JPH05246305A - リトラクタ軸回転式プリテンショナ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 〔目的〕 組付けの困難なく動作の安定を図ったリトラ
クタ軸回転式プリテンショナを提供する。 〔構成〕 ケーブル３をプーリ５に巻懸け支持してラッ
チ６の外周を周回させることによりラッチ６と作動連結
さる。プリテンショナ非作動時はプーリ５に支持された
ラッチ６とリトラクタ１の巻取軸１１との間にセット時
のクリアランスが保たれ、リトラクタ１の作動は通常ど
おり行われる。プリテンショナ作動時には、パワーソー
ス２の作動でケーブル３が引張され、それに伴うラッチ
６外周周回部の縮径で、ラッチ６がプーリ５の径方向内
側に変位し、巻取軸１１とケーブル３とがラッチ６を介
して係合し、巻取軸１１が回転し、ベルト４の巻込みに
よりテンションが付与される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はシートベルト装置のプリ
テンショナに関し、特にリトラクタ軸を回転させてベル
トを巻込む形式のプリテンショナに関する。

【０００２】

【従来の技術】車両等の乗物に装備されるシートベルト
装置には、緊急時に作動して乗員の身体をシートに緊密
に拘束し、乗員の車内等での２次衝突を防ぐべく、ベル
トを引張するプリテンショナが設けられたものがあり、
このようなプリテンショナの一形式として特開平１−１
６８５４７号公報に開示の装置がある。

【０００３】この装置は、複数の円弧状コマを、シート
ベルトリトラクタの巻取軸を中心として縮径可能に組合
せ配設し、複数のコマをその周囲に巻懸けられた索条体
（引張ケーブル）のパワーソースによる引張により縮径
させて巻取軸に係合させながら回転させて、リトラクタ
軸の回転によりベルトを巻締める形式のもので、この装
置では、前記索条体の変位をコマを介して巻取軸に伝達
する構成が採られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の装置では、セット時にコマが直接索条体に支持され
る構成であるため、部品点数の低減を図れる反面、複数
のコマの配設形状が索条体の巻形状に依存するため、複
数のコマを組合せてその巻取軸への係合部を構成する内
周側を精確な円に設定するには高度な組付け精度の確保
が不可欠である。逆に、この円が精確に設定されない
と、リトラクタ軸とコマの内周との間のクリアランスに
ばらつきを生じ、軸とコマとの干渉によりリトラクタの
通常時の作動が妨げられたり、プリテンション付与時の
リトラクタ軸とコマとの係合動作の安定性を欠く結果と
なるおそれがある。

【０００５】本発明は、上述のような事情に鑑み案出さ
れたものであって、前記コマに相当する働きをするラッ
チをプーリに支持し、プーリを引張ケーブルで支持する
ようにして前記設定の難しさを解消し、組付けの困難な
く動作の安定を図ったリトラクタ軸回転式プリテンショ
ナを提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明は、シートベルトリトラクタの巻取軸をパワ
ーソースの作動によるケーブルの引張で回転させてシー
トベルト装置のベルトにプリテンションを付与するリト
ラクタ軸回転式プリテンショナにおいて、前記巻取軸の
径方向外側に該軸と共軸にプーリを配設し、該プーリに
径方向変位可能に支持して前記巻取軸と係合可能なラッ
チを配設し、前記ケーブルを前記プーリに巻懸け支持し
て前記ラッチの外周を周回させることによりラッチと作
動連結させたことを特徴とする。

【０００７】

【作用】上記本発明のシートベルト装置のプリテンショ
ナにおいては、非作動時はプーリに支持されたラッチと
リトラクタの巻取軸との間にセット時のクリアランスが
保たれ、リトラクタの作動は通常どおり行われる。そし
てプリテンショナ作動時には、パワーソースの作動でケ
ーブルが引張され、それに伴うラッチ外周周回部の縮径
で、これと作動連結されたラッチがプーリの径方向内側
に変位し、巻取軸とケーブルとがラッチを介して係合
し、以後のケーブルの変位が巻取軸に伝達されて、巻取
軸が回転し、ベルトの巻込みによりプリテンションが付
与される。特にこのプリテンショナにおいては、ラッチ
がプーリに支持されているので、セット時にプーリの芯
だしを行うことによってラッチの芯だしが自動的に行わ
れる。

【０００８】

【実施例】次に、本発明の実施例を図面を参照しながら
説明する。

【０００９】図１は本発明の一実施例を示す分解斜視図
であって、この装置は、シートベルトリトラクタ１の巻
取軸１１をパワーソース２の作動による撚線ワイヤ製の
ケーブル３の引張で回転させてシートベルト装置のベル
ト４にプリテンションを付与するリトラクタ軸回転式プ
リテンショナを構成している。

【００１０】この装置では、巻取軸１１の一端に取付け
られた歯車ドラム１２の径方向外側に軸１１と共軸にプ
ーリ５が配設され、プーリ５に径方向変位可能に支持し
て巻取軸１１の歯車ドラム１２の外歯と噛合い係合可能
な内歯６１を形成されたラッチ６が配設され、ケーブル
３はプーリ５に巻懸け支持してラッチ６の外周を周回し
ている。

【００１１】さらに細部の構成について詳述すると、シ
ートベルトリトラクタ１は、従来公知の適宜の構成を備
えるもので、この例ではクランプ機構１３付のものとさ
れており、そのハウジング１４の側壁にプリテンショナ
機体を構成するブロック７が図示しない適宜の手段で取
付けられている。ブロック７には円形のプーリ収容溝７
１と、それに接続しパワーソース２方向に指向するケー
ブル引出溝７２が形成されている。

【００１２】プーリ収容溝７１の中央部には歯車ドラム
１２が位置しており、歯車ドラム１２は、その内側に形
成された図示しない角孔を巻取軸１１の一端に形成され
た図示しない角軸に嵌合して巻取軸１１の端部に取付け
られている。なお、この例では、歯車ドラム１２の外側
にさらに角軸１５が形成され、これにリトラクタのリタ
ーンスプリング組立体８内に配設されたスプリング内周
端が取付けられる構成が採られている。

【００１３】プーリ５は鍔広に構成され、ケーブル３を
半径方向に渦巻き状に重ね巻き可能とされている。プー
リ５の内外の鍔５１，５２を繋ぐ中空の軸部５３には、
その軸心を通り、軸を横断する方向に延びる角孔５４が
形成されており、この角孔内に一対のラッチ６が両側縁
及び内外面を案内されて径方向に摺動可能に嵌装されて
いる（図において一方のラッチがこの状態で示されてい
る）。これらのラッチ６は板状の部材で、内周縁部には
内向きの歯６１が形成され、外周縁部６２は山形に構成
されてケーブル３との作動連結部を構成しており、中央
部付近には板厚方向に、シェアーピンとして機能するラ
ッチ保持ピン６３を嵌挿する小孔６４が形成されてい
る。これに対応してプーリ５の内外鍔５１，５２にも小
孔５５が形成されている。さらに、プーリ５にはその軸
線方向に全通する孔５６が形成されており、この孔５６
は、一端をブロック７のピン孔７３に支持されて、シェ
アーピンとして機能するプーリ保持ピン５７との係止部
を構成している。

【００１４】上記ラッチ保持ピン６３とプーリ保持ピン
５７とは互いに剪断荷重の異なるシェアーピンで構成さ
れており、ラッチ保持ピン６３はプーリ保持ピン５７に
比して低い剪断荷重で破断されるものとされている。

【００１５】プーリ５に巻懸けられたケーブル３のプー
リへの係止は、この例ではプーリ５の外側鍔５１の一部
を接線方向に切欠いてケーブル３の始端部にかしめ止め
された抜止めブロック３１を切欠き５８の底部に引っ掛
けることにより行われている。ケーブル３はこの始端部
からプーリ５の内周をほぼ一巡し、前記係止部でブロッ
ク３１に乗上げて外周側に出、そこをほぼ一巡してケー
ブル引出溝７２を通り、ブロック７外に延び、パワーソ
ース２の図示しないピストンに止着されて終端してい
る。

【００１６】なお、ブロック７の外側は板状のカバー９
により被蓋され、カバー９には、この例ではリトラクタ
１のリターンスプリング組立体８が取付けられている。
また、符号７４はケーブル引出溝７２の片側に配設され
るガイドピンを示す。

【００１７】図２は、このように構成されたプリテンシ
ョナのセット状態をプーリの一部を切欠いて示す正面図
であり、一対のラッチ６は、プーリ鍔部の小孔５５と孔
６４（図１参照）とに挿通されたラッチ保持ピン６３に
よりプーリ５の軸線と交わる横断方向角孔５４内の所定
位置に位置決め固定されている。そして、プーリ５は、
孔５６とブロック７のピン孔７３（図１参照）とに亘っ
て挿通されたプーリ保持ピン５７により回り止めされて
いる。なお、この例ではプーリの芯だし位置決めは、前
記ピン５７とケーブル３とにより行われる。したがっ
て、歯車ドラム１２の外歯とラッチ６の内歯６１とは所
定のクリアランスを保った非噛合状態にあり、リトラク
タ１の通常の機能は従来通り達成される。

【００１８】このようなセット状態で車両の衝突等の際
の大きな加速度Ｇが加わり、これがセンサで検知されて
パワーソース２が作動すると、ケーブル３がパワーソー
ス２内に図示矢印Ａで示す方向に引込まれ、ケーブル３
を巻懸けられたプーリ５は図に矢印Ｂで示すように反時
計回りの回転力を受ける。

【００１９】このとき、プーリ５を位置決め保持してい
るプーリ保持ピン５７は、ケーブル３の引出しに抵抗し
てプーリ５の回転を阻止するため、プーリ５のラッチ６
はケーブル３の巻締まりにより矢印Ｃで示す縮径方向へ
の力を受ける。この力で、ラッチ６をプーリに保持して
いるラッチ保持ピン６３が剪断され、一対のラッチ６は
径方向内側に変位し、それらの内歯６１を歯車ドラム１
２の外歯に噛合わせてリトラクタ軸１１を挟持する。

【００２０】図３はこのようなラッチ保持ピン剪断後の
状態を示しており、前記のように内外歯が噛合した後
は、ケーブル３のプーリ５への巻懸け部での巻締まりが
なくなるので、ケーブル３に掛かる引張力は、プーリ５
を回転させる力として作用するため、より高い剪断応力
に耐えるプーリ保持ピン５７も剪断される。

【００２１】図４はプーリ保持ピン剪断後の状態を示し
ており、その後のパワーソース２の引張力は内外歯の噛
合いの維持とプーリ５の回転に消費される。そして上記
の作用によりリトラクタ１の巻取軸１１が回転させら
れ、繰出されていたベルト４は短時間にリトラクタ１内
に巻込まれ、慣性力による乗員の身体移動に先立ち、ベ
ルトの引締めによるプリテンション付与動作が行われ
る。

【００２２】この実施例のプリテンショナでは、ケーブ
ル３をプーリ５の径方向に重ねて巻付けているので、ベ
ルト４に所望のプリテンションを付与するに十分な引張
ストロークを軸方向寸法を増加させることなく確保する
ことができるとともに、巻懸け部内周側周回部の緩みを
外周側周回部で拘束して、ラッチ６の拡開を防ぎ内外歯
の噛合いの維持に役立てることができる。また、従来の
構成と異なり、締付手段を構成するラッチ６がプーリ５
に案内支持される構成であるため、セット時のラッチ６
の位置決めが容易となり、しかもラッチ６の動作の確実
化により作動の信頼性が向上する。

【００２３】以上、本発明を一実施例に基づき詳述した
が、本発明は、上述の実施例のみに限定されることな
く、特許請求の範囲に記載の事項の範囲内で、実施状況
や構成材料の選択等に応じた具体的構成の変更を含むも
のである。

【００２４】例えば、前記実施例ではケーブル３をプー
リ５に重ね巻きし、始端部をプーリに係止しているが、
ケーブルをプーリへの係止部から先に延長して、延長部
をプーリの内側の鍔に設けた切欠きを経て引出し、引出
し部をプリテンショナブロックに形成した周回溝に摩擦
係合させる構成とすることもできる。

【００２５】また、歯車ドラムの最外側部に円筒状の軸
受部を形成し、この部分にプーリの外鍔内周面を支持し
て、プーリの芯だしをより確実なものとすることもでき
る。

【００２６】更に保持ピン５７の代わりに付勢部材を用
いてプーリを押さえ、その摩擦係止力をもってプーリの
回転を阻止して、ケーブルの縮径動作を惹起することも
できる。

【００２７】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明のプリテン
ショナによれば、ラッチをプーリに支持し、ケーブルを
プーリに巻懸けることによりラッチと作動的に連結する
構成が採られているので、セット時にプーリの芯だしを
行うことによってラッチの芯だしが自動的になされる。
したがって、セット時の設定の難しさを解消することが
できる。また、ラッチはプーリに案内されて動作するた
めプリテンション付与時の巻取軸とラッチとの係合動作
は十分な安定性を保って行われる。こうして組付けの困
難なく動作の安定を図ったリトラクタ軸回転式プリテン
ショナを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のプリテンショナの一実施例を示す分解
斜視図である。

【図２】その一部を破断して示す正面図である。

【図３】その作動を説明する正面図である。

【図４】その作動を説明する正面図である。

【符号の説明】

１ シートベルトリトラクタ ２ パワーソース ３ ケーブル ４ ベルト ５ プーリ ６ ラッチ １１ 巻取軸

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートベルトリトラクタの巻取軸をパワ
   ーソースの作動によるケーブルの引張で回転させてシー
   トベルト装置のベルトにプリテンションを付与するリト
   ラクタ軸回転式プリテンショナにおいて、前記巻取軸の
   径方向外側に該軸と共軸にプーリを配設し、該プーリに
   径方向変位可能に支持して前記巻取軸と係合可能なラッ
   チを配設し、前記ケーブルを前記プーリに巻懸け支持し
   て前記ラッチの外周を周回させることによりラッチと作
   動連結させたことを特徴とするシートベルト装置のリト
   ラクタ軸回転式プリテンショナ。