JPH0522353Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、回転ダイと固定ダイとの間に形成さ
れている転造空間にボルト素材を供給して、該転
造空間においてボルト素材にネジ溝を形成するロ
ータリ式ネジ転造機に関する。

（従来の技術） ボルト素材に対してネジ溝を刻入してボルトを
製造するロータリ式ネジ転造機は、通常、外周面
に多数のネジ溝が形成された円形の回転ダイに対
し、内周面に多数のネジ溝が形成された円弧形状
の固定ダイを所定の転造空間を隔てて配置し、回
転ダイの回転状態で、転造空間に上記のボルト素
材を供給して、該転造空間をボルト素材が通過す
る間に、両ダイによつて転造圧を該素材に加え
て、その軸部外周にネジ溝を形成するようになさ
れている。

したがつて上記の転造機では、ボルト素材の転
造処理が不良品を生じることなく正常になされる
ように、ボルト素材の軸径その他から導き出され
る適切な転造圧を該素材に働かせる必要があり、
そのため通常は回転ダイに対し固定ダイを移動さ
せて上記の転造空間の間隔を調整することがなさ
れる。しかし、このように転造圧を設定しても、
転造処理時の反力が前述の主軸に回転ダイを介し
て作用する結果、該主軸のたわみ変形が発生し、
この変形によつて上記の転造圧に狂いが生じ、転
造ミスの原因となると共に、主軸の傷みが激しく
なる。

そのため、従来においては、上記回転ダイを挟
んで固定ダイとは反対側位置に、主軸を支持する
支持部材を設け、該支持部材とこれに対向して配
設されたバツクアツプ材との間にクサビ部材を圧
入させて、上記の反力に抗する支持力を主軸に働
かせる構造（前者構造と称す）や、上記支持部材
を扇形レバーから構成すると共に、この支持部材
とバツクアツプ材との接当面を互いに偏心された
円弧面に形成して、該支持部材の回動によつて両
部材を圧力的に接当させることにより主軸に支持
力を働かせる構造（後者構造と称す）が採用され
ている。

このような手段によれば、主軸に作用する転造
反力に応じた大きさの支持力で該主軸を受け支え
ることによつて、該支持力により主軸に働く反力
を相殺させて上記転造圧の狂いを防止し、また、
たわみ変形による主軸の傷みを抑えることができ
る。

（考案が解決しようとする課題） しかし、上記のような反力支持構造では、転造
圧が変わつた場合、主軸に働く転造反力も当然に
変化するから、該転造圧が大きく変化すると、そ
の反力を上記の支持力によつて相殺できなくな
り、このため主軸がたわみ変形すると共に、転造
圧に狂いが生じ、転造ミスによる不良品が発生す
る。つまり大幅な転造圧の変化に対処できなくな
る。

また、上記主軸に対する支持力の印加は、前者
構造の場合も後者構造の場合も、予めバツクアツ
プ材に記入ないし刻入されている転造圧の目盛り
を基準としてクサビ部材の圧入量を調整し、また
支持部材の回動量を調整して行われることにな
る。しかし、このような方法では、前記回転ダイ
等の取り外し、交換、さらには転造圧の変更のた
びに、上記の操作を行わねばならないから、反力
支持手段のセツト、およびセツト解除に作業性が
欠けるきらいがある。

そこで本考案は、大幅な転造圧の変更に対処し
て主軸に加わる転造反力を確実に相殺でき、しか
も反力支持手段のセツト、およびセツト解除が簡
便に行えるロータリ式ネジ転造機の提供を課題と
する。

（課題を解決するための手段） すなわち本考案は、回転主軸に取り付けられて
いる円形の回転ダイに対して、円弧形状の固定ダ
イが所定の転造空間を隔てて対向配置され、かつ
上記転造空間にボルト素材を供給する素材供給手
段が備えられたロータリ式ネジ転造機であつて、
ボルト素材の転造時に上記主軸に働く転造反力を
支持する反力支持手段が設けられ、該反力支持手
段が、固定ダイとは反対側位置において上記主軸
の周面に当接される複数の主軸受けローラと、こ
れらのローラを支持すると共に、転造反力の作用
方向にスライド可能とされたローラ支持部材と、
所定の転造反力が得られるように、上記ローラ支
持部材と主軸受けローラを介して主軸を固定ダイ
側へ付勢する油圧付勢手段とから構成されている
ことを特徴とする。

（作用） 上記の構成によれば、油圧付勢手段によつてス
ライド部材に取り付けられている複数の主軸受け
ローラを圧力的に主軸に押当させることにより、
該主軸にこれに作用する転造反力に抗する支持力
を働かせるから、転造時、この支持力によつて転
造反力を相殺して該主軸のたわみ変形を抑え、か
つ転造圧を所定値に保つことができる。

そして、その場合、油圧付勢手段では油圧力を
段階的にあるいは無段階に変化させて上記の支持
力を調整できるから、転造するボルト素材に応じ
た転造圧に対し、その転造圧によつて主軸に働く
反力の大きさに合わせた支持力を簡単に設定する
ことができる。このため転造圧の大きさに対処し
てもつとも適切な大きさの支持力を選んで主軸に
加えることが可能となり、これによつて広範な範
囲での転造圧の変化に対処することができる。

しかも、油圧力の調整は油圧回路によつて簡単
に実行できるから、たとえばダイアル等で所定の
油圧力を選んだのち、油圧回路をONさせれば、
自動的にスライド部材がスライドして主軸受けロ
ーラが主軸にセツトされることになり、逆に油圧
を解除してスライド部材を後退させれば、主軸受
けローラを主軸から離反させることができ、迅
速、かつ簡便に反力支持手段のセツト、およびセ
ツト解除が行える。

（実施例） 次に、本考案の実施例を図面に基づき説明す
る。

第１図は本考案にかかるロータリ式ネジ転造機
１の全体平面図であつて、この転造機１の主フレ
ーム２上には、所定の駆動源（図示せず）により
駆動される主軸３を介して常時矢印方向にイ方向
に回転される円形の回転ダイ４が備えられると共
に、該回転ダイ４とは所定の転造空間５を隔てて
対向配置された円弧状の固定ダイ６が、その背面
部を上記主フレーム２の所定位置に取り付けボル
ト７，７により固設されたバツクアツプ材８に当
接させた状態で、かつ複数の締め付け金具９……
９により固定されている。そして、上記回転ダイ
４の外周面、ならびに固定ダイ６の内周面に、ネ
ジ転造に備えて、それぞれ多数のネジ溝Ａが一体
的に形成されている。

さらに、予め所定形状に形成されたボルト素材
Ｂを上記転造空間５に供給すべく、該転造空間５
の始端部とパーツフイーダ（図示せず）との間
に、素材供給シユート１０が配設され、該シユー
ト１０にそつてボルト素材Ｂが転造空間５の始端
部に順次供給されるようになされている。

また、上記固定ダイ６の一端部近傍で、かつ上
記シユート１０の終端部側には、主フレーム２上
にケーシング１１が固設され、このケーシング１
１内にスプリング１２が内装されると共に、該ス
プリング１２に付勢されたストツパーレバー１３
が、そのレバー先端が上記シユート１０の出口に
臨む状態で装備され、これによつてシユート１０
上における最前列のボルト素材Ｂが転造空間５内
に進入するのを阻止している。

また、上記シユート１０を挟んでストツパーレ
バー１３とは反対位置に、上記ボルト素材Ｂを回
転ダイ４の回転に同期した所定のタイミングで押
圧して、該素材Ｂを前述の転造空間５内に供給す
るための素材供給機構１４が配設されている。

この素材供給機構１４は複数の揺動アーム１５
Ａ，１５Ｂ，１５Ｃが一体に設けられたアームブ
ロツク１５を有すると共に、上記アーム１５ａに
プツシヤーレバー１６が、またアーム１５ｂに後
述するカム機構１９によつて作動されるカムフオ
ロワー１７が支持され、さらにアーム１５ｃの一
端と主フレーム２上の所定位置との間にわたつて
スプリング１８が張設されることによつて、アー
ムブロツク１５の全体が所定の方向に付勢されて
いる。

また、上述のカム機構１９は、第２図に示すよ
うに、上記回転ダイ４の主軸３の下方に一体的に
固装された駆動ギア２０と、該ギア２０に噛み合
つて主フレーム２に支持された中間ギア２１と、
さらに該中間ギア２１に噛み合つて連動されてい
る従動ギア２２を備え、このうち従動ギア２２
が、同じく主フレーム２に支持されているカム駆
動軸２３の下端部に取り付けられると共に、該駆
動軸２３の上端に、複数のカム突起２５ａ，２５
ａ（図例では２個）が周方向にに等間隔で形成さ
れたカム部材２５が、カム取り付け部材２４を介
して固装されている。これによつて、カム駆動軸
２３が回転ダイ４と同期して回転されると共に、
カム部材２５も回転される。

したがつて、カム部材２５が回転するならば、
これに当接しているカムフオロワー１７を介して
揺動アーム１５ｂが揺動し、かつ該揺動に連動し
て揺動レーバー１５ａが揺動し、このため前述の
プツシヤーレバー１６が回転ダイ４に同期した所
定のタイミングで、第１図に示した状態から前進
し、このためシユート１０の出口の最前列のボル
ト素材Ｂが押圧され、かつ該ボルト素材Ｂに働く
力により、これに接当しているストツパーレバー
１３がスプリング１２に抗して後退方向に排除さ
れ、その結果、該ボルト素材Ｂが転造空間５に押
し込まれる。そして、押し込まれたボルト素材Ｂ
が転造空間５内を回転ダイ４の回転方向に転動し
て移動する間に、該素材Ｂの軸部に既述のネジ溝
Ａに相当するネジが成形され、その後に固定ダイ
６の他端から排出される。

なお、上記固定ダイ６の他端近傍には、転造処
理後のボルト素材Ｂを受け止めるための受け部２
６が設けられている。また上記主フレーム２の一
側部には、固定ダイ６に当接するバツクアツプ材
８を前後動させて、転造空間の５の間隔を調整す
るための複数の調整用ネジ軸２７……２７が備え
られている。

以上のような転造機１において、回転ダイ４を
挟み、固定ダイ６とは反対側位置には、主軸３に
働く転造反力を支持するための反力支持手段２８
が装備される。該手段は２８はスライドブロツク
２９と、該ブロツク２９の先端に回転自由に軸支
された２つの主軸受けローラ３０，３０を有し、
主フレーム２の上面に固定された左右一対のガイ
ド部材３１，３１間に上記スライドブロツク２９
が配置されると共に、該ブロツク２９がガイド部
材３１，３１に係合されて、該ブロツク２９が前
記の主軸３に対し直角に進退する方向にスライド
可能とされている。またスライドブロツク２９に
この進退作動を行わせるための油圧シリンダ３
２，３２が連結されると共に、油圧ポンプ３３お
よび油圧バルブ３４が備えられ、コントローラ３
５によつて油圧バルブ３４を制御することによつ
て油圧シリンダ３１，３１に対する作動油の給排
がなされるように構成されている。そして該油圧
シリンダ３２，３２によつてスライドブロツク２
９を主軸３に対し前進させた場合に、上記主軸受
けローラ３０，３０が主軸３の周面に当接し、該
ローラ３０，３０を介して油圧による支持力が主
軸３に加えられるようになされている。

したがつて油圧シリンダ３２，３２における油
圧力を、転造開始に先立つて、所定の転造圧にお
いて主軸３に働く反力を相殺する大きさに設定し
たのち、該油圧シリンダ３２，３２を作動させ、
かつスライドブロツク２９を前進させて主軸受け
ローラ３０，３０を主軸３に押し付け、該押圧力
を作用させている状態で転造を行えば、転造時に
主軸３に働く衝撃的な反力が押圧力によつて相殺
される結果、主軸３のたわみ変形が防止されるこ
とになつて、転造圧に狂いが発生せず、この所定
の転造圧のもとで転造が実行される。また主軸３
の傷みが抑えられる。

そして、この場合、油圧シリンダ３２ではコン
トローラ３５によつて油圧力を段階的にあるいは
無段階に変化させて上記の押圧力を調整できるか
ら、転造するボルト素材Ｂに応じた転造圧に対
し、その転造圧によつて主軸３に働く反力の大き
さに合わせた押圧力を簡単に設定することができ
る。このため転造圧の大きさに対処してもつとも
適切な大きさの支持力を選んで主軸３に加えるこ
とが可能となり、これによつて広範な転造圧の変
化に対処することができる。

しかも、油圧力の調整は油圧回路によつて簡単
に実行できるから、たとえばダイアル等で所定の
油圧力を選んだのち、油圧回路をONさせれば、
自動的にスライド部材２９がスライドして主軸受
けローラ３０，３０が主軸３にセツトされること
になり、逆に油圧を解除すれば、スライド部材２
９を後退させ、かつ油圧ローラ３０，３０を主軸
３から離反させることができ、迅速、かつ簡便に
反力支持手段２８のセツト、およびセツト解除が
行える。したがつて回転ダイ３等の取り替え、交
換等における作業性が向上する。

（考案の効果） 以上の記載から明らかなように、本考案は、油
圧力によつて主軸受けローラを該主軸に押圧さ
せ、その主軸支持力によつて該主軸に働く転造反
力を相殺させるので、上記油圧の調整によつて支
持力を簡単に反力の大きさに合わせて調整できる
ことになつて、広範な転造圧の変化に対処して上
記反力を相殺し、転造圧による主軸のたわみ変形
をなくし、かつ転造圧の狂いを防止して、不良品
のない転造を行わせることができる。

また、油圧のON・OFFによつて簡便に、かつ
迅速に反力支持手段のセツト、およびセツト解除
ができて、作業性に富み、回転ダイ等の取り替え
ないし交換が容易となる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示し、第１図は本考案
にかかるロータリ式ネジ転造機の全体平面図、第
２図は第１図の−線矢視切断拡大図である。 １……ロータリ式ネジ転造機、３……回転主
軸、４……回転ダイ、５……転造空間、６……固
定ダイ、１０，１４……素材供給手段（１０は素
材供給シユート、１４は素材供給機構）、２８…
…反力支持手段、２９……スライド部材（スライ
ドブロツク）、３０……押圧ローラ、３２……油
圧付勢手段（油圧シリンダ）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 回転主軸に取り付けられている円形の回転ダイ
   に対して、円弧形状の固定ダイが所定の転造空間
   を隔てて対向配置され、かつ上記転造空間にボル
   ト素材を供給する素材供給手段が備えられたロー
   タリ式ネジ転造機であつて、ボルト素材の転造時
   に上記主軸に働く転造反力を支持する反力支持手
   段が設けられ、該反力支持手段が、固定ダイとは
   反対側位置において上記主軸の周面に当接される
   複数の主軸受けローラと、これらのローラを支持
   すると共に、転造反力の作用方向にスライド可能
   とされたローラ支持部材と、所定の転造反力が得
   られるように、上記ローラ支持部材と主軸受けロ
   ーラを介して主軸を固定ダイ側へ付勢する油圧付
   勢手段とから構成されていることを特徴とするロ
   ータリ式ネジ転造機。