JPH0468734B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は、インライン方式のカラー陰極線管に
使用される偏向ヨーク装置に関し、特に水平偏向
コイルによつて生じるミスコンバージエンスを修
正する偏向ヨーク装置に関する。

＜背景技術とその問題点＞ ３本の電子ビームたとえば赤(R)、緑(G)及び青(B)
に対応する各電子ビームが一方向に順次配列され
て発射されるインライン方式のカラー陰極線管に
おいては、偏向ヨークを構成する水平及び垂直偏
向コイルの巻線形式として、水平偏向コイルを鞍
型及び垂直偏向コイルをトロイダル型としたも
の、また水平垂直偏向コイル共に鞍型としたもの
等がある。

一般にインライン方式のカラー陰極線管に用い
られる偏向ヨークによつて作られる水平偏向磁界
の磁束分布が、糸巻型（ピンクツシヨン型）とな
ると、コーナ・クロス・ミスコンバージエンスは
正方向に生じるようになる。また、上記磁束分布
が樽型（バレル型）となると、コーナ・クロス・
ミスコンバージエンスが負方向に生じるようにな
る。

上記水平偏向コイルの巻線方式が鞍型である
と、鞍型に巻かれた巻線の中央部分にコイルの巻
かれていない窓部が生じる。第１図は、水平偏向
コイル１に生じる窓部２を示している。このよう
に窓部２が生じることにより、水平偏向コイル１
によつて作られる水平偏向磁界は、陰極線管に配
設された水平偏向コイル１の水平方向すなわち第
２図に示すＸ軸方向において、中央部分が外側部
分に比べてピンクツシヨン型の磁束分布を示すよ
うになる。第２図に示す矢印は、水平偏向磁界の
磁束分布を示している。このため、上記Ｘ軸中央
付近の磁束の影響を強く受ける陰極線管画面中央
部では、ピンクツシヨン型の磁束分布によつて、
コーナ・クロス・ミスコンバージエンスが正方向
に生じるようになる。そして、Ｘ軸方向の影響を
受けるコーナ部分では磁束分布の積分値を平均化
したコーナ・クロス・ミスコンバージエンスを示
すようになり、全体としてＳ字状のミスコンバー
ジエンスが発生するようになる。第３図は、陰極
線管の画面３に発生したＳ字ミスコンバージエン
スパターンを、赤の横バーＲ及び青の横バーＢに
ついて示したものである。このＳ字ミスコンバー
ジエンスは、陰極線管が大型で広角度になるほ
ど、発生しやすくなる。

上記Ｓ字ミスコンバージエンスを改善するため
に、上記窓部２の窓幅を小さくすることが考えら
れるが、このようにすると鞍型に巻かれた巻線型
への線の詰りが悪くなる。また、特にコストダウ
ンのために、線材を減らし巻線断面積を減らして
めこうとすると、窓幅を小さくした場合巻線しに
くく、実用的でない。

また、他の改善策として、水平偏向コイルの巻
線に間隔を設けるようにしたスペース巻が考えら
れるが、スペース巻の場合、巻線機で巻線するコ
ストが上昇するとともに巻線スピードが低下する
という難点がある。

このため、従来は陰極線管の画面上の周辺部の
ミスコンバージエンスと中間部のミスコンバージ
エンスとが、全体に渡つてバランスするように、
たとえば偏向ヨークを調整するようにしていた。
この調整によつて、一般用のテレビジヨン受像機
においては一応実用レベルであつたが、昨今の高
画質を求める陰極線管においては、上記ミスコン
バージエンスが画質に影響を与え問題となつてい
た。

＜発明の目的＞ そこで、本発明はこのような実情に鑑み提案さ
れたものであり、インライン方式のカラー陰極線
管に鞍型巻線の水平偏向コイルを使用した場合に
発生するＳ字ミスコンバージエンスを改善するこ
との可能な偏向ヨーク装置を提供することを目的
とする。

＜発明の概要＞ この目的を達成するために本発明の偏向ヨーク
装置は、水平偏向コイルを鞍型に巻線したインラ
イン方式のカラー陰極線管の偏向ヨーク装置にお
いて、陰極線管に設置された水平偏向コイルにつ
いての水平方向長さ対垂直方向長さが略１対１ま
たは１以下対１の断面形状を有する磁性片を、水
平偏向コイルの窓部と垂直偏向コイルと間に水平
方向について対称となるように垂直方向の上下に
一対配設し、水平偏向コイルによつて水平方向中
央付近に形成される糸巻型の磁束分布を補正する
ようにしたことを特徴とする。

＜実施例＞ 以下、本発明の一実施例を図面に基づき説明す
る。

第４図は、本発明に係る偏向ヨーク装置の径方
向の横断面図を示している。この偏向ヨーク装置
は、たとえば赤(R)、緑(G)青(B)に対応する３本の電
子ビームが順次一方向に配列されて発射されるイ
ンライン方式のカラー陰極線管に配設されるよう
になつている。

この第４図において、巻線方式が鞍型に巻かれ
た水平偏向コイル１０は、プラスチツク材料等で
形成されたセパレータ１１の内面に配設されてい
る。この水平偏向コイル１０の露出する面側は、
陰極線管の管壁と対峙するようになつている。上
記水平偏向コイル１０は鞍型に巻かれていること
により、陰極線管に配設される水平偏向コイル１
０の垂直方向すなわち第４図のＹ軸方向の上下部
分にそれぞれ窓部１２，１２が形成されるように
なつている。

また、セパレータ１１の外面方向には空間部１
３を隔てて、鞍型またはトロイダル型に巻かれた
垂直偏向コイル１４が設けられている。この垂直
偏向コイル１４は、偏向ヨーク装置の縦断面図を
第５図に示すように、たとえばフエライト等の磁
気コア１５上に巻かれるようになつている。

また、上記窓部１２，１２の中央部であるセパ
レータ１１の継目部分すなわち窓部１２，１２の
Ｙ軸上の上下には、磁性片１６，１６がセパレー
タ１１に挾み付けられるように取付けられてい
る。この磁性片１６，１６は、第７図に示す外観
形状を成しており、長手方向の端部１７，１７の
断面形状は中央部に比べて薄く形成されている。
すなわち、長手方向に彎曲形成された磁性片１６
の上面１６Ａが端部方向において傾斜立下がり、
底面１６Ｂが端部方向において傾斜立上がり、端
部１７，１７を中央部に比べて薄く形成するよう
にしている。上記磁性片１６，１６は、第６図に
示すように水平偏向コイル１０の全長方向すなわ
ちＺ軸方向が長手方向となるようにセパレータ１
１の継目部分２０に取付けられている。この取付
け位置は、磁性片１６，１６の長手方向中心が、
水平偏向コイル１０の全長の中央位置よりも陰極
線管パネル面側方向に位置するようになつてい
る。上記セパレータ１１には、第５図に示すよう
に断面コ字状の保持部１８，１８が設けられてお
り、それぞれの磁性片１６，１６の端部１７，１
７をこの保持部１８，１８によつて挾み付けるよ
うにして、磁性片１６，１６を上記位置に取付け
固定するようになつている。第８図の断面斜視図
は、磁性片１６，１６の取付け状態を示してい
る。第７図の−線断面図を第９図に示すよう
に、配設された磁性片１６，１６の水平方向すな
わちＸ軸方向の長さｍは、本実施例の場合たとえ
ば６mmに設定されている。また、磁性片１６，１
６の垂直方向すなわちＹ軸方向の長さｎは、たと
えば５mmに設定されている。このように、配設さ
れた磁性片１６，１６はその断面形状がＸ軸方向
の長さｍ対Ｙ軸方向の長さｎを略１対１に設定さ
れるようになつている。また磁性片１６，１６の
長手方向の長さｌは、本実施例の場合たとえば25
mmに設定されている。

上記磁性片１６，１６としては、フエライト粉
にバインダであるたとえばプラスチツクを混ぜて
形成したいわゆるモールドコアを用いるようにし
てもよい。このモールドコアは、価格的にも安価
で、寸法精度も良く取れるという利点を有してい
る。また、磁性片１６，１６として、フエライト
を用いるようにしてもよいが、フエライトは焼結
体であるため薄く作ることが難しく寸法精度も出
しにくく、また価格も高価であるという難点があ
る。

このように構成された偏向ヨーク装置は、水平
偏向コイル１０の窓部１２，１２の中央部に上記
磁性片１６，１６が配設されることによつて、水
平偏向コイル１０によつて生じる磁界と同方向
に、第４図に破線の矢印で示すように、Ｘ軸の中
央付近に樽型（バレル型）の磁束分布が形成され
るようになつている。ところで、上記水平偏向コ
イル１０は鞍型に巻かれているため上記窓部１
２，１２を有しており、第４図に実線の矢印で示
すように、水平偏向コイル１０によつて形成され
る磁束分布がＸ軸中央付近において糸巻型（ピン
クツシヨン型）の分布となつている。上記磁性片
１６，１６によつて形成されるバレル型の磁束分
布は、水平偏向コイル１０のピンクツシヨン型磁
束分布を打ち消すように働く。したがつて、Ｘ軸
中央付近の磁束分布が斉一となり、Ｘ軸方向全般
に渡つて水平偏向磁界の磁束分布が斉一となるよ
うになつている。このため、水平偏向コイル１０
のピンクツシヨン型磁束により発生していた前記
Ｓ字ミスコンバージエンスが改善されるようにな
つている。

上記磁性片１６，１６をたとえび有効画面27イ
ンチのカラー陰極線管の偏向ヨークに取付け、陰
極線画面の中間部の４つの測定点でＳ字ミスコン
バージエンス成分を測定したところ、−0.94mmの
測定値が得られた。同様の条件で、上記磁性片１
６，１６を取付けない場合のＳ字ミスコンバージ
エンス成分の測定値は、−2.14mmであつた。この
ように、上記磁性片１６，１６を取付けることに
よつて、1.2mmに相当するＳ字ミスコンバージエ
ンス成分を改善することができる。

上述のように上下の窓部１２，１２にそれぞれ
磁性片１６，１６を取付けることにより上記Ｘ軸
中央部付近の水平偏向磁界の磁束分布を強化さ
せ、Ｓ字ミスコンバージエンスを改善するように
している。ここで、配設された磁性片１６，１６
の断面形状を、Ｘ軸端方向に大きくすると磁性片
１６，１６が垂直偏向磁界に影響を与え、好まし
くない。したがつて、上記のようにＸ軸方向の長
さｍ対Ｙ軸方向の長さｎを、略１対１に設定する
か、１以下対１に設定するのが望ましい、また、
磁性片１６，１６は、配設された水平偏向コイル
１０の縦方向すなわちＺ軸方向に長く形成させる
ことによつて、より効果的にＳ字ミスコンバージ
エンスを改善することができる。

上記磁性片１６，１６の水平偏向コイル１０の
上記Ｚ軸方向に対する取付け位置は、特に限定さ
れないが、水平偏向コイル１０の全長の中央位置
よりも該偏向コイル１０のネツク側（陰極線パネ
ル側とは反対方向）に取付けた場合、第１０図に
示すようないわゆるHCRミスコンバージエンス
が生じるようになる。このHCRミスコンバージ
エンスは、陰極線管の画面２１に対して赤の縦バ
ーＲが内側方向に、緑の縦バーＧが外側方向にず
れるようなミスコンバージエンスである。なお、
Ｂは青の縦バーを表している。

また、磁性片１６の端部１７を保持する保持部
材の形状を、第１１図に示すよう爪状の形状にし
てもよく、この爪２３によつて端部１７の先端に
おいて磁性片１６を押え付けるようにしている。
また、第１２図に示すような、上記端部１７の側
方から爪２４によつて端部１７を保持するように
してもよい。第１３図は、保持部材のさらに他の
実施例の形状を示しており、上記端部１７の周囲
を囲むような箱状の保持部材２５によつて端部１
７を保持するようにしてもよい。

第１４図は、上記窓部１２に取付けられる磁性
片形状の他の実施例を示している。第１４図Ａに
示す磁性片２６は、直方体を長手方向に彎曲させ
た形状を成している。また、第１４図Ｂに示す磁
性片２７は、磁性片２７の下方に厚みを持たせ、
長手方向に彎曲させた形状を成している。第１４
図Ｃの磁性片２８は、第１４図Ｂに示す磁性片２
７を彎曲させることなく直線状に形成した形状を
成している。また、第１４図Ｄに示す磁性片２９
は、第１４図Ａの磁性片２６を彎曲させることな
く直線状に形成した形状すなわち直方体形状に形
成されている。また、第１４図Ｅの磁性片３０
は、磁性片３０の上方に厚みを持たせ、長手方向
に彎曲させた形状を成している。

上記実施例においては、磁性片１６，１６をセ
パレータ１１によつて挾み付けるようにして取付
けたが、セパレータ１１の外面に磁性片を載置さ
せ、セパレータ１１と垂直偏向コイル１４との間
に設けられた空間部に位置するように、磁性片を
上下の窓部１２，１２にそれぞれ配設するように
してもよい。

また、垂直偏向磁界に影響を与えない範囲で、
上記Ｙ軸に対称に複数個たとえば第１５図に示す
ように２個の磁性片３５を上記窓部１２に設置す
るようにしてもよい。第１６図は、たとえば３個
の磁性片３６がＹ軸に対称に窓部１２内に設置さ
れた状態を示している。このとき、設置された磁
性片３５及び磁性片３６の断面形状は、Ｘ軸方向
の和対Ｙ軸方向の和が、略１対１もしくは１以下
対１とするのが望ましい。

このように本発明によれば、水平偏向コイル１
０が鞍型に巻かれていることによつて形成された
上下の窓部１２，１２のそれぞれに磁性片を配設
することによつて、ピンクツシヨン型に形成され
た水平偏向磁界の磁界分布を補正し、Ｓ字ミスコ
ンバージエンスを改善するようにした。これによ
り、陰極線管の画質の向上を図ることができると
ともに、従来必要であつた、たとえば偏向ヨーク
の調整工数を削減することができる。

＜発明の効果＞ 以上の説明から明らかなように、本発明によれ
ば、インライン方式のカラー陰極線管において、
偏向ヨークを構成する水平偏向コイルが鞍型に巻
かれている場合に生じる上下の窓部にそれぞれ磁
性片を取付けるようにした。これにより、配設さ
れた水平偏向コイルの横断方向すなわち水平方向
の中心付近に、バレル状の磁束分布を水平偏向磁
界と同方向に形成するようにした。上記窓部のた
め水平偏向コイルの作る磁界の磁界分布は水平方
向中央部付近がピンクツシヨン状の分布となつて
いたが、上記磁性片のバレル状の磁束分布がこれ
を打ち消すように作用する。このため、水平方向
全般に渡つて水平偏向コイルの磁束分布を斉一な
ものにすることができ、Ｓ字ミスコンバージエン
スを改善することができる。したがつて、陰極線
管の画質を向上することができ、従来必要であつ
たＳ字ミスコンバージエンスを調整する通常の調
整工数を削減することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は鞍型に巻かれた水平偏向コイルに生じ
た窓部を示す水平偏向コイルの外観斜視図、第２
図は上記水平偏向コイルによつて生じるピンクツ
シヨン型の磁束分布を示す水平偏向コイルの横断
面図、第３図は上記ピンクツシヨン型の磁束分布
に起因するＳ字ミスコンバージエンスパターンを
説明する図、第４図は本発明の一実施例である偏
向ヨーク装置の横断面図、第５図は上記偏向ヨー
ク装置の縦断面図、第６図は陰極線管パネル方向
から見た上記偏向ヨーク装置の正面図、第７図は
上記偏向ヨーク装置を構成する水平偏向コイルの
窓部に取付けられる磁性片の外観斜視図、第８図
は上記磁性片の取付け状態を示す断面斜視図、第
９図は第７図の−線の断面図、第１０図は
HCRミスコンバージエンスを説明するための図、
第１１図は上記磁性片を固定するための他の実施
例を示す縦断面図、第１２図及び第１３図は上記
磁性片を固定するための他の実施例を示す磁性片
の端部部分の横断面図、第１４図は磁性片形状の
他の実施例を示す外観斜視図、第１５図及び第１
６図は上記窓部に磁性片を配置するための他の実
施例を示す偏向ヨーク装置の正面図である。 １０……水平偏向コイル、１１……セパレー
タ、１２……窓部、１４……垂直偏向コイル、１
６……磁性片、１７……端部、１８……保持部、
２０……継目部分、２１……画面、２３，２４…
…爪、２５……保持部、２６乃至３０……磁性
片、３５，３６……磁性片。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 水平偏向コイルを鞍型に巻線したインライン
   方式のカラー陰極線管の偏向ヨーク装置におい
   て、陰極線管に設置された水平偏向コイルについ
   ての水平方向長さ対垂直方向長さが略１対１また
   は１以下対１の断面形状を有する磁性片を、水平
   偏向コイルの窓部と垂直偏向コイルと間に水平方
   向について対称となるように垂直方向の上下に一
   対配設し、水平偏向コイルによつて水平方向中央
   付近に形成される糸巻型の磁束分布を補正するよ
   うにしたことを特徴とする偏向ヨーク装置。