JPH05119501A - 光受容部材形成方法 - Google Patents

光受容部材形成方法

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JPH05119501A
JPH05119501A JP28304291A JP28304291A JPH05119501A JP H05119501 A JPH05119501 A JP H05119501A JP 28304291 A JP28304291 A JP 28304291A JP 28304291 A JP28304291 A JP 28304291A JP H05119501 A JPH05119501 A JP H05119501A
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atom
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JP28304291A
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Kazuyoshi Akiyama
和敬 秋山
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 外部電気バイアスを用いたマイクロ波プラズ
マCVD法による光受容部材の形成方法において、光受
容部材の電気特性、画像特性、耐久性を向上させ、加え
て製造上の歩留まりを向上させる。 【構成】 導電性基体101上に、非結晶質シリコンを
主体とした光導電層102、表面層103からなる光受
容部材100の、外部電気バイアスを用いたマイクロ波
プラズマCVD法による形成方法であって、放電が生起
するときの外部電気バイアス電圧を、光導電層形成時の
電圧よりも低くする。かつ光導電層中に水素原子と炭素
原子を含有し、炭素含有量が導電性基体側表面で多く、
表面層側表面で0%となるように分布し、表面層に炭素
原子、水素原子、周期律表の第III族元素、ハロゲン原
子、酸素原子、窒素原子を含有する。光導電層を第1領
域、第2領域で構成した光受容部材もほぼ同様に構成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ波プラズマC
VD法を用いる光(ここでは広義の光であって、紫外
線、可視光線、赤外線、X線、γ線などを指す。)のよ
うな電磁波にたいして感受性のある光受容部材の形成方
法の改良に関する。本発明は、特には、電子写真用感光
体の製造に適したマイクロ波プラズマCVDによる改善
された光受容部材の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】像形成分野において、光受容部材におけ
る光受容層を形成する光導電材料としては、高感度で、
SN比〔光電流(Ip)/暗電流(Id)〕が高く、照
射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクト
ルを有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗値を有
すること、使用時において人体に対して無害であるこ
と、等の特性が要求される。特に、事務機としてオフィ
スで使用される電子写真装置内に組み込まれる電子写真
用光受容部材の場合には、上記の使用時における無公害
性は重要な点である。
【0003】このような点に立脚して最近注目されてい
る光導電材料にアモルファスシリコン(以下、「a−S
i」と表記する)があり、例えば独国公開第27469
67号公報、同第2855718号公報等には電子写真
用光受容部材としての応用が記載されている。また、特
開昭56−83746号公報においては、導電性基体
と、ハロゲン原子を構成要素として含むa−Si光導電
層第1領域からなる電子写真用光受容部材が提案されて
いる。該公報においては、a−Siにハロゲン原子を1
〜40原子%含有させることにより、ダングリングボン
ドを補償してエネルギーギャップ内の局在準位密度を低
減し、電子写真用光受容部材の光導電層として好適な電
気的、光学的特性を得ることができるとしている。
【0004】特開昭58−108544号公報において
は、導電性基体と、水素原子またはハロゲン原子を構成
要素とするアモルファスシリコン(以下「a−Si
(H,X)」の光導電性を有する第1の層領域と、シリ
コンと炭素原子とハロゲン原子および水素原子を構成要
素とする非単結晶材料で構成される第2の層領域とから
なる非単結晶層を有する光導電部材が提案されている。
【0005】一方、アモルファス炭化シリコン(以下、
「a−SiC」と表記する)について、耐熱性や表面硬
度が高いこと、a−Siと比較して高い暗抵抗率を有す
ること、炭素の含有量により光学的バンドギャップが
1.6〜2.8eVの範囲にわたって変えられること等
が知られている。このようなa−SiCによって光導電
層、及び光導電層第1領域を構成する電子写真用光受容
部材が、特開昭54−145540号公報において提案
されている。当該公報においては、炭素を化学修飾物質
として0.1〜30原子%含むa−Siを電子写真用光
受容部材の光導電層、及び光導電層第1領域として使用
することにより、暗抵抗が高く、光感度の良好な優れた
電子写真特性を示すことが示されている。
【0006】さらに、特公昭63−35026号公報に
おいては導電性基体上に、炭素原子と水素原子および/
または弗素原子を構成要素として含むa−Si(以後a
−SiC(H、F)と表記する)中間層と、a−Si光
導電層からなる電子写真感光体が提案されており、少な
くとも水素原子および/または弗素原子を含むa−Si
C中間層によって光導電特性を損なうことなく、a−S
i光導電層のクラックや剥離を低減することを図ってい
る。
【0007】一方工業的な見地からこの様なアモルファ
ス光受容部材の形成方法も次第に改良され、着実に進歩
している。たとえば従来主に用いられてきたRFプラズ
マCVD法では原料ガスの利用効率が低く、また膜の堆
積速度が遅いなどの欠点があった。そこでこのような問
題点を解決するために、近年マイクロ波グロー放電を用
いた、マイクロ波プラズマCVD法(以下μW−PCV
D法と記す。)が提案されている。
【0008】μW−PCVD法は、他の方法に比べ高デ
ポジション速度と高い原料ガス利用効率という利点を有
し、光受容部材の生産性の向上や、コストの低減の観点
から、工業的に注目を集めている。前記のような利点を
生かしたμW−PCVD装置の1つの例が、特開昭60
−186849号公報に記載されている。該公報に記載
の装置は、概要、マイクロ波エネルギーの導入手段を取
り囲むように基体を配置して内部チャンバー(すなわち
放電空間)を形成するようにしてガス利用効率を高める
ようにしたものである。
【0009】また、特開昭61−283116号公報に
は、半導体部材製造用の改良形マイクロ波技術が開示さ
れている。すなわち、当該公報は、プラズマ空間中にプ
ラズマ電位制御として電極を設け、この電極に所望の電
圧を印加して堆積膜へのイオン衝撃を制御しながら膜堆
積を行なうようにして堆積膜の特性を向上させる技術を
開示している。
【0010】このような技術により、良好な電気特性を
有する光受容部材をある程度高速の堆積速度と原料ガス
の利用効率で製造することが可能となった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
a−Si材料で構成された光導電層を有する光受容部材
を電子写真用感光体に適用した場合、暗抵抗値、光感
度、光応答性等の電気的、光学的、光導電特性、及び使
用環境特性の点、さらには経時安定性および耐久性の点
において、各々個々には特性の向上が図られてはいる
が、総合的な特性向上を図る上で、さらに改良される余
地が存在するのが実情である。
【0012】特に近年、電子写真装置はさらに高画質、
高速、高耐久性が望まれている。その結果、電子写真用
光受容部材においては電気的特性や光導電特性のさらな
る向上とともに、高帯電能、高感度を維持しつつあらゆ
る環境下で大幅に耐久性能を延ばすことが求められ、こ
うした観点から光受容部材の製造工程を含めてトータル
での検討が必要になっている。
【0013】たとえば従来のμW−PCVD法による堆
積膜形方法では、電子写真用光受容部材のような堆積膜
を形成する場合、特に良好な特性の堆積膜を得るために
外部電気バイアスを印加した場合、得られた堆積膜の表
面に曇り状のしみ(以下“しみ”と記す)が生じる場合
が多くあった。この様な“しみ”は、堆積膜の外観上の
品質を著しく悪化させ、いわゆる外観不良になるばかり
でなく、ハーフトーン画像の濃度ムラなどの画像特性の
悪化の一因となり、光受容部材を生産する上での収率
(歩留まり)を悪化させていた。
【0014】また、従来においては、高感度化、高暗抵
抗化を同時に図ろうとすると、従来においては、その使
用時において残留電位が残る場合が度々観測され、この
種の光受容部材は長時間使用し続けると、繰り返し使用
による疲労の蓄積が起こって残像が生ずるいわゆる「ゴ
ースト」現象を生ずるようになる等の不都合な点が少な
くなかった。また、従来は、高帯電能と画像流れの防止
とを高いレベルで両立させることが難しかった。
【0015】さらに、室温の変化、あるいは静電潜像を
安定させるために光受容部材を加熱するための装置の、
立ち上がりや温度制御のバラツキによって、光受容部材
の温度が変化するために暗抵抗が変化し、その結果、連
続してコピー画像を得る場合に画像間で画像濃度にむら
が生じるという不都合な点があった。さらに従来は長時
間使用し続けると、繰り返し使用による疲労のため、前
述の画像間の画像濃度のむらがより顕著になる場合が度
々観測された。
【0016】また、光受容部材の電気的、光導電的特性
の改良を図るために、水素原子(H)、あるいは弗素原
子(F)や塩素原子(Cl)等のハロゲン原子(X)、
および電気的伝導型の制御のために硼素原子(B)や燐
原子(P)などが、あるいはその他の特性改良のために
他の原子が各々構成原子として光導電層中に含有される
が、これらの構成原子の含有の仕方如何によっては、形
成した層の電気的あるいは光導電的特性やその均一性に
問題が生じる場合があった。このような場合、画像濃度
にむらが生じ、特にハーフトーン画像においてそれが顕
著に現われるため、組織構造的、電気的、光学的な膜質
の高度な均一性が求められている。
【0017】また、近年、電子写真装置の画像特性向上
のために電子写真装置内の光学露光系、現像装置、転写
装置等の改良がなされた結果、電子写真用光受容部材に
おいても、従来以上の画像特性の向上が求められるよう
になった。特に、俗に「ポチ」と呼ばれる、黒点状また
は白点状の画像欠陥の減少、特には従来はあまり問題に
されなかった微少な大きさの「ポチ」の減少が求められ
るようになってきた。
【0018】この「ポチ」に関しては、その原因のほと
んどが球状突起と呼ばれる膜の異常成長であり、その発
生数を減らすことが重要である。また、連続して大量に
画像形成を行った場合に、初期画像より「ポチ」が増加
する現象がみられることがある。この原因の一つは、ト
ナーや転写紙の紙粉の一部が分離帯電器の帯電ワイヤー
に堆積して異常放電を誘発し、光受容部材の絶縁破壊を
引き起こすためと考えられる。また比較的大きな球状突
起が大量の画像形成中に、たとえばクリーニングブレー
ドとの摺擦により欠落する事もある。このようないくつ
かの原因によって発生する「ポチ」を低減するために、
光受容部材の材料の特性としての電気的耐圧性の向上と
ともに、製造工程まで含んだ「ポチ」対策が望まれるよ
うになっている。
【0019】また、a−Si光受容部材が本来持つ高耐
久性ゆえに、従来のように電子写真用感光体を消耗品と
見るのではなく、複写機本来の一部として本体の寿命が
尽きるまで交換不要とするメンテナンスフリー化の可能
性も生まれてきた。このため、画像形成装置の耐久性と
いう点からも、電子写真用光受容部材においては電気的
特性や光導電特性を高い状態で維持しつつ、画像欠陥の
原因となる異常成長の発生を防止し、あらゆる環境下で
大幅に耐久性能を延ばすことが求められている。
【0020】したがって、a−Si材料そのものの特性
改良が図られる一方で、電子写真用光受容部材を設計す
る際に、上記したような問題が解決されるように層構
成、各層の化学的組成、作製法など総合的な観点からの
改良を図ることが必要とされている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑
み成されたものであって、上述のごときシリコン原子を
母体とする材料で構成された従来の光受容層を有する電
子写真用光受容部材における諸問題を解決することを目
的とするものである。すなわち、本発明の主たる目的
は、電気的、光学的、光電的特性が使用環境にほとんど
依存することなく実質的に常時安定しており、特に光感
度が高く、耐光疲労に優れ、繰り返し使用に際しても劣
化現象を起こさず、長期の使用において画像欠陥や画像
流れの変化が全くなく、濃度が高く、非常に耐久性、耐
湿性に優れ、残留電位がほとんど観測されない、シリコ
ン原子を母体とする材料で構成された光受容層を有する
電子写真用光受容部材を、歩留まりよく、安価に提供す
ることにある。
【0022】本発明の他の目的は、基体上に設けられる
層と基体との間や積層される層の各層間における密着性
に優れ、均一で層品質の高いシリコン原子を母体とする
材料で構成された光受容層を有する電子写真用光受容部
材を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、
電子写真用光受容部材として適用させた場合、静電像形
成のための帯電処理の際の電荷保持能力が充分であり、
ハーフトーンが鮮明に出て、且つ解像度の高い高品質画
像を容易に得ることができる、通常の電子写真法がきわ
めて有効に適用され得る優れた電子写真特性を示す、シ
リコン原子を母体とする材料で構成された光受容層を有
する電子写真用光受容部材を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の堆
積膜形成方法における前述のごとき問題点を克服して前
述の本発明の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、
完成するに至ったものであり、その骨子とするところ
は、以下に記載する通りである。第1の発明は、実質的
に密封し得る反応容器内に放電空間を取り囲むように導
電性基体を配置し、マイクロ波導入手段を設け、原料ガ
スに由来する成膜に寄与する反応物質を含むマイクロ波
グロー放電プラズマを形成し、放電空間中に設けた電極
に外部電気バイアス電圧を印加して、前記導電性基体表
面にシリコンを母材とする非単結晶材料で構成された光
導電層、表面層を順次積層した光受容部材を形成する工
程を備えた光受容部材形成方法であって、前記光導電層
中に全層にわたって炭素原子および水素原子を含有し、
該炭素原子の含有量が層厚方向に不均一に、かつ導電性
基体側で含有量が高くなるように分布し、前記表面層中
に炭素原子および水素原子およびハロゲン原子、さらに
酸素原子および/または窒素原子を同時に含有する光受
容部材を形成する方法において、前記マイクロ波グロー
放電プラズマを生起せしめる際に前記導電性基体に印加
する外部電気バイアス電圧を、前記光導電層形成時に印
加する電圧にたいして実質的に低い電圧とし、かつ、放
電が生起した後に前記光導電層形成時の外部電気バイア
ス電圧を印加せしめる工程を有することを特徴としてい
る。
【0024】第2の発明は、実施的に密封し得る反応容
器内に放電空間を取り囲むように導電性基体を配置し、
マイクロ波導入手段を設け、原料ガスに由来する成膜に
寄与する反応物質を含むマイクロ波放電プラズマを形成
し、放電空間中に設けた電極に外部電気バイアス電圧を
印加して、前記導電性基体表面にシリコンを母材とする
非単結晶材料で構成された光導電層第1領域、表面層よ
りなる光受容部材を形成する工程を備えた光受容部材形
成方法であって、前記光導電層第1領域中に全層にわた
って炭素原子および水素原子を含有し、該炭素原子の含
有量が層厚方向に不均一に、かつ導電性基体側で含有量
が高くなるように分布し、前記表面層中に炭素原子およ
び水素原子およびハロゲン原子、さらに酸素原子および
窒素原子を同時に含有する光受容部材を形成する方法に
おいて、前記マイクロ波放電プラズマを生起せしめる際
に前記導電性基体に印加する外部電気バイアス電圧を、
前記光導電層第1領域形成時に印加する電圧にたいして
実質的に低い電圧を印加し、かつ、放電が生起した後に
前記光導電層第1領域形成時の外部電気バイアス電圧を
印加せしめる行程を有することを特徴としている。
【0025】以下、本発明の内容について詳しく説明す
る。従来のμW−PCVD法では、マイクロ波の周波数
が、例えば2.45GHzというように非常に高いた
め、原料ガスの分解により生じた電子やイオンなどによ
って形成されるイオンシースが非常に狭いものとなる。
そのため、従来のμW−PCVD法では、基体上の堆積
膜及び、堆積膜表面の堆積膜の成長領域での堆積膜形成
用の活性種の表面移動度が、プラズマ温度や基体温度で
一義的に決められるため、堆積膜の構造や電気的特性を
向上させるに十分な程度まで大きくすることが出来なか
った。
【0026】すなわち、プラズマCVD法により堆積膜
を形成する場合、基体表面では、堆積膜表面からの水素
原子の脱離や、構成原子がより安定な結合をするための
再配置が起こる。これらの反応は特性の良い堆積膜を得
るためには欠くことのできないものであり、一般に熱エ
ネルギーによって促進されると考えられる。ところがμ
W−PCVD法で高速に堆積膜を基体上に形成すると、
基体の熱だけでは充分な表面反応を起こすためのエネル
ギーが不足するところとなる。
【0027】この様なμW−PCVD法の問題点を解決
し、良好な構造や電気特性を有する堆積膜を得る方法と
して、前述した特開昭61−283116号公報に開示
されているように外部電気バイアスをマイクロ波プラズ
マ放電と併用する方法が提案されている。すなわち同方
法によれば、放電空間に電極を設け、該電極に外部電気
バイアス電圧を印加してプラズマと導電性基体との間に
電界をかけ、導電性基体上あるいは堆積した膜にイオン
衝撃を与えることにより、局所的なアニールを行ない、
表面反応を促進しすることができる。このような意味
で、外部電気バイアスは、μW−PCVD法で高速な堆
積膜の形成を行う上で、非常に有効な技術であるといえ
る。
【0028】しかしながら、外部電気バイアスを用いて
堆積膜を形成した場合、堆積膜の表面の一部、又は全面
に、白濁した曇り状の“しみ”を生じることが多くあっ
た。この“しみ”は、電子顕微鏡による堆積膜の表面の
観察においても、堆積膜の堆積過程において生ずる膜の
構造の粒径のわずかな差異として、正常な部分と区別さ
れるに過ぎないが、表面の肉眼による観察では、明かに
曇った艶の無い部分として正常な部分と区別され、堆積
膜の外観を著しく悪化させるのみならず、堆積膜の特性
にも影響を与え、例えば電子写真用光受容部材に適用し
た場合には、画像上の濃度のむらとなるなどの特性不良
の一因ともなっていた。
【0029】かかる“しみ”の発生について、詳しい機
構は依然不明な点も残されているが、おおよそ次のよう
な機構によると考えられる。堆積膜を形成するために放
電空間内に原料ガスを導入し、マイクロ波電力を投入し
て、放電を生起せしめる時、放電を生起せしめた瞬間に
発生した活性種は非常に高い過剰なエネルギーを与えら
れ、これらの活性種が外部電気バイアス電圧によって加
速されたイオンによって衝撃が与えられることで基体表
面あるいは初期の堆積膜になんらかの微少なダメージを
与え、それが膜の堆積を進行させるにしたがって増長さ
れ、“しみ”として観測されるに至り、また、堆積膜の
特性にも影響を与えているものと考えられる。
【0030】本発明の光受容部材の形成方法によれば、
放電を生起せしめる時の外部電気バイアス電圧を光導電
層の形成時に印加する電圧にたいして低くする事で、前
述したような放電が生起せしめられた直後のダメージを
効果的に低減することができ、かくして“しみ”の発生
を防止し、ハーフトーン画像等の画像特性の均一化を促
進し得る。また、堆積膜の構造の均一化が促進されるた
め、球状突起の欠落を防止し、長期の使用における白ポ
チの増加を防ぐことができ、耐久性のさらなる向上が得
られる。
【0031】本発明では、放電が生起するときの放電空
間内に設置された電極に印加する外部電気バイアス電圧
は、光導電層、又は光導電層第1領域形成時の電圧より
も実質的に低ければその効果が得られるが、光導電層形
成時の電圧にたいして50%以下とする事で、より顕著
な効果が現れることが実験により確認された。また、本
発明においては、放電が生起した後、外部電気バイアス
電圧を光導電層、又は光導電層第1領域形成時に印加す
る電圧にするまでの堆積膜の膜厚は、いずれの膜厚でも
効果が認められるが、放電が生起してより膜の堆積条件
にもよるが、0.01μm以上が望ましい。また堆積膜
の特性に影響を与えないためには3μm以下の膜厚であ
ることが望ましく、更に1μm以下の膜厚が好適であ
る。
【0032】また本発明において、放電を生起せしめた
後、外部電気バイアス電圧を光導電層形成時に印加する
電圧に高めるには、どのような方法によっても効果が認
められ、電圧を一定の時間内に徐々に上げていってもよ
いし、またある時点で所定の電圧に切り替えてもよい。
本発明では、電極と基体間に発生させる電界は直流電界
が好ましく、又、電界の向きは電極から導電性基体に向
けるのがより好ましい。電解を発生させるために電極に
印加する直流電圧の平均の大きさは、15v以上300
v以下、好ましくは、30v以上200v以下が適する
が、堆積膜の所望の特性が得られるようにその他のパラ
メーターと関連して適宜決定される。直流電圧波形とし
ては、特に制限はなく、いずれの波形のものでも本発明
では有効である。つまり、時間によって電圧の向きが変
化しなければいずれの場合でもよく、例えば、時間に対
して大きさの変化しない定電圧はもちろん、パルス状の
電圧、及び整流器により整流された時間によって大きさ
が変化する脈動電圧でも本発明は有効である。
【0033】また、交流電圧を印加する事も本発明では
有効である。交流の周波数は、いずれの周波数でも問題
はなく、実用的には低周波では50Hzまたは60H
z、高周波では13.56MHzが適する。交流の波形
としてはサイン波でも矩形波でも、他のいずれの波形で
もよいが、実用的には、サイン波が適する。但し、電圧
はいずれの場合も実効値を言う。
【0034】本発明において、光受容層を形成するとき
に放電空間に設けた電極に印加する外部電気バイアス電
圧は、堆積膜の形成が終了するまで一定に保っても良い
し、層によって外部電気バイアス電圧の値を変化させて
もよい。さらに、放電が生起してから所定の外部電気バ
イアス電圧を印加した後は、堆積膜の形成するに従って
外部電気バイアス電圧の値を徐々に増加させる事も本発
明では効果的である。
【0035】電極の大きさ及び形状は、放電を乱さない
ならばいずれのものでも良いが、実用上は直径1mm以
上5cm以下の円筒上の形状が好ましい。また、電極の
長さも、基体に電界が均一にかかる長さであれば任意に
設定できる。電極の材質としては、表面が導電性となる
ものならばいずれのものでも良く、例えば、ステンレ
ス,Al,Cr,Mo,Au,In,Nb,Te,V,
Ti,Pt,Pb,Fe等の金属、これらの合金または
表面を導電処理したガラス、セラミックス、プラスチッ
ク等が本発明では通常使用される。
【0036】図1(A)は本発明の第1の発明である光
受容部材の層構成を説明するために模式的に示した光受
容部材の断面図である。本発明の光受容部材(100)
は導電性基体(101)上に光導電層(102)、表面
層(103)を順次形成して構成される。本発明におい
て使用される導電性基体(101)はたとえばAl,C
r,Mo,Au,In,Nb,Te,V,Ti,Pt,
Pb,Fe,等の金属、およびこれらの合金、たとえば
ステンレス等が挙げられる。またポリエステル、ポリス
チレン、ポリカーボネイト、セルロールアセテート、ポ
リプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリア
ミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セ
ラミック等の電気絶縁性基体の少なくとも光受容層を形
成する側の表面を導電処理した基体も用いることができ
る。さらに光受容層を形成する側と反対側も導電処理す
ることが望ましい。
【0037】導電性基体(101)の形状は平滑平面あ
るいは凹凸表面の円筒状または板状無端ベルト形状であ
ることができ、その厚さは所望どうりの電子写真用光受
容部材を形成し得るように適宜決定されるが、特に電子
写真用光受容部材として可ぎゃく性が要求される場合に
は、基体としての機能が十分発揮できる範囲内で可能な
限り薄くすることができる。しかしながら、基体の製造
上、取り扱い上、および機械的強度上等の点から通常は
10μm以上とされる。
【0038】また本発明において、導電性基体(10
1)の表面に凹凸をつくる場合、例えばレーザー光など
の可干渉性光によって像記録を行う場合には、画像にお
いて現われる干渉縞模様による画像不良を解消するため
に、導電性基体(101)の表面に凹凸を設けてもよ
い。導電性基体(101)の表面に設けられる凹凸は、
特開昭60−168156号公報、同60−17845
7号公報、同60−225854号公報等に記載された
公知の方法により作製される。また、かかる干渉縞模様
による画像不良が解消する別の方法として、導電性基体
(101)の表面に複数の球状痕跡窪みによる凹凸形状
を設けてもよい。即ち、導電性基体(101)の表面が
電子写真用感光体に要求される解像力よりも微少な凹凸
を有し、しかも該凹凸は、複数の球状痕跡窪みによるも
のである。導電性基体(101)の表面に設けられる複
数の球状痕跡窪みによる凹凸は、特開昭61−2315
61号公報に記載された公知の方法により作製される。 光導電層 本発明における光導電層(102)はシリコン原子を母
体とし、少なくとも炭素原子、水素原子および弗素原子
を含む非単結晶材料(以下「nc−SiC(H,F)」
と記す)により構成されるものであり、所望の光導電特
性、特に電荷保持特性、電荷発生特性、電荷輸送特性を
有する。
【0039】前記光導電層(102)に全層にわたって
含有される炭素原子の含有量は分布をなし、光導電層
(102)の導電性基体側の表面で含有率が高く、光導
電層の表面層側の表面で含有率が低くなるように分布し
ている。炭素原子の含有量は、前記導電性基体側の表
面、または表面近傍で0.5原子%以下であれば前記導
電性基体との膜の密着性及び、電荷注入阻止の機能が悪
化し、さらに静電容量の減少による帯電能の向上の効果
が薄くなる。また50原子%以上になると残留電位の増
加が認められるところとなる。このため前記導電性基体
側の表面、または表面近傍の炭素原子の含有量は、実用
的には0.5乃至50原子%、好ましくは1乃至40原
子%、更に最適には1乃至30原子%とされるのが好ま
しい。また、本発明においては光導電層中に水素原子が
含有されることが必要であるが、これはシリコン原子の
未結合手を補償し、層領域品質の向上、特に光導電特性
及び電荷保持特性を向上させるために必要不可欠であ
る。特に炭素原子が含有された場合、その膜質を維持す
るためにより多くの水素原子が必要となるため、炭素含
有量にしたがって、含有される水素原子の量が調整され
ることが望ましい。よって、導電性基体側表面の水素原
子の含有量は好ましくは1乃至40原子%、より好まし
くは5乃至35原子%、さらに最適には10乃至30原
子%とされるのが好ましい。
【0040】光導電層(102)に含有される弗素原子
については、光導電層に含有される炭素原子、水素原子
の凝集を抑制し、バンドギャップ内の局在準位密度を低
減される効果があるため、ゴースト、ガサツキなどの画
像品質を改善することに効果が認められる。また光導電
層(102)に含有される弗素原子は、光導電層(10
2)中に万遍なく均一に分布していてもよいし、また層
厚方向に不均一に分布して含有させることも、本発明に
は有効である。
【0041】弗素の含有量は1原子ppm未満であれ
ば、ゴースト、ガサツキの改善の効果が十分認められ
ず、また、95原子ppmより多いと、逆に膜質が悪化
し、かえってゴーストが現れるようになる。従って弗素
原子の含有量としては、実用的には1〜95原子pp
m,好ましくは5〜80原子ppm,さらに最適には1
0〜70原子ppmとされるのが好ましい。
【0042】さらに、本発明においては前記光導電層
(102)に酸素原子を含有せしめることも有効であ
り、この場合相乗効果によって堆積膜のストレスをより
効果的に緩和して膜の構造欠陥を減少せしめることがで
きる。このためa−SiCを光導電層に用いた場合に問
題となる電位シフトを減少させることができる。該酸素
原子は光導電層(102)中に万遍なく均一に含有され
ていてもよいし、また層厚方向に不均一な分布をもって
含有させることも本発明には有効である。酸素原子の含
有量は10原子ppm未満ではストレスの緩和や、電位
シフトの改善に十分な効果が認められず、また5000
原子ppmをこえると電子写真の高速化に対応するため
に電気的特性を満足できなくなる。従って酸素原子の含
有量としては10〜5000原子ppmが好ましい。特
に光導電層(102)に前述のごとき範囲で炭素原子を
含有せしめたときに、弗素原子及び酸素原子の含有量を
上記の範囲に設定することにより、光導電特性、画像特
性及び耐久性が著しく向上することが、実験により確認
された。
【0043】さらに加えてこれらの効果は、放電を生起
するときの外部電気バイアス電圧を光導電層(102)
の形成時に印加する電圧よりも低くすることで、堆積膜
中の構造的な均一化がいっそう顕著にあらわれ、画像特
性の均一化に大きな効果が得られる。本発明において、
光導電層(102)は外部電気バイアスを用いたμW−
PCVD法による真空堆積膜形成方法によって、所望特
性が得られるように、適宜成膜パラメーターの数値条件
が設定されて作成される。μW−PCVD法によってn
c−SiC(H,F)の光導電層を形成するには、基本
的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の
原料ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原
料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料
ガスと、弗素原子(F)を供給し得るF供給用の原料ガ
スと、また場合によって、酸素原子(O)を供給し得る
O供給用ガスとを、内部が減圧にし得る反応容器内に所
望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を
生起させ、あらかじめ所定の位置に設置されてある所定
の導電性基体表面上にnc−SiC(H,F)からなる
層を形成すればよい。
【0044】本発明において使用されるSi供給用ガス
となり得る物質としては、SiH4,Si26 ,Si3
8 ,Si410等のガス状態の、またはガス化し得
る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとし
て挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給効
率の良さ等の点でSiH4 ,Si26 が好ましいもの
として挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガ
スを必要に応じてH2,He,Ar,Ne等のガスによ
り希釈して使用してもよい。
【0045】本発明において、炭素原子供給用ガスとな
り得る物質としては、常温常圧でガス状の、または、少
なくとも、光導電層の形成条件下で容易にガス化し得る
ものが使用されるのが望ましい。これらの例としては、
CとHとを構成原子とする、例えば炭素原子数1乃至5
の飽和炭化水素、炭素数2乃至4のエチレン系炭化水
素、炭素数2乃至3のアセチレン系炭化水素等があげら
れる。
【0046】具体的には、飽和炭化水素としては、メタ
ン(CH4 ),エタン(C26 ),プロパン(C3
8 ),n−ブタン(n−C410),ペンタン(C5
12)、エチレン系炭化水素としては、エチレン(C2
4 ),プロピレン(C36),ブテン−1(C4
8 ),ブテン−2(C48 ),イソブチレン(C4
8 ),ペンテン(C510)、アセチレン系炭化水素と
しては、アセチレン(C 22 ),メチルアセチレン
(C34 ),ブチン(C46 )等が挙げられる。
【0047】また、SiとCとを構成原子とする原料ガ
スとしては、Si(CH34 ,Si(C254
のケイ化アルキルを挙げることができる。この他に、炭
素原子(C)の導入に加えて、弗素原子(F)の導入も
行えるという点から、CF4 ,CF3 ,C26 ,C3
8 ,C48 等のフッ化炭素化合物を挙げることがで
きる。
【0048】本発明に於て弗素原子供給用ガスとして好
適に使用し得る物質は、たとえば弗素ガス(F2 )、弗
素化合物、弗素を含むハロゲン間化合物、弗素で置換さ
れたシラン誘導体等のガス状の、または、少なくとも光
導電層の形成条件にて、容易にガス化し得る弗素化合物
があげられる。また、シリコン原子と弗素原子とを構成
要素とするガス状の、または、少なくとも、光導電層の
形成条件下で容易にガス化し得る、弗素原子を含む水素
化珪素化合物も使用することが可能である。
【0049】本発明において好適に使用し得る弗素化合
物としては、具体的には弗素ガス(F2 )や、BrF,
ClF,ClF3 ,BeF3 ,BrP5 ,IF3 IF7
等のハロゲン間化合物を挙げることができる。また、弗
素原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的に
は、例えば、SiF4 ,Si26 ,等の弗化珪素が好
ましいものとして挙げることができる。
【0050】このような弗素原子を含む珪素化合物を採
用してグロー放電等によって本発明の特徴的な電子写真
用光受容部材を形成する場合には、Si供給用ガスとし
ての水素化珪素ガスを使用しなくても、所定の導電性基
体上に弗素原子を含むnc−SiC(H,F)からなる
光導電層を形成することができるが、形成される光導電
層中に導入される水素原子の導入割合の制御を一層容易
になるように図るために、これらのガスに更に水素ガス
または水素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混合し
て層領域を形成することが好ましい。又、各ガスは単独
種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支え
ないものである。
【0051】本発明においては、弗素原子供給用ガスと
して上記された弗化物あるいは弗素を含む珪素化合物が
有効なものとして使用されるものであるが、そのほか
に、HF等の弗化水素、SiH3 F,SiH22 ,S
iHF3 等の弗素置換水素化珪素、等々のガス状態ある
いは、少なくとも、光導電層の形成条件下で容易にガス
化し得る物質も有効な光導電層形成用の原料物質として
挙げることが出来る。これらの物質の内、水素原子を含
む弗化物は、光導電層の形成の際に層中に弗素原子の導
入と同時に、電気的或は光電的特性の制御にきわめて有
効な水素原子も導入されるので、本発明においては好適
な弗素原子供給用ガスとして使用される。
【0052】水素原子を光導電層(102)中に構造的
に導入するには、上記の他にH2 、あるいはSiH4
Si26 ,Si38 ,Si410等の水素化珪素と
Siを供給するためのシリコンまたはシリコン化合物と
を反応容器中に共存させて放電を生起させることでも行
うことができる。光導電層(102)に含有される水素
原子および/または弗素原子の量を制御するには、例え
ば導電性基体温度、水素原子あるいは弗素原子を含有さ
せるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する
量、放電電力等を制御すればよい。
【0053】さらに本発明においては、光導電層(10
2)には必要に応じて伝導性を制御する原子(M)を含
有させることが好ましい。伝導性を制御する原子は、光
導電層中に万遍なく均一に分布した状態で含有されても
良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有
している部分があってもよい。前記の伝導性を制御する
原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を
挙げることができ、p型伝導特性を与える周期律表のII
I 族に属する原子(以後「第III 族原子」と略記する)
またはn型伝導特性を与える周期律表V族に属する原子
(以後「第V族原子」と略記する)を用いることができ
る。
【0054】第III 族原子としては、具体的には、B
(ほう素),Al(アルミニウム),Ga(ガリウ
ム),In(インジウム),Ti(タリウム)等があ
り、特にB,Al,Gaが好適である。第V族原子とし
ては、具体的にはP(リン),As(砒素),Sb(ア
ンチモン),Bi(ビスマス)等があり、特にP,As
が好適である。
【0055】光導電層(102)に含有される伝導性を
制御する原子(M)の含有量としては、好ましくは1×
10-3〜5×104 原子ppm、より好ましくは1×1
-2〜1×104 原子ppm、最適には1×10-1〜5
×103 原子ppmとされるのが望ましい。特に光導電
層(102)において炭素原子(C)の含有量が1×1
3 原子ppm以下の場合には光導電層(102)に含
有される原子(M)の含有量としては1×10-3〜1×
103 原子ppmとされるのが望ましく、炭素原子
(C)の含有量が1×103 原子ppmを越える場合に
は、原子(M)の含有量としては、1×10-1〜5×1
4 原子ppmとされるのが望ましい。
【0056】光導電層(102)に、伝導性を制御する
原子、たとえば、第III 族原子あるいは第V族原子を構
造的に導入するには、層領域形成の際に、第III 族原子
導入用の原料物質あるいは第V族原子導入用の原料物質
をガス状態で反応容器中に、光導電層(102)を形成
するための他のガスとともに導入してやればよい。第II
I 族原子導入用の原料物質あるいは第V族原子導入用の
原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状
の、または少なくとも光導電層の形成条件下で容易にガ
ス化し得るものが採用されるのが望ましい。そのような
第III 族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素
原子導入用としては、B26 ,B410,B69
511,B610,B612,B614等の水素化硼
素、BF3,BCl3 ,BBr3 等の弗素化硼素等が挙
げられる。この他、AlCl3,GaCl3 ,Ga(C
33 ,InCl3 ,TlCl3 等も挙げることがで
きる。
【0057】第V族原子導入用の原料物質として本発明
において、有効に使用されるのは、燐原子導入用として
は、PH3 ,P24 等の水素化燐、PH4 I,PF
3 ,PF5 ,PCl3 ,PCl5 ,PBr3 ,PBr
5 ,PI3 等の弗素化燐が挙げられる。この他、AsH
3 ,AsF3 ,AsCl3 ,AsBr3 ,AsF5 ,S
bH3 ,SbF3 ,SbF5 ,SbCl3 ,SbCl
5 ,BiH3 ,BiCl3 ,BiBr3 等も第V族原子
導入用の出発物質の有効なものとして挙げることができ
る。
【0058】また、これらの伝導性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2 ,He,Ar,Ne等
のガスにより希釈して使用してもよい。さらに本発明の
光受容部材の光導電層(102)には、周期律表第Ia
族、IIa族、VIa族、VIII族から選ばれる少なくとも1
種類の元素を0.1〜10000原子ppm含有しても
よい。前記元素は前記光導電層(102)中に万遍無く
均一に分布されてもよいし、あるいは前記光導電層(1
02)中に万遍無く含有されてはいるが、膜厚方向に対
し不均一に分布する状態で含有する部分があってもよ
い。
【0059】第Ia族原子としては、具体的には、Li
(リチュウム),Na(ナトリウム),K(カリウム)
を挙げることができ、第IIa族原子としては、Be(ベ
リリウム),Mg(マグネシウム),Ca(カルシウ
ム),Sr(ストロンチウム),Ba(バリウム)等を
挙げることができる。また、第VIa族原子としては、具
体的には、Cr(クロム),MO(モリブデン),W
(タングステン)等を挙げることができ、第VIII族原子
としては、Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッ
ケル)等を挙げることができる。
【0060】本発明において、光導電層(102)の層
厚は所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果
等の点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは
5〜50μm、より好ましくは10〜40μm、最適に
は15〜30μmとされるのが望ましい。本発明の目的
を達成し得る特性を有するnc−SiC(H,F)から
成る光導電層(102)を形成するには、導電性基体の
温度、反応容器内のガス圧を所望にしたがって、適宜設
定する必要がある。
【0061】導電性基体の温度(Ts)は、層設計にし
たがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好
ましくは20〜500℃、より好ましくは50〜480
℃、最適には100〜450℃とするのが望ましい。反
応容器内のガス圧も同様に層領域設計にしたがって適宜
最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは1×
10-5〜100Torr、好ましくは5×10-5〜30
Torr、最適には1×10-4〜10Torrとするの
が好ましい。
【0062】本発明においては、光導電層(102)を
形成するための導電性基体温度、ガス圧の望ましい数値
範囲として前記した範囲が挙げられるが、これらの層作
成ファクターは通常は独立的に別々に決められるのもで
はなく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相
互的且つ有機的関連性に基づいて層領域作成ファクター
の最適値を決めるのが望ましい。
【0063】さらに本発明においては、光導電層(10
2)の前記導電性基体側に、少なくともアルミニウム原
子とシリコン原子と水素原子が層厚方向に不均一な分布
状態で含有する層領域を有することが望ましい。表面層 本発明における表面層(104)は、シリコン原子と水
素原子を構成要素とする非単結晶材料で構成され、これ
に少なくとも炭素原子とハロゲン原子と周期律表の第II
I 族元素を同時に含有し、さらに酸素原子及び/または
窒素原子を含有する。
【0064】表面層(104)においてシリコン原子、
水素原子、炭素原子、ハロゲン原子、周期律表の第III
族元素、さらに酸素原子および/または窒素原子が、同
時に含有されることにより、これらの相乗効果によって
電気的耐圧性が向上し、長期の使用にわたっても、「ポ
チ」、「リークポチ」の発生を抑制する効果が得られ
る。
【0065】また、耐久時において再生紙を使用する場
合においても、シリコン原子と水素原子を構成要素とす
る前記表面層に、炭素原子とハロゲン原子と周期律表の
第III 族元素、さらに酸素原子および/または窒素原子
を同時に含有させることによって、表面硬度が向上し、
耐環境特性が向上するために、再生紙のロジン等のサイ
ズ剤が光受容部材の表面に付着することを防止し、長期
の使用におけるトナーの融着や画像流れを無くすことに
効果を発揮する。
【0066】また炭素原子とハロゲン原子と周期律表の
第III 族元素と、酸素原子及び/または窒素原子を同時
に含有させることにより、堆積される膜の応力が効果的
に緩和されるために膜の密着性が向上し、表面層の炭素
原子の含有量を最表面もしくは最表面近傍でシリコン原
子と炭素原子の和に対して70原子%以上になるように
増しても、膜の応力による膜はがれの発生を防止でき
る。
【0067】表面層(104)の最表面もしくは最表面
近傍の炭素原子の含有量はシリコン原子と炭素原子の和
に対して好適には70〜90原子%、さらに好適には7
0〜86原子%、最適には70〜83原子%とするのが
望ましい。酸素原子の含有量は好適には1×10-5〜3
0原子%、さらに好適には5×10-5〜25原子%、最
適には1×10-4〜20原子%とするのが望ましい。
【0068】窒素原子の含有量は好適には1×10-5
30原子%、さらに好適には5×10-5〜25原子%、
最適には1×10-4〜20原子%とするのが望ましい。
また酸素原子および窒素原子を同時に含有する場合に
は、これらの含有量の和が好適には1×10-5〜30原
子%、さらに好適には5×10-5〜25原子%、最適に
は1×10-4〜20原子%とするのが望ましい。
【0069】水素原子とハロゲン原子の含有量の和は好
適には1×10-5〜80原子%、さらに好適には5×1
-5〜75原子%、最適には1×10-4〜70原子%と
するのが望ましい。周期律表第III 族元素としては、具
体的には、B(ほう素),Al(アルミニウム),Ga
(ガリウム),In(インジウム),Tl(タリウム)
等があり、特にBが好ましい。周期律表の第III 族元素
の含有量は好適には1×10-5〜1×105 原子pp
m、さらに好適には5×10-5〜5×104 原子pp
m、最適には1×10-4〜3×104 原子ppmとする
のが望ましい。
【0070】本発明においては表面層(104)に含有
されるシリコン原子、水素原子、炭素原子、酸素原子、
窒素原子、ハロゲン原子、周期律表第III 族元素は該層
中に万偏なく均一に分布されても良いし、また上記元素
のうち少なくとも1つの含有量が層厚方向に不均一に分
布する状態で含有される部分を持つことも本発明では有
効である。この場合、最表面における電気的耐圧性、耐
環境性をより向上させることができる。
【0071】本発明において、表面層(103)はμW
−PCVD法による真空堆積膜形成方法によって、所望
特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件
が設定されて作成される。μW−PCVD法によって表
面層を形成するには、基本的にはシリコン原子(Si)
を供給し得るSi供給用の原料ガスと、炭素原子(C)
を供給し得るC供給用の原料ガスと、水素原子(H)を
供給し得るH供給用の原料ガスと、ハロゲン原子(X)
を供給し得るX供給用の原料ガスと、酸素原子(O)を
供給し得るO供給用ガスと、窒素原子(N)を供給し得
るN供給用ガスと、第III 族元素(III)を供給し得るII
I 供給用ガスとを、減圧にし得る反応容器内に所望のガ
ス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を生起さ
せ、あらかじめ所定の位置に設置されてある所定の導電
性基体上に形成すればよい。
【0072】本発明において、炭素原子導入用の原料物
質となり得るものとしては、常温常圧でガス状のまた
は、少なくとも前記表面層の形成条件下で容易にガス化
し得るものが採用されるのが望ましい。炭素原子(C)
導入用の原料ガスになり得るものとして有効に使用され
る出発物質は、CとHとを構成原子とする、例えば炭素
数1〜5の飽和炭化水素、炭素数2〜4のエチレン系炭
化水素、炭素数2〜3のアセチレン系炭化水素等が挙げ
られる。
【0073】具体的には、飽和炭化水素としては、メタ
ン(CH4 ),エタン(C26 ),プロパン(C3
8 ),n−ブタン(n−C410),ペンタン(C5
12),エチレン系炭化水素としては、エチレン(C2
4 ),プロピレン(C36),ブテン−1(C4
8 ),ブテン−2(C48 ),イソブチレン(C4
8 ),ペンテン(C510),アセチレン系炭化水素と
しては、アセチレン(C 22 ),メチルアセチレン
(C34 ),ブチン(C46 )等が挙げられる。
【0074】また、SiとCとを構成原子とする原料ガ
スとしては、Si(CH34 ,Si(C254
のケイ化アルキルを挙げることができる。この他に、炭
素原子(C)の導入に加えて、ハロゲン原子の導入も行
えるという点から、CF4 ,CF3 ,C26 ,C3
8 ,C48 等のフッ化炭素化合物を挙げることができ
る。
【0075】本発明において酸素原子(O)導入用のガ
スとなり得るものとして有効に使用される出発物質は、
常温常圧でガス状のまたは、少なくとも前記表面層の形
成条件下で容易にガス化し得るものが採用されるのが望
ましい。たとえば、酸素(O 2 ),オゾン(O3 )等を
あげることができる。本発明において窒素原子(N)導
入用のガスとなり得るものとして有効に使用される出発
物質は、常温常圧でガス状のまたは、少なくとも前記表
面層の形成条件下で容易にガス化し得るものが採用され
るのが望ましい。例えば窒素(N2 ),アンモニア(N
3 )等をあげることができる。
【0076】また酸素原子と窒素原子を同時に導入する
物質として一酸化窒素(NO),二酸化窒素(NO
2 ),一二酸化窒素(N2 O),三二酸化窒素(N2
3 ),四三酸化窒素(N24 ),五二酸化窒素(N2
5 )等を挙げることができる。この他に、炭素原子
(C)の導入に加えて、酸素原子の導入も行えるという
点から、CO,CO2 等の化合物を挙げることができ
る。
【0077】本発明において使用されるハロゲン供給用
ガスとして有効なのは、たとえばハロゲンガス、ハロゲ
ン化物、ハロゲンをふくむハロゲン間化合物、ハロゲン
で置換されたシラン誘導体等のガス状のまたはガス化し
得るハロゲン化合物が好ましく挙げられる。また、さら
にはシリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガ
ス状のまたはガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化
珪素化合物も有効なものとして挙げることができる。
【0078】本発明に於て好適に使用し得るハロゲン化
合物としては、具体的には弗素ガス(F2 )、BrF,
ClF,ClF3 ,BrF3 ,BrF5 ,IF3 ,IF
7 等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲ
ン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換
されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばS
iF4 ,Si26 等のフッ化珪素が好ましいものとし
て挙げることができる。このようなハロゲン原子を含む
珪素化合物を採用してグロー放電等によって本発明の特
徴的な電子写真用光受容部材を形成する場合には、Si
供給用ガスとしての水素化珪素ガスを使用しなくても、
所定の導電性基体上にハロゲン原子を含むnc−Si
C:H,Xからなる表面層(104)を形成することが
できるが、形成される表面層(104)中に導入される
水素原子の導入割合の制御を一層容易になるように図る
ために、これらのガスに更に水素ガスまたは水素原子を
含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成すること
が好ましい。又、各ガスは単独種のみでなく所定の混合
比で複数種混合しても差し支えないものである。
【0079】本発明においては、ハロゲン原子供給用ガ
スとして上記された弗化物あるいはハロゲンを含む珪素
化合物が有効なものとして使用されるものであるが、そ
のほかに、HF,SiH3 F,SiH22,SiHF2
等のハロゲン置換水素化珪素、等々のガス状態のある
いはガス化し得る物質も有効な表面層形成用の原料物質
として挙げることが出来る。これらの物質の内、水素原
子を含むハロゲン化物は、表面層形成の際に層中にハロ
ゲン原子の導入と同時に、電気的或は光電的特性の制御
にきわめて有効な水素原子も導入されるので、本発明に
おいては好適なハロゲン原子供給用ガスとして使用され
る。
【0080】さらに本発明の光受容部材の表面層(10
4)には、周期律表第Ia族、IIa族、VIa族、VIII族
から選ばれる少なくとも1種類の元素を0.1〜100
00原子ppm含有してもよい。前記元素は前記表面層
中に万偏無く均一に分布されてもよいし、あるいは該表
面層中に万偏無く含有されてはいるが、膜厚方向に対し
不均一に分布する状態で含有する部分があってもよい。
【0081】第Ia族原子としては、具体的には、Li
(リチュウム),Na(ナトリウム),K(カリウム)
を挙げることができ、第IIa族原子としては、Be(ベ
リリウム),Mg(マグネシウム),Ca(カルシウ
ム),Sr(ストロンチウム),Ba(バリウム)等を
挙げることができる。また、第VIa族原子としては、具
体的には、Cr(クロム),MO(モリブデン),W
(タングステン)等を挙げることができ、第VIII族原子
としては、Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッ
ケル)等を挙げる事ができる。
【0082】本発明において、表面層(104)の層厚
は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果
等の点から好ましくは0.01〜30μm、より好まし
くは0.05〜20μm、最適には0.1〜10μmと
されるのが望ましい。本発明においてnc−SiC:H
で構成され酸素原子、ハロゲン原子、周期律表の第III
族元素を含有する表面層(104)を形成するには、前
述の光導電層(105)を形成する方法と同様の真空堆
積法が採用される。
【0083】本発明の目的を達成し得る特性を有する表
面層(104)を形成する場合には、導電性基体の温
度、ガス圧が前記表面層の特性を左右する重要な要因で
ある。導電性基体温度は適宜最適範囲が選択されるが、
好ましくは20〜500℃、より好ましくは50〜48
0℃、最適には100〜450℃とするのが望ましい。
反応容器内のガス圧も適宜最適範囲が選択されるが、好
ましくは1×10-5〜100Torr、より好ましくは
5×10-5〜30Torr、最適には1×10 -4〜10
Torrとするのが望ましい。
【0084】本発明においては、表面層(104)を形
成するための導電性基体温度、ガス圧の望ましい数値範
囲として前記した範囲が挙げられるが、これらの層作成
ファクターは通常は独立的に別々に決められるものでは
なく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相互
的且つ有機的関連性に基づいて各層作成ファクターの最
適値を決めるのが望ましい。
【0085】本発明は、外部電気バイアスを用いたμW
−PCVD法によるいずれの電子写真感光体製造方法に
も適用が可能であるが、特に、放電空間を囲むように基
体を設け、少なくとも基体の一端側から導波管によりマ
イクロ波を導入する構成により堆積膜を形成する場合大
きな効果がある。以下、本発明を実施するに好適な堆積
膜形成装置を用いた本発明の光受容部材の形成方法につ
いて説明する。
【0086】本発明を実施するに好適なμW−PCVD
法による堆積膜形成装置は、代表的には、図2(A)の
模式的縦断面図及び図2(B)の模式的横断面図(図2
(B)は、図2(A)に示す装置の模式的横断面図であ
る。)に示されている装置構成のものである。また図3
は本発明を実施するに好適な堆積膜形成装置の全体の構
成の模式図である。
【0087】図2(A)及び図2(B)、図3において
(201,301)は反応容器である。(202)はマ
イクロ波電力を反応容器内に効率よく透過し、かつ真空
気密を保持し得るような材料(例えば石英ガラス、アル
ミナセラミックス等)で形成されたマイクロ波導入用誘
電体窓である。(203,303)はマイクロ波電力の
伝送部で導波管より成っており、スタブチューナー(図
示せず)、アイソレーター(図示せず)を介してマイク
ロ波電源(図示せず)に接続されている。誘電体窓(2
02)は導波管(203)の壁に気密封止されている。
(204,304)は一端が反応容器(201,30
1)内に開口し、他端が排気装置(図示せず)に連通し
ている排気管である。(206)は複数の円筒形の導電
性基体(101)(205)により包囲されて形成され
た放電空間を示す。(208)はプラズマ電位を制御す
るための外部電気バイアスを与えるための電極であり、
電源(209)により直流または交流電圧を印加する。
なお、いずれの導電性基体(205)も、円筒形のホル
ダー(211)上に設置され、ヒーター(207)によ
り加熱され、各個のホルダーは、駆動手段(回転モータ
ー)(201)により、適宜回転され得るようになされ
ている。
【0088】反応容器(201,301)は真空気密化
構造をなしていればいずれの形状でもよく、たとえば円
筒形や直方体などの形状が用いられる。また、反応容器
(201,301)の材質はマイクロ波を反射するもの
であればいずれでも良いが加工性、耐久性などの点から
アルミニウム、ステンレス等が用いられる。本発明での
マイクロ波の反応容器までの導入方法として導波管によ
る方法が挙げられ、反応容器内への導入は、1つまたは
複数の誘電体窓から導入する方法が挙げられる。この
時、反応容器内へのマイクロ波の導入窓の材質としては
アルミナ(Al23 )、窒化アルミニウム(Al
N)、窒化ほう素(BN)、窒化珪素(SiN)、炭化
珪素(SiC)、酸化珪素(SiO2 )、酸化ベリリウ
ム(BeO)、テフロン、ポリスチレン等マイクロ波の
損失の少ない材料が通常使用される。
【0089】本発明における基体の加熱方法は、真空仕
様である発熱体であればいずれでもよく、より具体的に
はシース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒータ
ー、セラミックスヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲ
ンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液
体、気体等を温媒とし熱交換手段による発熱体等が挙げ
られる。加熱手段の表面材質は、ステンレス、ニッケ
ル、アルミニウム、銅等の金属類、セラミックス、耐熱
性高分子樹脂等を使用することができる。
【0090】また、本発明においては、反応容器以外に
加熱専用の容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空
中で基体を搬送する等の方法も使用することができる。
次に前記した堆積膜形成装置における本発明の光受容部
材の形成の手順を説明する。まず、反応容器(201,
301)内にあらかじめ脱脂洗浄された導電性基体(2
05)を設置し、駆動装置(210)によって導電性基
体(205)を回転し、不図示の排気装置(例えば真空
ポンプ)により反応容器(201,301)内を排気管
(204,304)を介して排気し、反応容器(20
1,301)内の圧力を1×10-6Torr以下に調整
する。続いて、基体加熱用ヒーター(206)により円
筒状基体(205)の温度を20℃〜500℃の所定の
温度に加熱保持する。
【0091】光受容部材形成用の原料ガスを反応容器
(201,301)に流入させるには、ガスボンベのバ
ルブ(331〜336)、反応容器のリークバルブ(不
図示)が閉じられていることを確認し、また、流入バル
ブ(341〜346)、流出バルブ(351〜35
6)、補助バルブ(360)が開かれていることを確認
して、まずメインバルブ(不図示)を開いて反応容器
(201,301)およびガス配管(317)内を排気
する。
【0092】次に真空計(不図示)の読みが約5×10
-6Torrになった時点で補助バルブ(360)、流出
バルブ(351〜356)を閉じる。その後、ガスボン
ベ(321〜326)より各ガスをバルブ(331〜3
36)を開いて導入し、圧力調整器(361〜366)
により各ガス圧を2kg/cm2 に調整する。次に、流
入バルブ(341〜346)を徐々に開けて、各ガスを
マスフローコントローラー(311〜316)内に導入
する。
【0093】以上のようにして成膜の準備が完了した
後、円筒状基体(205)上に光導電層、表面層の各層
の形成を行う。円筒状基体(205)が所定の温度にな
ったところで流出バルブ(351〜356)のうちの必
要なものおよび補助バルブ(360)を徐々に開き、ガ
スボンベ(321〜326)から所定のガスをガス導入
管(212)を介して反応容器(201)内の放電空間
(206)に導入する。次にマスフローコントローラー
(311〜316)によって各原料ガスが所定の流量に
なるように調整する。その際、放電空間(206)内の
圧力が1Torr以下の所定の圧力になるように真空計
(不図示)を見ながらメインバルブ(不図示)の開口を
調整する。圧力が安定した後、電源(209)から電極
(208)にたとえば直流等の外部電気バイアスを印加
する。このときの電圧は光導電層第2領域形成時に印加
する電圧よりも低くしておく。次にマイクロ波電源(不
図示)により周波数500MHz以上の、好ましくは
2.45GHzのマイクロ波を発生させ、マイクロ波電
源(不図示)を所望の電力に設定し、導波管(203,
303)、マイクロ波導入窓(202)を介して放電空
間(206)にμWエネルギーを導入して、μWグロー
放電を生起させる。放電が生起してからマイクロ波の電
力を光導電層第2領域形成時に必要な電力に調整した
後、外部電気バイアスの電圧を上昇させ、光導電層第2
領域形成時に必要な所定の電圧にする。この電圧の上昇
は瞬時に行っても良いしある一定の時間で徐々に上昇さ
せても良い。こうして導電性基体(205)により取り
囲まれた放電空間(206)において、導入された原料
ガスは、マイクロ波のエネルギーにより励起されて解離
し、導電性状基体(205)上に所定の光受容部材が形
成される。この時、層形成の均一化を図るため駆動手段
(210)によって、所望の回転速度で回転させる。
【0094】所望の膜厚の形成が行われた後、μW電力
の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガスの
流入を止め、堆積膜の形成を終える。それぞれの層を形
成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じ
られていることは言うまでもなく、また、それぞれのガ
スが反応容器(201,301)内、流出バルブ(35
1〜356)から反応容器(201,301)に至る配
管内に残留することを避けるために、流出バルブ(35
1〜356)を閉じ、補助バルブ(360)を開き、さ
らにメインバルブ(不図示)を全開にして系内を一旦高
真空に排気する操作を必要に応じて行う。
【0095】上述のガス種およびバルブ操作は作成条件
にしたがって変更が加えられることは言うまでもない。
第1の発明はマイクロ波を使用するいずれの装置にも適
応が可能であるが、特に放電空間を囲むように気体を設
け、少なくとも基体の一端側から導波管によりマイクロ
波を導入し、放電空間に設けた電極に電圧を印加する構
成の装置に対して大きな効果がある。
【0096】次に、本発明の第2の発明について説明す
る。図1(B)は本発明の第2の発明の光受容部材の層
構成を説明するために模式的に示した光受容部材の断面
図である。本発明の光受容部材(100)は導電性基体
(101)上に光導電層(102)、表面層(103)
を順次形成して構成され、さらに光導電層(102)
は、光導電層第1領域(104)、光導電層第2領域
(105)から構成される。
【0097】第2の発明において使用される導電性基体
(101)は第1の発明の基体と同じものが使用でき
る。 光導電層第1領域 第2発明における光導電層第1領域(104)は、導電
性基体側より、構成要素としてシリコン原子と炭素原
子、水素原子を含む非単結晶材料(以下「nc−Si:
H」と記す)により構成され、所望の光導電特性、特に
電荷保持特性、電荷発生特性、電荷輸送特性を有する。
前記光導電層第1領域(104)に含有される炭素原子
は分布を成し、該分布が前記光導電層第1領域(10
4)の層厚方向に不均一であって、層厚方向の各点にお
いて前記導電性基体側表面での含有率が高く、前記光導
電層第2領域側の含有率が低く分布している。炭素原子
の含有量としては、前記導電性基体(101)の設けて
ある側の表面又は表面近傍で0.5%以下であれば前述
の導電性基体(101)との密着性向上及び、電荷の注
入阻止の機能が悪化し、さらに静電容量の減少による帯
電能向上の効果が無くなる。また50%以上では残留電
位が発生してしまう。このため、実用的には0.5〜5
0原子%、好ましくは1〜40原子%であり、最適には
1〜30原子%とされるのが好ましい。また、本発明に
おいて光導電層第1領域(104)中に水素原子が含有
されることが必要であるが、これはシリコン原子の未結
合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性および電荷
保持特性を向上させるために必須不可欠であるからであ
る。特に炭素原子が含有された場合、その膜質を維持す
るために、より多くの水素原子が必要となるため、炭素
含有量にしたがって含有される水素量が調整されること
が望ましい。よって、導電性基体側の表面の水素原子の
含有量は望ましくは1〜40原子%、より好ましくは5
〜35原子%、最適には10〜30原子%とされるのが
好ましい。
【0098】さらに本発明の光導電層第1領域(10
4)には弗素原子を含有させることも有効である。弗素
原子は光導電層第1領域(104)中に含有される炭素
原子および水素原子の凝集を抑制し、バンドギャップ内
の局在準位密度を減少させる効果があり、ゴーストやハ
ーフトーンむらなどが改善される。光導電層第1領域
(104)中に含有される弗素原子の量は1原子ppm
より少ないと弗素原子によるゴースト、ハーフトーンむ
らの低減効果が十分得られず、また95原子ppmより
おおいと逆に膜質が低下し、ゴーストを生じるようにな
る。したがって弗素含有量は、実用的には1〜95原子
ppm、好ましくは5〜80原子ppm、さらに好適に
は10〜70原子ppmとされるのが好ましい。特に、
光導電層第1領域に前述のごとき範囲で炭素原子を含有
せしめたときに、弗素原子の含有量を上記した範囲に設
定することにより、光導電特性、画像特性および耐久性
が著しく向上することが実験により確認された。
【0099】さらに加えて、本発明においては、少なく
とも光導電層第1領域(104)中に含有される弗素原
子を層厚方向に不均一に分布させることによって、炭素
原子の含有量が層厚方向に変化するのに伴い発生する基
体と表面層側での内部応力の変化を緩和するため、堆積
膜中の欠陥が減少し膜質が向上する。その結果、光受容
部材の使用環境の温度変化に従って光受容部材の特性が
変化する、いわゆる温度特性を向上させることが可能に
なり、帯電能、およびコピー画像間の画像濃度のむらを
改善する事ができる。
【0100】さらに、本発明においては前記光導電層第
1領域(104)に酸素原子を含有させることも可能で
あり、この場合、弗素原子との相乗作用によって、堆積
膜のストレスをより効果的に緩和して膜の構造欠陥を抑
制する。このために、光導電層中でのキャリアの走行性
が改善されるため、特にA−SiC系の光導電層で問題
となる電位シフトが減少する。
【0101】該酸素原子は、前記光導電層第1領域(1
04)中の酸素含有量が10原子ppmより少ないと、
さらなる膜の密着性の向上および異常成長の発生の抑制
を図ることが充分にはできず電位シフトも大きくなる。
5000原子ppmを越えると電子写真の高速化に対応
するための電気的特性が充分ではなくなる。したがっ
て、酸素原子の含有量としては、10〜5000原子p
pmとするのが好ましい。
【0102】さらに加えて、本発明においては、少なく
とも光導電層第1領域(104)中に含有される酸素原
子を層厚方向に不均一に分布させることも有効であり、
堆積膜のストレスをさらに効果的に緩和でき、膜の構造
欠陥を大幅に抑制することが可能となる。このために、
特に長期間使用し続けることによる光導電層第1領域の
劣化を、抑制するため、長期間使用後の感度、残留電
位、および電位シフト等の電子写真特性を大幅に改善す
る事ができる。
【0103】これらの画像特性の改善効果は放電を生起
するときの外部電気バイアス電圧を光導電層第1領域形
成中に印加する電圧よりも低くすることで、堆積膜中の
構造的均一化がいっそう顕著に現れ、画像特性の均一化
に大きな効果が得られる。本発明において、光導電層第
1領域(104)は外部電気バイアスを用いたμW−P
CVD法によって、所望特性が得られるように適宜成膜
パラメーターの数値条件が設定されて作製される。本発
明によるμW−PCVD法によってnc−SiC:Hの
光導電層第1領域(102)を形成するには、基本的に
はシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料
ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原料ガ
スと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガス
と、場合によって弗素原子(F)を供給し得るF供給用
ガスと、酸素原子(O)を供給し得るO供給用ガスと
を、内部が減圧にし得る反応容器内に所望のガス状態で
導入して、該反応容器内にグロー放電を生起させ、あら
かじめ所定の位置に設置されてある所定の導電性基体表
面上にnc−SiC:Hからなる層を形成すればよい。
【0104】本発明において使用されるSi供給用ガス
となり得る物質としては、SiH4,Si26 ,Si3
8 ,Si410等のガス状態の、またはガス化し得
る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとし
て挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効
率の良さ等の点でSiH4 ,Si26 が好ましいもの
として挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガ
スを必要に応じてH2,He,Ar,Ne等のガスによ
り希釈して使用してもよい。
【0105】本発明において、炭素原子導入用の原料物
質となり得るものとしては、常温常圧でガス状のまた
は、少なくとも光導電層第1領域の形成条件下で容易に
ガス化し得るものが採用されるのが望ましい。炭素原子
(C)導入用の原料ガスになり得るものとして有効に使
用される出発物質は、CとHとを構成原子とする、例え
ば炭素数1〜5の飽和炭化水素、炭素数2〜4のエチレ
ン系炭化水素、炭素数2〜3のアセチレン系炭化水素等
が挙げられる。
【0106】具体的には、飽和炭化水素としては、メタ
ン(CH4 ),エタン(C26 ),プロパン(C3
8 ),n−ブタン(n−C410),ペンタン(C5
12),エチレン系炭化水素としては、エチレン(C2
4 ),プロピレン(C36),ブテン−1(C4
8 ),ブテン−2(C48 ),イソブチレン(C4
8 ),ペンテン(C510),アセチレン系炭化水素と
しては、アセチレン(C 22 ),メチルアセチレン
(C34 ),ブチン(C46 )等が挙げられる。
【0107】また、SiとCとを構成原子とする原料ガ
スとしては、Si(CH34 ,Si(C254
のケイ化アルキルを挙げることができる。水素原子を光
導電層第1領域中に構造的に導入するには、上記の他に
2 、あるいはSiH4 ,Si26 ,Si38 ,S
410等の水素化珪素とSiを供給するためのシリコ
ンまたはシリコン化合物とを反応容器中に共存させて放
電を生起させることでも行うことができる。
【0108】本発明において使用される弗素供給用ガス
として有効なのは、たとえば弗素ガス、弗素化物、弗素
をふくむハロゲン間化合物、弗素で置換されたシラン誘
導体等のガス状のまたはガス化し得る弗素化合物が好ま
しく挙げられる。また、さらにはシリコン原子と弗素原
子とを構成要素とするガス状のまたはガス化し得る、弗
素原子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げ
ることができる。
【0109】本発明に於て好適に使用し得る弗素化合物
としては、具体的には弗素ガス(F 2 ),BrF,Cl
F,ClF3 ,BrF3 ,BrF5 ,IF3 ,IF7
のハロゲン間化合物を挙げることができる。弗素原子を
含む珪素化合物、いわゆる弗素原子で置換されたシラン
誘導体としては、具体的には、たとえばSiF4 ,Si
26 等のフッ化珪素が好ましいものとして挙げること
ができる。このような弗素原子を含む珪素化合物を採用
してグロー放電等によって本発明の特徴的な電子写真用
光受容部材を形成する場合には、Si供給用ガスとして
の水素化珪素ガスを使用しなくても、所定の導電性基体
上に弗素原子を含む光導電層第1領域(104)を形成
することができるが、形成される光導電層第1領域(1
04)中に導入される水素原子の導入割合の制御を一層
容易になるように図るために、これらのガスに更に水素
ガスまたは水素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混
合して層形成することが好ましい。又、各ガスは単独種
のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えな
いものである。
【0110】本発明においては、弗素原子供給用ガスと
して上記された弗化物あるいは弗素を含む珪素化合物が
有効なものとして使用されるものであるが、そのほか
に、HF,SiH3 F,SiH22 ,SiHF3 等の
弗素置換水素化珪素、等々のガス状態のあるいはガス化
し得る物質も有効な光導電層第1領域形成用の原料物質
として挙げることが出来る。これらの物質の内、水素原
子を含む弗素化物は、光導電層第1領域(104)の形
成の際に層中に弗素原子の導入と同時に、電気的あるい
は光電的特性の制御にきわめて有効な水素原子も導入さ
れるので、本発明においては好適な弗素原子供給用ガス
として使用される。
【0111】本発明において酸素原子(O)導入用のガ
スとなり得るものとして有効に使用される出発物質は、
たとえば、酸素(O2 ),オゾン(O3 ),一酸化窒素
(NO),二酸化窒素(NO2 ),一二酸化窒素(N2
O),三二酸化窒素(N2 3 ),四三酸化窒素(N2
4 ),五二酸化窒素(N25 )等を挙げることがで
きる。
【0112】この他に、炭素原子(C)の導入に加え
て、酸素原子の導入も行えるという点から、CO,CO
2 等の化合物を挙げることができる。光導電層第1領域
(104)中に含有される水素原子の量を制御するに
は、例えば導電性基体の温度、水素原子を含有させるた
めに使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放
電電力等を制御すればよい。
【0113】さらに本発明においては、光導電層第1領
域(104)には必要に応じて伝導性を制御する原子
(M)を含有させることが好ましい。伝導性を制御する
原子は、光導電層第1領域中に万偏なく均一に分布した
状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均
一な分布状態で含有している部分があってもよい。前記
の伝導性を制御する原子(M)としては、半導体分野に
おける、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導
特性を与える周期律表III 族に関する原子(以後「第II
I 族原子」と略記する)またはn型伝導特性を与える周
期律表V族に属する原子(以後「第V族原子」と略記す
る)を用いることができる。
【0114】第III 族原子としては、具体的には、ホウ
素(B),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),
インジウム(In),タリウム(Tl)等があり、特に
B,Al,Gaが好適である。第V族原子としては、具
体的には燐(P),ヒ素(As),アンチモン(S
b),ビスマス(Bi)等があり、特にP,Asが好適
である。
【0115】光導電層第1領域に含有される伝導性を制
御する原子(M)の含有量としては、好ましくは1×1
-3〜5×104 原子ppm、より好ましくは1×10
-2〜1×104 原子ppm、最適には1×10-1〜5×
103 原子ppmとされるのが望ましい。特に、光導電
層第1領域において炭素原子(C)の含有量が1×10
3 原子ppm以下の場合は、光導電層第1領域に含有さ
れる原子(M)の含有量としては好ましくは1×10-3
〜1×103 原子ppmとされるのが望ましく、炭素原
子(C)の含有量が1×103 原子ppmを越える場合
は、原子(M)の含有量としては、好ましくは1×10
-1〜5×104 原子ppmとされるのが望ましい。
【0116】光導電層第1領域中に、伝導性を制御する
原子、例えば、第III 族原子あるいは第V族原子を構造
的に導入するには、層形成の際に、第III 族原子導入用
の原料物質あるいは第V族原子導入用の原料物質をガス
状態で反応容器中に、光導電層第1領域を形成するため
の他のガスとともに導入してやればよい。第III 族原子
導入用の原料物質あるいは第V族原子導入用の原料物質
となり得るものとしては、常温常圧でガス状のまたは、
少なくとも光導電層第1領域形成条件下で容易にガス化
し得るものが採用されるのが望ましい。そのような第II
I 族原子導入用の原料物質として具体的には、ホウ素原
子導入用としては、B26 ,B410,B69 ,B
511,B610,B612,B614等の水素化ホウ
素、BF 3 ,BCl3 ,BBr3 等のハロゲン化ホウ素
等が挙げられる。この他、AlCl3 ,GaCl3 ,G
a(CH33 ,InCl3 ,TlCl3 等も挙げるこ
とができる。
【0117】第V族原子導入用の原料物質として本発明
において、有効に使用されるのは、燐原子導入用として
は、PH3 ,P24 等の水素化燐、PH4 I,PF
3 ,PF5 ,PCl3 ,PCl5 ,PBr3 ,PBr
5 ,PI3 等のハロゲン化燐が挙げられる。この他、A
sH3 ,AsF3 ,AsCl3 ,AsBr3,AsF
5 ,SbH3 ,SbF3 ,SbF5 ,SbCl3 ,Sb
Cl5 ,BiH3 ,BiCl 3 ,BiBr3 等も第V族
原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることが
できる。
【0118】また、これらの伝導性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2 ,He,Ar,Ne等
のガスにより希釈して使用してもよい。さらに本発明の
光受容部材の光導電層第1領域(104)には、周期律
表第Ia族、IIa族、VIa族、VIII族から選ばれる少な
くとも1種の元素を含有してもよい。前記元素は前記光
導電層第1領域中に万偏無く均一に分布されていてもよ
いし、あるいは該光導電層第1領域中に万偏無く含有さ
れてはいるが、層厚方向に対して不均一に分布する状態
で含有している部分があってもよい。これらの原子の含
有量は0.1〜10000原子ppmが望ましい。Ia
族原子としては、具体的には、リチウム(Li),ナト
リウム(Na),カリウム(K)を挙げることができ、
第IIa族原子としては、ベリリウム(Be),マグネシ
ウム(Mg),カルシウム(Ca),ストロンチウム
(Sr),バリウム(Ba)等を挙げることができる。
【0119】また、第VIa族原子としては具体的には、
クロム(Cr),モリブデン(Mo),タングステン
(W)等を挙げることができ、第VIII族原子としては、
鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni)等を
挙げることができる。本発明において、光導電層第1領
域(102)の層厚は所望の電子写真特性が得られるこ
と及び経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定
され、光導電層第1領域については、好ましくは5〜5
0μm、より好ましくは10〜40μm、最適には20
〜30μmとされるのが望ましい。
【0120】本発明においては、前記各層を形成するた
めの導電性基体温度、圧力の望ましい数値範囲として前
記した範囲が挙げられるが、これらの層領域形成ファク
ターは通常は独立して個別に決定されるものではなく、
所望の特性を有する光受容部材を形成するべく相互的か
つ有機的関連性に基づいて、各層形成ファクターの最適
値を決めるのが望ましい。
【0121】さらに本発明の光受容部材においては、光
導電層第1領域(104)の前記導電性基体側に、少な
くともアルミニウム原子、シリコン原子、炭素原子およ
び水素原子が層厚方向に不均一な分布状態で含有する層
領域を有することが望ましい。 光導電層第2領域 本発明における光導電層第2領域(105)は、構成要
素として、シリコン原子と水素原子を含む非単結晶材料
(以下「nc−Si:H」と記す)からなり、所望の光
導電特性、特に電荷発生特性、電荷輸送特性を有する。
【0122】光導電層第2領域(105)は、シリコン
原子、水素原子からなる非単結晶質であり、水素原子を
1〜40原子%含有している。この光導電層第2領域は
フォトキャリアを効率よく生成し、長波長の光の吸収を
高め、感度を向上させるために設けられる。また、他の
効果としては、帯電極性と逆の電気極性のキャリアの走
行性が光導電層第1領域(104)よりもよいため、ゴ
ーストが軽減されるという予期せぬ効果も得られる。
【0123】本発明において、光導電層第2領域(10
5)は外部電気バイアスを用いたμW−PCVD法によ
る真空堆積膜形成方法によって、所望特性が得られるよ
うに適宜成膜パラメーターの数値条件が設定されて作成
される。外部電気バイアスを用いたμW−PCVD法に
よってnc−Si:Hの光導電層を形成するには、基本
的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の
原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原
料ガスを、内部が減圧にし得る反応容器内に所望のガス
状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を生起さ
せ、あらかじめ所定の位置に設置されてある所定の導電
性基体表面上にnc−Si:Hからなる層を形成すれば
よい。
【0124】本発明において使用されるSi供給用ガス
となり得る物質としては、SiH4,Si26 ,Si3
8 ,Si410等のガス状態の、またはガス化し得
る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとし
て挙げられ、更に層領域作成時の取り扱い易さ、Si供
給効率の良さ等の点でSiH4 ,Si26 が好ましい
ものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原
料ガスを必要に応じてH2 ,He,Ar,Ne等のガス
により希釈して使用してもよい。
【0125】形成される光導電層第2領域中に導入され
る水素原子の導入割合の制御を一層容易になるように図
るために、これらのガスに更に水素ガスまたは水素原子
を含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成するこ
とが好ましい。また、各ガスは単独種のみでなく所定の
混合比で複数種混合しても差し支えないものである。水
素原子を光導電層第2領域(105)中に構造的に導入
するには、上記の他にH2 、あるいはSiH4 ,Si2
6 ,Si38 ,Si410等の水素化珪素とSiを
供給するためのシリコンまたはシリコン化合物とを反応
容器中に共存させて放電を生起させることでも行うこと
ができる。
【0126】光導電層第2領域(105)中に含有され
る水素原子の量を制御するには、例えば導電性基体温
度、水素原子を含有させるために使用される原料物質の
反応容器内へ導入する量、放電電力等を制御すればよ
い。さらに本発明においては、光導電層第2領域(10
5)には必要に応じて伝導性を制御する原子(M)を含
有させることが好ましい。伝導性を制御する原子は、光
導電層第2領域(105)中に万偏なく均一に分布した
状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均
一な分布状態で含有している部分があってもよい。
【0127】前記の伝導性を制御する原子としては、半
導体分野における、いわゆる不純物を挙げることがで
き、p型伝導特性を与える周期律表III 族に属する原子
(以後「第III 族原子」と略記する)またはn型伝導特
性を与える周期律表V族に属する原子(以後「第V族原
子」と略記する)を用いることができる。第III 族原子
としては、具体的には、B(硼素),Al(アルミニウ
ム),Ga(ガリウム),In(インジウム),Tl
(タリウム)等があり、特にB,Al,Gaが好適であ
る。第V族原子としては、具体的にはP(燐),As
(砒素),Sb(アンチモン),Bi(ビスマス)等が
あり、特にP,Asが好適である。
【0128】光導電層第2領域(105)に含有される
伝導性を制御する原子(M)の含有量としては、好まし
くは1×10-3〜5×104 原子ppm、より好ましく
は1×10-2〜1×104 原子ppm、最適には1×1
-1〜5×103 原子ppmとされるのが望ましい。光
導電層第2領域中(105)に、伝導性を制御する原
子、たとえば、第III族原子あるいは第V族原子を構造
的に導入するには、層形成の際に、第III 族原子導入用
の原料物質あるいは第V族原子導入用の原料物質をガス
状態で反応容器中に、光導電層第2領域(105)を形
成するための他のガスとともに導入してやればよい。第
III 族原子導入用の原料物質あるいは第V族原子導入用
の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状
のまたは、少なくとも光導電層第2領域形成条件下で容
易にガス化し得るものが採用されるのが望ましい。その
ような第III 族原子導入用の原料物質として具体的に
は、硼素原子導入用としては、B26 ,B410,B
59 ,B511,B610,B612,B614等の
水素化硼素、BF3 ,BCl3 ,BBr3 等のハロゲン
化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3 ,GaCl
3 ,Ga(CH33 ,InCl3 ,TlCl 3 等も挙
げることができる。
【0129】第V族原子導入用の原料物質として本発明
において、有効に使用されるのは、燐原子導入用として
は、PH3 ,P24 等の水素化燐、PH4 I,PF
3 ,PF5 ,PCl3 ,PCl5 ,PBr3 ,PBr
5 ,PI3 等のハロゲン化燐が挙げられる。この他、A
sH3 ,AsF3 ,AsCl3 ,AsBr3,AsF
5 ,SbH3 ,SbF3 ,SbF5 ,SbCl3 ,Sb
Cl5 ,BiH3 ,BiCl 3 ,BiBr3 等も第V族
原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることが
できる。
【0130】また、これらの伝導性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2 ,He,Ar,Ne等
のガスにより希釈して使用してもよい。さらに本発明の
光受容部材の光導電層第2領域(105)には、周期律
表第Ia族、IIa族、VIa族、VIII族から選ばれる少な
くとも1種の元素を0.1〜10000ppm程度含有
してもよい。前記元素は前記光導電層第2領域(10
5)中に万偏無く均一に分布されてもよいし、あるいは
該光導電層第2領域(105)中に万偏無く含有されて
はいるが、層厚方向に対して不均一に分布する状態で含
有している部分があってもよい。第Ia族原子として
は、具体的には、Li(リチウム),Na(ナトリウ
ム),K(カリウム)を挙げることができ、第IIa族原
子としては,Be(ベリリウム),Mg(マグネシウ
ム),Ca(カルシウム),Sr(ストロンチウム),
Ba(バリウム)等を挙げることができる。
【0131】また、第VIa族原子としては、具体的に
は、Cr(クロム),Mo(モリブデン),W(タング
ステン)等を挙げることができ、第VIII族原子として
は、Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル)
等を挙げることができる。本発明において、光導電層第
2領域(103)の層厚は所望の電子写真特性が得られ
ること及び経済的効果等の点から適宜所望にしたがって
決定され、光導電層第2領域については、好ましくは
0.5〜15μm、より好ましくは1〜10μm、最適
には1〜5μmとされるのが望ましい。
【0132】本発明の目的を達成し得る特性を有するn
c−Si:Hから成る光導電層第2領域(105)を形
成するには、導電性基体の温度、反応容器内のガス圧を
所望にしたがって、適宜設定する必要がある。導電性基
体の温度(Ts)は、層領域設計にしたがって適宜最適
範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは20〜5
00℃、より好ましくは50〜480℃、最適には10
0〜450℃とするのが望ましい。
【0133】反応容器内のガス圧も同様に層領域設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは1×10-5〜10Torr、好ましくは5×
10 -5〜3Torr、最適には1×10-4〜1Torr
とするのが好ましい。本発明においては、前記各層を作
成するための導電性基体温度、ガス圧の望ましい数値範
囲として前記した範囲が挙げられるが、これらの層領域
作成ファクターは通常は独立的に別々に決められるもの
ではなく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく
相互的且つ有機的関連性に基づいて、各層作成ファクタ
ーの最適値を決めるのが望ましい。
【0134】本発明の光受容部材においては、光導電層
第2領域(105)と表面層(103)との間に、組成
を連続的に変化させた層領域を設けてもよい。該層領域
を設けることにより各層間での密着性をより向上させる
ことができる。 表面層 本発明における表面層(103)は、構成要素としてシ
リコン原子と炭素原子、水素原子、酸素原子及び窒素原
子およびハロゲン原子とを含有する非単結晶材料で構成
される。表面層(103)には光導電層中に含有される
ような伝導性を抑制する物質は実質的に含有されない。
【0135】表面層(103)に含有される炭素原子は
該層中に万偏なく均一に分布されても良いし、あるいは
層厚方向には万偏なく含有されてはいるが、不均一に分
布する状態で含有している部分があってもよい。本発明
における表面層(103)の全層領域に含有される炭素
原子は、高暗抵抗化、高硬度化等の効果を奏する。
【0136】また、本発明における表面層(103)に
含有される水素原子、酸素原子および窒素原子、および
ハロゲン原子は材料内に存在する未結合手を補償し膜質
の向上に効果を奏し、光導電層第2領域(105)と表
面層(103)の界面にトラップされるキャリアーを減
少させるため、画像流れを改善する。また、表面層中に
酸素原子及び窒素原子を含有する事により表面層(10
3)と光導電層第2領域(105)との界面の密着性が
向上し、さらに表面層自身の構造を変化させる事が可能
になり、電子写真感光体の表面性、耐圧、光導電層(1
02)及び導電性基体(101)の保護機能等が向上
し、電子写真感光体の耐久性を優れた電気特性を維持し
たままで飛躍的に向上させる事ができる。
【0137】すなわち、連続して大量に画像形成を行っ
てもクリーニングブレードや分離爪へのダメージが少な
く、クリーニング性及び転写紙の分離性も良好になる。
従って、画像形成装置としての耐久性を飛躍的に向上す
る事ができる。さらに誘電率の低下により高電圧に対す
る耐久性も向上するため、光受容部材の一部が絶縁破壊
する事によって起こる「リークポチ」がさらに発生しに
くくなる。
【0138】表面層(103)中の炭素原子および酸素
原子および窒素原子の含有量の和は、表面層中のシリコ
ン原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子の含有量の和に
対して、好適には40〜90原子%、より好適には45
〜85原子%、最適には50〜80原子%とされるのが
望ましく、かつ、酸素原子、窒素原子の含有量はそれぞ
れ、表面層中のシリコン原子、炭素原子、酸素原子、窒
素原子の含有量の和に対して、10原子%以下とされる
のが望ましい。
【0139】さらにハロゲン原子は表面層(103)の
撥水性を向上させるので、水蒸気の吸着による高湿流れ
をも減少させる。表面層中のハロゲン原子の含有量は2
0原子%以下であり、さらに水素原子とハロゲン原子の
含有量の和は好適には30〜70原子%、より好適には
35〜65原子%、最適には40〜60原子%とするの
が望ましい。
【0140】本発明において表面層(103)は、外部
電気バイアスを用いたμW−PCVD法にて、所望特性
が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件が設
定されて作製される。本発明において表面層(103)
を形成するにおいて使用されるSi供給用ガス及び炭素
原子(C)導入用の原料ガスになり得るものは、先に挙
げた光導電層第1領域を形成するときと同じものが使用
可能である。
【0141】本発明において表面層(103)中に酸素
原子及び窒素原子を含有させる為の導入ガスとしては、
酸素原子用としては酸素(O2 )、一酸化窒素(N
O)、二酸化窒素(NO2 )、酸化二窒素(N2O)、
一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2 )、窒素原子
用としては窒素(N2 )、アンモニア(NH3 )などが
挙げられる。
【0142】さらに本発明において表面層(103)
に、周期律表第Ia族、IIa族、VIa族、VIII族から選
ばれる少なくとも1種の元素を含有してもよい。前記元
素は前記表面層(103)中に万偏無く均一に分布され
てもよいし、あるいは該表面層(103)中に万偏無く
含有されてはいるが、層厚方向に対して不均一に分布す
る状態で含有している部分があってもよい。
【0143】第Ia族原子としては、具体的には、リチ
ウム(Li),ナトリウム(Na),カリウム(K)を
挙げることができ、第IIa族原子としては、ベリリウム
(Be),マグネシウム(Mg),カルシウム(C
a),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)等を
挙げることができる。また、第VIa族原子としては具体
的には、クロム(Cr),モリブデン(Mo),タング
ステン(W)等を挙げることができ、第VIII族原子とし
ては、鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(N
i)等を挙げることができる。
【0144】本発明において、表面層(104)の層厚
は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果
等の点から好ましくは0.01〜30μm、より好まし
くは0.05〜20μm、最適には0.1〜10μmと
されるのが望ましい。本発明の目的を達成し得る特性を
有する表面層(103)を形成する場合には、導電性基
体の温度、ガス圧が前記表面層の特性を左右する重要な
要因である。導電性基体温度は適宜最適範囲が選択され
るが、好ましくは20〜500℃、より好ましくは50
〜480℃、最適には100〜450℃とするのが望ま
しい。
【0145】反応容器内のガス圧も適宜最適範囲が選択
されるが、好ましくは1×10-5〜10Torr、より
好ましくは5×10-5〜3Torr、最適には1×10
-4〜1Torrとするのが望ましい。さらに本発明の光
受容部材の表面層(103)には、周期律表第Ia族、
IIa族、VIa族、VIII族から選ばれる少なくとも1種の
元素を含有してもよい。前記元素は前記光導電層第1領
域中に万偏無く均一に分布されてもよいし、あるいは該
光導電層第1領域中に万偏無く含有されてはいるが、層
厚方向に対して不均一に分布する状態で含有している部
分があってもよい。これらの原子の含有量は0.1〜1
0000原子ppmが望ましい。Ia族原子としては、
具体的には、リチウム(Li),ナトリウム(Na),
カリウム(K)を挙げることができ、第IIa族原子とし
ては、ベリリウム(Be),マグネシウム(Mg),カ
ルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr),バリウム
(Ba)等を挙げることができる。
【0146】また、第VIa族原子としては具体的には、
クロム(Cr),モリブデン(Mo),タングステン
(W)等を挙げることができ、第VIII族原子としては、
鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni)等を
挙げることができる。本発明においては、表面層(10
3)を形成するための導電性基体温度、ガス圧の望まし
い数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、これら
の層作製ファクターは通常は独立的に別々に決められる
ものではなく、所望の特性を有する光受容部材を形成す
べく相互的且つ有機的関連性に基づいて各層作製ファク
ターの最適値を決めるのが望ましい。
【0147】第2の発明は、外部電気バイアスを用いた
μW−PCVD法によるいずれの電子写真感光体製造方
法にも適用が可能であるが、特に、放電空間を囲むよう
に基体を設け、少なくとも基体の一端側から導波管によ
りマイクロ波を導入する構成により堆積膜を形成する場
合大きな効果がある。製造装置及び操作は第1の発明と
同様である。
【0148】
【実施例】以下に本発明の効果を実証するための具体的
実施例を説明するが、本発明はこれらによって何ら限定
されるものではない。実施例1 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表1に示した条件で電子写真用光受容部
材を作成した。本実施例では放電を生起せしめる際の外
部電気バイアス電圧を光導電層形成時に印加する電圧に
たいして0%から90%まで変化させた。また放電が生
起してから外部電気バイアス電圧を光導電層形成時の電
圧にするまでの堆積膜の膜厚は0.1μmとした。また
光導電層中の炭素含有量を図4に示した変化パターンの
ように変化させるため、光導電層形成時に導入するCH
4 量を変化させた。このとき光導電層の基体側表面近傍
の炭素含有量は約30%とした。なお、炭素含有量の測
定はラザフォード後方散乱法による元素分析で行った。
こうして電子写真用光受容部材を作成した。(I)これ
らについて、目視による表面状態の検査、およびキャノ
ン製複写機NP−6150を実験用に改造した電子写真
装置に設置して、“しみ”、ハーフトーンむら、帯電
能、感度、残留電位、白ポチ、ゴースト、ガサツキの各
項目について評価した。
【0149】これらの項目については、それぞれ、以下
の方法で評価した。 “しみ” 作製した電子写真感光体を、目視により表面の“しみ”
の程度の検査を行なった。 ◎は“しみ”なし ○は“しみ”が発生したものがあるが実用上問題なし △は“しみ”による外観不良になるものがある をそれぞれ示している。 帯電能・感度・残留電位 帯電能……電子写真感光体を実験装置に設置し、帯電器
に+6kVの高電圧を印加しコロナ帯電を行ない、表面
電位計により電子写真感光体の暗部表面電位を測定す
る。
【0150】感度……電子写真感光体を、一定の暗部表
面電位に帯電させる。そして直ちに光像を照射する。光
像はキセノンランプ光源を用い、フィルターを用いて5
50nm以下の波長域の光を除いた光を照射する。この
時表面電位計により電子写真感光体の明部表面電位を測
定する。明部表面電位が所定の電位になるよう露光量を
調整し、この時の露光量をもって感度とする。
【0151】残留電位……電子写真感光体を、一定の暗
部表面電位に帯電させる。そして直ちに一定光量の比較
的強い光を照射する。光像はキセノンランプ光源を用
い、フィルターを用いて550nm以下の波長域の光を
除いた光を照射した。この時、表面電位計により電子写
真感光体の明部表面電位を測定する。 白ポチ・ハーフトーンむら、ゴースト、ガサツキ……
電子写真感光体を、キャノン社製複写機NP6150を
実験用に改造した複写機にいれ、通常の電子写真プロセ
スにより転写し紙面上に画像を形成し、下記の手順によ
り画像の評価を行なった。
【0152】白ポチ……キャノン製全面黒チャート(部
品番号:FY9−9073)を原稿台に置きコピーした
ときに得られたコピー画像の同一面積内にある直径0.
2mm以下の白ポチについて、その数を数えた。 ハーフトーンむら……キャノン製中間調チャート(部品
番号:FY9−9042)を原稿台に置きコピーしたと
きに得られたコピー画像上で直径5mmの円形の領域を
1単位として100点の画像濃度を測定し、最も濃度の
濃いものと最も濃度のうすいものとの差を比較した。
【0153】ゴースト……キャノン製ゴーストテストチ
ャート(部品番号:FY9−9040)に反射濃度1.
1、直径5mmの黒丸を貼り付けたものを原稿台に置
き、そのうえにキャノン製中間調チャートを重ねておい
た際のコピー画像において、中間調コピー上に認められ
るゴーストチャートの直径5mmの黒丸の反射濃度と中
間調部分の反射濃度との差を測定、評価した。
【0154】ガサツキ……キャノン製中間調チャート
(部品番号:FY9−9042)を原稿台に置き、コピ
ーした時に得られたコピー画像上で直径0.05mmの
円形の領域を1単位として100点の画像濃度を測定
し、その画像濃度のバラツキを評価した。以上の8項目
についてそれぞれ ◎は「特に良好」 ○は「良好」 △は「実用上問題無し」 ×は「実用上問題有り」 を表わしている。 (II)さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノン
製複写機NP−6150に入れ、300万枚相当の加速
耐久試験を行った後、再び(I)と同様の評価を行っ
た。比較例1 放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を、光導電
層形成時の電圧(100%)とした以外は、実施例1と
まったく同様にして電子写真用光受容部材を作成した。
こうして得た電子写真用光受容部材を実施例1と同様に
評価し、さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノ
ン製複写機NP−6150に入れ、300万枚の加速耐
久試験を行った後、再び前記と同様に評価を行った。
【0155】以上、実施例1と比較例1の結果を耐久試
験前については表2に、耐久試験後については表3に示
す。表2および表3から明らかなように本発明の方法で
は“しみ”、および画像特性が改善され、耐久性も向上
している。とくに放電が生起するときの外部電気バイア
ス電圧を、光導電層形成時の電圧の50%以下とする事
でこの効果はより顕著となる。実施例2 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表4に示した条件で電子写真用光受容部
材を作成した。本実施例では放電を生起せしめる際の外
部電気バイアス電圧を光導電層形成時に印加する電圧に
たいして20%とし、外部電気バイアス電圧を光導電層
形成時の電圧にするまでの堆積膜の膜厚を、0.05μ
m〜7μmの範囲で変化させた。その他の条件は実施例
1と同様にして電子写真用光受容部材を作成した。これ
らについて、目視による表面状態の検査、およびキャノ
ン製複写機NP−6150を実験用に改造した電子写真
装置に設置して、“しみ”、ハーフトーンむら、帯電
能、感度、残留電位、白ポチの各項目について実施例1
と同様に評価した。その結果を表5に示す。
【0156】表5の結果から明らかなように、放電が生
起してから光導電層形成時のバイアス電圧を印加するま
での膜厚が3μmを越えると、帯電能、感度、残留電位
などの電位特性が悪化することがわかった。実施例3 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表6に示す作製条件で電子写真用光受容
部材を作製した。本実施例では、光導電層中の炭素含有
量の変化パターンを図4のように変化させ、基体側表面
近傍での炭素含有量を0.3原子%から70原子%まで
変化させるため、光導電層の形成時に導入するCH4
流量を変化させた。また、放電が生起するときの外部電
気バイアス電圧を光導電層形成時の電圧の20%とし、
光導電層形成時の電圧を印加するまでの堆積膜の膜厚を
0.05μmとした。なお、炭素含有量の測定にはラザ
フォード後方散乱法による元素分析で行なった。
【0157】作製した電子写真用光受容部材を目視によ
る表面状態の検査、およびキャノン製複写機NP−61
50を実験用に改造した電子写真装置に設置し、“し
み”、帯電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、白
ポチ、ガサツキ、ゴースト、球状突起の数について評価
を行なった。“しみ”、帯電能、感度、残留電位、ハー
フトーンむら、白ポチ、ガサツキ、ゴーストの各項目に
ついては、実施例1と同様の評価を行い、球状突起の数
については以下の方法で評価した。 球状突起の数 作製した電子写真用光受容部材の表面全域を光学顕微鏡
で観察し、100cm 2 の面積内での直径20μm以上
の球状突起の個数を調べた。各電子写真用光受容部材に
ついて結果を出し、最も球状突起の数の多かったものを
100%として相対比較をした。その結果を以下のよう
に分類した。
【0158】◎は60%未満 ○は80〜60% △は100〜80% 実施例4の結果を表7に示す。この結果から、光導電層
の導電性基体側表面の炭素含有量を0.5〜50原子%
とすることで電子写真特性の向上および球状突起の低減
がなされ、さらに1〜30原子%できわめて良好な結果
が得られている。実施例4 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表8に示す作製条件で電子写真用光受容
部材を作製した。本実施例では、光導電層中の炭素含有
量の変化パターンを図4のように変化させるために、光
導電層の形成時に導入するCH4 の流量を変化させた。
また、放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を光
導電層形成時の電圧の20%とし、光導電層形成時の電
圧を印加するまでの堆積膜の膜厚を1μmとした。この
とき光導電層の導電性基体側表面での炭素含有量は、3
0原子%となるようにした。なお、炭素含有量の測定に
はラザフォード後方散乱法による元素分析で行なった。
【0159】作製した電子写真用光受容部材を目視によ
る表面状態の検査、およびキャノン製複写機NP−61
50を実験用に改造した電子写真装置に設置し、“し
み”、帯電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、白
ポチ、ゴースト、ガサツキについて評価を行なった。各
項目は、実施例1と同様にして評価した。比較例2 光導電層中の炭素含有量を図5および図6に示した変化
パターンとする以外は、実施例4と同様にして電子写真
用光受容部材を作成した。なお光導電層の基体側表面近
傍での炭素含有量は、いずれの変化パターンにおいても
約30原子%となるようにした。こうして得られた電子
写真用光受容部材について実施例1と同様の評価を行っ
た。
【0160】以上実施例4および比較例2の結果を表9
に示す。表9から明らかなように本発明の方法によれば
帯電能、感度が向上し、かつ残留電位の悪化が見られな
かった。実施例5 光導電層中の炭素含有量を図7及び図8に示した変化パ
ターンとする以外は、実施例4と同様にして電子写真用
光受容部材を作成した。なお光導電層の基体側表面近傍
での炭素含有量は、いずれの変化パターンにおいても約
30原子%となるようにした。こうして得られた電子写
真用光受容部材について実施例1と同様の評価を行った
ところ、実施例4と同様に良好な結果が得られた。実施例6 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表10に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、光導電層中の弗素含
有量を光導電層形成時に導入するSiF4 流量を変え
て、0.5〜300原子ppmの範囲で変化させた。ま
た、放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を光導
電層形成時の電圧の20%とし、光導電層形成時の電圧
を印加するまでの堆積膜の膜厚を0.05μmとした。
なお、弗素含有量はSIMS(CAMECA IMS−
3F)による元素分析にて行った。 (I)作製した電子写真用光受容部材を目視による表面
状態の検査、およびキャノン製複写機NP−6150を
実験用に改造した電子写真装置に設置し、“しみ”、帯
電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、白ポチ、ガ
サツキ、ゴーストについて実施例1と同様の評価を行な
った。 (II)さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノン
製複写機NP−6150に入れ、300万枚相当の加速
耐久試験を行った後、再び(I)と同様に評価を行っ
た。
【0161】以上の結果を、耐久試験前については表1
1に、耐久試験後については表12にそれぞれ示す。こ
れらの結果から本発明の方法により、光導電層中の弗素
原子の含有量を1〜95原子ppmの範囲にする事で、
画像特性および耐久性の向上がみられ、さらに5〜50
原子ppmの範囲できわめて良好な結果が得られてい
る。比較例3 放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を、光導電
層形成時の電圧とする以外は実施例5と同様にして電子
写真用光受容部材を作成した。こうして得られた電子写
真用光受容部材を実施例6と同様に、耐久試験前と耐久
試験後についてそれぞれ評価を行った。
【0162】この結果を耐久試験前については表13
に、耐久試験後については表14にそれぞれ示す。表1
1〜表14の結果から明らかなように本発明の方法で
は、“しみ”が効果的に低減でき、画像特性が向上し、
加えて耐久性も向上している。実施例7 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表15に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、光導電層中の酸素原
子含有量を5〜8000原子ppmとするために、光導
電層形成時に導入するCO2 の流量を変化させた。この
ときの光導電層の弗素含有量は40原子ppmで一定と
した。また、放電が生起するときの外部電気バイアス電
圧を光導電層形成時の電圧の10%とし、光導電層形成
時の電圧を印加するまでの堆積膜の膜厚を0.2μmと
した。なお、酸素原子含有量および弗素含有量はSIM
S(CAMECA IMS−3F)による元素分析にて
行った。
【0163】作製した電子写真用光受容部材を目視によ
る表面状態の検査、およびキャノン製複写機NP−61
50を実験用に改造した電子写真装置に設置し、“し
み”、帯電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、電
位シフトについて評価を行なった。“しみ”、帯電能、
感度、残留電位、ハーフトーンむらの各項目は、実施例
1と同様にして評価し、電位シフトは次の方法で評価し
た。
【0164】電位シフト……電子写真用光受容部材を実
験装置に設置し、帯電器に+6kVの高電位を印加して
コロナ帯電を行い、表面電位計にて電子写真用光受容部
材の暗部表面電位を計測する。このとき帯電器に電圧を
印加し始めたときの暗部表面電位をVd0とし、2分経
過後の暗部表面電位をVdとする。このVd0とVdと
の差をもって電位シフト量とする。
【0165】電位シフトについて ◎は「特に良好」 ○は「良好」 △は「実用上問題無し」 ×は「実用上問題有り」 を表わしている。
【0166】この結果を表16に示す。表16より明ら
かなように光導電層中の酸素原子含有量を10〜500
0原子ppmとすることで電位シフトが効果的に改善さ
れることがわかった。比較例4 放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を、光導電
層形成時の電圧とする以外は実施例7と同様にして電子
写真用光受容部材を作成した。こうして得られた電子写
真用光受容部材を実施例7と同様に評価を行った。
【0167】この結果を表17に示す。表16および表
17の結果から明らかなように本発明の方法による電子
写真用光受容部材は“しみ”を効果的に低減でき画像特
性が向上している。実施例8 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表18に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、表面層の最表面近傍
に含有される炭素量を、表面層形成時に導入するパワ
ー、CH4 流量を変えることによって、シリコン原子と
炭素原子の和にたいして20〜95原子%の範囲で変化
させた。但しこのとき表面層の第2の光導電層側の表面
の炭素含有量は10%となるようにした。
【0168】こうして作成した電子写真用光受容部材を
キャノン製複写機NP−6150を実験用に改造した電
子写真装置に設置して、帯電能、感度、残留電位、等の
電子写真特性、および画像流れ、白ポチ、トナー融着に
よる黒斑点、キズ等の画像特性、“しみ”について、そ
れぞれ評価を行った。またこの電子写真用光受容部材に
ついて、再生紙を用いた300万枚の連続通紙画像形成
耐久試験後、上記の項目について再び評価した。なお、
帯電能、感度、残留電位、“しみ”の項目については実
施例1と同様の方法で評価し、また画像流れ、白ポチ、
トナー融着による黒斑点、キズの各項目については以下
の方法で評価した。画像流れ 白地に全面文字よりなるキャノン製テストチャート(部
品番号:FY9−9058)を原稿台に置き、通常の露
光量の2倍の露光量で照射し、コピーをとる。こうして
得られた画像を観察し、画像上の細線が途切れずにつな
がっているか以下の3段階で評価した。但しこのとき画
像上でムラがあるときには、全画像域で最も悪い部位で
評価した。
【0169】◎は「良好」 ○は「一部途切れあり」 △は「途切れが多いが文字として判読でき、実用上問題
なし」白ポチ 実施例1と同様の評価を行った。トナー融着による黒斑点 キャノン製全白テストチャートを原稿台に置きコピーし
たときに得られたコピー画像の同一面積内にある幅0.
1mm×長さ0.5mm以上の黒斑点について以下に示
すように4段階の評価をした。
【0170】◎は「特に良好」 ○は「良好」 △は「実用上問題無し」キズ キャノン製ハーフトーンテストチャートを原稿台に置き
コピーしたときに得られたコピー画像の横340mm
(電子写真用光受容部材1回転分)×縦297mmの面
積内にある幅0.05mm×長さ0.2mm以上のキズ
についてその個数を教えて以下に示すように4段階の評
価を行った。
【0171】◎は「特に良好」 ○は「良好」 △は「実用上問題無し」 以上の結果を耐久試験前については表19に、耐久試験
後については表20に示す。
【0172】表19及び表20より明らかなように、表
面層の最表面近傍の炭素含有量をシリコン原子と炭素原
子の和に対して70〜90原子%の範囲にした本発明の
電子写真用光受容部材は良好な電子写真特性が得られ
た。実施例9 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表21に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、表面層に含有される
酸素量を変化させるため、表面層形成時に導入するO2
の流量を変えた。また、放電が生起するときの外部電気
バイアス電圧を光導電層形成時の電圧の32%とし、光
導電層形成時の電圧を印加するまでの堆積膜の膜厚を
0.08μmとした。
【0173】こうして作成した電子写真用光受容部材を
キャノン製複写機NP−6150を実施用に改造した電
子写真装置に設置して、帯電能、感度、残留電位、等の
電子写真特性、および画像流れ、白ポチ、トナー融着に
よる黒斑点、キズ等の画像特性、“しみ”について、そ
れぞれ評価を行った。またこの電子写真用光受容部材に
ついて、再生紙を用いた300万枚の連続通紙画像形成
耐久試験後、上記の項目について再び評価した。なお、
各項目については実施例8と同様にして評価した。
【0174】その結果を耐久試験前については表22
に、耐久試験後については表23にそれぞれ示す。表2
2および表23の結果から、表面層に酸素原子を含有さ
せ、さらに含有量を1×10-4〜30原子%の範囲にす
ることで良好な電子写真特性が得られた。 実施例10 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表24に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、表面層に含有される
窒素量を変化させるため、表面層形成時に導入するNH
3 の流量を変えた。また、放電が生起するときの外部電
気バイアス電圧を光導電層形成時の電圧の15%とし、
光導電層形成時の電圧を印加するまでの堆積膜の膜厚を
0.3μmとした。
【0175】こうして作成した電子写真用光受容部材を
キャノン製複写機NP−6150を実施用に改造した電
子写真装置に設置して、帯電能、感度、残留電位、等の
電子写真特性、および画像流れ、白ポチ、トナー融着に
よる黒斑点、キズ等の画像特性、“しみ”について、そ
れぞれ評価を行った。またこの電子写真用光受容部材に
ついて、再生紙を用いた300万枚の連続通紙画像形成
耐久試験後、上記の項目について再び評価した。なお、
各項目については実施例8と同様にして評価した。これ
らの結果を耐久試験前については表25に、耐久試験後
については表26に示す。
【0176】表25および表26から表面層に窒素原子
を含有させ、さらに窒素の含有量を1×10-4〜30原
子%にすることで良好な電子写真特性が得られた。実施例11 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表27に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、表面層に含有される
周期律表の第III 族元素としてホウ素(B)量を変化さ
せるため、表面層形成時に導入するB26 の流量を変
えた。また、放電が生起するときの外部電気バイアス電
圧を光導電層形成時の電圧の15%とし、光導電層形成
時の電圧を印加するまでの堆積膜の膜厚を0.3μmと
した。
【0177】こうして作成した電子写真用光受容部材を
キャノン製複写機NP−6150を実施用に改造した電
子写真装置に設置して、帯電能、感度、残留電位、等の
電子写真特性、および画像流れ、白ポチ、トナー融着に
よる黒斑点、キズ等の画像特性、“しみ”について、そ
れぞれ評価を行った。またこの電子写真用光受容部材に
ついて、再生紙を用いた300万枚の連続通紙画像形成
耐久試験後、上記の項目について再び評価した。なお、
各項目については実施例8と同様にして評価した。その
結果を耐久試験前については表28に、耐久試験後につ
いては表29に示す。
【0178】表28および表29より明らかなように、
表面層に周期律表の第III 族元素を含有させ、さらにそ
の含有量を1×10-5〜1×106 の範囲にすることで
良好な電子写真特性が得られた。実施例12 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表30に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、表面層に含有される
水素原子とハロゲン原子として弗素量を変化させるた
め、表面層形成時に導入するH2,SiF4 の流量,お
よびμWは電力を変えた。また、放電が生起するときの
外部電気バイアス電圧を光導電層形成時の電圧の25%
とし、光導電層形成時の電圧を印加するまでの堆積膜の
膜厚を0.1μmとした。
【0179】こうして作成した電子写真用光受容部材を
キャノン製複写機NP−6150を実施用に改造した電
子写真装置に設置して、帯電能、感度、残留電位、等の
電子写真特性、および画像流れ、白ポチ、トナー融着に
よる黒斑点、キズ等の画像特性について、それぞれ評価
を行った。またこの電子写真用光受容部材について、再
生紙を用いた300万枚の連続通紙画像形成耐久試験
後、上記の項目について再び評価した。なお、各項目に
ついては実施例8と同様にして評価した。比較例5 表面層においてSiF4 を用いずに、ハロゲン原子を入
れなかった以外は、実施例12とまったく同様にして電
子写真用光受容部材を作成した。こうして得られた電子
写真用光受容部材を実施例12と同様にして評価した。
【0180】以上実施例12と比較例5の結果を合わせ
て、耐久試験前については表31に、耐久試験後につい
ては表32に示す。表31および表32から明らかなよ
うに、表面層中にハロゲン原子を含有することで良好な
電子写真特性が得られた。実施例13 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表33に示した条件で電子写真用光受容
部材を作成した。本実施例では放電を生起せしめる際の
外部電気バイアス電圧を光導電層第1領域形成時に印加
する電圧にたいして0%から90%まで変化させた。ま
た放電が生起してから外部電気バイアス電圧を光導電層
第1領域形成時の電圧にするまでの堆積膜の膜厚を0.
05μmとした。また光導電層第1領域中の炭素含有量
を図9に示した変化パターンのように変化させるため、
光導電層第1領域形成時に導入するCH4 量を変化させ
た。このとき光導電層第1領域の基体側表面近傍の炭素
含有量は約30%とした。なお、炭素含有量の測定はラ
ザフォード後方散乱法による元素分析で行った。こうし
て電子写真用光受容部材を作成した。 (I)これらについて、目視による表面状態の検査、お
よびキャノン製複写機NP−7550を実験用に改造し
た電子写真装置に設置して、“しみ”、ハーフトーンむ
ら、帯電能、感度、残留電位、白ポチ、ゴースト、ガサ
ツキの各項目について評価した。
【0181】これらの項目については、それぞれ、以下
の方法で評価した。 “しみ” 作製した電子写真感光体を、目視により表面の“しみ”
の程度の検査を行なった。 ◎は“しみ”なし ○は“しみ”が発生したものがあるが実用上問題なし △は“しみ”による外観不良になるものがある をそれぞれ示している。 帯電能・感度・残留電位 帯電能……電子写真感光体を実験装置に設置し、帯電器
に+6kVの高電圧を印加しコロナ帯電を行ない、表面
電位計により電子写真感光体の暗部表面電位を測定す
る。
【0182】感度……電子写真感光体を、一定の暗部表
面電位に帯電させる。そして直ちに光像を照射する。光
像はキセノンランプ光源を用い、フィルターを用いて5
50nm以下の波長域の光を除いた光を照射する。この
時表面電位計により電子写真感光体の明部表面電位を測
定する。明部表面電位が所定の電位になるよう露光量を
調整し、この時の露光量をもって感度とする。
【0183】残留電位……電子写真感光体を、一定の暗
部表面電位に帯電させる。そして直ちに一定光量の比較
的強い光を照射する。光像はキセノンランプ光源を用
い、フィルターを用いて550nm以下の波長域の光を
除いた光を照射した。この時、表面電位計により電子写
真感光体の明部表面電位を測定する。 白ポチ・ハーフトーンむら、ゴースト、ガサツキ……
電子写真感光体を、キャノン社製複写機NP−7550
を実験用に改造した複写機にいれ、通常の電子写真プロ
セスにより転写し紙面上に画像を形成し、下記の手順に
より画像の評価を行なった。
【0184】白ポチ……キャノン製全面黒チャート(部
品番号:FY9−9073)を原稿台に置きコピーした
ときに得られたコピー画像の同一面積内にある直径0.
2mm以下の白ポチについて、その数を数えた。 ハーフトーンむら……キャノン製中間調チャート(部品
番号:FY9−9042)を原稿台に置きコピーしたと
きに得られたコピー画像上で直径0.05mmの円形の
領域を1単位として100点の画像濃度を測定し、その
画像濃度のばらつきを評価した。
【0185】ゴースト……キャノン製ゴーストテストチ
ャート(部品番号:FY9−9040)に反射濃度1.
1、直径5mmの黒丸を貼り付けたものを原稿台に置
き、そのうえにキャノン製中間調チャートを重ねておい
た際のコピー画像において、中間調コピー上に認められ
るゴーストチャートの直径5mmの黒丸の反射濃度と中
間調部分の反射濃度との差を測定、評価した。
【0186】以上の2項目についてそれぞれ ◎は「特に良好」 ○は「良好」 △は「実用上問題無し」 ×は「実用上問題有り」 を表わしている。 (II)さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノン
製複写機NP−7550に入れ、300万枚相当の加速
耐久試験を行った後、再び(I)と同様の評価を行っ
た。比較例6 放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を、光導電
層第1領域形成時の電圧とした以外は、実施例13とま
ったく同様にして電子写真用光受容部材を作成した。こ
うして得た電子写真用光受容部材を実施例1と同様に評
価し、さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノン
製複写機NP−7550に入れ、300万枚の加速耐久
試験を行った後、再び前記と同様に評価を行った。
【0187】以上の評価結果を耐久試験前については表
34に、耐久試験後については表35に示す。表34お
よび表35から明らかなように本発明の方法では“し
み”、および画像特性が改善され、耐久性も向上してい
る。とくに放電が生起するときの外部電気バイアス電圧
を、光導電層第1領域形成時の電圧の50%以下とする
事でこの効果はより顕著となる。実施例14 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表36に示した条件で電子写真用光受容
部材を作成した。本実施例では放電を生起せしめる際の
外部電気バイアス電圧を光導電層第1領域形成時に印加
する電圧にたいして20%とし、外部電気バイアス電圧
を光導電層第1領域形成時の電圧にするまでの堆積膜の
膜厚を、約0.05μm〜7μmの範囲で変化させた。
その他の条件は実施例13と同様にして電子写真用光受
容部材を作成した。これらについて、目視による表面状
態の検査、およびキャノン製複写機NP−7550を実
験用に改造した電子写真装置に設置して、“しみ”、ハ
ーフトーンむら、帯電能、感度、残留電位、白ポチの各
項目について実施例13と同様に評価した。その結果を
表37に示す。
【0188】表37の結果から明らかなように、放電が
生起してから光導電層第1領域形成時のバイアス電圧を
印加するまでの膜厚が3μmを越えると、帯電能、感
度、残留電位などの電位特性が悪化することがわかっ
た。実施例15 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表38に示した条件で電子写真用光受容
部材を作成した。本実施例では光導電層第2領域の膜厚
を0.5から10μmの範囲で変化させた。また放電を
生起せしめる際の外部電気バイアス電圧を光導電層第1
領域形成時に印加する電圧にたいして20%とし、外部
電気バイアス電圧を光導電層第1領域形成時の電圧にす
るまでの堆積膜の膜厚を、約0.5μmとし、その他の
条件は実施例13と同様にして電子写真用光受容部材を
作成した。こうして得られた電子写真用光受容部材につ
いて、波長610nmの一定光量の光を照射して、光感
度を測定した。比較例7 光導電層第2領域をもうけず(膜厚0μm)、光導電層
と表面層の2層構成とした以外は実施例15とまったく
同様にして電子写真用光受容部材を作成した。
【0189】こうして作成した電子写真用光受容部材に
ついて、実施例15と同様に610nmの一定光量の光
を照射したときの光感度を測定した。実施例15および
比較例7の結果を、比較例7で作成した光導電層第2領
域の膜厚が0μmの電子写真用光受容部材の感度を10
0とした相対評価で比較した。その結果を表39に示
す。
【0190】表39から、実施例15の、本発明の光受
容部材の形成方法による電子写真用光受容部材は比較例
7の電子写真用光受容部材に対して光感度が優れている
ことがわかる。実施例16 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表40に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、光導電層第1領域中
の炭素含有量の変化パターンを図9のように変化させ、
基体側表面近傍での炭素含有量を0.3原子%から70
原子%まで変化させるため、光導電層第1領域の形成時
に導入するCH4 の流量を変化させた。また、放電を生
起するときの外部電気バイアス電圧を光導電層第1領域
形成時の電圧の20%とし、光導電層第1領域形成時の
電圧を印加するまでの堆積膜の膜厚を0.1μmとし
た。なお、炭素含有量の測定にはラザフォード後方散乱
法による元素分析で行なった。
【0191】作製した電子写真用光受容部材を目視によ
る表面状態の検査、およびキャノン製複写機NP−75
50を実験用に改造した電子写真装置に設置し、“し
み”、帯電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、白
ポチ、ガサツキ、ゴースト、球状突起の数について評価
を行なった。“しみ”、帯電能、感度、残留電位、ハー
フトーンむら、白ポチ、ガサツキ、ゴーストの各項目に
ついては、実施例13と同様の評価を行い、球状突起の
数については以下の方法で評価した。 球状突起の数 作製した電子写真用光受容部材の表面全域を光学顕微鏡
で観察し、100cm 2 の面積内での直径20μm以上
の球状突起の個数を調べた。各電子写真用光受容部材に
ついて結果を出し、最も球状突起の数の多かったものを
100%として相対比較をした。その結果を以下のよう
に分類した。
【0192】◎は60%未満 ○は80〜60% △は100〜80% 実施例16の結果を表41に示す。この結果から、光導
電層第1領域の導電性基体側表面の炭素含有量を0.5
〜50原子%とすることで電子写真特性の向上および球
状突起の低減がなされ、さらに1〜30原子%できわめ
て良好な結果が得られている。実施例17 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表42に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、光導電層第1領域中
の炭素含有量の変化パターンを図9のように変化させる
ために、光導電層第1領域の形成時に導入するCH4
流量を変化させた。また、放電を生起するときの外部電
気バイアス電圧を光導電層第1領域形成時の電圧の20
%とし、光導電層第1領域形成時の電圧を印加するまで
の堆積膜の膜厚を0.3μmとした。このとき光導電層
第1領域の導電性基体側表面での炭素含有量は、30原
子%となるようにした。なお、炭素含有量の測定にはラ
ザフォード後方散乱法による元素分析で行なった。
【0193】作製した電子写真用光受容部材を目視によ
る表面状態の検査、およびキャノン製複写機NP−75
50を実験用に改造した電子写真装置に設置し、“し
み”、帯電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、白
ポチ、ゴースト、ガサツキについて評価を行なった。各
項目は、実施例13と同様にして評価した。比較例8 光導電層第1領域中の炭素含有量を図10および図11
に示した変化パターンとする以外は、実施例17と同様
にして電子写真用光受容部材を作成した。なお光導電層
第1領域の基体側表面近傍での炭素含有量は、いずれの
変化パターンにおいても約30原子%となるようにし
た。こうして得られた電子写真用光受容部材について実
施例13と同様の評価を行った。
【0194】以上実施例17および比較例8の結果を表
43に示す。表43から明らかなように本発明の方法に
よれば帯電能、感度が向上し、かつ残留電位の悪化が見
られなかった。実施例18 光導電層第1領域中の炭素含有量の炭素含有量を図12
および図13に示した変化パターンとする以外は、実施
例17と同様にして電子写真用光受容部材を作成した。
なお、光導電層第1領域の基体側表面近傍での炭素含有
量は、いずれの変化パターンにおいても約30原子%と
なるようにした。こうして得られた電子写真用光受容部
材について実施例17と同様の評価を行ったところ、実
施例17と同様に、良好な結果が得られた。実施例19 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表44に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、光導電層第1領域中
の弗素含有量を光導電層第1領域形成時に導入するSi
4 流量を変えて、0.5〜300原子ppmの範囲で
変化させた。また、放電が生起するときの外部電気バイ
アス電圧を光導電層第1領域形成時の電圧の20%と
し、光導電層第1領域形成時の電圧を印加するまでの堆
積膜の膜厚を0.5μmとした。なお、弗素含有量はS
IMS(CAMECA IMS−3F)による元素分析
にて行った。 (I)作製した電子写真用光受容部材を目視による表面
状態の検査、およびキャノン製複写機NP−7550を
実験用に改造した電子写真装置に設置し、“しみ”、帯
電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、白ポチ、ガ
サツキ、ゴーストについて実施例13と同様の評価を行
なった。 (II)さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノン
製複写機NP−7550に入れ、300万枚相当の加速
耐久試験を行った後、再び(I)と同様に評価を行っ
た。
【0195】以上の結果を、耐久試験前については表4
5に、耐久試験後については表46にそれぞれ示す。こ
れらの結果から本発明の方法により、光導電層第1領域
中の弗素原子の含有量を1〜95原子ppmの範囲にす
る事で、画像特性および耐久性の向上がみられ、さらに
5〜50原子ppmの範囲できわめて良好な結果が得ら
れている。比較例9 放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を、光導電
層第1領域形成時の電圧とする以外は実施例18と同様
にして電子写真用光受容部材を作成した。こうして得ら
れた電子写真用光受容部材を実施例19と同様に、耐久
試験前と耐久試験後についてそれぞれ評価を行った。
【0196】この結果を耐久試験前については表47
に、耐久試験後については表48にそれぞれ示す。表4
5〜表48の結果から明らかなように本発明の方法で
は、“しみ”が効果的に低減でき、画像特性が向上し、
加えて耐久性も向上している。実施例20 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表49に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、光導電層第1領域中
の弗素含有量を図14〜図17に示した変化パターンと
するために、光導電層第1領域形成時に導入するSiF
4 流量を変化させた。このときの光導電層第1領域の弗
素含有量は1〜95原子ppmの範囲で変化させた。ま
た、放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を光導
電層第1領域形成時の電圧の10%とし、光導電層第1
領域形成時の電圧を印加するまでの堆積膜の膜厚を0.
08μmとした。なお、弗素含有量はSIMS(CAM
ECA IMS−3F)による元素分析にて行った。 (I)作製した電子写真用光受容部材を目視による表面
状態の検査、およびキャノン製複写機NP−7550を
実験用に改造した電子写真装置に設置し、“しみ”、ハ
ーフトーンむら、白ポチ、ガサツキ、ゴースト、温度特
性、画像濃度むらについて実施例13と同様の評価を行
なった。
【0197】“しみ”、ハーフトーンむら、白ポチ、ガ
サツキ、ゴーストの各項目については実施例13と同様
に、また、温度特性と画像濃度むらについては以下の方
法で評価した。 温度特性……制作した電子写真用光受容部材の表面温度
を30〜45℃まで変化させ、帯電器に+6kVの高電
圧を印加し、コロナ帯電を行い、表面電位計によって暗
部表面電位を測定する。光受容部材の表面温度に対する
暗部表面電位の変化を直線で近似し、この方向きを温度
特性として[V/deg]の単位であらわす。
【0198】画像濃度むら……キャノン製中間調チャー
ト(部品番号:FY9−9042)を原稿台に置き、連
続して200枚コピーしたときに得られたそれぞれのコ
ピー画像上で、直径0.05mmの円形の領域を1単位
として100点の画像濃度を測定し、その画像濃度の平
均を求める。そして得られた200枚の画像間でその画
像濃度の平均のばらつきを評価した。
【0199】以上の2項目についてそれぞれ ◎は「特に良好」 ○は「良好」 △は「実用上問題無し」 ×は「実用上問題有り」 を表わしている。 (II)さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノン
製複写機NP−7550に入れ、300万枚相当の加速
耐久試験を行った後、再び(I)と同様に評価を行っ
た。
【0200】以上の結果を、耐久試験前については表5
0に、耐久試験後については表51にそれぞれ示す。表
50および表51より明らかなように、光導電層第1領
域中の弗素含有量を層厚方向に分布させることで、画像
特性および耐久性の向上が得られた。比較例10 放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を、光導電
層第1領域形成時の電圧とする以外は実施例19と同様
にして電子写真用光受容部材を作成した。こうして得ら
れた電子写真用光受容部材を実施例20と同様に、耐久
試験前と耐久試験後についてそれぞれ評価を行った。
【0201】この結果を耐久試験前については表52
に、耐久試験後については表53にそれぞれ示す。表5
0〜表53の結果から明らかなように本発明の方法で
は、“しみ”を効果的に低減し、画像特性が向上し、加
えて耐久性も向上している。実施例21 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表54に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、光導電層第1領域中
の酸素原子含有量を5〜8000原子ppmとするため
に、光導電層第1領域形成時に導入するCO2 の流量を
変化させた。このときの光導電層第1領域の弗素含有量
は40原子ppmで一定とした。また、放電が生起する
ときの外部電気バイアス電圧を光導電層第1領域形成時
の電圧の10%とし、光導電層第1領域形成時の電圧を
印加するまでの堆積膜の膜厚を0.12μmとした。な
お、酸素原子含有量および弗素含有量はSIMS(CA
MECA IMS−3F)による元素分析にて行った。
【0202】作製した電子写真用光受容部材を目視によ
る表面状態の検査、およびキャノン製複写機NP−75
50を実験用に改造した電子写真装置に設置し、“し
み”、帯電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、電
位シフトについて評価を行なった。“しみ”、帯電能、
感度、残留電位、ハーフトーンむらの各項目は、実施例
1と同様にして評価し、電位シフトは次の方法で評価し
た。
【0203】電位シフト……電子写真用光受容部材を実
験装置に設置し、帯電器に+6kVの高電圧を印加して
コロナ帯電を行い、表面電位計にて電子写真用光受容部
材の暗部表面電位を計測する。このとき帯電器に電圧を
印加し始めたときの暗部表面電位をVd0とし、2分経
過後の暗部表面電位をVdとする。このVd0とVdと
の差をもって電位シフト量とする。
【0204】電位シフトについて ◎は「特に良好」 ○は「良好」 △は「実用上問題無し」 ×は「実用上問題有り」 を表わしている。
【0205】この結果を表55に示す。表55より明ら
かなように光導電層第1領域中の酸素原子電子含有量を
10〜5000原子ppmとすることで電位シフトが効
果的に改善されることがわかった。比較例11 放電が生起するときの外部電気バイアス電圧を、光導電
層第1領域形成時の電圧とする以外は実施例20と同様
にして電子写真用光受容部材を作成した。こうして得ら
れた電子写真用光受容部材を実施例8と同様に評価を行
った。
【0206】この結果を表56に示す。表55および表
56の結果から明らかなように本発明の方法による電子
写真用光受容部材は“しみ”を効果的に低減でき画像特
性が向上している。実施例22 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表57に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、光導電層第1領域中
の酸素原子含有量の変化パターンを図18〜図21に示
したように変化させるため、光導電層第1領域形成時に
導入するCO2 の流量を変化させた。このときの光導電
層第1領域の弗素含有量は図17に示した変化パターン
で分布させた。また、放電が生起するときの外部電気バ
イアス電圧を光導電層第1領域形成時の電圧の10%と
し、光導電層第1領域形成時の電圧を印加するまでの堆
積膜の膜厚を0.1μmとした。なお、酸素原子含有量
および弗素含有量はSIMS(CAMECAIMS−3
F)による元素分析にて行った。 (I)作製した電子写真用光受容部材を目視による表面
状態の検査、およびキャノン製複写機NP−7550を
実験用に改造した電子写真装置に設置し、“しみ”、帯
電能、感度、残留電位、ハーフトーンむら、電位シフト
各項目について実施例20と同様の評価を行なった。 (II)さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノン
製複写機NP−7550に入れ、300万枚相当の加速
耐久試験を行った後、再び(I)と同様に評価を行っ
た。
【0207】この結果を耐久試験前については表58
に、耐久試験後については表59にそれぞれ示す。表5
8および表59より明らかなように光導電層第1領域中
の酸素含有量を層厚方向に変化させることで電子写真特
性の向上が得られた。実施例23 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図2(A)、図2(B)、および図3に示
したμW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成
装置を用いて、表60に示す作製条件で電子写真用光受
容部材を作製した。本実施例では、表面層に含有される
炭素量、窒素量、酸素量を変化させるため、表面層形成
時に導入するパワー、CH4 ,CO 2 ,NH3 の流量を
変えた。また、放電が生起するときの外部電気バイアス
電圧を光導電層第1領域形成時の電圧の10%とし、光
導電層第1領域形成時の電圧を印加するまでの堆積膜の
膜厚を0.06μmとした。 (I)作製した電子写真用光受容部材をキャノン製複写
機NP−7550を実験用に改造した電子写真装置に設
置し、帯電能、感度、残留電位、画像流れ、および白ポ
チ、キズについての画像評価を行った。なお帯電能、感
度、残留電位の各項目は実施例1と同様の評価を行い、
画像流れ、画像評価については、以下の方法で評価し
た。
【0208】画像流れ……白地に全面文字よりなるキャ
ノン製テストチャート(部品番号:FY9−9058)
を原稿台に置き、通常の露光量の2倍の露光量で照射
し、コピーをとる。こうして得られた画像を観察し、画
像上の細線が途切れずにつながっているか、以下の4段
階で評価した。なお、画像上でむらがあるときは、全画
像域で最も悪い部位で評価した。
【0209】◎は「良好」 ○は「一部途切れあり」 △は「途切れが多いが文字として判読でき、実用上問題
ない」 ×は「途切れが多く文字として判読しにくく、実用上問
題あり」 画像評価……白ポチ、キズそれぞれについて5段階の限
度見本を作成し、評価結果を次の4段階に分類した。
【0210】◎は「特に良好」 ○は「良好」 △は「実用上問題なし」 ×は「実用上問題あり」 (II)さらにこれらの電子写真用光受容部材をキャノン
製複写機NP−7550に入れ、300万枚相当の加速
耐久試験を行った後、再び(I)と同様の方法で画像に
評価を行った。比較例12 表面層形成時にCH4 を用いずに、またCO2 に変えて
NOを使用して、表面層中の酸素原子、窒素原子の含有
量の和を60原子%とした以外は実施例22と同様にし
て電子写真用光受容部材を作成した。こうして得られた
電子写真用光受容部材を実施例23と同様に評価を行っ
た。比較例13 表面層形成時にCO2 を用いずに、表面層中の炭素原
子、窒素原子の含有量の和を60原子%とした以外は実
施例23と同様にして電子写真用光受容部材を作成し
た。こうして得られた電子写真用光受容部材を実施例2
3と同様に評価を行った。比較例14 表面層形成時にNH3 を用いずに、表面層中の炭素原
子、酸素原子の含有量の和を60原子%とした以外は実
施例23と同様にして電子写真用光受容部材を作成し
た。こうして得られた電子写真用光受容部材を実施例2
3と同様に評価を行った。
【0211】以上、実施例23および比較例12〜比較
例14の結果を表61に合わせて示す。表61から明ら
かなように本発明の方法による光受容部材は、電位特
性、画像特性、耐久性に著しい改善がみられた。さらに
表面層中の炭素原子、酸素原子、窒素原子の含有量の和
を、シリコン原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子の含
有量の和に対して、40〜90原子%とし、かつ酸素原
子、窒素原子の含有量の和を、表面層中のシリコン原
子、炭素原子、酸素原子、窒素原子の含有量の和に対し
て、10原子%以下にすることで良好な結果が得られ
た。実施例24 純度99.5%のアルミニウムよりなる直径108m
m,長さ358mm,肉厚5mmのシリンダーを鏡面加
工し、脱脂洗浄したものを基体として使用し、さきに詳
述した手順で図7(A),(B)、および図3に示した
μW−PCVD法による電子写真用光受容部材形成装置
を用いて、表62に示す作製条件で電子写真用光受容部
材を作製した。本実施例では、表面層に含有される弗素
原子および水素原子の量を変化させるため、表面層形成
時に導入するパワー、H2 および/またはSiF4 の流
量を変えた。また、放電が生起するときの外部電気バイ
アス電圧を光導電層第1領域形成時の電圧の10%と
し、光導電層第1領域形成時の電圧を印加するまでの堆
積膜の膜厚を0.2μmとした。
【0212】こうして得られた電子写真用光受容部材を
キャノン製複写機NP−7550を実験用に改造した電
子写真装置に設置し、残留電位、感度、画像流れの3項
目について実施例21と同様に評価した。比較例15 表面層形成時にSiF4 を用いなかった以外は、実施例
24と同様にして電子写真用光受容部材を作成した。こ
うして得られた電子写真用光受容部材を実施例23と同
様に評価を行った。
【0213】以上実施例24および比較例15の結果を
表63に合わせて示す。表63から明らかなように、本
発明の方法では、感度、残留電位、画像流れが大幅に改
善される。
【0214】
【表1】
【0215】
【表2】
【0216】
【表3】
【0217】
【表4】
【0218】
【表5】
【0219】
【表6】
【0220】
【表7】
【0221】
【表8】
【0222】
【表9】
【0223】
【表10】
【0224】
【表11】
【0225】
【表12】
【0226】
【表13】
【0227】
【表14】
【0228】
【表15】
【0229】
【表16】
【0230】
【表17】
【0231】
【表18】
【0232】
【表19】
【0233】
【表20】
【0234】
【表21】
【0235】
【表22】
【0236】
【表23】
【0237】
【表24】
【0238】
【表25】
【0239】
【表26】
【0240】
【表27】
【0241】
【表28】
【0242】
【表29】
【0243】
【表30】
【0244】
【表31】
【0245】
【表32】
【0246】
【表33】
【0247】
【表34】
【0248】
【表35】
【0249】
【表36】
【0250】
【表37】
【0251】
【表38】
【0252】
【表39】
【0253】
【表40】
【0254】
【表41】
【0255】
【表42】
【0256】
【表43】
【0257】
【表44】
【0258】
【表45】
【0259】
【表46】
【0260】
【表47】
【0261】
【表48】
【0262】
【表49】
【0263】
【表50】
【0264】
【表51】
【0265】
【表52】
【0266】
【表53】
【0267】
【表54】
【0268】
【表55】
【0269】
【表56】
【0270】
【表57】
【0271】
【表58】
【0272】
【表59】
【0273】
【表60】
【0274】
【表61】
【0275】
【表62】
【0276】
【表63】
【0277】
【発明の効果】本発明の第1の発明方法により作成され
た電子写真用光受容部材は、A−Siで構成された従来
の電子写真用光受容部材における諸問題を解決すること
ができ、特にきわめて優れた電気的特性、光学的特性、
光導電特性、画像特性、耐久性および使用環境特性を示
す。
【0278】特に本発明においては、放電が生起すると
きの外部電気バイアス電圧を、光導電層形成時の電圧に
対して低くしておくことで、従来の外部電気バイアスを
用いたμW−PCVD法で問題となっていた、“しみ”
の発生を効果的に抑制し、画像特性の向上、さらに耐久
性の向上が得られる。また、光導電層に炭素が含有され
ていることにより光受容層の誘電率を小さくすることが
できるために、層厚当りの静電容量を減少させることが
できて高い帯電能と光感度において著しい改善がみら
れ、さらに高電圧に対する耐圧性も向上する。
【0279】そして、炭素を多く含む層を導電性基体側
に設置することにより導電性基体からの電荷の注入を阻
止することにより帯電能が改善され、さらに導電性基体
と光導電層との密着性が向上し、膜の剥離や微少な欠陥
の発生を抑制することができる。本発明の光導電層を用
いることにより、高帯電能、高感度、低残留電位で、優
れた電気特性を維持したままで耐久性を飛躍的に向上さ
せることができる。
【0280】すなわち、膜の密着性が向上するため、連
続して大量に画像形成を行なってもクリーニングブレー
ドや分離爪へのダメージが少なく、クリーニング性およ
び転写紙の分離性も良好になる。従って、画像形成装置
としての耐久性を飛躍的に向上することができる。さら
に誘電率の低下により高電圧に対する耐久性も向上する
ため光受容部材の一部が絶縁破壊することによって起こ
る「リークポチ」がさらに発生しにくくなる。
【0281】さらに膜質が緻密になるため、帯電処理を
受けた際に表面より電荷が注入されるのを効果的に阻止
でき、帯電能、使用環境特性、耐久性および電気的耐圧
性を向上することができる。さらに、光導電層と表面層
の界面におけるキャリアの蓄積を減少させることができ
るために、帯電能を高い状態に維持しても画像流れを抑
制することが出来る。
【0282】また、表面層に少なくともシリコン原子、
水素原子、炭素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び周期
律表第III 族元素を同時に含有することにより、これら
の相乗効果によって、従来の電子写真用光受容部材に比
較して帯電能が高く、光感度の大幅な向上が得られると
同時に、「白ポチ」等の画像欠陥の低減、とりわけ長期
使用時の「リークポチ」の低減に効果を発揮し、さらに
再生紙使用時のキズの発生防止、長期の使用におけるト
ナーの融着や画像流れを無くして、極めて優れた画像特
性、耐久性、および使用環境特性を示す。
【0283】本発明によれば、これらの効果が相乗的に
加味され、結果として電位特性、画像特性に優れ、さら
にこれらの特性を長期にわたって維持する耐久性が非常
に優れた光受容部材を、安価に歩留まりよく供給できる
ものである。本発明の第2の発明方法によれば、A−S
iで構成された従来の電子写真用光受容部材における諸
問題を解決することができ、特にきわめて優れた電気的
特性、光学的特性、光導電特性、画像特性、耐久性およ
び使用環境特性を示す光受容部材を形成できる。
【0284】特に本発明においては、放電が生起すると
きの外部電気バイアス電圧を、光導電層第1領域形成時
の電圧に対して低くしておくことで、従来の外部電気バ
イアスを用いたμW−PCVD法で問題となる“しみ”
の発生を効果的に抑制し、画像特性の向上、さらに耐久
性の向上が得られる。さらに、本発明によれば、光導電
層第1領域を導電性基体から炭素原子を連続的に変化さ
せることによって、電荷(フォトキャリア)の発生と該
発生した電荷の輸送という電子写真感光体にとっての重
要な機能をなめらかに接続させることが可能となり、さ
らに光導電層第2領域を設けることにより、効率よく電
荷を発生させることができるため、残留電位が低く、光
感度にすぐれた光受容部材が形成できる。
【0285】また、光導電層第1領域に炭素が含有され
ていることにより光受容層の誘電率を小さくすることが
できるために、層厚当りの静電容量を減少させることが
できて高い帯電能と光感度において著しい改善がみら
れ、さらに高電圧に対する耐圧性も向上する。そして、
炭素を多く含む層を導電性基体側に設置することにより
導電性基体からの電荷の注入を阻止することにより帯電
能が改善され、さらに導電性基体と光導電層第1領域と
の密着性が向上し、膜の剥離や微少な欠陥の発生を抑制
することができる。
【0286】本発明の光導電層第1領域を用いることに
より、高帯電能、高感度、低残留電位で、優れた電気特
性を維持したままで耐久性を飛躍的に向上させることが
できる。すなわち、膜の密着性が向上するため、連続し
て大量に画像形成を行なってもクリーニングブレードや
分離爪へのダメージが少なく、クリーニング性および転
写紙の分離性も良好になる。従って、画像形成装置とし
ての耐久性を飛躍的に向上することができる。さらに誘
電率の低下により高電圧に対する耐久性も向上するため
光受容部材の一部が絶縁破壊することによって起こる
「リークポチ」がさらに発生しにくくなる。
【0287】さらに膜質が緻密になるため、帯電処理を
受けた際に表面より電荷が注入されるのを効果的に阻止
でき、帯電能、使用環境特性、耐久性および電気的耐圧
性を向上することができる。さらに、光導電層第1領域
と表面層の界面におけるキャリアの蓄積を減少させるこ
とができるために、帯電能を高い状態に維持しても画像
流れを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)本発明の第1の発明方法による光受容部
材の層構成の模式図である。(B)本発明の第2の発明
方法による光受容部材の層構成の模式図である。
【図2】(A)本発明を実施するに好適な光受容部材形
成装置の一例の反応容器の側断面模式図である。(B)
本発明を実施するに好適な光受容部材形成装置の一例の
反応容器を上からみた横断面模式図である。
【図3】本発明を実施するに好適な光受容部材形成装置
の一例の装置の全体構成の模式図である。
【図4】本発明の光導電層の炭素含有量変化パターンを
示すグラフである。
【図5】従来の光導電層の炭素含有量変化パターンを示
すグラフである。
【図6】従来の光導電層の炭素含有量変化パターンを示
すグラフである。
【図7】本発明の光導電層の炭素含有量変化パターンを
示すグラフである。
【図8】本発明の光導電層の炭素含有量変化パターンを
示すグラフである。
【図9】本発明の光導電層第1領域の炭素含有量変化パ
ターンを示すグラフである。
【図10】従来の光導電層第1領域の炭素含有量変化パ
ターンを示すグラフである。
【図11】従来の光導電層第1領域の炭素含有量変化パ
ターンを示すグラフである。
【図12】本発明の光導電層第1領域の炭素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図13】本発明の光導電層第1領域の炭素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図14】本発明の光導電層第1領域の弗素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図15】本発明の光導電層第1領域の弗素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図16】本発明の光導電層第1領域の弗素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図17】本発明の光導電層第1領域の弗素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図18】本発明の光導電層第1領域の酸素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図19】本発明の光導電層第1領域の酸素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図20】本発明の光導電層第1領域の酸素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図21】本発明の光導電層第1領域の酸素含有量変化
パターンを示すグラフである。
【図22】本発明の光導電層の弗素含有量変化パターン
を示すグラフである。
【符号の説明】
100 光受容部材 101 導伝性基体 102 光導電層 103 表面層 104 光導電層第1領域 105 光導電層第2領域 201 反応容器 202 マイクロ波導入用誘電体窓 203 導波管 204 排気管 205 導電性基体 206 放電空間 207 ヒーター 208 電極 209 電源 210 駆動手段(回転モーター) 211 ホルダー 212 ガス導入管 311〜316 マスフローコントローラー 317 ガス配管 321〜326 ガスボンベ 331〜336 ガスボンベバルブ 341〜346 流入バルブ 351〜356 流出バルブ 360 補助バルブ 361〜366 圧力調整器

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に密封し得る反応容器内に放電空
    間を取り囲むように導電性基体を配置し、マイクロ波導
    入手段を設け、原料ガスに由来する成膜に寄与する反応
    物質を含むマイクロ波グロー放電プラズマを形成し、放
    電空間中に設けた電極に外部電気バイアス電圧を印加し
    て、前記導電性基体表面にシリコンを母材とする非単結
    晶材料で構成された光導電層、表面層よりなる光受容部
    材を形成する光受容部材形成方法であって、前記光導電
    層中に全層にわたって炭素原子を含有し、該炭素原子の
    含有量が光導電層の導電性基体側の表面で高く、表面層
    側の表面で低くなるように分布し、さらに光導電層中に
    水素原子、弗素原子を含有し、かつ、前記表面層中に炭
    素原子および周期律表の第III 族原子、水素原子および
    ハロゲン原子を同時に含有し、さらに酸素原子および/
    または窒素原子を含有する光受容部材を形成する方法で
    あって、前記マイクロ波グロー放電プラズマを生起せし
    める際に、前記導電性基体に印加する外部電気バイアス
    電圧を、前記光導電層形成時に印加する電圧にたいして
    実質的に低い電圧を印加し、かつ、放電が生起した後に
    該外部電気バイアス電圧を光導電層形成時に印加する電
    圧に調整する行程を有する光受容部材形成方法。
  2. 【請求項2】 前記マイクロ波グロー放電プラズマを生
    起せしめる際の外部電気バイアス電圧を前記光導電層形
    成時に印加する電圧にたいして0.5倍以下とすること
    を特徴とする請求項1に記載の光受容部材形成方法。
  3. 【請求項3】 前記光導電層の少なくとも1部に周期律
    表の第III 族または第V族に属する元素を含有する請求
    項1または請求項2に記載の光受容部材形成方法。
  4. 【請求項4】 前記光導電層中の炭素原子の含有量が前
    記導電性基体側の表面、または表面近傍で0.5〜50
    原子%であり、表面層側表面、または表面近傍で実質的
    に0原子%であり、前記光導電層中の水素原子の含有量
    が1〜40原子%であり、さらに弗素原子の含有量が9
    5原子ppm以下である請求項1乃至13いずれかに記
    載の光受容部材形成方法。
  5. 【請求項5】 前記光導電層中に弗素原子および酸素原
    子を同時に含有する請求項1乃至請求項4いずれかに記
    載の光受容部材形成方法。
  6. 【請求項6】 前記光導電層中の酸素原子の含有量が1
    0〜5000原子ppmであり、弗素原子の含有量が1
    〜95原子ppmである請求項5に記載の光受容部材形
    成方法。
  7. 【請求項7】 前記表面層において、炭素原子、ハロゲ
    ン原子、周期律表の第3族元素、酸素原子、窒素原子の
    うち少なくとも1つが、層厚方向に不均一に分布してい
    る請求項1乃至6いずれかに記載の光受容部材形成方
    法。
  8. 【請求項8】 前記表面層において、最表面もしくは最
    表面近傍での炭素原子の含有量がシリコン原子、炭素原
    子の含有量の和に対して70〜95原子%である請求項
    1乃至7いずれかに記載の光受容部材形成方法。
  9. 【請求項9】 前記表面層中の酸素原子、または窒素原
    子の含有量が30原子%以下である請求項1乃至請求項
    8いずれかに記載の光受容部材形成方法。
  10. 【請求項10】 実質的に密封し得る反応容器内に放電
    空間を取り囲むように導電性基体を配置し、マイクロ波
    導入手段を設け、原料ガスに由来する成膜に寄与する反
    応物質を含むマイクロ波放電プラズマを形成し、放電空
    間中に設けた電極に外部電気バイアス電圧を印加して、
    前記導電性基体表面にシリコンを母材とする非単結晶材
    料で構成された光導電層第1領域、光導電層第2領域、
    表面層よりなる光受容部材を形成する光受容部材形成方
    法であって、前記光導電層第1領域中に全層にわたって
    炭素原子および水素原子を含有し、該炭素原子の含有量
    が層厚方向に不均一に、かつ導電性基体側で含有量が高
    くなるように分布し、前記表面層中に炭素原子および水
    素原子およびハロゲン原子、さらに酸素原子および窒素
    原子を同時に含有する光受容部材を形成する方法であっ
    て、前記マイクロ波放電プラズマを生起せしめる際に、
    前記導電性基体に印加する外部電気バイアス電圧を、前
    記光導電層第1領域形成時に印加する電圧にたいして実
    質的に低くし、かつ、放電が生起した後に該外部電気バ
    イアス電圧を光導電層第1領域形成時に印加する電圧に
    調整する行程を有する光受容部材形成方法。
  11. 【請求項11】 前記マイクロ波放電プラズマを生起せ
    しめる際に外部電気バイアス電圧を前記光導電層第1領
    域形成時に印加する電圧にたいして0.5倍以下とする
    ことを特徴とする請求項10に記載の光受容部材形成方
    法。
  12. 【請求項12】 前記光導電層第1領域中の炭素原子の
    含有量が前記導電性基体側の表面、または表面近傍で
    0.5〜50原子%であり、表面層側表面、または表面
    近傍で実質的に0原子%であり、前記光導電層第1領域
    中の水素原子の含有量が1〜40原子%である請求項1
    0又は11に記載の光受容部材形成方法。
  13. 【請求項13】 前記光導電層第1領域中に弗素原子を
    含有する事を特徴とする請求項10乃至12いずれかに
    記載の光受容部材形成方法。
  14. 【請求項14】 前記光導電層第1領域中の弗素原子の
    含有量が1〜95原子ppmであることを特徴とする請
    求項13に記載の光受容部材形成方法。
  15. 【請求項15】 前記光導電層第1領域中の弗素原子の
    含有量が、前記光導電層第1領域中に不均一に分布する
    ことを特徴とする請求項13又は14に記載の光受容部
    材形成方法。
  16. 【請求項16】 前記光導電層第1領域中に弗素原子お
    よび酸素原子を同時に含有することを特徴とする請求項
    10乃至12いずれかに記載の光受容部材形成方法。
  17. 【請求項17】 前記光導電層第1領域中の酸素原子の
    含有量が10〜5000原子ppmであり、かつ弗素原
    子の含有量が1〜95原子ppmであることを特徴とす
    る請求項16に記載の光受容部材形成方法。
  18. 【請求項18】 前記光導電層第1領域中の弗素原子、
    および酸素原子の含有量が前記光導電層第1領域中に不
    均一に分布することを特徴とする請求項16又は17に
    記載の光受容部材形成方法。
  19. 【請求項19】 前記表面層において、炭素原子、酸素
    原子、窒素原子の含有量の和が、シリコン原子、炭素原
    子、酸素原子、窒素原子の含有量の和に対して10〜9
    0原子%であり、ハロゲン原子の含有量が20原子%以
    下であり、かつ水素原子と該ハロゲン原子の含有量の和
    が30〜70原子%であることを特徴とする請求項10
    乃至18いずれかに記載の光受容部材形成方法。
  20. 【請求項20】 前記表面層において、酸素原子、窒素
    原子の含有量の和が、表面層中のシリコン原子、炭素原
    子、酸素原子、窒素原子の含有量の和に対して、10原
    子%以下であることを特徴とする請求項10乃至19い
    ずれかに記載の光受容部材形成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006049340A1 (ja) * 2004-11-05 2006-05-11 Canon Kabushiki Kaisha 電子写真感光体
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