JP4280963B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
本発明は、トロイダル型無段変速機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動車用変速機としては、例えば、図6および図7に示すようなトロイダル型無段変速機が知られている。
このトロイダル型無段変速機は、入力軸1と中心軸を同じくして入力側ディスク2が設けられるとともに、入力軸1と中心軸を同じくして配置された出力軸3の端部に出力側ディスク4が固定されている。トロイダル型無段変速機を収めたケーシングの内側には、枢軸5,5を中心として揺動する複数個(この例では2個)のトラニオン6,6が設けられている。すなわち、各枢軸5,5は、入力側、出力側の両ディスク2,4の中間位置に、両ディスク2,4の軸方向に対して直交する方向に、かつ両ディスク2,4の中心軸に対して捻れの位置に配置されていて、各トラニオン6,6の両端部外側面に設けられている。
【0003】
また、各トラニオン6,6の中間部には、変位軸7,7の基端部が支持されており、各枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させることにより、各変位軸7,7の傾斜角度が変化するようになっている。各変位軸7,7には、それぞれパワーローラ8,8が回転自在に支持されている。各パワーローラ8,8は、両ディスク2,4の間に挟持されている。すなわち、両ディスク2,4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ、枢軸5を中心とする円弧を入力軸1及び出力軸3を中心に回転させた場合に得られる凹面に形成されており、これらの内側面2a,4aに、球状凸面に形成された各パワーローラ8,8の周面8a,8aが当接されている。
【0004】
入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置9が設けられ、この押圧装置9によって、入力側ディスク2が出力側ディスク4に向けて押圧されている。この押圧装置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器11により保持された複数個(例えば4個)のローラ12とを備えている。カム板10の片側面(図6および図7において左側面)には、円周方向に渡って凹凸形状を成すカム面13が形成され、また入力側ディスク2の外側面(図6および図7において右側面)にも同様のカム面14が形成されている。これらのカム面13,14の間に、複数個のローラ12が、入力軸1の中心から放射方向に延在する軸を中心として回転自在に支持されている。
【0005】
このように構成されたトロイダル型無段変速機においては、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回転すると、カム面13が複数個のローラ12を入力側ディスク2の外側面のカム面14に押圧する。その結果、入力側ディスク2が両パワーローラ8,8に押圧されるとともに、一対のカム面13,14と複数個のローラ12との押し付け合いに基づいて入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が両パワーローラ8,8を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定された出力軸3が回転する。
【0006】
入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変えて、入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、図6のように、各枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させる。すなわち、各パワーローラ8,8の周面8a,8aが、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸7,7を傾斜させる。
一方、増速を行なう場合には、図7のように、各枢軸5,5を中心として各トラニオン6、6を揺動させる。すなわち、各パワーローラ8,8の周面8a,8aが、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸7,7を傾斜させる。各変位軸7,7の傾斜角度を図6と図7の場合の中間の角度に調整すれば、入力軸1と出力軸3との間で中間の変速比を得られる。
【0007】
図8および図9は、より具体化されたトロイダル型無段変速機を示している。このトロイダル型無段変速機において、入力側ディスク2と出力側ディスク4は、それぞれ入力軸15の外周部にニードル軸受16,16を介して回転自在に支持されている。カム板10は、入力軸15の端部(図8において左端部)の外周面にスプライン係合されて、鍔部17により入力側ディスク2から離間する方向への移動が阻止されている。そして、このカム板10とローラ12,12とにより、入力軸15の回転に基づいて、入力側ディスク2を出力側ディスク4に向けて押圧しつつ回転させる、ローディングカム式の押圧装置9が構成されている。
【0008】
出力側ディスク4には、出力歯車18がキー19,19により結合され、これらの出力側ディスク4と出力歯車18とが一体的に回転するようになっている。出力歯車18と、これに噛合する図示しない歯車等によって、出力側ディスク4の回転を取り出すための動力取り出し手段が構成されている。
【0009】
一対のトラニオン6,6の両端部に設けられた枢軸5,5は、一対の支持板20,20に、揺動自在および軸方向(図8において表裏方向、図9において左右方向)に変位自在に支持されている。一対の支持板20,20は、十分な剛性を有する板状に形成されており、それらの中央部に形成された円孔71,71が、ケーシング72の内面およびケーシング72内のシリンダケース73の側面に固設された支持ピン74a,74bに外嵌されることにより、ケーシング72の内側にて揺動自在および各枢軸5,5の軸方向に変位自在に支持されている。また、支持板20,20の両端部には、それぞれ円形の支持孔75,75が形成されており、これらの支持孔75,75には、それぞれトラニオン6,6の両端部に設けられた枢軸5,5が、外輪76,76を備えたラジアルニードル軸受77,77によって支持されている。これらの構成により、各トラニオン6,6は、各枢軸5,5を中心として揺動自在、および各枢軸5,5の軸方向に変位自在に、ケーシング72内に支持されている。
【0010】
各トラニオン6,6の中間部に形成された円孔23,23には、それぞれ変位軸7,7が支持されている。変位軸7は、互いに平行でかつ偏心した支持軸部21と枢支軸部22とを備えている。支持軸部21は、円孔23の内側に、ラジアルニードル軸受24を介して揺動自在に支持されている。また、枢支軸部22の外周部には、パワーローラ8がラジアルニードル軸受25を介して回転自在に支持されている。
【0011】
一対の変位軸7,7は、入力軸15を中心として点対称の位置(180度反対側の位置)になるように配置されている。また、各変位軸7,7において、各枢支軸部22,22が各支持軸部21,21に対して偏心する方向は、両ディスク2,4の回転方向に関して同方向(図9においては左右逆方向)とされている。また、各枢支軸部22,22の軸方向は、入力軸15の軸方向(図8において左右方向、図9において表裏方向)に対してほぼ直交する方向とされている。したがって、各パワーローラ8,8は、入力軸15の軸方向に若干の変位が許容されて支持されている。その結果、各構成部品の寸法精度のばらつき、あるいは動力伝達時の弾性変形等に起因して、各パワーローラ8,8が入力軸15の軸方向に多少変位しても、この変位が吸収されて、各構成部品に無理な力が加わることがない。
【0012】
また、各パワーローラ8,8の外側面と各トラニオン6,6の中間部内側面との間にはそれぞれ、パワーローラ8,8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受等のスラスト転がり軸受26,26と、後述する外輪30,30に加わるスラスト荷重を支承するスラストニードル軸受等のスラスト軸受27,27とが設けられている。前者の各スラスト転がり軸受26,26は、各パワーローラ8,8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、各パワーローラ8,8の回転を許容する。また、後者の各スラスト軸受27,27は、各パワーローラ8,8から各スラスト転がり軸受26,26の外輪30,30に加わるスラスト荷重を支承しつつ、枢支軸部22,22および外輪30,30が支持軸部21,21を中心に揺動することを許容する。各スラスト転がり軸受26,26はそれぞれ、複数個の玉29,29と、これらの玉29,29を転動自在に保持する円環状の保持器28,28と、スラスト軌道輪である円環状の外輪30,30とから構成されている。各スラスト転がり軸受26,26の内輪軌道は、パワーローラ8,8の外側面に、外輪軌道は各外輪30,30の内側面に、それぞれ形成されている。
【0013】
また、各トラニオン6,6の一端部(図9において左端部)のそれぞれには駆動ロッド35,35が結合され、各駆動ロッド35,35の中間部外周面には駆動ピストン36が固設されている。各駆動ピストン36,36のそれぞれは、シリンダケース23内に設けられた駆動シリンダ37,37内に油密的に嵌装されている。さらに、ケーシング22内に設けられた支持壁38と入力軸15との間には、一対の転がり軸受81,81が設けられており、これにより、入力軸15がケーシング72内に回転自在に支持されている。
【0014】
このように構成されたトロイダル型無段変速機においては、入力軸15の回転が押圧装置9を介して入力側ディスク2に伝えられる。そして、この入力側ディスク2の回転が一対のパワーローラ8,8を介して出力側ディスク4に伝達され、さらに、この出力側ディスク4の回転が出力歯車18から取り出される。
【0015】
入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン36,36を互いに逆方向に変位させる。すると、各駆動ピストン36,36の変位に伴って、一対のトラニオン6,6がそれぞれ逆方向に変位する。例えば、図9中下側のパワーローラ8が同図中の右側に、同図中上側のパワーローラ8が同図中の左側に、それぞれ変位する。その結果、各パワーローラ8,8の周面8a,8aと入力側ディスク2および出力側ディスク4の内側面2a,4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン6,6が、支持板20,20に枢支された枢軸5,5を中心として、図8において互いに逆方向に揺動する。その結果、上述の図6および図7に示したように、各パワーローラ8,8の周面8a,8aと各内側面2a,4aとの当接位置が変化し、入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比が変化する。
【0016】
なお、動力伝達時に各構成部品が弾性変形する結果、各パワーローラ8,8が入力軸15の軸方向に変位したときに、各パワーローラ8,8を枢支している各変位軸7,7が各支持軸部21,21を中心として僅かに揺動する。この揺動の結果、各スラスト転がり軸受26,26の外輪30,30の外側面と各トラニオン6,6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、各スラスト軸受27,27が存在するため、それらの相対変位に要する力は小さい。したがって、上述のように各変位軸7,7の傾斜角度を変化させるための力は小さくて済む。
【0017】
さらに、伝達可能なトルクを増大すべく、図10に示すように構成されたトロイダル型無段変速機も従来から知られている。
図10において、入力軸15の外周部には、入力側ディスク2A,2Bと出力側ディスク4A,4Bとが設けられ、これら計4つのディスク2A,2B,4A,4Bが動力の伝達方向に関して並列に配置されている。また、入力軸15の中間部周囲に、出力歯車18aが回転自在に支持され、この出力軸18aの中心部に設けられた円筒状の両端部に、出力側ディスク4A,4Bがスプライン係合されている。出力側ディスク4A,4Bは、入力軸15との間に介在されたニードル軸受け16,16によって、入力軸15の軸線を中心として回転自在、かつ入力軸15の軸線方向に変位自在に支持されている。また、入力側ディスク2A,2Bは、入力軸15の両端部に、その入力軸15と共に回転するように支持されている。
【0018】
一方の入力側ディスク2Aは、その背面(図10中の左面)がローディングナット39に突き当てられており、入力軸15の軸線方向における変位が実質的に阻止されている。これに対して、他方の入力側ディスク2Bは、ボールスプライン40によって入力軸15に支持されており、入力軸15の軸線方向に変位自在とされている。この入力側ディスク2Bとカム板10との間には、皿板ばね41とスラストニードル軸受42が直列に設けられている。前者の皿板ばね41は、各ディスク2A,2B,4A,4Bの内側面2a,2a,4a,4aとパワーローラ8,8の周面8a,8aとの当接部に予圧を付与する役目を果たす。一方、後者のスラストニードル軸受42は、押圧装置9の作動時に、入力側ディスク2Bとカム板10との相対回転を許容する役目を果たす。
【0019】
また、出力歯車18aは、1対のアンギュラ型玉軸受43,43によって、ハウジング内に設けられた仕切壁44に支持されており、入力軸15の軸線を中心として回転自在とされ、かつ入力軸15の軸線方向の変位が阻止されている。また、このように計4つのディスク2A,2B,4A,4Bを動力の伝達方向に並列に配置する、いわゆるダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機において、入力側ディスク2A,2Bをボールスプライン40,40aによって入力軸15の軸線方向に変位自在に支持する理由は、両ディスク2A,2Bの回転を完全に同期させつつ、押圧機構9の作動に伴う各構成部材の弾性変形によって、両ディスク2A,2Bが入力軸15の軸線方向に変位することを許容するためである。
【0020】
このような目的のために設けられるボールスプライン40,40aは、入力側ディスク2A,2Bの内周面に形成された内径側ボールスプライン溝46,46と、入力軸15の外周面に形成された外径側ボールスプライン溝47,47と、これらのボールスプライン溝46,47の間に転動自在に介在された複数のボール48とを備えている。また、ボールスプライン40において、入力側ディスク2Bの内周面の内側面2a寄り部分に形成された係止溝49には、ボール48を抜け止めするための係止環50が係止されている。また、ボールスプライン40aにおいて、入力軸15の外周面に形成された係止溝49aには、ボール48を抜け止めするための係止環50aが係止されている。
【0021】
従来、このような係止環50,50aとしては、例えば、特開平11−51135号公報および特開平11−210853号公報に記載されているように、図11および図12のような断面円形の止め輪60a,60bが用いられている。図11および図12のボールスプライン40においては、入力側ディスク2Bの内周面と入力軸15の外周面のそれぞれに、断面円形の止め輪60a,60bを係止するための係止溝49,49aが形成されている。したがって、これら2つの止め輪60a,60bによって、入力軸15の軸線方向におけるボール48の飛び出しが防止される。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、止め輪60a,60bには、ボール48を抜け止めするために、ボール48から入力軸15の軸線方向に沿う大きな荷重が掛かることになる。したがって、止め輪60a,60bの変形や破損を防止するためには、特に、入力軸15の軸線方向における止め輪60a,60bの強度を大きく設定することが必要となる。
【0023】
しかし、図11および図12のような断面円形の止め輪60a,60bにおいては、次のような問題がある。すなわち、入力軸15の軸線方向における強度を大きく設定しようとした場合には、必然的に、断面円形の止め輪60a,60bの外径寸法が大きくなってしまい、それに応じて係止溝49,49aを深く形成することが必要となって、入力側ディスク2Bおよび入力軸15の強度低下を招くおそれがある。
【0024】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、入力軸や入力側ディスクなどの強度を維持したまま、ボールの抜け止め方向における強度を効率よく高めることができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のトロイダル型無段変速機は、入力軸のボールスプライン溝と入力側ディスクのボールスプライン溝との間に備えられるボールが前記入力軸の軸線方向に抜け出ることを防止するために、前記入力軸または前記入力側ディスクに止め輪を取り付けたトロイダル型無段変速機において、
前記止め輪は、断面形状が楕円形であり、かつ長軸方向が前記入力軸の軸線方向とされたことにより、前記入力軸の軸線方向における強度を前記入力軸の径方向における強度よりも大きくし、
前記入力軸または前記入力側ディスクに前記止め輪を取り付けるための係止溝が前記止め輪の短軸方向の直径に相当する深さに形成され、
かつ、前記係止溝の底部が止め輪の内周面側の形状に対応して湾曲して形成されていることを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2は、本実施の形態におけるトロイダル型無段変速機のボールスプライン部分の説明図であり、その他の部分の構成は、図10,図11および図12の構成と同じである。
本例のボールスプライン40は、係止溝49,49a内に係止される図10中の係止環50として、断面楕円形の止め輪61,62を備えている。止め輪61,62の断面形状は、楕円形の長軸方向を入力軸15の軸線方向とする楕円形状とされている。係止溝49,49aは、その止め輪61,62を係止するように、止め輪61、62の短軸方向の直径に相当する深さに形成されている。また、入力軸15の係止溝49a側に係止される止め輪62は、図2のような平面略C字状とされ、その一部には、径方向の内方に膨出する回り止め部62aが形成されている。その回り止め部62aは、入力軸15の外径側ボールスプライン溝47内に嵌まり合うことによって、止め輪62を入力軸15に回り止めする。また、入力側ディスク2Bの係止溝49側に係止される止め輪61は平面略C字状とされ、その一部には、径方向の外方に膨出する回り止め部が形成されている。その回り止め部は、入力側ディスク2Bの内径側ボールスプライン溝46内に嵌まり合うことによって、止め輪61を入力側ディスク2Bに回り止めする。
【0028】
このように、止め輪61,62を断面楕円形とすることにより、入力軸15の軸線方向における強度を効率的に上げることができる。このことは、断面楕円形の止め輪61、62の方が、図12のような従来の断面円形の止め輪60a,60bよりも曲げ応力σが小さいことから明らかである。すなわち、曲げ応力σは、曲げモーメントMと断面係数Zとの関係から、下式(1)によって表される。
【0029】
【数1】
σ=M/Z …(1)
【0030】
上式(1)から、断面係数Zが大きくなるほど、曲げ応力σが小さくなって、強度が上がることが分かる。断面係数Zは断面形状に依存し、図3(a)のように、従来の断面円形の止め輪60の直径をdとした場合、その断面係数Z1は下式(2)によって表される。
【0031】
【数2】
Z1={(π/32)・d3} …(2)
【0032】
一方、図3(b)のように、断面楕円形の止め輪61,62の短軸方向の直径を2a、長軸方向の直径を2bとした場合、その断面係数Z2は下式(3)によって表される。
【0033】
【数3】
Z2={(π/4)・a2・b} …(3)
【0034】
ここで、図3(c)のように、断面楕円形の止め輪61,62の短軸方向の直径を図3(a)の断面円形の止め輪60の直径dと同一とした場合、その止め輪61,62の断面係数Z3は下式(4)によって表される。
【0035】
【数4】
【0036】
c>dであるから、上式(2),(4)の断面係数Z1,Z3を比較した場合、
【0037】
【数5】
{(π/32)・d2・c}>{(π/32)・d3}=Z3>Z1
【0038】
となり、断面楕円形の止め輪61,62の短軸方向の直径を断面円形の止め輪60の直径dと同一とした場合、その止め輪61,62の断面係数Z3は、断面円形の止め輪60よりも曲げ応力が小さくなり、断面楕円形の止め輪61,62の強度が上がったことが分かる。
したがって、断面楕円形の止め輪61,62は、ボール48の抜け止めのために要求される入力軸15の軸線方向における強度が上がることになる。しかも、断面楕円形の止め輪61,62は、入力軸15の径方向における直径、つまり短軸方向の直径を大きくする必要がないため、係止溝49,49aを深くすることなく、入力側ディスク2Bおよび入力軸15の強度低下を招くおそれもない。
【0039】
図4は、止め輪61,62の比較例としての断面楕円形の止め輪63,64の説明図である。これらの止め輪63,64は、その長軸方向を入力軸15の径方向とし、その短軸方向を入力軸15の軸線方向とする楕円形状とされている。これらの止め輪63,64を用いる場合には、係止溝49,49aの深さを大きくしなければならず、入力側ディスク2Bおよび入力軸15の強度低下を招くおそれがある。
【0040】
図5は、止め輪61,62の他の比較例としての断面長方形の止め輪65,66の説明図である。これらの止め輪65,66を用いた場合には、係止溝49,49aの溝底角部の丸み(R)が極めて小さくなり、その部分に応力集中が起きやすくなってしまう。しかも、断面長方形の止め輪65,66は、その角部にバリが生じやすいという問題もある。
【0041】
(他の実施の形態)
本発明における止め輪は、ボールの抜け止め方向における強度を高めることができる構成であればよく、その断面形状は、入力軸の軸線方向における止め輪の強度を入力軸の径方向における止め輪の強度よりも大きくできる形状であればよい。したがって、止め輪を断面楕円形とする場合には、その長軸と短軸の長さなどを種々変更することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のトロイダル型無段変速機は、ボールを抜け止めするための止め輪として、入力軸の軸線方向における強度を入力軸の径方向における強度よりも大きくした止め輪を備えることにより、その止め輪が取り付けられる入力軸や入力側ディスクなどの強度を維持したまま、ボールの抜け止め方向における強度を効率よく高めることができる。その場合、止め輪の断面形状を楕円形として、その長軸方向を入力軸の軸線方向とすることにより、ボールの抜け止め方向における強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機のボールスプライン部分の拡大断面図である。
【図2】図1における一方の止め輪の平面図である。
【図3】(a),(b),(c)は、止め輪の断面形状と断面係数との関係の説明図である。
【図4】図1における止め輪の比較例を備えたボールスプライン部分の拡大断面図である。
【図5】図1における止め輪の他の比較例を備えたボールスプライン部分の拡大断面図である。
【図6】トロイダル型無段変速機の最大減速時の状態を説明するための側面図である。
【図7】図6のトロイダル型無段変速機の最大増速時の状態を説明するための側面図である。
【図8】トロイダル型無段変速機の従来例を説明するための要部の断面図である。
【図9】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図10】トロイダル型無段変速機の他の従来例を説明するための要部の断面図である。
【図11】従来のトロイダル型無段変速機におけるボールスプライン部分の断面図である。
【図12】図11のZ円部の拡大図である。
【符号の説明】
2A,2B 入力側ディスク
4 出力側ディスク
15 入力軸
40,40a ボールスプライン
46,47 ボールスプライン溝
48 ボール
49,49a 係止溝
61,62 止め輪
Claims (1)
- 入力軸のボールスプライン溝と入力側ディスクのボールスプライン溝との間に備えられるボールが前記入力軸の軸線方向に抜け出ることを防止するために、前記入力軸または前記入力側ディスクに止め輪を取り付けたトロイダル型無段変速機において、
前記止め輪は、断面形状が楕円形であり、かつ長軸方向が前記入力軸の軸線方向とされたことにより、前記入力軸の軸線方向における強度を前記入力軸の径方向における強度よりも大きくし、
前記入力軸または前記入力側ディスクに前記止め輪を取り付けるための係止溝が前記止め輪の短軸方向の直径に相当する深さに形成され、
かつ、前記係止溝の底部が止め輪の内周面側の形状に対応して湾曲して形成されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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