JPH0533053A - 鏡面方向性珪素鋼帯の製造方法 - Google Patents

鏡面方向性珪素鋼帯の製造方法

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JPH0533053A
JPH0533053A JP18667991A JP18667991A JPH0533053A JP H0533053 A JPH0533053 A JP H0533053A JP 18667991 A JP18667991 A JP 18667991A JP 18667991 A JP18667991 A JP 18667991A JP H0533053 A JPH0533053 A JP H0533053A
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annealing
mirror
silicon steel
strip
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Takeo Nagashima
武雄 長島
Yozo Suga
洋三 菅
Yoshiyuki Ushigami
義行 牛神
Hiroyasu Fujii
浩康 藤井
Kenichi Yatsugayo
健一 八ケ代
Yasumitsu Kondo
泰光 近藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 鏡面で、かつ高い磁束密度(B8 )の方向性
電磁鋼板を提供する。 【構成】 脱炭焼鈍後、脱炭時に生成する鋼帯表面の酸
化層を除去し、これにアルミナを静電塗布し、鋼帯コイ
ルとする。この鋼帯コイルを低温部及び高温部から成
り、内部にそれぞれ巻き取りリールを有する仕上焼鈍炉
の低温部のリールに装着する。その後、低温部を650
℃付近、高温部を920〜1150℃に昇温する。温度
が安定した後、鋼帯コイルを低温部のリールから高温部
のリールへ巻き替える。高温部で二次再結晶及び鏡面化
が行われる。 【効果】 昇温が急速であるため、インヒビターの劣化
が少なく、高い磁束密度(B8 )が得られ、かつ鏡面化
している。昇温が速く、かつ均一であるため、鋼帯コイ
ル全体が良い磁気特性を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄損が極めて低い鏡面
方向性珪素鋼帯(以下方向性電磁鋼帯と云う)の製造方
法に関するものである。特に、二次再結晶工程(仕上焼
鈍工程)で、その鋼帯表面にフォルステライト(以下、
グラスと云う)被膜を形成させず、同時に、サーマルエ
ッチングにより鋼帯表面を鏡面とした状態で同工程を完
了させ、その後、磁区細分化、張力コーティング等の処
理を行い、鉄損特性の改善を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼帯は電気機器の磁気鉄心と
して多用され、エネルギーロスを少なくすべく、改善が
繰り返されてきた。方向性電磁鋼帯の鉄損を低減する手
段として、仕上焼鈍後の材料表面にレーザービームを照
射し、局部歪を与え、それによって磁区を細分化して鉄
損を低下させる方法が、例えば特開昭58−26405
号公報に開示されている。また局部歪は、通常行われる
加工後の応力除去焼鈍(歪取焼鈍)によって除去される
ので、磁区細分化効果が消失する。この改善策、すなわ
ち応力除去焼鈍しても磁区細分化効果が消失しない手段
が、例えば特開昭62−8617号公報に開示されてい
る。さらに鉄損値の低減を図かるためには、鋼板表面近
傍の磁区の動きを阻害する地鉄表面の凹凸を取り除くこ
と(平滑化)が重要である。平滑化の最も高いレベルが
鏡面化である。仕上焼鈍後の材料表面を平滑化(鏡面
化)する方法としては、特開昭64−83620号公報
に開示されている化学研磨、電解研磨等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来、鋼板表面を鏡面
化(平滑化)する方法としては、前記化学研磨、電解研
磨の他にブラシ研磨、サンドペーパー研磨、研削等の化
学的あるいは、物理的方法がある。しかしながら、これ
らの方法は、小試片、少量の試料を作るには適するが、
工業的に多量生産される金属ストリップ(鋼帯)等の表
面鏡面化(平滑化)のためには、諸々の困難を伴う。最
も平滑化できるとされる化学的方法、すなわち化学研磨
においては、薬剤濃度管理や排水処理等の環境問題があ
り、他方物理的方法においては、工業的に大きな面積を
持つ表面を同一基準で平滑化(鏡面化)することが極め
て困難であるという問題がある。
【0004】本発明は、これらの問題点を排除して、工
業的生産規模で方向性電磁鋼帯の表面を鏡面化(平滑
化)する方法を提供することを目的とする。当然なが
ら、鏡面化(平滑化)のために、磁気特性が失われては
ならない。本発明においては、仕上焼鈍工程で同時に前
記目的を達成しようとするものである。すなわち、二次
再結晶の方位を制御しつつ、かつ鏡面(平滑表面)を得
ようとするものであり、これを鋼帯コイルの形態で工業
的に実施するための技術を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴とするとこ
ろは、前記するように鋼帯コイルで仕上焼鈍時に、二次
再結晶の方位を制御しつつ、鏡面(平滑表面)を得ると
ころにある。すなわち本発明の骨子とするところは、通
常行われているMgOを主体とする焼鈍分離剤を用いず
に、仕上焼鈍し、方向性電磁鋼板の表面にグラス(フォ
ルステライト)被膜を形成させずに、金属表面を露出さ
せた状態で二次再結晶させ、同時に、サーマルエッチン
グにより金属表面を鏡面化(平滑化)することにある。
【0006】本発明の要旨とするところは、Si:2.
0〜4.8重量%、酸可溶性Al:0.008〜0.0
5重量%、N≦0.010重量%、残部Fe及び不可避
的不純物からなる珪素熱延鋼帯を必要に応じて焼鈍した
後、1回または中間焼鈍をはさむ2回以上の冷間圧延を
行い、所定の板厚とし、次いで一次再結晶焼鈍を行った
後、仕上焼鈍を施す方向性珪素鋼帯の製造において、一
次再結晶焼鈍後、同焼鈍工程で生じる鋼帯表面の酸化膜
を除去後、焼鈍分離剤としてAl2 3 (アルミナ)を
塗布し、鋼帯コイルとなし、低温部及び高温部からなる
炉構造で、それぞれに巻き取りリールを有する仕上焼鈍
炉の低温部に前記鋼帯コイルを入れ、920℃以上11
50℃以下に保持した高温部のリールに巻き取り、雰囲
気を中性あるいは還元性とし、5時間以上保持すること
を特徴とする鏡面方向性珪素鋼帯の製造方法にある。
【0007】しかして、本発明の実施にあたり、鋼帯表
面の酸化膜を除去する方法としては酸洗とすることが有
利で、特にフッ酸を混入した酸で酸洗するのが有効であ
る。また磁気特性、特に磁束密度向上には、一次再結晶
焼鈍後から鋼帯表面の酸化膜を除去する工程に入る前に
アンモニアによる窒化処理を行うのが有効である。また
鋼板中のインヒビター劣化抑制のためには、仕上焼鈍時
の雰囲気を二次再結晶終了時までN2 :5%以上とする
のが有効である。また焼鈍分離剤としてはAl 2
3 (アルミナ)のほかにアルカリ土金属の酸化物の粉末
を用いることができる。塗布方法としては静電塗布が極
めて効果的である。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明者等は、仕上焼鈍中のインヒビター劣化の律速過程
を詳しく調査したところ、鋼板界面におけるAlの酸化
過程が最大の因子であり、一次再結晶焼鈍時生じる鋼板
表面の酸化層がインヒビターの劣化に大きく関与してい
ることを見出した。調査は次の如くして行われた。
【0009】Si:3.3重量%、酸可溶性Al:0.
028重量%、N:0.008重量%、Mn:0.14
重量%、S:0.007重量%、C:0.05重量%、
残部Fe及び不可避的不純物からなる珪素熱延鋼帯を1
100℃で2分間焼鈍した後、冷間圧延し、0.23m
m厚とした。得られた冷延板を、脱炭を兼ねるために湿
水雰囲気とした焼鈍炉で800℃で2分間焼鈍し、一次
再結晶させた。次に二次再結晶を安定化させるためにア
ンモニア雰囲気中で窒化処理を行い、全窒素量を180
ppmとし、インヒビターを強化した。その後、その
まま、及び0.5%フッ酸−5%硫酸混合溶液で酸洗
した二種の材料にAl23 を静電塗布し、100%H
2 雰囲気で、15℃/Hrの昇温速度を保ちながら仕上
焼鈍を行った。
【0010】仕上焼鈍中のインヒビター(AlN、(A
l、Si)N等)を調べたところ、図1に示すように、
一次再結晶焼鈍時鋼板表面に生じる酸化層を有するの
材料は、酸化層のないの材料に比べて、インヒビター
強度が早く劣化することが分かった。すなわち、一次再
結晶焼鈍時鋼板表面に生じる酸化層を除去すれば、高温
まで強いインヒビター強度が保持できるのである。鋼板
中の酸可溶性Alは、仕上焼鈍中にSiO2 を主体とす
る酸化層から酸素を取り、Al2 3 等となって酸化層
中に析出する。従って鋼板中の酸可溶性Alは減少して
いく。なお、図1では、インヒビター強度として鋼中酸
可溶性Al濃度を示したが、AlはAlN、(Al、S
i)N等の化合物(析出物)を形成してインヒビターと
なっているので、酸可溶性Al量がインヒビター強度を
示す指標と考えてよい。
【0011】また、本発明者等はインヒビター劣化の律
速過程を詳しく調査したところ、前記の鋼板界面におけ
るAlの酸化以外に鋼中窒素及び焼鈍雰囲気中の窒素量
にも影響されることが分かった。なお、焼鈍雰囲気中の
窒素は鋼板界面を通して鋼中に入り、鋼中の窒素量を増
加させているものであり、その効果は当初から鋼中に入
っている窒素と同じである。鋼中窒素及び焼鈍雰囲気中
の窒素は、AlN等の析出物を増加させてAlを固定
し、Alの鋼帯界面への移動を少なくするため、Alの
酸化が抑制されるのである。
【0012】従って、仕上焼鈍中の鋼中酸可溶性Alは
窒素分圧の高い方が酸化が抑制されるので、インヒビタ
ー劣化は少なく、高温までインヒビターは強く保たれ
る。しかしながら本発明の主旨とするところの一つであ
る鏡面を得るには窒素分圧があまり高くなり過ぎてはい
けない。さらに、本発明者等はAlの酸化は時間の関数
であることを見出した。すなわち高い昇温速度をとれ
ば、同一温度における酸可溶性Alの量(インヒビター
量)は低い昇温速度のそれより大きいことが分かった。
高い昇温速度を通常工業的に生産される鋼帯コイルのよ
うな数トンに及ぶ鋼帯コイルの各部位で実現することは
極めてむずかしい。これは、物理的には鋼材及び焼鈍分
離剤の熱伝導率と熱容量の問題である。そこで本発明者
等は高温に保持された炉中で鋼帯コイルを巻き取る方法
を見出した。以下、図2により説明する。
【0013】焼鈍分離剤としてAl2 3 (アルミナ)
を静電塗布して巻き取った鋼帯コイルを、リールをそれ
ぞれに有する低温部3及び高温部4からなる仕上焼鈍炉
5の低温部3のリールに装着する。雰囲気を前記のよう
にし、低温部3及び高温部4を所定の温度にして低温部
3にある鋼帯コイル1を高温部のリール2に巻き取る。
この時、焼鈍分離剤は鋼帯(板)とよく密着していない
ので、下側の焼鈍分離剤は剥がれ落ちてしまうが、片面
(上面)の焼鈍分離剤だけでも焼鈍分離の役割は十分果
たせる。上面の焼鈍分離剤を確保する方法としては図2
に示すような巻き取り方法が有効である。高温部4の温
度は920℃以上とし、ここで5時間以上保持されて、
二次再結晶が完了する。さらに、方向性電磁鋼(帯)板
は純化及びさらなる表面平滑化(鏡面化)のため120
0℃付近まで昇温され、5時間以上、100%の水素雰
囲気中で保持される。
【0014】以下、実施条件について述べる。一次再結
晶焼鈍時、鋼帯表面にできる酸化層を除去する方法とし
ては、機械研磨、例えばブラシ研磨、サンドペーパー研
磨、研削等があり、酸化層除去の目的のためには有効で
あるが、工業上種々の困難を伴い、あまり実用的でな
い。本発明者等は酸洗による方法が極めて有効であるこ
とに気付いた。これは、熱延鋼帯等の連続酸洗ラインが
既に実用化されているからである。また酸洗液(酸洗溶
液)としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸が有効である
が、鋼帯(板)表面にできる酸化層は主にSiO2 を主
体とした酸化物であるために、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱
酸だけでは酸洗しにくい。これらの酸にフッ酸を混合す
ると極めて効率的に、すなわち高速で酸化層を除去する
ことができる。
【0015】また、一次再結晶焼鈍後から仕上焼鈍前に
アンモニアにより窒化処理を行い、インヒビターを強化
することは有効である。この窒化処理を行うのは、一次
再結晶完了時のインヒビター強度では二次再結晶のため
には不十分であり、また仕上焼鈍中の窒素分圧を上げて
インヒビターを強化したり、劣化防止をしても、二次再
結晶時に十二分なインヒビターを確保できないからであ
る。このアンモニアを用いる窒化処理によるインヒビタ
ー強化によって、磁気特性を向上させることができる。
【0016】焼鈍雰囲気は中性あるいは還元性とする
が、二次再結晶進行時に必要なインヒビターを確保する
ために、昇温及び保持時に焼鈍雰囲気中に窒素ガスを5
%以上添加するのがよい。窒素ガス5%未満ではインヒ
ビターの強化あるいは劣化防止には効果が薄い。なお、
中性あるいは還元性雰囲気とは、窒素、酸素、水分、水
素、アルゴン等の不活性ガスの内から1種あるいは2種
以上のガスの混合物で珪素の酸化還元に対して中性或い
は還元性であるガス組成をいう。一般に電磁鋼板の仕上
焼鈍では、窒素及び水素ガスが用いられるので、この両
ガスの0%から100%までの組み合わせである。窒素
分圧を調整するために、この両ガスの組み合わせにアル
ゴン、ヘリウム等の不活性ガスを混合しても何等支障は
ない。中性あるいは還元性雰囲気とするのは、鋼中Al
の減少を防止するため及び鋼中の珪素を酸化させて表面
にSiO2 を造らせないか、増加させないためである。
【0017】仕上焼鈍炉の低温部の温度は鋼中酸可溶性
Alや窒素が減少しない温度である必要がある。この条
件を満たすには650℃未満である必要がある。低温部
から高温部への鋼帯の移動、すなわち昇温は移動する鋼
帯が高温部のリールに巻き取られる前に高温部の温度に
なればよく、特に制限するものでない。但し、鋼帯の昇
温速度が5℃/Hr未満になるような極端に遅い巻き取
り速度ではいけない。
【0018】二次再結晶させるために一定の温度で保持
することは有効である。これは、この温度保持により、
インヒビターの劣化を防止して適度なインヒビター強度
で二次再結晶をさせることができるからである。この保
持温度が、920℃未満では二次再結晶完了までの時間
が長くなり過ぎて実用的でなくなり、また1150℃超
ではインヒビター劣化が著しくなり過ぎて二次再結晶完
了まで必要なインヒビターを確保できない。二次再結晶
させるための保持時間は5時間以上必要で、これより短
い時間では、保持時間内に二次再結晶が完了しない。な
お、二次再結晶完了後、純化及び鋼板表面の鏡面化を完
全にするために1200℃付近で数時間保持することは
極めて有効である。
【0019】焼鈍分離剤としては、Al2 3 (アルミ
ナ)が水分の持ち込みに対して極めて有効であるが、ア
ルカリ土金属の酸化物粉末も用いることができる。これ
らは、鋼中Siと雰囲気中の酸素(水分)によって生成
する僅かなSiO2 と反応しにくい。水分の持ち込み防
止と言う面で静電塗布は極めて有効である。本発明にお
ける鋼成分は、Si:2.0〜4.8重量%、酸可溶性
Al:0.008〜0.05重量%、N≦0.010重
量%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、それ以外
の元素は特に限定しない。
【0020】Siは、電気抵抗を高め、鉄損を下げる効
果があるので重要であるが、その含有量が4.8%超で
は冷間圧延時に割れ易くなる。一方、2.0%未満では
電気抵抗が低く、鉄損を下げるうえで問題がある。酸可
溶性Alはインヒビター構成元素として重要であり、窒
素、珪素等と化合してAlN、(Al、Si)N等の析
出物を作り、インヒビターの役割を果たす。インヒビタ
ー強度の面、すなわち磁束密度が高くなる含有量の範囲
は0.008〜0.05重量%である。
【0021】窒素は、その含有量が0.010重量%超
では、ブリスターと呼ばれる空孔を鋼板中に生じるの
で、0.010重量%以下が最適である。また、インヒ
ビター構成元素としてMn、S、Se、Sn、B、B
i、Nb、Ti、P等を添加することができる。以下、
本発明の実施態様を述べる。
【0022】Si:2.0〜4.8重量%、酸可溶性A
l:0.008〜0.05重量%、N≦0.010重量
%、残部Fe及び不可避的不純物からなる溶鋼を、通常
の工程で、もしくは連続鋳造して、熱延鋼帯とする。こ
の熱延鋼帯に、750〜1200℃の温度域で、30秒
〜30分間磁束密度向上のための焼鈍が施される。続い
て、この熱延鋼帯は冷間圧延される。冷間圧延は、特公
昭40−15644号公報に開示されているように最終
冷間圧延率80%以上とする。冷間圧延後の材料は通常
鋼中の炭素を除去するために湿水雰囲気中で、750〜
900℃の温度域で一次再結晶焼鈍される。この時、脱
炭、一次再結晶と共に、鋼帯(板)表面には酸化層が形
成される。この酸化層は湿水雰囲気、すなわち水分の入
った雰囲気、の水分量の程度(通常、露点で表す)によ
るが、いわゆる内部酸化層を形成し、鋼帯(板)表面か
ら0.1〜6.0μmの厚さになり、ここには、酸化物
として主にSiO2 が存在する。なお、一次再結晶焼鈍
時形成される酸化物の酸素量の80〜90%以上はSi
2 の形態をとっている。
【0023】一次再結晶後の鋼帯は、表面の酸化層が除
去される。この除去方法には、前記の通り物理的及び化
学的方法があるが、一般に酸洗によって行われる。鋼帯
(板)表面の酸化層除去に先だってインヒビター強化の
ためアンモニアによる窒化処理を行うことは磁束密度向
上に極めて有効である。表面の酸化層が除去された一次
再結晶鋼帯は、焼鈍分離剤が塗布されて巻き取られる。
低温部及び高温部からなる炉構造で、それぞれに巻き取
りリールを有する仕上焼鈍炉の低温部に鋼帯コイルを入
れ、920℃以上1150℃以下に保持した高温部のリ
ールに巻き取り、雰囲気を中性あるいは還元性とし、5
時間以上保持する。その後、1200℃付近、水素:1
00%雰囲気中で、さらなる鏡面化及び純化を行う。仕
上焼鈍終了後、レーザービーム照射等の磁区細分化処理
を行い、さらに張力コーティング処理を行う。
【0024】
【実施例】
実施例1 Si:3.2重量%、酸可溶性Al:0.027重量
%、N:0.008重量%、Mn:0.13重量%、
S:0.007重量%、C:0.05重量%、残部Fe
及び不可避的不純物からなる珪素熱延鋼帯を1100℃
で2分間焼鈍した後、冷間圧延し、0.23mm厚とし
た。これらの冷延板を、脱炭を兼ねるために湿水雰囲気
とした焼鈍炉で830℃で2分間焼鈍し、一次再結晶さ
せた。次に二次再結晶を安定化させるために、アンモニ
ア雰囲気中で窒化処理を行い、全窒素量を180ppm
とし、インヒビターを強化した。その後、フッ酸を混入
した硫酸溶液で酸洗して表面酸化層を取り除いた。表面
の酸化層が除去された一次再結晶鋼帯に、Al2
3 (アルミナ)を静電塗布し、巻き取って鋼帯コイルと
した。これを、図2に示すような仕上焼鈍炉の低温部に
装着し、650℃に昇温し、この温度で保持し、一方、
高温部を1100℃に昇温した。低温部の鋼帯コイル及
び高温部の温度が定常状態になった段階で低音部のリー
ルにある鋼帯コイルから高温部のリールに巻き替えた。
1100℃で鋼帯コイルは5時間保持されて、二次再結
晶が完了した。ここまでの雰囲気は10%窒素−90%
水素とし、二次再結晶完了後、100%水素に切り換え
て、さらに高温部の炉温を1200℃まで昇温し、10
時間保定した。仕上焼鈍終了後、レーザービームを照射
し、リン酸−クロム酸系の張力コーティング処理を行っ
た。得られた製品の特性は表1の通りである。
【0025】以上は、本発明の例であり、比較例として
通常の仕上焼鈍を行った。すなわち、前記一次再結晶が
完了した鋼帯をアンモニア雰囲気中で窒化処理し、全窒
素量を180ppmとし、インヒビターを強化した。そ
の後、MgOを主体とした焼鈍分離剤を水スラリー状で
塗布し、乾燥後巻き取って鋼帯コイルとした。この鋼帯
コイルを通常の仕上焼鈍炉で、窒素:25%−水素:7
5%の雰囲気、15℃/Hrの昇温速度で1200℃ま
で昇温し、この温度で雰囲気を水素:100%とし、2
0時間保持した。仕上焼鈍終了後、レーザービームを照
射し、リン酸−クロム酸系の張力コーティング処理を行
った。得られた製品の特性は表1の通りである。
【0026】
【表1】
【0027】実施例2 実施例1における一次再結晶後のアンモニア雰囲気によ
る窒化処理で鋼中の窒素量を200ppmとして実施例
1と同様な処理を行った。得られた製品の特性は表2の
通りである。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】本発明により、磁気特性を阻害する要因
である鋼板表面の凹凸が小さい(鏡面である)方向性電
磁鋼板が容易に得られ、この方向性電磁鋼板にレーザー
ビーム照射処理等の磁区細分化、張力コーティング処理
を施すことにより極めて低鉄損の磁気材料が提供され
る。この方向性電磁鋼板の製造に当たっては、鋼板の鏡
面化処理が鋼帯コイル状態で行われるため極めて容易で
あり、工業上の価値は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上焼鈍中の鋼板のインヒビター(酸可溶性A
l)の変化を示す図であり、一次再結晶焼鈍後、は焼
鈍ままの材料、は表面酸化層を取り除いた材料につい
てのものである。
【図2】本発明を実施するための仕上焼鈍炉を示す模式
図である。
【符号の説明】
1 鋼帯コイル 2 高温部のリール 3 低温部 4 高温部 5 仕上焼鈍炉
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 浩康 福岡県北九州市八幡東区枝光1−1−1 新日本製鐵株式会社技術開発本部内 (72)発明者 八ケ代 健一 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新 日本製鐵株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 近藤 泰光 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新 日本製鐵株式会社八幡製鐵所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:2.0〜4.8重量%、酸可溶性
    Al:0.008〜0.05重量%、N≦0.010重
    量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる珪素熱延鋼
    帯を必要に応じて焼鈍した後、1回または中間焼鈍をは
    さむ2回以上の冷間圧延を行い、所定の板厚とし、次い
    で一次再結晶焼鈍を行った後、仕上焼鈍を施す方向性珪
    素鋼帯の製造において、一次再結晶焼鈍後、同焼鈍工程
    で生じる鋼帯表面の酸化膜を除去後、焼鈍分離剤として
    Al2 3 (アルミナ)を塗布し、鋼帯コイルとなし、
    低温部及び高温部からなる炉構造で、それぞれに巻き取
    りリールを有する仕上焼鈍炉の低温部に前記鋼帯コイル
    を入れ、920℃以上1150℃以下に保持した高温部
    のリールに巻き取り、雰囲気を中性あるいは還元性と
    し、5時間以上保持することを特徴とする鏡面方向性珪
    素鋼帯の製造方法。
  2. 【請求項2】 鋼帯表面の酸化膜を除去する方法を酸洗
    とすることを特徴とする請求項1記載の鏡面方向性珪素
    鋼帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 鋼帯表面の酸化膜を除去する方法をフッ
    酸を混入した酸で酸洗することを特徴とする請求項1記
    載の鏡面方向性珪素鋼帯の製造方法。
  4. 【請求項4】 焼鈍分離剤として、MgO以外のアルカ
    リ土金属の酸化物粉末を用いることを特徴とする請求項
    1記載の鏡面方向性珪素鋼帯の製造方法。
  5. 【請求項5】 焼鈍分離剤の塗布を静電塗布とすること
    を特徴とする請求項1記載の鏡面方向性珪素鋼帯の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 一次再結晶焼鈍から鋼帯表面の酸化膜を
    除去する工程に入る前にアンモニアによる窒化処理を行
    うことを特徴とする請求項1記載の鏡面方向性珪素鋼帯
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 仕上焼鈍時の雰囲気を二次再結晶終了時
    までN2 :5%以上とすることを特徴とする請求項1記
    載の鏡面方向性珪素鋼帯の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012087354A (ja) * 2010-10-19 2012-05-10 Jfe Steel Corp 方向性電磁鋼板の仕上焼鈍方法および仕上焼鈍設備
JP2019033114A (ja) * 2017-08-04 2019-02-28 国立大学法人信州大学 SiO2含有被膜を備えたSi含有Fe基合金粉及びその製造方法

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