JPH05345530A - 車両用左右駆動力調整装置 - Google Patents

車両用左右駆動力調整装置

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JPH05345530A
JPH05345530A JP4155422A JP15542292A JPH05345530A JP H05345530 A JPH05345530 A JP H05345530A JP 4155422 A JP4155422 A JP 4155422A JP 15542292 A JP15542292 A JP 15542292A JP H05345530 A JPH05345530 A JP H05345530A
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torque
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H48/00Differential gearings
    • F16H48/36Differential gearings characterised by intentionally generating speed difference between outputs

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  • Mechanical Engineering (AREA)
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  • Arrangement And Mounting Of Devices That Control Transmission Of Motive Force (AREA)
  • Motor Power Transmission Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、車両用左右駆動力調整装置に関
し、トルクロス等を抑制しながら走行状態に限定されな
いで左右輪間でのトルク配分制御を行なえるようにする
ことを目的とする。 【構成】 車両の左右の回転軸間に、左右輪15,16
の駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構9をそなえ、
駆動力伝達制御機構9を、左右の回転軸のうちの一方の
回転速度を一定の変速比で変速して出力しうる変速機構
30と、他方の回転軸側と上記変速機構の出力部側との
間で駆動力伝達を行なう伝達容量可変制御式トルク伝達
機構12とから構成し、左右輪の回転速度比が最も大き
くなっても、変速機構30の出力部側と他方の回転軸側
とで回転速度との大小関係が変わらないように、上記変
速比を設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、四輪駆動式又は二輪駆
動式の自動車における左右の駆動輪への駆動力配分、又
は、二輪駆動式の自動車における左右の否駆動輪(駆動
輪ではない車輪)間での動力の授受による駆動力配分に
用いて好適の、車両用左右駆動力調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、四輪駆動式自動車(以下、四輪駆
動車という)の開発が盛んに行なわれているが、前後輪
間のトルク配分(駆動力配分)を積極的に調整できるよ
うにした、フルタイム四輪駆動方式の自動車の開発も種
々行なわれている。一方、自動車において、左右輪に伝
達されるトルク配分機構を広義にとらえると従来のノー
マルディファレンシャル装置や電子制御式を含むLSD
(リミテッドスリップデフ)が考えられるが、これらは
トルク配分を積極的に調整するものでなく、左右輪のト
ルクを自由自在に配分できるものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前後輪間の
トルク配分調整装置と並んで、左右輪間のトルク配分を
調整できる装置の開発も期待されている。この場合、四
輪駆動車における左右の駆動輪間のみならず、二輪駆動
車における左右の駆動輪間のトルク配分調整も対照とな
る。
【0004】さらには、トルク配分を、エンジンの出力
トルクの配分のみならず左右の回転軸輪間での動力の授
受によって生じるトルクの伝達状態まで含めるように、
大きくとらえると、二輪駆動車における左右の否駆動輪
(駆動輪ではない車輪)間でトルク配分調整を行なうこ
とも考えられる。つまり、左右の否駆動輪はいずれもエ
ンジンから駆動力を受けないが、これらの否駆動輪のう
ちの一方の否駆動輪から他方の否駆動輪へ動力を伝達す
る状態を実現できれば、一方の否駆動輪側では制動力が
生じるが他方の否駆動輪側では駆動力が発生するように
なる。したがって、左右の否駆動輪間でもトルク配分
(負の駆動力、つまり、制動力も含む)の調整が可能と
なる。
【0005】さらに、かかる車両用左右駆動力調整装置
としては、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、トルク配分を行なえるものが望ましい。そこ
で、このような左右の各回転軸間で駆動力を授受するこ
とで左右輪の駆動力を調整しうる駆動力伝達制御装置と
して、上記の左右の各回転軸のうちの一方の回転軸側の
回転速度を一定の変速比で増速又は減速して出力して、
この出力部分と上記の左右の各回転軸のうちの他方の回
転軸側とを係合することで、高速回転側から低速回転側
へと駆動トルクを伝達するような構成が考えられる。
【0006】例えば左右の各回転軸のうちの一方の回転
軸側の回転速度を一定の変速比で増速して出力すると、
左右輪の回転速度差の小さい通常走行時には、この出力
部分が他方の回転軸側の回転速度よりも高速回転するの
で、この出力部分と他方の回転軸とを係合することで、
高速回転側の出力部分側(即ち、一方の回転軸側)から
低速回転側の他方の回転軸側へと、駆動トルクが伝達さ
れる。
【0007】また、例えば左右の各回転軸のうちの一方
の回転軸側の回転速度を一定の変速比で減速して出力す
ると、左右輪の回転速度差の小さい通常走行時には、こ
の出力部分が他方の回転軸側の回転速度よりも低速回転
するので、この出力部分と他方の回転軸とを係合するこ
とで、高速回転側の他方の回転軸側から低速回転側の出
力部分側(即ち、一方の回転軸側)へと、駆動トルクが
伝達される。
【0008】しかしながら、車両の旋回時には、内輪と
外輪とで必然的に回転速度差が生じ、外輪側は高速にな
るので、旋回時の内外輪の回転速度比が大きいと、例え
ば、内輪の回転軸側の回転速度を増速して出力しても、
この出力部分の回転速度が外輪の回転軸側の回転速度よ
りも高速回転するとは限らず、内輪側から外輪側への駆
動トルクの伝達が行なえないことがある。
【0009】つまり、図20に示すように、車両が回転
中心Cの回りに旋回(この例では、右旋回)する場合を
考える。ここで、車両の左輪Wlと右輪Wrとの距離
(トレッド)をLt、旋回半径をR、旋回外輪速をV
o、旋回内輪速をVi、ホイールベースをL、実舵角を
δ、スタビリティファクタをAとすると、旋回内外輪の
軌道半径差による車輪速度の差ΔVhrは、車体スリッ
プ角βが十分に小さければ、cos β≒1,sin β≒βy
より、 ΔVhr=Vo−Vi=(Lt/R)・V ただし、R=(1+A・V2 )L/δ となって、左右輪で回転速度差が生じる。
【0010】さらに、具体例で示すと、例えば図21
は、デファレンシャルのケース(デフケース)DCに入
力されたエンジンからの駆動入力Tiを、デファレンシ
ャル機構を介して左輪側回転軸側S1lと右輪側回転軸
側S1rとに配分する部分に、上述の車両用左右駆動力
調整装置を設けた車両の、旋回時における各部の速度線
図である。
【0011】つまり、左輪側では、回転軸側S1lに一
定の変速比で増速して部材(出力部分)S2lに出力
し、この部材S2lとデフケースDCとの間に互いの係
合状態を調整するカップリングTc2が設けられてい
る。また、右輪側では、回転軸側S1rに一定の変速比
で増速して部材(出力部分)S2rに出力し、この部材
S2rとデフケースDCとの間に互いの係合状態を調整
するカップリングTc1が設けられている。
【0012】いま、左旋回しているとすると、左輪側が
内輪となり右輪側が外輪となり、旋回半径が小さいと、
図21に示すように、左輪側回転軸側S1lと右輪側回
転軸側S1rとの回転速度が大きく異なる場合が生じ
て、本来(左右輪の回転速度差が大きくないとき)は、
左輪側の出力部分S2lの回転速度の方がデフケースD
Cの回転速度よりも大きいところが、逆に、左輪側の出
力部分S2lの回転速度の方がデフケースDCの回転速
度よりも小さい場合が生じている。
【0013】このため、例えば旋回開始時の回頭性を向
上すべく、旋回外輪である右輪側の駆動力配分を大きく
して左右輪間の駆動力不均衡により車両に旋回方向への
モーメントを生じさせることができないという課題があ
る。本発明は、このような課題に鑑み創案されたもの
で、大きなトルクロスやエネルギロスを招来することな
く、さらに、走行状態に限定されることなく、左右輪間
でのトルク配分を行なえるようにした、車両用左右駆動
力調整装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1にか
かる本発明の車両用左右駆動力調整装置は、車両におけ
る左輪回転軸と右輪回転軸との間に、上記の左右の各回
転軸間で駆動力を授受することで上記の左右輪の駆動力
を調整しうる駆動力伝達制御機構をそなえ、上記駆動力
伝達制御機構が、上記の左右の各回転軸のうちの一方の
回転軸側に連結されてこの一方の回転軸側の回転速度を
一定の変速比で変速して出力しうる変速機構と、上記の
左右の各回転軸のうちの他方の回転軸側と上記変速機構
の出力部側との間に介装されて係合時に上記の左右の各
回転軸間で駆動力の伝達を行ないうる伝達容量可変制御
式トルク伝達機構とから構成され、上記車両の旋回走行
時に上記の左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、
上記の変速機構の出力部側の回転速度と上記の他方の回
転軸側の回転速度との大小関係が変わらないように、上
記変速比が設定されていることを特徴としている。
【0015】上記の左輪回転軸及び右輪回転軸を共にエ
ンジン出力を与えられて回転する駆動輪に設定すること
ができる。また.請求項3にかかる本発明の車両用左右
駆動力調整装置は、車両における左輪回転軸と右輪回転
軸との間に、エンジンからの駆動力を入力される入力部
と、上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ上記の入
力部から入力された駆動力を上記の左右の各回転軸に伝
達する差動機構と、上記の駆動力の伝達状態を制御して
上記の左右輪への駆動力配分を調整しうる駆動力伝達制
御機構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記回
転軸側に連結されてこの回転軸側の回転速度を一定の変
速比で変速して出力しうる変速機構と、上記の変速機構
の出力部側と上記入力部側との間に介装されて係合時に
上記回転軸側と上記入力部側との間で駆動力の伝達を行
ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構とから構成
され、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪の回転速度
比が最も大きくなっても、上記の変速機構の出力部側の
回転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度との大小関
係が変わらないように、上記変速比が設定されているこ
とを特徴としている。
【0016】また.請求項4にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置は、車両における左輪回転軸と右輪回
転軸との間に、エンジンからの駆動力を入力される入力
部と、上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ上記の
入力部から入力された駆動力を上記の左右の各回転軸に
伝達する差動機構と、上記の駆動力の伝達状態を制御し
て上記の左右輪への駆動力配分を調整しうる駆動力伝達
制御機構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記
の入力部側に連結されて該入力部側の回転速度を一定の
変速比で変速して出力しうる変速機構と、上記の変速機
構の出力部側と上記回転軸側との間に介装されて係合時
に上記回転軸側と上記入力部側との間で駆動力の伝達を
行ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構とから構
成され、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪の回転速
度比が最も大きくなっても、上記の変速機構の出力部側
の回転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度との大小
関係が変わらないように、上記変速比が設定されている
ことを特徴としている。
【0017】
【作用】上述の請求項1にかかる本発明の車両用左右駆
動力調整装置では、駆動力伝達制御機構により、車両の
左輪回転軸側と右輪回転軸側との間で駆動力の授受が行
なわれる。つまり、左右の各回転軸のうちの一方の回転
軸側の回転速度が変速機構により変速され、この変速機
構の出力部側と左右の各回転軸のうちの他方の回転軸側
との間に速度差が生じ、伝達容量可変制御式トルク伝達
機構を係合させることで上記の左右の各回転軸間で駆動
力の授受が行なわれる。
【0018】すなわち、伝達容量可変制御式トルク伝達
機構を係合させると、左右の各回転軸のうちの他方の回
転軸側と変速機構の出力部側とのうちの高速側から低速
側に駆動力が伝達されて、高速側の回転軸では駆動力が
減少し、この駆動力の減少に対応して低速側の回転軸で
は駆動力が増加する。これにより、左右の駆動力が調整
される。
【0019】そして、上記車両の旋回走行時に上記の左
右輪の回転速度比が最も大きくなっても、上記の変速機
構の出力部側の回転速度と上記の他方の回転軸側の回転
速度との大小関係が変わらないように、上記変速比が設
定されているので、上述の左右輪での駆動力配分制御
を、車両の旋回時にも同様に実施することができる。ま
た、請求項3にかかる本発明の車両用左右駆動力調整装
置では、入力軸の駆動力が差動機構を介して左輪回転軸
及び右輪回転軸のそれぞれに伝達されるが、このとき上
記の左右の各回転軸に出力される駆動力の配分状態が駆
動力伝達制御機構により調整される。つまり、駆動力伝
達制御機構では、変速機構により、回転軸側の部材が変
速され、この変速機構の出力部側と上記入力部側との間
に速度差が生じて、伝達容量可変制御式トルク伝達機構
を係合させることで上記回転軸側と上記入力部側との間
でで駆動力の伝達が行なわれる。
【0020】すなわち、伝達容量可変制御式トルク伝達
機構を係合させると、変速機構の出力部側と入力部側と
のうちの高速側から低速側に駆動力が伝達されて、高速
側の回転軸では駆動力が減少し、この駆動力の減少に対
応して低速側の回転軸では駆動力が増加する。これによ
り、左右の駆動力配分が調整される。そして、この装置
でも、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪の回転速度
比が最も大きくなっても、上記の変速機構の出力部側の
回転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度との大小関
係が変わらないように、上記変速比が設定されているの
で、上述の左右輪での駆動力配分制御を、車両の旋回時
にも同様に実施することができる。
【0021】さらに、請求項4にかかる本発明の車両用
左右駆動力調整装置では、入力軸の駆動力が差動機構を
介して左輪回転軸及び右輪回転軸のそれぞれに伝達され
るが、このとき上記の左右の各回転軸に出力される駆動
力の配分状態が駆動力伝達制御機構により調整される。
つまり、駆動力伝達制御機構では、変速機構により、入
力部側の部材が変速され、この変速機構の出力部側と上
記回転軸側との間に速度差が生じて、伝達容量可変制御
式トルク伝達機構を係合させることで上記回転軸側と上
記入力部側との間でで駆動力の伝達が行なわれる。
【0022】すなわち、伝達容量可変制御式トルク伝達
機構を係合させると、変速機構の出力部側と回転軸側と
のうちの高速側から低速側に駆動力が伝達されて、高速
側の回転軸では駆動力が減少し、この駆動力の減少に対
応して低速側の回転軸では駆動力が増加する。これによ
り、左右の駆動力配分が調整される。そして、この装置
でも、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪の回転速度
比が最も大きくなっても、上記の変速機構の出力部側の
回転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度との大小関
係が変わらないように、上記変速比が設定されているの
で、上述の左右輪での駆動力配分制御を、車両の旋回時
にも同様に実施することができる。
【0023】
【実施例】以下、図面により、本発明の実施例について
説明すると、図1〜4は本発明の第1実施例としての車
両用左右駆動力調整装置を示すもので、図1はその装置
をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成図、図2
はその模式的な要部構成図、図3はそのトルク伝達を説
明する速度線図、図4はそのトルク伝達の一例を説明す
る速度線図であり、図5〜8は本発明の第2実施例とし
ての車両用左右駆動力調整装置を示すもので、図5はそ
の装置をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成
図、図6はその模式的な要部構成図、図7はそのトルク
伝達を説明する速度線図、図8はそのトルク伝達の一例
を説明する速度線図であり、図9は本発明の第3実施例
としての車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な
要部構成図であり、図10は本発明の第4実施例として
の車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要部構
成図であり、図11は本発明の第5実施例としての車両
用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要部構成図で
あり、図12は本発明の第6実施例としての車両用左右
駆動力調整装置を示すその模式的な要部構成図であり、
図13は本発明の第7実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示すその模式的な要部構成図であり、図14
は本発明の第8実施例としての車両用左右駆動力調整装
置を示すその模式的な要部構成図であり、図15は本発
明の第9実施例としての車両用左右駆動力調整装置を示
すその模式的な要部構成図であり、図16は本発明の第
10実施例としての車両用左右駆動力調整装置を示すそ
の模式的な要部構成図であり、図17は本発明の第11
実施例としての車両用左右駆動力調整装置を示すその模
式的な要部構成図であり、図18は本発明の第12実施
例としての車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的
な要部構成図であり、図19は本発明の第13実施例と
しての車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要
部構成図である。なお、図中、同符号は同様なものを示
し、また、図3,4,7,8の縦軸は回転速度を示す。
【0024】まず、第1実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系は、図1に示すよう
に、エンジン1からの駆動力をトランスミッション2を
介して遊星歯車で構成されたセンタデフ3で受けて、セ
ンタデフ3から、前輪側と後輪側とに伝達するようにな
っている。特に、このセンタデフ3には、前後輪の差動
を適当に制限しうるセンタデフ差動制限機構5が設けら
れている。この差動制限機構5は、ここでは油圧式の多
板クラッチにより構成され、供給油圧に応じて前後輪の
差動を制限しながら、前後輪への駆動力配分を制御でき
るようになっており、前後輪間の駆動力配分を制御する
装置となっている。
【0025】このようにして、センタデフ3から配分さ
れた駆動力の一方は、フロントデフ4を通じて左右の前
輪25,26に伝達されるようになっている。一方、セ
ンタデフ3から配分された駆動力の他方は、プロペラシ
ャフト6を介してリヤデフ8に伝達され、このリヤデフ
8を通じて左右の後輪15,16に伝達されるようにな
っている。なお、符号7はドライブピニオン及びリング
ギヤからなるベベルギヤ機構である。
【0026】リヤデフ8部分には、変速機構30と伝達
容量可変制御式トルク伝達機構(又はトルク伝達機構)
としての多板クラッチ機構12とからなる駆動力伝達制
御機構9B(以下、駆動力伝達制御機構を広義に示す場
合は符号9とする)が設けられ、リヤデフ(差動機構)
8及び駆動力伝達制御機構9Bから車両用左右駆動力調
整装置が構成される。なお、この差動機構8としてここ
ではベベルギヤ式のものが用いられているが、差動機構
8は、2つの駆動軸間の差動を許容しつつエンジンから
入力された駆動力をこれらの各駆動軸に伝達できるもの
であればよく、例えば遊星歯車式のものなど歯車機構あ
るいはローラ機構等からなる他の公知の差動機構を適用
することができるのは勿論のことである。また、この多
板クラッチ機構12は油圧式のもので、油圧を調整され
ることで左右輪への駆動力配分を制御できるようになっ
ている。
【0027】そして、この駆動力伝達制御機構9Bの多
板クラッチ機構12の油圧系は、前述の前後駆動力調整
装置の多板クラッチ機構5の油圧系とともに、コントロ
ールユニット18によって制御されるようになってい
る。つまり、多板クラッチ機構12の油圧系及び多板ク
ラッチ機構5の油圧系は、各クラッチ機構にそれぞれ付
設された図示しない油圧室と、油圧源を構成する電動ポ
ンプ24及びアキュムレータ23と、この油圧を上記の
油圧室に所要量だけ供給させるクラッチ油圧制御バルブ
17とからなっている。そして、クラッチ油圧制御バル
ブ17の開度をコントロールユニット18によって制御
されるようになっている。
【0028】なお、コントロールユニット18では、車
輪速センサ19,ハンドル角センサ20,ヨーレイトセ
ンサ21,加速度センサ(又は加速度演算手段)22な
どからの情報に基づいて、クラッチ油圧制御バルブ17
の開度を制御する。ここで、この車両用左右駆動力調整
装置の要部を説明すると、図2に示すように、プロペラ
シャフト6の後端に設けられて回転駆動力(以下、駆動
力又はトルクという)を入力される入力軸6Aと、入力
軸6Aから入力された駆動力を出力する左輪回転軸(左
後輪15の駆動軸)13と右輪回転軸(右後輪16の駆
動軸)14とが設けられており、左輪回転軸13と右輪
回転軸14と入力軸6Aとの間に車両用左右駆動力調整
装置が介装されている。
【0029】そして、この車両用左右駆動力調整装置の
駆動力伝達制御機構9Bは、次のような構成により、左
輪回転軸13と右輪回転軸14との差動を許容しなが
ら、左輪回転軸13と右輪回転軸14とに伝達される駆
動力を所要の比率に配分できるようになっている。すな
わち、左輪回転軸13と入力軸6Aとの間及び右輪回転
軸14と入力軸6Aとの間に、それぞれ変速機構30と
多板クラッチ機構12とが介装されており、左輪回転軸
13又は右輪回転軸14の回転速度が、変速機構30に
より変速(この例では、増速)されて、変速機構30の
出力部側である中空軸11に伝えられるようになってい
る。
【0030】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデファレンシャルケース(以
下、デフケースと略す)8Aとの間に介装されており、
この多板クラッチ機構12を係合させることで、デフケ
ース8A及び中空軸11のうちの高速回転している方の
部材から低速回転している方の部材へと、駆動力が送給
されるようになっている。これは、対向して配設された
クラッチ板における一般的な特性として、トルクの伝達
が、速度の速い方から遅い方へ行なわれるためである。
なお、この例の場合には、左右の回転軸13,14の間
の差動が大きくてデフケース8Aよりも回転軸13又は
14が所定比(変速機構30の減速比に対応する比)以
上に高速にならない限りは、デフケース8Aが高速側と
なり中空軸11が低速側となって、デフケース8Aから
中空軸11へと駆動力が送給されるようになっている。
【0031】したがって、例えば右輪回転軸14と入力
軸6Aとの間の多板クラッチ機構12が係合されると、
右輪回転軸14へ配分される駆動力は入力軸6A側から
のルートで増加又は減少(この例では主として減少)さ
れて、この分だけ、左輪回転軸13へ配分される駆動力
が減少又は増加(この例では主として増加)する。この
実施例の変速機構30は、2つのプラネタリギヤ機構を
直列的に結合してなるいわゆるダブルプラネタリギヤ機
構で構成されているが、この変速機構30自体は、入力
された回転速度を一定の変速比で加速又は減速して出力
する機構であればよく、例えばベルトやチェーン等を用
いた機構なども考えられ、ギヤ機構に限定されるもので
はない。
【0032】このギヤ機構式の変速機構30を、右輪回
転軸14に設けられたものを例に説明すると次のように
なる。すなわち、右輪回転軸14には第1のサンギヤ3
0Aが固着されており、この第1のサンギヤ30Aは、
その外周において第1のプラネタリギヤ(プラネタリピ
ニオン)30Bに噛合している。また、第1のプラネタ
リギヤ30Bは、第2のプラネタリギヤ30Dと一体に
固着され、共にキャリヤに設けられたピニオンシャフト
30Cを通じて、ケーシング(固定部)に固着されて回
転しないキャリア30Fに枢支されている。これによ
り、第1のプラネタリギヤ30Bと第2のプラネタリギ
ヤ30Dとが、ピニオンシャフト30Cを中心として同
一の回転を行なうようになっている。
【0033】さらに、第2のプラネタリギヤ30Dは、
右輪回転軸14に枢支された第2のサンギヤ30Eに噛
合しており、第2のサンギヤ30Eは、中空軸11を介
して多板クラッチ機構12のクラッチ板12Aに連結さ
れている。また、多板クラッチ機構12の他方のクラッ
チ板12Bは、入力軸6Aにより駆動されるデフケース
8Aに連結されている。
【0034】そして、この実施例の構造では、第1のサ
ンギヤ30Aが第2のサンギヤ30Eよりも大きい径に
形成され、これに応じて第1のプラネタリギヤ30Bが
第2のプラネタリギヤ30Dよりも小さい径に形成され
ている。これにより、第2のサンギヤ30Eの回転速度
は第1のサンギヤ30Aの回転速度よりも大きくなり、
この変速機構30は増速機構としてはたらくようになっ
ている。したがって、クラッチ板12Aの回転速度がク
ラッチ板12Bよりも大きく、例えば右輪側の多板クラ
ッチ機構12を係合させた場合には、この係合状態に応
じた量のトルクが、右輪回転軸14側から入力軸6A側
へ送給されるようになっている。
【0035】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構30及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ている。したがって、入力軸6Aからの駆動トルクを右
輪回転軸14により多く配分したい場合には、その配分
したい程度(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板
クラッチ機構12を適当に係合し、左輪回転軸13によ
り多く配分したい場合には、その配分比に応じて右輪回
転軸14側の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0036】このとき、多板クラッチ機構12が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構12の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。なお、左右の多板ク
ラッチ機構12が共に完全係合することのないように設
定されており、左右の多板クラッチ機構12のうち一方
が完全係合したら他方の多板クラッチ機構12は滑りを
生じるようになっている。
【0037】さらに、この装置では、特に、上述の変速
機構30の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板
クラッチ機構12のクラッチ板12A側(即ち、変速機
構30の出力部側である中空軸11側)の回転速度とク
ラッチ板12B側(即ち、入力軸6A側であるデフケー
ス8A側)の回転速度との大小関係が変わらないよう
に、上記変速比が設定されているのである。
【0038】なお、この変速機構30の変速比(増速
比)は、第1のサンギヤ30A,第2のサンギヤ30
E,第1のプラネタリギヤ30B及び第2のプラネタリ
ギヤ30Dのギヤ比によって決定する。ここで、変速機
構30の変速比(増速比)の定義を別の観点から表現し
たい。まず、駆動トルクの移動制御の可能な左右回転速
度差範囲を規定する値(制御可能な最大回転速度比)S
max を実現するためのプラネタリギヤ機構の設定速度比
を、図3,4の速度線図を参照しながら導く。なお、速
度比Smax は、クラッチ板12A側とクラッチ板12B
とが等速になったときの入力側(つまり、デフケース8
A側)の回転速度Niに対する出力側(つまり、各回転
軸13,14側)の回転速度の変化量ΔNの比(即ち、
Smax =ΔN/Ni)と定義できる。
【0039】図3,4において、lを付した符号は左輪
に関し、rを付した符号は右輪に関している。そして、
Cl,Crはキャリア30Fの回転速度でここではキャ
リア30Fは回転しないので0になっている。S1l,
S1rは第1のサンギヤ30Aの回転速度で、S2l,
S2rは第2のサンギヤ30Eの回転速度であり、第1
のサンギヤ30Aは第2のサンギヤ30Eよりも大径な
ので、回転速度S1l,S1rは回転速度S2l,S2
rよりも小さい。そして、DCはデフケース8Aの回転
速度である。
【0040】また、Z1 は第1のサンギヤ30Aの歯
数、Z2 は第2のサンギヤ30Eの歯数、Z3 はプラネ
タリギヤ30Bの歯数、Z4 はプラネタリギヤ30Dの
歯数であり、Ti はデフケース8Aへの入力トルク、T
l,Trはそれぞれ左側輪及び右側輪への配分トルク、
Tc1は右輪側の駆動力伝達制御機構9Bの多板クラッ
チ機構12を係合したときの左方向への伝達トルク、T
c2は左輪側の駆動力伝達制御機構9Bの多板クラッチ
機構12を係合したときの右方向への伝達トルクであ
る。
【0041】さらに、図3は左右輪が等速で回転してい
る状態を示し、図4は右輪側の駆動力伝達制御機構9B
の多板クラッチ機構12が完全係合されて、右輪側が多
板クラッチ機構12によって回転拘束され右輪側の回転
速度が減速されている一方で、これに応じて、左輪側の
回転速度が増速されている状態を示している。前述のS
max (制御可能な左右回転差範囲を示す速度比)を実現
するための、プラネタリの設定速度比を導く。
【0042】このSmax の状態は、図4に示され、多板
クラッチ機構12が完全係合されると、デフケース8A
の回転速度DCと第2のサンギヤ30Eの回転速度S2
rとが等しくなる。したがって、図4より、 Z3 /Z1 : Z4 /Z2 =1−Smax :1 ∴Z2 3 /Z1 4 =1−Smax このように、制御可能な左右回転差範囲を示す速度比S
max は、変速機構30の変速比(即ち、ギヤ30A,3
0E,30B及び30Dの設定ギヤ比)に応じて決ま
る。
【0043】一方、車輪の左右輪速度比αを、右輪速度
Vrと左輪速度Vlとの平均車輪速Vav〔=(Vr+
Vl)/2〕に対する車輪速偏差Vd〔=(Vr−V
l)/2〕の割合と定義すると、左右輪速度比αは以下
のごとくあらわせる。 α=Vd/Vav=〔(Vr−Vl)/2〕/〔(Vr+Vl)/2〕 =(Vr−Vl)/(Vr+Vl) そして、すべての定常円旋回走行時に発生しうる最大の
左右輪速度比αmax を考えて、この最大左右輪速度比α
max よりも、上記の速度比Smax の方が大きくなるよう
に設定すれば、多板クラッチ機構12のクラッチ板12
A側の回転速度とクラッチ板12B側の回転速度との大
小関係が常に変わらず、所定の方向への駆動力移動制御
を常に行なうことができる。
【0044】したがって、変速機構30の変速比(増速
比)の設定条件を、下式が成り立つように変速比を設定
すると、言い換えることができる。 Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、左輪回転軸13側の多板クラッチ機構12を
係合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを右輪側
により多く配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ
機構12を係合することで、入力軸6Aからの駆動トル
クを左輪側により多く配分できるようになっているので
ある。
【0045】本発明の第1実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、ブ
レーキ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整す
るのでなく、一方のトルクの所要量を他方に転送するこ
とによりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロ
スやエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配
分を得ることができる。
【0046】しかも、常に、左輪回転軸13側の多板ク
ラッチ機構12を係合することで右輪側により多くトル
ク配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ機構12
を係合することで左輪側により多くトルク配分できるの
で、左輪側へのトルク配分増加も右輪側へのトルク配分
増加も常に行なえる。したがって、旋回時に外輪側への
トルク移動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外
輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡
により車両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回
時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上さ
せることができるのである。
【0047】なお、この実施例では、伝達容量可変制御
式トルク伝達機構として油圧式の多板クラッチ機構12
が設けられているが、伝達容量可変制御式トルク伝達機
構としては、伝達トルク容量が可変制御できるトルク伝
達機構であればよく、この例の機構のほかに、電磁式多
板クラッチ機構等の他の多板クラッチ機構や、これらの
多板クラッチ機構の他に、油圧式又は電磁式の摩擦クラ
ッチや、油圧式又は電磁式の制御可能なVCU(ビスカ
スカップリングユニット)や、油圧式又は電磁式の制御
可能なHCU(ハイドーリックカップリングユニット=
差動ポンプ式油圧カップリング)、さらには、電磁流体
式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを
用いることもできる。
【0048】摩擦クラッチの場合、多板クラッチ機構と
同様に油圧等で係合力を調整するものが考えられ、特
に、この摩擦クラッチでは、トルク伝達方向が一方向の
ものを所要の方向(それぞれのトルク伝達方向)向けて
設置することが考えられる。また、このVCUやHCU
には、従来型の動力伝達特性が一定のものも考えられる
が、動力伝達特性を調整できるようにしたものが適して
いる。そして、これらの係合力調整や動力伝達特性の調
整は、油圧による他に、電磁力等の他の駆動系を用いる
ことも考えられる。
【0049】次に、第2実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図5に
示すようになっており、図1に示す第1実施例のものと
ほぼ同様であるので、ここでは説明を省略する。この駆
動力伝達制御機構9Aでは、図5,6に示すように、変
速機構10が第1実施例のものと異なっており、第1の
サンギヤ10Aが第2のサンギヤ10Eよりも小さい径
に形成されているので、第2のサンギヤ10Eの回転速
度は第1のサンギヤ10Aよりも小さくなり、この変速
機構10は減速機構としてはたらくようになっている。
したがって、左右輪の回転速度差の小さな通常走行時に
は、クラッチ板12Aの回転速度がクラッチ板12Bよ
りも小さくなって、多板クラッチ機構12を係合させた
場合には、この係合状態に応じた量のトルクが、入力軸
6A側から右輪回転軸14側へ増加されるようになって
いる。
【0050】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構10及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13
により多く配分したい場合には、その配分したい程度
(配分比)に応じて右輪回転軸14側の多板クラッチ機
構12を適当に係合し、右輪回転軸14により多く配分
したい場合には、その配分比に応じて左輪回転軸13側
の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0051】このとき、第1実施例と同様に、多板クラ
ッチ機構12が油圧駆動式であるから、油圧の大きさを
調整することで多板クラッチ機構12の係合状態を制御
でき、入力軸6Aから左輪回転軸13又は右輪回転軸1
4への駆動力の送給量(つまりは駆動力の左右配分比)
を適当な精度で調整することができるようになってい
る。
【0052】また、第1実施例と同様に、左右の多板ク
ラッチ機構12が共に完全係合することのないように設
定されており、左右の多板クラッチ機構12のうち一方
が完全係合したら他方の多板クラッチ機構12は滑りを
生じるようになっている。さらに、この装置でも、第1
実施例と同様に、上述の変速機構10の変速比(増速
比)が、以下のような条件を満たすように設定されてい
る。
【0053】つまり、この車両の旋回走行時に左右輪の
回転速度比が最も大きくなっても、多板クラッチ機構1
2のクラッチ板12A側(即ち、変速機構10の出力部
側である中空軸11側)の回転速度とクラッチ板12B
側(即ち、入力軸6A側であるデフケース8A側)の回
転速度との大小関係が変わらないように、上記変速比が
設定されているのである。
【0054】なお、この変速機構10の変速比(増速
比)は、第1のサンギヤ10A,第2のサンギヤ10
E,第1のプラネタリギヤ10B及び第2のプラネタリ
ギヤ10Dのギヤ比によって決定する。ここで、変速機
構10の変速比(増速比)の定義を別の観点から表現す
る。まず、Smax を実現するためのプラネタリギヤ機構
の設定速度比を、図7,8の速度線図を参照しながら導
く。なお、速度比Smax は、クラッチ板12A側とクラ
ッチ板12Bとが等速になったときの入力側(つまり、
デフケース8A側)の回転速度Niに対する出力側(つ
まり、各回転軸13,14側)の回転速度の変化量ΔN
の比(即ち、Smax =ΔN/Ni)と定義できる。
【0055】図7,8において、lを付した符号は左輪
に関し、rを付した符号は右輪に関している。そして、
Cl,Crはキャリア10Fの回転速度でここではキャ
リア10Fは回転しないので0になっている。S1l,
S1rは第1のサンギヤ10Aの回転速度で、S2l,
S2rは第2のサンギヤ10Eの回転速度であり、第1
のサンギヤ10Aは第2のサンギヤ10Eよりも大径な
ので、回転速度S1l,S1rは回転速度S2l,S2
rよりも小さい。そして、DCはデフケース8Aの回転
速度である。
【0056】また、Z1 は第2のサンギヤ10Eの歯
数、Z2 は第1のサンギヤ10Aの歯数、Z3 はプラネ
タリギヤ10Dの歯数、Z4 はプラネタリギヤ10Bの
歯数であり、Ti はデフケース8Aへの入力トルク、T
l,Trはそれぞれ左側輪及び右側輪への配分トルク、
Tc1は右輪側の駆動力伝達制御機構9Bの多板クラッ
チ機構12を係合したときの左方向への伝達トルク、T
c2は左輪側の駆動力伝達制御機構9Bの多板クラッチ
機構12を係合したときの右方向への伝達トルクであ
る。
【0057】さらに、図7は左右輪が等速で回転してい
る状態を示し、図8は右輪側の駆動力伝達制御機構9A
の多板クラッチ機構12が完全係合されて、右輪側が多
板クラッチ機構12によって回転拘束され右輪側の回転
速度が減速されている一方で、これに応じて、左輪側の
回転速度が増速されている状態を示している。前述のS
max (制御可能な左右回転差範囲を示す速度比)を実現
するための、プラネタリの設定速度比を導く。
【0058】このSmax の状態は、図8に示され、多板
クラッチ機構12が完全係合されると、デフケース8A
の回転速度DCと第2のサンギヤ10Eの回転速度S2
rとが等しくなる。したがって、図8より、 Z3 /Z1 : Z4 /Z2 =1:Smax +1 ∴Z2 3 /Z1 4 =1/(Smax +1) このように、制御可能な左右回転差範囲を示す速度比S
max は、変速機構10の変速比(即ち、ギヤ10A,1
0E,10B及び10Dの設定ギヤ比)に応じて決ま
る。
【0059】一方、車輪の左右輪速度比αを、右輪速度
Vrと左輪速度Vlとの平均車輪速Vav〔=(Vr+
Vl)/2〕に対する車輪速偏差Vd〔=(Vr−V
l)/2〕の割合と定義すると、左右輪速度比αは以下
のごとくあらわせる。 α=Vd/Vav=〔(Vr−Vl)/2〕/〔(Vr+Vl)/2〕 =(Vr−Vl)/(Vr+Vl) そして、すべての定常円旋回走行時に発生しうる最大の
左右輪速度比αmax を考えて、この最大左右輪速度比α
max よりも、上記の速度比Smax の方が大きくなるよう
に設定すれば、多板クラッチ機構12のクラッチ板12
A側の回転速度とクラッチ板12B側の回転速度との大
小関係が常に変わらず、所定の方向への駆動力移動制御
を常に行なうことができる。
【0060】したがって、変速機構10の変速比(増速
比)の設定条件を、下式が成り立つように変速比を設定
すると、言い換えることができる。 Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、左輪回転軸13側の多板クラッチ機構12を
係合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪側
により多く配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ
機構12を係合することで、入力軸6Aからの駆動トル
クを右輪側により多く配分できるようになっているので
ある。
【0061】本発明の第2実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1実施例と同様に、ブレーキ等のエネルギーロスを用い
てトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの所要
量を他方に転送することによりトルク配分が調整される
ため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来すること
なく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0062】さらに、常に、左輪回転軸13側の多板ク
ラッチ機構12を係合することで左輪側により多くトル
ク配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ機構12
を係合することで右輪側により多くトルク配分できるの
で、左輪側へのトルク配分増加も右輪側へのトルク配分
増加も常に行なえる。したがって、旋回時に外輪側への
トルク移動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外
輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡
により車両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回
時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上さ
せることができるのである。
【0063】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第3実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0064】この駆動力伝達制御機構9Cでは、図9に
示すように、変速機構31及び多板クラッチ機構42が
第1及び第2実施例のものと異なっている。ここでも、
右側の装置について説明する。変速機構31は、入力軸
6A側のデフケース8Aの左右側部にそれぞれ設けら
れ、2組の直列な遊星歯車機構からなり、第1のサンギ
ヤ31Aと第2のサンギヤ31Eと第1のプラネタリギ
ヤ31Bと第2のプラネタリギヤ31Dとピニオンシャ
フト31Cとプラネタリキャリア31Fとからなり、第
1のサンギヤ31Aのプレート部分は駆動力伝達補助部
材41になっている。
【0065】そして、この駆動力伝達補助部材41と右
輪回転軸14との間に、多板クラッチ機構42が介設さ
れる。この多板クラッチ機構42は、回転軸14側のク
ラッチ板42Bと駆動力伝達補助部材41側のクラッチ
板42Bとが交互に重合してなり、図示しない油圧系か
ら供給される油圧に応じて、その係合状態を調整され
る。
【0066】このため、多板クラッチ機構42が係合す
ると、回転軸14側から、多板クラッチ機構42,第1
のサンギヤ31A,第1のプラネタリギヤ31B,第2
のプラネタリギヤ31D,第2のサンギヤ31Eを経
て、入力軸6A側のデフケース8Aへ至る駆動力の伝達
路が形成される。ここでは、第1のサンギヤ31Aが第
2のサンギヤ31Eよりも大きい径に形成されているの
で、第2のサンギヤ31Eの回転速度は第1のサンギヤ
31Aより大きくなり、この変速機構31は駆動力伝達
補助部材41を入力軸6A側よりも減速する減速機構と
してはたらくようになっている。
【0067】したがって、クラッチ板42Aの回転速度
がクラッチ板42Bよりも大きく、多板クラッチ機構4
2を係合させた場合には、この係合状態に応じた量のト
ルクが、右輪回転軸14側から入力軸6A側へ送給(返
送)されるようになっている。一方、左輪回転軸13に
そなえられる変速機構31及び多板クラッチ機構42
も、同様に構成されており、入力軸6Aからの駆動トル
クを左輪回転軸13により多く配分したい場合には、そ
の配分したい程度(配分比)に応じて右輪回転軸14側
の多板クラッチ機構42を適当に係合し、右輪回転軸1
4により多く配分したい場合には、その配分比に応じて
左輪回転軸13側の多板クラッチ機構42を適当に係合
する。
【0068】このとき、多板クラッチ機構42が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構42の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。また、左右の多板ク
ラッチ機構42が共に完全係合することのないように設
定されており、左右の多板クラッチ機構42のうち一方
が完全係合したら他方の多板クラッチ機構42は滑りを
生じるようになっている。
【0069】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構31の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板
クラッチ機構12のクラッチ板12A側(即ち、変速機
構31の出力部側である中空軸11側)の回転速度とク
ラッチ板12B側(即ち、入力軸6A側であるデフケー
ス8A側)の回転速度との大小関係が変わらないよう
に、上記変速比が設定されているのである。
【0070】なお、この変速機構31の変速比(増速
比)も、第1のサンギヤ31A,第2のサンギヤ31
E,第1のプラネタリギヤ31B及び第2のプラネタリ
ギヤ31Dのギヤ比によって決定する。また、変速機構
31の変速比(増速比)の設定条件を、制御可能な最大
回転速度比Smax と最大左右輪速度比αmax とから下式
が成り立つように変速比を設定すると、言い換えること
ができる。
【0071】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、左輪回転軸13側の多板クラッチ機構12を
係合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを右輪側
により多く配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ
機構12を係合することで、入力軸6Aからの駆動トル
クを左輪側により多く配分できるようになっているので
ある。
【0072】本発明の第3実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1,2実施例と同様に、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0073】しかも、第1実施例と同様に、常に、左輪
回転軸13側の多板クラッチ機構12を係合することで
右輪側により多くトルク配分でき、右輪回転軸14側の
多板クラッチ機構12を係合することで左輪側により多
くトルク配分できるので、左輪側へのトルク配分増加も
右輪側へのトルク配分増加も常に行なえる。したがっ
て、旋回時に外輪側へのトルク移動を自由に行なうこと
ができ、例えば、旋回外輪側の駆動力配分を大きくして
左右輪間の駆動力不均衡により車両に旋回方向へのモー
メントを生じさせて旋回時の回頭性を向上させるなど、
車両の旋回性能を向上させることができるのである。
【0074】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第4実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0075】この駆動力伝達制御機構9Dでは、図10
に示すように、第3実施例とほぼ同様に変速機構32及
び多板クラッチ機構42を配置しているが、ここでは、
第1のサンギヤ32Aが第2のサンギヤ32Eよりも小
さい径に形成されている。このため、第2のサンギヤ3
2Eの回転速度は第1のサンギヤ32Aよりも小さくな
り、この変速機構32は駆動力伝達補助部材41を入力
軸6A側よりも増速する増速機構としてはたらくように
なっている。
【0076】したがって、クラッチ板42Aの回転速度
がクラッチ板42Bよりも小さく、多板クラッチ機構4
2を係合させた場合には、この係合状態に応じた量のト
ルクが、入力軸6A側から右輪回転軸14側へ送給され
るようになっている。一方、左輪回転軸13にそなえら
れる変速機構32及び多板クラッチ機構42も、同様に
構成されており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回
転軸13により多く配分したい場合には、その配分した
い程度(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板クラ
ッチ機構42を適当に係合し、右輪回転軸14により多
く配分したい場合には、その配分比に応じて右輪回転軸
14側の多板クラッチ機構42を適当に係合する。
【0077】なお、多板クラッチ機構42が油圧駆動式
であるから、油圧の大きさを調整することで多板クラッ
チ機構42の係合状態を制御でき、入力軸6Aから左輪
回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量(つ
まりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整するこ
とができるようになっている。また、左右の多板クラッ
チ機構42が共に完全係合することのないように設定さ
れており、左右の多板クラッチ機構42のうち一方が完
全係合したら他方の多板クラッチ機構42は滑りを生じ
るようになっている。
【0078】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構32の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板
クラッチ機構12のクラッチ板12A側(即ち、変速機
構32の出力部側である中空軸11側)の回転速度とク
ラッチ板12B側(即ち、入力軸6A側であるデフケー
ス8A側)の回転速度との大小関係が変わらないよう
に、上記変速比が設定されているのである。
【0079】なお、この変速機構32の変速比(増速
比)も、第1のサンギヤ32A,第2のサンギヤ32
E,第1のプラネタリギヤ32B及び第2のプラネタリ
ギヤ32Dのギヤ比によって決定する。また、変速機構
32の変速比(増速比)の設定条件を、制御可能な最大
回転速度比Smax と最大左右輪速度比αmax とから下式
が成り立つように変速比を設定すると、言い換えること
ができる。
【0080】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、左輪回転軸13側の多板クラッチ機構12を
係合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪側
により多く配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ
機構12を係合することで、入力軸6Aからの駆動トル
クを右輪側により多く配分できるようになっているので
ある。
【0081】本発明の第4実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1〜3実施例と同様に、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0082】しかも、第2実施例と同様に、常に、左輪
回転軸13側の多板クラッチ機構12を係合することで
左輪側により多くトルク配分でき、右輪回転軸14側の
多板クラッチ機構12を係合することで右輪側により多
くトルク配分できるので、左輪側へのトルク配分増加も
右輪側へのトルク配分増加も常に行なえる。したがっ
て、旋回時に外輪側へのトルク移動を自由に行なうこと
ができ、例えば、旋回外輪側の駆動力配分を大きくして
左右輪間の駆動力不均衡により車両に旋回方向へのモー
メントを生じさせて旋回時の回頭性を向上させるなど、
車両の旋回性能を向上させることができるのである。
【0083】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第5実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0084】この車両用左右駆動力調整装置にそなえら
れる駆動力伝達制御機構9Eでは、図11に示すよう
に、回転軸13,14と並行に軸(カウンタシャフト)
51が設けられ、この軸51には、中径の歯車52と大
径の歯車53と小径の歯車54とがそなえられ、一方の
回転軸13には、中径の歯車52と噛合する中径の歯車
59がそなえられ、他方の回転軸14には、大径の歯車
53と噛合する小径の歯車55と小径の歯車54と噛合
する大径の歯車56とが設けられる。これらの歯車5
9,52,53,55の組み合わせで、変速機構として
の増速機構が構成され、歯車59,52,54,56の
組み合わせで、変速機構としての減速機構が構成され
る。
【0085】そして、回転軸14と小径の歯車55との
間及び回転軸14と大径の歯車56との間には、それぞ
れ、油圧式の多板クラッチ57,58が介装されてい
る。なお、多板クラッチ57,58を軸51上に設けて
もよい。これにより、軸51は回転軸13と等速で回転
するが、回転軸14の小径の歯車55は、これらの軸5
1や回転軸13よりも高速で回転し、左右輪で差動があ
まり生じない通常走行時には回転軸14よりも高速で回
転する。また、回転軸14の大径の歯車56は、これら
の軸51や回転軸13よりも低速で回転し、左右輪で差
動があまり生じない通常走行時には回転軸14よりも低
速で回転する。
【0086】したがって、多板クラッチ57を係合する
と、回転軸14よりも高速の小径の歯車55側から回転
軸14側へトルクが伝達され、この分だけ回転軸13側
へのトルクが減少する。また、多板クラッチ58を係合
すると、回転軸14側から回転軸14よりも低速の大径
の歯車56側へトルクが返送され、この分だけ回転軸1
3側へのトルクが増加する。
【0087】そして、多板クラッチ機構57,58が油
圧駆動式であるから、油圧の大きさを調整することで多
板クラッチ機構57,58の係合状態を制御でき、入力
軸6Aから左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動
力の送給量(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精
度で調整することができるようになっている。また、2
つの多板クラッチ機構57,58が共に完全係合するこ
とのないように設定されており、2つの多板クラッチ機
構57,58のうち一方が完全係合したら他方は滑りを
生じるようになっている。
【0088】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構の変速比(増速比)が、以下のような条件を満たす
ように設定されている。つまり、この車両の旋回走行時
に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板クラ
ッチ機構57の歯車55側のクラッチ板の回転速度と回
転軸14側のクラッチ板の回転速度との大小関係、及
び、多板クラッチ機構58の歯車56側のクラッチ板の
回転速度と回転軸14側のクラッチ板の回転速度との大
小関係がいずれも変化しないように、上記変速比が設定
されているのである。
【0089】なお、この変速機構の変速比(増速比)
も、歯車機構59,52,53,55の各設定ギヤ比、
及び、歯車59,52,54,56の各設定ギヤ比によ
って決定する。また、変速機構の変速比(増速比)の設
定条件を、制御可能な最大回転速度比Smax と最大左右
輪速度比αmax とから下式が成り立つように変速比を設
定すると、言い換えることができる。
【0090】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、多板クラッチ機構57を係合することで、入
力軸6Aからの駆動トルクを右輪側により多く配分で
き、多板クラッチ機構58を係合することで、入力軸6
Aからの駆動トルクを左輪側により多く配分できるよう
になっているのである。
【0091】本発明の第5実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1〜4実施例と同様に、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0092】しかも、常に、多板クラッチ機構57を係
合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを右輪側に
より多く配分でき、多板クラッチ機構58を係合するこ
とで、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪側により多く
配分できるので、左輪側へのトルク配分増加も右輪側へ
のトルク配分増加も常に行なえる。したがって、旋回時
に外輪側へのトルク移動を自由に行なうことができ、例
えば、旋回外輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の
駆動力不均衡により車両に旋回方向へのモーメントを生
じさせて旋回時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回
性能を向上させることができるのである。
【0093】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第6実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0094】この実施例では、図12に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力を入力
される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された駆動力
を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14とが設け
られており、これらの回転軸13,14と入力軸6Aと
の間に本装置が介装されている。そして、この車両用左
右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9Fは、次のよ
うな構成により、左輪回転軸13と右輪回転軸14との
差動を許容しながら、左輪回転軸13と右輪回転軸14
とに伝達される駆動力を所要の比率に配分できるように
なっている。
【0095】すなわち、左輪回転軸13と入力軸6Aと
の間及び右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に、それぞ
れ変速機構60と多板クラッチ機構12とが介装されて
おり、左輪回転軸13又は右輪回転軸14の回転速度
が、変速機構60により減速されて変速機構の出力部
(駆動力伝達補助部材)としての中空軸11に出力され
るようになっている。
【0096】多板クラッチ機構12は、この中空軸11
と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装されてお
り、この多板クラッチ機構12を係合させることで、高
速側のデフケース8Aから低速側の中空軸11へ駆動力
が送給されるようになっている。これは、対向して配設
されたクラッチ板における一般的な特性として、トルク
の伝達が、速度の速い方から遅い方へ行なわれるためで
ある。
【0097】したがって、例えば、右輪回転軸14と入
力軸6Aとの間の多板クラッチ機構12が係合される
と、右輪回転軸14へ配分される駆動力は、多板クラッ
チ機構12を介して入力軸6A側からの直接ルートで増
加されて、この分だけ、左輪回転軸13へ配分される駆
動力が増加する。上述の変速機構60は、1つのプラネ
タリギヤ機構で構成されており、右輪回転軸14に設け
られた変速機構60を例に説明すると次のようになる。
【0098】すなわち、右輪回転軸14にはサンギヤ6
0Aが固着されており、このサンギヤ60Aは、その外
周においてプラネタリギヤ(プラネタリピニオン)60
Bに噛合している。プラネタリギヤ60Bを枢支するピ
ニオンシャフト60Cは中空軸11に軸支され、中空軸
11がプラネタリギヤ機構のキャリヤとして機能するよ
うになっている。また、プラネタリギヤ60Bは、駆動
力伝達制御機構9Fのケース等に回転しないように固定
されたリングギヤ60Dに噛合している。
【0099】このようなプラネタリギヤ機構では、プラ
ネタリギヤ60Bの公転速度は、サンギヤ60Aの回転
速度よりも小さいので、中空軸(つまり、変速機構60
の出力部)11は、右輪回転軸14よりも低速で回転す
る。したがって、変速機構60は、減速機構として機能
するようになっている。このため、クラッチ板12Aの
回転速度がクラッチ板12Bよりも小さく、多板クラッ
チ機構12を係合させた場合には、この係合状態に応じ
た量のトルクが、入力軸6A側から右輪回転軸14側へ
送給されるようになっている。
【0100】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構60及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13
により多く配分したい場合には、その配分したい程度
(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板クラッチ機
構12を適当に係合し、右輪回転軸14により多く配分
したい場合には、その配分比に応じて右輪回転軸14側
の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0101】このとき、多板クラッチ機構12が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構12の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。なお、左右の多板ク
ラッチ機構12が同時に完全係合することのないように
設定されており、左右の多板クラッチ機構12のうち一
方が完全係合したら他方の多板クラッチ機構12は滑り
を生じるようになっている。
【0102】さらに、常に、左輪回転軸13側の多板ク
ラッチ機構12を係合することで左輪側により多くトル
ク配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ機構12
を係合することで右輪側により多くトルク配分できるの
で、左輪側へのトルク配分増加も右輪側へのトルク配分
増加も常に行なえる。したがって、旋回時に外輪側への
トルク移動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外
輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡
により車両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回
時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上さ
せることができるのである。
【0103】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構60の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板
クラッチ機構12のクラッチ板12A側(即ち、変速機
構60の出力部側である中空軸11側)の回転速度とク
ラッチ板12B側(即ち、入力軸6A側であるデフケー
ス8A側)の回転速度との大小関係が変わらないよう
に、上記変速比が設定されているのである。
【0104】なお、この変速機構60の変速比(増速
比)も、サンギヤ60A,プラネタリギヤ60Bのギヤ
比によって決定する。また、変速機構60の変速比(増
速比)の設定条件を、制御可能な最大回転速度比Smax
と最大左右輪速度比αmax とから下式が成り立つように
変速比を設定すると、言い換えることができる。
【0105】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、左輪回転軸13側の多板クラッチ機構12を
係合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪側
により多く配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ
機構12を係合することで、入力軸6Aからの駆動トル
クを右輪側により多く配分できるようになっているので
ある。
【0106】本発明の第6実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1〜5実施例と同様に、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0107】しかも、第2実施例と同様に、常に、左輪
回転軸13側の多板クラッチ機構12を係合することで
左輪側により多くトルク配分でき、右輪回転軸14側の
多板クラッチ機構12を係合することで右輪側により多
くトルク配分できるので、左輪側へのトルク配分増加も
右輪側へのトルク配分増加も常に行なえる。したがっ
て、旋回時に外輪側へのトルク移動を自由に行なうこと
ができ、例えば、旋回外輪側の駆動力配分を大きくして
左右輪間の駆動力不均衡により車両に旋回方向へのモー
メントを生じさせて旋回時の回頭性を向上させるなど、
車両の旋回性能を向上させることができるのである。
【0108】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第7実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0109】この実施例では、図16に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、入力軸6Aと第1
及び右輪回転軸13,14とが設けられており、左輪回
転軸13と右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に車両用
左右駆動力調整装置が介装されている。そして、この車
両用左右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9Gは、
第6実施例(図12参照)と同様の変速機構60をそな
えているが、この変速機構60は入力軸6A側に連結さ
れており、入力軸6A側の回転を増速して回転軸13,
14の側に出力するようになっている。
【0110】そして、第6実施例における多板クラッチ
機構12に代えて、例えば摩擦クラッチ等のカップリン
グ61が、変速機構60の出力部60Aと回転軸13,
14との間に介装されている。摩擦クラッチの場合に
は、トルク伝達方向が一方向のものを所要の方向(それ
ぞれのトルク伝達方向)向けて設置する。変速機構60
は、1つのプラネタリギヤ機構で構成されており、右輪
回転軸14に設けられた変速機構60を例に説明する
と、カップリング61の一方(入力側)にサンギヤ60
Aが固着され、サンギヤ60Aは、その外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)60Bに噛合して
いる。そして、プラネタリギヤ60Bを枢支するピニオ
ンシャフト60Cはデフケース8Aから延設されたキャ
リヤ60Eに軸支されている。また、プラネタリギヤ6
0Bは、駆動力伝達制御機構9Gのケース等に回転しな
いように固定されたリングギヤ60Dに噛合している。
【0111】このようなプラネタリギヤ機構では、プラ
ネタリギヤ60Bの公転速度は、サンギヤ60Aの回転
速度よりも小さいので、サンギヤ60A側(つまり、変
速機構60の出力部)は、中空軸11よりも高速で回転
する。したがって、変速機構60は、増速機構として機
能するようになっている。このため、左右輪の回転差が
小さく、回転軸14がデフケース8Aに近い速度で回転
しているときに、カップリング61を係合させた場合に
は、この係合状態に応じた量のトルクが、デフケース8
A側(つまり、入力軸6A側)から右輪回転軸14側へ
送給されるようになっている。
【0112】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構60及びカップリング61も同様に構成されてお
り、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13によ
り多く配分したい場合には、その配分したい程度(配分
比)に応じて左輪回転軸13側のカップリング61を適
当に係合し、右輪回転軸14により多く配分したい場合
には、その配分比に応じて右輪回転軸14側のカップリ
ング61を適当に係合する。
【0113】このとき、カップリング61の係合状態を
制御することで、入力軸6Aから左輪回転軸13又は右
輪回転軸14への駆動力の送給量(つまりは駆動力の左
右配分比)を適当な精度で調整することができるように
なっている。なお、ここでも、左右のカップリング61
が同時に完全係合することのないように設定されてお
り、左右のカップリング61のうち一方が完全係合した
ら他方は滑りを生じるようになっている。
【0114】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構60の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、カッ
プリング61の一側(即ち、変速機構60の出力部側で
あるサンギヤ60A側)の回転速度とカップリング61
の他側(即ち、回転軸13又は14側)の回転速度との
大小関係が変わらないように、上記変速比が設定されて
いるのである。
【0115】なお、この変速機構60の変速比(増速
比)も、サンギヤ60A,プラネタリギヤ60Bのギヤ
比によって決定する。また、変速機構60の変速比(増
速比)の設定条件を、制御可能な最大回転速度比Smax
と最大左右輪速度比αmax とから下式が成り立つように
変速比を設定すると、言い換えることができる。
【0116】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、左輪回転軸13側のカップリング61を係合
することで、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪側によ
り多く配分でき、右輪回転軸14側のカップリング61
を係合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを右輪
側により多く配分できるようになっているのである。
【0117】本発明の第7実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1〜6実施例と同様に、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0118】しかも、第6実施例と同様に、常に、左輪
回転軸13側のカップリンク61を係合することで左輪
側により多くトルク配分でき、右輪回転軸14側のカッ
プリンク61を係合することで右輪側により多くトルク
配分できるので、左輪側へのトルク配分増加も右輪側へ
のトルク配分増加も常に行なえる。したがって、旋回時
に外輪側へのトルク移動を自由に行なうことができ、例
えば、旋回外輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の
駆動力不均衡により車両に旋回方向へのモーメントを生
じさせて旋回時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回
性能を向上させることができるのである。
【0119】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第8実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0120】この実施例では、図14に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力を入力
される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された駆動力
を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14とが設け
られており、回転軸13,14と入力軸6Aとの間に車
両用左右駆動力調整装置が介装されている。そして、こ
の車両用左右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9H
は、次のような構成により、左輪回転軸13と右輪回転
軸14との差動を許容しながら、左輪回転軸13と右輪
回転軸14とに伝達される駆動力を所要の比率に配分で
きるようになっている。
【0121】すなわち、左輪回転軸13と入力軸6Aと
の間及び右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に、それぞ
れ変速機構62と多板クラッチ機構12とが介装されて
いるが、この変速機構62は、回転速度を出力部で増速
して出力することと減速して出力することができ、増速
して出力する状態(増速出力状態)と減速して出力する
状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構63が付
設されている。このため、変速機構62及び多板クラッ
チ機構12は一方の出力軸側(ここでは、左輪回転軸1
3の側)にそれぞれ1つだけ設けられている。
【0122】上述の変速機構62は、互いに直列に結合
された3組のプラネタリギヤ機構で構成されている。す
なわち、左輪回転軸13の側には、大径のサンギヤ62
Aと小径のサンギヤ62Dとがそなえられ、これらのサ
ンギヤ62A,62Dは、それぞれその外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)62B,62Eに
噛合している。
【0123】これらのプラネタリギヤ62B,62Eは
共通のキャリヤ(固定部)に軸支されたピニオンシャフ
ト62Cに一体回転するように装備されており、サンギ
ヤ62A,62Dの径の関係とは逆に、プラネタリギヤ
62Bは、プラネタリギヤ62Eよりも小径に設定され
ている。さらに、このピニオンシャフト62Cには、も
う1つのプラネタリギヤ62Fが一体回転するように装
備され、このプラネタリギヤ62Fに、中空軸11に固
着されているもう1つのサンギヤ62Gが噛合してい
る。なお、サンギヤ62Gの径はサンギヤ62Aの径よ
りも小さく且つサンギヤ62Dの径よりも大きく設定さ
れ、プラネタリギヤ62Fの径はプラネタリギヤ62B
の径よりも大きくプラネタリギヤ62Eの径よりも小さ
く設定されている。
【0124】そして、サンギヤ62A,62Dと左輪回
転軸13との間に、切替機構63が設けられている。こ
の切替機構63は、電磁式アクチュエータ(ソレノイ
ド)63Aと、このアクチュエータ63Aで駆動される
スライドレバー63Bと、このスライドレバー63Bで
駆動される連結部材63Cと、左輪回転軸13に設けら
れたハブ64と、サンギヤ62Aの内周に設けられたハ
ブ65と、サンギヤ62Dの内周に設けられたハブ66
とから構成される。なお、電磁式アクチュエータ63A
は、コントロールユニット18によって作動を制御され
るようになっている。
【0125】連結部材63Cは、その内周でハブ64と
セレーション結合してこのハブ64と常時一体に回転す
るようになっており、連結部材63Cの軸方向位置に対
応して、その内周でハブ65又はハブ66とセレーショ
ン結合して一体に回転しうるようになっている。つま
り、連結部材63Cが、スライドレバー63Bで後進状
態(図14中、左方に移動した状態)に駆動されると、
その外周がハブ65とセレーション結合してこのハブ6
5と一体に回転し、スライドレバー63Bで前進状態
(図14中、右方に移動した状態)に駆動されると、そ
の外周がハブ66とセレーション結合してこのハブ66
と一体に回転するようになっている。
【0126】したがって、連結部材63Cが後進状態の
ときには、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63
C,ハブ65を介してサンギヤ62Aと連結して、左輪
回転軸13の回転は、サンギヤ62A,プラネタリギヤ
62B,ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ6
2F,サンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力され
る。そして、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Aの径
よりも小さく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタ
リギヤ62Bの径よりも大きいので、サンギヤ62Gは
サンギヤ62Aよりも高速で回転する。即ち、中空軸1
1は左輪回転軸13よりも高速で回転することになり、
変速機構62は増速機構として機能するようになってい
る。
【0127】また、連結部材63Cが前進状態のときに
は、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63C,ハブ
66を介してサンギヤ62Dと連結して、左輪回転軸1
3の回転は、サンギヤ62D,プラネタリギヤ62E,
ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ62F,サ
ンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力される。そし
て、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Dの径よりも大
きく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタリギヤ6
2Eの径よりも小さいので、サンギヤ62Gはサンギヤ
62Dよりも低速で回転する。即ち、中空軸11は左輪
回転軸13よりも低速で回転することになり、変速機構
62は減速機構として機能するようになっている。
【0128】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装
されており、この多板クラッチ機構12を係合させるこ
とで、デフケース8Aと中空軸11との間で駆動力の授
受が行なわれるようになっている。したがって、例え
ば、連結部材63Cを後進状態とすると、変速機構62
の出力部としての中空軸11は左輪回転軸13よりも高
速で回転して、比較的高速の中空軸11側からデフケー
ス8A側へと駆動力が返送され、この分だけ、左輪回転
軸13側へ配分される駆動力が減少して、逆に、右輪回
転軸14側へ配分される駆動力は、この分だけ増加す
る。
【0129】また、例えば、連結部材63Cを前進状態
とすると、変速機構62の出力部としての中空軸11は
左輪回転軸13よりも低速で回転して、比較的高速のデ
フケース8A側から中空軸11側へと駆動力が返送さ
れ、この分だけ、左輪回転軸13側へ配分される駆動力
が増加して、逆に、右輪回転軸14側へ配分される駆動
力は、この分だけ減少する。
【0130】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構62の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板
クラッチ機構12のクラッチ板12A側(即ち、変速機
構62の出力部側である中空軸11側)の回転速度とク
ラッチ板12B側(即ち、入力軸6A側であるデフケー
ス8A側)の回転速度との大小関係が変わらないよう
に、上記変速比が設定されているのである。
【0131】なお、この変速機構62の変速比(増速
比)も、サンギヤ62A,プラネタリギヤ62B,ピニ
オンシャフト62Cからプラネタリギヤ62F,サンギ
ヤ62Gの各設定ギヤ比、及び、サンギヤ62D,プラ
ネタリギヤ62E,ピニオンシャフト62Cからプラネ
タリギヤ62F,サンギヤ62Gの各設定ギヤ比によっ
て決定する。
【0132】また、変速機構62の変速比(増速比)の
設定条件を、制御可能な最大回転速度比Smax と最大左
右輪速度比αmax とから下式が成り立つように変速比を
設定すると、言い換えることができる。 Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、ハブ65がハブ64と一体回転するように連
結部材63Cを操作して多板クラッチ機構12を係合す
ることで、入力軸6Aからの駆動トルクを右輪側により
多く配分でき、ハブ66がハブ64と一体回転するよう
に連結部材63Cを操作して多板クラッチ機構12を係
合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪側に
より多く配分できるようになっているのである。
【0133】本発明の第8実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1〜7実施例と同様に、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0134】さらに、変速機構62及び多板クラッチ機
構12はそれぞれ1つだけ設ければよいので、スペース
上やコスト上で有利になる。しかも、常に、ハブ65が
ハブ64と一体回転するように連結部材63Cを操作し
て多板クラッチ機構12を係合することで、入力軸6A
からの駆動トルクを右輪側により多く配分でき、ハブ6
6がハブ64と一体回転するように連結部材63Cを操
作して多板クラッチ機構12を係合することで、入力軸
6Aからの駆動トルクを左輪側により多く配分できるの
で、左輪側へのトルク配分増加も右輪側へのトルク配分
増加も常に行なえる。
【0135】したがって、旋回時に外輪側へのトルク移
動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外輪側の駆
動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡により車
両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回時の回頭
性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上させること
ができるのである。なお、この実施例でも、第1実施例
と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、
油圧式や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電
磁式の摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁
流体式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリン
グを用いることもできる。
【0136】次に、第9実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図1に
示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、ここでは
説明を省略する。この実施例では、図15に示すよう
に、第1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力
を入力される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された
駆動力を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14と
が設けられており、回転軸13,14との間に車両用左
右駆動力調整装置が介装されている。
【0137】そして、この車両用左右駆動力調整装置の
駆動力伝達制御機構9Iは、次のような構成により、左
輪回転軸13と右輪回転軸14との差動を許容しなが
ら、左輪回転軸13と右輪回転軸14とに伝達される駆
動力を所要の比率に配分できるようになっている。すな
わち、左輪回転軸13と右輪回転軸14との間に、それ
ぞれ変速機構99と多板クラッチ機構12とが介装され
ており、この変速機構99は、右輪回転軸14の回転速
度を増速して出力することと減速して出力することがで
き、増速して出力する状態(増速出力状態)と減速して
出力する状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構
101が付設されている。このため、変速機構99及び
多板クラッチ機構12はそれぞれ1つだけ設けられてい
る。
【0138】上述の変速機構99は、左輪回転軸13と
これと平行な軸(カウンタシャフト)99Cとの間にそ
れぞれ設けられた3組のギヤ機構で構成されている。す
なわち、カウンタシャフト99Cの側には、小径のギヤ
99Aと大径のギヤ99Bとがそなえられ、左輪回転軸
13には、大径のギヤ14Aと小径のギヤ14Bとがそ
なえられ、ギヤ99Aとギヤ14Aとが噛合し、ギヤ9
9Bとギヤ14Bとが噛合している。ただし、ギヤ99
A,99Bは、カウンタシャフト99Cと切替機構10
1を介して接続され、切替機構101の状態に応じて、
カウンタシャフト99Cに対して相対回転したり、一体
回転しうるようになっている。
【0139】さらに、カウンタシャフト99Cの左輪側
端部には中径のギヤ99Dがそなえられ、左輪回転軸1
3の側には中径のギヤ100Cがそなえられ、これらの
ギヤ99D,100Cが噛合している。そして、ギヤ1
00Cと左輪回転軸13との間に多板クラッチ機構12
が介装されている。また、上述の切替機構101は、電
磁式アクチュエータ(ソレノイド)101Aと、このア
クチュエータ101Aで駆動されるスライドレバー10
1Bと、このスライドレバー101Bで駆動される連結
部材101Cと、カウンタシャフト99Cに設けられた
ハブ67と、ギヤ99Aに結合されたハブ68と、サン
ギヤ99Bに結合されたハブ69とから構成される。な
お、電磁式アクチュエータ101Aは、コントロールユ
ニット18によって作動を制御されるようになってい
る。
【0140】連結部材101Cは、ハブ67とハブ68
とにセレーション結合してこのハブ67とハブ68とを
一体に回転する態位と、ハブ67とハブ69とにセレー
ション結合してこのハブ67とハブ69とを一体に回転
する態位とをとりうるようになっている。つまり、連結
部材101Cが、スライドレバー101Bで後進状態
(図15中、左方に移動した状態)に駆動されると、連
結部材101Cを通じてハブ67とハブ68とが一体に
回転するようになり、スライドレバー101Bで前進状
態(図15中、右方に移動した状態)に駆動されると、
連結部材101Cを通じてハブ67とハブ69とが一体
に回転するようになっている。
【0141】したがって、連結部材101Cが後進状態
のときには、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14A,9
9A,ハブ67,連結部材101C,ハブ68を介して
カウンタシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99
E,100Cを介して多板クラッチ機構12に伝達され
るようになっている。このときには、ギヤ14A,99
A,99E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ
100Cは右輪回転軸14よりも高速で回転する。つま
り、右輪回転軸14の回転は増速されてギヤ100Cに
出力される。
【0142】また、連結部材101Cが前進状態のとき
には、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14B,99B,
ハブ67,連結部材101C,ハブ69を介してカウン
タシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99E,1
00Cを介して多板クラッチ機構12に伝達されるよう
になっている。このときには、ギヤ14B,99B,9
9E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ100
Cは右輪回転軸14よりも低速で回転する。つまり、右
輪回転軸14の回転は減速されてギヤ100Cに出力さ
れる。
【0143】つまり、連結部材101Cが後進状態のと
きに多板クラッチ機構12を係合させると、増速された
ギヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転
軸13の側のクラッチプレートよりも高速回転するの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側にトルクが
伝達される。また、連結部材101Cが前進状態のとき
に多板クラッチ機構12を係合させると、減速されたギ
ヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転軸
13の側のクラッチプレートよりも低速回転するので、
左輪回転軸13側から右輪回転軸14側にトルクが伝達
される。
【0144】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構99の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板
クラッチ機構12のクラッチ板12A側(即ち、変速機
構62の出力部側である中空軸11側)の回転速度とク
ラッチ板12B側(即ち、入力軸6A側であるデフケー
ス8A側)の回転速度との大小関係が変わらないよう
に、上記変速比が設定されているのである。
【0145】なお、この変速機構99の変速比(増速
比)も、ギヤ14A,99A,99D,100Cの各設
定ギヤ比、及び、ギヤ14B,99B,99D,100
Cの各設定ギヤ比によって決定する。また、変速機構9
9の変速比(増速比)の設定条件を、制御可能な最大回
転速度比Smax と最大左右輪速度比αmax とから下式が
成り立つように変速比を設定すると、言い換えることが
できる。
【0146】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、ハブ68がハブ67と一体回転するように連
結部材101を操作して多板クラッチ機構12を係合す
ることで、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪側により
多く配分でき、ハブ69がハブ67と一体回転するよう
に連結部材101を操作して多板クラッチ機構12を係
合することで、入力軸6Aからの駆動トルクを右輪側に
より多く配分できるようになっているのである。
【0147】本発明の第9実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1〜8実施例と同様に、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、所望のトルク配分を得ることができる。さら
に、変速機構99及び多板クラッチ機構12はそれぞれ
1つだけ設ければよいので、スペース上やコスト上で有
利になる。
【0148】しかも、常に、ハブ68がハブ67と一体
回転するように連結部材101を操作して多板クラッチ
機構12を係合することで、入力軸6Aからの駆動トル
クを左輪側により多く配分でき、ハブ69がハブ67と
一体回転するように連結部材101を操作して多板クラ
ッチ機構12を係合することで、入力軸6Aからの駆動
トルクを右輪側により多く配分できるので、左輪側への
トルク配分増加も右輪側へのトルク配分増加も常に行な
える。
【0149】したがって、旋回時に外輪側へのトルク移
動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外輪側の駆
動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡により車
両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回時の回頭
性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上させること
ができるのである。なお、この実施例でも、第1実施例
と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、
油圧式や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電
磁式の摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁
流体式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリン
グを用いることもできる。
【0150】次に、第10実施例について説明すると、
この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車は前輪
駆動車であって、本装置は否駆動輪(エンジン出力を与
えられない車輪)である後輪15,16の側に設けら
れ、その駆動力伝達制御機構90Aは、後輪15,16
の回転軸13,14の間に設けら、第1実施例の駆動力
伝達制御機構9Aを否駆動輪に適用したものである。
【0151】つまり、図16に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、右
輪回転軸14側には変速機構91が設けられ、左輪回転
軸13側には変速機構92が設けられており、変速機構
91の出力部と左輪回転軸13との間には油圧式多板ク
ラッチ機構93が介装され、変速機構92の出力部と左
輪回転軸14と連動して等速回転する中空軸95との間
には第1実施例と同様にコントローラ18で制御される
油圧式多板クラッチ機構94が介装されている。なお、
93A,93B,94A,94Bはクラッチプレートで
ある。
【0152】このうち、変速機構91は、右輪回転軸1
4に一体回転するように取り付けられたサンギヤ91A
と、サンギヤ91Aと噛合するプラネタリギヤ91B
と、このプラネタリギヤ91Bを枢支するプラネタリシ
ャフト91Cに設置されプラネタリギヤ91Bと一体回
転するプラネタリギヤ91Dと、プラネタリギヤ91D
と噛合するサンギヤ93Cとから構成される。
【0153】そして、サンギヤ93Cはサンギヤ91A
よりも大径に設定され、プラネタリギヤ91Dはプラネ
タリギヤ91Bよりも大径に設定され小径に設定されて
いるので、サンギヤ93Cはサンギヤ91Aよりも低速
で回転する。したがって、変速機構91は、右輪回転軸
14の回転を減速してサンギヤ93Cの回転として出力
するようになっている。
【0154】このため、油圧式多板クラッチ機構93が
係合すると、減速されたサンギヤ93C側のクラッチプ
レート93Aよりも左輪回転軸13側のクラッチプレー
ト93Bの方が回転が速いので、左輪回転軸13側から
サンギヤ93C側つまり右輪回転軸14側へ駆動力が伝
達される。この場合、左輪回転軸13及び右輪回転軸1
4は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの駆動力
は供給されないが、左輪回転軸13は路面から受ける回
転反力を右輪回転軸14へ与えることになる。つまり、
左輪回転軸13に連結された左輪15は路面に制動力を
与えこの一方で路面から回転反力を受け、右輪回転軸1
4に連結された右輪16は左輪回転軸13側から受けた
駆動力を路面に与えるようになる。制動力は負の駆動力
と考えられるので、否駆動輪でありながら、左輪回転軸
13と右輪回転軸14との駆動力配分が調整されること
になる。
【0155】また、変速機構92は、左輪回転軸14に
一体回転するように取り付けられたサンギヤ92Aと、
サンギヤ92Aと噛合するプラネタリギヤ92Bと、こ
のプラネタリギヤ92Bを枢支するプラネタリシャフト
92Cに設置されプラネタリギヤ92Bと一体回転する
プラネタリギヤ92Dと、プラネタリギヤ92Dと噛合
するサンギヤ94Cとから構成される。
【0156】そして、サンギヤ94Cはサンギヤ92A
よりも大径に設定され、プラネタリギヤ92Dはプラネ
タリギヤ92Bよりも大径に設定され小径に設定されて
いるので、サンギヤ94Cはサンギヤ92Aよりも低速
で回転する。したがって、変速機構92は、左輪回転軸
13の回転を減速してサンギヤ94Cの回転として出力
するようになっている。
【0157】また、油圧式多板クラッチ機構94の一方
のクラッチプレート94Bの取り付けられる中空軸95
は、これと一体回転するサンギヤ95A,このサンギヤ
95Aと噛合してプラネタリシャフト91Cに取り付け
られたプラネタリギヤ91E,プラネタリシャフト91
C,プラネタリギヤ91B及びサンギヤ91Aを介し
て、右輪回転軸14と連係されている。
【0158】そして、サンギヤ95Aがサンギヤ91A
と同径に設定され、プラネタリギヤ91Eがプラネタリ
ギヤ91Bと同径に設定されているので、中空軸95
は、常に右輪回転軸14と等しい速度で連動するように
なっている。このため、油圧式多板クラッチ機構94が
係合すると、減速されたサンギヤ94C側のクラッチプ
レート94Aよりも中空軸95側(つまり、右輪回転軸
14側)のクラッチプレート94Bの方が回転が速いの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側へ駆動力が
伝達される。
【0159】この場合にも、左輪回転軸13及び右輪回
転軸14は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの
駆動力は供給されないが、右輪回転軸14は路面から受
ける回転反力を左輪回転軸13へ与えることになる。つ
まり、右輪回転軸14に連結された右輪16は路面に制
動力を与えこの一方で路面から回転反力を受け、左輪回
転軸13に連結された左輪15は右輪回転軸14側から
受けた駆動力を路面に与えるようになり、否駆動輪であ
りながら、左輪回転軸13と右輪回転軸14との駆動力
配分が調整されることになる。
【0160】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構91,92の変速比(増速比)が、以下のような条
件を満たすように設定されている。つまり、この車両の
旋回走行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなって
も、多板クラッチ機構93の右輪回転軸14側のクラッ
チ板93Aの回転速度と左輪回転軸13側のクラッチ板
93Bの回転速度との大小関係、及び、多板クラッチ機
構94の左輪回転軸13側のクラッチ板94Aの回転速
度と右輪回転軸14側の中空軸95に取り付けられたク
ラッチ板94Bの回転速度との大小関係が、それぞれ変
化しないように、上記変速比が設定されているのであ
る。
【0161】なお、この変速機構91の変速比(増速
比)も、ギヤ91A,91B,91D,93Cのギヤ比
によって決定し、変速機構92の変速比(増速比)も、
ギヤ92A,92B,92D,94C等のギヤ比によっ
て決定する。また、変速機構91,92の変速比(増速
比)の設定条件を、制御可能な最大回転速度比Smax と
最大左右輪速度比αmax とから下式が成り立つように変
速比を設定すると、言い換えることができる。
【0162】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、多板クラッチ機構94を係合することで、駆
動トルクを右輪側から左輪側に移動でき、多板クラッチ
機構93を係合することで、駆動トルクを左輪側から右
輪側に移動できるようになっているのである。
【0163】本発明の第10実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪でありなが
ら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かかる調
整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させた
り、走行安定性を向上させたりできるようになる。ま
た、この場合、ブレーキ等のエネルギーロスを用いてト
ルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの所要量を
他方に転送することによりトルク配分が調整されるた
め、大きなトルクロスやエネルギロスを招来することな
く、所望のトルク配分を得ることができる。
【0164】しかも、常に、多板クラッチ機構94を係
合することで、駆動トルクを右輪側から左輪側に移動で
き、多板クラッチ機構93を係合することで、駆動トル
クを左輪側から右輪側に移動できるので、右輪側から左
輪側へのトルク移動も左輪側から右輪側へのトルク移動
も常に自由に行なえる。したがって、旋回時に外輪側へ
のトルク移動を自由に行なうことができ、例えば、旋回
外輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均
衡により車両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋
回時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上
させることができるのである。
【0165】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第11実施例について説明す
ると、この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車
も前輪駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪1
5,16の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90
Bは、後輪15,16の回転軸13,14の間に設けら
れており、第5実施例の機構9Eを否駆動輪に適用した
ものである。
【0166】つまり、図17に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの回転軸13,14間には変速機構96が設けら
れ、左輪回転軸13側には、変速機構96の増速出力部
との間に油圧式多板クラッチ機構97が設けられ、変速
機構96の減速出力部との間に油圧式多板クラッチ機構
98が設けられている。
【0167】変速機構96は、右輪回転軸14に設けら
れたギヤ14Aと、回転軸13,14と平行に設置され
た軸(カウンタシャフト)96Bと、このカウンタシャ
フト96Bに設けられてギヤ14Aと噛合するギヤ96
Aと、油圧式多板クラッチ機構97を介して左輪回転軸
13側に設けられたギヤ97Cと、油圧式多板クラッチ
機構98を介して左輪回転軸13側に設けられたギヤ9
8Cと、カウンタシャフト96Bに設けられてギヤ97
Cと噛合するギヤ96Cと、カウンタシャフト96Bに
設けられてギヤ98Cと噛合するギヤ96Dとから構成
される。
【0168】そして、ギヤ97Cはギヤ14Aよりも小
径に、ギヤ98Cはギヤ14Aよりも大径に設定され、
ギヤ96Cはギヤ96Aよりも大径に、ギヤ96Dはギ
ヤ96Aよりも小径に設定されている。したがって、ギ
ヤ97Cは、ギヤ14A,ギヤ96A,ギヤ96C,ギ
ヤ97Cのルートで回転力を伝達されて、ギヤ14Aよ
りも高速で回転し、このギヤ97Cが変速機構96の増
速出力部となっている。また、ギヤ98Cは、ギヤ14
A,ギヤ96A,ギヤ96D,ギヤ98Cのルートで回
転力を伝達されて、ギヤ14Aよりも低速で回転し、こ
のギヤ98Cが変速機構96の減速出力部となってい
る。
【0169】このため、油圧式多板クラッチ機構97が
係合すると、増速されたギヤ97C側のクラッチプレー
ト97Bよりも左輪回転軸13側のクラッチプレート9
7Aの方が回転が遅いので、右輪回転軸14側から左輪
回転軸13側へ駆動力が伝達される。逆に、油圧式多板
クラッチ機構98が係合すると、減速されたギヤ98C
側のクラッチプレート98Bよりも左輪回転軸13側の
クラッチプレート98Aの方が回転が速いので、左輪回
転軸13側から右輪回転軸14側へ駆動力が伝達され
る。
【0170】この場合も、左輪回転軸13及び右輪回転
軸14は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの駆
動力は供給されないが、駆動力を与える側の回転軸13
又は14は路面から受ける回転反力を一方の回転軸14
又は13へ与えることになる。つまり、駆動力を与える
側の回転軸13又は14に連結された車輪15又は16
は路面に制動力を与えこの一方で路面から回転反力を受
け、駆動力を受ける側の回転軸14又は13に連結され
た右輪16又は15はこの回転反力を受けて駆動力とし
て路面に伝えるようになる。
【0171】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構97,98の変速比(増速比)が、以下のような条
件を満たすように設定されている。つまり、この車両の
旋回走行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなって
も、多板クラッチ機構97の左輪回転軸13側のクラッ
チ板97Aの回転速度と右輪回転軸14側(変速機構9
6側)のクラッチ板97Bの回転速度との大小関係、及
び、多板クラッチ機構98の左輪回転軸13側のクラッ
チ板98Aの回転速度と右輪回転軸14側(変速機構9
6側)のクラッチ板98Bの回転速度との大小関係が、
それぞれ変化しないように、上記変速比が設定されてい
るのである。
【0172】なお、この変速機構97の変速比(増速
比)も、ギヤ14A,96A,96C,97Cのギヤ比
によって決定し、変速機構98の変速比(増速比)も、
ギヤ14A,96A,96D,98Cのギヤ比によって
決定する。また、変速機構97,98の変速比(増速
比)の設定条件を、制御可能な最大回転速度比Smax と
最大左右輪速度比αmax とから下式が成り立つように変
速比を設定すると、言い換えることができる。
【0173】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、多板クラッチ機構97を係合することで、駆
動トルクを右輪側から左輪側に移動でき、多板クラッチ
機構98を係合することで、駆動トルクを左輪側から右
輪側に移動できるようになっているのである。
【0174】本発明の第11実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪でありなが
ら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かかる調
整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させた
り、走行安定性を向上させたりできるようになる。ま
た、この場合も、ブレーキ等のエネルギーロスを用いて
トルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの所要量
を他方に転送することによりトルク配分が調整されるた
め、大きなトルクロスやエネルギロスを招来することな
く、所望のトルク配分を得ることができる。
【0175】しかも、常に、多板クラッチ機構97を係
合することで、駆動トルクを右輪側から左輪側に移動で
き、多板クラッチ機構98を係合することで、駆動トル
クを左輪側から右輪側に移動できるので、右輪側から左
輪側へのトルク移動も左輪側から右輪側へのトルク移動
も常に自由に行なえる。したがって、旋回時に外輪側へ
のトルク移動を自由に行なうことができ、例えば、旋回
外輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均
衡により車両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋
回時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上
させることができるのである。
【0176】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第12実施例について説明す
ると、この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車
も前輪駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪1
5,16の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90
Cは、後輪15,16の回転軸13,14の間に設けら
れており、第9実施例の機構9Iを否駆動輪に適用した
ものである。
【0177】つまり、図18に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの左輪回転軸13と右輪回転軸14との間には、変
速機構99と多板クラッチ機構12とが介装されてお
り、この変速機構99は、右輪回転軸14の回転速度を
増速して出力することと減速して出力することができ、
増速して出力する状態(増速出力状態)と減速して出力
する状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構10
1が付設されている。このため、変速機構99及び多板
クラッチ機構12はそれぞれ1つだけ設けられている。
【0178】上述の変速機構99は、左輪回転軸13と
これと平行な軸(カウンタシャフト)99Cとの間にそ
れぞれ設けられた3組のギヤ機構で構成されている。す
なわち、カウンタシャフト99Cの側には、小径のギヤ
99Aと大径のギヤ99Bとがそなえられ、左輪回転軸
13には、大径のギヤ14Aと小径のギヤ14Bとがそ
なえられ、ギヤ99Aとギヤ14Aとが噛合し、ギヤ9
9Bとギヤ14Bとが噛合している。
【0179】ただし、ギヤ99A,99Bは、カウンタ
シャフト99Cと切替機構101を介して接続され、切
替機構101の状態に応じて、カウンタシャフト99C
に対して相対回転したり、一体回転しうるようになって
いる。さらに、カウンタシャフト99Cの側には中径の
ギヤ99Eがそなえられ、左輪回転軸13の側には中径
のギヤ100Cがそなえられ、これらのギヤ99E,1
00Cが噛合している。そして、ギヤ100Cと左輪回
転軸13との間に多板クラッチ機構12が介装されてい
る。
【0180】また、上述の切替機構101は、電磁式ア
クチュエータ(ソレノイド)101Aと、このアクチュ
エータ101Aで駆動されるスライドレバー101B
と、このスライドレバー101Bで駆動される連結部材
101Cと、カウンタシャフト99Cに設けられたハブ
67と、ギヤ99Aに結合されたハブ68と、サンギヤ
99Bに結合されたハブ69とから構成される。なお、
電磁式アクチュエータ101Aは、コントロールユニッ
ト18によって作動を制御されるようになっている。
【0181】連結部材101Cは、ハブ67とハブ68
とにセレーション結合してこのハブ67とハブ68とを
一体に回転する態位と、ハブ67とハブ69とにセレー
ション結合してこのハブ67とハブ69とを一体に回転
する態位とをとりうるようになっている。つまり、連結
部材101Cが、スライドレバー101Bで後進状態
(図18中、左方に移動した状態)に駆動されると、連
結部材101Cを通じてハブ67とハブ68とが一体に
回転するようになり、スライドレバー101Bで前進状
態(図18中、右方に移動した状態)に駆動されると、
連結部材101Cを通じてハブ67とハブ69とが一体
に回転するようになっている。
【0182】したがって、連結部材101Cが後進状態
のときには、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14A,9
9A,ハブ67,連結部材101C,ハブ68を介して
カウンタシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99
E,100Cを介して多板クラッチ機構12に伝達され
るようになっている。このときには、ギヤ14A,99
A,99E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ
100Cは右輪回転軸14よりも高速で回転する。つま
り、右輪回転軸14の回転は増速されてギヤ100Cに
出力される。
【0183】また、連結部材101Cが前進状態のとき
には、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14B,99B,
ハブ67,連結部材101C,ハブ69を介してカウン
タシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99E,1
00Cを介して多板クラッチ機構12に伝達されるよう
になっている。このときには、ギヤ14B,99B,9
9E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ100
Cは右輪回転軸14よりも低速で回転する。つまり、右
輪回転軸14の回転は減速されてギヤ100Cに出力さ
れる。
【0184】つまり、連結部材101Cが後進状態のと
きに多板クラッチ機構12を係合させると、増速された
ギヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転
軸13の側のクラッチプレートよりも高速回転するの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側にトルクが
伝達される。また、連結部材101Cが前進状態のとき
に多板クラッチ機構12を係合させると、減速されたギ
ヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転軸
13の側のクラッチプレートよりも低速回転するので、
左輪回転軸13側から右輪回転軸14側にトルクが伝達
される。
【0185】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構99の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板
クラッチ機構12のクラッチ板12A側(即ち、左輪回
転軸13側である変速機構99側)の回転速度とクラッ
チ板12B側(即ち、左輪回転軸13側)の回転速度と
の大小関係が変わらないように、上記変速比が設定され
ているのである。
【0186】なお、この変速機構99の変速比(増速
比)も、ギヤ14A,99A,99D,100Cの各設
定ギヤ比、及び、ギヤ14B,99B,99D,100
Cの各設定ギヤ比によって決定する。また、変速機構9
9の変速比(増速比)の設定条件を、制御可能な最大回
転速度比Smax と最大左右輪速度比αmax とから下式が
成り立つように変速比を設定すると、言い換えることが
できる。
【0187】Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、ハブ68がハブ67と一体回転するように連
結部材101を操作して多板クラッチ機構12を係合す
ることで、駆動トルクを右輪側から左輪側に移動でき、
ハブ69がハブ67と一体回転するように連結部材10
1を操作して多板クラッチ機構12を係合することで、
駆動トルクを右輪側から左輪側に移動できるようになっ
ているのである。
【0188】本発明の第12実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪でありなが
ら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かかる調
整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させた
り、走行安定性を向上させたりできるようになる。さら
に、変速機構99及び多板クラッチ機構12はそれぞれ
1つだけ設ければよいので、スペース上やコスト上で有
利になる。
【0189】また、この場合も、ブレーキ等のエネルギ
ーロスを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方の
トルクの所要量を他方に転送することによりトルク配分
が調整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを
招来することなく、所望のトルク配分を得ることができ
る。しかも、常に、ハブ68がハブ67と一体回転する
ように連結部材101を操作して多板クラッチ機構12
を係合することで、駆動トルクを右輪側から左輪側に移
動でき、ハブ69がハブ67と一体回転するように連結
部材101を操作して多板クラッチ機構12を係合する
ことで、駆動トルクを右輪側から左輪側に移動できるの
で、右輪側から左輪側へのトルク移動も左輪側から右輪
側へのトルク移動も常に自由に行なえる。
【0190】したがって、旋回時に外輪側へのトルク移
動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外輪側の駆
動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡により車
両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回時の回頭
性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上させること
ができるのである。なお、この実施例でも、第1実施例
と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、
油圧式や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電
磁式の摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁
流体式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリン
グを用いることもできる。
【0191】次に、第13実施例について説明すると、
この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車も前輪
駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪15,1
6の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90Dは、
後輪15,16の回転軸13,14の間に設けられてお
り、第8実施例の機構9Hを否駆動輪に適用したもので
ある。
【0192】つまり、図19に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの左輪回転軸13と右輪回転軸14との間には、変
速機構62と多板クラッチ機構12とが介装されてい
る。この変速機構62は、回転速度を増速して出力部で
出力することと減速して出力することができ、増速して
出力する状態(増速出力状態)と減速して出力する状態
(減速出力状態)とを切り替える切替機構63が付設さ
れている。このため、変速機構62及び多板クラッチ機
構12は一方の出力軸側(ここでは、左輪回転軸13の
側)にそれぞれ1つだけ設けられている。
【0193】上述の変速機構62は、互いに直列に結合
された3組のプラネタリギヤ機構で構成されている。す
なわち、左輪回転軸13の側には、大径のサンギヤ62
Aと小径のサンギヤ62Dとがそなえられ、これらのサ
ンギヤ62A,62Dは、それぞれその外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)62B,62Eに
噛合している。
【0194】これらのプラネタリギヤ62B,62Eは
共通のキャリヤ(固定部)に軸支されたピニオンシャフ
ト62Cに一体回転するように装備されており、サンギ
ヤ62A,62Dの径の関係とは逆に、プラネタリギヤ
62Bは、プラネタリギヤ62Eよりも小径に設定され
ている。さらに、このピニオンシャフト62Cには、も
う1つのプラネタリギヤ62Fが一体回転するように装
備され、このプラネタリギヤ62Fに、中空軸11に固
着されているもう1つのサンギヤ62Gが噛合してい
る。なお、サンギヤ62Gの径はサンギヤ62Aの径よ
りも小さく且つサンギヤ62Dの径よりも大きく設定さ
れ、プラネタリギヤ62Fの径はプラネタリギヤ62B
の径よりも大きくプラネタリギヤ62Eの径よりも小さ
く設定されている。
【0195】そして、サンギヤ62A,62Dと左輪回
転軸13との間に、切替機構63が設けられている。こ
の切替機構63は、電磁式アクチュエータ(ソレノイ
ド)63Aと、このアクチュエータ63Aで駆動される
スライドレバー63Bと、このスライドレバー63Bで
駆動される連結部材63Cと、左輪回転軸13に設けら
れたハブ64と、サンギヤ62Aの内周に設けられたハ
ブ65と、サンギヤ62Dの内周に設けられたハブ66
とから構成される。なお、電磁式アクチュエータ63A
は、コントロールユニット18によって作動を制御され
るようになっている。
【0196】連結部材63Cは、その内周でハブ64と
セレーション結合してこのハブ64と常時一体に回転す
るようになっており、連結部材63Cの軸方向位置に対
応して、その内周でハブ65又はハブ66とセレーショ
ン結合して一体に回転しうるようになっている。つま
り、連結部材63Cが、スライドレバー63Bで後進状
態(図17中、左方に移動した状態)に駆動されると、
その外周がハブ65とセレーション結合してこのハブ6
5と一体に回転し、スライドレバー63Bで前進状態
(図17中、右方に移動した状態)に駆動されると、そ
の外周がハブ66とセレーション結合してこのハブ66
と一体に回転するようになっている。
【0197】したがって、連結部材63Cが後進状態の
ときには、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63
C,ハブ65を介してサンギヤ62Aと連結して、左輪
回転軸13の回転は、サンギヤ62A,プラネタリギヤ
62B,ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ6
2F,サンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力され
る。そして、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Aの径
よりも小さく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタ
リギヤ62Bの径よりも大きいので、サンギヤ62Gは
サンギヤ62Aよりも高速で回転する。即ち、中空軸1
1は左輪回転軸13よりも高速で回転することになり、
変速機構62は増速機構として機能するようになってい
る。
【0198】また、連結部材63Cが前進状態のときに
は、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63C,ハブ
66を介してサンギヤ62Dと連結して、左輪回転軸1
3の回転は、サンギヤ62D,プラネタリギヤ62E,
ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ62F,サ
ンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力される。そし
て、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Dの径よりも大
きく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタリギヤ6
2Eの径よりも小さいので、サンギヤ62Gはサンギヤ
62Dよりも低速で回転する。即ち、中空軸11は左輪
回転軸13よりも低速で回転することになり、変速機構
62は減速機構として機能するようになっている。
【0199】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装
されており、この多板クラッチ機構12を係合させるこ
とで、デフケース8Aと中空軸11との間で駆動力の授
受が行なわれるようになっている。したがって、例え
ば、連結部材63Cを後進状態とすると、変速機構62
の出力部としての中空軸11は左輪回転軸13よりも高
速で回転して、比較的高速の中空軸11側からデフケー
ス8A側へと駆動力が返送され、この分だけ、左輪回転
軸13側へ配分される駆動力が減少して、逆に、右輪回
転軸14側へ配分される駆動力は、この分だけ増加す
る。
【0200】また、例えば、連結部材63Cを前進状態
とすると、変速機構62の出力部としての中空軸11は
左輪回転軸13よりも低速で回転して、比較的高速のデ
フケース8A側から中空軸11側へと駆動力が返送さ
れ、この分だけ、左輪回転軸13側へ配分される駆動力
が増加して、逆に、右輪回転軸14側へ配分される駆動
力は、この分だけ減少する。
【0201】さらに、この装置でも、特に、上述の変速
機構62の変速比(増速比)が、以下のような条件を満
たすように設定されている。つまり、この車両の旋回走
行時に左右輪の回転速度比が最も大きくなっても、多板
クラッチ機構12のクラッチ板12A側(即ち、左輪回
転軸13である変速機構62側)の回転速度とクラッチ
板12B側(即ち、右輪回転軸14)の回転速度との大
小関係が変わらないように上記変速比が設定されている
のである。
【0202】なお、この変速機構62の変速比(増速
比)も、サンギヤ62A,プラネタリギヤ62B,ピニ
オンシャフト62Cからプラネタリギヤ62F,サンギ
ヤ62Gの各設定ギヤ比、及び、サンギヤ62D,プラ
ネタリギヤ62E,ピニオンシャフト62Cからプラネ
タリギヤ62F,サンギヤ62Gの各設定ギヤ比によっ
て決定する。
【0203】また、変速機構62の変速比(増速比)の
設定条件を、制御可能な最大回転速度比Smax と最大左
右輪速度比αmax とから下式が成り立つように変速比を
設定すると、言い換えることができる。 Smax >αmax このような設定により、この実施例の場合には、車両の
旋回時に左右輪にいかに大きな回転速度差が発生して
も、常に、ハブ65がハブ64と一体回転するように連
結部材63Cを操作して多板クラッチ機構12を係合す
ることで、駆動トルクを左輪側から右輪側に移動でき、
ハブ66がハブ64と一体回転するように連結部材63
Cを操作して多板クラッチ機構12を係合することで、
駆動トルクを右輪側から左輪側に移動できるようになっ
ているのである。
【0204】本発明の第13実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪でありなが
ら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かかる調
整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させた
り、走行安定性を向上させたりできるようになる。さら
に、変速機構62及び多板クラッチ機構12はそれぞれ
1つだけ設ければよいので、スペース上やコスト上で有
利になる。
【0205】また、この場合も、ブレーキ等のエネルギ
ーロスを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方の
トルクの所要量を他方に転送することによりトルク配分
が調整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを
招来することなく、所望のトルク配分を得ることができ
る。しかも、常に、ハブ65がハブ64と一体回転する
ように連結部材63Cを操作して多板クラッチ機構12
を係合することで、駆動トルクを左輪側から右輪側に移
動でき、ハブ66がハブ64と一体回転するように連結
部材63Cを操作して多板クラッチ機構12を係合する
ことで、駆動トルクを右輪側から左輪側に移動できるの
で、右輪側から左輪側へのトルク移動も左輪側から右輪
側へのトルク移動も常に自由に行なえる。
【0206】したがって、旋回時に外輪側へのトルク移
動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外輪側の駆
動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡により車
両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回時の回頭
性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上させること
ができるのである。なお、この実施例でも、第1実施例
と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、
多板クラッチ機構の他に、摩擦クラッチやVCUやHC
U等の他のカップリングを用いることもでき、これらの
駆動系も、油圧駆動の他に、電磁力駆動等を用いること
も考えられる。
【0207】なお、上述の各実施例では、車両用左右駆
動力調整装置を後輪に装備しているが、かかる左右駆動
力調整装置は勿論前輪にも適用できる。特に、上述の第
1〜9実施例では、車両用左右駆動力調整装置を四輪駆
動車の後輪の駆動系に装備しているが、かかる左右駆動
力調整装置を四輪駆動車の前輪の駆動系や、後輪駆動車
の後輪の駆動系や、前輪駆動車の前輪の駆動系等に適用
できる。また、上述の第10〜13実施例では、車両用
左右駆動力調整装置を前輪駆動車の否駆動輪である後輪
に装備しているが、かかる左右駆動力調整装置を後輪駆
動車の否駆動輪である前輪にも適用できる。
【0208】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1にかかる
本発明の車両用左右駆動力調整装置によれば、車両にお
ける左輪回転軸と右輪回転軸との間に、上記の左右の各
回転軸間で駆動力を授受することで上記の左右輪の駆動
力を調整しうる駆動力伝達制御機構をそなえ、上記駆動
力伝達制御機構が、上記の左右の各回転軸のうちの一方
の回転軸側に連結されてこの一方の回転軸側の回転速度
を一定の変速比で変速して出力しうる変速機構と、上記
の左右の各回転軸のうちの他方の回転軸側と上記変速機
構の出力部側との間に介装されて係合時に上記の左右の
各回転軸間で駆動力の伝達を行ないうる伝達容量可変制
御式トルク伝達機構とから構成され、上記車両の旋回走
行時に上記の左右輪の回転速度比が最も大きくなって
も、上記の変速機構の出力部側の回転速度と上記の他方
の回転軸側の回転速度との大小関係が変わらないよう
に、上記変速比が設定されるという構成により、ブレー
キ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整するの
でなく、一方のトルクの所要量を他方に転送することに
よりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロスや
エネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分を
得ることができ、しかも、車両の旋回中に内外輪が大き
く生じても、駆動トルクを所望の方向へ常に移動できる
ので、旋回時に外輪側へのトルク移動を自由に行なうこ
とができ、例えば、旋回外輪側の駆動力配分を大きくし
て左右輪間の駆動力不均衡により車両に旋回方向へのモ
ーメントを生じさせて旋回時の回頭性を向上させるな
ど、車両の旋回性能を向上させることができる。
【0209】また、上記の左輪回転軸及び右輪回転軸が
共にエンジン出力を与えられて回転する駆動輪に適用で
きるほか、エンジン出力を与えられない否駆動輪である
場合にも適用できる。この場合、否駆動輪でありなが
ら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かかる調
整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させた
り、走行安定性を向上させたりできるようになる。
【0210】また、請求項3にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置によれば、車両における左輪回転軸と
右輪回転軸との間に、エンジンからの駆動力を入力され
る入力部と、上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ
上記の入力部から入力された駆動力を上記の左右の各回
転軸に伝達する差動機構と、上記の駆動力の伝達状態を
制御して上記の左右輪への駆動力配分を調整しうる駆動
力伝達制御機構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構
が、上記回転軸側に連結されてこの回転軸側の回転速度
を一定の変速比で変速して出力しうる変速機構と、上記
の変速機構の出力部側と上記入力部側との間に介装され
て係合時に上記回転軸側と上記入力部側との間で駆動力
の伝達を行ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構
とから構成され、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪
の回転速度比が最も大きくなっても、上記の変速機構の
出力部側の回転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度
との大小関係が変わらないように、上記変速比が設定さ
れるという構成により、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、エンジンからのトルクを所望の状態に配分す
ることができ、しかも、車両の旋回中に内外輪が大きく
生じても、駆動トルクを所望の方向へ常に移動できるの
で、旋回時に外輪側へのトルク移動を自由に行なうこと
ができ、例えば、旋回外輪側の駆動力配分を大きくして
左右輪間の駆動力不均衡により車両に旋回方向へのモー
メントを生じさせて旋回時の回頭性を向上させるなど、
車両の旋回性能を向上させることができる。
【0211】また、請求項4にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置によれば、車両における左輪回転軸と
右輪回転軸との間に、エンジンからの駆動力を入力され
る入力部と、上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ
上記の入力部から入力された駆動力を上記の左右の各回
転軸に伝達する差動機構と、上記の駆動力の伝達状態を
制御して上記の左右輪への駆動力配分を調整しうる駆動
力伝達制御機構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構
が、上記の入力部側に連結されて該入力部側の回転速度
を一定の変速比で変速して出力しうる変速機構と、上記
の変速機構の出力部側と上記回転軸側との間に介装され
て係合時に上記回転軸側と上記入力部側との間で駆動力
の伝達を行ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構
とから構成され、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪
の回転速度比が最も大きくなっても、上記の変速機構の
出力部側の回転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度
との大小関係が変わらないように、上記変速比が設定さ
れるという構成により、ブレーキ等のエネルギーロスを
用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの
所要量を他方に転送することによりトルク配分が調整さ
れるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、エンジンからのトルクを所望の状態に配分す
ることができ、しかも、車両の旋回中に内外輪が大きく
生じても、駆動トルクを所望の方向へ常に移動できるの
で、旋回時に外輪側へのトルク移動を自由に行なうこと
ができ、例えば、旋回外輪側の駆動力配分を大きくして
左右輪間の駆動力不均衡により車両に旋回方向へのモー
メントを生じさせて旋回時の回頭性を向上させるなど、
車両の旋回性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成
図である。
【図2】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図3】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達を説明する速度線図である。
【図4】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達の一例を説明する速度線図であ
る。
【図5】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成
図である。
【図6】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図7】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達を説明する速度線図である。
【図8】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達の一例を説明する速度線図であ
る。
【図9】本発明の第3実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図10】本発明の第4実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図11】本発明の第5実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図12】本発明の第6実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図13】本発明の第7実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図14】本発明の第8実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図15】本発明の第9実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図16】本発明の第10実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図17】本発明の第11実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図18】本発明の第12実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図19】本発明の第13実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図20】車両の旋回時の内外輪差を説明する模式図で
ある。
【図21】本発明の案出過程で考えられた車両用左右駆
動力調整装置の課題を説明する速度線図である。
【符号の説明】
1 エンジン 2 トランスミッション 3 センタデフ 4 フロントデフ 5 センタデフ差動制限機構 6 プロペラシャフト 6A 入力軸 7 ベベルギヤ機構 8 リヤデフ 8A デファレンシャルケース(デフケース) 9,9A〜9I 駆動力伝達制御機構 10 変速機構 10A 第1のサンギヤ 10B 第1のプラネタリギヤ(プラネタリピニオン) 10D 第2のプラネタリギヤ 10C ピニオンシャフト 10F プラネタリキャリア 10E 第2のサンギヤ 11 駆動力伝達補助部材としての中空軸 12 伝達容量可変制御式トルク伝達機構としての多板
クラッチ機構 12A,12B クラッチ板 13 左輪回転軸 14 右輪回転軸 14A,14B ギヤ 15 左後輪 16 右後輪 17 クラッチ油圧制御バルブ 18 コントロールユニット 19 車輪速センサ 20 ハンドル角センサ 21 ヨーレイトセンサ 22 加速度センサ(又は加速度演算手段) 23 アキュムレータ 24 電動ポンプ 25 左前輪 26 右前輪 30,31,32 変速機構 30A,31A,32A 第1のサンギヤ 30B,31B,32B 第1のプラネタリギヤ(プラ
ネタリピニオン) 30D,31D,32D 第2のプラネタリギヤ 30C,31C,32C ピニオンシャフト 30F,31F,32F プラネタリキャリア 30E,31E,32E 第2のサンギヤ 41 駆動力伝達補助部材 42 伝達容量可変制御式トルク伝達機構としての多板
クラッチ機構 42A,42B クラッチ板 51 軸(カウンタシャフト) 52〜56,59 歯車 57,58 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構 60 変速機構 60A サンギヤ 60B プラネタリギヤ(プラネタリピニオン) 60C ピニオンシャフト 60D リングギヤ 61 摩擦クラッチ等のカップリング 62 変速機構 62A,62D サンギヤ 62B,62E,62F プラネタリギヤ(プラネタリ
ピニオン) 62C ピニオンシャフト 63 切替機構 63A 電磁式アクチュエータ(ソレノイド) 63B スライドレバー 63C 連結部材 64,65,66,67,68,69 ハブ 90A〜90D 駆動力伝達制御機構 91,92 変速機構 91A,92A ササンギヤ 91B,92B プラネタリギヤ 91C,92C プラネタリシャフト 91D,92D プラネタリギヤ 93,94 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構 93A,93B,94A,94B クラッチプレート 93C,94C サンギヤ 95 中空軸 96 変速機構 96A,96C,96D,97C,98C ギヤ 96B 軸(カウンタシャフト) 97,98 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構 97A,97B,98A,98B クラッチプレート 99 変速機構 99C 軸(カウンタシャフト) 99A,99B,99D ギヤ 100C ギヤ 101 切替機構 101A 電磁式アクチュエータ(ソレノイド) 101B スライドレバー 101C 連結部材

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両における左輪回転軸と右輪回転軸と
    の間に、上記の左右の各回転軸間で駆動力を授受するこ
    とで上記の左右輪の駆動力を調整しうる駆動力伝達制御
    機構をそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記の左右
    の各回転軸のうちの一方の回転軸側に連結されてこの一
    方の回転軸側の回転速度を一定の変速比で変速して出力
    しうる変速機構と、上記の左右の各回転軸のうちの他方
    の回転軸側と上記変速機構の出力部側との間に介装され
    て係合時に上記の左右の各回転軸間で駆動力の伝達を行
    ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構とから構成
    され、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪の回転速度
    比が最も大きくなっても、上記の変速機構の出力部側の
    回転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度との大小関
    係が変わらないように、上記変速比が設定されているこ
    とを特徴とする、車両用左右駆動力調整装置。
  2. 【請求項2】 上記の左輪回転軸及び右輪回転軸が共に
    エンジン出力を与えられて回転する駆動輪であることを
    特徴とする、請求項1に記載された、車両用左右駆動力
    調整装置。
  3. 【請求項3】 車両における左輪回転軸と右輪回転軸と
    の間に、エンジンからの駆動力を入力される入力部と、
    上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ上記の入力部
    から入力された駆動力を上記の左右の各回転軸に伝達す
    る差動機構と、上記の駆動力の伝達状態を制御して上記
    の左右輪への駆動力配分を調整しうる駆動力伝達制御機
    構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記回転軸
    側に連結されてこの回転軸側の回転速度を一定の変速比
    で変速して出力しうる変速機構と、上記の変速機構の出
    力部側と上記入力部側との間に介装されて係合時に上記
    回転軸側と上記入力部側との間で駆動力の伝達を行ない
    うる伝達容量可変制御式トルク伝達機構とから構成さ
    れ、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪の回転速度比
    が最も大きくなっても、上記の変速機構の出力部側の回
    転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度との大小関係
    が変わらないように、上記変速比が設定されていること
    を特徴とする、車両用左右駆動力調整装置。
  4. 【請求項4】 車両における左輪回転軸と右輪回転軸と
    の間に、エンジンからの駆動力を入力される入力部と、
    上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ上記の入力部
    から入力された駆動力を上記の左右の各回転軸に伝達す
    る差動機構と、上記の駆動力の伝達状態を制御して上記
    の左右輪への駆動力配分を調整しうる駆動力伝達制御機
    構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記の入力
    部側に連結されて該入力部側の回転速度を一定の変速比
    で変速して出力しうる変速機構と、上記の変速機構の出
    力部側と上記回転軸側との間に介装されて係合時に上記
    回転軸側と上記入力部側との間で駆動力の伝達を行ない
    うる伝達容量可変制御式トルク伝達機構とから構成さ
    れ、上記車両の旋回走行時に上記の左右輪の回転速度比
    が最も大きくなっても、上記の変速機構の出力部側の回
    転速度と上記の他方の回転軸側の回転速度との大小関係
    が変わらないように、上記変速比が設定されていること
    を特徴とする、車両用左右駆動力調整装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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