JPH05230719A - ピッチ系炭素繊維とその製造方法 - Google Patents

ピッチ系炭素繊維とその製造方法

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JPH05230719A
JPH05230719A JP4059687A JP5968792A JPH05230719A JP H05230719 A JPH05230719 A JP H05230719A JP 4059687 A JP4059687 A JP 4059687A JP 5968792 A JP5968792 A JP 5968792A JP H05230719 A JPH05230719 A JP H05230719A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高弾性率、高引張強度、高圧縮強度を併せも
つ炭素繊維を提供する。 【構成】 剪断粘度200ポイズを示す温度が220〜
370℃である炭素繊維用紡糸ピッチであって、光学異
方性相が全体の5〜40体積%であり、且つ該光学異方
性相が、実質的に全て0.1〜100μmの光学異方性
小球体として分散していることを特徴とするピッチを紡
糸原料ピッチとするピッチ系炭素繊維、及び剪断粘度2
00ポイズを示す温度が220〜370℃である炭素繊
維用紡糸ピッチであって、ガラス転移温度巾が40℃以
下であり、かつキノリン不溶分が5重量%未満であるこ
とを特徴とするピッチを紡糸原料ピッチとするピッチ系
炭素繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は炭素繊維とその製造方法
に関し、より詳しくは、圧縮強度に特に優れたピッチ系
炭素繊維とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、炭素繊維及び黒鉛化繊維は軽量、
高弾性、高剛性等の優れた性質により、種々の複合材料
の強化材として使用されてきた。例えば、ゴルフクラ
ブ、テニス等のラケット、釣り竿等のスポーツ用品、義
手、義足等の医療用品などから、車両、航空宇宙機等の
構造材としてまで、広く用いられている。高特性の炭素
繊維の種類としては、ポリアクリロニトリル(PAN)
系、ピッチ系に大別される。このうちピッチ系炭素繊
維、黒鉛繊維は、石炭、石油等より得られるピッチを原
料とし、これを加熱等の手段を用い、黒鉛構造の前駆構
造である液晶の光学的異方性相部分を生じさせ、これを
紡糸し、酸化性雰囲気下で不融化、ついで炭化、必要に
応じて黒鉛化を行い、高性能の炭素繊維を得ている。こ
こで光学的異方性相部分を生じさせる理由は、液晶とな
っている光学的異方性相部分が配向性を有するため、得
られる炭素繊維も配向性の優れたものとなり、高強度を
発現し易くなるためである。例えば特開昭49−361
70号公報には、光学的異方性相部分が40〜90%を
しめるピッチを用いることにより、高性能の炭素繊維が
得られることが記載されている。
【0003】特に光学的異方性相を多量に含有する紡糸
ピッチを製造するに際して特開昭57−42924、特
開昭58−168687、各号公報等に開示されている
ように炭素質原料を拡販しながらあるいは更に不活性気
体等を吹き込みながら加熱処理して紡糸ピッチを製造す
ること、あるいは特公昭63−5433、特公平1−5
3317、各号公報等に開示されているように炭素質原
料を加熱処理した後、芳香族溶剤を作用させ溶剤分別で
溶剤不溶分を回収して紡糸ピッチを製造することが既に
知られている。
【0004】更に近年、例えば特開昭61−83319
号公報に記載されている様にナフタレンのような原料か
ら得た光学異方質の合成ピッチや、特開昭63−315
614号公報に記載されている様にアルキルベンゼンを
ホルムアルデヒドで架橋重質化させたような原料から得
た光学異方質の合成ピッチを原料として炭素繊維を得る
ことも知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
ピッチ系繊維は、PAN系繊維に比べ、引張強度、弾性
率等においては同等品が得られているが、圧縮強度では
劣っており、この点についての更なる改良が望まれてい
た。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、鋭
意検討の結果、かかる課題がある特定のピッチを原材料
ピッチとして用いることにより解決されることを見出し
本発明に到達した。すなわち本発明の目的は高弾性率、
高引張強度、高圧縮強度を併せもつピッチ系炭素繊維と
その製造方法を提供することにあり、かかる目的は、剪
断粘度200ポイズを示す温度が220〜370℃であ
る炭素繊維用紡糸ピッチであって、光学異方性相が全体
の5〜40体積%であり、且つ該光学異方性相が、実質
的に全て0.1〜100μmの光学異方性小球体として
分散していることを特徴とするピッチを紡糸原料ピッチ
とするピッチ系炭素繊維、剪断粘度200ポイズを示す
温度が220〜370℃である炭素繊維用紡糸ピッチで
あって、ガラス転移温度巾が40℃以下であり、かつキ
ノリン不溶分が5重量%未満であることを特徴とするピ
ッチを紡糸原料ピッチとするピッチ系炭素繊維、及びコ
ールタールピッチからトルエン/ヘキサン=80体積%
/20体積%〜10体積%/90体積%の混合溶媒可溶
分を取得することにより、剪断粘度200ポイズを示す
温度が220〜370℃である炭素繊維用紡糸ピッチで
あって、光学異方性相が全体の5〜40体積%であり、
且つ該光学異方性相が、実質的に全て0.1〜100μ
mの光学異方性小球体として分散している、ガラス転移
温度巾が40℃以下であり、かつキノリン不溶分が5重
量%未満であることを特徴とするピッチを紡糸原料ピッ
チとするピッチ系炭素繊維の製造方法により容易に達成
される。
【0007】本件第1発明の炭素繊維は、紡糸原料とし
て、剪断粘度200ポイズを示す温度が220〜370
℃であるピッチを用いるが、これは、適正な温度で紡糸
するための必要条件である。また、該ピッチは、従来の
多くの紡糸ピッチと異なり、光学的異方性相が流れ構造
を有する大きなドメインからなるのではなく、直径0.
1〜100μm、より好ましくは0.1〜30μmの小
球体からなり、この光学的異方性小球体が全体の5〜4
0体積%を占めるという特異な構造を有している。残り
の部分は100倍から600倍に拡大した偏光顕微鏡下
では光学的に等方性にみえることを特徴として具備して
いればよく、出発炭素質原料の種類やその処理方法に特
に制約されるものではない。偏光顕微鏡でのピッチ試料
中の光学異方性を示す部分を調べるのはピッチ試料を数
mm角に粉砕したものを、常法にしたがって2cm直径
の樹脂の表面のほぼ前面に埋め込み、表面を研磨後、表
面全体をくまなく偏光顕微鏡(100倍から600倍)
下で観察する。
【0008】光学異方性部分又は光学異方性小球体部分
の占める体積割合は試料の全表面積に占める光学異方性
小球体部分の面積の割合を測定することによって求め
る。かかるピッチを紡糸原料とする本発明の炭素繊維
は、紡糸性が十分で、かつ高弾性率、高い0°圧縮強度
を示す。かかる物性の発現機構は定かではないが、炭素
繊維を構成する黒鉛結晶子の大きさと配向に支配されて
おり、高い弾性率を発現する為には炭素繊維軸方向に黒
鉛結晶が整然と配向する必要がある。
【0009】一方炭素繊維の圧縮強度は一般的に黒鉛結
晶の発達した高弾性率のもの程低いものとなっているが
これは結晶化の進んだ炭素繊維の場合に圧縮応力で“黒
鉛結晶六方網面間のすべり”が発生し破断が発生すると
考えられ高い0°圧縮強度の炭素繊維を得るには黒鉛結
晶の発達を制約する必要がある。特に“黒鉛結晶六方網
面間のすべり”に起因する0°圧縮破壊は炭素繊維内に
存在する微少な空隙や大きな結晶境界の様な欠陥部等の
応力が集中しやすいところから破断開始すると考えられ
る。
【0010】従来技術にみられる様な光学異方性相が
“流れ構造”から成るものや、光学異方性部が球体状等
でそのサイズが100μm以上になるものは、紡糸ノズ
ルを用いて延伸される場合に黒鉛結晶の前駆体である光
学異方性の液晶が炭素繊維軸方向に引き伸ばされ黒鉛結
晶が繊維軸方向に配向し、弾性率が発現しやすいもの
の、黒鉛結晶が大きなものとなり、炭素繊維の0°圧縮
強度は低いものとなる。
【0011】一方0.1〜100μm好ましくは0.1
〜30μmの球晶状の光学異方性球体が、全体の5〜4
0体積%を占める様な紡糸用ピッチは紡糸ノズルから延
伸された場合にこの液晶が繊維軸方向に引き伸ばされ黒
鉛結晶が繊維軸方向に整然と配向するものの光学異方性
液晶のサイズが小さい為に、さらに又、光学的に等方性
の部分に覆われている為に結晶が必要以上に大きくなる
ことが制約されることになる。この様な理由で高弾性率
で、高0°圧縮強度な物性を発現すると考えられる。
【0012】従って光学異方性部分の体積割合が40%
を超えたり又光学異方性小球体の直径が100μmより
大きくなると、炭素繊維の黒鉛結晶サイズが大きくなっ
てしまい0°圧縮強度の高いものが得られない。さらに
又通常紡糸ノズルは0.05〜0.5mmの直径を有す
るノズルから延伸して、直径5〜30μmの炭素繊維を
製造するが、光学異方性小球体の直径が100μm以上
のピッチの場合には、高粘性の光学異方性部と低粘性の
光学的等方部がノズル先端から延伸される過程で粘度ム
ラを発生させ紡糸することが困難となる。又一方、光学
異方性部分の体積割合が5%を下回ると、紡糸時に繊維
軸方向への配向が損なわれる為に所望する様な高弾性の
炭素繊維は得られない。
【0013】次に請求項2に記載した第2の発明にて用
いる紡糸原料ピッチの特徴について説明する。剪断粘度
に関する条件は、本明細書第1発明と同一であるので省
略する。ガラス転移点温度巾に関する条件について説明
すると、本発明者等は、上述した様に炭素繊維内に存在
する微少な空隙や大きな結晶境界の様な欠陥部等の応力
が集中しやすいところは、紡糸用ピッチの不均一な構造
に由来して生成すると考え、この様な破壊の開始点を生
成させない様にする為に、分子量が不均一でなく整った
分子量分布のピッチを紡糸に供することで解決されるこ
とを見い出した。ピッチの分子量分布又は均質性は示差
走査型熱量計で測定して求めることが出来るガラス転移
温度巾(ΔTg )で容易に知ることが出来る。
【0014】つまり、ガラス転移温度巾(ΔTg )が4
0℃以下の紡糸ピッチは十分に均質性を保持しており、
これから製造された炭素繊維は0°圧縮強度が高いもの
になる。本来ガラス転移点とは物質固有の温度であり、
物質の比熱等の物理的性質が不連続的に変化する温度を
云う。しかしながら紡糸用ピッチの様に、種々の分子構
造を有ししかも低軟化点成分から高軟化点成分まで巾広
い分子量分布を有する物質の場合には、混合物である為
にガラス転移する温度に巾が存在することになる。つま
り低軟化点成分から高軟化点成分まで多くの分子種と、
分子量分布を有する紡糸ピッチの場合にはガラス転移温
度巾が大きくなる。
【0015】そしてこのガラス転移温度巾(ΔTg
は、示差走査型熱量計で測定する。測定は“JIS K
7121−1987 プラスチックの転移温度測定方
法”に準拠し行なう。この方法で得られるDCS曲線よ
りガラス転移温度巾(ΔTg )は、“JIS K712
1−1987 9.3ガラス転移温度の求め方”に準拠
し、図3に記載したTigとTegの差として求める。具体
的には、ガラス転移前後の各ベースラインを延長した直
線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最
大になるような点で引いた接線との交点の温度をTig
eg(それぞれ低温側のベースライン、高温側のベース
ラインに対応)とする。
【0016】ガラス転移領域の広さすなわちガラス転移
温度巾ΔTg はTigとTegの差として求めている。さら
にこの場合本第2発明の要件であるキノリン不溶分量が
5重量%以下であることを必須要件とするわけである
が、これはキノリン不溶分の様な重質成分が5重量%を
こえて含まれると炭素繊維紡糸ピッチ中の均質性が損な
われ、圧縮強度に優れたピッチ系炭素繊維を製造するこ
とが不可能となる。又、キノリン不溶分が含まれ5重量
%をこえて含まれる炭素繊維紡糸用ピッチでガラス転移
温度巾(ΔTg )が40℃以下になる様に分子量分布が
狭いものは、該ピッチの軟化点が高く、溶融紡糸に必要
な温度が370℃以上になってしまい熱分解反応に伴な
う気泡等の発生により紡糸が非常に困難となるためであ
る。尚、本発明で云うキノリン不溶分量は日本工業規格
“JIS K2421”による方法で測定することが出
来るものである。
【0017】かかる特徴をもつピッチを用いることによ
り引張強度、弾性率、圧縮強度のいずれも優れた性質を
もつピッチ系炭素繊維を得ることが出来る。そして本件
第1発明と第2発明の両者の条件を満たすピッチがより
好ましいことは明らかである。さらにかかるピッチの製
造法について言えば、前述の特徴をもつピッチが得られ
るものであれば特に限定されないが、例えば原料ピッチ
を溶剤分離を行なえばかかるピッチを得ることが出来
る。
【0018】本発明に用いられる炭素質の原料ピッチと
しては例えば、石炭系のコールタール、コールタールピ
ッチ、石炭液化物、石油系の重質油、ピッチ、石油樹脂
の熱重縮合反応生成物、ナフタレンやアントラセンの触
媒反応による重合反応生成物等が挙げられる。これらの
炭素質原料にはフリーカーボン、未溶解石灰、灰分、触
媒等の不純物が含まれているが、これらの不純物は、濾
過、遠心分離、あるいは溶剤を使用する静置沈降分離等
の周知の方法であらかじめ除去しておくことが望まし
い。
【0019】また前記炭素質原料を、例えば加熱処理し
た後特定溶剤で可溶分を抽出するといった方法、あるい
は水素供与性溶剤、水素ガスの存在下に水添処理すると
いった方法で予備処理を行っておいてもよい。特に本発
明に用いられる原料ピッチの出発物質としては、コール
タールピッチを用いるのが好ましく、コールタールピッ
チとしてはトルエン不溶分60重量%以下、好ましくは
50重量%以下さらに好ましくはコールタールピッチを
水添処理してトルエン不溶分を30重量%以下に変化さ
せたものである。
【0020】該水添処理はコールタールピッチの分子量
と芳香族化度を調節する為に行なうもので、例えばテト
ラリン、ジヒドロ−フェナンスレン、テトラヒドロキノ
リン、水添した芳香族油などの水素供与性溶剤と処理す
るか、あるいは水素供与性溶剤に容易に転換しうるキノ
リン、ナフタレン油、アントラセン油などの溶剤と、鉄
系、モリブデン系、ニッケル系、クロム系、亜鉛系又は
硫黄化合物等の助触媒を添加して、10〜500kg/cm
2G、好ましくは20〜300kg/cm2Gの水素ガス加圧
下、360〜500℃の温度で1〜24時間水添処理す
る。更に、必要に応じて濾過などにより固形物を除去
し、さらに必要に応じ、蒸留により溶媒を除いて残渣物
を得る方法などによって予備処理を行なうことがより好
ましい。
【0021】具体的にはコールタールピッチ又はその水
添処理したものをトルエンとヘキサンの混合溶媒にて可
溶分を除去することが挙げられる。トルエンとヘキサン
の混合比はトルエン/ヘキサン=90体積%/10体積
%〜50体積%/50体積%である。可溶分の除去する
為の溶剤処理する条件としてはトルエンとヘキサンの混
合比の他に、ピッチに対する溶剤量比、温度、時間など
がありこれらの条件をうまく組み合わせて溶剤処理し、
濾過や遠心分離等の一般的な方法で可溶分を除去し、さ
らに減圧加熱処理等の方法により、所望するピッチを製
造する必要がある。さらに詳しく言えば、上述のコール
タールピッチ又はその水添処理したものから本発明の特
徴を有するピッチを得るにはトルエン/ヘキサン比が小
さい場合には、この溶剤量比を大きくするか、処理温度
を高くするか、処理時間を長くして処理することにより
目的を達成することが出来るし、又トルエン/ヘキサン
比が大きい場合には溶剤比、処理温度、時間を適当に小
さくすることにより目的を達成することが出来る。
【0022】このようにして得られた紡糸ピッチは常法
に従って炭素繊維製造に使用される。炭素繊維の製造
は、かかる紡糸ピッチを例えば220°〜400℃の温
度で溶融紡糸し、次いで酸化性雰囲気下で不融化し、得
られた繊維束を1500〜2000℃程度で炭化処理
し、必要に応じて2200〜3000℃程度の温度で黒
鉛化処理して目的の炭素繊維もしくは黒鉛繊維を製造す
ることができる。特に、本発明の紡糸ピッチは比較的低
温焼成により高い弾性率を発現することができる。換言
すれば、同一の焼成温度で比較すると著しく弾性率の高
い炭素繊維が得られる。
【0023】
【実施例】以下、実施例により具体的に本発明を説明す
るが、本発明はその要旨を越えない限り実施例に限定さ
れるものではない。
【0024】比較例−1 撹拌機付オートクレーブにキノリン不溶固体を除いた、
石炭系コールタールピッチ100部、クレオソート油1
00部、酸化鉄5部および硫黄2.4部の混合物を連続
的に供給し、水素圧150kg/cm2 ・G、温度420
℃、平均滞留時間1時間で水添処理した。この処理物を
濾過して鉄触媒等を除去後、減圧蒸留により溶媒を留去
して水添等方質ピッチを得た。
【0025】該水添ピッチを常圧下窒素を流しながら4
24℃で260分間加熱処理した。得られた紡糸用ピッ
チは常法により樹脂に埋め込み研磨後偏光顕微鏡(ニコ
ン社製“OPTIPHOT−POL”)により、対物レ
ンズ:×20、写真専用撮影レンズ:×5で写真撮影を
行い、写真上での倍率:425倍の偏光顕微鏡写真で観
察した結果、大きな流れ構造をとっており、異方性を示
す流れ構造部の割合は95体積%であった。また、この
ピッチのキノリン不溶分量は28.4重量%であった。
この紡糸ピッチを溶融紡糸したところ、直径10μmの
ピッチ繊維を、2時間、破断なく紡糸することができ
た。得られたピッチ繊維を空気中、310℃で不融化し
た後、アルゴンガス中で焼成し、炭素繊維を得た。この
炭素繊維の物性をJIS−R−7601に規定されてい
る単繊維引張試験法に準じて測定した結果、繊維径7.
7μm、引張強度290kg/mm2 、引張弾性率52 ton
/mm2 であった。また、ASTM−D3410に規定さ
れている0°圧縮強度試験法に準じて測定した結果、繊
維体積%Vf60%のCFRPの0°圧縮強度は39kg
/mm2 であった。
【0026】紡糸に供した紡糸ピッチをセイコー電子社
製SSC580シリーズDSC−20型装置を用いて
“JIS K7121−1987”の方法に準拠してD
SC曲線を測定した。具体的には試料皿はアルミ製のも
のを用い、基準物質にも空のアルミ皿を用い、窒素ガス
50ml/分流通下15mgの紡糸ピッチをあらかじめ35
0℃に加熱処理し室温に急冷後15℃/分の一定昇温速
度で加熱処理して測定を行なった。この様にして求めた
ガラス転移温度巾(ΔTg )は62℃であった。
【0027】実施例1 比較例1と全く同様にして調製した水添等方質ピッチ5
gに対し、トルエン/ヘキサン=65体積%/35体積
%の混合溶媒を150mlの割合で加え、約80℃で抽出
した後、0.5μmメンブランフィルターで濾過し、可
溶分を除去した。不溶分から減圧下で溶媒を除去し、紡
糸用ピッチを得た。得られた紡糸用ピッチは比較例1と
同様に偏光顕微鏡写真で観察した結果、第1図に示す通
り0.2〜20μmの直径を有する光学異方性小球体が
等方相中に分散している構造をとっており、その光学異
方性小球体は、全体の20体積%を占めていた。また、
このピッチのキノリン不溶分量は約0重量%であり、2
00ポイズを示す温度は345℃でありDSCで求めた
ガラス転移温度巾(ΔTg )は34℃であった。この紡
糸ピッチから比較例1と同様にして炭素繊維を調製し
た。得られた炭素繊維は繊維径9.4μm、引張強度3
40kg/mm2 、引張弾性率58 ton/mm2 であり、ま
た、繊維体積%Vf=60%の炭素繊維強化樹脂(CF
RP)の0°の圧縮強度は64kg/mm2 であった。
【0028】比較例2 コールタールピッチを水添して得た水添等方質ピッチを
常圧下、窒素を流しながら430℃で20分間加熱処理
した。得られた紡糸用ピッチは、比較例1と同様に偏光
顕微鏡写真で観察した結果、第2図に示す通り0.2〜
300μmを超える直径を有する光学異方性小球体が等
方相中に分散している構造を取っており、その光学異方
性小球体は全体の30体積%を占めていた。またこのピ
ッチのキノリン不溶分量は1重量%であり、200ポイ
ズを示す温度は280℃であり、DSCで求めたガラス
転移温度巾は65℃であった。この紡糸ピッチを比較例
1と同様にして紡糸を試みたが、粘度むらのため紡糸で
きなかった。
【0029】
【発明の効果】本発明の炭素繊維は、紡糸性が十分でか
つ高弾性率、高い0°圧縮強度を発現できる炭素繊維を
提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で用いられた紡糸用ピッチの425倍
偏光顕微鏡写真(結晶構造)である。
【図2】比較例2で用いられた紡糸用ピッチの425倍
偏光顕微鏡写真(結晶構造)である。
【図3】ガラス転移温度巾(ΔTg )の求め方の説明図
である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 剪断粘度200ポイズを示す温度が22
    0〜370℃である炭素繊維用紡糸ピッチであって、光
    学異方性相が全体の5〜40体積%であり、且つ該光学
    異方性相が、実質的に0.1〜100μmの光学異方性
    小球体として分散していることを特徴とするピッチを紡
    糸原料ピッチとするピッチ系炭素繊維。
  2. 【請求項2】 剪断粘度200ポイズを示す温度が22
    0〜370℃である炭素繊維用紡糸ピッチであって、ガ
    ラス転移温度巾が40℃以下であり、かつキノリン不溶
    分が5重量%未満であることを特徴とするピッチを紡糸
    原料ピッチとするピッチ系炭素繊維。
  3. 【請求項3】 剪断粘度200ポイズを示す温度が22
    0〜370℃である炭素繊維用紡糸ピッチであって、ガ
    ラス転移温度巾が40℃以下であり、かつキノリン不溶
    分が5重量%未満である請求項1記載のピッチ系炭素繊
    維。
  4. 【請求項4】 コールタールピッチからトルエン/ヘキ
    サン=80体積%/20体積%〜10体積%/90体積
    %の混合溶媒可溶分を取得することにより、剪断粘度2
    00ポイズを示す温度が220〜370℃である炭素繊
    維用紡糸ピッチであって、光学異方性相が全体の5〜4
    0体積%であり、且つ該光学異方性相が、実質的に全て
    0.1〜100μmの光学異方性小球体として分散して
    いる、ガラス転移温度巾が40℃以下であり、かつキノ
    リン不溶分が5重量%未満であることを特徴とするピッ
    チを紡糸原料ピッチとするピッチ系炭素繊維の製造方
    法。
JP4059687A 1991-12-25 1992-02-14 ピッチ系炭素繊維とその製造方法 Expired - Lifetime JP3055295B2 (ja)

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