の片側面（図２〜３の右側面）には、円周 方向に亙る凹凸面であるカム面１２を形成し、又、前記入力側ディスク２の外側 面（図２〜３の左側面）にも、同様のカム面１３を形成している。そして、前記 複数個のローラ１１、１１を、前記入力軸１の中心に対して放射方向の軸を中心 に、回転自在としている。

【０００６】 上述の様に構成されるトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸１の回転に伴 なってカム板９が回転すると、カム面１２によって複数個のローラ１１、１１が 、入力側ディスク２外側面のカム面１３に押圧される。この結果、前記入力側デ ィスク２が、前記複数のパワーローラ７、７に押圧されると同時に、前記１対の カム面１２、１３と複数個のローラ１１、１１との噛合に基づいて、前記入力側 ディスク２が回転する。そして、この入力側ディスク２の回転が、前記複数のパ ワーローラ７、７を介して出力側ディスク４に伝達され、この出力側ディスク４ に固定の出力軸３が回転する。

【０００７】 入力軸１と出力軸３との回転速度を変える場合で、先ず入力軸１と出力軸３と の間で減速を行なう場合には、図２に示す様に枢軸を中心として各トラニオン５ 、５を揺動させ、各パワーローラ７、７の周面７ａ、７ａが、入力側ディスク２ の内側面２ａの中心寄り部分と、出力側ディスク４の内側面４ａの外周寄り部分 とに、それぞれ当接する様に、各変位軸６、６を傾斜させる。

【０００８】 反対に、増速を行なう場合には、前記トラニオン５、５を図３に示す様に揺動 させ、各パワーローラ７、７の周面７ａ、７ａが、入力側ディスク２の内側面２ ａの外周寄り部分と、出力側ディスク４の内側面４ａの中心寄り部分とに、それ ぞれ当接する様に、各変位軸６、６を傾斜させる。各変位軸６、６の傾斜角度を 、図２と図３との中間にすれば、入力軸１と出力軸３との間で、中間の変速比を 得る事が出来る。

【０００９】 更に、上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機により伝達可能な 動力を大きくする為、図２〜３に示す様なトロイダル型無段変速機を１対、動力 の伝達方向に対して並列に（タンデムに）配置する事が、特開平２−１６３５４ ９号公報等に開示されている様に、従来から提案されている。

【００１０】 図４は、１対のトロイダル型無段変速機をタンデム配置した構造の１例を示し ている。１４は円管状のトルク伝達軸で、このトルク伝達軸１４の一端部（図４ の左端部）内周面と入力軸１の端部外周面との間にニードル軸受３２を設けて、 前記トルク伝達軸１４を前記入力軸１と同心に配置すると共に、入力軸１とトル ク伝達軸１４とを互いに独立して回転自在としている。

【００１１】 前記トルク伝達軸１４の周囲には１対の入力側ディスク２、２が、互いに間隔 をあけて設けられている。各入力側ディスク２、２の内周縁とトルク伝達軸１４ の外周面１４ａとの間には、それぞれボールスプライン１５、１５を設け、各入 力側ディスク２、２を前記トルク伝達軸１４に対して、このトルク伝達軸１４に 対する回転が不能で、前記トルク伝達軸１４の軸方向に亙る変位可能として支持 している。又、各入力側ディスク２、２の内側面２ａ、２ａは、それぞれ断面が 円弧形の凹面としている。

【００１２】 又、前記１対の入力側ディスク２、２の間には、ラジアル軸受である、レース ２２を備えたニードル軸受２３により、１対の出力ディスク４、４を、前記トル ク伝達軸１４に対する回転及び軸方向の若干の変位を自在に支持している。各出 力側ディスク４、４の内側面４ａ、４ａ（本明細書では、各ディスク２、４の内 側面とは、各ディスク２、４の互いに対向する側面を言う。）は、断面が円弧形 の凹面としている。

【００１３】 前記各出力側ディスク４、４の間部分には、リング状の出力ギヤ１８が設けら れている。この出力ギヤ１８は、円筒状のスリーブ１９の中間部外周面に固設さ れている。そしてこのスリーブ１９は、前記トルク伝達軸１４の中間部外周面に 、このトルク伝達軸１４に対する回転及び軸方向に亙る若干の変位自在に支持さ れている。又、前記１対の出力側ディスク４、４は、前記スリーブ１９の両端部 外周面にスプライン係合している。

【００１４】 前記トルク伝達軸１４の一端にはカム板９を、スラスト玉軸受１６を介して回 転自在に支承している。前記カム板９と前記入力軸１とは、フランジ板１７によ り結合する事で、カム板９が入力軸１と共に回転する様にしている。そして、カ ム板９の内側面に形成したカム面１２と一方（図４の左方）の入力側ディスク２ の外側面に形成したカム面１３との間に、保持器１０により回転自在に保持され た複数のローラ１１を設け、この一方の入力側ディスク２を、前記トルク伝達軸 １４の軸方向で前記カム板９から離れる方向に押圧する加圧装置８を構成してい る。

【００１５】 又、加圧装置８と対向しない、他方（図４の右方）の入力側ディスク２と前記 トルク伝達軸１４との間には、ストッパ２０と皿板ばね２１とを設けて、この入 力側ディスク２が前記加圧装置８から遠ざかる方向に移動するのを制限するスト ッパ手段を構成している。

【００１６】 更に、前記１対の入力側ディスク２、２の内側面２ａ、２ａと、１対の出力側 ディスク４、４の内側面４ａ、４ａとの間には、前記トルク伝達軸１４に対して 捻れの位置にある枢軸を中心として揺動するトラニオン５と、周面７ａを球面状 の凸面とし、このトラニオン５に支持された変位軸６に回転自在に支持された複 数のパワーローラ７とを設けている。そして、前記加圧装置８の押圧力に基づき 、各パワーローラ７の周面７ａと、入力側、出力側、各ディスク２、４の内側面 ２ａ、４ａとを当接させている。

【００１７】 上述の様に構成される、１対のトロイダル型無段変速機をタンデム配置した構 造に於いては、１本の入力軸１から入力された回転トルクが、フランジ板１７、 カム板９、加圧装置８を介して一方の入力側ディスク２に伝達され、この入力側 ディスク２がトルク伝達軸１４と共に回転する。そして、トルク伝達軸１４の回 転と共に、他方の入力側ディスク２も、前記一方の入力側ディスク２と同期して 回転する。

【００１８】 トルク伝達軸１４を介し同期して回転する、１対の入力側ディスク２、２の回 転運動は、それぞれ複数のパワーローラ７を介して１対の出力側ディスク４、４ に伝達され、両出力側ディスク４、４をスプライン係合させたスリーブ１９を回 転させる。そして、このスリーブ１９の回転運動が、出力ギヤ１８により取り出 される。

【００１９】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機に於いては、 次に述べる様な、解決すべき問題がある。

【００２０】 即ち、各入力側ディスク２、２の内周面とトルク伝達軸１４の外周面との間の ボールスプライン１５を構成するボール２４、２４、並びに各出力側ディスク４ 、４の内周面とトルク伝達軸１４の外周面との間に設けた、レース２２を備えた ニードル軸受２３は、トロイダル型無段変速機の運転時に於いて、若干ではある が軸方向に変位する。

【００２１】 この為、何らの防止策も施さなかった場合には、前記ボール２４、２４やレー ス２２を含むニードル軸受２３が、入力側ディスク２と出力側ディスク４との内 側面同士の間に存在する空間２５内に抜け出して、前記両ディスク２、４の内側 面２ａ、４ａとパワーローラ７の外周面７ａとの間に食い込み、重大な故障を起 こす恐れがある。

【００２２】 この為従来から、入力側ディスク２及び出力側ディスク４の内周面にストップ リング２６、２７を装着する事で、前記ボール２４、２４やレース２２を含むニ ードル軸受２３が前記空間２５内に抜け出す事を防止していた。

【００２３】 ところが、各ディスク２、４の内周面にストップリング２６、２７を設ける場 合、部品点数、組立工数が増大する事で、トロイダル型無段変速機の製作費が嵩 む原因となるだけでなく、各ディスク２、４の強度保持の為に重量が増大してし まう。

【００２４】 即ち、前記ストップリング２６、２７を装着する為に各ディスク２、４の内周 面には、その全周に亙って係止凹溝２８、２９を形成するが、前記各ディスク２ 、４に大きな力が加わった場合には、各係止凹溝２８、２９部分に応力が集中し 、各係止凹溝２８、２９部分から亀裂が発生し易い。この様な亀裂発生を防止す る為には、各係止凹溝２８、２９形成部分の肉厚を大きくする必要があり、前記 各ディスク２、４の重量が徒に嵩んでしまう。

【００２５】 本考案のトロイダル型無段変速機は、上述の様な事情に鑑みて考案されたもの である。

【００２６】

【課題を解決する為の手段】

本考案のトロイダル型無段変速機は、前述した従来のトロイダル型無段変速機 と同様に、入力軸と、この入力軸と同心に配置され、入力軸とは独立して回転自 在な１本のトルク伝達軸と、このトルク伝達軸の外周面に、ボールスプラインを 介して支持された入力側ディスクと、前記トルク伝達軸の周囲にラジアル軸受を 介して回転自在に支持された出力側ディスクとを備える。

【００２７】 特に、本考案のトロイダル型無段変速機に於いては、前記入力側ディスクと出 力側ディスクとの一方の内周面に円筒状のカラーの端部を内嵌固定している。そ して、このカラーの一端縁を前記ボールスプラインを構成するボールに対向させ て、このボールが入力側ディスクの内周面から外れ出る事の防止を図ると共に、 前記カラーの他端縁を前記ラジアル軸受に対向させて、このラジアル軸受が前記 出力側ディスクの内周面から外れ出る事の防止を図った事を特徴としている。

【００２８】

【作用】

上述の様に構成される本考案のトロイダル型無段変速機により、入力軸と出力 手段との間で変速比を自在に変える際の作用自体は、前述した従来のトロイダル 型無段変速機の場合と同様である。

【００２９】 特に、本考案のトロイダル型無段変速機の場合、入力側ディスク及び出力側デ ィスクの内周面にストップリングを係止しなくても、ボールスプラインを構成す るボールやラジアル軸受が、入力側ディスクや出力側ディスクの内周面から両デ ィスクの内側面同士の間の空間に外れ出る事がなくなる。

【００３０】

【実施例】

図１は本考案の実施例を示している。尚、本考案のトロイダル型無段変速機は 、入力側ディスクの内周面からボールが抜け出るのを防止すると共に、出力側デ ィスクの内周面からラジアル軸受が抜け出るのを防止する部分の構造に特徴があ り、その他の部分は、前述した従来構造と同様である為重複する説明を省略し、 以下の説明は、抜け出し防止部分に就いて行なう。

【００３１】 トルク伝達軸１４の中間部外周面には入力側ディスク２を、ボールスプライン １５を介して、軸方向（図１の左右方向）に亙る変位のみを自在に支持している 。又、前記トルク伝達軸１４の中間部外周面で前記入力側ディスク２から離れた 位置には、出力側ディスク４を、レース２２を備えたニードル軸受２３を介して 、前記トルク伝達軸１４に対する回転並びに軸方向に亙る変位を自在に支持して いる。

【００３２】 そして、前記入力側ディスク２（又は出力側ディスク４）の端部内周面に、合 成樹脂、又は外径面に合成樹脂等をコーティングされた金属等により造られた円 筒状のカラー３０の端部を内嵌固定している。そして、このカラー３０の一端縁 （図１の左端縁）を、前記ボールスプライン１５を構成するボール２４、２４に 対向させて、このボール２４、２４が入力側ディスク２の内周面から空間２５側 に外れ出る事の防止を図っている。更に、前記カラー３０の他端縁（図１の右端 縁）を前記ニードル軸受２３に付属のレース２２に対向させて、このレース２２ 及びニードル軸受２３が、前記出力側ディスク４の内周面から空間２５内に外れ 出る事の防止を図っている。

【００３３】 尚、図示の実施例の場合、カラー３０の一端部に形成した小径部３１を、前記 入力側ディスク２の内周面に内嵌固定し、前記小径部３１端に形成した段部を、 前記入力側ディスク２の端面に突き当てている。又、前記カラー３１の嵌合深さ Ｄは、このカラー３０の他端縁と前記レース２２との距離Ｌよりも十分に大きく （Ｄ＞Ｌ）している。従って、入力側、出力側両ディスク２、４を組み立てた後 に於いては、前記カラー３０が脱落する事はない。

【００３４】 上述の様に構成される本考案のトロイダル型無段変速機の場合、入力側ディス ク２及び出力側ディスク４の内周面に、前記従来構造の様なストップリング２６ 、２７（図４参照）を係止しなくても、ボールスプライン１５を構成するボール ２４、２４やレース２２及びニードル軸受２３が、入力側ディスク２や出力側デ ィスク４の内周面から両ディスク２、４の内側面２ａ、４ａ同士の間の空間２５ に外れ出る事がなくなる。

【００３５】 円筒状のカラー３０は１個で、ボール２４、２４の脱落防止とレース２２及び ニードル軸受２３の脱落防止とを図れる。しかも、カラー３０の端部を入力側デ ィスク２の内周面に内嵌固定する作業は、ストップリング２６、２７を係止凹溝 ２８、２９に装着する作業に比べて容易に行なえる。又、カラー３０の装着部分 に応力が集中する事はなく、カラー３０を設ける事で、入力側ディスク２の強度 が低下する事はない。

【００３６】 従って、本考案の場合、部品点数と組立工数との低減化と、各ディスク２、４ を徒に厚肉にする事をなくす事による軽量化とを図れる。

【００３７】

【考案の効果】

本考案のトロイダル型無段変速機は、以上に述べた通り構成され作用する為、 トロイダル型無段変速機の製作費を低減させると同時に、軽量化を図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例を示す、図４のＡ部に相当する
断面図。

【図２】トロイダル型無段変速機の基本構造を、最大減
速時の状態で示す側面図。

【図３】同じく最大増速時の状態で示す側面図。

【図４】従来構造を示す断面図。

【符号の説明】

１ 入力軸 ２ 入力側ディスク ２ａ 内側面 ３ 出力軸 ４ 出力側ディスク ４ａ 内側面 ５ トラニオン ６ 変位軸 ７ パワーローラ ７ａ 周面 ８ 加圧装置 ９ カム板 １０ 保持器 １１ ローラ １２ カム面 １３ カム面 １４ トルク伝達軸 １４ａ 外周面 １５ ボールスプライン １６ スラスト玉軸受 １７ フランジ板 １８ 出力ギヤ １９ スリーブ ２０ ストッパ ２１ 皿板ばね ２２ レース ２３ ニードル軸受 ２４ ボール ２５ 空間 ２６、２７ ストップリング ２８、２９ 係止凹溝 ３０ カラー ３１ 小径部 ３２ ニードル軸受

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 入力軸と、この入力軸と同心に配置さ
   れ、入力軸とは独立して回転自在な１本のトルク伝達軸
   と、このトルク伝達軸の外周面に、ボールスプラインを
   介して支持された入力側ディスクと、前記トルク伝達軸
   の周囲にラジアル軸受を介して回転自在に支持された出
   力側ディスクとを備えたトロイダル型無段変速機に於い
   て、前記入力側ディスクと出力側ディスクとの一方の内
   周面に円筒状のカラーの端部を内嵌固定し、このカラー
   の一端縁を前記ボールスプラインを構成するボールに対
   向させて、このボールが入力側ディスクの内周面から外
   れ出る事の防止を図ると共に、前記カラーの他端縁を前
   記ラジアル軸受に対向させて、このラジアル軸受が前記
   出力側ディスクの内周面から外れ出る事の防止を図った
   事を特徴とするトロイダル型無段変速機。