JPH052806B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、四サイクル内燃機関に於ける弁作動
装置にに関するものである。

高速四サイクル内燃機関では、吸、排気弁が同
時に開放されている時間、即ちバルブオーバーラ
ツプ時間を長くすることによつて、吸、排気の慣
性効果を利用し、機関の高出力化を計つている
が、この吸、排気の慣性効果は、高速運転域では
奏し得るものの、低速運転域では、吸入混合気の
絶対量が減少するため、混合気に適当な流速を与
えることができなくなるとともに、排気の環流を
生じて燃焼が悪化し、低速出力が減少する傾向と
なる。

そこで、吸、排気弁を夫れ夫れ複数個配設し、
低速運転域で各一部の吸、排気弁の作動を休止さ
せて、混合気の流速を高め、吸気慣性効果の向上
を計るとともに、排気環流の絶対量を限定してい
た。

斯様な弁休止機構として、同一機能を有する二
本の開閉弁（一対の吸気弁、又は一対の排気弁）
を開閉させる一対のロツカーアームを共通の支持
軸に支持させ、一方のロツカーアームに油圧シリ
ンダーを形成してピストンを嵌入させ、他方のロ
ツカーアームにピストンが嵌脱し得る空所を設
け、機関の運転状況に応じ、同空所に対しピスト
ンを嵌脱させることにより、一対のロツカーアー
ムを相互に係脱させる構造が考えられる。その場
合、一対のロツカーアームのいずれかにカムと摺
接する座面（スリツパー）を設ける必要があり、
この座面を備えたロツカーアームによつて駆動さ
れる弁が常作動弁となり、他方のロツカーアーム
によつて駆動される弁が休止可能弁となる。

而るに、座面をいずれのロツカーアームに付設
するかによつて動弁特性に与える影響が異なり、
その選択は重要な問題である。

本発明の狙いは、バルブ・バウンスの発生を防
止すると同時に、機関の軽量化を計る点にある。

本発明の構成は、共通の支持軸により一端を軸
支された隣接する第一および第二のロツカーアー
ムを有し、そのうち少なくとも一方のロツカーア
ームの自由端が開閉弁に当接する弁作動装置にお
いて、前記第一のロツカーアームは、油圧シリン
ダーと該油圧シリンダーに出没自在に嵌挿され第
二のロツカーアームとの係脱を行うピストンとを
有し、前記第二のロツカーアームは、前記第一の
ロツカーアームのピストンが嵌脱する空所と機関
の回転に同期して回転するカムに摺接する座面と
を有していることを特徴としている。

本発明の具体的構成は、実施例の説明から明ら
かとなるが、先ず前記本発明の構成を採用した理
由について説明する。

例えば休止機構付きの弁作動装置において以下
考案してみる。

同一機能を有する二本の開閉弁のいずれか一方
の作動を中、低速運転域に於いて休止させること
により、中、低速運転域でのエンジン出力を増大
させ得ることは、前述の通りである。然るに、二
本の開閉弁を動作させる一対のロツカーアームを
共通の支持軸に支持させ、両ロツカーアームを相
互に係脱可能に構成し、両ロツカーアームを係
合、一体化することにより両開閉弁を動作させ、
両ロツカーアームの係合を解除することにより一
方の開閉弁を休止させるためには、常作動弁を動
作させるロツカーアームにカムと摺接する座面を
付設しなければならない。座面は、カムと接触す
るために必要な大きさの表面積を有し、或る程度
の肉厚を備えているために、座面の無いロツカー
アームに比し座面を付設したロツカーアームの剛
性が増大する。

一方、両ロツカーアームを相互に係脱させるた
めの手段である油圧シリンダーを形成したロツカ
ーアームは、ピストン保持強度を与える所要の肉
厚を有するので、座面の無いロツカーアームに比
し、剛性が増大する。

而して、常作動弁を動作させるロツカーアーム
に油圧シリンダーを設けると、同ロツカーアーム
の剛性は必要以上に高くなり、その重量が増大す
るのに対し、他方のロツカーアームの剛性は普通
の設計では低くなるという結果を生ずる場合があ
る。

然るに、ロツカーアームの剛性が不足すると、
ロツカーアームに反復して作用する曲げモーメン
トに起因する振動により、開弁時、開閉弁のステ
ムエンドとロツカーアームとの接触が断たれ、開
閉弁がカムで定められた運動とは異なる運動を始
め、ジヤンプ状態の開閉弁が弁座に衝突し、その
衝撃で開閉弁が跳ね返る現象、即ちバルブ・バウ
ンスが生じ、弁閉時期が設計値とは大幅に狂うこ
とになる。そこで休止側作動弁を駆動するロツカ
ーアームの剛性を補うべく、常作動弁側ロツカー
アームと同様に肉付けをすると、両ロツカーアー
ムの合計重量が強度上適当な値よりも増大して好
ましくない。

それに対し、休止側作動弁を駆動するロツカー
アームに油圧シリンダーを設けると、同ロツカー
アームの剛性が向上し、常作動弁側のロツカーア
ームは、座面を備えているので、その剛性を確保
することができ、両ロツカーアームの剛性を容易
にバランスさせることができ合計重量を低く抑え
ることが可能である。

次に、本発明の具体的実施例を、第１図乃至第
３図に則して説明する。

本実施例は休止機構付きの弁作動装置について
本発明を適用した一例である。

第１図は、自動二輪車用四サイクル・エンジン
の吸気弁側動弁機構を示すシリンダーヘツド部の
要部縦断側面図である。排気側動弁機構の構造
は、吸気弁側動弁機構の構造と略ぼ同じであるか
ら、その説明を省略する。

図中、１はシリンダーヘツドを示し、同シリン
ダーヘツド１には、一対の吸気ポート３が形成さ
れ、吸気ポート３を開閉し得る様に、一対の吸気
弁４が配設されている。吸気弁４には、圧縮コイ
ルスプリング５が係合配設され、この圧縮コイル
スプリング５は、吸気ポート３を遮断する方向
に、吸気弁４を付勢している。

又、シリンダーヘツド１とカム軸ホルダーによ
つて回転可能に支承されたカム軸６が、シリンダ
ーヘツド・カバー２にて覆われる動弁室Ａ内に配
設されており、カム軸６は、その軸端部に枢着さ
れた図示されないタイミングスプロケツトにて、
タイミングチエーンを介してクランク軸上のタイ
ミングスプロケツトと連結されている。

更に、シリンダーヘツド１と一体のロツカーア
ーム軸ホルダー１Ａ，１Ｂに、内部にオイル通路
８を有する中空ロツカーアーム軸７が支持され、
同ロツカーアーム軸（支持軸）７に一対のロツカ
ーアーム９，１５が回転自在に支持されている
（第１図，第２図参照。但し、第２図は第１図に
於ける−線矢視一部切断図である）。

前記ロツカーアーム９は、ロツカーアーム軸７
と嵌合する軸受部１０と、カム軸６上のカム６ａ
と摺接する座面１１と、圧縮コイルスプリング１
４にて付勢されたガイドピン１３が摺動自在に嵌
合する空所１２とを備えている。

又ロツカーアーム１５は、ロツカーアーム軸７
と嵌合する軸受部１６と、ピストン１９が進退自
在に嵌合する油圧シリンダー１７と、同油圧シリ
ンダー１７およびオイル通路８を連通するオイル
通路１８とを備えている。ピストン１９は、油圧
シリンダー１７内の油圧が上昇した時前進して、
ロツカーアーム９の空所１２内に進入し、圧縮コ
イルスプリング１４の弾発力に抗してガイドピン
１３を後退させる。なお、図中５ａは、圧縮コイ
ルスプリング５を支持するリテーナを示す。

本実施例は、前記の様に構成されており、エン
ジンが、中、低速回転で運転されている間は、バ
ルブ休止油圧制御回路に於ける制御弁が閉状態に
あり、ロツカーアーム１５の空所１２内に圧油は
供給されない。従つて、ピストン１９は、圧縮コ
イルスプリング１４にて付勢されたガイドピン１
３にて押され、油圧シリンダー１７内後退位置に
あり、両ロツカーアーム９，１５の連結は断たれ
る。この状態では、カム６ａと座面１１との摺接
関係で、ロツカーアーム９のみが駆動され、これ
に対応する吸気弁４が動作し、ロツカーアーム１
５に対応する吸気弁４は閉じたままである。

又、エンジンが中、低速回転域から高速回転域
に移行すると、バルブ休止油圧制御回路に於ける
制御弁が開放され、オイルポンプから吐出された
潤滑オイルが、ロツカーアーム軸７内オイル通路
８、ロツカーアーム１５のオイル通路１８を経
て、油圧シリンダー１７内に供給される。油圧シ
リンダー１７内の油圧が上昇すると、ピストン１
９が圧縮コイルスプリング１４の弾発力に抗して
ガイドピン１３を押し、油圧シリンダー１７内に
嵌入する。ピストン１９によつて両ロツカーアー
ム９，１５が連結、一体化されると、それまで休
止していたロツカーアーム１５も、ロツカーアー
ム９と共に駆動され、ロツカーアーム軸７を支点
として揺動し、一対の吸気弁４が開閉される。

斯様に本実施例では、中、低速回転域でロツカ
ーアーム１５が休止しているため、油圧シリンダ
ー１７内の圧油中に気泡が存在しても、同気泡が
分離され易く、有利である。今仮りに、ピストン
を備えた油圧シリンダーを常作動側のロツカーア
ーム９に設けたとするならば、油圧シリンダー内
の圧油は常時撹拌され、圧油中に気泡を生じ易
く、この気泡がピストンの応答性を悪化させる恐
れがあるが、本実施例ではその心配が無い。又、
ロツカーアーム１５が作動している間は、油圧シ
リンダー１７内の油圧が上昇しているため、圧油
内に気泡が生じ難いという利点がある。

更に、ロツカーアーム９，１５は、夫れ夫れ座
面１１、油圧シリンダー１７によつて強化され、
両ロツカーアーム９，１５共平均化された十分な
剛性を有するので、バルブ・バウンスが生ずる恐
れは無い。

以上の説明から明らかな様に、本発明では、燃
焼室に通ずる吸気ポート、又は排気ポートの開閉
を行う開閉弁の作動を、機関の運転状況に応じて
休止させる休止機構付き弁作動装置に於いて、同
一機能を有する二本の開閉弁を作動させる一対の
ロツカーアームを、共通の支持軸に支持させると
ともに、いずれか一方のロツカーアームに油圧シ
リンダーを形成してピストンを嵌挿させ、他方の
ロツカーアームにピストンが嵌脱する空所を設け
て両ロツカーアームを係脱可能になし、且つ前記
他方のロツカーアームにカムと摺接する座面を設
けたので、前記一方のロツカーアーム、即ち休止
側ロツカーアームは油圧シリンダーにて補剛さ
れ、前記他方のロツカーアーム、即ち常作動側ロ
ツカーアームは座面によつて補剛され、両ロツカ
ーアームの剛性が均等化され、バルブ・バウンス
の発生が防止されるとともに、両ロツカーアーム
の重量増を可及的に抑制することができる。又、
油圧シリンダーを休止側ロツカーアームに付した
ので、圧油中に気泡が存在しても、分離され易
く、しかも休止側ロツカーアームが作動している
間は、油圧シリンダー内の油圧が上昇しているた
め、圧油内に気泡が生じ難いという利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例に係る自動二輪車用
四サイクル・エンジンの吸気弁側動弁機構を示す
シリンダーヘツド部の要部縦断側面図、第２図は
第１図に於ける−線矢視一部切断図、第３図
は第１図に於ける−線要部断面図である。 １…シリンダーヘツド、１Ａ，１Ｂ…ロツカー
アーム軸ホルダー、２…シリンダーヘツド・カバ
ー、３…吸気ポート、４…吸気弁、５…圧縮コイ
ルスプリング、６…カム軸、６ａ…カム、７…ロ
ツカーアーム軸、８…オイル通路、９…ロツカー
アーム、１０…軸受部、１１…座面、１２…空
所、１３…ガイドピン、１４…圧縮コイルスプリ
ング、１５…ロツカーアーム、１６…軸受部、１
７…油圧シリンダー、１８…オイル通路、１９…
ピストン。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 共通の支持軸により一端を軸支された隣接す
   る第一および第二のロツカーアームを有し、その
   うち少なくとも一方のロツカーアームの自由端が
   開閉弁に当接する弁作動装置において、前記第一
   のロツカーアームは、油圧シリンダーと該油圧シ
   リンダーに出没自在に嵌挿され第二のロツカーア
   ームとの係脱を行うピストンとを有し、前記第二
   のロツカーアームは、前記第一のロツカーアーム
   のピストンが嵌脱する空所と機関の回転に同期し
   て回転するカムに摺接する座面とを有しているこ
   とを特徴とする弁作動装置。