JP3617235B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明に係るトロイダル型無段変速機は、例えば自動車用の変速機として、或は各種産業機械用の変速機として、それぞれ利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、図6〜7に略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク(第一のディスク)2を支持し、この入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に出力側ディスク(第二のディスク)4を固定している。トロイダル型無段変速機を収めたケーシングの内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対して捻れの位置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン6、6を設けている。
【0003】
これら各トラニオン6、6は、両端部外側面に上記枢軸5、5を設けている。又、これら各トラニオン6、6の中心部には変位軸7、7の基端部を支持し、上記各枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を揺動させる事により、上記各変位軸7、7の傾斜角度の調節を自在としている。上記各トラニオン6、6に支持した変位軸7、7の周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ8、8を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の間に挟持している。
【0004】
これら入力側、出力側両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧を、上記入力軸1及び出力軸3を中心に回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ8、8の周面8a、8aは、上記内側面2a、4aに当接させている。
【0005】
上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置9を設け、この押圧装置9によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け、弾性的に押圧している。この押圧装置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器11により保持された複数個(例えば4個)のローラ12、12とから構成している。上記カム板10の片側面(図6〜7の左側面)には、円周方向に亙る凹凸面であるカム面13を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図6〜7の右側面)にも、同様のカム面14を形成している。そして、上記複数個のローラ12、12を、上記入力軸1の中心に対して放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。
【0006】
上述の様に構成されるトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回転すると、カム面13が複数個のローラ12、12を、入力側ディスク2外側面のカム面14に押圧する。この結果、上記入力側ディスク2が、上記各パワーローラ8、8に押圧されると同時に、上記1対のカム面13、14と複数個のローラ12、12との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記各パワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝わり、この出力側ディスク4に固定の出力軸3を回転させる。
【0007】
入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させ、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図6に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、各変位軸7、7を傾斜させる。
【0008】
反対に、増速を行なう場合には、上記枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を揺動させ、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図7に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、各変位軸7、7を傾斜させる。各変位軸7、7の傾斜角度を図6と図7との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0009】
更に、図8〜9は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載された、より具体化されたトロイダル型無段変速機を示している。入力側ディスク2と出力側ディスク4とは、回転軸である円管状の入力軸15の周囲に、それぞれニードル軸受16、16を介して回転自在に支持している。又、カム板10は上記入力軸15の端部(図8の左端部)外周面にスプライン係合し、鍔部17により、上記入力側ディスク2から離れる方向への移動を阻止している。そして、このカム板10とローラ12、12とにより、上記入力軸15の回転に基づいて上記入力側ディスク2を、出力側ディスク4に向け押圧しつつ回転させる、ローディングカム式の押圧装置9を構成している。上記出力側ディスク4には出力歯車18を、キー19、19により結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車18とが同期して回転する様にしている。
【0010】
1対のトラニオン6、6の両端部に設けた枢軸5、5は1対の支持板20、20に、揺動並びに軸方向(図8の表裏方向、図9の左右方向)に亙る変位自在に支持している。そして、上記各トラニオン6、6の中間部に形成した円孔23、23部分に、変位軸7、7を支持している。これら各変位軸7、7は、互いに平行で且つ偏心した支持軸部21、21と枢支軸部22、22とを、それぞれ有する。このうちの各支持軸部21、21を上記各円孔23、23の内側に、ラジアルニードル軸受24、24を介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部22、22の周囲にパワーローラ8、8を、ラジアルニードル軸受25、25等のラジアル転がり軸受を介して、回転自在に支持している。
【0011】
尚、上記1対の変位軸7、7は、上記入力軸15を中心として、180度反対側位置に設けている。又、これら各変位軸7、7の各枢支軸部22、22が各支持軸部21、21に対し偏心している方向は、上記入力側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関し同方向(図9で左右逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸15の配設方向(図8の左右方向、図9の表裏方向)に対しほぼ直交する方向としている。従って上記各パワーローラ8、8は、上記入力軸15の配設方向に亙る若干の変位自在に支持される。この結果、構成各部品の寸法精度、或は動力伝達時の弾性変形等に起因して、上記各パワーローラ8、8が上記入力軸15の軸方向(図8の左右方向、図9の表裏方向)に変位する傾向となった場合でも、構成各部品に無理な力を加える事なく、この変位を吸収できる。
【0012】
又、上記各パワーローラ8、8の外側面と上記各トラニオン6、6の中間部内側面との間には、パワーローラ8、8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受26、26等のスラスト転がり軸受と、次述する外輪30、30に加わるスラスト荷重を支承するスラストニードル軸受27、27等のスラスト軸受とを設けている。このうちのスラスト玉軸受26、26は、上記各パワーローラ8、8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ8、8の回転を許容するものである。この様なスラスト玉軸受26、26はそれぞれ、複数個ずつの玉29、29と、これら各玉29、29を転動自在に保持する円環状の保持器28、28と、スラスト軌道輪である円環状の外輪30、30とから構成している。上記各スラスト玉軸受26、26の内輪軌道は上記各パワーローラ8、8の外側面に、外輪軌道は上記各外輪30、30の内側面に、それぞれ形成している。
【0013】
又、上記各スラストニードル軸受27、27は、レース31と保持器32とニードル33、33とから構成している。このうちのレース31と保持器32とは、回転方向に亙る若干の変位自在に組み合わせている。この様なスラストニードル軸受27、27は、上記レース31、31を上記各トラニオン6、6の内側面に当接させた状態で、この内側面と上記外輪30、30の外側面との間に挟持している。この様なスラストニードル軸受27、27は、上記各パワーローラ8、8から上記各外輪30、30に加わるスラスト荷重を支承しつつ、上記枢支軸部22、22及び上記外輪30、30が上記支持軸部21、21を中心に揺動する事を許容する。
【0014】
又、上記各トラニオン6、6の一端部(図9の左端部)には、それぞれ駆動ロッド34、34を結合し、各駆動ロッド34、34の中間部外周面に駆動ピストン35、35を固設している。そして、これら各駆動ピストン35、35を、それぞれ駆動シリンダ36、36内に油密に嵌装している。
【0015】
更に、固定の部分である、ケーシング37内に設けた支持壁38と前記入力軸15との間には第一の転がり軸受39を、上記支持壁38と前記出力歯車18との間には第二の転がり軸受40を、それぞれ設けている。図示の例では、これら各転がり軸受39、40として、アンギュラ型玉軸受を、接触角の方向を互いに逆にし、背面組み合わせで使用している。即ち、これら各転がり軸受39、40を構成する外輪41、41を、上記支持壁38に形成した円孔43に内嵌すると共に、これら両外輪41、41の端面同士を、間座42を介して互いに突き合わせている。
【0016】
又、上記各転がり軸受39、40を構成する内輪44、44のうち、上記第一の転がり軸受39を構成する内輪44は、上記入力軸15の外周面に軸方向に亙る変位自在に外嵌したホルダ45に外嵌している。そして、このホルダ45の背面(図8の右側面)と、上記入力軸15の外周面に固定したローディングナット46との間に皿板ばね47を挟持している。この皿板ばね47は、前記押圧装置9の非作動時にも、前記各ディスク2、4の内側面2a、4aと前記各パワーローラ8、8の周面8a、8aとを弾性的に当接させる、予圧付与の為に設けている。更に、上記第二の転がり軸受40を構成する内輪44は、上記出力歯車18の内周縁部に形成した支持円筒部48に外嵌固定している。
【0017】
上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の場合には、入力軸15の回転を押圧装置9を介して入力側ディスク2に伝える。そして、この入力側ディスク2の回転を、1対のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達し、更にこの出力側ディスク4の回転を、出力歯車18より取り出す。この様にして回転力を伝達する際、上記押圧装置9の作動に基づいて上記入力軸15が図8の左方に引かれ、上記第一の転がり軸受39に、図8の左向きのスラスト荷重が加わる。又、上記押圧装置9の作動に基づいて出力歯車18が、入力側ディスク2、パワーローラ8、8、出力側ディスク4を介して図8で右向きに押され、上記第二の転がり軸受40に、図8で右向きのスラスト荷重が加わる。
【0018】
上記入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比を変える場合には、前記1対の駆動ピストン35、35を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン35、35の変位に伴って上記1対のトラニオン6、6が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図9の下側のパワーローラ8が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ8が同図の左側に、それぞれ変位する。この結果、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン6、6が、支持板20、20に枢支された枢軸5、5を中心として、図8で互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図6〜7に示した様に、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比が変化する。
【0019】
尚、動力伝達時に構成各部品が弾性変形する結果、上記各パワーローラ8、8が上記入力軸15の軸方向に変位すると、これら各パワーローラ8、8を枢支している上記各変位軸7、7が、上記各支持軸部21、21を中心として僅かに回動する。この回動の結果、上記各スラスト玉軸受26、26の外輪30、30の外側面と上記各トラニオン6、6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、前記各スラストニードル軸受27、27が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。従って、上述の様に各変位軸7、7の傾斜角度を変化させる為の力が小さくて済む。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様に構成され作用する従来のトロイダル型無段変速機の場合には、大きなトルクを伝達する際に、第一、第二の転がり軸受39、40を回転させる為に要するトルク(抵抗)が増大し、これら第一、第二の転がり軸受39、40部分での損失が増大して、トロイダル型無段変速機全体としての伝達効率が必ずしも十分に良くない。即ち、転がり軸受を回転させる為に要するトルクは、当該転がり軸受に加わる荷重が大きくなる程増大する。従来のトロイダル型無段変速機の場合には、上記第一、第二の転がり軸受39、40に、伝達すべきトルクに応じた荷重がそのまま加わる為、これら両転がり軸受39、40を回転させる為に要するトルクが増大して、上述の様に伝達効率を悪化させる。
本発明のトロイダル型無段変速機は、上述の様な不都合を解消すべく発明したものである。
【0021】
【課題を解決する為の手段】
本発明のトロイダル型無段変速機は、前述した従来のトロイダル型無段変速機と同様に、回転軸と、第一、第二のディスクと、押圧装置と、トラニオンと、パワーローラと、第一の転がり軸受と、第二の転がり軸受とを備える。上記第一、第二のディスクは、互いの内側面同士を対向させた状態で上記回転軸の周囲に、それぞれこの回転軸に対する回転自在に支持されている。又、上記押圧装置は、上記第一のディスクの外側面と上記回転軸との間に設けられ、この第一のディスクを上記第二のディスクに向け押圧しつつ上記回転軸と共に回転させる。又、上記トラニオンは、上記第一、第二のディスク同士の中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動する。又、上記パワーローラは、上記トラニオンの内側面に回転自在に支持された状態で、上記第一、第二の両ディスク同士の間に挟持されている。又、上記第一の転がり軸受は、上記回転軸若しくはこの回転軸に支持された部材と固定の部分との間に設けられ、上記押圧装置の作動に基づいて上記回転軸の軸方向に加わる第一のスラスト荷重を支承する。更に、上記第二の転がり軸受は、上記第二のディスク若しくはこの第二のディスクに結合された部材の外側面と固定の部分との間に設けられ、上記押圧装置の作動に基づいて上記第二のディスクに、上記第一のスラスト荷重と反対方向に加わる第二のスラスト荷重を支承する。
【0022】
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記第一の転がり軸受及び第二の転がり軸受に隣接させて油圧シリンダを設けている。そして、上記押圧装置の作動時に、上記第一の転がり軸受を構成し上記回転軸から加わる第一のスラスト荷重の入力側に位置する第一の軌道輪を、上記第一のスラスト荷重の作用方向と逆方向に押圧すると共に、上記第二の転がり軸受を構成し上記第二のディスクから加わる第二のスラスト荷重の入力側に位置する第二の軌道輪を、上記第二のスラスト荷重の作用方向と逆方向に押圧する。この様に、第一、第二の軌道輪を各軌道輪に作用するスラスト荷重の方向と逆方向に押圧する事により、上記第一の転がり軸受及び第二の転がり軸受に加わるスラスト荷重を軽減し、これら第一の転がり軸受及び第二の転がり軸受の回転抵抗の低減を図る。
【0023】
【作用】
上述の様に構成される本発明のトロイダル型無段変速機は、前述した従来のトロイダル型無段変速機と同様の作用に基づき、第一のディスクと第二のディスクとの間で回転力の伝達を行ない、更にトラニオンの傾斜角度を変える事により、これら両ディスク同士の間の回転速度比を変える。
【0024】
特に、本発明のトロイダル型無段変速機の場合には、第一の転がり軸受及び第二の転がり軸受に隣接させて設けた油圧シリンダにより、これら第一の転がり軸受及び第二の転がり軸受の回転抵抗の低減を図る為、トロイダル型無段変速機の伝達効率の向上を図れる。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、第一、第二の転がり軸受39、40の回転抵抗の低減を図り、トロイダル型無段変速機の伝達効率の向上を図る点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述した従来構造と同様であるから、同等部分に関する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。又、図示の例では、押圧装置9の非作動時にも、入力側、出力側各ディスク2、4の内側面2a、4aと各パワーローラ8、8の周面8a、8aとを当接させる、予圧付与の為の皿板ばね47を、上記押圧装置9を構成するカム板10の背面側(図1の左面側)に設けている。即ち、回転軸である入力軸15の一端部(図1の左端部)で上記カム板10の背面から突出した部分にローディングナット46を固定し、このローディングナット46の前面(図1の右面)と上記カム板10の背面との間に、上記皿板ばね47を設けている。但し、この様な皿板ばね47の設置位置は、本発明の要旨とは関係ない。
【0026】
本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記第一の転がり軸受39及び第二の転がり軸受40に隣接させて、第一、第二の油圧シリンダ49、50を設けている。即ち、ケーシング37(図9参照)内の支持壁38に形成した円孔43aの軸方向中間部に、厚肉円環状のシリンダブロック51を嵌合固定している。尚、上記ケーシング37及び支持壁38は二つ割れ構造としている為、図示の様に、上記シリンダブロック51の外周縁部を上記円孔43aの中間部内周面に形成した凹部に嵌合させる事は、特に問題なく行なえる。上記シリンダブロック51の軸方向両端面内径寄り部分には、それぞれが断面円輪状である、第一のシリンダ孔52と第二のシリンダ孔53とを形成している。そして、このうちの第一シリンダ孔52内に第一ピストン54を、第二シリンダ孔53内に第二ピストン55を、それぞれ油密に嵌装する事により、それぞれ上記第一、第二の油圧シリンダ49、50を構成している。上記第一、第二各ピストン54、55は、上記第一、第二の各転がり軸受39、40を構成する内輪44、44に、それぞれ対向させている。そして、上記第一、第二各シリンダ孔52、53内への圧油供給に基づいてこれら各シリンダ孔52、53から上記第一、第二ピストン54、55を押し出す事により、それぞれスラストころ軸受56、56を介して、それぞれが第一の軌道輪又は第二の軌道輪である、上記各内輪44、44を、上記シリンダブロック51から離れる方向に押圧自在としている。
【0027】
上記第一、第二各シリンダ孔52、53内に圧油を給排自在とすべく、上記支持壁38及び上記シリンダブロック51の内側には油給排路を設けている。即ち、上記シリンダブロック51の外周面には全周に亙って凹溝57を形成し、この凹溝57と、上記支持壁38内に設け、上記円孔43aの内周面に一端を開口した第一給排孔58とを連通させている。そして、上記シリンダブロック51内に設け、一端を上記凹溝57の底部に開口させた第二給排孔59の他端を、上記第一、第二各シリンダ孔52、53の底部に開口させている。上記第一給排孔58の他端は、図示しない圧油源に通じさせている。この圧油源としては、トロイダル型無段変速機の運転状況(負荷、変速比等)に応じて変化する油圧を供給できるものが、好ましく利用できる。例えば、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aと各パワーローラ8、8の周面8a、8aとの間のトラクション力に応じて上昇する高圧側の油圧、或は高圧側の油圧と低圧側の油圧との差圧、或は調圧弁やレギュレータ弁で調整したライン圧を利用できる。
【0028】
上述の様な第一、第二各シリンダ孔52、53内に嵌装した第一、第二各ピストン54、55は、トロイダル型無段変速機を介して回転力を伝達する際に、前記第一、第二の各転がり軸受39、40を構成する内輪44、44を、互いに離れる方向に押圧する。即ち、トロイダル型無段変速機の運転時には、前記押圧装置9の作動に基づき、前記入力軸15が図1〜2で左方に引っ張られる。そして、前記第一の転がり軸受39を構成し、上記入力軸15から加わる第一のスラスト荷重の入力側に位置する第一の軌道輪である内輪44に、図1〜2で左向きの第一のスラスト荷重が加わる。又、出力歯車18は上記押圧装置9の作動に基づき、第二のディスクである出力側ディスク4により図1〜2で右方に押され、前記第二の転がり軸受40を構成し、第二のスラスト荷重の入力側に位置する第二の軌道輪である内輪44に、図1〜2で右向きの第二のスラスト荷重が加わる。
【0029】
上述の様にトロイダル型無段変速機の運転時には、上記押圧装置9の作動に基づいて上記1対の内輪44、44に、これら両内輪44、44同士を互いに近づけ合う方向の、第一、第二のスラスト荷重が加わる。これに対して、前記第一、第二の両油圧シリンダ49、50を構成する第一、第二のシリンダ孔52、53内への圧油供給に基づいて、前記第一、第二両ピストン54、55が、上記両内輪44、44同士を互いに離隔させる方向に押圧する。即ち、上記第一ピストン54が第一の転がり軸受39を構成する内輪44を、第一のスラスト荷重の作用方向と逆方向に押圧すると共に、上記第二の転がり軸受40を構成する内輪44を、上記第二のスラスト荷重の作用方向と逆方向に押圧する。この様に、スラスト荷重の入力側に位置する1対の内輪44、44を、各内輪44、44に作用するスラスト荷重の方向と逆方向に押圧する為、上記第一の転がり軸受39及び第二の転がり軸受40に加わるスラスト荷重を軽減し、これら第一の転がり軸受39及び第二の転がり軸受40の回転抵抗の低減を図れる。尚、上記第一、第二両ピストン54、55が上記各内輪44、44を押圧する力は、上記第一、第二各スラスト荷重よりも小さくする。従って、上記第一の転がり軸受39及び第二の転がり軸受40の予圧が喪失し、これら各転がり軸受39、40ががたつく事はない。
【0030】
次に、図3は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、第一、第二の各転がり軸受39、40を構成する、第一の軌道輪又は第二の軌道輪である内輪44a、44aと、第一、第二の各油圧シリンダ49、50を構成する第一、第二のピストン54a、55aとを一体にしている。従って本例の場合には、トロイダル型無段変速機の運転時に、上記第一、第二の各ピストン54a、55aが、第一、第二の各シリンダ孔52、53内で回転する。そこで、本例の場合には、上記第一、第二の各ピストン54a、55aと第一、第二の各シリンダ孔52、53との間の油密保持を図る為のシールリングとして、滑り易いものを使用する。その他の構成及び作用は、上述した第1例の場合と同様である。
【0031】
次に、図4は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、第一の転がり軸受39を構成し、入力軸15から加わる第一のスラスト荷重の入力側に位置する第一の軌道輪を、外輪41としている。又、第二の転がり軸受40を構成し、第二のディスクである出力側ディスク4(図1参照)から出力歯車18を介して加わる第二のスラスト荷重の入力側に位置する第二の軌道輪を、やはり外輪41としている。この為に、上記入力軸15の中間部外周面に、比較的大径のホルダ部60を固設し、このホルダ部60に、上記第一の転がり軸受39を構成する外輪41を内嵌固定している。又、出力歯車18の片側面(図4の右側面)外周縁寄り部分に保持筒61を形成し、この保持筒61に、上記第二の転がり軸受40を構成する外輪41を内嵌固定している。第一、第二のスラスト荷重を支承する第一、第二の軌道輪が内輪44、44から外輪41、41に変わった以外の構成及び作用は、前述した第1例の場合と同様である。
【0032】
次に、図5は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、第一、第二の各転がり軸受39、40を構成する、第一の軌道輪又は第二の軌道輪である外輪41a、41aと、第一、第二の各油圧シリンダ49、50を構成する第一、第二のピストン54a、55aとを一体にしている。第一、第二のスラスト荷重を支承する第一、第二の軌道輪が内輪44、44から外輪41a、41aに変わった以外の構成及び作用は、前述した第2例の場合と同様である。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用する為、伝達効率を高めて、例えばトロイダル型無段変速機を組み込んだ自動車の走行性能、燃費性能を向上できる。又、転がり軸受の疲れ寿命を向上させて、耐久性を向上させる事もできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す部分断面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す、図2と同様の図。
【図4】同第3例を示す、図2と同様の図。
【図5】同第4例を示す、図2と同様の図。
【図6】従来から知られたトロイダル型無段変速機の基本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。
【図7】同じく最大増速時の状態で示す側面図。
【図8】従来の具体的構造の1例を示す断面図。
【図9】図8のB−B断面図。
【符号の説明】
1 入力軸
2 入力側ディスク(第一のディスク)
2a 内側面
3 出力軸
4 出力側ディスク(第二のディスク)
4a 内側面
5 枢軸
6 トラニオン
7 変位軸
8 パワーローラ
8a 周面
9 押圧装置
10 カム板
11 保持器
12 ローラ
13、14 カム面
15 入力軸
16 ニードル軸受
17 鍔部
18 出力歯車
19 キー
20 支持板
21 支持軸部
22 枢支軸部
23 円孔
24、25 ラジアルニードル軸受
26 スラスト玉軸受
27 スラストニードル軸受
28 保持器
29 玉
30 外輪
31 レース
32 保持器
33 ニードル
34 駆動ロッド
35 駆動ピストン
36 駆動シリンダ
37 ケーシング
38 支持壁
39 第一の転がり軸受
40 第二の転がり軸受
41、41a 外輪
42 間座
43、43a 円孔
44 44a 内輪
45 ホルダ
46 ローディングナット
47 皿板ばね
48 支持円筒部
49 第一の油圧シリンダ
50 第二の油圧シリンダ
51 シリンダブロック
52 第一のシリンダ孔
53 第二のシリンダ孔
54、54a 第一ピストン
55、55a 第二のピストン
56 スラストころ軸受
57 凹溝
58 第一給排孔
59 第二給排孔
60 ホルダ部
61 保持筒
Claims (1)
- 回転軸と、互いの内側面同士を対向させた状態でこの回転軸の周囲にそれぞれこの回転軸に対する回転自在に支持された第一、第二のディスクと、このうちの第一のディスクの外側面と上記回転軸との間に設けられ、この第一のディスクを上記第二のディスクに向け押圧しつつ上記回転軸と共に回転させる押圧装置と、上記第一、第二のディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動するトラニオンと、このトラニオンの内側面に回転自在に支持された状態で、上記第一、第二の両ディスク同士の間に挟持されたパワーローラと、上記回転軸若しくはこの回転軸に支持された部材と固定の部分との間に設けられ、上記押圧装置の作動に基づいて上記回転軸の軸方向に加わる第一のスラスト荷重を支承する第一の転がり軸受と、上記第二のディスク若しくはこの第二のディスクに結合された部材の外側面と固定の部分との間に設けられ、上記押圧装置の作動に基づいて上記第二のディスクに、上記第一のスラスト荷重と反対方向に加わる第二のスラスト荷重を支承する第二の転がり軸受とを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、上記第一の転がり軸受及び第二の転がり軸受に隣接させて油圧シリンダを設け、上記押圧装置の作動時に、上記第一の転がり軸受を構成し上記回転軸から加わる第一のスラスト荷重の入力側に位置する第一の軌道輪を、上記第一のスラスト荷重の作用方向と逆方向に押圧すると共に、上記第二の転がり軸受を構成し上記第二のディスクから加わる第二のスラスト荷重の入力側に位置する第二の軌道輪を、上記第二のスラスト荷重の作用方向と逆方向に押圧する事により、上記第一の転がり軸受及び第二の転がり軸受に加わるスラスト荷重を軽減し、これら第一の転がり軸受及び第二の転がり軸受の回転抵抗の低減を図る事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
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-
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