JPH05345796A - 新規化合物ウスチロキシンaもしくはウスチロキシンbまたはそれらの誘導体 - Google Patents

新規化合物ウスチロキシンaもしくはウスチロキシンbまたはそれらの誘導体

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JPH05345796A
JPH05345796A JP5000988A JP98893A JPH05345796A JP H05345796 A JPH05345796 A JP H05345796A JP 5000988 A JP5000988 A JP 5000988A JP 98893 A JP98893 A JP 98893A JP H05345796 A JPH05345796 A JP H05345796A
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ustilogicin
acid
hydrogen atom
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成夫 岩崎
Kuniko Koiso
邦子 小磯
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Abstract

(57)【要約】 【構成】式 【化9】 (式中、R1 は水素原子または炭素数1乃至5個を有す
るアルキル基、R2 は水素原子または炭素数2乃至6個
を有する脂肪族アシル基、R3 はメチル基またはプロピ
ル基を示す。)で示される新規化合物ウスチロキシンA
もしくはウスチロキシンBまたはそれらの誘導体あるい
はそれらの塩。 【効果】抗腫瘍作用を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗腫瘍作用を有する新
規化合物ウスチロキシンAもしくはウスチロキシンBま
たはそれらの誘導体あるいはそれらの塩(以下、「ウス
チロキシン類」という。)ならびにそれらの製法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】稲コウジ病菌(ウスチラギノイデア・ヴ
ィレンス・コーク:Ustilaginoidea virens Cooke )は
不完全菌類に属するが、菌核上に形成される完全世代も
認められており、Claviceps virens Sakurai と称され
る(原田幸雄、日植病報、第 3巻、387 頁(1984
年))。稲コウジ病菌の代謝産物として Ustilaginoidi
n A、B 、C (藪田貞治郎、住木諭介、日本農芸化学会
誌、第 9 巻、478 頁(1933年))および Ustilaginoi
din D 、E 、F 、G 、H 、I 、J (K.Koyama and S.N
atori 、Chem.Pharm.Bull.、第36 巻、146 頁、(1988
年) )が知られている。しかし、これらの化合物と本発
明のウスチロキシン類とは理化学的性質および構造が明
らかに異なる。
【0003】また、環内に 1 個のエーテル結合と 2
個のペプチド結合を有する 13 員環化合物としては、例
えばカビの一種 Phomopsis leptostromiformis から生
産されるフォモプシン A (Phomopsin A) (CLAUDE C.
J. CULVENOR ら、 Tetrahedron、第 45 巻、8 号、235
1頁 (1989 年) )が知られている。しかし、その側鎖
の構造はウスチロキシン類とは全く異なる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、稲コウ
ジ病菌により、自然的に稲穂に発生したまたは人為的に
稲穂に発生せしめた稲コウジから単離された新規化合物
ウスチロキシンA及びウスチロキシンBが強い抗腫瘍作
用を有することを見出すとともに、それらの化学修飾に
よる誘導体も強い抗腫瘍作用を有することを見出して本
発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、一般式
【0006】
【化3】
【0007】(式中、R1 は水素原子または炭素数1乃
至5個を有するアルキル基、R2 は水素原子または炭素
数2乃至6個を有する脂肪族アシル基、R3 はメチル基
またはプロピル基を示す。)で示される化合物またはそ
の塩に関し、さらに好適には、上記の一般式(I)にお
いて、一般式
【0008】
【化4】
【0009】(式中、R1 は水素原子または炭素数1乃
至5個を有するアルキル基、R2 は水素原子または炭素
数2乃至6個を有する脂肪族アシル基、R3 はメチル
基またはプロピル基を示す。)で示される化合物または
その塩に関する。
【0010】ここに、R1 が炭素数1乃至5個を有する
アルキル基である場合、例えばメチル、エチル、プロピ
ル、ブチル、t−ブチル、ペンチルなどの直鎖状もしく
は分枝鎖状のアルキル基があげられる。好適には炭素数
1乃至3個を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル
基であり、最適にはメチル基である。
【0011】R2 が炭素数2乃至6個を有する脂肪族ア
シル基である場合、例えばアセチル、プロピオニル、ブ
チリル、バレリル、ヘキサノイルなどの直鎖状もしくは
分枝鎖状の脂肪族アシル基があげられる。好適には炭素
数2乃至4個を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の脂肪族
アシル基であり、最適にはアセチル基である。
【0012】本発明の前記一般式(I)で示される化合
物は、常法にしたがって塩とすることができる。
【0013】そのような塩としてはR1 が水素原子の場
合、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアル
カリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム、バリウムな
どのアルカリ土類金属の塩;メチルアミン、エチルアミ
ン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルア
ミンなどの脂肪族第1乃至第3アミンの塩;リジン、ア
ルギニンなどのアミノ酸の塩;アンモニウム塩;等の塩
をあげることができる。好適にはナトリウム、カリウム
などのアルカリ金属の塩である。
【0014】また、R2 が水素原子の場合、例えば弗化
水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などのハロゲ
ン化水素酸の塩;硝酸塩;過塩素酸塩;硫酸塩;燐酸
塩;等の無機酸塩、またはメタンスルホン酸、トリフル
オロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの低級ア
ルカンスルホン酸の塩;ベンゼンスルホン酸、p-トルエ
ンスルホン酸などのアリ−ルスルホン酸の塩;グルタミ
ン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸の塩;フマ−ル
酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、蓚酸、マレイン酸な
どのカルボン酸の塩;等の有機酸塩を挙げることができ
る。好適には塩酸塩である。
【0015】これらの塩において、最適なものは薬理上
許容しうる塩である。
【0016】なお、前記一般式(I)を有する化合物
は、種々の異性体を有する。前記一般式(I)を有する
化合物においてはこれらの異性体がすべて単一の式で示
されている。従って、本発明においてはこれらの異性体
およびこれらの異性体の混合物をもすべて含むものであ
る。
【0017】更に、本発明の前記一般式(I)を有する
化合物においては、生体内において前記一般式(I)を
有する化合物に誘導される、いわゆる「プロドラッグ化
合物」もすべて含まれるものである。
【0018】前記一般式(I)を有する化合物におい
て、好適には、R1 が水素原子または炭素数1乃至3個
を有するアルキル基を示し、R2 が水素原子または炭素
数2乃至4個を有する脂肪族アシル基を示し、R3 がメ
チル基またはプロピル基を示す、化合物またはその塩で
ある。
【0019】最適には、R1 が水素原子またはメチル基
を示し、R2 が水素原子またはアセチル基を示す、R3
がメチル基またはプロピル基を示す、化合物またはその
塩である。
【0020】本発明の前記一般式(I)を有する化合物
の具体例としては、例えば下記の表に記載する化合物を
あげることができる。
【0021】
【表1】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 化合物番号 R123 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1 H H Me 2 H Ac Me 3 H Prn Me 4 H Byr Me 5 H CO(CH23 CH3 Me 6 Me H Me 7 Me Ac Me 8 Me Prn Me 9 Me Byr Me 10 Et H Me 11 Et Ac Me 12 Pr H Me 13 Pr Ac Me 14 Bu H Me 15 Bu Ac Me 16 H H Pr −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。
【0022】但し、表中 H=水素原子、 Me=メチル、 E
t=エチル、Pr=プロピル、 Bu=ブチル、
Ac=アシル、Prn=プロピオニル、 B
yr=ブチリル 基を示す。
【0023】上記化合物表中、好適には例示化合物番号
1、2、3、6、7、10、11、12、14、16
またはその塩である。
【0024】最適には例示化合物番号 1、2、6、
7、10、16またはその塩である。本発明は、また、
ウスチラギノイデア属に属するウスチロキシンAまたは
ウスチロキシンB生産能を有する稲コウジ病菌を用いて
稲に稲コウジを発生せしめ、該稲コウジよりウスチロキ
シンAまたはウスチロキシンBを単離することを特徴と
する、ウスチロキシンAまたはウスチロキシンBの製造
法に関し、好適には、ウスチラギノイデア属に属するウ
スチロキシンAまたはウスチロキシンB生産能を有する
稲コウジ病菌が、 Ustilaginoidea virens (Cooke) Tak
ahashi SANK 15391 株(微工研条寄第3691号:BP-3691
)である上記製造法に関する。
【0025】1)本発明の前記一般式(I)を有する化
合物のうち、R1 が水素原子を示し、R2 が水素原子を
示す、R3 がメチル基を示す化合物(即ち、ウスチロキ
シンA)、 または、R1 が水素原子を示し、R2 が水
素原子を示す、R3 がプロピル基を示す、化合物(即
ち、ウスチロキシンB)は次のようにして得られる。
【0026】即ち、稲田において稲コウジ病菌 (Ustila
ginoidea virens Cooke)の感染により稲穂に発生した稲
コウジ(コウジ粒)を採取する。コウジ粒は、立毛中の
罹病穂から手で取り、室内で約1週間自然乾燥し、粉砕
機で粉砕した後に使用することができる。また、粉砕後
に、 5℃前後の冷蔵庫で保存したものを使用することも
できる。
【0027】このものより、水、メタノール、エタノー
ルなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステ
ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類を
単独または組み合わせて用いて抽出することにより、ウ
スチロキシンAまたはウスチロキシンBを含有する抽出
物を得ることができる。このようにして得られた抽出物
から、ウスチロキシンAまたはウスチロキシンBを単
離、精製するには、その物理化学的性状を利用すること
によって達成される。例えば、吸着剤を用いて採取する
ことができる。使用される吸着剤としては例えば、活性
炭、または吸着樹脂であるアンバーライト XAD−2 、 X
AD−4 、 XAD−7 等(ローム・アンド・ハース社製)、
ダイアイオン HP 10、HP 20 、HP 50 、CHP 20P (三菱
化成(株)製)、ポリアミドゲル(ウエルム社製)等が
使用される。ウスチロキシンAまたはウスチロキシンB
を含む抽出液を上記の吸着剤の層を通過させてウスチロ
キシンAまたはウスチロキシンBを含む液に含まれる不
純物を吸着させて取り除くか、またはウスチロキシンA
またはウスチロキシンBを吸着させた後、適当な溶剤で
溶出することによって得られる。このようにして得られ
たウスチロキシンAまたはウスチロキシンBを更に精製
するためにはアビセル(旭化成工業(株))などのセル
ロース、セファデックス LH −20(ファルマシア社製)
などを用いた分配カラムクロマトグラフィー、ウスチロ
キシンAまたはウスチロキシンBと混在する不純物との
溶剤に対する分配率の差を利用した抽出法、または向流
分配法などが有効な方法である。
【0028】以上の分離、精製の手段を単独または適宜
組み合わせ、反復用いることによりウスチロキシンAま
たはウスチロキシンBを分離、精製することができる。
【0029】あるいは、本発明者らにより単離された稲
コウジ病菌株 Ustilaginoidea virens (Cooke) Takaha
shi SANK 15391 の胞子懸濁液を圃場に成育している稲
穂に噴霧して一定期間後に発生させた稲コウジを用いて
上記と同様にしてウスチロキシンAまたはウスチロキシ
ンBを得ることができる。
【0030】この場合、出穂2〜6週間前の稲にSANK 1
5391の分生胞子または厚膜胞子を上から噴霧接種し、稲
コウジを発生させることができる。
【0031】分生胞子の懸濁液は、ショ糖加用ジャガイ
モ煎汁培地を入れた三角フラスコに菌糸片を移植し、26
℃の暗黒条件下で12〜20日間液体培養して得ることがで
きる。この懸濁液にツィーン20等の界面活性剤を 0.05%
相当量添加し、圃場のイネ体の上から約 1 L/m2 噴霧
接種する方法が好ましい。
【0032】また、噴霧接種の時刻は、19時頃が好まし
い。
【0033】厚膜胞子は、以下の方法により得ることが
できる。
【0034】ショ糖加用ジャガイモ煎汁培地を用いて26
℃で 7日間液体培養して得た菌糸懸濁液を、ショ糖加用
ジャガイモ煎汁寒天培地上に薄く広がるように流し込
み、約25℃の暗黒条件で培養する。
【0035】最初の1週間位は分生胞子を形成するが、
それ以降は厚膜胞子が形成される。このような条件下で
1〜3か月間培養後、ペトリ皿のふたをとった状態で22
℃内外の室内に 7日間放置し、乾燥させたものを培地ご
とミキサーで粉砕し、所望の厚膜胞子を得ることができ
る。
【0036】この厚膜胞子を直接圃場のイネ体の上から
接種することにより稲コウジを発生させることができ
る。接種には、小型散粉器を用いるのが好ましく、ま
た、摂取量としては、m2当たりペトリ皿30〜40枚分の厚
膜胞子が好ましい。
【0037】接種時刻は、日中行うのが好ましい。
【0038】供試品種としては、特に制限はないが、と
りで1号、農林21号などの晩成品種が好ましい。
【0039】稲コウジを作る稲コウジ菌株 Ustilaginoi
dea virens (Cooke) Takahashi SANK 15391 は次のよう
にして単離、保存し必要に応じて使用することができ
る。即ち、羅病し暗緑色に病徴を示した稲穂から胞子
(厚膜胞子)を採取し、これをポテトグルコース培地な
どの培養液に入れ23 〜28 ℃にて 1〜2 日間培養す
る。この培養液の一部を取り、顕微鏡下で観察し、発芽
しはじめている胞子をマニプレータにて単胞子分離を行
なう。これを適当な寒天培地、例えばポテトデキストロ
ース寒天培地上にとり 23 〜28 ℃で培養し充分成育
したものを保存しておく。ポテトデキストロース寒天培
地上での成育は緩慢で、はじめは白色綿毛状の菌糸が成
育するがやがて暗緑褐色となる。また、培地中にも暗緑
色の可溶性色素を産出する。菌糸は有色で隔壁を有し、
その径は 2.0 〜5.0 μm で壁が非常に肥厚し暗緑褐色
を示し、菌糸塊を形成するものが多く見られる。分生子
はシンポジオ型に生じ、1 細胞、無色で 5.0 〜 8.0×
3.0〜 4.5μm である。稲コウジに見られる厚膜胞子は
観察されない。
【0040】なお、これらの諸性状は橋岡らの報告(埼
玉県立農業試験場研究報告第 2 号1 〜20 頁、1951
年出版)に詳細に記述されている。
【0041】本発明者らにより単離された稲コウジ病菌
Ustilaginoidea virens (Cooke)Takahashi SANK1539
1 は、通産省工業技術院微生物工業技術研究所に国際寄
託されている(寄託番号、微工研条寄第 3691 号(FER
M BP-3691):寄託日 1991年 12 月 24 日)。
【0042】2)本発明の前記一般式(I)を有する化
合物のうち、R1 がアルキル基を示す、化合物は次のよ
うにして得られる。
【0043】即ち、ウスチロキシンAまたはウスチロキ
シンBとメタノール、エタノールのようなアルコール類
を用いて、酸でエステル化反応を行なうことによって達
成される。反応に使用される酸としては、特に限定はな
く、例えば硫酸、塩酸、塩素酸、過塩素酸のような鉱
酸;ギ酸、トリフルオロ酢酸のような有機酸;が好まし
い。反応温度、反応時間は使用する試薬、溶剤等で異な
るが、通常、0 〜100 ℃、1 〜24 時間、でエステル交
換反応により他のアルキル基に変換できる。
【0044】反応終了後、目的化合物は反応混合物から
溶剤を留去し、残渣を乾燥することにより得られる。ウ
スチロキシンAまたはウスチロキシンBを原料化合物と
して酸を過剰に用いた場合は目的化合物は酸の塩として
得られる。このようにして得られた目的化合物は更に再
結晶または通常のカラムクロマトグラフィーに付して精
製することができる。
【0045】あるいはジアゾメタンのようなジアゾアル
カン類と反応させることによっても達成される。反応は
溶剤の存在下で行なわれる。使用される溶剤としては反
応に影響を与えないものであれば特に限定はなく、ジエ
チルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメ
トキシエタンのようなエーテル類;酢酸エチルのような
エステル類;ジメチルホルムアミドのようなアミド類;
ジメチルスルフォキシドのようなスルフォキシド類;が
好ましい。反応温度、反応時間は使用する試薬、溶剤等
で異なるが、通常、室温〜50℃、1 〜24時間が好適であ
る。
【0046】あるいはR1 が水素原子を示す化合物をア
ルキル化することによって得ることもできる。反応は炭
酸カリウム、炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属炭酸
塩の存在下、ヨウ化メチル、ヨウ化エチルのようなハロ
ゲン化アルキル化合物と反応させる。反応は溶剤の存在
下で行なわれる。使用される溶剤としては反応に影響を
与えないものであれば特に限定はなく、テトラヒドロフ
ラン、ジオキサン、ジメトキシエタンのようなエーテル
類;ジメチルホルムアミドのようなアミド類;ジメチル
スルフォキシドのようなスルフォキシド類;が好まし
い。反応温度、反応時間は使用する試薬、溶剤等で異な
るが、通常、0 〜100 ℃、1 〜72 時間が好適である。
【0047】反応終了後、目的化合物は反応混合物から
溶剤を留去し、残渣に水および酢酸エチルのような有機
溶剤を加えて分液する。有機層を濃縮し、残渣を再結晶
または通常のカラムクロマトグラフィーに付して精製す
ることにより得られる。
【0048】3)本発明の前記一般式(I)を有する化
合物のうち、R2 が脂肪族アシル基を示す、化合物は次
のようにして得られる。
【0049】即ち、R2 が水素原子を示す化合物の一級
アミノ基を塩基の存在下で選択的にアシル化することに
よって得られる。反応に使用されるアシル化剤として
は、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸のような酸無水
物;アセチルクロリド、アセチルブロミドなどの酸ハラ
イド;が好適である。反応は溶剤の存在下で好適に行な
われる。使用される溶剤としては反応に影響を与えなけ
れば特に限定はなく、例えば水、メタノール、エタノー
ルのようなアルコール類またはこれらの混合溶剤が好ま
しい。反応は塩基の存在下で行なわれる。使用される塩
基としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの
ようなアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カ
リウムのようなアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウ
ム、炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属重炭酸塩;
ピリジンのような芳香族アミン類;プロリンのような複
素環アミン類;トリエチルアミン、ジエチルアミンのよ
うな脂肪族アミン類;が好ましい。反応温度はアシル化
剤の種類などによって異なるが、通常は 0〜50℃が好ま
しい。反応時間は反応条件で異なるが通常 1〜5 時間で
ある。
【0050】このようにして得られた目的化合物は必要
に応じて、シリカゲル、フロリジルなどの担体を用いた
吸着カラムクロマトグラフィー;オクタデシル基、オク
チル基などを有するシリカゲルを用いた逆相分配クロマ
トグラフィー;アビセル(旭化成工業(株)社製)など
のセルロースまたはセファデックス LH −20(ファルマ
シア社製)などを用いた分配カラムクロマトグラフィ
ー;あるいは混在する不純物との溶剤に対する分配率の
差を利用した抽出法などで精製することができる。
【0051】4) 本発明の前記一般式(I)を有する
化合物は上記1)〜3)の反応を適宜組み合わせること
によって得られる。
【0052】また、R1 が水素原子である化合物は、R
1 がアルキルである化合物を水酸化ナトリウム、水酸化
カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;の存在下
で加水分解することによっても得られる。
【0053】このようにして得られた前記一般式(I)
を有する化合物は、更にシリカゲル、フロリジルのよう
な担体を用いた吸着カラムクロマトグラフィー、セファ
デックス LH −20(ファルマシア社製)などを用いた分
配カラムクロマトグラフィー、および順相、逆相カラム
を用いた高速液体クロマトグラフィー等で精製すること
が出来る。
【0054】
【作用】本発明の前記一般式(I)を有する化合物は、
文献未載の新規化合物であり、種々のヒト癌細胞に対し
て強い増殖抑制作用を示し、抗腫瘍剤として有用であ
る。
【0055】本発明の前記一般式(I)を有する化合物
を医薬として用いる場合、常法に従ってそれ自体または
適宜の薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤と混合
し、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、注射剤などの形態
で経口的または非経口的に安全に投与することが出来
る。投与量は対象疾患、投与経路および投与回数などに
より異なる。例えば成人に対して有効 1 日投与量は注
射の場合、患者の体重 1Kg 当たり 0.01 mgから 80 mg
、経口投与の場合 0.5 mg から 120 mg を、症状に応
じて 1 回または数回に分けて投与するのが好ましい。
【0056】
【実施例】次に実施例、試験例を挙げて本発明を更に具
体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0057】実施例1.ウスチロキシンA 稲コウジ病菌( Ustilaginoidea virens Cooke)の感染
により稲穂に自然発生した稲コウジを採集し、乾燥後、
100 g を 10 倍量の水と共にミキサーで粉砕し、室温で
1 時間振とう抽出した。抽出液 1000 ml をろ過後、
十分の一に濃縮し、50 ml のODS カラム(ODS-SS-1020
T 、センシュウ科学(株)製)に注入した。紫外吸収25
4 nm でモニターしながら、水 2.5 リットル、メタノ
ール:水=2 : 8 の混合液 2.5 リットル、100 %メタ
ノール 1.5 リットルで展開溶出した。メタノール:水
=2 : 8 の混合液で溶出した分画を集め、濃縮した。こ
の濃縮物を水に溶解後、再度 30 ml の ODS カラムに
注入した。メタノール:水=2 : 98 の混合液 0.5 リ
ットルで展開溶出し、分画 200 ml から 400 ml の間の
溶出分 200 ml を分取し、ウスチロキシンAを含む分画
を得た。これらの分画を濃縮すると約 20 mg の粗結晶
が得られた。この粗結晶を水で再結晶すると融点195 ℃
(分解)を有する目的化合物の純品 14 mg が結晶とし
てが得られた。
【0058】本実施例で得られたウスチロキシンAは、
以下の物性値を示した。 1)構造式
【0059】
【化5】
【0060】2)物質の性状:水溶性、白色針状結晶 3)分子式: C28 H43 O12 N5 S 4)分子量: 673 5)質量分析: FAB-MS ; m/z 674(M+H) : HR FAB-MS ; m/z 674.2730(M+H) (理論値 674.2718 ,C
28H44O12N5S ) 6)元素分析: C28 H43 O12 N5 S 2.5 H2 Oとして
(%) 実測値: C、 46.69 ; H 、 6.92 ; N 、 9.64 ;
S、4.28 理論値: C、 46.80 ; H 、 6.82 ; N 、 9.75 ;
S、4.45 7)紫外線吸収スペクトル:λ max nm (ε) 水中で測定した紫外線吸収スペクトルは、次に示す通り
である。 207(21300)、 249(6000)、 287(3200)。
【0061】8)赤外線吸収スペクトル:ν max cm-1 臭化カリウム(KBr) 錠剤法で測定した赤外線吸収スペク
トルは、次に示す通りである。 3700〜2400(broad) 、1650、1640、1540、1500、1465、
1400、1295、1225、1155、1130、1090、1030、900 。
【0062】9)1H−核磁気共鳴スペクトル:(δ;pp
m ) 重水中、外部基準にテトラメチルシランを使用して 50
℃で測定した核磁気共鳴スペクトル(500 MHz)は、次
に示す通りである。 0.80(3H,d,J=7.0 Hz) 、 0.88(3H,d,J=7.0 Hz)、 1.09
(3H,t,J=7.2 Hz)、1.73(1H,dd,J=7.2および 14.2 Hz)
、 1.77(3H,s) 、1.92(1H,dd,J=7.0および 10.0 Hz)
、2.12(1H,ddd,J=3.0,8.0 および 15.0 Hz) 、2.22(1
H,ddd,J=8.0,10.0および 15.0 Hz) 、2.24(1H,dd,J=7.2
および 14.2 Hz) 、 2.77(3H,s) 、3.04(1H,dd,J=3.0お
よび 13.6 Hz) 、3.33(1H,dd,J=10.0 および 13.6 Hz)
、3.79(2H,s)、 4.01(1H,dd,J=4.0 および 8.0 Hz)、
4.13(1H,d,J=10.0 Hz)、 4.28(1H,d,J=10.0 Hz) 、4.39
(1H,tt,J=3.0および 10.0 Hz) 、 4.83(1H,s)、4.96(1
H,d,J=10.0 Hz)、 7.11(1H,s) 、 7.61(1H,s) 。
【0063】10)13C −核磁気共鳴スペクトル:
(δ;ppm ) 重水中、外部基準にテトラメチルシランを使用して測定
した核磁気共鳴スペクトル(100 MHz)は、次に示す通
りである。
【0064】7.8(q)、 17.9(q) 、 18.3(q) 、 21.1
(q) 、 28.7(d) 、32.1(q×2)、 36.7(t) 、 43.8
(t) 、 52.7(d) 、 59.6(d) 、60.1(d) 、 63.8(d)
、 64.8(t) 、 66.7(d) 、 73.9(d) 、87.2(s) 、
114.0(d)、 124.2(d)、 128.0(s)、 136.4(s)、14
6.0(s)、 152.2(s)、 166.4(s)、 170.3(s)、 171.
0(s)、174.4(s)、 176.3(s)。
【0065】11)溶解性:水に易溶、含水メタノール
に可溶。 12)呈色反応:ニンヒドリンに陽性。 13)薄層クロマトグラフィー: Rf 値; 0.16 吸着剤; シリカゲルプレート Art. 5715(メルク社
製) 展開溶剤; n−ブタノール:酢酸:水= 3: 1:1 検出;紫外線 254 nm およびニンヒドリン発色。
【0066】14)アミノ酸分析:6 N 塩酸で 110
℃、20 時間加水分解後、反応混合物より溶剤を留去し
た。得られた残渣をアミノ酸分析機で分析し、バリンと
グリシンを検出した。バリンについて高速液体クロマト
グラフィーで分析した結果、 L−バリンに一致した。 カラム;Enantio Ll(4.6 mm ID ×250 mm 、東ソー
(株)社製) 溶剤;0.8 mM CuSO4 温度;27 ℃ 流速; 1 ml /分 検出;赤外線 250 nm 。
【0067】実施例2.ウスチロキシンA 人工接種により稲にコウジ粒を発生せしめ、このものよ
りウスチロキシンAを単離、精製した。
【0068】稲は以下の方法で育成した。
【0069】4月14日に播種した苗を 5月20日に本田に
移植した。栽培密度は 3.3m2当たり75株とし、 1株 1本
上とした。肥料は基肥として窒素(N) 、リン酸(P2O5 )
およびカリ(K2O) を成分量として10a 当たり各 8Kgを使
用し、 7月14日に追肥として窒素(N) を10a 当たり 2Kg
施用した。その他方法は、慣行法に従った。
【0070】稲コウジ病菌 SANK 15391 株を培養し、以
下の方法により、放置後形成した厚膜胞子を得た。
【0071】ショ糖加用ジャガイモ煎汁培地を用いて26
℃で 7日間液体培養して得た菌糸懸濁液を、ショ糖加用
ジャガイモ煎汁寒天培地上に薄く広がるように流し込
み、約25℃の暗黒条件で培養した。
【0072】最初の1週間位は分生胞子を形成したが、
それ以降は厚膜胞子が形成された。このような条件下で
1〜3か月間培養後、ペトリ皿のふたをとった状態で22
℃内外の室内に 7日間放置し、乾燥させたものを培地ご
とミキサーで粉砕し、厚膜胞子を得た。
【0073】この厚膜胞子を直接圃場のイネ体の上から
接種することにより稲コウジを発生させた。すなわち、
圃場に成育している稲穂に噴霧し、一定期間(約 2 ケ
月)放置しておくと稲コウジが発生した。これらの稲コ
ウジを採集し、実施例1.記載と同様の方法によりウス
チロキシンAを単離、精製した。10 g の稲コウジから
約 1 mg の目的化合物を単離した。本実施例で得られた
ウスチロキシンAの物性値は実施例1.で得られたウス
チロキシンAの物性値と同じであった。
【0074】実施例3.ウスチロキシンAジメチルエス
テル・ジ塩酸塩 実施例1で得られたウスチロキシンA 5 mg を 12 %
塩酸を含むメタノール 0.5 ml に溶解し、4 ℃ で
一夜放置した。この溶液を減圧下で濃縮し、溶剤を留去
すると目的化合物 5.9 mg が得られた。
【0075】ウスチロキシンAジメチルエステル・ジ塩
酸塩の物性値は次の通りである。 1)構造式
【0076】
【化6】
【0077】2)1H−核磁気共鳴スペクトル:(δ;pp
m ) 重ジメチルスルホキシド中、外部基準にテトラメチルシ
ランを使用して50 ℃で測定した核磁気共鳴スペクトル
(500 MHz)は、次に示す通りである。 0.77(3H,d)、 0.83(3H,d) 、 1.02(3H,dd)、 1.43(3H,
s)、1.87(1H,m)、1.98(2H,m)、 2.08(1H,dd)、 2.43(3
H,s) 、 2.79(1H,dd) 、3.04(1H,dd) 、 3.61(3H,s)
、3.74(3H,s)、3.82(3H,m)、 4.07(1H,m) 、4.22(1H,d
d) 、 4.47(1H,dd)、4.83(1H,d)、4.93(1H,dd) 、6.51
(1H,s)、 7.07(1H,s) 3)薄層クロマトグラフィー: Rf 値; 0.33 吸着剤; シリカゲルプレート Art. 5715(メルク社
製) 展開溶剤; n−ブタノール:メタノール:水= 3: 1:
1 。
【0078】実施例4. 4´−N −アセチルウスチロキ
シンA・ジナトリウム塩 実施例1で得られたウスチロキシンA 5.4 mg を 2 %
炭酸水素ナトリウム水溶液 0.5 ml に溶解し、無水
酢酸を過剰量加え、0 ℃ で 2 時間撹拌した。反応混
合物を 炭酸水素ナトリウム水溶液で中和後、ダイヤイ
オン HP 20 カラム(三菱化成(株)社製)2 ml に吸
着させた。マタノールを展開溶剤として用いて溶出し、
目的化合物を含む分画を集めた。この分画を減圧下で濃
縮し、溶剤を留去し乾燥すると、目的化合物 4.6 mgが
得られた。
【0079】4´−N −アセチルウスチロキシンA・ジ
ナトリウム塩の物性値は次の通りである。 1)構造式
【0080】
【化7】
【0081】2)呈色反応: ニンヒドリンに陰性。 3)薄層クロマトグラフィー: Rf 値; 0.39 吸着剤; シリカゲルプレート Art. 5715(メルク社
製) 展開溶剤; n−ブタノール:メタノール:水= 3: 1:
1 。
【0082】実施例5.ウスチロキシンB 人工接種により稲にコウジ粒を発生せしめ、このものよ
りウスチロキシンBを単離、精製した。なお、人工接種
には、稲コウジ病菌 SANK 15391 株を使用し、接種方法
は、実施例2に記載の方法に従った。
【0083】稲穂に発生した稲コウジを採集し、乾燥
後、100 g を 10 倍量の水と共にミキサーで粉砕し、室
温で 1 時間振とう抽出した。抽出液 1000 ml をろ過
後、十分の一に濃縮し、50 ml のODS カラム(ODS-SS-1
020 T 、センシュウ科学(株)製)に注入した。紫外吸
収254 nm でモニターしながら、水 2.5 リットル、メ
タノール:水=2 : 8 の混合液 2.5 リットル、100 %
メタノール 1.5 リットルで展開溶出した。メタノー
ル:水=2 : 8 の混合液で溶出した分画を集め、濃縮し
た。この濃縮物を水に溶解後、再度 30 ml の ODS カ
ラムに注入した。メタノール:水=2 : 98 の混合液
0.5 リットルで展開溶出し、ウスチロキシンAより先に
流出するウスチロキシンBを含む分画を得た。この分画
を再度、 ODSカラムに注入し、メタノール:水=1 : 99
の混合液で展開溶出し、粗ウスチロキシンB粉末を得
た。この粗粉末を、ODS カラムに注入し、0.02% のトリ
フルオロ酢酸を含む、メタノール:水=25:75 の混合液
で溶出展開し、ウスチロキシンBの精製画分を得た。稲
こうじ 100 g 当たり約 3 mg のウスチロキシンBが得
られた。
【0084】本実施例で得られたウスチロキシンBは、
以下の物性値を示した。
【0085】1)構造式
【0086】
【化8】
【0087】2)物質の性状:水溶性、白色固体 3)分子式:C2639512S 4)分子量:645 5)質量分析: FAB−MS: m/z 646
(M+H) 6)旋光度: +14.1 °(c=0.55, H2O) 7)紫外吸収スペクトル: λmax nm( ε) 水中で測定した紫外線吸収スペクトルは、以下に示す通
りである。
【0088】213(13900), 252(5000), 290(2500) 8)赤外線吸収スペクトル:νmax cm-1 弗化カルシウム(CaF) 薄膜(フィルム)法で測定した赤
外線吸収スペクトルは、次に示す通りである。
【0089】3700〜2400(broad), 1670, 1600, 1550, 1
500, 1465, 1430, 1380, 1290,1200, 1140 9)1H- 核磁気共鳴スペクトル:(δ;ppm ) 重水中、外部基準に 2,2- ジメチル-2- シラペンタン-5
- スルホン酸ナトリウム(DSS)を使用して50℃で測
定した核磁気共鳴スペクトル(500 MHz) は、次に示す通
りである。
【0090】0.92(3H,dd, J=7.2, 7.2Hz), 1.14(3H, d,
J=7.0Hz), 1.63(1H, dq, J=14.0,7.2Hz), 1.68(3H,
s), 2.01(1H, ddd, J=3.0, 15.0, 8.0 Hz), 2.05(1H, d
q, J=14.0, 7.2 Hz), 2.12(1H, ddd, J=10.0, 15.0, 4.
0Hz), 2.60(3H, s), 2.96(1H, dd, J=13.4, 2.8Hz),
3.30(1H, dd, J=13.4, 10.0Hz), 3.70(1H, d, J=17.0H
z), 3.76(1H, d, J=17.0Hz), 3.90(1H, d, J=10.0Hz),
3.90(1H, dd, J=8.0, 4.0Hz), 4.29(1H, m, J=2.8, 10.
0, 3.0, 10.0Hz), 4.37(1H, q, J=7.0Hz),4.65(1H,s),
4.80(1H, d, J=10.0Hz), 7.28(1H, s), 7.47(1H, s) 10)13H-核磁気共鳴スペクトル(δ;ppm) 重水中、外部標準にDSSを使用して測定した核磁気共
鳴スペクトル(100 MHz )は、次に示す通りである。
【0091】8.36(q), 15.72(q), 22.24(q), 31.68(t),
33.00(q), 37.08(t), 44.24(t),50.00(d), 53.16(d),
60.26(d), 64.22(d), 65.11(t), 68.15(d), 74.70(d),8
4.48(s), 114.42(d), 124.62(d), 128.96(s), 137.14
(s), 146.34(s),153.24(s), 169.40(s), 170.59(s), 17
2.72(s), 174.82(s), 176.92(s) 11)溶解性:水に易溶、含水メタノールに可溶。
【0092】12)呈色反応:ニンヒドリンに陽性。
【0093】13)薄層クロマトグラフィー: Rf値; 0.14 吸着剤;シリカゲルプレート Art. 5715 展開溶剤;n-ブタノール:酢酸:水=3 : 1 : 1 検出;紫外線 254 nm 、 ニンヒドリン発色 14)アミノ酸分析:6 N 塩酸で 110℃、20時間加水分
解後、反応混合物より溶剤を留去した。得られた残渣を
アミノ酸分析機で分析し、アラニンとグリシンを検出し
た。アラニンについてはHPLCで分析した結果、L-アラニ
ンに一致した。
【0094】カラム;Enantio Ll(4.6 mm ID ×250 mm
、東ソー(株)社製) 溶剤;0.8 mM CuSO4 温度;27 ℃ 流速; 1 ml /分 検出;赤外線 250 nm 。
【0095】ウスチロキシンBの紫外線吸収スペクト
ル、旋光度はウスチロキシンAとよく一致し、分子量は
ウスチロキシンAより28(C2H4に相当)小さい 645であ
る。このことは構造中に含まれる発色団、および、立体
構造の絶対配置がウスチロキシンAと一致していること
を示す。
【0096】アミノ酸分析では、ウスチロキシンAで検
出されたL-バリンに代わって、L-アラニンが検出され
た。1H-NMRでは、ウスチロキシンAのスペクトルで示さ
れた、バリン残基に由来する、δ 0.80 、0.88 ppm の
2本のメチルシグナルおよび 0.92 ppm のメチルシグナ
ルが観察されず、代わって、δ 1.14 ppm にメチルシグ
ナルが現れている。同様に、13C-NMR においても、炭素
シグナルが2本少なく、バリン残基に代わってアラニン
残基の存在が示された。
【0097】以上のデータから、ウスチロキシンBの構
造は、ウスチロキシンAにおけるL-バリンがL-アラニン
に代わったものと決定した。
【0098】実施例6.抗腫瘍作用 本発明のウスチロキシンAおよびウスチロキシンBなら
びにその誘導体は抗腫瘍作用を有する。
【0099】以下に、ウスチロキシンA及びウスチロキ
シンBについて抗腫瘍作用を測定した結果を記載する。
【0100】アレイ(Michael C.Alley )らの方法(Ca
ncer Research 、48 巻、589 〜 601頁(1988 年) )に
準じて、ウスチロキシンA及びウスチロキシンBの抗腫
瘍作用を検討した。即ち、96 穴培養プレートに各種癌
細胞を 1×103 個/100 μl メディウム(RPMI-1640 +
10 % FCS)ずつ懸濁した。但し、RERF−LC−MA は 4
×102 個、WiDr、SW−480 、KU−2 は 5×102 個、ZR−
75−30 は 3×103 個、SBC-5 は2.5 x 102 個懸濁し
た。これらの懸濁液を 5 % CO2下、37℃ で 24 時間
培養後、希釈サンプルを含む 100 μl のメディウムを
加え、同じ条件下で更に 48時間培養した。培養後、20
0 μl のメディウムで 3 回洗浄し、薬剤を除去した。
次いで、5 % CO2下、37℃で 96 時間培養後、50μg
/50μl の MTT を加え、同条件下で更に 4 時間培養
した。培養液を除去し、150 μl の DMSO を加え撹拌
し、540 nm における吸光度から細胞増殖率を算定し
た。細胞増殖を50 % 阻害するのに必要な試験化合物
の濃度(IC50;μg /ml)を表 2. に示す。
【0101】
【表2】
【0102】表 2. から明かの如く、ウスチロキシンA
及びウスチロキシンBは各種のヒト腫瘍細胞に対して、
優れた増殖阻害効果を示した。
【0103】
【発明の効果】本発明のウスチロキシンAおよびウスチ
ロキシンBならびにそれらの誘導体は、腫瘍細胞に対し
て優れた増殖抑制効果を示し、抗腫瘍剤として有用であ
る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 【化1】 (式中、 R1 は水素原子または炭素数1乃至5個を有するアルキ
    ル基、 R2 は水素原子または炭素数2乃至6個を有する脂肪族
    アシル基、 R3 はメチル基またはプロピル基を示す。)で示される
    化合物またはその塩。
  2. 【請求項2】請求項1記載の一般式(I)において、 一般式 【化2】 (式中、 R1 は水素原子または炭素数1乃至5個を有するアルキ
    ル基、 R2 は水素原子または炭素数2乃至6個を有する脂肪族
    アシル基、 R3 はメチル基またはプロピル基を示す。)で示され
    る化合物またはその塩。
  3. 【請求項3】ウスチラギノイデア属に属するウスチロキ
    シンAまたはウスチロキシンB生産能を有する稲コウジ
    病菌を用いて稲に稲コウジを発生せしめ、該稲コウジよ
    りウスチロキシンAまたはウスチロキシンBを単離する
    ことを特徴とする、ウスチロキシンAまたはウスチロキ
    シンBの製造法。
  4. 【請求項4】ウスチラギノイデア属に属するウスチロキ
    シンAまたはウスチロキシンB生産能を有する稲コウジ
    病菌が、 Ustilaginoidea virens (Cooke) Takahashi S
    ANK15391 株(微工研条寄第3691号:BP-3691 )である
    請求項3記載の製造法。
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