JP2861700B2 - 車両用左右駆動力調整装置 - Google Patents

車両用左右駆動力調整装置

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JP2861700B2
JP2861700B2 JP2302893A JP2302893A JP2861700B2 JP 2861700 B2 JP2861700 B2 JP 2861700B2 JP 2302893 A JP2302893 A JP 2302893A JP 2302893 A JP2302893 A JP 2302893A JP 2861700 B2 JP2861700 B2 JP 2861700B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、四輪駆動式又は二輪駆
動式の自動車における左右の駆動輪への駆動力配分、又
は、二輪駆動式の自動車における左右の否駆動輪(駆動
輪ではない車輪)間での動力の授受による駆動力配分に
用いて好適の、車両用左右駆動力調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、四輪駆動式自動車(以下、四輪駆
動車という)の開発が盛んに行なわれているが、前後輪
間のトルク配分(駆動力配分)を積極的に調整できるよ
うにした、フルタイム四輪駆動方式の自動車の開発も種
々行なわれている。一方、自動車において、左右輪に伝
達されるトルク配分機構を広義にとらえると従来のノー
マルディファレンシャル装置や電子制御式を含むLSD
(リミテッドスリップデフ)が考えられるが、これらは
トルク配分を積極的に調整するものでなく、左右輪のト
ルクを自由自在に配分できるものではない。
【0003】そこで、図23及び図24に示すような装
置が提案されている。図23は、電磁駆動式差動制限機
構付きのリヤディファレンシャル(リヤデフ)122を
示す断面図であり、図示するように、入力軸401がプ
ロペラシャフト120の後端に結合されており、入力軸
401によりドライブピニオンギヤ402が一体回転す
るように支持されている。また、入力軸401は、軸受
412を介してケース413の前部内に回転自在に支持
されている。
【0004】ドライブピニオンギヤ402には、クラウ
ン歯車403が噛合しており、このクラウン歯車403
には、ボルト431によって動力伝達用環状部材404
および第1のハウジング405が一体に結合されてい
る。リヤデフ22は、遊星歯車機構を用いた遊星歯車式
ディファレンシャルであって、動力伝達用環状部材40
4およびこの内部に形成され、環状部材404の内周面
に形成されたリングギヤ407と、左側輪の車軸とスプ
ライン結合するサンギヤ408と、右側輪の車軸とスプ
ライン結合するキャリヤ409と、このキャリヤ409
に軸410a,410bを介して取り付けられたプラネ
タリギヤ411a,411bとから構成されている。
【0005】したがって、入力軸401から入った回転
トルクは、ドライブピニオンギヤ402,クラウン歯車
403を経て、環状部材404のリングギヤ407か
ら、プラネタリギヤ411a,411b及びキャリヤ4
09を介して右側輪車軸へ伝達されると共に、プラネタ
リギヤ411a,411b及びサンギヤ408を介して
左側輪車軸へ伝達されるようになっている。
【0006】また、キャリヤ409の右側には、第2の
ハウジング406が設けられており、この第2のハウジ
ング406はベアリング428を介して環状支持部材4
18に支持されている。そして、このリヤデフ122に
は、差動制限装置123が設けられており、この差動制
限装置123は、差動制限機構としての多板クラッチ4
14と、この多板クラッチを駆動する駆動装置417
と、この駆動装置417を制御するコントローラのリヤ
デフ制御部48aとから構成されている。
【0007】つまり、多板クラッチ414は、環状部材
404の内部に設けられており、一方のクラッチディス
ク414aを支持するホルダ部415aは軸410a,
410bを介してキャリヤ409に結合されて、クラッ
チディスク414aがキャリヤ409と一体回転するよ
うになっており、他方のクラッチディスク414bを支
持するホルダ部415bはサンギヤ408の設けられた
中空シャフト416に形成されて、クラッチディスク4
14bがサンギヤ408と一体回転するようになってい
る。
【0008】さらに、駆動装置417は、キャリヤ40
9と第2のハウジング406との間に介設された力方向
変換機構429と、この力方向変換機構429を駆動す
る電磁式クラッチ機構430とからなっている。この電
磁式クラッチ機構430は、環状部材423と第2のハ
ウジング406側の部材426との間に介装されたクラ
ッチ427と、磁石419と差動制限機構制御手段とし
てのソレノイド(EMCDコイル)420とからなる電
磁式クラッチ駆動系とからなっている。
【0009】リヤデフ制御部48Aは、各センサ(車輪
速センサ,操舵角センサ,横加速度センサ,前後加速度
センサ,スロットルポジションセンサ,エンジン回転数
センサ,トランスミッション回転数センサ,シフトポジ
ションセンサ等)48Bからの検出情報に基づいて、多
板クラッチ414のクラッチトルクを設定し、目標のク
ラッチトルクを得られるように駆動装置417の電磁式
クラッチ機構430への供給電流を制御するようになっ
ている。
【0010】また、図24は、他の差動制限機構付きの
リヤデフ122′を示す断面図であり、図23と同符号
はほぼ同様なものを示しており、このリヤデフ122′
の差動制限機構123′は、多板クラッチ414と、こ
の多板クラッチを駆動する駆動装置417′と、この駆
動装置417′を制御するコントローラのリヤデフ制御
部48aとから構成されている。なお、このリヤデフ1
22′は入力ピニオン122A′と左右の従動ベベルギ
ヤ122B′,122C′とからなるベベルギヤ式のも
のである。
【0011】この駆動装置417′は、空気圧を利用し
たもので、ポンタ417Bを接続された空気圧回路41
7Aがリヤデフ制御部48aで制御されて、空気供給路
417Cを通じてエアピストン417Dが駆動され、多
板クラッチ414の係合圧が調整されるようになってい
る。リヤデフ制御部48Aは、各センサ48Bからの検
出情報に基づいて、多板クラッチ414のクラッチトル
クを設定し、目標のクラッチトルクを得られるように駆
動装置417′の空気圧回路417Aを制御するように
なっている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
車両用左右駆動力調整装置としては、大きなトルクロス
やエネルギロスを招来することなく、トルク配分を行な
え、且つ、小型化できるものが望ましい。そこで、さら
に、このような左右の各回転軸間で駆動力を授受するこ
とで左右輪の駆動力を調整しうる駆動力伝達制御装置と
して、上記の左右の各回転軸のうちの一方の回転軸側の
回転速度を一定の変速比で増速又は減速して出力して、
この出力部分と上記の左右の各回転軸のうちの他方の回
転軸側とを係合することで、高速回転側から低速回転側
へと駆動トルクを伝達するような構成が考えられる。
【0013】例えば左右の各回転軸のうちの一方の回転
軸側の回転速度を一定の変速比で増速して出力すると、
左右輪の回転速度差の小さい通常走行時には、この出力
部分が他方の回転軸側の回転速度よりも高速回転するの
で、この出力部分と他方の回転軸とを係合することで、
高速回転側の出力部分側(即ち、一方の回転軸側)から
低速回転側の他方の回転軸側へと、駆動トルクが伝達さ
れる。このようなトルク伝達機構を左右に設ければ、左
輪側から右輪側への駆動トルクの伝達も、右輪側から左
輪側への駆動トルクの伝達も自在に行なえる。
【0014】また、例えば左右の各回転軸のうちの一方
の回転軸側の回転速度を一定の変速比で減速して出力す
ると、左右輪の回転速度差の小さい通常走行時には、こ
の出力部分が他方の回転軸側の回転速度よりも低速回転
するので、この出力部分と他方の回転軸とを係合するこ
とで、高速回転側の他方の回転軸側から低速回転側の出
力部分側(即ち、一方の回転軸側)へと、駆動トルクが
伝達される。この場合も、このようなトルク伝達機構を
左右に設ければ、左輪側から右輪側への駆動トルクの伝
達も、右輪側から左輪側への駆動トルクの伝達も自在に
行なえる。
【0015】しかしながら、車両の旋回時には、内輪と
外輪とで必然的に回転速度差が生じ、外輪側は高速にな
るので、旋回時の内外輪の回転速度比が大きいと、例え
ば、内輪の回転軸側の回転速度を増速して出力しても、
この出力部分の回転速度が外輪の回転軸側の回転速度よ
りも高速回転するとは限らず、左右の各トルク伝達機構
とも、該輪側から内輪側への駆動トルクの伝達は行なえ
るが、内輪側から外輪側への駆動トルクの伝達が行なえ
ないことがある。
【0016】つまり、図21に示すように、車両が回転
中心Cの回りに旋回(この例では、右旋回)する場合を
考える。ここで、車両の左輪Wlと右輪Wrとの距離
(トレッド)をLt、旋回半径をR、旋回外輪速をV
o、旋回内輪速をVi、ホイールベースをL、実舵角を
δ、スタビリティファクタをAとすると、旋回内外輪の
軌道半径差による車輪速度の差ΔVhrは、車体スリッ
プ角βが十分に小さければ、cos β≒1,sin β≒βy
より、 ΔVhr=Vo−Vi=(Lt/R)・V ただし、R=(1+A・V2 )L/δ となって、左右輪で回転速度差が生じる。
【0017】さらに、具体例で示すと、例えば図22
は、デファレンシャルのケース(デフケース)DCに入
力されたエンジンからの駆動入力Tiを、デファレンシ
ャル機構を介して左輪側回転軸側S1lと右輪側回転軸
側S1rとに配分する部分に、上述の車両用左右駆動力
調整装置を設けた車両の、旋回時における各部の速度線
図である。
【0018】つまり、左輪側では、回転軸側S1lに一
定の変速比で増速して部材(出力部分)S2lに出力
し、この部材S2lとデフケースDCとの間に互いの係
合状態を調整するカップリングTc2が設けられてい
る。また、右輪側では、回転軸側S1rに一定の変速比
で増速して部材(出力部分)S2rに出力し、この部材
S2rとデフケースDCとの間に互いの係合状態を調整
するカップリングTc1が設けられている。
【0019】いま、左旋回しているとすると、左輪側が
内輪となり右輪側が外輪となり、旋回半径が小さいと、
図22に示すように、左輪側回転軸側S1lと右輪側回
転軸側S1rとの回転速度が大きく異なる場合が生じ
て、本来(左右輪の回転速度差が大きくないとき)は、
左輪側の出力部分S2lの回転速度の方がデフケースD
Cの回転速度よりも大きいところが、逆に、左輪側の出
力部分S2lの回転速度の方がデフケースDCの回転速
度よりも小さい場合が生じている。
【0020】このような場合には、例えば旋回開始時の
回頭性を向上すべく、旋回外輪である右輪側の駆動力配
分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡により車両に旋
回方向へのモーメントを生じさせることができないばか
りか、駆動力の移動(伝達)が本来の方向とは逆方向へ
行なわれることになり、要求される旋回方向へのモーメ
ントとは逆方向へモーメントが発生してしまい制御する
ことが却って走行性能を低下させるおそれがある。
【0021】そこで、変速比(増速比、又は減速比の逆
数)を十分に大きくとることで、常に、所定の方向にト
ルク移動を行なえるようにすることも考えられるが、増
速比を大きくすると、トルク伝達ロスや、エネルギロス
が増大するので、燃費の悪化や、多板クラッチ等の装置
の構成要素の発熱量の増加による耐久性の低下などの不
具合が生じる。
【0022】一方、車両の旋回時には、左右の各トルク
伝達機構とも、外輪側から内輪側への駆動トルクの伝達
は行なえるが、この場合、トルクロスの少ないように駆
動力制御を行ないたい。本発明は、このような課題に鑑
み創案されたもので、大きなトルクロスやエネルギロス
や装置の耐久性の低下などを招来することなく、また、
走行状態によって適切でない制御状態を招来しないよう
にしながら、効率よく左右輪間のトルク配分を行なえる
ようにした、車両用左右駆動力調整装置を提供すること
を目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1にか
かる本発明の車両用左右駆動力調整装置は、左輪及び右
輪と、上記左輪の回転速度を変速して上記右輪に選択的
に伝達する第1トルク伝達機構と、上記右輪の回転速度
を変速して上記左輪に選択的に伝達する第2トルク伝達
機構と、をそなえ、上記第1トルク伝達機構は第1クラ
ッチを有し、上記第2トルク伝達機構は第2クラッチを
有し、上記第1クラッチの係合力に応じて上記の左輪及
び右輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記の左輪及
び右輪のうちの他方へ伝達され、上記第2クラッチの係
合力に応じて上記の右輪及び左輪のうちの一方の駆動ト
ルクの一部が上記の右輪及び左輪のうちの他方へ伝達さ
れるように構成された車両用左右駆動力調整装置であっ
て、トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向か
う方向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを
設定するトルク伝達方向設定手段と、上記の左輪と右輪
との回転速度の比である左右輪回転速度比を検出する回
転速度比検出手段と、上記第1クラッチの入力と出力と
の各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速度比であ
る第1境界回転速度比を設定する第1境界回転速度比設
定手段と、上記第2クラッチの入力と出力との各回転速
度が一致する時の上記左右輪回転速度比である第2境界
回転速度比を設定する第2境界回転速度比設定手段と、
を有し、上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪
回転速度比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界
回転速度比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越
えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるク
ラッチを係合させることで上記トルク伝達方向設定手段
により設定されたトルク伝達方向と逆方向にトルク伝達
がなされる場合には、上記一方の境界回転速度比にかか
るクラッチの係合を禁止し、上記左右輪回転速度比の増
加に伴い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転
速度比及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の
境界回転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回
転速度比にかかるクラッチを係合させることで上記トル
ク伝達方向設定手段により設定されたトルク伝達方向と
同方向にトルク伝達がなされる場合には、上記一方の境
界回転速度比にかかるクラッチの係合を可能とすること
を特徴としている。
【0024】た、請求項にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置は、エンジンからの駆動力が伝達され
る入力部と、左輪及び右輪と、上記入力部の駆動力を上
記の左輪及び右輪に分配する差動装置と、上記左輪の回
転速度を変速して上記入力部に選択的に伝達する第1ト
ルク伝達機構と、上記右輪の回転速度を変速して上記入
力部に選択的に伝達する第2トルク伝達機構と、をそな
え、上記第1トルク伝達機構は第1クラッチを有し、上
記第2トルク伝達機構は第2クラッチを有し、上記第1
クラッチの係合力に応じて上記左輪及び上記入力部のう
ちの一方の駆動トルクの一部が上記左輪及び上記入力部
のうちの他方へ伝達され、上記第2クラッチの係合力に
応じて上記右輪及び上記入力部のうちの一方の駆動トル
クの一部が上記右輪及び上記入力部のうちの他方へ伝達
されるように構成された車両用左右駆動力調整装置であ
って、トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向
かう方向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのか
を設定するトルク伝達方向設定手段と、上記の左輪と右
輪との回転速度の比である左右輪回転速度比を検出する
回転速度比検出手段と、上記第1クラッチの入力と出力
との各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速度比で
ある第1境界回転速度比を設定する第1境界回転速度比
設定手段と、上記第2クラッチの入力と出力との各回転
速度が一致する時の上記左右輪回転速度比である第2境
界回転速度比を設定する第2境界回転速度比設定手段
と、を有し、上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左
右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速度比及び第2
境界回転速度比のうちのいずれか一方の境界回転速度比
を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度比にかか
るクラッチを係合させることで上記トルク伝達方向設定
手段により設定されたトルク伝達方向と逆方向にトルク
伝達がなされる場合には、上記一方の境界回転速度比に
かかるクラッチの係合を禁止し、上記左右輪回転速度比
の増加に伴い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界
回転速度比及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一
方の境界回転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境
界回転速度比にかかるクラッチを係合させることで上記
トルク伝達方向設定手段により設定されたトルク伝達方
向と同方向にトルク伝達がなされる場合には、上記一方
の境界回転速度比にかかるクラッチの係合を可能とする
ことを特徴としている。
【0025】また、請求項にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置は、エンジンからの駆動力が伝達され
る入力部と、左輪及び右輪と、上記入力部の駆動力を上
記の左輪及び右輪に分配する差動装置と、上記入力部の
回転速度を変速して上記右輪に選択的に伝達する第1ト
ルク伝達機構と、上記入力部の回転速度を変速して上記
左輪に選択的に伝達する第2トルク伝達機構と、をそな
え、上記第1トルク伝達機構は第1クラッチを有し、上
記第2トルク伝達機構は第2クラッチを有し、上記第1
クラッチの係合力に応じて上記入力部及び上記右輪のう
ちの一方の駆動トルクの一部が上記入力部及び上記右輪
のうちの他方へ伝達され、上記第2クラッチの係合力に
応じて上記入力部及び上記左輪のうちの一方の駆動トル
クの一部が上記入力部及び上記左輪のうちの他方へ伝達
されるように構成された車両用左右駆動力調整装置であ
って、トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向
かう方向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのか
を設定するトルク伝達方向設定手段と、上記の左輪と右
輪との回転速度の比である左右輪回転速度比を検出する
回転速度比検出手段と、上記第1クラッチの入力と出力
との各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速度比で
ある第1境界回転速度比を設定する第1境界回転速度比
設定手段と、上記第2クラッチの入力と出力との各回転
速度が一致する時の上記左右輪回転速度比である第2境
界回転速度比を設定する第2境界回転速度比設定手段
と、を有し、上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左
右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速度比及び第2
境界回転速度比のうちのいずれか一方の境界回転速度比
を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度比にかか
るクラッチを係合させることで上記トルク伝達方向設定
手段により設定されたトルク伝達方向と逆方向にトルク
伝達がなされる場合には、上記一方の境界回転速度比に
かかるクラッチの係合を禁止し、上記左右輪回転速度比
の増加に伴い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界
回転速度比及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一
方の境界回転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境
界回転速度比にかかるクラッチを係合させることで上記
トルク伝達方向設定手段により設定されたトルク伝達方
向と同方向にトルク伝達がなされる場合には、上記一方
の境界回転速度比にかかるクラッチの係合を可能とする
ことを特徴としている。
【0026】また、請求項にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置は、左輪及び右輪と、上記の左輪及び
右輪のうちの一方の回転速度を増速して上記の左輪及び
右輪のうちの他方に選択的に伝達する第1トルク伝達機
構と、上記の左輪及び右輪のうちの一方の回転速度を減
速して上記の左輪及び右輪のうちの他方に選択的に伝達
する第2トルク伝達機構と、をそなえ、上記第1トルク
伝達機構は第1クラッチを有し、上記第2トルク伝達機
構は第2クラッチを有し、上記第1クラッチの係合力に
応じて上記の左輪及び右輪のうちの一方の駆動トルクの
一部が上記の左輪及び右輪のうちの他方へ伝達され、上
記第2クラッチの係合力に応じて上記の右輪及び左輪の
うちの一方の駆動トルクの一部が上記の右輪及び左輪の
うちの他方へ伝達されるように構成された車両用左右駆
動力調整装置であって、トルク伝達すべき方向が上記の
左輪から右輪に向かう方向なのか上記の右輪から左輪に
向かう方向なのかを設定するトルク伝達方向設定手段
と、上記の左輪と右輪との回転速度の比である左右輪回
転速度比を検出する回転速度比検出手段と、上記第1ク
ラッチの入力と出力との各回転速度が一致する時の上記
左右輪回転速度比である第1境界回転速度比を設定する
第1境界回転速度比設定手段と、上記第2クラッチの入
力と出力との各回転速度が一致する時の上記左右輪回転
速度比である第2境界回転速度比を設定する第2境界回
転速度比設定手段と、を有し、上記左右輪回転速度比の
増加に伴い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回
転速度比及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一方
の境界回転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界
回転速度比にかかるクラッチを係合させることで上記ト
ルク伝達方向設定手段により設定されたトルク伝達方向
と逆方向にトルク伝達がなされる場合には、上記一方の
境界回転速度比にかかるクラッチの係合を禁止し、上記
左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度比
が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度比
のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
チの係合を可能とすることを特徴としている。
【0027】
【作用】上述の請求項1にかかる本発明の車両用左右駆
動力調整装置では、第1トルク伝達機構によって、左輪
の回転速度が変速れて右輪に選択的に伝達され、第2
トルク伝達機構によって、上記右輪の回転速度が変速さ
れて上記左輪に選択的に伝達される。 つまり、上記第1
トルク伝達機構では、第1クラッチの係合力に応じて上
記の左輪及び右輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上
記の左輪及び右輪のうちの他方へ伝達され、上記第2ト
ルク伝達機構では、第2クラッチの係合力に応じて上記
の右輪及び左輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記
の右輪及び左輪のうちの他方へ伝達される。
【0028】このとき、トルク伝達方向設定手段がトル
ク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向かう方向な
のか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを設定し、
回転速度比検出手段が上記の左輪と右輪との回転速度の
比である左右輪回転速度比を検出し、第1境界回転速度
比設定手段が上記第1クラッチの入力と出力との各回転
速度が一致する時の上記左右輪回転速度比である第1境
界回転速度比を設定し、第2境界回転速度比設定手段が
上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
る時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速度比
を設定する。
【0029】そして、上記左右輪回転速度比の増加に伴
い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速度比
及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の境界回
転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度
比にかかるクラッチを係合させることで上記トルク伝達
方向設定手段により設定されたトルク伝達方向と逆方向
にトルク伝達がなされる場合には、上記一方の境界回転
速度比にかかるクラッチの係合を禁止する。 また、上記
左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度比
が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度比
のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
チの係合を可能とする。
【0030】このため、左右輪の回転速度比が境界値よ
りも大きくなっても、左輪右輪との間での駆動力の授
受の方向性が一定に保たれる。また、駆動力の伝達方向
が逆転した方のトルク伝達機構では高速側と低速側との
速度偏差が小さいので、このトルク伝達機構を選択して
駆動力制御を行なうと、トルク伝達ロスが小さくなる。
【0031】また、請求項にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置では、第1トルク伝達機構によって、
左輪の回転速度が変速されてエンジンからの駆動力が伝
達される入力部に選択的に伝達され、第2トルク伝達機
構によって、右輪の回転速度が変速されて上記入力部に
選択的に伝達される。 つまり、上記第1トルク伝達機構
では、第1クラッチの係合力に応じて上記左輪及び上記
入力部のうちの一方の駆動トルクの一部が上記左輪及び
上記入力部のうちの他方へ伝達され、上記第2トルク伝
達機構では、第2クラッチの係合力に応じて上記右輪及
び上記入力部のうちの一方の駆動トルクの一部が上記右
輪及び上記入力部のうちの他方へ伝達される。
【0032】このとき、トルク伝達方向設定手段がトル
ク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向かう方向な
のか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを設定し、
回転速度比検出手段が上記の左輪と右輪との回転速度の
比である左右輪回転速度比を検出し、第1境界回転速度
比設定手段が上記第1クラッチの入力と出力との各回転
速度が一致する時の上記左右輪回転速度比である第1境
界回転速度比を設定し、第2境界回転速度比設定手段が
上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
る時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速度比
を設定する。
【0033】そして、上記左右輪回転速度比の増加に伴
い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速度比
及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の境界回
転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度
比にかかるクラッチを係合させることで上記トルク伝達
方向設定手段により設定されたトルク伝達方向と逆方向
にトルク伝達がなされる場合には、上記一方の境界回転
速度比にかかるクラッチの係合を禁止する。 また、上記
左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度比
が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度比
のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
チの係合を可能とする。
【0034】このため、左右輪の回転速度比が境界値よ
りも大きくなっても、左輪右輪との間での駆動力の授
受の方向性が一定に保たれる。また、駆動力の伝達方向
が逆転した方のトルク伝達機構では高速側と低速側との
速度偏差が小さいので、このトルク伝達機構を選択して
駆動力制御を行なうと、トルク伝達ロスが小さくなる。
【0035】さらに、請求項にかかる本発明の車両用
左右駆動力調整装置では、第1トルク伝達機構によっ
て、エンジンからの駆動力が伝達される入力部の回転速
度が変速されて右輪に選択的に伝達され、第2トルク伝
達機構によって、上記入力部の回転速度が変速されて左
輪に選択的に伝達される。 つまり、上記第1トルク伝達
機構では、第1クラッチの係合力に応じて上記入力部及
び上記右輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記入力
部及び上記右輪のうちの他方へ伝達され、上記第2トル
ク伝達機構では、第2クラッチの係合力に応じて上記入
力部及び上記左輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上
記入力部及び上記左輪のうちの他方へ伝達される。
【0036】このとき、トルク伝達方向設定手段がトル
ク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向かう方向な
のか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを設定し、
回転速度比検出手段が上記の左輪と右輪との回転速度の
比である左右輪回転速度比を検出し、第1境界回転速度
比設定手段が上記第1クラッチの入力と出力との各回転
速度が一致する時の上記左右輪回転速度比である第1境
界回転速度比を設定し、第2境界回転速度比設定手段が
上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
る時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速度比
を設定する。
【0037】そして、上記左右輪回転速度比の増加に伴
い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速度比
及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の境界回
転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度
比にかかるクラッチを係合させることで上記トルク伝達
方向設定手段により設定されたトルク伝達方向と逆方向
にトルク伝達がなされる場合には、上記一方の境界回転
速度比にかかるクラッチの係合を禁止する。 また、上記
左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度比
が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度比
のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
チの係合を可能とする。
【0038】このため、左右輪の回転速度比が境界値よ
りも大きくなっても、左輪右輪との間での駆動力の授
受の方向性が一定に保たれる。また、駆動力の伝達方向
が逆転した方のトルク伝達機構では高速側と低速側との
速度偏差が小さいので、このトルク伝達機構を選択して
駆動力制御を行なうと、トルク伝達ロスが小さくなる。
【0039】さらに、請求項にかかる本発明の車両用
左右駆動力調整装置では、第1トルク伝達機構によっ
て、左輪及び右輪のうちの一方の回転速度が増速されて
上記の左輪及び右輪のうちの他方に選択的に伝達され、
第2トルク伝達機構によって、上記の左輪及び右輪のう
ちの一方の回転速度を減速されて上記の左輪及び右輪の
うちの他方に選択的に伝達される。 つまり、上記第1ト
ルク伝達機構では、第1クラッチの係合力に応じて上記
の左輪及び右輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記
の左輪及び右輪のうちの他方へ伝達され、上記第2トル
ク伝達機構では、第2クラッチの係合力に応じて上記の
右輪及び左輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記の
右輪及び左輪のうちの他方へ伝達される。
【0040】このとき、トルク伝達方向設定手段がトル
ク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向かう方向な
のか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを設定し、
回転速度比検出手段が上記の左輪と右輪との回転速度の
比である左右輪回転速度比を検出し、第1境界回転速度
比設定手段が上記第1クラッチの入力と出力との各回転
速度が一致する時の上記左右輪回転速度比である第1境
界回転速度比を設定し、第2境界回転速度比設定手段が
上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
る時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速度比
を設定する。
【0041】そして、上記左右輪回転速度比の増加に伴
い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速度比
及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の境界回
転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度
比にかかるクラッチを係合させることで上記トルク伝達
方向設定手段により設定されたトルク伝達方向と逆方向
にトルク伝達がなされる場合には、上記一方の境界回転
速度比にかかるクラッチの係合を禁止する。 また、上記
左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度比
が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度比
のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
チの係合を可能とする。 このため、左右輪の回転速度比
が境界値よりも大きくなっても、左輪と右輪との間での
駆動力の授受の方向性が一定に保たれる。また、駆動力
の伝達方向が逆転した方のトルク伝達機構では高速側と
低速側との速度偏差が小さいので、このトルク伝達機構
を選択して駆動力制御を行なうと、トルク伝達ロスが小
さくなる。
【0042】
【実施例】以下、図面により、本発明の実施例について
説明すると、図1〜5は本発明の第1実施例としての車
両用左右駆動力調整装置を示すもので、図1はその装置
をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成図、図2
はその模式的な要部構成図、図3はそのトルク伝達を説
明する速度線図、図4はそのトルク伝達の一例を説明す
る速度線図、図5はその制御内容を示すフローチャート
であり、図6〜9は本発明の第2実施例としての車両用
左右駆動力調整装置を示すもので、図6はその装置をそ
なえた自動車の駆動系を示す模式的な構成図、図7はそ
の模式的な要部構成図、図8はそのトルク伝達を説明す
る速度線図、図9はそのトルク伝達の一例を説明する速
度線図であり、図10は本発明の第3実施例としての車
両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要部構成図
であり、図11は本発明の第4実施例としての車両用左
右駆動力調整装置を示すその模式的な要部構成図であ
り、図12は本発明の第5実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示すその模式的な要部構成図であり、図
13は本発明の第6実施例としての車両用左右駆動力調
整装置を示すその模式的な要部構成図であり、図14は
本発明の第7実施例としての車両用左右駆動力調整装置
を示すその模式的な要部構成図であり、図15は本発明
の第8実施例としての車両用左右駆動力調整装置を示す
その模式的な要部構成図であり、図16は本発明の第9
実施例としての車両用左右駆動力調整装置を示すその模
式的な要部構成図であり、図17は本発明の第10実施
例としての車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的
な要部構成図であり、図18は本発明の第11実施例と
しての車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要
部構成図であり、図19は本発明の第12実施例として
の車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要部構
成図であり、図20は本発明の第13実施例としての車
両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要部構成図
である。なお、図中、同符号は同様なものを示し、ま
た、図3,4,8,9の縦軸は回転速度を示す。なお、
請求項1記載の発明に対応するのは、第5,9,10,
11,12,13実施例であり、請求項2記載の発明に
対応するのは、第1,2,6,8実施例 であり、請求項
3記載の発明に対応するのは、第3,4,7実施例であ
り、請求項4記載の発明に対応するのは、第5,10,
11,12,13実施例である。また、左右輪の間に入
力部〔例えば、プロペラシャフト6の後端に設けられて
回転駆動力(駆動力又はトルク)を入力される入力軸6
A〕を介在しており、左右輪間の関係が間接的にはなっ
ているが、第1,2,6,8実施例及び第3,4,7実
施例は、概念的には請求項1記載の発明に対応するもの
といえる。同様に、第8実施例は、概念的には請求項4
記載の発明に対応するものといえる。 さらに、各実施例
における多板クラッチ機構又はカップリングが第1クラ
ッチ又は第2クラッチに相当し、この多板クラッチ機構
又はカップリングと、変速機構とを有する駆動力伝達制
御機構9の機能要素の一部が第1トルク伝達機構又は第
2トルク伝達機構に相当する。 また、各実施例におい
て、トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向か
う方向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを
設定する機能をそなえるが、この機能がトルク伝達方向
設定手段に相当する。 さらに、各実施例において、上記
の左輪と右輪との回転速度の比である左右輪回転速度比
を検出する機能をそなえるが、この機能が回転速度比検
出手段に相当する。 また、各実施例において、左右輪の
回転速度比に関する所定値が境界回転速度比に相当し、
上記第1クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
る時の上記左右輪回転速度比である第1境界回転速度比
を設定する機能が、第1境界回転速度比設定手段に相当
し、上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一
致する時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速
度比を設定する機能が、第2境界回転速度比設定手段に
相当する。
【0043】まず、第1実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系は、図1に示すよう
に、エンジン1からの駆動力をトランスミッション2を
介して遊星歯車で構成されたセンタデフ3で受けて、セ
ンタデフ3から、前輪側と後輪側とに伝達するようにな
っている。特に、このセンタデフ3には、前後輪の差動
を適当に制限しうるセンタデフ差動制限機構5が設けら
れている。この差動制限機構5は、ここでは油圧式の多
板クラッチにより構成され、供給油圧に応じて前後輪の
差動を制限しながら、前後輪への駆動力配分を制御でき
るようになっており、前後輪間の駆動力配分を制御する
装置となっている。
【0044】このようにして、センタデフ3から配分さ
れた駆動力の一方は、フロントデフ4を通じて左右の前
輪25,26に伝達されるようになっている。一方、セ
ンタデフ3から配分された駆動力の他方は、プロペラシ
ャフト6を介してリヤデフ8に伝達され、このリヤデフ
8を通じて左右の後輪15,16に伝達されるようにな
っている。なお、符号7はドライブピニオン及びリング
ギヤからなるベベルギヤ機構である。
【0045】リヤデフ8部分には、変速機構30と伝達
容量可変制御式トルク伝達機構(又はトルク伝達機構)
としての多板クラッチ機構12とからなる駆動力伝達制
御機構9B(以下、駆動力伝達制御機構を広義に示す場
合は符号9とする)が設けられ、リヤデフ(差動機構)
8及び駆動力伝達制御機構9Bから車両用左右駆動力調
整装置が構成される。なお、この差動機構8としてここ
ではベベルギヤ式のものが用いられているが、差動機構
8は、2つの駆動軸間の差動を許容しつつエンジンから
入力された駆動力をこれらの各駆動軸に伝達できるもの
であればよく、例えば遊星歯車式のものなど歯車機構あ
るいはローラ機構等からなる他の公知の差動機構を適用
することができるのは勿論のことである。また、この多
板クラッチ機構12は油圧式のもので、油圧を調整され
ることで左右輪への駆動力配分を制御できるようになっ
ている。
【0046】そして、この駆動力伝達制御機構9Bの多
板クラッチ機構12の油圧系は、前述の前後駆動力調整
装置の多板クラッチ機構5の油圧系とともに、制御手段
としてのコントロールユニット18によって制御される
ようになっている。つまり、多板クラッチ機構12の油
圧系及び多板クラッチ機構5の油圧系は、各クラッチ機
構にそれぞれ付設された図示しない油圧室と、油圧源を
構成する電動ポンプ24及びアキュムレータ23と、こ
の油圧を上記の油圧室に所要量だけ供給させるクラッチ
油圧制御バルブ17とからなっている。そして、クラッ
チ油圧制御バルブ17の開度がコントロールユニット1
8によって制御されるようになっている。
【0047】つまり、多板クラッチ機構12の係合状態
は、このクラッチ油圧制御バルブ17の開度調整を通じ
て、コントロールユニット18によって制御されるよう
になっている。なお、コントロールユニット18では、
車輪速センサ19,ハンドル角センサ20,ヨーレイト
センサ21,加速度センサ(又は加速度演算手段)22
などからの情報に基づいて、クラッチ油圧制御バルブ1
7の開度を制御する。
【0048】また、コントロールユニット18では、車
両の旋回走行時に左右輪の回転速度比が所定値以上に大
きくなった場合には、特徴のある制御を行なうようにな
っている。このコントロールユニット18については、
後で詳述する。ここで、この車両用左右駆動力調整装置
の要部を説明すると、図2に示すように、プロペラシャ
フト6の後端に設けられて回転駆動力(以下、駆動力又
はトルクという)を入力される入力軸6Aと、入力軸6
Aから入力された駆動力を出力する左輪回転軸(左後輪
15の駆動軸)13と右輪回転軸(右後輪16の駆動
軸)14とが設けられており、左輪回転軸13と右輪回
転軸14と入力軸6Aとの間に車両用左右駆動力調整装
置が介装されている。
【0049】そして、この車両用左右駆動力調整装置の
駆動力伝達制御機構9Bは、次のような構成により、左
輪回転軸13と右輪回転軸14との差動を許容しなが
ら、左輪回転軸13と右輪回転軸14とに伝達される駆
動力を所要の比率に配分できるようになっている。すな
わち、左輪回転軸13と入力軸6Aとの間及び右輪回転
軸14と入力軸6Aとの間に、それぞれ変速機構30と
多板クラッチ機構12とが介装されており、左輪回転軸
13又は右輪回転軸14の回転速度が、変速機構30に
より変速(この例では、増速)されて、変速機構30の
出力部側である中空軸11に伝えられるようになってい
る。
【0050】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデファレンシャルケース(以
下、デフケースと略す)8Aとの間に介装されており、
この多板クラッチ機構12を係合させることで、デフケ
ース8A及び中空軸11のうちの高速回転している方の
部材から低速回転している方の部材へと、駆動力が送給
されるようになっている。これは、対向して配設された
クラッチ板における一般的な特性として、トルクの伝達
が、速度の速い方から遅い方へ行なわれるためである。
なお、この例の場合には、左右の回転軸13,14の間
の差動が大きくてデフケース8Aよりも回転軸13又は
14が所定比(変速機構30の減速比に対応する比)以
上に高速にならない限りは、デフケース8Aが速側と
なり中空軸11が高速側となって、中空軸11からデフ
ケース8Aへと駆動力が送給されるようになっている。
【0051】したがって、例えば右輪回転軸14と入力
軸6Aとの間の多板クラッチ機構12が係合されると、
右輪回転軸14へ配分される駆動力は入力軸6A側から
のルートで増加又は減少(この例では主として減少)さ
れて、この分だけ、左輪回転軸13へ配分される駆動力
が減少又は増加(この例では主として増加)する。この
実施例の変速機構30は、2つのプラネタリギヤ機構を
直列的に結合してなるいわゆるダブルプラネタリギヤ機
構で構成されているが、この変速機構30自体は、入力
された回転速度を一定の変速比で加速又は減速して出力
する機構であればよく、例えばベルトやチェーン等を用
いた機構なども考えられ、ギヤ機構に限定されるもので
はない。
【0052】このギヤ機構式の変速機構30を、右輪回
転軸14に設けられたものを例に説明すると次のように
なる。すなわち、右輪回転軸14には第1のサンギヤ3
0Aが固着されており、この第1のサンギヤ30Aは、
その外周において第1のプラネタリギヤ(プラネタリピ
ニオン)30Bに噛合している。また、第1のプラネタ
リギヤ30Bは、第2のプラネタリギヤ30Dと一体に
固着され、共にキャリヤに設けられたピニオンシャフト
30Cを通じて、ケーシング(固定部)に固着されて回
転しないキャリア30Fに枢支されている。これによ
り、第1のプラネタリギヤ30Bと第2のプラネタリギ
ヤ30Dとが、ピニオンシャフト30Cを中心として同
一の回転を行なうようになっている。
【0053】さらに、第2のプラネタリギヤ30Dは、
右輪回転軸14に枢支された第2のサンギヤ30Eに噛
合しており、第2のサンギヤ30Eは、中空軸11を介
して多板クラッチ機構12のクラッチ板12Aに連結さ
れている。また、多板クラッチ機構12の他方のクラッ
チ板12Bは、入力軸6Aにより駆動されるデフケース
8Aに連結されている。
【0054】そして、この実施例の構造では、第1のサ
ンギヤ30Aが第2のサンギヤ30Eよりも大きい径に
形成され、これに応じて第1のプラネタリギヤ30Bが
第2のプラネタリギヤ30Dよりも小さい径に形成され
ている。これにより、第2のサンギヤ30Eの回転速度
は第1のサンギヤ30Aの回転速度よりも大きくなり、
この変速機構30は増速機構としてはたらくようになっ
ている。したがって、クラッチ板12Aの回転速度がク
ラッチ板12Bよりも大きく、例えば右輪側の多板クラ
ッチ機構12を係合させた場合には、この係合状態に応
じた量のトルクが、右輪回転軸14側から入力軸6A側
へ送給されるようになっている。
【0055】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構30及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ている。したがって、入力軸6Aからの駆動トルクを右
輪回転軸14により多く配分したい場合には、その配分
したい程度(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板
クラッチ機構12を適当に係合し、左輪回転軸13によ
り多く配分したい場合には、その配分比に応じて右輪回
転軸14側の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0056】このとき、多板クラッチ機構12が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構12の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。なお、左右の多板ク
ラッチ機構12が共に完全係合することのないように設
定されており、左右の多板クラッチ機構12のうち一方
が完全係合したら他方の多板クラッチ機構12は滑りを
生じるようになっている。
【0057】コントロールユニット18では、目標とす
る左右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT
(=Tr−Tl;ただし、Trは右輪トルク,Tlは左
輪トルク)を設定して、車両の旋回走行時に左右輪の回
転速度比が所定値以下であれば、この移動させたいトル
ク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機構12
の何れかの係合状態を制御する。つまり、このトルク量
DTが正の場合には左輪側から右輪側へのトルク移動制
御であり、この場合には、左の多板クラッチ機構12の
係合状態を制御する。また、トルク量DTが負の場合に
は右輪側から左輪側へのトルク移動制御であり、この場
合には、右の多板クラッチ機構12の係合状態を制御す
る。
【0058】ところで、上述のようなトルク移動制御
は、多板クラッチ機構12において、回転速度の速い方
のクラッチ板から遅い方のクラッチ板へ行なわれるの
で、トルクを増加させたい側の車輪の回転速度がトルク
を減少させたい側の車輪の回転速度よりも遅いことが前
提となる。しかしながら、旋回時に内輪側から外輪側へ
トルク移動制御を行なおうとすると、トルクを増加させ
たい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪側の
車輪の回転速度よりも速くなってしまうことがある。
【0059】この場合には、多板クラッチ機構12を係
合させると、トルクを増加させたい外輪側からトルクを
減少させたい内輪側へとトルク移動してしまい、期待す
る制御とは逆の制御が行なわれてしまう。つまり、車両
の旋回走行時に左右輪の回転速度比が所定値以上に大き
くなった場合に、内輪側から外輪側へのトルク移動(ト
ルク伝達)を実現できなくなり、左側の多板クラッチ機
構12を係合させても、右側の多板クラッチ機構12を
係合させても、外輪側から内輪側へのトルク伝達になっ
てしまう。
【0060】すなわち、旋回時の内外輪の回転速度比が
大きいと、例えば、内輪の回転軸側の回転速度を増速し
て出力しても、この出力部分の回転速度が外輪の回転軸
側の回転速度よりも高速回転するとは限らず、内輪側か
ら外輪側へのトルク伝達を実現できない。このため、左
右輪の回転速度比が所定値以上に大きくなったときに、
所望の方向へのトルク伝達を実現できない場合には、両
多板クラッチ機構12,12をともにフリーにしたい。
また、左右輪の回転速度比が所定値以上に大きくなった
ときに、いずれの多板クラッチ機構12,12でも所望
の方向へのトルク伝達を実現できる場合には、クラッチ
ディスク12A,12Bの間での速度偏差が少ない方の
多板クラッチ機構12の係合を制御してトルク伝達を実
現させたい。
【0061】このコントロールユニット18では、この
ようにして、多板クラッチ機構12の係合を制御するよ
うになっている。ここで、左右輪の回転速度比が所定値
以上に大きくなったかの判断を、数値的に行なえるよう
にしたい。まず、駆動トルクの移動制御の可能な左右回
転速度差範囲を規定する値(制御可能な最大回転速度
比)Smax を実現するためのプラネタリギヤ機構の設定
速度比を、図3,4の速度線図を参照しながら導く。な
お、速度比Smax は、クラッチ板12A側とクラッチ板
12Bとが等速になったときの入力側(つまり、デフケ
ース8A側)の回転速度Niに対する出力側(つまり、
各回転軸13,14側)の回転速度の変化量ΔNの比
(即ち、Smax =ΔN/Ni)と定義できる。
【0062】図3,4において、lを付した符号は左輪
に関し、rを付した符号は右輪に関している。そして、
Cl,Crはキャリア30Fの回転速度でここではキャ
リア30Fは回転しないので0になっている。S1l,
S1rは第1のサンギヤ30Aの回転速度で、S2l,
S2rは第2のサンギヤ30Eの回転速度であり、第1
のサンギヤ30Aは第2のサンギヤ30Eよりも大径な
ので、回転速度S1l,S1rは回転速度S2l,S2
rよりも小さい。そして、DCはデフケース8Aの回転
速度である。
【0063】また、Z1 は第1のサンギヤ30Aの歯
数、Z2 は第2のサンギヤ30Eの歯数、Z3 はプラネ
タリギヤ30Bの歯数、Z4 はプラネタリギヤ30Dの
歯数であり、Ti はデフケース8Aへの入力トルク、T
l,Trはそれぞれ左側輪及び右側輪への配分トルク、
Tc1は右輪側の駆動力伝達制御機構9Bの多板クラッ
チ機構12を係合したときの左方向への伝達トルク、T
c2は左輪側の駆動力伝達制御機構9Bの多板クラッチ
機構12を係合したときの右方向への伝達トルクであ
る。
【0064】さらに、図3は左右輪が等速で回転してい
る状態を示し、図4は右輪側の駆動力伝達制御機構9B
の多板クラッチ機構12が完全係合されて、右輪側が多
板クラッチ機構12によって回転拘束され右輪側の回転
速度が減速されている一方で、これに応じて、左輪側の
回転速度が増速されている状態を示している。前述のS
max (制御可能な左右回転差範囲を示す速度比)を実現
するための、プラネタリの設定速度比を導く。
【0065】このSmax の状態は、図4に示され、多板
クラッチ機構12が完全係合されると、デフケース8A
の回転速度DCと第2のサンギヤ30Eの回転速度S2
rとが等しくなる。したがって、図4より、 Z3 /Z1 : Z4 /Z2 =1−Smax :1 ∴Z2 3 /Z1 4 =1−Smax このように、制御可能な左右回転差範囲を示す速度比S
max は、変速機構30の変速比(即ち、ギヤ30A,3
0E,30B及び30Dの設定ギヤ比)に応じて決ま
る。
【0066】一方、車輪の左右輪速度比αを、右輪速度
Vrと左輪速度Vlとの平均車輪速Vav〔=(Vr+
Vl)/2〕に対する車輪速偏差Vd〔=(Vr−V
l)/2〕の割合と定義すると、左右輪速度比αは以下
のごとくあらわせる。 α=Vd/Vav=〔(Vr−Vl)/2〕/〔(Vr+Vl)/2〕 =(Vr−Vl)/(Vr+Vl) ・・・・・・(1) そして、左右輪速度比αの大きさ|α|が、上記の速度
比Smax よりも大きくなると、多板クラッチ機構12の
クラッチ板12A側の回転速度とクラッチ板12B側の
回転速度との大小関係が逆になってしまう。
【0067】したがって、左右輪の回転速度比が所定値
以上であることを、下式(2)のように設定できる。 Smax <|α| ・・・・・・(2) 上式(1)で、速度比Smax の値は一定値であり予め算
出でき、左右輪速度比|α|は検出した左右輪の車輪速
値Vl,Vrから時々算出でき、適当な制御周期毎に左
右輪速度比|α|を算出して速度比Smax と比較して上
式(2)が成り立ったら、以下の2通りのいずれかの制
御を行なう。
【0068】つまり、所望の方向へのトルク伝達を実現
できない場合(つまり、内輪側から外輪側へのトルク伝
達を行なおうとする場合)には、両多板クラッチ機構1
2,12をともにフリーにし、いずれの多板クラッチ機
構12,12でも所望の方向へのトルク伝達を実現でき
る場合(つまり、外輪側から内輪側へのトルク伝達を行
なおうとする場合)には、クラッチディスク12A,1
2Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度の
大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構12の係合
を制御してトルク伝達を実現させるように、クラッチ油
圧制御バルブ17の開度を制御するようになっている。
【0069】特に、車両の旋回にあたっては、Smax ≧
|α|の範囲では、旋回開始時には、車両の回頭性を向
上させるために、旋回外輪側の駆動力を増加させて駆動
力配分の不均等にすることで車両に旋回モーメントをあ
たえるようにして、旋回終了時には、車両の旋回動作を
速く収束させるため、旋回内輪側の駆動力を増加させて
駆動力配分の不均等にすることで車両に旋回を収束させ
るモーメントをあたえるようになっている。
【0070】一方、Smax <|α|になると、旋回開始
時には、旋回外輪側の駆動力を増加させることができな
いので、該当する多板クラッチ機構12の係合を解除し
て駆動力伝達制御を中止するが、旋回終了時には、旋回
内輪側の駆動力を増加させることはできるので、車両の
旋回動作を速く収束させるため、旋回内輪側の駆動力を
増加させて駆動力配分の不均等にすることで車両に旋回
を収束させるモーメントをあたえるようになっている。
【0071】本発明の第1実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、例
えば図5に示すように、車輪速センサ19で検出された
左右輪の車輪速Vl,Vrがコントロールユニット18
に入力される(ステップS1)。そして、コントロール
ユニット18で、移動させたいトルク量DT(=Tr−
Tl)を設定する(ステップS2)。
【0072】コントロールユニット18では、上式
(1)によって車輪速Vl,Vrから左右輪速度比αを
算出して(ステップS3)、この左右輪速度比αと速度
比Smaxとを比較して左右輪速度比αが速度比Smax 以
上かどうかを判断して(ステップS4)、左右輪速度比
αが速度比Smax 以上でないならば、ステップS5に進
み、左右輪速度比αが速度比−Smax 以下かどうかを判
断する。
【0073】そして、左右輪速度比αが速度比Smax 以
上でもなく速度比−Smax 以下でもない場合には、ステ
ップS6に進んで、上述のDTから、右輪側のクラッチ
トルクTCR又は左輪側のクラッチトルクTCLを計算
して出力する。つまり、DT>0の場合には左輪側のク
ラッチトルクTCL=(1−Smax )DTのみを出力し
て、DT=0の場合にはいずれも出力せず、DT<0の
場合には右輪側のクラッチトルクTCR=−(1−Sma
x )DTのみを出力する。
【0074】そして、ステップS9に進み、トルク移動
制御禁止フラグFGを0とする。このトルク移動制御禁
止フラグFGは、トルク移動制御を禁止する状態では1
とされ、トルク移動制御を禁止しない状態では0とさ
れ、このフラグFGは、車両に装備されている他の走行
制御にも用いられる。一方、ステップS5で、左右輪速
度比αが速度比−Smax 以下であると判断すると、この
ときには、左輪の回転速度が右輪の回転速度よりも大き
くて、右輪側から左輪側へのトルク移動が行なえない。
そこで、ステップS7へ進んで、移動させたいトルク量
DTが負であるかどうか、つまり、右輪側から左輪側へ
のトルク移動を行ないたいのかを判断する。
【0075】DTが負でなければ、トルク移動を行なわ
ないか(DT=0に相当する)又は左輪側から右輪側へ
のトルク移動を行なう場合であり、この制御は可能なの
で、ステップS7からステップS8に進んで、輪側の
クラッチトルクTCR=(1−Smax )DTのみを出力
して、左輪側のクラッチトルクTCLは0とする。そし
て、ステップS9に進み、トルク移動制御禁止フラグF
Gを0とする。
【0076】DTが負であれば、この右輪側から左輪側
へのトルク移動は不可能なので、ステップS7からステ
ップS10に進んで、左右輪のクラッチトルクの出力を
クリヤする。つまり、左右輪側のクラッチトルクTC
L,TCRをともに0にするように制御信号を出力す
る。そして、ステップS11に進み、トルク移動制御禁
止フラグFGを1とする。
【0077】一方、左右輪速度比αが速度比Smax 以上
でならば、ステップS4からステップS12に進み、移
動させたいトルク量DTが正であるかどうか、つまり、
左輪側から右輪側へのトルク移動を行ないたいのかを判
断する。DTが正でなければ、トルク移動を行なわない
か(DT=0に相当する)又は右輪側から左輪側へのト
ルク移動を行なう場合であり、この制御は可能なので、
ステップS12からステップS13に進んで、左輪側の
クラッチトルクTCL=−(1−Smax )DTのみを出
力して、右輪側のクラッチトルクTCRは0とする。そ
して、ステップS9に進み、トルク移動制御禁止フラグ
FGを0とする。
【0078】DTが正であれば、この左輪側から右輪側
へのトルク移動は不可能なので、ステップS12からス
テップS14に進んで、左右輪のクラッチトルクの出力
をクリヤする。つまり、左右輪側のクラッチトルクTC
L,TCRをともに0にするように制御信号を出力す
る。そして、ステップS15に進み、トルク移動制御禁
止フラグFGを1とする。
【0079】このようにして、左右輪速度比|α|が速
度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレーキ等の
エネルギーロスを用いてトルク配分を調整するのでな
く、一方のトルクの所要量を他方に転送することにより
トルク配分が調整されるため、大きなトルクロスやエネ
ルギロスを招来することなく、所望のトルク配分を得る
ことができる。
【0080】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0081】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0082】特に、この時、クラッチディスク12A,
12Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構12の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構12
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0083】なお、この実施例では、伝達容量可変制御
式トルク伝達機構として油圧式の多板クラッチ機構12
が設けられているが、伝達容量可変制御式トルク伝達機
構としては、伝達トルク容量が可変制御できるトルク伝
達機構であればよく、この例の機構のほかに、電磁式多
板クラッチ機構等の他の多板クラッチ機構や、これらの
多板クラッチ機構の他に、油圧式又は電磁式の摩擦クラ
ッチや、油圧式又は電磁式の制御可能なVCU(ビスカ
スカップリングユニット)や、油圧式又は電磁式の制御
可能なHCU(ハイドーリックカップリングユニット=
差動ポンプ式油圧カップリング)、さらには、電磁流体
式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを
用いることもできる。
【0084】摩擦クラッチの場合、多板クラッチ機構と
同様に油圧等で係合力を調整するものが考えられ、特
に、この摩擦クラッチでは、トルク伝達方向が一方向の
ものを所要の方向(それぞれのトルク伝達方向)向けて
設置することが考えられる。また、このVCUやHCU
には、従来型の動力伝達特性が一定のものも考えられる
が、動力伝達特性を調整できるようにしたものが適して
いる。そして、これらの係合力調整や動力伝達特性の調
整は、油圧による他に、電磁力等の他の駆動系を用いる
ことも考えられる。
【0085】次に、第2実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図6に
示すようになっており、図1に示す第1実施例のものと
ほぼ同様であるので、ここでは説明を省略する。この駆
動力伝達制御機構9Aでは、図6,7に示すように、変
速機構10が第1実施例のものと異なっており、第1の
サンギヤ10Aが第2のサンギヤ10Eよりも小さい径
に形成されているので、第2のサンギヤ10Eの回転速
度は第1のサンギヤ10Aよりも小さくなり、この変速
機構10は減速機構としてはたらくようになっている。
したがって、左右輪の回転速度差の小さな通常走行時に
は、クラッチ板12Aの回転速度がクラッチ板12Bよ
りも小さくなって、多板クラッチ機構12を係合させた
場合には、この係合状態に応じた量のトルクが、入力軸
6A側から右輪回転軸14側へ増加されるようになって
いる。
【0086】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構10及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13
により多く配分したい場合には、その配分したい程度
(配分比)に応じて右輪回転軸14側の多板クラッチ機
構12を適当に係合し、右輪回転軸14により多く配分
したい場合には、その配分比に応じて左輪回転軸13側
の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0087】このとき、第1実施例と同様に、多板クラ
ッチ機構12が油圧駆動式であるから、油圧の大きさを
調整することで多板クラッチ機構12の係合状態を制御
でき、入力軸6Aから左輪回転軸13又は右輪回転軸1
4への駆動力の送給量(つまりは駆動力の左右配分比)
を適当な精度で調整することができるようになってい
る。
【0088】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構12の係合状態を制御する。
【0089】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構12の対向するクラッチ
板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向
へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板クラッ
チ機構12,12をともにフリーにし、いずれの多板ク
ラッチ機構12,12でも所望の方向へのトルク伝達を
実現できる場合には、クラッチディスク12A,12B
の間での速度偏差が少ない方の多板クラッチ機構12の
係合を制御してトルク伝達を実現させるように制御する
ようになっている。
【0090】この実施例の場合について、左右輪の回転
速度比が所定値以上であるという条件式を導く。まず、
Smax を実現するためのプラネタリギヤ機構の設定速度
比を、図8,9の速度線図を参照しながら導く。なお、
速度比Smax は、クラッチ板12A側とクラッチ板12
Bとが等速になったときの入力側(つまり、デフケース
8A側)の回転速度Niに対する出力側(つまり、各回
転軸13,14側)の回転速度の変化量ΔNの比(即
ち、Smax =ΔN/Ni)と定義できる。
【0091】図8,9において、lを付した符号は左輪
に関し、rを付した符号は右輪に関している。そして、
Cl,Crはキャリア10Fの回転速度でここではキャ
リア10Fは回転しないので0になっている。S1l,
S1rは第1のサンギヤ10Aの回転速度で、S2l,
S2rは第2のサンギヤ10Eの回転速度であり、第1
のサンギヤ10Aは第2のサンギヤ10Eよりも大径な
ので、回転速度S1l,S1rは回転速度S2l,S2
rよりも小さい。そして、DCはデフケース8Aの回転
速度である。
【0092】また、Z1 は第2のサンギヤ10Eの歯
数、Z2 は第1のサンギヤ10Aの歯数、Z3 はプラネ
タリギヤ10Dの歯数、Z4 はプラネタリギヤ10Bの
歯数であり、Ti はデフケース8Aへの入力トルク、T
l,Trはそれぞれ左側輪及び右側輪への配分トルク、
Tc1は右輪側の駆動力伝達制御機構9Bの多板クラッ
チ機構12を係合したときの左方向への伝達トルク、T
c2は左輪側の駆動力伝達制御機構9Bの多板クラッチ
機構12を係合したときの右方向への伝達トルクであ
る。
【0093】さらに、図8は左右輪が等速で回転してい
る状態を示し、図9は右輪側の駆動力伝達制御機構9A
の多板クラッチ機構12が完全係合されて、右輪側が多
板クラッチ機構12によって回転拘束され右輪側の回転
速度が速されている一方で、これに応じて、左輪側の
回転速度が速されている状態を示している。前述のS
max (制御可能な左右回転差範囲を示す速度比)を実現
するための、プラネタリの設定速度比を導く。
【0094】このSmax の状態は、図9に示され、多板
クラッチ機構12が完全係合されると、デフケース8A
の回転速度DCと第2のサンギヤ10Eの回転速度S2
rとが等しくなる。したがって、図9より、 Z3 /Z1 : Z4 /Z2 =1:Smax +1 ∴Z2 3 /Z1 4 =1/(Smax +1) このように、制御可能な左右回転差範囲を示す速度比S
max は、変速機構10の変速比(即ち、ギヤ10A,1
0E,10B及び10Dの設定ギヤ比)に応じて決ま
る。
【0095】一方、車輪の左右輪速度比αを、右輪速度
Vrと左輪速度Vlとの平均車輪速Vav〔=(Vr+
Vl)/2〕に対する車輪速偏差Vd〔=(Vr−V
l)/2〕の割合と定義すると、左右輪速度比αは以下
のごとくあらわせる。 α=Vd/Vav=〔(Vr−Vl)/2〕/〔(Vr+Vl)/2〕 =(Vr−Vl)/(Vr+Vl) ・・・・・・(1) そして、左右輪速度比|α|が、上記の速度比Smax よ
りも大きくなると、多板クラッチ機構12のクラッチ板
12A側の回転速度とクラッチ板12B側の回転速度と
の大小関係が逆になってしまう。
【0096】したがって、左右輪の回転速度比が所定値
以上であることを、下式(2)のように設定できる。 Smax <|α| ・・・・・・(2) 上式(1)で、速度比Smax の値は一定値であり予め算
出できる。また、左右輪速度比αは検出した左右輪の車
輪速値Vl,Vrから時々算出できる。
【0097】本発明の第2実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1実施例と同様に、左右輪速度比|α|が速度比Smax
以上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギー
ロスを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のト
ルクの所要量を他方に転送することによりトルク配分が
調整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招
来することなく、所望のトルク配分を得ることができ
る。
【0098】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0099】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0100】特に、この時、クラッチディスク12A,
12Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構12の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構12
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0101】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第3実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0102】この駆動力伝達制御機構9Cでは、図10
に示すように、変速機構31及び多板クラッチ機構42
が第1及び第2実施例のものと異なっている。ここで
も、右側の装置について説明する。変速機構31は、入
力軸6A側のデフケース8Aの左右側部にそれぞれ設け
られ、2組の直列な遊星歯車機構からなり、第1のサン
ギヤ31Aと第2のサンギヤ31Eと第1のプラネタリ
ギヤ31Bと第2のプラネタリギヤ31Dとピニオンシ
ャフト31Cとプラネタリキャリア31Fとからなり、
第1のサンギヤ31Aのプレート部分は駆動力伝達補助
部材41になっている。
【0103】そして、この駆動力伝達補助部材41と右
輪回転軸14との間に、多板クラッチ機構42が介設さ
れる。この多板クラッチ機構42は、回転軸14側のク
ラッチ板42Bと駆動力伝達補助部材41側のクラッチ
板42Bとが交互に重合してなり、図示しない油圧系か
ら供給される油圧に応じて、その係合状態を調整され
る。
【0104】このため、多板クラッチ機構42が係合す
ると、回転軸14側から、多板クラッチ機構42,第1
のサンギヤ31A,第1のプラネタリギヤ31B,第2
のプラネタリギヤ31D,第2のサンギヤ31Eを経
て、入力軸6A側のデフケース8Aへ至る駆動力の伝達
路が形成される。ここでは、第1のサンギヤ31Aが第
2のサンギヤ31Eよりも大きい径に形成されているの
で、第2のサンギヤ31Eの回転速度は第1のサンギヤ
31Aより大きくなり、この変速機構31は駆動力伝達
補助部材41を入力軸6A側よりも減速する減速機構と
してはたらくようになっている。
【0105】したがって、クラッチ板42Aの回転速度
がクラッチ板42Bよりも大きく、多板クラッチ機構4
2を係合させた場合には、この係合状態に応じた量のト
ルクが、右輪回転軸14側から入力軸6A側へ送給(返
送)されるようになっている。一方、左輪回転軸13に
そなえられる変速機構31及び多板クラッチ機構42
も、同様に構成されており、入力軸6Aからの駆動トル
クを左輪回転軸13により多く配分したい場合には、そ
の配分したい程度(配分比)に応じて右輪回転軸14側
の多板クラッチ機構42を適当に係合し、右輪回転軸1
4により多く配分したい場合には、その配分比に応じて
左輪回転軸13側の多板クラッチ機構42を適当に係合
する。
【0106】このとき、多板クラッチ機構42が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構42の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。また、左右の多板ク
ラッチ機構42が共に完全係合することのないように設
定されており、左右の多板クラッチ機構42のうち一方
が完全係合したら他方の多板クラッチ機構42は滑りを
生じるようになっている。
【0107】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構42の係合状態を制御する。
【0108】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構42の対向するクラッチ
板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向
へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板クラッ
チ機構42,42をともにフリーにし、いずれの多板ク
ラッチ機構42,42でも所望の方向へのトルク伝達を
実現できる場合には、クラッチディスク42A,42B
の間での速度偏差が少ない方の多板クラッチ機構42の
係合を制御してトルク伝達を実現させるように制御する
ようになっている。
【0109】本発明の第3実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の実施例と同様に、左右輪速度比|α|が速度比Sma
x 以上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギ
ーロスを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方の
トルクの所要量を他方に転送することによりトルク配分
が調整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを
招来することなく、所望のトルク配分を得ることができ
る。
【0110】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構42の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0111】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0112】特に、この時、クラッチディスク42A,
42Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構42の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構42
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0113】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第4実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0114】この駆動力伝達制御機構9Dでは、図11
に示すように、第3実施例とほぼ同様に変速機構32及
び多板クラッチ機構42を配置しているが、ここでは、
第1のサンギヤ32Aが第2のサンギヤ32Eよりも小
さい径に形成されている。このため、第2のサンギヤ3
2Eの回転速度は第1のサンギヤ32Aよりも小さくな
り、この変速機構32は駆動力伝達補助部材41を入力
軸6A側よりも増速する増速機構としてはたらくように
なっている。
【0115】したがって、クラッチ板42Aの回転速度
がクラッチ板42Bよりも小さく、多板クラッチ機構4
2を係合させた場合には、この係合状態に応じた量のト
ルクが、入力軸6A側から右輪回転軸14側へ送給され
るようになっている。一方、左輪回転軸13にそなえら
れる変速機構32及び多板クラッチ機構42も、同様に
構成されており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回
転軸13により多く配分したい場合には、その配分した
い程度(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板クラ
ッチ機構42を適当に係合し、右輪回転軸14により多
く配分したい場合には、その配分比に応じて右輪回転軸
14側の多板クラッチ機構42を適当に係合する。
【0116】なお、多板クラッチ機構42が油圧駆動式
であるから、油圧の大きさを調整することで多板クラッ
チ機構42の係合状態を制御でき、入力軸6Aから左輪
回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量(つ
まりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整するこ
とができるようになっている。また、左右の多板クラッ
チ機構42が共に完全係合することのないように設定さ
れており、左右の多板クラッチ機構42のうち一方が完
全係合したら他方の多板クラッチ機構42は滑りを生じ
るようになっている。
【0117】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構42の係合状態を制御する。
【0118】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構42の対向するクラッチ
板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向
へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板クラッ
チ機構42,42をともにフリーにし、いずれの多板ク
ラッチ機構42,42でも所望の方向へのトルク伝達を
実現できる場合には、クラッチディスク42A,42B
の間での速度偏差が少ない方の多板クラッチ機構42の
係合を制御してトルク伝達を実現させるように制御する
ようになっている。
【0119】本発明の第4実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の実施例と同様に、左右輪速度比αが速度比Smax 以
上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギーロ
スを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトル
クの所要量を他方に転送することによりトルク配分が調
整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来
することなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0120】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構42の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0121】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0122】特に、この時、クラッチディスク42A,
42Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構42の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構42
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0123】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第5実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0124】この車両用左右駆動力調整装置にそなえら
れる駆動力伝達制御機構9Eでは、図12に示すよう
に、回転軸13,14と並行に軸(カウンタシャフト)
51が設けられ、この軸51には、中径の歯車52と大
径の歯車53と小径の歯車54とがそなえられ、一方の
回転軸13には、中径の歯車52と噛合する中径の歯車
59がそなえられ、他方の回転軸14には、大径の歯車
53と噛合する小径の歯車55と小径の歯車54と噛合
する大径の歯車56とが設けられる。これらの歯車5
9,52,53,55の組み合わせで、変速機構として
の増速機構が構成され、歯車59,52,54,56の
組み合わせで、変速機構としての減速機構が構成され
る。
【0125】そして、回転軸14と小径の歯車55との
間及び回転軸14と大径の歯車56との間には、それぞ
れ、油圧式の多板クラッチ57,58が介装されてい
る。なお、多板クラッチ57,58を軸51上に設けて
もよい。これにより、軸51は回転軸13と等速で回転
するが、回転軸14の小径の歯車55は、これらの軸5
1や回転軸13よりも高速で回転し、左右輪で差動があ
まり生じない通常走行時には回転軸14よりも高速で回
転する。また、回転軸14の大径の歯車56は、これら
の軸51や回転軸13よりも低速で回転し、左右輪で差
動があまり生じない通常走行時には回転軸14よりも低
速で回転する。
【0126】したがって、多板クラッチ57を係合する
と、回転軸14よりも高速の小径の歯車55側から回転
軸14側へトルクが伝達され、この分だけ回転軸13側
へのトルクが減少する。また、多板クラッチ58を係合
すると、回転軸14側から回転軸14よりも低速の大径
の歯車56側へトルクが返送され、この分だけ回転軸1
3側へのトルクが増加する。
【0127】そして、多板クラッチ機構57,58が油
圧駆動式であるから、油圧の大きさを調整することで多
板クラッチ機構57,58の係合状態を制御でき、入力
軸6Aから左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動
力の送給量(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精
度で調整することができるようになっている。また、2
つの多板クラッチ機構57,58が共に完全係合するこ
とのないように設定されており、2つの多板クラッチ機
構57,58のうち一方が完全係合したら他方は滑りを
生じるようになっている。
【0128】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構57,58の係合状態を制御する。
【0129】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構57,58の対向するク
ラッチ板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望
の方向へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板
クラッチ機構57,58をともにフリーにし、いずれの
多板クラッチ機構57,58でも所望の方向へのトルク
伝達を実現できる場合には、クラッチディスク57A,
57B又は58A,58Bの間での速度偏差が少ない方
の多板クラッチ機構57又は58の係合を制御してトル
ク伝達を実現させるように制御するようになっている。
【0130】本発明の第5実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の実施例と同様に、左右輪速度比αが速度比Smax 以
上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギーロ
スを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトル
クの所要量を他方に転送することによりトルク配分が調
整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来
することなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0131】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構57,58の係合が解除されて駆動力伝達
制御を中止されるので、トルクを増加させたい外輪側か
らトルクを減少させたい内輪側へとトルク移動してしま
うような不具合が回避される。
【0132】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0133】特に、この時、クラッチディスク間での速
度偏差が少ない方(つまり、回転速度の大小関係が逆転
した方)の多板クラッチ機構57,58の係合を制御す
るので、速度偏差が多い方(つまり、回転速度の大小関
係が逆転しない方)の多板クラッチ機構57,58の係
合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大幅に
低減される利点もある。
【0134】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第6実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0135】この実施例では、図13に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力を入力
される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された駆動力
を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14とが設け
られており、これらの回転軸13,14と入力軸6Aと
の間に本装置が介装されている。そして、この車両用左
右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9Fは、次のよ
うな構成により、左輪回転軸13と右輪回転軸14との
差動を許容しながら、左輪回転軸13と右輪回転軸14
とに伝達される駆動力を所要の比率に配分できるように
なっている。
【0136】すなわち、左輪回転軸13と入力軸6Aと
の間及び右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に、それぞ
れ変速機構60と多板クラッチ機構12とが介装されて
おり、左輪回転軸13又は右輪回転軸14の回転速度
が、変速機構60により減速されて変速機構の出力部
(駆動力伝達補助部材)としての中空軸11に出力され
るようになっている。
【0137】多板クラッチ機構12は、この中空軸11
と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装されてお
り、この多板クラッチ機構12を係合させることで、高
速側のデフケース8Aから低速側の中空軸11へ駆動力
が送給されるようになっている。これは、対向して配設
されたクラッチ板における一般的な特性として、トルク
の伝達が、速度の速い方から遅い方へ行なわれるためで
ある。
【0138】したがって、例えば、右輪回転軸14と入
力軸6Aとの間の多板クラッチ機構12が係合される
と、右輪回転軸14へ配分される駆動力は、多板クラッ
チ機構12を介して入力軸6A側からの直接ルートで増
加されて、この分だけ、左輪回転軸13へ配分される駆
動力が増加する。上述の変速機構60は、1つのプラネ
タリギヤ機構で構成されており、右輪回転軸14に設け
られた変速機構60を例に説明すると次のようになる。
【0139】すなわち、右輪回転軸14にはサンギヤ6
0Aが固着されており、このサンギヤ60Aは、その外
周においてプラネタリギヤ(プラネタリピニオン)60
Bに噛合している。プラネタリギヤ60Bを枢支するピ
ニオンシャフト60Cは中空軸11に軸支され、中空軸
11がプラネタリギヤ機構のキャリヤとして機能するよ
うになっている。また、プラネタリギヤ60Bは、駆動
力伝達制御機構9Fのケース等に回転しないように固定
されたリングギヤ60Dに噛合している。
【0140】このようなプラネタリギヤ機構では、プラ
ネタリギヤ60Bの公転速度は、サンギヤ60Aの回転
速度よりも小さいので、中空軸(つまり、変速機構60
の出力部)11は、右輪回転軸14よりも低速で回転す
る。したがって、変速機構60は、減速機構として機能
するようになっている。このため、クラッチ板12Aの
回転速度がクラッチ板12Bよりも小さく、多板クラッ
チ機構12を係合させた場合には、この係合状態に応じ
た量のトルクが、入力軸6A側から右輪回転軸14側へ
送給されるようになっている。
【0141】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構60及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13
により多く配分したい場合には、その配分したい程度
(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板クラッチ機
構12を適当に係合し、右輪回転軸14により多く配分
したい場合には、その配分比に応じて右輪回転軸14側
の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0142】このとき、多板クラッチ機構12が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構12の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。なお、左右の多板ク
ラッチ機構12が同時に完全係合することのないように
設定されており、左右の多板クラッチ機構12のうち一
方が完全係合したら他方の多板クラッチ機構12は滑り
を生じるようになっている。
【0143】さらに、常に、左輪回転軸13側の多板ク
ラッチ機構12を係合することで左輪側により多くトル
ク配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ機構12
を係合することで右輪側により多くトルク配分できるの
で、左輪側へのトルク配分増加も右輪側へのトルク配分
増加も常に行なえる。したがって、旋回時に外輪側への
トルク移動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外
輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡
により車両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回
時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上さ
せることができるのである。
【0144】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構12の係合状態を制御する。
【0145】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構12の対向するクラッチ
板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向
へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板クラッ
チ機構12,12をともにフリーにし、いずれの多板ク
ラッチ機構12,12でも所望の方向へのトルク伝達を
実現できる場合には、クラッチディスク12A,12B
の間での速度偏差が少ない方の多板クラッチ機構12の
係合を制御してトルク伝達を実現させるように制御する
ようになっている。
【0146】本発明の第6実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の実施例と同様に、左右輪速度比αが速度比Smax 以
上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギーロ
スを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトル
クの所要量を他方に転送することによりトルク配分が調
整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来
することなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0147】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0148】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0149】特に、この時、クラッチディスク12A,
12Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構12の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構12
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0150】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第7実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0151】この実施例では、図14に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、入力軸6Aと第1
及び右輪回転軸13,14とが設けられており、左輪回
転軸13と右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に車両用
左右駆動力調整装置が介装されている。そして、この車
両用左右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9Gは、
第6実施例(図12参照)と同様の変速機構60をそな
えているが、この変速機構60は入力軸6A側に連結さ
れており、入力軸6A側の回転を増速して回転軸13,
14の側に出力するようになっている。
【0152】そして、第6実施例における多板クラッチ
機構12に代えて、例えば摩擦クラッチ等のカップリン
グ61が、変速機構60の出力部60Aと回転軸13,
14との間に介装されている。摩擦クラッチの場合に
は、トルク伝達方向が一方向のものを所要の方向(それ
ぞれのトルク伝達方向)向けて設置する。変速機構60
は、1つのプラネタリギヤ機構で構成されており、右輪
回転軸14に設けられた変速機構60を例に説明する
と、カップリング61の一方(入力側)にサンギヤ60
Aが固着され、サンギヤ60Aは、その外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)60Bに噛合して
いる。そして、プラネタリギヤ60Bを枢支するピニオ
ンシャフト60Cはデフケース8Aから延設されたキャ
リヤ60Eに軸支されている。また、プラネタリギヤ6
0Bは、駆動力伝達制御機構9Gのケース等に回転しな
いように固定されたリングギヤ60Dに噛合している。
【0153】このようなプラネタリギヤ機構では、プラ
ネタリギヤ60Bの公転速度は、サンギヤ60Aの回転
速度よりも小さいので、サンギヤ60A側(つまり、変
速機構60の出力部)は、中空軸11よりも高速で回転
する。したがって、変速機構60は、増速機構として機
能するようになっている。このため、左右輪の回転差が
小さく、回転軸14がデフケース8Aに近い速度で回転
しているときに、カップリング61を係合させた場合に
は、この係合状態に応じた量のトルクが、デフケース8
A側(つまり、入力軸6A側)から右輪回転軸14側へ
送給されるようになっている。
【0154】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構60及びカップリング61も同様に構成されてお
り、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13によ
り多く配分したい場合には、その配分したい程度(配分
比)に応じて左輪回転軸13側のカップリング61を適
当に係合し、右輪回転軸14により多く配分したい場合
には、その配分比に応じて右輪回転軸14側のカップリ
ング61を適当に係合する。
【0155】このとき、カップリング61の係合状態を
制御することで、入力軸6Aから左輪回転軸13又は右
輪回転軸14への駆動力の送給量(つまりは駆動力の左
右配分比)を適当な精度で調整することができるように
なっている。なお、ここでも、左右のカップリング61
が同時に完全係合することのないように設定されてお
り、左右のカップリング61のうち一方が完全係合した
ら他方は滑りを生じるようになっている。
【0156】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右のカップリング6
1の係合状態を制御する。
【0157】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(カップリング61の対向するクラッチ板間
の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向への
トルク伝達を実現できない場合には、両カップリング6
1,61をともにフリーにし、いずれのカップリング6
1,61でも所望の方向へのトルク伝達を実現できる場
合には、対向部材間での速度偏差が少ない方のカップリ
ング61の係合を制御してトルク伝達を実現させるよう
に制御するようになっている。
【0158】本発明の第7実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の実施例と同様に、左右輪速度比αが速度比Smax 以
上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギーロ
スを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトル
クの所要量を他方に転送することによりトルク配分が調
整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来
することなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0159】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、カッ
プリング61の係合が解除されて駆動力伝達制御を中止
されるので、トルクを増加させたい外輪側からトルクを
減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうような不
具合が回避される。
【0160】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0161】特に、この時、カップリング61の対向部
材において速度偏差が少ない方(つまり、回転速度の大
小関係が逆転した方)のカップリング61の係合を制御
するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速度の大小
関係が逆転しない方)のカップリング61の係合を制御
する場合に比べて、トルク伝達のロスが大幅に低減され
る利点もある。
【0162】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構や、油圧式や電磁式の摩擦
クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式ある
いは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用いる
こともできる。次に、第8実施例について説明すると、
この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図1
に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、ここで
は説明を省略する。
【0163】この実施例では、図15に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力を入力
される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された駆動力
を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14とが設け
られており、回転軸13,14と入力軸6Aとの間に車
両用左右駆動力調整装置が介装されている。そして、こ
の車両用左右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9H
は、次のような構成により、左輪回転軸13と右輪回転
軸14との差動を許容しながら、左輪回転軸13と右輪
回転軸14とに伝達される駆動力を所要の比率に配分で
きるようになっている。
【0164】すなわち、左輪回転軸13と入力軸6Aと
の間及び右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に、それぞ
れ変速機構62と多板クラッチ機構12とが介装されて
いるが、この変速機構62は、回転速度を出力部で増速
して出力することと減速して出力することができ、増速
して出力する状態(増速出力状態)と減速して出力する
状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構63が付
設されている。このため、変速機構62及び多板クラッ
チ機構12は一方の出力軸側(ここでは、左輪回転軸1
3の側)にそれぞれ1つだけ設けられている。
【0165】上述の変速機構62は、互いに直列に結合
された3組のプラネタリギヤ機構で構成されている。す
なわち、左輪回転軸13の側には、大径のサンギヤ62
Aと小径のサンギヤ62Dとがそなえられ、これらのサ
ンギヤ62A,62Dは、それぞれその外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)62B,62Eに
噛合している。
【0166】これらのプラネタリギヤ62B,62Eは
共通のキャリヤ(固定部)に軸支されたピニオンシャフ
ト62Cに一体回転するように装備されており、サンギ
ヤ62A,62Dの径の関係とは逆に、プラネタリギヤ
62Bは、プラネタリギヤ62Eよりも小径に設定され
ている。さらに、このピニオンシャフト62Cには、も
う1つのプラネタリギヤ62Fが一体回転するように装
備され、このプラネタリギヤ62Fに、中空軸11に固
着されているもう1つのサンギヤ62Gが噛合してい
る。なお、サンギヤ62Gの径はサンギヤ62Aの径よ
りも小さく且つサンギヤ62Dの径よりも大きく設定さ
れ、プラネタリギヤ62Fの径はプラネタリギヤ62B
の径よりも大きくプラネタリギヤ62Eの径よりも小さ
く設定されている。
【0167】そして、サンギヤ62A,62Dと左輪回
転軸13との間に、切替機構63が設けられている。こ
の切替機構63は、電磁式アクチュエータ(ソレノイ
ド)63Aと、このアクチュエータ63Aで駆動される
スライドレバー63Bと、このスライドレバー63Bで
駆動される連結部材63Cと、左輪回転軸13に設けら
れたハブ64と、サンギヤ62Aの内周に設けられたハ
ブ65と、サンギヤ62Dの内周に設けられたハブ66
とから構成される。なお、電磁式アクチュエータ63A
は、コントロールユニット18によって作動を制御され
るようになっている。
【0168】連結部材63Cは、その内周でハブ64と
セレーション結合してこのハブ64と常時一体に回転す
るようになっており、連結部材63Cの軸方向位置に対
応して、その内周でハブ65又はハブ66とセレーショ
ン結合して一体に回転しうるようになっている。つま
り、連結部材63Cが、スライドレバー63Bで後進状
態(図15中、左方に移動した状態)に駆動されると、
その外周がハブ65とセレーション結合してこのハブ6
5と一体に回転し、スライドレバー63Bで前進状態
(図15中、右方に移動した状態)に駆動されると、そ
の外周がハブ66とセレーション結合してこのハブ66
と一体に回転するようになっている。
【0169】したがって、連結部材63Cが後進状態の
ときには、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63
C,ハブ65を介してサンギヤ62Aと連結して、左輪
回転軸13の回転は、サンギヤ62A,プラネタリギヤ
62B,ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ6
2F,サンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力され
る。そして、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Aの径
よりも小さく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタ
リギヤ62Bの径よりも大きいので、サンギヤ62Gは
サンギヤ62Aよりも高速で回転する。即ち、中空軸1
1は左輪回転軸13よりも高速で回転することになり、
変速機構62は増速機構として機能するようになってい
る。
【0170】また、連結部材63Cが前進状態のときに
は、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63C,ハブ
66を介してサンギヤ62Dと連結して、左輪回転軸1
3の回転は、サンギヤ62D,プラネタリギヤ62E,
ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ62F,サ
ンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力される。そし
て、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Dの径よりも大
きく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタリギヤ6
2Eの径よりも小さいので、サンギヤ62Gはサンギヤ
62Dよりも低速で回転する。即ち、中空軸11は左輪
回転軸13よりも低速で回転することになり、変速機構
62は減速機構として機能するようになっている。
【0171】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装
されており、この多板クラッチ機構12を係合させるこ
とで、デフケース8Aと中空軸11との間で駆動力の授
受が行なわれるようになっている。したがって、例え
ば、連結部材63Cを後進状態とすると、変速機構62
の出力部としての中空軸11は左輪回転軸13よりも高
速で回転して、比較的高速の中空軸11側からデフケー
ス8A側へと駆動力が返送され、この分だけ、左輪回転
軸13側へ配分される駆動力が減少して、逆に、右輪回
転軸14側へ配分される駆動力は、この分だけ増加す
る。
【0172】また、例えば、連結部材63Cを前進状態
とすると、変速機構62の出力部としての中空軸11は
左輪回転軸13よりも低速で回転して、比較的高速のデ
フケース8A側から中空軸11側へと駆動力が返送さ
れ、この分だけ、左輪回転軸13側へ配分される駆動力
が増加して、逆に、右輪回転軸14側へ配分される駆動
力は、この分だけ減少する。
【0173】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構12の係合状態を制御する。
【0174】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構12の対向するクラッチ
板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向
へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板クラッ
チ機構12,12をともにフリーにし、いずれの多板ク
ラッチ機構12,12でも所望の方向へのトルク伝達を
実現できる場合には、クラッチディスク12A,12B
の間での速度偏差が少ない方の多板クラッチ機構12の
係合を制御してトルク伝達を実現させるように制御する
ようになっている。
【0175】本発明の第8実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の実施例と同様に、左右輪速度比αが速度比Smax 以
上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギーロ
スを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトル
クの所要量を他方に転送することによりトルク配分が調
整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来
することなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0176】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0177】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0178】特に、この時、クラッチディスク12A,
12Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構12の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構12
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0179】さらに、変速機構62及び多板クラッチ機
構12はそれぞれ1つだけ設ければよいので、スペース
上やコスト上で有利になる。なお、この実施例でも、第
1実施例と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構
として、油圧式や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油
圧式や電磁式の摩擦クラッチやVCUやHCU、さらに
は、電磁流体式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカ
ップリングを用いることもできる。
【0180】次に、第9実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図1に
示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、ここでは
説明を省略する。この実施例では、図16に示すよう
に、第1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力
を入力される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された
駆動力を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14と
が設けられており、回転軸13,14との間に車両用左
右駆動力調整装置が介装されている。
【0181】そして、この車両用左右駆動力調整装置の
駆動力伝達制御機構9Iは、次のような構成により、左
輪回転軸13と右輪回転軸14との差動を許容しなが
ら、左輪回転軸13と右輪回転軸14とに伝達される駆
動力を所要の比率に配分できるようになっている。すな
わち、左輪回転軸13と右輪回転軸14との間に、それ
ぞれ変速機構99と多板クラッチ機構12とが介装され
ており、この変速機構99は、右輪回転軸14の回転速
度を増速して出力することと減速して出力することがで
き、増速して出力する状態(増速出力状態)と減速して
出力する状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構
101が付設されている。このため、変速機構99及び
多板クラッチ機構12はそれぞれ1つだけ設けられてい
る。
【0182】上述の変速機構99は、左輪回転軸13と
これと平行な軸(カウンタシャフト)99Cとの間にそ
れぞれ設けられた3組のギヤ機構で構成されている。す
なわち、カウンタシャフト99Cの側には、小径のギヤ
99Aと大径のギヤ99Bとがそなえられ、左輪回転軸
13には、大径のギヤ14Aと小径のギヤ14Bとがそ
なえられ、ギヤ99Aとギヤ14Aとが噛合し、ギヤ9
9Bとギヤ14Bとが噛合している。ただし、ギヤ99
A,99Bは、カウンタシャフト99Cと切替機構10
1を介して接続され、切替機構101の状態に応じて、
カウンタシャフト99Cに対して相対回転したり、一体
回転しうるようになっている。
【0183】さらに、カウンタシャフト99Cの左輪側
端部には中径のギヤ99Dがそなえられ、左輪回転軸1
3の側には中径のギヤ100Cがそなえられ、これらの
ギヤ99D,100Cが噛合している。そして、ギヤ1
00Cと左輪回転軸13との間に多板クラッチ機構12
が介装されている。また、上述の切替機構101は、電
磁式アクチュエータ(ソレノイド)101Aと、このア
クチュエータ101Aで駆動されるスライドレバー10
1Bと、このスライドレバー101Bで駆動される連結
部材101Cと、カウンタシャフト99Cに設けられた
ハブ67と、ギヤ99Aに結合されたハブ68と、サン
ギヤ99Bに結合されたハブ69とから構成される。な
お、電磁式アクチュエータ101Aは、コントロールユ
ニット18によって作動を制御されるようになってい
る。
【0184】連結部材101Cは、ハブ67とハブ68
とにセレーション結合してこのハブ67とハブ68とを
一体に回転する態位と、ハブ67とハブ69とにセレー
ション結合してこのハブ67とハブ69とを一体に回転
する態位とをとりうるようになっている。つまり、連結
部材101Cが、スライドレバー101Bで後進状態
(図16中、左方に移動した状態)に駆動されると、連
結部材101Cを通じてハブ67とハブ68とが一体に
回転するようになり、スライドレバー101Bで前進状
態(図16中、右方に移動した状態)に駆動されると、
連結部材101Cを通じてハブ67とハブ69とが一体
に回転するようになっている。
【0185】したがって、連結部材101Cが後進状態
のときには、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14A,9
9A,ハブ67,連結部材101C,ハブ68を介して
カウンタシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99
E,100Cを介して多板クラッチ機構12に伝達され
るようになっている。このときには、ギヤ14A,99
A,99E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ
100Cは右輪回転軸14よりも高速で回転する。つま
り、右輪回転軸14の回転は増速されてギヤ100Cに
出力される。
【0186】また、連結部材101Cが前進状態のとき
には、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14B,99B,
ハブ67,連結部材101C,ハブ69を介してカウン
タシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99E,1
00Cを介して多板クラッチ機構12に伝達されるよう
になっている。このときには、ギヤ14B,99B,9
9E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ100
Cは右輪回転軸14よりも低速で回転する。つまり、右
輪回転軸14の回転は減速されてギヤ100Cに出力さ
れる。
【0187】つまり、連結部材101Cが後進状態のと
きに多板クラッチ機構12を係合させると、増速された
ギヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転
軸13の側のクラッチプレートよりも高速回転するの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側にトルクが
伝達される。また、連結部材101Cが前進状態のとき
に多板クラッチ機構12を係合させると、減速されたギ
ヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転軸
13の側のクラッチプレートよりも低速回転するので、
左輪回転軸13側から右輪回転軸14側にトルクが伝達
される。
【0188】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構12の係合状態を制御する。
【0189】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構12の対向するクラッチ
板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向
へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板クラッ
チ機構12,12をともにフリーにし、いずれの多板ク
ラッチ機構12,12でも所望の方向へのトルク伝達を
実現できる場合には、クラッチディスク12A,12B
の間での速度偏差が少ない方の多板クラッチ機構12の
係合を制御してトルク伝達を実現させるように制御する
ようになっている。
【0190】本発明の第9実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の実施例と同様に、左右輪速度比αが速度比Smax 以
上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギーロ
スを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトル
クの所要量を他方に転送することによりトルク配分が調
整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来
することなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0191】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0192】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0193】特に、この時、クラッチディスク12A,
12Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構12の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構12
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0194】さらに、変速機構99及び多板クラッチ機
構12はそれぞれ1つだけ設ければよいので、スペース
上やコスト上で有利になる。なお、この実施例でも、第
1実施例と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構
として、油圧式や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油
圧式や電磁式の摩擦クラッチやVCUやHCU、さらに
は、電磁流体式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカ
ップリングを用いることもできる。
【0195】次に、第10実施例について説明すると、
この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車は前輪
駆動車であって、本装置は否駆動輪(エンジン出力を与
えられない車輪)である後輪15,16の側に設けら
れ、その駆動力伝達制御機構90Aは、後輪15,16
の回転軸13,14の間に設けら、第1実施例の駆動力
伝達制御機構9Aを否駆動輪に適用したものである。
【0196】つまり、図17に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、右
輪回転軸14側には変速機構91が設けられ、左輪回転
軸13側には変速機構92が設けられており、変速機構
91の出力部と左輪回転軸13との間には油圧式多板ク
ラッチ機構93が介装され、変速機構92の出力部と左
輪回転軸14と連動して等速回転する中空軸95との間
には第1実施例と同様にコントローラ18で制御される
油圧式多板クラッチ機構94が介装されている。なお、
93A,93B,94A,94Bはクラッチプレートで
ある。
【0197】このうち、変速機構91は、右輪回転軸1
4に一体回転するように取り付けられたサンギヤ91A
と、サンギヤ91Aと噛合するプラネタリギヤ91B
と、このプラネタリギヤ91Bを枢支するプラネタリシ
ャフト91Cに設置されプラネタリギヤ91Bと一体回
転するプラネタリギヤ91Dと、プラネタリギヤ91D
と噛合するサンギヤ93Cとから構成される。
【0198】そして、サンギヤ93Cはサンギヤ91A
よりも大径に設定され、プラネタリギヤ91Dはプラネ
タリギヤ91Bよりも大径に設定され小径に設定されて
いるので、サンギヤ93Cはサンギヤ91Aよりも低速
で回転する。したがって、変速機構91は、右輪回転軸
14の回転を減速してサンギヤ93Cの回転として出力
するようになっている。
【0199】このため、油圧式多板クラッチ機構93が
係合すると、減速されたサンギヤ93C側のクラッチプ
レート93Aよりも左輪回転軸13側のクラッチプレー
ト93Bの方が回転が速いので、左輪回転軸13側から
サンギヤ93C側つまり右輪回転軸14側へ駆動力が伝
達される。この場合、左輪回転軸13及び右輪回転軸1
4は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの駆動力
は供給されないが、左輪回転軸13は路面から受ける回
転反力を右輪回転軸14へ与えることになる。つまり、
左輪回転軸13に連結された左輪15は路面に制動力を
与えこの一方で路面から回転反力を受け、右輪回転軸1
4に連結された右輪16は左輪回転軸13側から受けた
駆動力を路面に与えるようになる。制動力は負の駆動力
と考えられるので、否駆動輪でありながら、左輪回転軸
13と右輪回転軸14との駆動力配分が調整されること
になる。
【0200】また、変速機構92は、左輪回転軸14に
一体回転するように取り付けられたサンギヤ92Aと、
サンギヤ92Aと噛合するプラネタリギヤ92Bと、こ
のプラネタリギヤ92Bを枢支するプラネタリシャフト
92Cに設置されプラネタリギヤ92Bと一体回転する
プラネタリギヤ92Dと、プラネタリギヤ92Dと噛合
するサンギヤ94Cとから構成される。
【0201】そして、サンギヤ94Cはサンギヤ92A
よりも大径に設定され、プラネタリギヤ92Dはプラネ
タリギヤ92Bよりも大径に設定され小径に設定されて
いるので、サンギヤ94Cはサンギヤ92Aよりも低速
で回転する。したがって、変速機構92は、左輪回転軸
13の回転を減速してサンギヤ94Cの回転として出力
するようになっている。
【0202】また、油圧式多板クラッチ機構94の一方
のクラッチプレート94Bの取り付けられる中空軸95
は、これと一体回転するサンギヤ95A,このサンギヤ
95Aと噛合してプラネタリシャフト91Cに取り付け
られたプラネタリギヤ91E,プラネタリシャフト91
C,プラネタリギヤ91B及びサンギヤ91Aを介し
て、右輪回転軸14と連係されている。
【0203】そして、サンギヤ95Aがサンギヤ91A
と同径に設定され、プラネタリギヤ91Eがプラネタリ
ギヤ91Bと同径に設定されているので、中空軸95
は、常に右輪回転軸14と等しい速度で連動するように
なっている。このため、油圧式多板クラッチ機構94が
係合すると、減速されたサンギヤ94C側のクラッチプ
レート94Aよりも中空軸95側(つまり、右輪回転軸
14側)のクラッチプレート94Bの方が回転が速いの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側へ駆動力が
伝達される。
【0204】この場合にも、左輪回転軸13及び右輪回
転軸14は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの
駆動力は供給されないが、右輪回転軸14は路面から受
ける回転反力を左輪回転軸13へ与えることになる。つ
まり、右輪回転軸14に連結された右輪16は路面に制
動力を与えこの一方で路面から回転反力を受け、左輪回
転軸13に連結された左輪15は右輪回転軸14側から
受けた駆動力を路面に与えるようになり、否駆動輪であ
りながら、左輪回転軸13と右輪回転軸14との駆動力
配分が調整されることになる。
【0205】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構93,94の係合状態を制御する。
【0206】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構93,94の対向するク
ラッチ板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望
の方向へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板
クラッチ機構93,94をともにフリーにし、いずれの
多板クラッチ機構93,94でも所望の方向へのトルク
伝達を実現できる場合には、クラッチディスク93A,
93B又は94A,94Bの間での速度偏差が少ない方
の多板クラッチ機構93又は94の係合を制御してトル
ク伝達を実現させるように制御するようになっている。
【0207】本発明の第10実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
左右輪速度比αが速度比Smax 以上でない通常の走行時
には、エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪であり
ながら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かか
る調整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させ
たり、走行安定性を向上させたりできるようになる。
【0208】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構93,94の係合が解除されて駆動力伝達
制御を中止されるので、トルクを増加させたい外輪側か
らトルクを減少させたい内輪側へとトルク移動してしま
うような不具合が回避される。
【0209】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0210】特に、この時、クラッチディスク93A,
93B,94A,94Bの間での速度偏差が少ない方
(つまり、回転速度の大小関係が逆転した方)の多板ク
ラッチ機構93,94の係合を制御するので、速度偏差
が多い方(つまり、回転速度の大小関係が逆転しない
方)の多板クラッチ機構93,94の係合を制御する場
合に比べて、トルク伝達のロスが大幅に低減される利点
もある。
【0211】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第11実施例について説明す
ると、この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車
も前輪駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪1
5,16の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90
Bは、後輪15,16の回転軸13,14の間に設けら
れており、第5実施例の機構9Eを否駆動輪に適用した
ものである。
【0212】つまり、図18に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの回転軸13,14間には変速機構96が設けら
れ、左輪回転軸13側には、変速機構96の増速出力部
との間に油圧式多板クラッチ機構97が設けられ、変速
機構96の減速出力部との間に油圧式多板クラッチ機構
98が設けられている。
【0213】変速機構96は、右輪回転軸14に設けら
れたギヤ14Aと、回転軸13,14と平行に設置され
た軸(カウンタシャフト)96Bと、このカウンタシャ
フト96Bに設けられてギヤ14Aと噛合するギヤ96
Aと、油圧式多板クラッチ機構97を介して左輪回転軸
13側に設けられたギヤ97Cと、油圧式多板クラッチ
機構98を介して左輪回転軸13側に設けられたギヤ9
8Cと、カウンタシャフト96Bに設けられてギヤ97
Cと噛合するギヤ96Cと、カウンタシャフト96Bに
設けられてギヤ98Cと噛合するギヤ96Dとから構成
される。
【0214】そして、ギヤ97Cはギヤ14Aよりも小
径に、ギヤ98Cはギヤ14Aよりも大径に設定され、
ギヤ96Cはギヤ96Aよりも大径に、ギヤ96Dはギ
ヤ96Aよりも小径に設定されている。したがって、ギ
ヤ97Cは、ギヤ14A,ギヤ96A,ギヤ96C,ギ
ヤ97Cのルートで回転力を伝達されて、ギヤ14Aよ
りも高速で回転し、このギヤ97Cが変速機構96の増
速出力部となっている。また、ギヤ98Cは、ギヤ14
A,ギヤ96A,ギヤ96D,ギヤ98Cのルートで回
転力を伝達されて、ギヤ14Aよりも低速で回転し、こ
のギヤ98Cが変速機構96の減速出力部となってい
る。
【0215】このため、油圧式多板クラッチ機構97が
係合すると、増速されたギヤ97C側のクラッチプレー
ト97Bよりも左輪回転軸13側のクラッチプレート9
7Aの方が回転が遅いので、右輪回転軸14側から左輪
回転軸13側へ駆動力が伝達される。逆に、油圧式多板
クラッチ機構98が係合すると、減速されたギヤ98C
側のクラッチプレート98Bよりも左輪回転軸13側の
クラッチプレート98Aの方が回転が速いので、左輪回
転軸13側から右輪回転軸14側へ駆動力が伝達され
る。
【0216】この場合も、左輪回転軸13及び右輪回転
軸14は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの駆
動力は供給されないが、駆動力を与える側の回転軸13
又は14は路面から受ける回転反力を一方の回転軸14
又は13へ与えることになる。つまり、駆動力を与える
側の回転軸13又は14に連結された車輪15又は16
は路面に制動力を与えこの一方で路面から回転反力を受
け、駆動力を受ける側の回転軸14又は13に連結され
た右輪16又は15はこの回転反力を受けて駆動力とし
て路面に伝えるようになる。
【0217】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構97,98の係合状態を制御する。
【0218】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構97,98の対向するク
ラッチ板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望
の方向へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板
クラッチ機構97,98をともにフリーにし、いずれの
多板クラッチ機構97,98でも所望の方向へのトルク
伝達を実現できる場合には、クラッチディスク97A,
97B又は98A,98Bの間での速度偏差が少ない方
の多板クラッチ機構97又は98の係合を制御してトル
ク伝達を実現させるように制御するようになっている。
【0219】本発明の第11実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
左右輪速度比αが速度比Smax 以上でない通常の走行時
には、エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪であり
ながら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かか
る調整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させ
たり、走行安定性を向上させたりできるようになる。
【0220】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構97,98の係合が解除されて駆動力伝達
制御を中止されるので、トルクを増加させたい外輪側か
らトルクを減少させたい内輪側へとトルク移動してしま
うような不具合が回避される。
【0221】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0222】特に、この時、クラッチディスク97A,
97B,98A,98Bの間での速度偏差が少ない方
(つまり、回転速度の大小関係が逆転した方)の多板ク
ラッチ機構97,98の係合を制御するので、速度偏差
が多い方(つまり、回転速度の大小関係が逆転しない
方)の多板クラッチ機構97,98の係合を制御する場
合に比べて、トルク伝達のロスが大幅に低減される利点
もある。
【0223】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第12実施例について説明す
ると、この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車
も前輪駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪1
5,16の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90
Cは、後輪15,16の回転軸13,14の間に設けら
れており、第9実施例の機構9Iを否駆動輪に適用した
ものである。
【0224】つまり、図19に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの左輪回転軸13と右輪回転軸14との間には、変
速機構99と多板クラッチ機構12とが介装されてお
り、この変速機構99は、右輪回転軸14の回転速度を
増速して出力することと減速して出力することができ、
増速して出力する状態(増速出力状態)と減速して出力
する状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構10
1が付設されている。このため、変速機構99及び多板
クラッチ機構12はそれぞれ1つだけ設けられている。
【0225】上述の変速機構99は、左輪回転軸13と
これと平行な軸(カウンタシャフト)99Cとの間にそ
れぞれ設けられた3組のギヤ機構で構成されている。す
なわち、カウンタシャフト99Cの側には、小径のギヤ
99Aと大径のギヤ99Bとがそなえられ、左輪回転軸
13には、大径のギヤ14Aと小径のギヤ14Bとがそ
なえられ、ギヤ99Aとギヤ14Aとが噛合し、ギヤ9
9Bとギヤ14Bとが噛合している。
【0226】ただし、ギヤ99A,99Bは、カウンタ
シャフト99Cと切替機構101を介して接続され、切
替機構101の状態に応じて、カウンタシャフト99C
に対して相対回転したり、一体回転しうるようになって
いる。さらに、カウンタシャフト99Cの側には中径の
ギヤ99Eがそなえられ、左輪回転軸13の側には中径
のギヤ100Cがそなえられ、これらのギヤ99E,1
00Cが噛合している。そして、ギヤ100Cと左輪回
転軸13との間に多板クラッチ機構12が介装されてい
る。
【0227】また、上述の切替機構101は、電磁式ア
クチュエータ(ソレノイド)101Aと、このアクチュ
エータ101Aで駆動されるスライドレバー101B
と、このスライドレバー101Bで駆動される連結部材
101Cと、カウンタシャフト99Cに設けられたハブ
67と、ギヤ99Aに結合されたハブ68と、サンギヤ
99Bに結合されたハブ69とから構成される。なお、
電磁式アクチュエータ101Aは、コントロールユニッ
ト18によって作動を制御されるようになっている。
【0228】連結部材101Cは、ハブ67とハブ68
とにセレーション結合してこのハブ67とハブ68とを
一体に回転する態位と、ハブ67とハブ69とにセレー
ション結合してこのハブ67とハブ69とを一体に回転
する態位とをとりうるようになっている。つまり、連結
部材101Cが、スライドレバー101Bで後進状態
(図19中、左方に移動した状態)に駆動されると、連
結部材101Cを通じてハブ67とハブ68とが一体に
回転するようになり、スライドレバー101Bで前進状
態(図19中、右方に移動した状態)に駆動されると、
連結部材101Cを通じてハブ67とハブ69とが一体
に回転するようになっている。
【0229】したがって、連結部材101Cが後進状態
のときには、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14A,9
9A,ハブ67,連結部材101C,ハブ68を介して
カウンタシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99
E,100Cを介して多板クラッチ機構12に伝達され
るようになっている。このときには、ギヤ14A,99
A,99E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ
100Cは右輪回転軸14よりも高速で回転する。つま
り、右輪回転軸14の回転は増速されてギヤ100Cに
出力される。
【0230】また、連結部材101Cが前進状態のとき
には、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14B,99B,
ハブ67,連結部材101C,ハブ69を介してカウン
タシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99E,1
00Cを介して多板クラッチ機構12に伝達されるよう
になっている。このときには、ギヤ14B,99B,9
9E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ100
Cは右輪回転軸14よりも低速で回転する。つまり、右
輪回転軸14の回転は減速されてギヤ100Cに出力さ
れる。
【0231】つまり、連結部材101Cが後進状態のと
きに多板クラッチ機構12を係合させると、増速された
ギヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転
軸13の側のクラッチプレートよりも高速回転するの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側にトルクが
伝達される。また、連結部材101Cが前進状態のとき
に多板クラッチ機構12を係合させると、減速されたギ
ヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転軸
13の側のクラッチプレートよりも低速回転するので、
左輪回転軸13側から右輪回転軸14側にトルクが伝達
される。
【0232】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構12の係合状態を制御する。
【0233】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構12の対向するクラッチ
板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向
へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板クラッ
チ機構12,12をともにフリーにし、いずれの多板ク
ラッチ機構12,12でも所望の方向へのトルク伝達を
実現できる場合には、クラッチディスク12A,12B
の間での速度偏差が少ない方の多板クラッチ機構12の
係合を制御してトルク伝達を実現させるように制御する
ようになっている。本発明の第12実施例としての車両
用左右駆動力調整装置は、上述のように構成されている
ので、左右輪速度比αが速度比Smax 以上でない通常の
走行時には、エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪
でありながら、左右駆動力配分を調整できるようにな
り、かかる調整を利用して、例えば、車両の旋回性能を
向上させたり、走行安定性を向上させたりできるように
なる。
【0234】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0235】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0236】特に、この時、クラッチディスク12A,
12Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構12の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構12
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0237】さらに、変速機構99及び多板クラッチ機
構12はそれぞれ1つだけ設ければよいので、スペース
上やコスト上で有利になる。なお、この実施例でも、第
1実施例と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構
として、油圧式や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油
圧式や電磁式の摩擦クラッチやVCUやHCU、さらに
は、電磁流体式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカ
ップリングを用いることもできる。
【0238】次に、第13実施例について説明すると、
この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車も前輪
駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪15,1
6の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90Dは、
後輪15,16の回転軸13,14の間に設けられてお
り、第8実施例の機構9Hを否駆動輪に適用したもので
ある。
【0239】つまり、図20に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの左輪回転軸13と右輪回転軸14との間には、変
速機構62と多板クラッチ機構12とが介装されてい
る。この変速機構62は、回転速度を増速して出力部で
出力することと減速して出力することができ、増速して
出力する状態(増速出力状態)と減速して出力する状態
(減速出力状態)とを切り替える切替機構63が付設さ
れている。このため、変速機構62及び多板クラッチ機
構12は一方の出力軸側(ここでは、左輪回転軸13の
側)にそれぞれ1つだけ設けられている。
【0240】上述の変速機構62は、互いに直列に結合
された3組のプラネタリギヤ機構で構成されている。す
なわち、左輪回転軸13の側には、大径のサンギヤ62
Aと小径のサンギヤ62Dとがそなえられ、これらのサ
ンギヤ62A,62Dは、それぞれその外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)62B,62Eに
噛合している。
【0241】これらのプラネタリギヤ62B,62Eは
共通のキャリヤ(固定部)に軸支されたピニオンシャフ
ト62Cに一体回転するように装備されており、サンギ
ヤ62A,62Dの径の関係とは逆に、プラネタリギヤ
62Bは、プラネタリギヤ62Eよりも小径に設定され
ている。さらに、このピニオンシャフト62Cには、も
う1つのプラネタリギヤ62Fが一体回転するように装
備され、このプラネタリギヤ62Fに、中空軸11に固
着されているもう1つのサンギヤ62Gが噛合してい
る。なお、サンギヤ62Gの径はサンギヤ62Aの径よ
りも小さく且つサンギヤ62Dの径よりも大きく設定さ
れ、プラネタリギヤ62Fの径はプラネタリギヤ62B
の径よりも大きくプラネタリギヤ62Eの径よりも小さ
く設定されている。
【0242】そして、サンギヤ62A,62Dと左輪回
転軸13との間に、切替機構63が設けられている。こ
の切替機構63は、電磁式アクチュエータ(ソレノイ
ド)63Aと、このアクチュエータ63Aで駆動される
スライドレバー63Bと、このスライドレバー63Bで
駆動される連結部材63Cと、左輪回転軸13に設けら
れたハブ64と、サンギヤ62Aの内周に設けられたハ
ブ65と、サンギヤ62Dの内周に設けられたハブ66
とから構成される。なお、電磁式アクチュエータ63A
は、コントロールユニット18によって作動を制御され
るようになっている。
【0243】連結部材63Cは、その内周でハブ64と
セレーション結合してこのハブ64と常時一体に回転す
るようになっており、連結部材63Cの軸方向位置に対
応して、その内周でハブ65又はハブ66とセレーショ
ン結合して一体に回転しうるようになっている。つま
り、連結部材63Cが、スライドレバー63Bで後進状
態(図17中、左方に移動した状態)に駆動されると、
その外周がハブ65とセレーション結合してこのハブ6
5と一体に回転し、スライドレバー63Bで前進状態
(図17中、右方に移動した状態)に駆動されると、そ
の外周がハブ66とセレーション結合してこのハブ66
と一体に回転するようになっている。
【0244】したがって、連結部材63Cが後進状態の
ときには、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63
C,ハブ65を介してサンギヤ62Aと連結して、左輪
回転軸13の回転は、サンギヤ62A,プラネタリギヤ
62B,ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ6
2F,サンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力され
る。そして、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Aの径
よりも小さく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタ
リギヤ62Bの径よりも大きいので、サンギヤ62Gは
サンギヤ62Aよりも高速で回転する。即ち、中空軸1
1は左輪回転軸13よりも高速で回転することになり、
変速機構62は増速機構として機能するようになってい
る。
【0245】また、連結部材63Cが前進状態のときに
は、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63C,ハブ
66を介してサンギヤ62Dと連結して、左輪回転軸1
3の回転は、サンギヤ62D,プラネタリギヤ62E,
ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ62F,サ
ンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力される。そし
て、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Dの径よりも大
きく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタリギヤ6
2Eの径よりも小さいので、サンギヤ62Gはサンギヤ
62Dよりも低速で回転する。即ち、中空軸11は左輪
回転軸13よりも低速で回転することになり、変速機構
62は減速機構として機能するようになっている。
【0246】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装
されており、この多板クラッチ機構12を係合させるこ
とで、デフケース8Aと中空軸11との間で駆動力の授
受が行なわれるようになっている。したがって、例え
ば、連結部材63Cを後進状態とすると、変速機構62
の出力部としての中空軸11は左輪回転軸13よりも高
速で回転して、比較的高速の中空軸11側からデフケー
ス8A側へと駆動力が返送され、この分だけ、左輪回転
軸13側へ配分される駆動力が減少して、逆に、右輪回
転軸14側へ配分される駆動力は、この分だけ増加す
る。
【0247】また、例えば、連結部材63Cを前進状態
とすると、変速機構62の出力部としての中空軸11は
左輪回転軸13よりも低速で回転して、比較的高速のデ
フケース8A側から中空軸11側へと駆動力が返送さ
れ、この分だけ、左輪回転軸13側へ配分される駆動力
が増加して、逆に、右輪回転軸14側へ配分される駆動
力は、この分だけ減少する。
【0248】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18では、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;ただし、T
rは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定して、左右
輪の回転速度比が所定値以上でないと、この移動させた
いトルク量DTに応じて、上述の左右の多板クラッチ機
構12の係合状態を制御する。
【0249】そして、コントロールユニット18では、
第1実施例と同様に、車両の旋回走行時に左右輪の回転
速度比が大きくなって、左右輪の回転速度比が所定値以
上であると(多板クラッチ機構12の対向するクラッチ
板間の回転速度の大小関係が変わったら)、所望の方向
へのトルク伝達を実現できない場合には、両多板クラッ
チ機構12,12をともにフリーにし、いずれの多板ク
ラッチ機構12,12でも所望の方向へのトルク伝達を
実現できる場合には、クラッチディスク12A,12B
の間での速度偏差が少ない方の多板クラッチ機構12の
係合を制御してトルク伝達を実現させるように制御する
ようになっている。
【0250】本発明の第13実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
左右輪速度比αが速度比Smax 以上でない通常の走行時
には、エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪であり
ながら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かか
る調整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させ
たり、走行安定性を向上させたりできるようになる。
【0251】また、この場合も、ブレーキ等のエネルギ
ーロスを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方の
トルクの所要量を他方に転送することによりトルク配分
が調整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを
招来することなく、所望のトルク配分を得ることができ
る。そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪側へトル
ク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加させたい
外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪側の車輪
の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、左右輪速
度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板クラッチ
機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を中止され
るので、トルクを増加させたい外輪側からトルクを減少
させたい内輪側へとトルク移動してしまうような不具合
が回避される。
【0252】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、例え
ば、旋回終了時に、旋回動作を速く収束させるために、
外輪側から内輪側へのトルク移動制御については、例え
左右輪速度比|α|が速度比Smax以上になっても常に
行なえるので、車両の走行性の向上のためのトルク移動
制御を有効に行なえる利点がある。
【0253】特に、この時、クラッチディスク12A,
12Bの間での速度偏差が少ない方(つまり、回転速度
の大小関係が逆転した方)の多板クラッチ機構12の係
合を制御するので、速度偏差が多い方(つまり、回転速
度の大小関係が逆転しない方)の多板クラッチ機構12
の係合を制御する場合に比べて、トルク伝達のロスが大
幅に低減される利点もある。
【0254】さらに、変速機構99及び多板クラッチ機
構12はそれぞれ1つだけ設ければよいので、スペース
上やコスト上で有利になる。なお、この実施例でも、第
1実施例と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構
として、多板クラッチ機構の他に、摩擦クラッチやVC
UやHCU等の他のカップリングを用いることもでき、
これらの駆動系も、油圧駆動の他に、電磁力駆動等を用
いることも考えられる。
【0255】なお、上述の各実施例では、車両用左右駆
動力調整装置を後輪に装備しているが、かかる左右駆動
力調整装置は勿論前輪にも適用できる。特に、上述の第
1〜9実施例では、車両用左右駆動力調整装置を四輪駆
動車の後輪の駆動系に装備しているが、かかる左右駆動
力調整装置を四輪駆動車の前輪の駆動系や、後輪駆動車
の後輪の駆動系や、前輪駆動車の前輪の駆動系等に適用
できる。また、上述の第10〜13実施例では、車両用
左右駆動力調整装置を前輪駆動車の否駆動輪である後輪
に装備しているが、かかる左右駆動力調整装置を後輪駆
動車の否駆動輪である前輪にも適用できる。
【0256】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本
発明の車両用左右駆動力調整装置によれば、左輪及び右
輪と、上記左輪の回転速度を変速して上記右輪に選択的
に伝達する第1トルク伝達機構と、上記右輪の回転速度
を変速して上記左輪に選択的に伝達する第2トルク伝達
機構と、をそなえ、上記第1トルク伝達機構は第1クラ
ッチを有し、上記第2トルク伝達機構は第2クラッチを
有し、上記第1クラッチの係合力に応じて上記の左輪及
び右輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記の左輪及
び右輪のうちの他方へ伝達され、上記第2クラッチの係
合力に応じて上記の右輪及び左輪のうちの一方の駆動ト
ルクの一部が上記の右輪及び左輪のうちの他方へ伝達さ
れるように構成された車両用左右駆動力調整装置であっ
て、トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向か
う方向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを
設定するトルク伝達方向設定手段と、上記の左輪と右輪
との回転速度の比である左右輪回転速度比を検出する回
転速度比検出手段と、上記第1クラッチの入力と出力と
の各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速度比であ
る第1境界回転速度比を設定する第1境界回転速度比設
定手段と、上記第2クラッチの入力と出力との各回転速
度が一致する時の上記左右輪回転速度比である第2境界
回転速度比を設定する第2境界回転速度比設定手段と、
を有し、上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪
回転速度比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界
回転速度比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越
えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるク
ラッチを係合させることで上記トルク伝達方向設定手段
により設定されたトルク伝達方向と逆方向にトルク伝達
がなされる場合には、上記一方の境界回転速度比にかか
るクラッチの係合を禁止し、上記左右輪回転速度比の増
加に伴い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転
速度比及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の
境界回転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回
転速度比にかかるクラッチを係合させることで上記トル
ク伝達方向設定手段により設定されたトルク伝達方向と
同方向にトルク伝達がなされる場合には、上記一方の境
界回転速度比にかかるクラッチの係合を可能とするよう
構成されていることにより、急旋回等を伴わない通常
の走行時には、ブレーキ等のエネルギーロスを用いてト
ルク配分を調整するのでなく、一方のトルクの所要量を
他方に転送することによりトルク配分が調整されるた
め、大きなトルクロスやエネルギロスを招来することな
く、所望のトルク配分を得ることができる。
【0257】そして、急旋回等により駆動トルクの移動
方向が変わってしまうと、所望の方向への駆動力伝達が
実現しない場合には両トルク伝達機構の係合を解除し
て、駆動力伝達制御を中止されるので、トルクを増加さ
せたい外輪側からトルクを減少させたい内輪側へとトル
ク移動してしまうような不具合が回避される。また、ト
ルク伝達ロスやエネルギロスの増大による燃費の悪化
や、多板クラッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加に
よる耐久性の低下などの不具合を招くことなく駆動力を
制御できる。
【0258】
【0259】また、請求項記載の本発明の車両用左右
駆動力調整装置によれば、エンジンからの駆動力が伝達
される入力部と、左輪及び右輪と、上記入力部の駆動力
を上記の左輪及び右輪に分配する差動装置と、上記左輪
の回転速度を変速して上記入力部に選択的に伝達する第
1トルク伝達機構と、上記右輪の回転速度を変速して上
記入力部に選択的に伝達する第2トルク伝達機構と、を
そなえ、上記第1トルク伝達機構は第1クラッチを有
し、上記第2トルク伝達機構は第2クラッチを有し、上
記第1クラッチの係合力に応じて上記左輪及び上記入力
部のうちの一方の駆動トルクの一部が上記左輪及び上記
入力部のうちの他方へ伝達され、上記第2クラッチの係
合力に応じて上記右輪及び上記入力部のうちの一方の駆
動トルクの一部が上記右輪及び上記入力部のうちの他方
へ伝達されるように構成された車両用左右駆動力調整装
置であって、トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右
輪に向かう方向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向
なのかを設定するトルク伝達方向設定手段と、上記の左
輪と右輪との回転速度の比である左右輪回転速度比を検
出する回転速度比検出手段と、上記第1クラッチの入力
と出力との各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速
度比である第1境界回転速度比を設定する第1境界回転
速度比設定手段と、上記第2クラッチの入力と出力との
各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速度比である
第2境界回転速度比を設定する第2境界回転速度比設定
手段と、を有し、上記左右輪回転速度比の増加に伴い、
該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速度比及び
第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の境界回転速
度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度比に
かかるクラッチを係合させることで上記トルク伝達方向
設定手段により設定されたトルク伝達方向と逆方向にト
ルク伝達がなされる場合には、上記一方の境界回転速度
比にかかるクラッチの係合を禁止し、上記左右輪回転速
度比の増加に伴い、該左右輪回転速度比が、上記の第1
境界回転速度比及び第2境界回転速度比のうちのいずれ
か一方の境界回転速度比を越えた場合で、且つ、該一方
の境界回転速度比にかかるクラッチを係合させることで
上記トルク伝達方向設定手段により設定されたトルク伝
達方向と同方向にトルク伝達がなされる場合には、上記
一方の境界回転速度比にかかるクラッチの係合を可能と
するように構成されていることにより、トルク伝達ロス
やエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラッ
チ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の低
下などの不具合を招くことなく駆動力を制御できる。
【0260】そして、所望の方向への駆動力伝達が実現
しない場合には両トルク伝達機構の係合を解除して、駆
動力伝達制御を中止されるので、トルクを増加させたい
外輪側からトルクを減少させたい内輪側へとトルク移動
してしまうような不具合が回避される。また、トルク伝
達ロスやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板
クラッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久
性の低下などの不具合を招くことなく駆動力を制御でき
る。
【0261】また、請求項記載の本発明の車両用左右
駆動力調整装置によれば、エンジンからの駆動力が伝達
される入力部と、左輪及び右輪と、上記入力部の駆動力
を上記の左輪及び右輪に分配する差動装置と、上記入力
部の回転速度を変速して上記右輪に選択的に伝達する第
1トルク伝達機構と、上記入力部の回転速度を変速して
上記左輪に選択的に伝達する第2トルク伝達機構と、を
そなえ、上記第1トルク伝達機構は第1クラッチを有
し、上記第2トルク伝達機構は第2クラッチを有し、上
記第1クラッチの係合力に応じて上記入力部及び上記右
輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記入力部及び上
記右輪のうちの他方へ伝達され、上記第2クラッチの係
合力に応じて上記入力部及び上記左輪のうちの一方の駆
動トルクの一部が上記入力部及び上記左輪のうちの他方
へ伝達されるように構成された車両用左右駆動力調整装
置であって、トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右
輪に向かう方向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向
なのかを設定するトルク伝達方向設定手段と、上記の左
輪と右輪との回転速度の比である左右輪回転速度比を検
出する回転速度比検出手段と、上記第1クラッチの入力
と出力との各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速
度比である第1境界回転速度比を設定する第1境界回転
速度比設定手段と、上記第2クラッチの入力と出力との
各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速度比である
第2境界回転速度比を設定する第2境界回転速度比設定
手段と、を有し、上記左右輪回転速度比の増加に伴い、
該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速度比及び
第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の境界回転速
度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転速度比に
かかるクラッチを係合させることで上記トルク伝達方向
設定手段により設定されたトルク伝達方向と逆方向にト
ルク伝達がなされる場合には、上記一方の境界回転速度
比にかかるクラッチの係合を禁止し、上記左右輪回転速
度比の増加に伴い、該左右輪回転速度比が、上記の第1
境界回転速度比及び第2境界回転速度比のうちのいずれ
か一方の境界回転速度比を越えた場合で、且つ、該一方
の境界回転速度比にかかるクラッチを係合させることで
上記トルク伝達方向設定手段により設定されたトルク伝
達方向と同方向にトルク伝達がなされる場合には、上記
一方の境界回転速度比にかかるクラッチの係合を可能と
するように構成されていることにより、大きなトルクロ
スやエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配
分を得ることができ、トルクを増加させたい外輪側から
トルクを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまう
ような不具合も回避される。
【0262】そして、所望の方向への駆動力伝達が実現
しない場合には両トルク伝達機構の係合を解除して、駆
動力伝達制御を中止されるので、トルクを増加させたい
外輪側からトルクを減少させたい内輪側へとトルク移動
してしまうような不具合が回避される。また、トルク伝
達ロスやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板
クラッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久
性の低下などの不具合を招くことなく駆動力を制御でき
る。
【0263】また、請求項記載の本発明の車両用左右
駆動力調整装置は、左輪及び右輪と、上記の左輪及び右
輪のうちの一方の回転速度を増速して上記の左輪及び右
輪のうちの他方に選択的に伝達する第1トルク伝達機構
と、上記の左輪及び右輪のうちの一方の回転速度を減速
して上記の左輪及び右輪のうちの他方に選択的に伝達す
る第2トルク伝達機構と、をそなえ、上記第1トルク伝
達機構は第1クラッチを有し、上記第2トルク伝達機構
は第2クラッチを有し、上記第1クラッチの係合力に応
じて上記の左輪及び右輪のうちの一方の駆動トルクの一
部が上記の左輪及び右輪のうちの他方へ伝達され、上記
第2クラッチの係合力に応じて上記の右輪及び左輪のう
ちの一方の駆動トルクの一部が上記の右輪及び左輪のう
ちの他方へ伝達されるように構成された車両用左右駆動
力調整装置であって、トルク伝達すべき方向が上記の左
輪から右輪に向かう方向なのか上記の右輪から左輪に向
かう方向なのかを設定するトルク伝達方向設定手段と、
上記の左輪と右輪との回転速度の比である左右輪回転速
度比を検出する回転速度比検出手段と、上記第1クラッ
チの入力と出力との各回転速度が一致する時の上記左右
輪回転速度比である第1境界回転速度比を設定する第1
境界回転速度比設定手段と、上記第2クラッチの入力と
出力との各回転速度が一致する時の上記左右輪回転速度
比である第2境界回転速度比を設定する第2境界回転速
度比設定手段と、を有し、上記左右輪回転速度比の増加
に伴い、該左右輪回転速度比が、上記の第1境界回転速
度比及び第2境界回転速度比のうちのいずれか一方の境
界回転速度比を越えた場合で、且つ、該一方の境界回転
速度比にかかるクラッチを係合させることで上記トルク
伝達方向設定手段により設定されたトルク伝達方向と逆
方向にトルク伝達がなされる場合には、上記一方の境界
回転速度比にかかるクラッチの係合を禁止し、上記左右
輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度比が、上
記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度比のうち
のいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合で、且
つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを係合さ
せることで上記トルク伝達方向設定手段により設定され
たトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされる場合
には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッチの係
合を可能とするように構成されていることにより、より
コンパクトな構造で、大きなトルクロスやエネルギロス
を招来することなく、所望のトルク配分を得ることがで
き、トルクを増加させたい外輪側からトルクを減少させ
たい内輪側へとトルク移動してしまうような不具合も回
避される。
【0264】そして、トルクを増加させたい外輪側から
トルクを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまう
ような不具合も回避される。また、トルク伝達ロスやエ
ネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラッチ等
の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の低下な
どの不具合を招くことなく駆動力を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成
図である。
【図2】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図3】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達を説明する速度線図である。
【図4】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達の一例を説明する速度線図であ
る。
【図5】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成
図である。
【図7】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図8】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達を説明する速度線図である。
【図9】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達の一例を説明する速度線図であ
る。
【図10】本発明の第3実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図11】本発明の第4実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図12】本発明の第5実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図13】本発明の第6実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図14】本発明の第7実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図15】本発明の第8実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図16】本発明の第9実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図17】本発明の第10実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図18】本発明の第11実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図19】本発明の第12実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図20】本発明の第13実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図21】車両の旋回時の内外輪差を説明する模式図で
ある。
【図22】本発明の案出過程で考えられた車両用左右駆
動力調整装置の課題を説明する速度線図である。
【図23】従来の車両用左右駆動力調整装置を示す構成
図である。
【図24】従来の他の車両用左右駆動力調整装置を示す
構成図である。
【符号の説明】
1 エンジン 2 トランスミッション 3 センタデフ 4 フロントデフ 5 センタデフ差動制限機構 6 プロペラシャフト 6A 入力軸 7 ベベルギヤ機構 8 リヤデフ 8A デファレンシャルケース(デフケース) 9,9A〜9I 駆動力伝達制御機構(第1トルク伝達
機構,第2トルク伝達機構) 10 変速機構 10A 第1のサンギヤ 10B 第1のプラネタリギヤ(プラネタリピニオン) 10D 第2のプラネタリギヤ 10C ピニオンシャフト 10F プラネタリキャリア 10E 第2のサンギヤ 11 駆動力伝達補助部材としての中空軸 12 伝達容量可変制御式トルク伝達機構としての多板
クラッチ機構(第1クラッチ,第2クラッチ) 12A,12B クラッチ板 13 左輪回転軸 14 右輪回転軸 14A,14B ギヤ 15 左後輪 16 右後輪 17 クラッチ油圧制御バルブ 17′ カップリング油圧制御バルブ 18 制御手段としてのコントロールユニット 19 車輪速センサ 20 ハンドル角センサ 21 ヨーレイトセンサ 22 加速度センサ(又は加速度演算手段) 23 アキュムレータ 24 電動ポンプ 25 左前輪 26 右前輪 30,31,32 変速機構 30A,31A,32A 第1のサンギヤ 30B,31B,32B 第1のプラネタリギヤ(プラ
ネタリピニオン) 30D,31D,32D 第2のプラネタリギヤ 30C,31C,32C ピニオンシャフト 30F,31F,32F プラネタリキャリア 30E,31E,32E 第2のサンギヤ 41 駆動力伝達補助部材 42 伝達容量可変制御式トルク伝達機構としての多板
クラッチ機構(第1クラッチ,第2クラッチ) 42A,42B クラッチ板 51 軸(カウンタシャフト) 52〜56,59 歯車 57,58 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構(第1クラッチ,第2クラッチ) 60 変速機構 60A サンギヤ 60B プラネタリギヤ(プラネタリピニオン) 60C ピニオンシャフト 60D リングギヤ 61 摩擦クラッチ等のカップリング(第1クラッチ,
第2クラッチ) 62 変速機構 62A,62D サンギヤ 62B,62E,62F プラネタリギヤ(プラネタリ
ピニオン) 62C ピニオンシャフト 63 切替機構 63A 電磁式アクチュエータ(ソレノイド) 63B スライドレバー 63C 連結部材 64,65,66,67,68,69 ハブ 90A〜90D 駆動力伝達制御機構(第1トルク伝達
機構,第2トルク伝達機構) 91,92 変速機構 91A,92A ササンギヤ 91B,92B プラネタリギヤ 91C,92C プラネタリシャフト 91D,92D プラネタリギヤ 93,94 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構(第1クラッチ,第2クラッチ) 93A,93B,94A,94B クラッチプレート 93C,94C サンギヤ 95 中空軸 96 変速機構 96A,96C,96D,97C,98C ギヤ 96B 軸(カウンタシャフト) 97,98 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構(第1クラッチ,第2クラッチ) 97A,97B,98A,98B クラッチプレート 99 変速機構 99C 軸(カウンタシャフト) 99A,99B,99D ギヤ 100C ギヤ 101 切替機構 101A 電磁式アクチュエータ(ソレノイド) 101B スライドレバー 101C 連結部材

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 左輪及び右輪と、 上記左輪の回転速度を変速して上記右輪に選択的に伝達
    する第1トルク伝達機構と、 上記右輪の回転速度を変速して上記左輪に選択的に伝達
    する第2トルク伝達機構と、をそなえ、 上記第1トルク伝達機構は第1クラッチを有し、 上記第2トルク伝達機構は第2クラッチを有し、 上記第1クラッチの係合力に応じて上記の左輪及び右輪
    のうちの一方の駆動トルクの一部が上記の左輪及び右輪
    のうちの他方へ伝達され、 上記第2クラッチの係合力に応じて上記の右輪及び左輪
    のうちの一方の駆動トルクの一部が上記の右輪及び左輪
    のうちの他方へ伝達されるように構成された車両用左右
    駆動力調整装置であって、 トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向かう方
    向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを設定
    するトルク伝達方向設定手段と、 上記の左輪と右輪との回転速度の比である左右輪回転速
    度比を検出する回転速度比検出手段と、 上記第1クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
    る時の上記左右輪回転速度比である第1境界回転速度比
    を設定する第1境界回転速度比設定手段と、 上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
    る時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速度比
    を設定する第2境界回転速度比設定手段と、を有し、 上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度
    比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度
    比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
    で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
    係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
    定されたトルク伝達方向と逆方向にトルク伝達がなされ
    る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
    チの係合を禁止し、 上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度
    比が、上記の第1境界 回転速度比及び第2境界回転速度
    比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
    で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
    係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
    定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
    る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
    チの係合を可能とすることを特徴とする、車両用左右駆
    動力調整装置。
  2. 【請求項2】 エンジンからの駆動力が伝達される入力
    部と、 左輪及び右輪と、 上記入力部の駆動力を上記の左輪及び右輪に分配する差
    動装置と、 上記左輪の回転速度を変速して上記入力部に選択的に伝
    達する第1トルク伝達機構と、 上記右輪の回転速度を変速して上記入力部に選択的に伝
    達する第2トルク伝達機構と、をそなえ、 上記第1トルク伝達機構は第1クラッチを有し、 上記第2トルク伝達機構は第2クラッチを有し、 上記第1クラッチの係合力に応じて上記左輪及び上記入
    力部のうちの一方の駆動トルクの一部が上記左輪及び上
    記入力部のうちの他方へ伝達され、 上記第2クラッチの係合力に応じて上記右輪及び上記入
    力部のうちの一方の駆動トルクの一部が上記右輪及び上
    記入力部のうちの他方へ伝達されるように構成された車
    両用左右駆動力調整装置であって、 トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向かう方
    向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを設定
    するトルク伝達方向設定手段と、 上記の左輪と右輪との回転速度の比である左右輪回転速
    度比を検出する回転速度比検出手段と、 上記第1クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
    る時の上記左右輪回転速度比である第1境界回転速度比
    を設定する第1境界回転速度比設定手段と、 上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
    る時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速度比
    を設定する第2境界回転速度比設定手段と、を有し、 上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度
    比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度
    比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
    で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
    係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
    定されたトルク伝達方向と逆方向にトルク伝達がなされ
    る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
    チの係合を禁止し、 上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度
    比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度
    比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
    で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
    係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
    定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
    る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
    チの係合を可能とすることを特徴とする、車両用左右駆
    動力調整装置。
  3. 【請求項3】 エンジンからの駆動力が伝達される入力
    部と、 左輪及び右輪と、 上記入力部の駆動力を上記の左輪及び右輪に分配する差
    動装置と、 上記入力部の回転速度を変速して上記右輪に選択的に伝
    達する第1トルク伝達機構と、 上記入力部の回転速度を変速して上記左輪に選択的に伝
    達する第2トルク伝達機構と、をそなえ、 上記第1トルク伝達機構は第1クラッチを有し、 上記第2トルク伝達機構は第2クラッチを有し、 上記第1クラッチの係合力に応じて上記入力部及び上記
    右輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記入力部及び
    上記右輪のうちの他方へ伝達され、 上記第2クラッチの係合力に応じて上記入力部及び上記
    左輪のうちの一方の駆動トルクの一部が上記入力部及び
    上記左輪のうちの他方へ伝達されるように構成された車
    両用左右駆動力調整装置であって、 トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向かう方
    向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを設定
    するトルク伝達方向設定手段と、 上記の左輪と右輪との回転速度の比である左右輪回転速
    度比を検出する回転速度比検出手段と、 上記第1クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
    る時の上記左右輪回転速度比である第1境界回転速度比
    を設定する第1境界回転速度比設定手段と、 上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
    る時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速度比
    を設定する第2境界回転速度比設定手段と、を有し、 上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度
    比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度
    比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
    で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
    係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
    定されたトルク伝達方向と逆方向にトルク伝達がなされ
    る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
    チの係合を禁止し、 上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度
    比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度
    比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
    で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
    係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
    定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
    る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
    チの係合を可能とすることを特徴とする、車両用左右駆
    動力調整装置。
  4. 【請求項4】 左輪及び右輪と、 上記の左輪及び右輪のうちの一方の回転速度を増速して
    上記の左輪及び右輪のうちの他方に選択的に伝達する第
    1トルク伝達機構と、 上記の左輪及び右輪のうちの一方の回転速度を減速して
    上記の左輪及び右輪のうちの他方に選択的に伝達する第
    2トルク伝達機構と、をそなえ、 上記第1トルク伝達機構は第1クラッチを有し、 上記第2トルク伝達機構は第2クラッチを有し、 上記第1クラッチの係合力に応じて上記の左輪及び右輪
    のうちの一方の駆動トルクの一部が上記の左輪及び右輪
    のうちの他方へ伝達され、 上記第2クラッチの係合力に応じて上記の右輪及び左輪
    のうちの一方の駆動トルクの一部が上記の右輪及び左輪
    のうちの他方へ伝達されるように構成された車両用左右
    駆動力調整装置であって、 トルク伝達すべき方向が上記の左輪から右輪に向かう方
    向なのか上記の右輪から左輪に向かう方向なのかを設定
    するトルク伝達方向設定手段と、 上記の左輪と右輪との回転速度の比である左右輪回転速
    度比を検出する回転速度比検出手段と、 上記第1クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
    る時の上記左右輪回転速度比である第1境界回転速度比
    を設定する第1境界回転速度比設定手段と、 上記第2クラッチの入力と出力との各回転速度が一致す
    る時の上記左右輪回転速度比である第2境界回転速度比
    を設定する第2境界回転速度比設定手段と、を有し、 上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度
    比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度
    比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
    で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
    係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
    定されたトルク伝達方向と逆方向にトルク伝達がなされ
    る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
    チの係合を禁止し、 上記左右輪回転速度比の増加に伴い、該左右輪回転速度
    比が、上記の第1境界回転速度比及び第2境界回転速度
    比のうちのいずれか一方の境界回転速度比を越えた場合
    で、且つ、該一方の境界回転速度比にかかるクラッチを
    係合させることで上記トルク伝達方向設定手段により設
    定されたトルク伝達方向と同方向にトルク伝達がなされ
    る場合には、上記一方の境界回転速度比にかかるクラッ
    チの係合を可能とすることを特徴とする、車両用左右駆
    動力調整装置。
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