JP2595546Y2 - ハーフトロイダル型無段変速機 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案に係るハーフトロイダル
型無段変速機は、例えば自動車用の変速機として利用す
る。

【０００２】

【従来の技術】自動車用変速機として、図３〜４に略示
する様なハーフトロイダル型無段変速機を使用する事
が、研究されている。このハーフトロイダル型無段変速
機は、例えば実開昭６２−７１４６５号公報に開示され
ている様に、入力軸１と同心に入力側ディスク２を支持
し、出力軸３の端部に出力側ディスク４を固定してい
る。ハーフトロイダル型無段変速機を納めたケーシング
の内面、或はこのケーシング内に設けられた支持ブラケ
ットには、前記入力軸１並びに出力軸３に対して捻れの
位置にある枢軸５、５を中心として揺動するトラニオン
６、６が設けられている。

【０００３】即ち、これら各トラニオン６、６は、前記
入力側ディスク２及び出力側ディスク４の側方に配置
し、これら各トラニオン６、６の両端部外側面に前記枢
軸５、５を、前記入力軸１及び出力軸３と直角方向に設
けている。又、各トラニオン６、６の中心部には変位軸
７、７の基端部を支持し、上記枢軸５、５を中心として
各トラニオン６、６を揺動させる事により、各変位軸
７、７の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオ
ン６、６に支持された変位軸７、７の周囲には、それぞ
れパワーローラ８、８を回転自在に支持している。そし
て、各パワーローラ８、８を、前記入力側、出力側両デ
ィスク２、４の間に挟持している。

【０００４】入力側、出力側両ディスク２、４の互いに
対向する内側面２ａ、４ａは、それぞれ断面が、上記枢
軸５を中心とする円弧形の凹面をなしている。本考案の
対象であるハーフトロイダル型無段変速機の場合には、
上記各内側面２ａ、４ａの断面形状を四分の一円弧以下
として、直径方向外方を開放している。即ち、これら各
内側面２ａ、４ａの接線方向を、上記各内側面２ａ、４
ａの外径側端部で上記各ディスク２、４の中心軸に対し
直角方向に近い方向とし、同じく内径側端部でこの中心
軸に対し平行に近い方向としている。そして、球面状の
凸面に形成された各パワーローラ８、８の周面８ａ、８
ａを、前記内側面２ａ、４ａに当接させている。

【０００５】前記入力軸１と入力側ディスク２との間に
は、ローディングカム式の押圧装置９を設け、この押圧
装置９によって、前記入力側ディスク２を出力側ディス
ク４に向け、弾性的に押圧している。この押圧装置９
は、入力軸１と共に回転するカム板１０と、保持器１１
により保持された複数個（例えば４個）のローラ１２、
１２とから構成している。前記カム板１０の片側面（図
３〜４の左側面）には、円周方向に亙る凹凸面であるカ
ム面１３を形成し、又、前記入力側ディスク２の外側面
（図３〜４の右側面）にも、同様のカム面１４を形成し
ている。そして、前記複数個のローラ１２、１２を、前
記入力軸１の中心に対して放射方向の軸を中心とする回
転自在に支持している。

【０００６】上述の様に構成するハーフトロイダル型無
段変速機の使用時、入力軸１の回転に伴ってカム板１０
が回転すると、カム面１３によって複数個のローラ１
２、１２が、入力側ディスク２外側面のカム面１４に押
圧される。この結果、前記入力側ディスク２が、前記複
数のパワーローラ８、８に押圧されると同時に、前記１
対のカム面１３、１４と複数個のローラ１２、１２との
押し付け合いに基づいて、前記入力側ディスク２が回転
する。そして、この入力側ディスク２の回転が、前記複
数のパワーローラ８、８を介して出力側ディスク４に伝
達され、この出力側ディスク４に固定の出力軸３が回転
する。

【０００７】入力軸１と出力軸３との回転速度を変える
場合で、先ず入力軸１と出力軸３との間で減速を行なう
場合には、枢軸５、５を中心として各トラニオン６、６
を揺動させ、各パワーローラ８、８の周面８ａ、８ａが
図３に示す様に、入力側ディスク２の内側面２ａの中心
寄り部分と出力側ディスク４の内側面４ａの外周寄り部
分とにそれぞれ当接する様に、各変位軸７、７を傾斜さ
せる。

【０００８】反対に、増速を行なう場合には、前記トラ
ニオン６、６を揺動させ、各パワーローラ８、８の周面
８ａ、８ａが図４に示す様に、入力側ディスク２の内側
面２ａの外周寄り部分と出力側ディスク４の内側面４ａ
の中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、各変位軸
７、７を傾斜させる。各変位軸７、７の傾斜角度を、図
３と図４との中間にすれば、入力軸１と出力軸３との間
で、中間の変速比を得る事が出来る。

【０００９】更に、図５は、実願昭６１−８７５２３号
（実開昭６２−１９９５５７号）のマイクロフィルムに
記載されたハーフトロイダル型無段変速機で、自動車用
変速機として、より具体化した構造を示している。エン
ジンのクランク軸の回転は、クラッチ１５を介して入力
軸１６に伝達され、この入力軸１６の中間部にスプライ
ン係合したカム板１０を回転させる。そして、このカム
板１０を含んで構成される押圧装置９の作動により、入
力側ディスク２を、出力側ディスク４に向け図５で左方
に押圧しつつ、回転させる。入力側ディスク２の回転
は、パワーローラ８、８によって出力側ディスク４に伝
達される。

【００１０】この出力側ディスク４は前記入力軸１６の
周囲に、ニードル軸受１７により支持され、この出力側
ディスク４と一体に形成された円筒状の出力軸１８は、
ハウジング１９の内側に、アンギュラ型の玉軸受２０に
より支持されている。一方、前記入力軸１６の一端（図
５の右端）は前記ハウジング１９の内側にころ軸受２１
により、他端は前記ハウジング１９の内側にアンギュラ
型の玉軸受２２によりスリーブ２３を介して、それぞれ
回転自在に支持されている。

【００１１】前記出力軸１８の外周面には、駆動側前進
ギヤ２４と駆動側後退ギヤ２５とを一体とした伝達ギヤ
２６が、スプライン係合している。車両の前進時にはこ
の伝達ギヤ２６を右行させて、前記駆動側前進ギヤ２４
と、取り出し軸２７の中間部に設けた従動側前進ギヤ２
８とを直接噛合させる。又、後退時には前記伝達ギヤ２
６を左行させて、前記駆動側後退ギヤ２５と、前記取り
出し軸２７の中間部に固定した従動側後退ギヤ２９と
を、図示しない中間ギヤを介して噛合させる。

【００１２】上述の様に構成される、ハーフトロイダル
型無段変速機の使用時には、エンジンによりクラッチ１
５を介して入力軸１６を回転させ、前記伝達ギヤ２６を
適宜の方向に移動させれば、前記取り出し軸２７を任意
方向に回転させる事が出来る。又、各トラニオン６、６
を揺動させて、各パワーローラ８、８の周面８ａ、８ａ
と、入力側、出力側両ディスク２、４の内側面２ａ、４
ａとの接触位置を変えれば、前記入力軸１６と取り出し
軸２７との回転速度比を変える事が出来る。

【００１３】上述の様なハーフトロイダル型無段変速機
の運転時には、前記押圧装置９の作動に基づき、入力側
ディスク２を出力側ディスク４に向け押圧する。この結
果、押圧装置９を構成するカム板１０を支持した入力軸
１６には、図５で右方向のスラスト荷重が、上記押圧に
基づく反力として加わる。このスラスト荷重は、前記入
力軸１６の端部に螺合したナット３０と前記スリーブ２
３とを介して、前記玉軸受２２により支承される。又、
押圧装置９の作動により前記出力軸１８には、図５で左
方向のスラスト荷重が、入力側、出力側両ディスク２、
４とパワーローラ８、８とを介して加わる。このスラス
ト荷重は、前記出力軸１８に外嵌したストップリング３
３を介して、前記玉軸受２０により支承される。

【００１４】尚、図５で３１はエンジンブレーキ用クラ
ッチ、３２は直結用クラッチであるが、これらの構造及
び作用に就いては、前記マイクロフィルムに詳しく記載
されており、又、本考案の要旨とも関係しないので、詳
しい説明は省略する。

【００１５】

【考案が解決しようとする課題】ところが、前記図５に
示した従来構造の場合、前記押圧装置９の作動に基づい
て前記入力軸１６及び出力軸１８に加わるスラスト荷重
を、それぞれ別個に設けた玉軸受２０、２２により支承
していた。従って、これら各玉軸受２０、２２として、
それぞれ大きなスラスト荷重を支承自在な、大きな負荷
容量を有する、比較的大型のものを使用する必要があ
る。しかも、これら両玉軸受２０、２２は、軸方向に亙
って直列に設置していた。この結果、スラスト荷重支承
の為のそれぞれが大型の玉軸受２０、２２の存在に基づ
いて、ハーフトロイダル型無段変速機の軸方向（図５の
左右方向）に亙る長さ寸法が徒に長くなっていた。

【００１６】又、前記両玉軸受２０、２２として負荷容
量の大きなものを使用すると、これら両玉軸受２０、２
２の回転抵抗が大きくなり、ハーフトロイダル型無段変
速機の伝達効率が悪化する。又、前記長さ寸法が大きく
なると、ハーフトロイダル型無段変速機を、車両の床下
等の限られた空間に設置する事が難しくなるだけでな
く、ハウジング１９が大型化する等により、前記両玉軸
受２０、２２の大型化と相まって、重量が嵩む原因とも
なる為、好ましくない。本考案のハーフトロイダル型無
段変速機は、上述の様な事情に鑑みて、小型の玉軸受の
使用を可能にして、軸方向に亙る長さ寸法を小さくする
と共に、回転抵抗の低減を図るべく考案したものであ
る。

【００１７】

【課題を解決する為の手段】本考案のハーフトロイダル
型無段変速機は、前述した従来のハーフトロイダル型無
段変速機と同様に、回転軸と、この回転軸の周囲にそれ
ぞれ回転自在に支持され、それぞれの内側面同士を互い
に対向させた第一、第二のディスクと、第一のディスク
の外側面と前記回転軸との間に設けられ、この第一のデ
ィスクを前記第二のディスクに向けて押圧しつつ、前記
回転軸と第一のディスクとの間で回転力の伝達を行なわ
せる押圧装置と、この押圧装置の作動に基づいて前記第
二のディスクに加わるスラスト荷重を支承する第一のス
ラスト転がり軸受と、前記押圧装置の作動に基づいて前
記回転軸に加わるスラスト荷重を支承しつつ、この回転
軸を固定の支持部に対して回転自在に支持する第二のス
ラスト転がり軸受と、前記第一、第二のディスクの中心
軸とは交差しないがこの中心軸の方向に対して直角方向
に存在する捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する
トラニオンと、このトラニオンに回転自在に支持された
状態で、前記第一、第二の両ディスクの間に挟持された
パワーローラと、前記第二のディスクに固定された回転
伝達部材とを備え、前記第一、第二のディスクの内側面
を、それぞれ断面形状が四分の一円弧以下である円弧形
で直径方向外方が開放した凹面とし、パワーローラの周
面を球面状の凸面として、この周面と前記内側面とを当
接させて成る。

【００１８】特に、本考案のハーフトロイダル型無段変
速機に於いては、前記第二のディスクの外側面に、この
第二のディスクと同心で円環状の凹部を設けている。
又、前記回転軸の一部で前記第二のディスクの外側面と
対向する位置に鍔部を設けている。又、前記第一のスラ
スト転がり軸受は、前記凹部の底面と前記鍔部の片側面
との間に設けている。更に、前記第二のスラスト転がり
軸受は、前記第一、第二のディスクを軸方向両側から挟
持する位置に設けた、互いに逆方向のスラスト荷重を支
承自在な１対の転がり軸受により構成している。

【００１９】

【作用】上述の様に構成する本考案のハーフトロイダル
型無段変速機は、前述した従来のハーフトロイダル型無
段変速機と同様の作用に基づき、回転軸と回転伝達部材
との間で回転力の伝達を行ない、更にこれら回転軸と回
転伝達部材との回転速度比を変える。

【００２０】特に、本考案のハーフトロイダル型無段変
速機の場合、第二のディスクに加わるスラスト荷重を支
承する為の第一のスラスト転がり軸受の存在に基づき、
軸方向に亙る長さ寸法が徒に大きくなる事を防止出来
る。又、固定の支持部に対して前記回転軸を回転自在に
支持する為の第二のスラスト転がり軸受は、第一、第二
のディスクに加わるスラスト荷重の差を支承できるもの
であれば足りる。従って、前記第二のスラスト転がり軸
受を構成する為の転がり軸受は、従来構造の場合に比べ
て負荷容量の小さい小型のもので足りる。

【００２１】

【実施例】図１は、本考案の第一実施例を示している。
回転軸である入力軸３４は、基端部（図１の右端部）を
エンジンのクランクシャフトに連結して、このクランク
シャフトにより回転駆動される。この入力軸３４の中間
部は、ハウジング内に設けた固定の第一支持部３５の内
側に、第二のスラスト転がり軸受を構成する転がり軸受
である、アンギュラ型の玉軸受３６により、回転自在に
支持している。又、前記入力軸３４の先端部（図１の左
端部）は、前記ハウジング内に設けた第二支持部３７の
内側に、やはり第二のスラスト転がり軸受を構成する転
がり軸受である、アンギュラ型の玉軸受３８により、回
転自在に支持している。

【００２２】前記入力軸３４の中間部で前記両玉軸受３
６、３８の間部分の外周面には、第一のディスクである
入力側ディスク２と第二のディスクである出力側ディス
ク４とを、それぞれニードル軸受３９、３９を介し、回
転自在に支持している。この状態で前記入力側、出力側
両ディスク２、４は、それぞれ断面形状が四分の一円弧
以下である円弧形で直径方向外方が開放した凹面である
内側面２ａ、４ａ同士を、互いに対向させている。又、
前記出力側ディスク４の外側面４ｂの外周寄り部分に
は、短円筒状の支持部４９を、この出力側ディスク４と
同心に設けており、この支持部４９に、回転伝達部材で
あるリング状の出力ギヤ５０を、外嵌固定している。

【００２３】一方、前記入力軸３４の先端寄り部分と前
記入力側ディスク２の外側面との間には、ローディング
カム式の押圧装置９ａを設けている。この押圧装置９ａ
を設ける為に、前記先端寄り部分の外周面に形成した雄
螺子部４０に、係止板４１を螺合した状態で、キー４２
により、この係止板４１の回転を阻止している。又、前
記入力軸３４の中間部でこの係止板４１と前記入力側デ
ィスク２との間部分には、カム板１０ａの内周縁がスプ
ライン係合している。そして、このカム板１０ａと前記
係止板４１との間に、板ばね４３を設けている。従っ
て、前記カム板１０ａは、前記入力側ディスク２の外側
面に向け弾性的に押圧された状態で、前記入力軸３４と
共に回転する。更に、前記カム板１０ａの片側面と、前
記入力側ディスク２の外側面とに、それぞれ円周方向に
亙る凹凸として形成したカム面１３、１４の間には、複
数のローラ１２、１２を、それぞれ保持器１１により放
射方向に亙って、転動自在に保持している。この様に構
成される押圧装置９ａの作用に基づき、前記入力軸３４
の回転時に前記入力側ディスク２が、前記出力側ディス
ク４に向け押圧されつつ回転する。

【００２４】又、前記入力側、出力側両ディスク２、４
の間には、両ディスク２、４の回転中心に対し捻れの位
置にある枢軸５、５（図３〜４参照）を中心として揺動
する、トラニオン６、６を設けている。各トラニオン
６、６の中心部には変位軸７、７の基端部を支持し、上
記枢軸５、５を中心として各トラニオン６、６を揺動さ
せる事により、各変位軸７、７の傾斜角度の調節を自在
としている。各トラニオン６、６に支持された変位軸
７、７の周囲には、それぞれパワーローラ８、８を回転
自在に支持している。そして、各パワーローラ８、８
を、前記入力側、出力側両ディスク２、４の間に挟持し
ている。

【００２５】入力側、出力側両ディスク２、４の互いに
対向する内側面２ａ、４ａは、それぞれ断面が、上記枢
軸５を中心とする断面形状が四分の一円弧以下である円
弧形で直径方向外方が開放した凹面をなしている。そし
て、球面状の凸面に形成された各パワーローラ８、８の
周面８ａ、８ａを、前記内側面２ａ、４ａに当接させて
いる。これら、トラニオン６、６及びパワーローラ８、
８部分の構造は、従来から知られたハーフトロイダル型
無段変速機と同様である。

【００２６】更に、本考案のハーフトロイダル型無段変
速機に於いては、前記出力側ディスク４の外側面４ｂの
内周寄り部分に、この出力側ディスク４と同心で円環状
の、凹部４４を設けている。一方、前記入力軸３４の基
端寄り部分で前記外側面４ｂと対向する位置には、鍔部
４５を、この入力軸３４と一体に設けている。そして、
この鍔部４５の片側面（図１の左側面）と前記凹部４４
の底面とに、互いに対向する軌道面４６、４６を形成し
ている。そして、両軌道面４６、４６の間に複数の玉４
７、４７を転動自在に設ける事により、第一のスラスト
転がり軸受であるスラスト転がり軸受４８を構成し、前
記押圧装置９ａの作動に基づいて前記出力側ディスク４
に加わるスラスト荷重を支承自在としている。

【００２７】上述の様に構成する本考案のハーフトロイ
ダル型無段変速機は、前述した従来のハーフトロイダル
型無段変速機と同様の作用に基づき、入力軸３４と出力
ギヤ５０との間で回転力の伝達を行ない、更にこれら入
力軸３４と出力ギヤ５０との回転速度比を変える。

【００２８】即ち、エンジンのクランクシャフト等によ
り前記入力軸３４を回転させると、この回転力が前記押
圧装置９ａを介して前記入力側ディスク２に伝達され、
この入力側ディスク２が、前記出力側ディスク４に向け
押圧されつつ、前記回転軸３４と共に回転する。この結
果、前記各パワーローラ８、８が変位軸７、７を中心と
して回転し、更にこの回転が、出力側ディスク４に伝達
される。出力側ディスク４に伝達された回転力は、前記
出力ギヤ５０により取り出されて、車輪を駆動する為に
利用される。

【００２９】又、前記各トラニオン６、６を揺動させ
て、前記各パワーローラ８、８の周面８ａ、８ａと、入
力側、出力側両ディスク２、４の内側面２ａ、４ａとの
接触位置を変えれば、前記入力軸３４と出力ギヤ５０と
の回転速度の比を変える事が出来る。

【００３０】特に、本考案のハーフトロイダル型無段変
速機の場合、運転時に前記押圧装置９ａが作動する事で
前記出力側ディスク４に加わるスラスト荷重を支承する
為の、スラスト転がり軸受４８を、この出力側ディスク
４の外側面４ｂに形成した凹部４４内に沈入した状態で
設けている。この為、このスラスト転がり軸受４８の存
在に基づき、ハーフトロイダル型無段変速機の軸方向に
亙る長さ寸法が徒に大きくなる事を防止出来る。

【００３１】尚、ハーフトロイダル型無段変速機の運転
時に、前記入力軸３４には、前記入力側ディスク２に加
わるスラスト荷重と前記出力側ディスク４に加わるスラ
スト荷重との差に相当するスラスト荷重が、大きいスラ
スト荷重に応じた方向に加わる。即ち、各パワーローラ
８、８を、前述した図３に示す様に傾斜させ、前記入力
側ディスク２と出力側ディスク４との間で減速を行なう
場合には、前記出力側ディスク４から前記スラスト転が
り軸受４８及び鍔部４５を介して入力軸３４に加えられ
るスラスト荷重は、前記カム板１０ａに加わる反力に基
づくスラスト荷重よりも大きくなる。

【００３２】即ち、ハーフトロイダル型の無段変速機の
場合には、前記各パワーローラ８、８の周面８ａ、８ａ
と前記入力側、出力側両ディスク２、４の内側面２ａ、
４ａとの当接部とこれら両内側面の曲率中心とを結ぶ線
は、１８０度よりも小さい角度で交差する。又、上記各
周面８ａ、８ａと内側面２ａ、４ａとの当接圧に基づい
てこれら各面８ａ、２ａ、４ａに加わる力は互いに等し
い。上記角度の存在に基づき、減速又は増速を行なう場
合にこの力の作用方向は、前記入力側ディスク２と出力
側ディスク４とで異なる。この結果、前記力のうち、ス
ラスト方向の分力が入力側と出力側とで、言い換えれば
前記出力側ディスク４から入力軸３４に加えられるスラ
スト荷重と、前記カム板１０ａに加わる反力に基づくス
ラスト荷重とで異なる。この状態で前記入力軸３４に
は、入力側ディスク２に加わるスラスト方向の分力を出
力側ディスク４に加わるスラスト方向の分力との差が、
何れかの方向に加わる。

【００３３】そして、この様にして入力軸３４に加わる
スラスト荷重は、前記１対の玉軸受３６、３８のうちの
一方の玉軸受により支承される。この様にして何れかの
玉軸受３６、３８が支承するスラスト荷重は、上記差に
相当するだけの小さなものとなる。従って、各玉軸受３
６、３８としてアンギュラ型玉軸受を採用し、両玉軸受
を正面組み合わせ、或は背面組み合わせとして、これら
両玉軸受が互いに逆方向のスラスト荷重を支承自在とす
れば、特に大型の玉軸受を使用しなくても、各玉軸受３
６、３８により前記入力軸３４を回転自在に支持すると
共に、この入力軸３４に加わるスラスト荷重を支承出来
る。

【００３４】次に、図２は本考案の第二実施例を示して
いる。前述の第一実施例が、入力軸３４外周面の鍔部４
５の片側面に、直接軌道面４６を形成していたのに対し
て、本実施例の場合には、前記鍔部４５の片側面に、そ
の片側面に軌道面４６ａを有する軌道輪５１を添設して
いる。その他の構成及び作用は、前述の第一実施例と同
様である為、同等部分には同一符号を付して、重複する
説明を省略する。

【００３５】

【考案の効果】本考案のハーフトロイダル型無段変速機
は、以上に述べた通り構成され作用するが、押圧装置の
作動に伴なって第二のディスクに発生するスラスト荷重
を支承する転がり軸受の設置スペースを少なく出来る。
又、転がり軸受に加わるスラスト荷重を低減して、比較
的負荷容量の小さな転がり軸受の使用を可能に出来る
為、小型・軽量化を図って、自動車の床下等、限られた
設置スペースへの組込みが容易になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第一実施例を示す断面図。

【図２】同じく第二実施例を示す断面図。

【図３】従来から知られたハーフトロイダル型無段変速
機の基本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。

【図４】同じく最大増速時の状態で示す側面図。

【図５】従来の具体的構造の１例を示す断面図。

【符号の説明】

１ 入力軸 ２ 入力側ディスク ２ａ 内側面 ３ 出力軸 ４ 出力側ディスク ４ａ 内側面 ４ｂ 外側面 ５ 枢軸 ６ トラニオン ７ 変位軸 ８ パワーローラ ８ａ 周面 ９、９ａ 押圧装置 １０、１０ａ カム板 １１ 保持器 １２ ローラ １３、１４ カム面 １５ クラッチ １６ 入力軸 １７ ニードル軸受 １８ 出力軸 １９ ハウジング ２０ 玉軸受 ２１ ころ軸受 ２２ 玉軸受 ２３ スリーブ ２４ 駆動側前進ギヤ ２５ 駆動側後退ギヤ ２６ 伝達ギヤ ２７ 取り出し軸 ２８ 従動側前進ギヤ ２９ 従動側後退ギヤ ３０ ナット ３１ エンジンブレーキ用クラッチ ３２ 直結用クラッチ ３３ ストップリング ３４ 入力軸 ３５ 第一支持部 ３６ 玉軸受 ３７ 第二支持部 ３８ 玉軸受 ３９ ニードル軸受 ４０ 雄螺子部 ４１ 係止板 ４２ キー ４３ 板ばね ４４ 凹部 ４５ 鍔部 ４６、４６ａ 軌道面 ４７ 玉 ４８ スラスト転がり軸受 ４９ 支持部 ５０ 出力ギヤ ５１ 軌道輪

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−168051（ＪＰ，Ａ) 実開 平２−47458（ＪＰ，Ｕ) 実開 平２−128851（ＪＰ，Ｕ) 特公 昭47−962（ＪＰ，Ｂ１) 特公 昭38−26814（ＪＰ，Ｂ１) 特公 昭38−3163（ＪＰ，Ｂ１) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F16H 15/38

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転軸と、この回転軸の周囲にそれぞれ
   回転自在に支持され、それぞれの内側面同士を互いに対
   向させた第一、第二のディスクと、第一のディスクの外
   側面と前記回転軸との間に設けられ、この第一のディス
   クを前記第二のディスクに向けて押圧しつつ、前記回転
   軸と第一のディスクとの間で回転力の伝達を行なわせる
   押圧装置と、この押圧装置の作動に基づいて前記第二の
   ディスクに加わるスラスト荷重を支承する第一のスラス
   ト転がり軸受と、前記押圧装置の作動に基づいて前記回
   転軸に加わるスラスト荷重を支承しつつ、この回転軸を
   固定の支持部に対して回転自在に支持する第二のスラス
   ト転がり軸受と、前記第一、第二のディスクの中心軸と
   は交差しないがこの中心軸の方向に対して直角方向に存
   在する捻れの位置にある枢軸を中心として揺動するトラ
   ニオンと、このトラニオンに回転自在に支持された状態
   で、前記第一、第二の両ディスクの間に挟持されたパワ
   ーローラと、前記第二のディスクに固定された回転伝達
   部材とを備え、前記第一、第二のディスクの内側面を、
   それぞれ断面形状が四分の一円弧以下である円弧形で直
   径方向外方が開放した凹面とし、パワーローラの周面を
   球面状の凸面として、この周面と前記内側面とを当接さ
   せて成るハーフトロイダル型無段変速機に於いて、前記
   第二のディスクの外側面には、この第二のディスクと同
   心で円環状の凹部が設けられており、前記回転軸の一部
   で前記第二のディスクの外側面と対向する位置には鍔部
   が設けられており、前記第一のスラスト転がり軸受は、
   前記凹部の底面と前記鍔部の片側面との間に設けられて
   おり、前記第二のスラスト転がり軸受は、前記第一、第
   二のディスクを軸方向両側から挟持する位置に設けた、
   互いに逆方向のスラスト荷重を支承自在な１対の転がり
   軸受により構成している事を特徴とするハーフトロイダ
   ル型無段変速機。