JPH0547316Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は、内燃機関の駆動力を伝達するため
の動力伝達系を構成するフライホイールの取付部
構造に関する。

従来の技術 内燃機関からの動力伝達系を構成するフライホ
イールは、従来から、この伝達系の主に捩り振動
を低減させるために、クランクシヤフトに直結さ
れている。しかしこの形式ではフライホイールの
質量に基づく曲げ振動が生じ、この曲げ振動に起
因して特に自動車において車室内にこもり音等の
異音を生じ易い。

そこで、クランクシヤフトとフライホイールと
を弾性板を介して連結することによつて、クラン
ク軸系の固有曲げ振動数を常用域から変化させて
異音を低減させることが提案されている（例え
ば、特公昭57−58542号公報）。

考案が解決しようとする問題点 しかしながら、このような従来例にあつては、
一般にフライホイールがクランクシヤフトに直結
されている場合に比較して、フライホイール重量
が小さく形成されているため、熱容量が小さく容
易に加熱される。そのため、フライホイールが加
熱されて高温になると、フライホイールに接する
クラツチ摩擦材の摩耗を助長し、クラツチ寿命を
低下させるという問題点があつた。

問題点を解決するための手段 本考案は上記従来技術の問題点に鑑みて成され
たもので、クランクシヤフトに回転方向の剛性が
大きくかつ曲げ方向の剛性が小さい弾性板の内周
端部を固定し、この弾性板の外周端部にフライホ
イールを固定した内燃機関のフライホイール取付
部構造であつて、フライホイールのクラツチ摩擦
材接触部の背面に窪みを設け、空気流出通路を介
してこの窪みをフライホイールの外周部と連通さ
せる一方、弾性板の前記窪みに対向する位置に、
クランクシヤフトの回転時にフライホイールへ向
かう空気流を生じさせる冷却用のフインと空気流
入窓とを設けたことを特徴としている。

作 用 本考案は以上のような特徴的な構成を備える結
果、クランクシャフト回転時には、冷却用フイン
の回転によつて外部の空気が空気流入窓からフラ
イホイールの窪みに導入され、この窪みに導入さ
れた空気が遠心力を受けて空気流出通路からフラ
イホイールの外周部へと流れる。フライホイール
はこの空気流によつて冷却される。

実施例 以下本考案の実施例を図面に基づき詳述する。

第１図〜第２図において、１は内燃機関のクラ
ンクシヤフトである。このクランクシヤフト１の
軸端には、回転方向の剛性が大きくかつ曲げ方向
の剛性が小さい略円板形の弾性板２の内周端部２
ａを、この弾性板２の内周端部２ａを補強する補
強部材３を介してボルト４により締結固定してあ
る。一方、弾性板２の外周端部２ｂには、略円板
形を呈するフライホイール５を補強部材６を介し
てボルト７により締結固定してある。フライホイ
ール５はクラツチ２０の摩擦材１４が接触する部
位の背面に窪み１０が形成され、この部位の冷却
効率の向上が図られている。

８は弾性板２に形成した空気流入窓であり、こ
の空気流入窓８の開口縁には冷却用フイン９を一
体形成してある。これら空気流入窓８及び冷却用
フイン９は、弾性板２のフライホイール５の窪み
１０に対向する部位をクランクシヤフト１側に切
り起こすことにより形成するもので、円周上に複
数形成してある。１１は弾性板２の外周端に固定
したリングギヤであり、このリングギヤ１１は図
外のスタータモータのピニオンギヤに噛合され、
内燃機関の始動時にスタータモータの回転をクラ
ンクシヤフト１に伝達するためのものである。
尚、フライホイール５は、その内周端部２ａの取
付孔１２を補強部材３の円筒部３ａに軸方向移動
可能に嵌合すると共に、内周端部５ａを補強部材
３のフランジ部３ｂと弾性板２との間に所定の〓
間が生じるように係合してある。また、１３はフ
ライホイール５の窪み１０から放射方向に複数個
形成された溝であり、この溝１３は弾性板２との
間で窪み１０とフライホイール５の外周部を連通
する空気流出通路１６を形成している。

以上の実施例構造によれば、クランクシヤフト
１が回転すると、このクランクシヤフト１と共に
弾性板２及びフライホイール５が回転する。この
際、弾性板２の周囲を相対流動する空気を冷却用
フイン９で捕らえ、冷却用フイン９によつてフラ
イホイール５に指向する空気流を生じさせ、この
空気流を空気流入窓８から窪み１０内に導入して
空気流出通路１６から排出する。そのため、クラ
ツチ２０の使用頻度が増加することにより、フラ
イホイール５と摩擦材１４との摺動による摩擦熱
が発生し、フライホイール５が加熱されたとして
も、フライホイール５の背面側を径方向内方から
外方に向かつて吹き抜ける空気流とフライホイー
ル５との間で熱交換が行われ、フライホイール５
が冷却される。ここで、特にフライホイール５の
摩擦材１４が接触する部位の背面に窪み１０を設
け、この部位の表面積の拡大を図つているため、
フライホイール５は上記空気流によつて効率良く
冷却される。また、空気流入窓８に導入された空
気は、フライホイール５の回転に伴う冷却フイン
９による強制風と遠心力とによつて空気流出通路
１６を流過するのであるが、フライホイール５に
窪み１０が設けられているため、空気流出通路１
６の入口側には、遠心力を受けた窪み１０内の大
容量の空気の圧力が作用することとなり、窪み１
０がないものに比較して空気流出通路１６を大量
の空気が流れることとなる。このため、フライホ
イール５はこのことからも効率良く冷却される。
したがつて、フライホイール５の加熱に起因する
クラツチ２０の摩擦材１４の異常摩耗やフライホ
イール５の破損等は確実に防止される。加えて、
弾性板２に空気流入窓８を複数形成することによ
り、フライホイール５を固定する外周端部２ｂ及
びクランクシヤフト１に固定する内周端部２ａの
剛性を損うことなく、弾性板２の軸方向の曲げ剛
性を小さくすることができる。

第３図は本考案の他の実施例を示すもので、空
気流入窓８の隅部分１５を円弧形状に形成して、
隅部分１５に応力集中が生じるのを避けるように
したものである。

考案の効果 本考案は以上述べたように、フライホイールの
クラツチ摩擦材接触部の背面に窪みを設け、空気
流出通路を介してこの窪みとフライホイールの外
周部とを連通させる一方、弾性板の前記窪みに対
向する位置に、クランクシャフトの回転時にフラ
イホイールへ向かう空気流を生じさせる冷却用の
フインと空気流入窓とを設けたため、空気流入窓
から導入され空気流出通路へと抜ける空気流によ
り、フライホイール、特に窪みによつて表面積を
拡大されたクラツチ摩擦材接触部の背面部分を効
率良く冷却することができ、フライホイールの加
熱に起因するクラツチ摩擦材の異常摩耗やフライ
ホイールの破損を防止できるという実用上多大な
効果を奏する。

また、本考案は、フライホイールに空気流入窓
に対向する窪みを設けたため、遠心力を受けた窪
み内の大容量の空気の圧力が空気流出通路の入口
側に作用して、空気流出通路を通過する空気の流
量が多くなる。このため、フライホイールと熱交
換を行う空気の流量が多くなり、このことからも
フライホイールの冷却効率は向上する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例を示すフライホイール
取付部の断面図、第２図は同正面図、第３図は本
考案の他の実施例を示すフライホイール取付部の
正面図である。 １……クランクシヤフト、２……弾性板、２ａ
……内周端部、２ｂ……外周端部、５……フライ
ホイール、８……空気流入窓、９……冷却用フイ
ン、１０……窪み、１６……空気流出通路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランクシヤフトに回転方向の剛性が大きくか
   つ曲げ方向の剛性が小さい弾性板の内周端部を固
   定し、この弾性板の外周端部にフライホイールを
   固定した内燃機関のフライホイール取付部構造に
   おいて、フライホイールのクラツチ摩擦材接触部
   の背面に窪みを設け、空気流出通路を介してこの
   窪みをフライホイールの外周部と連通させる一
   方、弾性板の前記窪みに対向する位置に、クラン
   クシヤフトの回転時にフライホイールへ向かう空
   気流を生じさせる冷却用のフインと空気流入窓と
   を設けたことを特徴とする内燃機関のフライホイ
   ール取付部構造。